説明

線輪部品

【課題】 軟磁性コアを積層しても、インダクタンス、銅損等の特性に影響を与えず、放熱性の優れた巻線部品を提供すること。
【解決手段】 線輪部品100は、少なくとも2つのトロイダルコア101及び102と、巻線部103及び104とを構成要素としたものである。トロイダルコア101及び102は、各々に少なくとも1つの磁気ギャップ105、106が設けられており、且つ、トロイダルコアの平面部には少なくとも1つの放射状の溝部107、108を具備している。溝部107、108の深さは、巻線部103及び104を構成する導体の太さより大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性コアに巻き線を施した巻線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同一形状の複数のコアの各々に巻線が巻回された複数個の電磁素子を構成し、隣り合う電磁素子の巻線端同士が互いに結線されている電磁装置の技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、複数のトロイダルコアと、端子が設けられた樹脂製ベースを備え、複数のトロイダルコアは、各々複数の巻線が巻回されてトランスが形成され、樹脂製ベースに積み重ねて取付けられ、ベースの端子を介して複数のトランスが接続されることで、形状を小さくして電子機器における占有面積を小さくでき、かつ、トランスのリードを配線する作業が容易になる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−117230号公報
【特許文献2】特開平10−135049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2記載の通り、複数の軟磁性コアを積み重ねることで、省スペース化の効果は得られるが、隣接するインダクタンス素子間の磁束の干渉によるインダクタンス特性の低下を起こしてしまう。
【0006】
また、特に昇圧回路や降圧回路等に用いられるリアクトル用途ではコイルや軟磁性コアからの発熱が無視できず、巻線部品からの放熱性向上が求められている。
【0007】
従って本発明の目的は、軟磁性コアを積層しても、インダクタンス、銅損等の特性に影響を与えず、放熱性の優れた巻線部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
コイルが巻かれた軟磁性コアを備えるインダクタンス素子を複数積み重ね、少なくとも一つのインダクタンス素子におけるコイルに通電することで軟磁性コア内に発生する磁束の向きを、隣接するインダクタンス素子で互いに逆向きとなるよう構成する線輪部品により上記課題を解決する。
【0009】
すなわち、コイルの内側と外側で、磁束の向きはコイルの巻き軸に沿ってはいるが、互いに逆方向となる。一方、コイルが巻かれた軟磁性コアをインダクタンス素子として、本発明ではそのインダクタンス素子を積み重ねている。すなわち、その中のインダクタンス素子のコイルに通電したとき、コイル内側の軟磁性コア内部の磁束の向きとコイル外側にあたる上層または下層に隣接するインダクタンス素子における軟磁性コア内部の磁束の向きが互いに反対方向であれば、コイル外側に誘起された磁束の向きと隣接する軟磁性コア内部の磁束の向きが一致する。
【0010】
なお、少なくとも一つのインダクタンス素子におけるコイルの導線は、隣接するインダクタンス素子における導線と接していてもよい。
【0011】
また、少なくとも一つのインダクタンス素子における導線を取り囲むよう軟磁性体が配されていてもよい。
【0012】
また、互いに隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアが対向する対面部には各々溝が設けられ、対面部の溝の位置は互いに一致していて、溝によって形成された空間には互いに隣接する導線の双方が収容され、対面部の少なくとも一部は面接触していてもよい。
【0013】
また、軟磁性コアは対面部に接する側面まで溝が延長され、対面部における溝の底部と側面における溝の底部の接続部位は、平面か、連続した曲面で構成してもよい。
【0014】
また、軟磁性コアは閉磁路を構成していてもよい。
【0015】
また、軟磁性コアは磁気ギャップを有し、軟磁性コアに発生する磁束は、コイルの巻き軸及び磁気ギャップにおける巻き軸の延長線に沿い、磁気ギャップ端部は隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアと対面していてもよい。
【0016】
また、軟磁性コアは円環状の形状を有するトロイダルコアであり、軟磁性コアは複数の磁気ギャップを有し、磁気ギャップは、トロイダルコアの円周の中心軸に関して回転対称となるように設けられていてもよい。また、軟磁性コアは内部コアと外部コアを有し、内部コアと外部コアには溝部が設けられ、コイルの少なくとも一部は内部コアに設けられた溝部に収容されるよう巻かれ、外部コアは内部コアにおける溝部が設けられた面の少なくとも一部と接し、コイルの少なくとも一部は内部コアの溝部より外部コアの溝部へ収容されるよう連続して巻かれインダクタンス素子を構成している線輪部品としてもよい。このように構成することで、内部コアに設ける溝部の本数の上限によりコイル巻き数が制限されている場合でも外部コアをさらに設けることで溝部の本数を増やし、コイルの巻き数を多くすることでインダクタンスを高めることができる。なお内部コアや外部コアといった軟磁性コアの溝部にコイルが収容されているため、コイル表面と軟磁性コア表面との距離が近接し、コイルより軟磁性コアへの放熱性も高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【図3】本発明の線輪部品の直流重畳特性を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【図5】本発明の線輪部品の発生応力の変化を示す図である。
【図6】本発明の線輪部品の比透磁率によるインダクタンスの変化を示す図である。
【図7】本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【図8】本発明の線輪部品の通電による温度上昇を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、コイルが巻かれた軟磁性コアを備えるインダクタンス素子を複数積み重ね、少なくとも一つのインダクタンス素子におけるコイルに通電することで軟磁性コア内に発生する磁束の向きを、隣接するインダクタンス素子で互いに逆向きとなるよう構成する線輪部品により実施することが出来る。
