説明

締付作業支援装置および締付作業支援方法

【課題】作業者による締付作業の作業性を阻害することなく、締付工具の位置を正確に検出する。
【解決手段】締付部品4を回転動作によって締め付ける回転軸部2bを有する締付工具2により、ワーク3に設けられた複数の締付位置P1〜P8で締付部品4を締め付ける締付作業を支援する締付作業支援装置1であって、回転軸部2bに設けられた識別マーク5と、識別マーク5を撮像する撮像手段6と、撮像手段6の撮像結果に基づいて識別マーク5の位置を検出する位置検出手段7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付作業を支援する締付作業支援装置及び締付支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車や家電製品などの組立工程では、作業者によって、ボルトやネジ等の締付部品の締付作業が数多く行われる。この締付作業では、適切なレンチやドライバーなどの締付工具を用いて、予め決められた箇所に締付部品を締め付ける。この場合、締付部品の締め忘れ等の作業ミスが発生した場合には大きな問題を招くおそれがあることから、作業者の締付作業を支援する支援装置が併用されるのが通例である。
【0003】
この種の締付作業の支援装置としては、例えば特許文献1には、ワークの上方にカメラを設置し、このカメラで締付工具に取り付けられた発光器から発せられる光を撮像して、その映像に基づいて締付具によって締め付けが行われた位置をコンピュータによって計算する支援装置が開示されている。ここで、締付工具としては、トルクレンチが開示されており、そのトルクレンチの柄に設けられた台座に、締付工具の位置検出用の発光器が上方に向けて光を発光するように取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トルクレンチなどの締付工具は、柄などの把持部を含む工具本体の先端に、締付部品に嵌合された状態で回転動作する回転軸部(例えば、ソケットやドライバービットなど)を有する。そのため、作業者は、締付作業時に締付工具の回転軸部を締付部品に嵌合させる必要があるが、このときに、締付部品の回転軸に対して回転軸部が真っ直ぐに取り付けられずに、傾斜した状態で取り付けられてしまう場合がある。このように回転軸部が締付部品の回転軸に対して傾斜している場合であっても締付部品を正確に締め付けることは可能であるものの、工具本体が回転軸部の傾斜に伴って大きく振れ回るという事態を招く。しかも、回転軸部がその軸方向に沿って長尺である場合も多いため、工具本体の振れ回りは必然的に大きくなる傾向にある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の締付支援装置では、締付工具の位置を検出する指標となる発光器が工具本体に取り付けられていることから、上記のような振れ回りの発生の有無によって、発光器の光に基づいて検出される締付工具の位置が大きく変動することになる。その結果、発光器の光に基づいて検出された締付工具の位置が、実際の位置から大きく外れる可能性がある。特に、締付作業を行うワークに複数の締付位置が近接して設けられている場合には、実際に締付作業が行われていない締付位置に締付工具が位置していると誤検出されるおそれもあり、締付作業の支援精度を十分に確保できないという問題がある。
【0007】
また、発光器の光に基づいて締付工具の位置を検出する場合、締付作業の際に作業者の目が指向する方向に発光器が位置し、その発光器から光が発せられることになる。そのため、発光器の光が作業者の目に入るなどして、締付作業の進行に悪影響を与えるおそれもある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、作業者による締付作業の作業性を阻害することなく、締付工具の位置を正確に検出することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために創案された本発明は、締付部品を回転動作によって締め付ける回転軸部を有する締付工具により、ワークに設けられた複数の締付位置で前記締付部品を締め付ける締付作業を支援する締付作業支援装置であって、前記回転軸部に設けられた識別マークと、前記識別マークを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像結果に基づいて前記識別マークの位置を検出する位置検出手段とを備えていることに特徴づけられる。