【0019】
すなわち、コイルの内側と外側で、磁束の向きはコイルの巻き軸に沿ってはいるが、互いに逆方向となる。一方、コイルが巻かれた軟磁性コアをインダクタンス素子として、本発明ではそのインダクタンス素子を積み重ねている。
【0020】
また、その中のインダクタンス素子のコイルに通電したとき、コイル内側の軟磁性コア内部の磁束の向きと、コイル外側にあたる上層または下層に隣接するインダクタンス素子における軟磁性コア内部の磁束の向きが、互いに反対方向であれば、コイル外側に誘起された磁束の向きと隣接する軟磁性コア内部の磁束の向きは一致するため、インダクタンス素子を積み重ねることにより起こる、隣接するインダクタンス素子間の磁束の干渉によるインダクタンス特性の低下を防ぐことができる。
【0021】
また本発明は、少なくとも一つのインダクタンス素子におけるコイルの導線は、隣接するインダクタンス素子における導線と接している線輪部品としてもよい。
【0022】
導線同士が接するようインダクタンス素子を積み重ねると、隣接するインダクタンス素子間の位置ずれを防ぐことができるため、見栄えがよく、隣接するインダクタンス素子間の磁気的な相互作用もばらつかないことから、インダクタンス特性ばらつきも少なくすることができる。
【0023】
また本発明は、少なくとも一つのインダクタンス素子における導線を取り囲むよう軟磁性体が配されている線輪部品としてもよい。
【0024】
例えば、インダクタンス素子間の隙間に磁性粉と結合剤を主成分として含有する複合磁性体を充填させれば、導線の近傍に軟磁性体を配置させることができ、インダクタンス等の磁気的な特性が向上する。また、軟磁性体により導線を取り囲むことで、導線で発生した熱が軟磁性コアに逃げ易くなる。もちろん、軟磁性コアの形状を変えて、導線の近傍に軟磁性体を配置させる構成としても良い。
【0025】
また本発明は、互いに隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアが対向する対面部には各々溝が設けられ、対面部の溝の位置は互いに一致していて、溝によって形成された空間には互いに隣接する導線の双方が収容され、対面部の少なくとも一部は面接触している線輪部品としてもよい。
【0026】
軟磁性コア表面の一部である対面部に溝を設け、溝の中に導線を収容することで導線と軟磁性コアが近接している部分が増えるため、導線で発生した熱が軟磁性コアに逃げ易くなる。また、一方の軟磁性コア表面の溝に他方の軟磁性コアの導線を収容すれば、互いに隣接する軟磁性コア間の位置ずれを防ぐことが出来る。
【0027】
さらに、隣接する軟磁性コア表面のいずれにも溝が設けられていて、双方の溝の位置を合わせれば、導線の高さの半分の溝でも導線を収容できるため、軟磁性コアが線輪部品全体に占める体積比率を高くし、高い特性を得ることができる。
【0028】
更に、本発明による線輪部品は、溝部の深さを導体の太さより大きくしても良い。こうする事により、トロイダルコアの内周円または外周円の中心軸方向に同軸に複数個配置する際に、トロイダルコアの各々の隣り合う平面を接するように置いて面接触させて配置させる事が容易になる。
【0029】
また本発明は、軟磁性コアは対面部に接する側面まで溝が延長され、対面部における溝の底部と側面における溝の底部の接続部位は、平面か、連続した曲面で構成した線輪部品としてもよい。
【0030】
溝の底を滑らかな面のみで構成したり、溝の底の突き出た箇所を面取りすることで、導線と軟磁性コアが近接している部分が増えるため、導線で発生した熱が軟磁性コアに逃げ易くなる。
【0031】
また本発明は、軟磁性コアが閉磁路を構成している線輪部品としてもよい。閉磁路を構成した軟磁性コアであれば、上下層で互いに隣接するインダクタンス素子の導線同士を接するように積み重ねたり、一方の溝に他方の導線を収容させると、積層面内の全方向の位置決めが可能となる。
【0032】
また本発明は、軟磁性コアは磁気ギャップを有し、軟磁性コアに発生する磁束は、コイルの巻き軸及び磁気ギャップにおける巻き軸の延長線に沿い、磁気ギャップ端部は隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアと対面している線輪部品としてもよい。
【0033】
例えば、トロイダルコアの1箇所のみに磁気ギャップを設けたC字状コアにする場合などが該当する。また、磁気ギャップより漏洩する磁束は、隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアに入り込むため、線輪部品からの漏洩磁束が抑制される。
【0034】
また本発明は、軟磁性コアは円環状の形状を有するトロイダルコアであり、軟磁性コアは複数の磁気ギャップを有し、磁気ギャップは、トロイダルコアの円周の中心軸に関して回転対称となるように設けられている線輪部品としてもよい。
【0035】
磁気ギャップが均等に分散されることで、磁気ギャップから生じる漏洩磁束が分散するほか、磁気ギャップによって分断された軟磁性コア間に働く磁力によって生じる騒音を分散させることもできる。
【0036】
軟磁性コアの材料としては、積層珪素鋼板または、MnZn系フェライトやNiZn系フェライト、金属系の軟磁性材料から成る磁性粉末に絶縁処理を施して圧縮成形した軟磁性圧粉体等が考えられる。
【0037】
金属系の軟磁性圧粉体を用いる場合は、圧縮成形する為の金型に予め凸部を形成しておけば、溝部を容易に形成する事が出来、好適に該トロイダルコアを作成出来る。
【0038】
また、軟磁性圧粉体を構成する磁性体粉末は軟磁性粉末、詳しくは、Fe系の軟磁性体粉末であることが好ましく、透磁率の高い軟磁性体粉末、具体的にはFe−Si系粉末、Fe−Si−Al系粉末、Fe−Ni系粉末、及びFe系アモルファス粉末からなる群から選択された粉末が用いられる事がより好ましい。
【0039】
また、軟磁性コアの比透磁率が70以上であれば、磁束が軟磁性コア内に集中し、隣接するインダクタンス素子間の磁束の干渉が抑制されるため、本発明の効果がより好適に享受される。