【0010】
このような構成によれば、締付工具の位置を検出するための指標となる識別マークが、締付工具の回転軸部に設けられている。そのため、仮に締付部品に対して締付工具の回転軸部を傾斜状態で取り付けたまま、締付作業が実行されたとしても、識別マーク自体の位置が大きく変動するという事態は生じ難い。これは、回転軸部の先端部(締付部品側)を支点として締付工具全体に振れ回りが生じることから、支点に近い回転軸部自体には、支点から遠い工具本体よりも振れ回りによる移動の影響が格段に小さくなるためである。したがって、締付工具の回転軸部に取り付けられた識別マークの位置を撮像手段と位置検出手段とを用いて検出すれば、締付工具の正確な位置を検出することが可能となる。
【0011】
加えて、締付工具の位置を検出するための指標が識別マークであるので、発光器を用いた場合のように作業者の目に光が入るなどして締付作業に悪影響が生じるというおそれも生じ得ない。
【0012】
上記の構成において、前記撮像手段が、前記回転軸部の側方領域の少なくとも2方向から前記識別マークを撮像する構成であってもよい。
【0013】
すなわち、締付工具の回転軸部に識別マークを設け、この識別マークを回転軸部の側方領域の一方向のみから撮像手段で撮像する場合、締付位置の配置態様によっては、識別マークの位置を検出することが困難になる場合がある。具体的には、例えば、2つの締付位置が、回転軸部の側方領域の一方向から見た場合に同一直線上に重なっていたり、互いに近接しているときなどには、識別マークがいずれの締付位置に対応する位置に存在しているのかを判別できないおそれがある。そこで、上記の構成のように、回転軸部の側方領域の少なくとも2方向から識別マークを撮像すれば、回転軸部の側方領域の一方向からの撮像結果に、別方向から撮像結果によって奥行き方向の状態が付加されることから、各締付位置を確実に判別できるようになり、識別マークの位置検出を正確に行うことが可能となる。
【0014】
上記の構成において、前記撮像手段が、前記回転軸部の軸直角断面を含む平面に対して角度をなす傾斜方向から前記識別マークを撮像する構成であってもよい。
【0015】
このようにすれば、撮像手段が識別マークを斜めから指向することになるので、撮像手段が指向する方向の奥行きの情報も同時に得ることができる。したがって、締付位置の配置態様によらず、識別マークがいずれの締付位置に位置しているかを判別することが可能となる。なお、この場合であっても、回転軸部の側方領域の少なくとも2方向から前記識別マークを撮像するようにしても勿論よい。
【0016】
上記の構成において、前記位置検出手段が、前記締付位置で締付作業を行う際に前記識別マークが位置する予想範囲に検出エリアを予め設定し、前記検出エリア内で前記識別マークの位置を検出することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、予め識別マークの検出エリアが絞られることから、識別マークの検出精度が向上し、より正確な締付作業の支援を実現することができる。
【0018】
上記の構成において、前記識別マークが、前記回転軸部の全周に亘って環状に形成されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、回転軸部のいずれの周面が撮像手段側を向いていても、識別マークを撮像手段で正確に撮像することができるため、識別マークの検出精度を向上させることが可能となる。付言すれば、回転軸部が静止している場合に限らず、回転軸部が回転している場合であっても、連続的に識別マークを検出することができることから、実用上好ましい。
【0020】
上記の構成において、前記識別マークが、少なくとも2色以上で構成されることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、撮像手段で撮像された識別マークの画像が、少なくとも2色以上で構成されることから、識別マークの検出精度を向上されることができる。具体的には、例えば、撮像手段の撮像エリア内に存在しない色の組合せを識別マークに付与すれば、例えば作業者の手や衣服などを識別マークと誤認するという事態を可及的に低減することができる。
【0022】
上記の構成において、前記締付工具は、電動ドライバーであってもよい。
【0023】
すなわち、電動ドライバーの場合、回転軸部が長尺となることが多く、工具本体の振れ回りが大きくなり易い。そのため、回転軸部に識別マークを取り付ける本願発明の利点を最大限発揮することができる。
【0024】
上記の構成において、締付部品を回転動作によって締め付ける回転軸部を有する締付工具によって、ワークに設けられた複数の締付位置で前記締付部品を締め付ける締付作業を支援する締付作業支援方法であって、前記回転軸部に識別マークを設けた状態で、前記識別マークを撮像手段で撮像し、その撮像結果に基づいて前記識別マークの位置を検出することに特徴づけられる。
【0025】
このような方法によれば、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、締付工具の位置検出用の指標として識別マークを締付工具の回転軸部に取り付けていることから、締付工具の位置を正確に検出することができる。また、検出対象が識別マークであることから、発光器に光を検出対象として利用する場合のように、作業者の締付作業を阻害するような事態も生じ得ない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る締付作業支援装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る締付作業支援装置を示す平面図である。
【図3】(a)及び(b)は、識別マークを検出する過程を説明するための図である。
【図4】識別マークの識別データの一例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る締付作業支援装置の要部を示す側面図である。
【図6】識別マークの変形例を示す図であって、(a)は3色に色分けされた識別マークを、(b)は4色に色分けされた識別マークをそれぞれ示す。
【図7】本発明の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る締付作業支援装置の全体構成を示す概略斜視図である。この締付作業支援装置1は、作業者が締付工具2を用いて、ワーク3に設けられた複数の締付位置P1〜P8で締付部品4を締め付ける締付作業を支援するものである。なお、この実施形態では、ワーク3は、略水平な作業台(不図示)の上に載置されているものとする。
【0030】
詳細には、この締付作業支援装置1は、締付工具2の位置を検出するための識別マーク5と、この識別マーク5を撮像する撮像手段6と、撮像手段6の撮像結果に基づいて識別マークの位置を検出する位置検出手段7と、撮像手段6で撮像された画像データなどの各種データを表示するデータ表示手段8と、作業者に締付作業の異常を音声等によって知らせる報知手段(図示省略)とを備えている。
【0031】
締付工具2は、例えば電動ドライバーで構成されており、締付作業時に作業者が把持する把持部を有する工具本体2aと、工具本体2aの先端に取り付けられた回転軸部2bとを備えている。締付工具2の回転軸部2bは、各締付部品4を回転動作によって締め付ける。なお、この実施形態では締付部品4はネジで構成されており、回転軸部2bの先端が締付部品4の頭部に形成されたネジ山に嵌合する。なお、回転軸部2bは、工具本体2aに対して着脱可能となっている。締付工具2は,締付トルクを管理できるものであることが好ましい。
【0032】
識別マーク5は、締付工具2の回転軸部2bに取り付けられている。詳細には、この識別マーク5は、回転軸部2bの全周に亘って環状に形成されており、回転軸部2bの軸方向に沿って複数色に色分けされている。なお、図示例は、識別マーク5は、異なる2色(例えば、赤色と黄色で色分けされている。識別マーク5の色の組合せは、識別マーク5の検出精度を上げるために、撮像手段6の撮像エリアに存在しない色の組合せとなるようにすることが好ましい。なお、識別マーク5は、単色で構成されていても勿論よい。
【0033】
撮像手段6は、2台のカメラ6a,6bで構成されており、これら2台のカメラ6a,6bによって、締付工具2の回転軸部2bの側方領域の異なる2方向から識別マーク5を撮像する。詳細には、これら2台のカメラ6a,6bは、略水平面(回転軸部2bの軸直角断面を含む平面)において、互いの指向方向が略直角に交差するように配置されている。このようなカメラ6a,6bの配置態様は、スペース上の制約等によってワーク3の上方にカメラを取り付けることができない場合に特に有利である。なお、締付工具2の回転軸部2bの側方領域の異なる3方向以上の方向から識別マーク5を撮像するようにしてもよい。
【0034】