【0040】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態の線輪部品について、図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。本発明の第1の実施の形態に係る線輪部品100は、少なくとも2つのトロイダルコア101、102と、巻線部103、104とを構成要素としたものである。トロイダルコア101、102は、各々に少なくとも1つの磁気ギャップ105、106が設けられており、且つ、トロイダルコアの平面部には少なくとも1つの放射状の溝部107、108を具備している。溝部107、108の深さは、巻線部103、104を構成する導体の太さより大きい。加えて、溝部107、108の底部の両端には各々面取り形状の面取り部107a、108aが設けられている。
【0041】
また、磁気ギャップ105、106は、トロイダルコア101、102の中心軸を含む平面全体に渡って設けられるのが好適であるが、1部分のみであってもよい。更に、磁気ギャップ105、106は、中心軸方向より見た平面視で、中心軸に対して回転対称となるように配置されていても良い。
【0042】
インダクタンス値を調整したり、巻線部103、104への直流重畳電流などによりトロイダルコア101、102が磁気飽和しにくくするために磁気ギャップを設けることがある。この場合、巻線部103、104に通電した際に磁気ギャップから生じる漏洩磁束が他方のトロイダルコア中を通ることで、相互インダクタンスが生じる。すなわち、磁気ギャップから生じる漏洩磁束はトロイダルコア101とトロイダルコア102の間を循環するため、線輪部品外部への磁束の漏洩を抑制することができる。
【0043】
巻線部103、104は、上記トロイダルコア101、102の溝部107、108に絶縁被覆導体を少なくとも1回巻回してなる巻線部で、トロイダルコア101、102は、各々の隣り合う平面が接し、中心軸が一致するよう積み重ねられ、中空円筒状の放熱部材109内に設置されている。放熱部材109には通し溝状の線材引出口110、111が設けてあり、ここから巻線部103の巻き始め部112及び巻き終わり部113と、巻線部104の巻き始め部114及び巻き終わり部115が引出され、図中不記載の端子台などを用いて112乃至115が結線され、巻線部103及び104が直列もしくは並列に接続されて線輪部品100が構成される。巻線部103、104は、流れる電流の方向が互いに逆向きになるように接続すると、トロイダルコア101及び102に生じる磁束120及び121を互いに逆向きになるように構成出来るために好ましい。巻線部103、104に流れる電流の方向は、112乃至115の結線の組み合わせと、巻線部103、104の巻回方向により任意に定められる。
【0044】
更に、中空円筒状の放熱部材109とトロイダルコア101及び102との間に、例えば窒化アルミ等から成る高伝熱性フィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、本発明の第1の実施の形態の線輪部品100を構成する。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態の線輪部品について、図4に基づいて説明する。
【0046】
図4は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【0047】
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る線輪部品300は、少なくとも2つのトロイダルコア301及び302と、巻線部303及び304とを構成要素としたものである。トロイダルコア301及び302は、各々に少なくとも2つの磁気ギャップ305、306が設けられており、且つ、トロイダルコアの平面部には少なくとも1つの放射状の溝部307、308を具備している。溝部307、308の深さは、巻線部303及び304を構成する導体の太さの半分以上且つ導体の太さ以下である。また、溝部307、308の幅は導体の太さの2倍以上である事が好ましい。加えて、磁気ギャップ305、306は、トロイダルコア301及び302の中心軸を含む平面の全体に渡って設けられるのが好適であるが、1部分に対して設けられるものであってもよい。
【0048】
更に、磁気ギャップ305、306は、中心軸方向より見た平面視で、中心軸に対して回転対称となるように配置されていても良い。このような磁気ギャップの配置により、巻線部303及び304に通電した際に磁気ギャップから生じる漏洩磁束も分散し、巻線部に通電した際に磁気ギャップの磁力による生じるうなり、すなわちトロイダルコアの振動や騒音も低減できる。
【0049】
巻線部303、304は、上記トロイダルコアの溝部に絶縁被覆導体を少なくとも1回巻回してなる巻線部で、トロイダルコア301及び302は、中心軸が一致し、各々の隣り合う平面が接するよう積み重ねられ、中空円筒状の放熱部材309に内包されている。放熱部材309には通し溝状の線材引出口310及び311が設けてあり、ここから巻線部303の巻き始め部312及び巻き終わり部313と、巻線部304の巻き始め部314及び巻き終わり部315が引出され、図中不記載の端子台などを用いて312乃至315が結線され巻線部303及び304が直列もしくは並列に接続されて線輪部品300が構成される。巻線部303、304は、流れる電流の方向が互いに逆向きになるように接続するとトロイダルコア301及び302に生じる磁束320及び321を互いに逆向きになるように構成出来るために好ましい。巻線部303、304に流れる電流の方向は、312乃至315の結線の組み合わせと、巻線部303、304の巻回方向により任意に定められる。
【0050】
更に、中空円筒状の放熱部材309とトロイダルコア301及び302との間に、例えば窒化アルミ等から成る高伝熱性フィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、本発明の第3の実施の形態の線輪部品300を構成する。
【0051】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態の線輪部品について、図7に基づいて説明する。
【0052】
図7は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【0053】