このように撮像手段6を2台のカメラ6a,6bから構成した理由は次の通りである。すなわち、図2に示すように、一方のカメラ(以下、第1のカメラともいう)6aのみでは、識別マーク5のy方向の位置(第1のカメラ6aの指向方向の前後位置)を検出することができない。そのため、この第1のカメラ6aによって識別マーク5のx方向の位置(第1のカメラ6aの指向方向と直交する左右位置)が、例えば「x1」と検出されたとしても、図のような締付位置の配置態様の場合、識別マーク5がいずれの締付位置P1,P2,P3に対応する位置に存在しているかを判別できない。そこで、これに加えて、他方のカメラ(以下、第2のカメラともいう)6bによって識別マーク5の図中のy方向の位置(第2のカメラ6bの指向方向の前後位置(≒第1のカメラ6aの指向方向の前後位置))を検出することで、識別マーク5がいずれの締付作業位置P1,P2,P3に対応する位置に存在しているかを判別している。
【0035】
位置検出手段7は、例えば、マウスやキーボードなどの所定の入力手段が接続されたコンピュータで構成されており、撮像手段6を構成する2台のカメラ6a,6bで撮像された画像データに基づいて、識別マーク5の位置を検出するようになっている。
詳細には、位置検出手段7は、識別データ記憶部7aと、検出エリア設定部7bと、識別データ判断部7cとを有する。識別データ記憶部7aは、識別データ記憶部7aは、締付作業前に、カメラ6a,6bで撮像した識別マーク5の画像データから、識別マーク5を示す識別データを取得して記憶すると共に、識別マーク5の検出用のテンプレートを作成する。検出エリア設定部7bは、図3(a),(b)に示すように、締付作業前に、各締付位置P1〜P8で締付作業を行う際に識別マーク5が位置する予想範囲に検出エリアA1〜A8を設定する。図3(a)に示すように、第1のカメラ6aで撮像された画像データのみでは、例えば、検出エリアA1〜A3を区別することはできないが、図3(b)に示すように、第2のカメラ6bで撮像された画像データでは、検出エリアA1〜A3はそれぞれ分離していることから、識別マーク5がいずれの検出エリアA1〜A3に位置しているかを判別することができる。識別データ判断部7cは、締付作業時に、テンプレートマッチングにより、画像データの各検出エリアA1〜A8で識別データが検出されるか否かを判断する。ここでは、識別マーク5を示す識別データとして、例えば図4に示すように、識別マーク5の色(ハッチングを付した部分)の境界部5aを含む識別マーク5の一部領域が登録されているが、識別マーク5の全領域を登録してもよい。
【0036】
次に、以上のように構成された締付作業支援装置1による締付作業の支援手順を説明する。
【0037】
この締付作業支援装置1による締付作業の支援方法は、締付作業前に行われる設定工程と、締付作業時に行われる管理工程とを含む。
【0038】
設定工程は、識別マーク5の検出エリアA1〜A8を設定するエリア設定工程と、識別マーク5を示す識別データを取得するデータ取得工程とを含む。
【0039】
エリア設定工程では、位置検出手段7を設定モードに切り替えると共に、ワーク3を締付作業時と同一位置に配置する。次に、位置検出手段7の検出エリア設定部7bによって、各締付位置P1〜P8における締付作業時に、締付工具2の回転軸部2bに取り付けられた識別マーク5が位置する予想範囲に検出エリアA1〜A8を設定する(図3(a)及び(b)を参照)。詳細には、締付工具2の回転軸部2bの先端から識別マーク5までの離間距離は予め分かっているため、締付工具2の回転軸部2bを締付部品4に真っ直ぐに嵌合させて締付作業が行われる場合には、ワーク3の各締付位置P1〜P8から上方に前記離間距離だけ離れた基準位置に識別マーク5が検出される。一方、締付工具2の回転軸部2bを締付部品4に傾斜した状態で嵌合させて締付作業が行われる場合には、回転軸部2bが僅かに振れ回ることから、識別マーク5の検出位置は前記基準位置から僅かに移動する。したがって、この識別マーク5の移動も考慮して、各締付位置P1〜P8における検出エリアA1〜A8の大きさを決定する。
【0040】
具体的には、この実施形態では、検出エリアA1〜A8の大きさを決めるパラメータを所望の検出精度に合わせて位置検出手段7に入力すると、位置検出手段7の検出エリア設定部7bが、検出エリアA1〜A8の位置と大きさを算出して検出エリアA1〜A8を設定する。また、位置検出手段7は、この検出エリアA1〜A8を示す枠をデータ表示手段8に表示させる。
【0041】
なお、この実施形態では、検出エリアA1〜A8は、正方形などの矩形枠で定義されているが、形状は特に限定されるものではなく、円形などであってもよい。また、各検出エリアA1〜A8には、その識別のために例えば通し番号等の識別番号が付けられ、各種データ処理に使用されているが、この識別番号をデータ表示手段8に表示させてもよい。
【0042】
データ取得工程では、カメラ6a,6bによって、実際に締付工具2の回転軸部2bを締付部品4に嵌合させた状態で識別マーク5を撮像し、その画像データに基づいて識別マーク5を示す識別データが取得される。詳細には、カメラ6a,6bで識別マーク5を撮像した際の画像データをデータ表示手段8に表示させ、その表示させた画像データを参照しながら画像データ内の識別マーク5を含む範囲を指定する。これにより、位置検出手段7の識別データ記憶部7aは、指定した範囲の画像データから識別マーク5を示す識別データを取得して記憶する。
【0043】
この識別マーク5の画像データの指定は、ワーク3の各締付位置P1〜P8について行ない、後述するテンプレートマッチングの際に使用する識別マーク5のテンプレートを各検出エリアA1〜A8について個別に設定する。勿論、例えば全ての検出エリアA1〜A8に対して、1つの識別マーク5の画像データを設定してもよい。位置検出手段7は、各検出エリアA1〜A8について、どの画像データが設定されたかを記憶する。
【0044】
ここで、識別データは、識別マーク5の画像データそのものであってもよいし、識別マーク5の画像データそのものでなく、画像データに基づいて得られた濃度変化カーブや、その変曲点の位置等、識別マーク5の特徴を示すデータであってもよい。また、識別マーク5の画像データは、識別マーク5のみの画像だけでもよいし、識別マーク5の周辺の画像データを含んでもよい。また、識別データは、第1のカメラ6aで撮像された結果に対して使用するものと、第2のカメラ6bで撮像された結果に対して使用するものとで、別々のデータとしてもよいし、共通のデータとしてもよい。
【0045】
なお、締付工具2を締付部品4に実際に嵌合させた際の画像データに基づいて識別マーク5を示す識別データを取得する場合を説明したが、締付工具2を締付部品4に嵌合させない状態でカメラ6a,6bで撮影した識別マーク5を含む画像データに基づいて識別マーク5を示す識別データを取得するようにしてもよい。
【0046】
以上のような設定工程を行った後、位置検出手段7を設定モードから締付作業支援モードに切り替え、管理工程を行なう。なお、本実施形態では、1つの締付部品4に対する締付工具2による締付回数は1回とする。
【0047】
この管理工程では、作業者が、ワーク3の各締付位置P1〜P8で締付工具2を用いて締付部品4の締付作業を順次行なう間、位置検出手段7は、次のような動作を行なう。すなわち、位置検出手段7の識別データ判断部7cが、カメラ6a,6bで撮影された画像データにおける各検出エリアA1〜A8に対して、その検出エリアA1〜A8用に選択された識別マーク5の識別データをテンプレートとして使用して、テンプレートマッチングを行なう。これによって、識別データ判断部7cは、各検出エリアA1〜A8に識別マーク5の識別データが検出されるか否かを判断する。そして、位置検出手段7は、検出エリアA1〜A8内で識別データが検出された場合には、その検出エリアA1〜A8を記憶する。この時に、位置検出手段7は、データ表示手段8に表示されている検出エリアA1〜A8のうち、識別データが検出されたものの表示枠を「正常終了」を表す所定の色(例えば、緑色)に変更する。
【0048】
一方、識別データが検出された検出エリアA1〜A8が、既に識別データが検出された検出エリアA1〜A8である場合には、位置検出手段7が、「締付部品の2度締め」とデータ表示手段8に表示させると共に、報知手段を作動させる。また、位置検出手段7が、データ表示手段8に表示されている対応する検出エリアA1〜A8の表示枠を「異常終了」を表す所定の色(例えば、赤)に変更する。そして、「2度締め」と判定された検出エリアA1〜A8に対応する締付位置P1〜P8において、締付部品4がオーバートルクとなっているおそれがあるため、作業者がその締付部品4を1度緩めてから締め直す。その後、作業者は、位置検出手段7に該当する締付位置における締付作業が正常に終了したことを位置検出手段7に入力し、締付作業を再開する。
【0049】
また、位置検出手段7の識別データ判断部7cは、全ての検出エリアA1〜A8で識別データが検出されたか否かを判断する。識別データ判断部7cは、全ての検出エリアA1〜A8において識別データが検出された場合には、全ての締付作業が正常に終了したと判断する。