本発明の第3の実施の形態に係る線輪部品500は、少なくとも2つのトロイダルコア501及び502と、巻線部503及び504とを構成要素としたものである。トロイダルコア501及び502は、平面部には少なくとも1つの放射状の溝部507、508を具備しており、溝部507、508はトロイダルコアの外周面まで切欠き部507b及び508bとして延長され、溝部の底部と切り欠き部とはスムーズな曲面で接続されている。溝部507、508の両端部以外での溝の深さは、巻線部503及び504を構成する導体の太さより大きくとも良いし、導体の太さの半分以上且つ導体の太さ以下であって、且つ溝部の幅は導体の太さの2倍以上であっても良い。
【0054】
巻線部503、504は、上記トロイダルコアの溝部に絶縁被覆導体を少なくとも1回巻回してなる巻線部で、トロイダルコア501及び502は、中心軸が一致し、各々の隣り合う平面が接するよう積み重ねられ、中空円筒状の放熱部材509に内包されている。放熱部材509には通し溝状の線材引出口510及び511が設けてあり、ここから巻線部503の巻き始め部512及び巻き終わり部513と、巻線部504の巻き始め部514及び巻き終わり部515が引出され、図中不記載の端子台などを用いて512乃至515が結線され、巻線部503及び504が直列もしくは並列に接続されて線輪部品500が構成される。巻線部503、504に流れる電流の方向は、512乃至515の結線の組み合わせと、巻線部503、504の巻回方向により任意に定められる。
【0055】
更に、放熱部材509とトロイダルコア501及び502との間に、例えば窒化アルミ等から成る高伝熱性フィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、本発明の第3の実施の形態の線輪部品500を構成する。
【0056】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態の線輪部品について、図9に基づいて説明する。
【0057】
図9は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【0058】
本発明の第4の実施の形態に係る線輪部品600は、少なくとも2つのトロイダルコア601及び602と、巻線部603及び604とを構成要素としたものである。トロイダルコア601及び602は、各々内部コア601a及び602aと、外部コア601b、601c及び602b、602cとを備えている。内部コア601a及び602aと、外部コア601b、601c及び602b、602cには、各々に少なくとも1つの磁気ギャップ605a及び606a、605c及び606cとが設けられている。内部コア601a及び602aの平面部には少なくとも1つの放射状の溝部607a、608aを具備しており、溝部607a、608aはトロイダルコアの外周面まで切欠き部607b及び608bとして延長され、溝部の底部と切り欠き部とはスムーズな曲面で接続されている。溝部607a、608aの両端部以外での溝の深さは、巻線部603及び604を構成する導体の太さより大きい。
【0059】
外部コア601b、601c及び602b、602cは、各々内部コア601a及び602a表面と接するよう配置されている。外部コア601b、601c及び602b、602c表面であって、内部コア601a及び602aと接する面に対向する面には少なくとも1つの放射状の溝部607c、608cを具備しており、溝部607c、608cはトロイダルコアの外周面まで切欠き部607d及び608dとして延長され、溝部の底部と切り欠き部とはスムーズな曲面で接続されている。
【0060】
溝部607c、608cの両端部以外での溝の深さは、巻線部603及び604を構成する導体の太さより大きくとも良いし、外部コア601b、601cの溝部と外部コア602b、602cの溝部が対向する場合には、導体の太さの半分以上且つ導体の太さ以下であって、且つ溝部の幅は導体の太さの2倍以上であっても良い。
【0061】
巻線部603、604は、上記トロイダルコアの溝部に絶縁被覆導体を少なくとも1回巻回してなる巻線部で、各々内部コア601a及び602aの溝部607a、608aに絶縁被覆導体を巻き回し、溝部が設けられた内部コア601a及び602a表面に各々接するよう外部コア601b、601c及び602b、602cを配置し、外部コアの溝部607c、608cに同様に絶縁被覆導体を巻き回してなる。トロイダルコア601及び602は、中心軸が一致し、対向する互いの表面が接するよう積み重ねられ、中空円筒状の放熱部材609内に設置されている。
【0062】
放熱部材609には通し溝状の線材引出口610及び611が設けてあり、ここから巻線部603の巻き始め部612及び巻き終わり部613と、巻線部604の 巻き始め部614及び巻き終わり部615が引出され、図示しない端子台などを用いて612乃至615が結線され、巻線部603及び604が直列もしくは並列に接続されて線輪部品600が構成される。巻線部603、604に流れる電流の方向は、612乃至615の結線の組み合わせと、巻線部603、604の巻回方向により任意に定められる。
【0063】
更に、放熱部材609とトロイダルコア601及び602との間に、例えば窒化アルミ等から成る高伝熱性フィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、本発明の第4の実施の形態の線輪部品600を構成する。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
以下、上述した本発明の第1の実施の形態の線輪部品の実施例について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。線輪部品100を構成するトロイダルコア101及び102は、軟磁性材料の圧粉体からなるものであり、外径が50mm、内径が24mm、高さが20mmであって、平面部に、幅が2.6mm、深さが2.6mmの溝部107及び108を各面に対し12本ずつ有しており、且つ溝部107及び108の底部の両端には各々5mm深さの面取り形状の面取り部107a及び108bが設けられている。
【0065】
また、中心軸の1断面において幅が5.0mmの磁気ギャップ105、106を各々1つ有しており、磁気ギャップ105、106はトロイダルコアの中心軸方向から見て回転対称となる位置に配置されている。トロイダルコア101及び102は、中心軸が一致するよう配置され、各々の隣り合う平面が接している。巻線部103、104は直径2.5mmの絶縁被覆銅線を溝部107及び107に巻き回してなり、その巻回方向は互いに逆方向である。
【0066】