【0050】
一方、識別データ判断部7cが、識別データが検出されていない検出エリアA1〜A8がまだ存在すると判断した場合には、所定時間内に、新たに検出エリアA1〜A8で識別データが検出されるか否かを判断する。
【0051】
所定時間内に、新たに検出エリアA1〜A8で識別データが検出された場合は、継続して作業者による締付作業が行なわれたと考えられる。したがって、再び、上述したように、識別データ判断部7cは、全ての検出エリアA1〜A8で識別データが検出されたか否かを判断する。一方、新たに検出エリアA1〜A8で識別データが検出されないで、所定時間経過する場合は、締付部品4の取り付け忘れと考えられる。したがって、この場合には、位置検出手段7が、「締付部品の取り付け忘れ」とデータ表示手段8に表示させると共に、図示しない報知手段を作動させる。この場合には、作業者が、データ表示手段8で、締付作業が未終了の検出エリアA1〜A8を確認し、その検出エリアA1〜A8に対応する締付位置P1〜P8に締付部品4を取り付けて締め付ける。その後、作業者は、位置検出手段7に該当する締付位置における締付作業が正常に終了したことを位置検出手段7に入力し、締付作業を再開する。すると、再び、上述したように、位置検出手段7は、全ての検出エリアA1〜A8で識別データが検出されたか否かを判断する。
【0052】
以上のように構成された第1の実施形態に係る支援装置1では、次のような効果を享受できる。
【0053】
支援装置1では、締付工具の位置を検出するための指標となる識別マーク5が、締付工具2の回転軸部2bに設けられている。そのため、仮に締付部品4に対して締付工具2の回転軸部2bを傾斜状態で取り付けたまま、作業者により締付作業が実行されたとしても、識別マーク5自体の位置が大きく変動するという事態は生じ難い。これは、回転軸部2bの先端部を支点として、締付工具2全体に振れ回りが生じることから、支点に近い回転軸部2b自体には、支点から遠い工具本体2aよりも振れ回りによる移動の影響が格段に小さくなる。したがって、締付工具2の回転軸部2bに取り付けられた識別マーク5の位置を撮像手段6と位置検出手段7とを用いて検出すれば、締付工具2の正確な位置を検出することが可能となる。
【0054】
加えて、締付工具2の位置を検出するための指標が識別マーク5であるので、発光器を用いた場合のようにワーク3の方向を指向する作業者の目に直接光が入るなどして締付作業に悪影響が生じるというおそれも生じ得ない。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る締付作業支援装置の要部を示す概略側面部である。この第2の実施形態に係る締付作業支援装置1が、第1の実施形態に係る締付作業支援装置1と相違するところは、撮像手段6を第1のカメラ6aのみで構成している点と、この第1のカメラ6aが締付工具2の回転軸部2bの軸直角断面を含む平面(略水平面)Hに対して角度をなす斜め上方(又は下方)から識別マーク5を撮像している点にある。このようにすれば、撮像手段6が識別マーク5を斜め上方から指向することになるので、奥行き方向(図中のy方向)の情報も同時に得ることができる。したがって、締付位置P11〜P13が奥行き方向に延びる同一直線上で重なっていたり、互いに近接している場合であっても、識別マーク5がいずれの締付位置P11〜P13に対応する検出エリアA11〜A13に位置しているかを判別することが可能となる。勿論、この場合であっても、回転軸部2bの側方領域の少なくとも2方向から複数台のカメラで識別マーク5を撮像するようにしてもよい。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、締付部品4の2度締めや、締付部品4の取り付け忘れを検出する場合を説明したが、他の作業ミスも検出するようにしてもよい。具体的には、例えば、次のようにすれば、締め付け順を間違えたことを検出できる。まず、設定作業の際に、位置検出手段7に、ワーク3の締付部品4の締め付け順を記憶させる。そして、締付作業時に、検出エリアA1〜A8で識別データが検出される順番を検出して、記憶されている締め付け順と同じか否かを位置検出手段7に判断させる。記憶している締め付け順と異なる場合には、位置検出手段7が、「締め付け順の間違え」との旨をデータ表示手段8に表示させると共に、報知手段を作動させる。
【0057】