これらは厚さ3mmの円筒状のアルミケースからなる放熱部材109に格納されている。中空円筒状の放熱部材109には通し溝状の線材引出口110及び111が設けてあり、ここから巻線部103の巻き始め部112及び巻き終わり部113と、巻線部104の巻き始め部114及び巻き終わり部115が引出され、巻き始め部113と巻き終わり部114との間が導電接続されており、巻線部103、104が直列に接続されている。このように接続される事により、トロイダルコア101及び102には互いに逆向きの磁束を生じさせることが出来る。更に、放熱部材109とトロイダルコア101及び102との間に、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、線輪部品100を構成した。
【0067】
なお、トロイダルコア101及び102は、水アトマイズ法にて作製された、重量比率でBalFe−6.5%Si−6.0%Crで表される、平均粒径20μmのFe−Si−Cr基合金粉末を、ビーズミルにて2時間粉砕し扁平化した扁平粉を、大気中で600℃1時間熱処理して粉末表面に絶縁層を形成し、熱硬化性樹脂5.0重量%と混練し、乾燥、ライカイし平均粒径150μmの造粒粉とした。次に、金型中へ造粒粉を充填し、700MPaで加圧成形した後、150℃で熱硬化させて作製した。その後、溝部107及び108及び磁気ギャップ105、106は切削加工により作製し、バリ取りを行って本実施例のトロイダルコア101及び102とした。
【0068】
(実施例2)
以下、上述した本発明の第1の実施の形態の線輪部品のもう1つの実施例について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。この実施例2に示した線輪部品200は、磁気ギャップ105、106の位置及び巻線部103、104の巻回方向及び巻き始め部112、114と巻き終わり部113、115との接続の仕方が異なる点で実施例1と相違し、他の構成は実施例1と同様である。
【0069】
磁気ギャップ105、106はトロイダルコアの中心軸方向から見て重なる位置に配置されており、巻線部103、104の巻回方向は互いに同じ方向である。巻線部103、104の巻回方向は互いに同じ方向であり、巻線部103の巻き始め部112及び巻き終わり部113と、巻線部104の巻き始め部114及び巻き終わり部115は、巻き終わり部113と巻き終わり部115とが短絡されており、巻線部103、104が直列に接続されて線輪部品200が構成されている。このように接続される事により、トロイダルコア101及び102には互いに逆向きの磁束120及び121を生じさせることが出来る。
【0070】
以上に述べたような構成とすることにより、例えばハイブリッド自動車等の昇圧回路に用いられる線輪部品において、従来技術によるリアクトルコアに比べてボビンや平角線を用いなくともよい、小型の線輪部品を実現できる。
【0071】
(実施例3)
以下、上述した本発明の第2の実施の形態の線輪部品の実施例について図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。
【0072】
線輪部品300を構成するトロイダルコア301及び302は、軟磁性材料の圧粉体からなるものであり、外径が50mm、内径が24mm、高さが20mmであって、平面部に、幅が5.2mm、深さが1.3mmの溝部307及び308を各面に対し12本ずつ有している。また、中心軸と直交する断面において幅が2.5mmの磁気ギャップ305、306を各々2つ有しており、且つ磁気ギャップ305、306は各々トロイダルコアの中心軸方向から見て回転対称となる位置に配置されている。トロイダルコア301及び302は、磁気ギャップ305と磁気ギャップ306とが各々トロイダルコアの中心軸方向から見て回転対称となるように同軸に配置され、且つ各々の隣り合う平面が接している。巻線部303、304は直径2.5mmの絶縁被覆銅線を溝部307及び308に巻き回してなり、その巻回方向は互いに同じ方向である。
【0073】
これらは厚さ3mmの円筒状のアルミケースからなる放熱部材309に格納されている。中空円筒状の放熱部材309には通し溝状の線材引出口310及び311が設けてあり、ここから巻線部303の巻き始め部312及び巻き終わり部313と、巻線部304の巻き始め部314及び巻き終わり部315が引出され、巻き終わり部313と巻き始め部314とが短絡されており、巻線部303、304が直列に接続されている。このように接続される事により、トロイダルコア301及び302には互いに同じ向きの磁束を生じさせることが出来る。更に、放熱部材309とトロイダルコア301及び302との間に、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、線輪部品300を構成した。
【0074】
なお、トロイダルコア301及び302を構成する材料は、実施例1及び実施例2で用いたものと同様であるが、平均粒径150μmの造粒粉としたものを、金型内面部が半円状であり且つプレス面に放射状の凸部を有する金型中に充填し加圧成形する事で溝部307、308及び磁気ギャップ305、306を形成した。その後、150℃で熱硬化し、バリ取りを行った後、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物を硬化させた磁気ギャップ材を磁気ギャップ305、306に配置し、接着固定する事により本実施例のトロイダルコア301及び302を作成した。
【0075】
(実施例4)
以下、上述した本発明の第2の実施の形態の線輪部品のもう1つの実施例について図4を参照しながら説明する。この実施例4は、トロイダルコア301、302を構成する磁性材料の比透磁率が異なる点で実施例3と相違し、他の構成は実施例3と同様である。
【0076】
水アトマイズ法にて作製された、重量比率でBalFe−6.5%Si−6.0%Crで表される、平均粒径20μmのFe−Si−Cr基合金粉末を、ビーズミルにて2時間粉砕し扁平化した扁平粉を、大気中で600℃1時間熱処理して粉末表面に絶縁層を形成し、熱硬化性樹脂5.0重量%と混練し、乾燥、ライカイし平均粒径150μmの造粒粉とした。造粒粉に対して、平均粒径50μmの窒化ホウ素粉末を、ビーズミルにて1.5時間粉砕し扁平化した扁平粉を、重量比率で0〜10%混合し、結合剤としてこれら粉末にシリコーン樹脂を重量比率で3%混合した混練物を用い、実施例3に示したものと同様の方法でトロイダルコア301、302を作成し、線輪部品を構成した。
【0077】
(実施例5)
以下、上述した本発明の第3の実施の形態の線輪部品の実施例について図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。線輪部品500を構成するトロイダルコア501及び502は、実施例1乃至3に用いたものと同じ軟磁性材料の圧粉体からなり、プレス面に放射状の凸部を有する金型中に充填し700MPaで加圧成形する事で溝部507、508を形成した後、150℃で熱硬化して作成している。
【0078】
トロイダルコア501及び502は、外径が50mm、内径が24mm、高さが20mmであって、平面部に、幅が2.6mm、深さが2.6mmの溝部507及び508を各面に対し12本ずつ有しており、加えて、溝部507、508の底部の両端には各々フィレット状の切欠き部507b及び508bが設けられている。また、トロイダルコア501及び502は、同軸に配置され、各々の隣り合う平面が接している。巻線部503、504は直径2.5mmの絶縁被覆銅線を溝部507及び508に巻き回してなり、その巻回方向は互いに逆方向である。
【0079】
これらは厚さ3mmの中空円筒状のアルミケースからなる放熱部材509に格納されている。放熱部材509には通し溝状の線材引出口510及び511が設けてあり、ここから巻線部503の巻き始め部512及び巻き終わり部513と、巻線部504の巻き始め部514及び巻き終わり部515が引出され、巻き終わり部513と巻き始め部514とが短絡されており、巻線部503、504が直列に接続されている。このように接続される事により、トロイダルコア501及び502には互いに逆向きの磁束を生じさせることが出来る。更に、放熱部材509とトロイダルコア501及び502との間に、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図中不記載の高伝熱性樹脂を充填して、線輪部品500を構成した。
【0080】
(実施例6)
以下、上述した本発明の第4の実施の形態の線輪部品の実施例について図9を参照しながら説明する。図9は、本発明の一実施の形態を示す、線輪部品の部分破砕斜視図である。線輪部品600を構成するトロイダルコア601及び602は、実施例1乃至3に用いたものと同じ軟磁性材料の圧粉体からなる、内部コア601a及び602aと、対向する表面が接するよう配置された外部コア601b、601c及び602b、602cとを具備する。
【0081】
内部コア及び外部コアは、プレス面に放射状の凸部を有する金型中に充填し700MPaで加圧成形する事で各々溝部607a、608aと、607c、608cとを形成した後、150℃で熱硬化し、バリ取りを行った後、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物を硬化させた非磁性の磁気ギャップ材を磁気ギャップ605a及び606aと、605c及び606cとに各々配置し、接着固定する事により本実施例の内部コア601a、602a及び外部コア601b、601c、602b、602cとを作成した。
【0082】
内部コア601a及び602aは、各々外径が50mm、内径が24mm、高さが20mmであって、平面部に、幅が2.6mm、深さが2.6mmの溝部607a及び608aを各面に対し12本ずつ有しており、加えて、溝部607a及び608aの底部の両端には各々フィレット状の切欠き部607b及び608bが設けられている。
【0083】
また、外部コア601b、601c及び602b、602cは、各々外径が50mm、内径が24mm、高さが10mmであって、内部コア601a及び602aと接する平面の反対側の平面部に、幅が2.6mm、深さが2.6mmの溝部607c、608cを各面に対し12本ずつ有しており、加えて、溝部607c、608cの底部の両端には各々フィレット状の切欠き部607d及び608dが設けられている。トロイダルコア601及び602は、同軸に配置され、各々の隣り合う平面が接している。巻線部603、604は直径2.5mmの絶縁被覆銅線を各々溝部607a、607c及び608a、608cとに巻き回してなり、その巻回方向は互いに逆方向である。
【0084】
また、中心軸の1断面において幅が5.0mmの磁気ギャップ605a及び606aと、605c及び606cとを各々1つ有しており、これらはトロイダルコアの中心軸方向から見て重なる位置に配置されている。トロイダルコア601及び602は、中心軸が一致するよう配置され、各々の隣り合う平面が接している。巻線部603、604は直径2.5mmの絶縁被覆銅線を各々溝部607a、608aと、607c、608cとに巻き回してなり、その巻回方向は互いに逆方向である。
【0085】
これらは厚さ3mmの中空円筒状のアルミケースからなる放熱部材609に格納されている。放熱部材609には通し溝状の線材引出口610及び611が設けてあり、ここから巻線部603の巻き始め部612及び巻き終わり部613と、巻線部604の巻き始め部614及び巻き終わり部615が引出され、巻き終わり部613と巻き始め部614とが短絡されており、巻線部603、604が直列に接続されている。このように接続される事により、トロイダルコア601及び602には互いに逆向きの磁束を生じさせることが出来る。更に、放熱部材609とトロイダルコア601及び602との間に、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物から成る、図示しない高伝熱性樹脂を充填して、線輪部品600を構成した。
【0086】
以上に述べたような構成とすることにより、例えばハイブリッド自動車等の昇圧回路に用いられる線輪部品において、トロイダルコアの溝部に配した巻線の巻数を増加させることが出来るため、インダクタンスを向上させることが可能な線輪部品を実現できる。
【0087】
(実験による比較)
以下、上述した本発明の第1の実施の形態の実施例1及び実施例2に示した線輪部品の実験例について、図1、図2、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の線輪部品の直流重畳特性を示す図である。図3には、本発明の第1の実施の形態の実施例1及び実施例2に示した線輪部品の直流重畳特性を示している。
【0088】