また、上記実施形態では、識別マーク5を回転軸部2bの軸方向で2色に色分けして構成する場合を説明したが、図6(a)及び(b)に示すように、識別マーク5を回転軸部2bの軸方向で3色以上に色分けして構成してもよい。そして、このように識別マーク5を複数色から構成する場合には、締付工具2毎に、識別マーク5の色の組み合わせや配列順序を異ならせ、個々の締付工具2を識別マーク5によって区別するようにしてもよい。このようにすれば、作業者が、正しい締付工具2を選択して、締付作業を実行しているか否かも同時に検出することができ、より正確な締付作業の支援を実現することが可能となる。
【0058】
また、上記実施形態では、ワーク3に設けられた各締付位置P1〜P8が全て同一高さにある場合を例示して説明したが、図7に示すように、ワーク3の上面に段差3aが設けられ、各締付位置P21〜P22の高さが異なる場合でもあってもよい。すなわち、このように各締付位置P21〜P22の高さが異なる場合には、識別マーク5の検出エリアA21〜A22の高さを各締付位置P21〜P22の高さに応じて予め調整すれば、締付作業の支援を問題なく行なうことができる。
【0059】
また、上記実施形態では、締付工具2として電動ドライバーを例示して説明したが、締付工具2は、トルクレンチなどであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 締付作業支援装置
2 締付工具
2a 工具本体
2b 回転軸部
3 ワーク
4 締付部品
5 識別マーク
6 撮像手段
6a,6b カメラ
7 位置検出手段
7a 識別データ記憶部
7b 検出エリア設定部
7c 識別データ判断部
8 データ表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付部品を回転動作によって締め付ける回転軸部を有する締付工具により、ワークに設けられた複数の締付位置で前記締付部品を締め付ける締付作業を支援する締付作業支援装置であって、
前記回転軸部に設けられた識別マークと、前記識別マークを撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像結果に基づいて前記識別マークの位置を検出する位置検出手段とを備えていることを特徴とする締付作業支援装置。
【請求項2】
前記撮像手段が、前記回転軸部の側方領域の少なくとも2方向から前記識別マークを撮像することを特徴とする請求項1に記載の締付作業支援装置。
【請求項3】
前記撮像手段が、前記回転軸部の軸直角断面を含む平面に対して角度をなす傾斜方向から前記識別マークを撮像することを特徴とする請求項1に記載の締付作業支援装置。
【請求項4】
前記位置検出手段が、前記締付位置で締付作業を行う際に前記識別マークが位置する予想範囲に検出エリアを予め設定し、前記検出エリア内で前記識別マークの位置を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の締付作業支援装置。
【請求項5】
前記識別マークが、前記回転軸部の全周に亘って環状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の締付作業支援装置。
【請求項6】
前記識別マークが、少なくとも2色以上で構成されることを構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の締付作業支援装置。
【請求項7】
前記締付工具が、電動ドライバーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の締付作業支援装置。
【請求項8】
締付部品を回転動作によって締め付ける回転軸部を有する締付工具によって、ワークに設けられた複数の締付位置で前記締付部品を締め付ける締付作業を支援する締付作業支援方法であって、
前記回転軸部に識別マークを設けた状態で、前記識別マークを撮像手段で撮像し、その撮像結果に基づいて前記識別マークの位置を検出することを特徴とする締付作業支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−851(P2013−851A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136282(P2011−136282)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000177128)三洋機工株式会社 (35)
【Fターム(参考)】