また、比較のための線輪部品として、円筒状のトロイダルコアに巻線部を巻回して構成したトロイダルコイルと放熱部材とからなる従来の線輪部品を用いた。なお、トロイダルコアは、外径が50mm、内径が24mm、厚さが17.5mmのコアを2個同軸に配置し、各々の隣り合う平面が接するようにした、外径が50mm、内径が24mm、高さが35mmのトロイダルコアであり、実施例1及び2に示した線輪部品と巻線部を含む高さが同じになるようにしたものである。
【0089】
比較例のトロイダルコアは、中心軸に垂直な断面において幅が5.0mmの磁気ギャップ各々1つ有し、磁気ギャップはトロイダルコアの中心軸方向から見て重なる位置に配置されているが、平面部に溝部は設けていない。これに直径2.5mmの絶縁被覆銅線を12ターン巻き回し、実施例と同様の放熱部材に格納し、放熱部材とトロイダルコアとの間に、これも同様に高伝熱性樹脂を充填して、比較例の線輪部品を構成し、直流電源とLCRメータとを用いて実施例1及び実施例2、比較例に示した線輪部品の各々の直流重畳特性を計測して比較した。
【0090】
図3において、実線で示したものは、本発明の第1の実施の形態の実施例1及び実施例2で示した線輪部品100、200を用いた場合の実験結果である。また破線で示したものは、比較例の線輪部品を用いた場合の実験結果である。
【0091】
図3に示すように、本発明の線輪部品100、200は、比較例の線輪部品に比べ、インダクタンスの値が大きくなることが実験により明らかとなった。すなわち、中心軸方向に直交する平行な2平面を有する円環状の磁気ギャップ付きトロイダルコアを備え、トロイダルコアは2平面に径方向に少なくとも1つの溝部を有し、該トロイダルコアの外周に溝部を介して導体を巻回してなる巻線部を有する線輪部品を、トロイダルコアの中心軸方向に同軸に複数個配置し、且つトロイダルコアの中心軸方向より見た平面視で磁気ギャップの位置が回転対称となるように分散して配置し、且つトロイダルコアの各々の隣り合う平面が接するよう構成することで、従来に比べインダクタンスの大きな線輪部品を得ることができた。
【0092】
以下、上述した本発明の第2の実施の形態の実施例3に示した線輪部品の実験例について、図4、図5を参照しながら説明する。
【0093】
図5は、本発明の線輪部品の発生応力の変化を示す図である。図5では、本発明の第2の実施の形態の実施例3に示した線輪部品の通電による発生応力の変化を示している。
【0094】
また、比較のための線輪部品として、円筒状のトロイダルコアに巻線部を巻回して構成したトロイダルコイルと放熱部材とからなる従来の線輪部品を例として用いた。なお、トロイダルコアは、外径が50mm、内径が24mm、厚さが19mmのコアを2個同軸に配置し、各々の隣り合う平面が接するようにした、外径が50mm、内径が24mm、高さが38mmのトロイダルコアであり、実施例3に示した線輪部品と巻線部を含む高さが同じになるようにしたものである。比較例のトロイダルコアは、中心軸に直交する断面において、切削加工により形成された、幅が2.5mmの磁気ギャップを各々2つ有しており、磁気ギャップは各々トロイダルコアの中心軸方向から見て重なる位置に配置されており、平面部に溝部は設けていない。
【0095】
磁気ギャップ加工後、窒化アルミから成るフィラーとエポキシ樹脂等との混練物を硬化させた磁気ギャップ材を介して、接着固定する事により本比較例のトロイダルコアと為し、これに直径2.5mmの絶縁被覆銅線を12ターン巻き回し、実施例と同様の放熱部材に格納し、放熱部材とトロイダルコアとの間に、これも同様に高伝熱性樹脂を充填して、比較例の線輪部品を構成した。更に、各々の放熱部材の外周部で、線材引出口の反対側となるところに歪みゲージを貼付し、巻線部に10kHzの交流電流を通電して実施例3及び比較例に示した線輪部品の各々の発生応力の変化を計測して比較した。
【0096】
図5において、実線で示したものが、本発明の線輪部品300を用いた場合の実験結果である。また破線で示したものが、比較例の線輪部品を用いた場合の実験結果である。
【0097】
図5に示すように、本発明の線輪部品300は、発生応力の値が小さくなることが実験により明らかとなった。すなわち、中心軸方向に直交する平行な2平面を有する円環状の磁気ギャップ付きトロイダルコアを備え、トロイダルコアは2平面に径方向に少なくとも1つの溝部を有し、該トロイダルコアの外周に溝部を介して導体を巻回してなる巻線部を有する線輪部品を、トロイダルコアの中心軸が一致するよう複数個配置し、且つトロイダルコアの中心軸方向より見た平面視で磁気ギャップの位置が回転対称となるように分散して配置し、且つトロイダルコアの各々の隣り合う平面が接するよう構成することで、従来に比べ応力に起因するうなりの発生を低減することができる。
【0098】
以下、上述した本発明の第2の実施の形態の実施例4に示した線輪部品の実験例について、図6を参照しながら説明する。
【0099】
図6は、本発明の線輪部品の比透磁率によるインダクタンスの変化を示す図である。図6では、本発明の第1の実施の形態の実施例4に示した線輪部品のインダクタンスと磁性材料の比透磁率との関係を示している。
【0100】
実施例4に示した磁性材料の比透磁率を調べる為に、同じ材料で外径20mm、内径10mm、高さ8mmのトロイダルコアを同様の方法で作成した。また、比較のための線輪部品として、実施例3で用いた比較例を用い、LCRメータを用いて実施例4及び比較例に示した線輪部品の各々のインダクタンスを計測して比較した。
【0101】
図6において、実線で示したものは、実施例4に示した本発明の線輪部品を用いた場合の実験結果である。また破線で示したものは、比較例の線輪部品を用いた場合の実験結果である。
【0102】
図6に示すように、本発明の線輪部品は、比較例の線輪部品に比べ、磁性材料の非透磁率が70以上の場合にインダクタンスの値が大きくなることが実験により明らかとなった。すなわち、非透磁率が70以上の磁性材料を本発明の線輪部品に用いる事によって、従来に比べインダクタンスの大きな線輪部品を得ることができた。
【0103】
以下、上述した本発明の第3の実施の形態の実施例5に示した線輪部品の実験例について、図7、図8を参照しながら説明する。
【0104】
図8は、本発明の線輪部品の通電による温度上昇を示す図である。図8では、本発明の第2の実施の形態の実施例5に示した線輪部品の通電による温度上昇を示している。
【0105】
また、比較のための線輪部品として、円筒状のトロイダルコアに巻線部を巻回して構成したトロイダルコイルと放熱部材とからなる従来の線輪部品を例として用いた。なお、トロイダルコアは、外径が50mm、内径が24mm、厚さが17.5mmのコアを2個同軸に配置し、各々の隣り合う平面が接するようにした、外径が50mm、内径が24mm、高さが35mmの円筒状のトロイダルコアであり、実施例5に示した線輪部品と巻線部を含む高さが同じになるようにしたものである。
【0106】
これに直径2.5mmの絶縁被覆銅線を12ターン巻き回し、実施例と同様の放熱部材に格納し、放熱部材とトロイダルコアとの間に、これも同様に高伝熱性樹脂を充填して、比較例の線輪部品を構成した。LCRメータにて実施例及び比較例の各々の線輪部品のインダクタンスを測定したところ、両者は同等であった。更に、各々の放熱部材の外周部で、線材引出口の反対側となるところに測温抵抗体を貼付し、25℃の恒温水が循環するヒートシンク上に設置した後、巻線部に10kHzの交流電流を通電して実施例5及び比較例に示した線輪部品の各々の温度上昇を計測して比較した。
【0107】
図8において、実線で示したものが、本発明の線輪部品500を用いた場合の実験結果である。また破線で示したものが、比較例の線輪部品を用いた場合の実験結果である。
【0108】
図8に示すように、本発明の線輪部品500は、温度上昇の値が小さくなることが実験により明らかとなった。すなわち、中心軸方向に直交する平行な2平面を有する円環状のトロイダルコアを備え、トロイダルコアは2平面に径方向に少なくとも1つの溝部を有し、該トロイダルコアの外周に溝部を介して導体を巻回してなる巻線部を有する線輪部品を、トロイダルコアの中心軸が一致するよう複数個積み重ね、且つトロイダルコアの各々の隣り合う平面が接するよう構成することで、従来に比べ巻線部及びトロイダルコアと放熱部材との伝熱距離が短くなり、温度上昇を低減することができた。
【0109】
以上、実施例を用いて、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明による線輪部品は、ハイブリッド車あるいは電気自動車の駆動用モータ、もしくは電源回路等のチョークコイルに用いるリアクトルに利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
100、200、300、500、600 線輪部品
101、102、301、302、501、502、601、602 トロイダルコア
103、104、303、304、503、504、603、604 巻線部
105、106、305、306、605a、605c、606a、606c 磁気ギャップ
107、108、307、308、507、508、607a、607c、608a、608c 溝部
107a、108a 面取り部
109、309、509、609 放熱部材
110、111、310、311、510、511、610、611 線材引出口
112、114、312、314、512、514、612、614 巻き始め部
113、115、313、315、513、515、613、615 巻き終わり部
120、121、320、321 磁束
507b、508b、607b、607d、608b、608d 切欠き部
601a、602a 内部コア
601b、601c、602b、602c 外部コア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻かれた軟磁性コアを備えるインダクタンス素子を複数積み重ね、少なくとも一つの前記インダクタンス素子における前記コイルに通電することで前記軟磁性コア内に発生する磁束の向きを、隣接するインダクタンス素子で互いに逆向きとなるよう構成することを特徴とする線輪部品。
【請求項2】
少なくとも一つの前記インダクタンス素子における前記コイルの導線は、隣接するインダクタンス素子における前記導線と接していることを特徴とする請求項1記載の線輪部品。
【請求項3】
少なくとも一つの前記インダクタンス素子における前記導線を取り囲むよう軟磁性体が配されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線輪部品。
【請求項4】
互いに隣接する前記インダクタンス素子における前記軟磁性コアが対向する対面部には各々溝が設けられ、前記対面部の前記溝の位置は互いに一致していて、前記溝によって形成された空間には互いに隣接する前記導線の双方が収容され、前記対面部の少なくとも一部は面接触していることを特徴とする請求項2に記載の線輪部品。
【請求項5】
前記軟磁性コアは前記対面部に接する側面まで前記溝が延長され、前記対面部における前記溝の底部と前記側面における前記溝の底部の接続部位は、平面か、連続した曲面で構成することを特徴とする請求項4に記載の線輪部品。
【請求項6】
前記軟磁性コアは閉磁路を構成していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項7】
前記軟磁性コアは磁気ギャップを有し、前記軟磁性コアに発生する前記磁束は、前記コイルの巻き軸及び前記磁気ギャップにおける前記巻き軸の延長線に沿い、前記磁気ギャップ端部は隣接するインダクタンス素子における軟磁性コアと対面していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項8】
前記軟磁性コアは円環状の形状を有するトロイダルコアであり、前記軟磁性コアは複数の磁気ギャップを有し、前記磁気ギャップは、前記トロイダルコアの円周の中心軸に関して回転対称となるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項9】
前記軟磁性コアは内部コアと外部コアを有し、
前記内部コアと前記外部コアには溝部が設けられ、
前記コイルの少なくとも一部は前記内部コアに設けられた前記溝部に収容されるよう巻かれ、
前記外部コアは前記内部コアにおける前記溝部が設けられた面の少なくとも一部と接し、
前記コイルの少なくとも一部は前記内部コアの前記溝部より前記外部コアの前記溝部へ収容されるよう連続して巻かれ前記インダクタンス素子を構成していることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の線輪部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−146949(P2012−146949A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204333(P2011−204333)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】