説明

編機

【課題】編針が構造的に簡単に動作位置と不動作位置との間で可動かつ好都合な力条件で駆動可能であり、編針の長手方向に幅の狭い針床を設けることができるようにする。
【解決手段】編機の針床100に設けられる編針10が、後端部に駆動バット4を持ち、この駆動バット4が針床100へ沈下可能であり、かつ針床の上へ持上げ可能であり、編針10が針底面NBを持ち、編針10のどの部分もこの針底面NBから突出していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの針床を持つ編機であって、針床の針溝内に編針が長手方向移動可能に設けられ、編針が駆動バットを持っているものに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動バットが針の針幹に固定的に結合されている種々の編機が既に公知である。これらの編機は、駆動バットを介して編成カムの力を導入すればよく、例えば連結個所又は弾性素子を介して編針へ伝達しなくてよい、という点ですぐれている。
【0003】
欧州特許第0189602号明細書から、駆動バットが針幹に固定的に結合されている編針が公知である。しかし駆動バットは針の中間範囲にあり、したがって針が比較的長い。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19625652号明細書及びカナダ国特許出願公開第101629355号明細書に記載されている針では、駆動バットが針幹の中間範囲に設けられている。これらの針は針溝の長手方向に比較的幅の広い針床を必要とする。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許第2137680号明細書は、駆動バットが針幹の端部に設けられている編針を示している。しかしここでは針が針床上になく、駆動バットを昇降させる揺動レバー上にある。従って編針の駆動バットの駆動に非常に費用がかかる。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2646410号明細書には、針幹の端部に固定的に結合される駆動バットを持つ編針が示されているが、この編針の駆動バットは編針の不動作位置で針床へ沈下できない。これに反し編針は、別の針床挿入部材の直線運動により引込み位置から前進位置へもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎になっている課題は、編針が構造的に簡単に動作位置と不動作位置との間で可動かつ好都合な力条件で駆動可能であり、編針の長手方向に幅の狭い針床を設けることができる、編機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本発明による編機は、少なくとも1つの針床を持ち、針床の針溝内に編針が長手方向移動可能に設けられ、編針がその後端部に設けられる駆動バットを持ち、編針が選択されない場合、駆動バットがその不動作位置において針床の上側から突出せず、編針が選択される場合、駆動バットがその動作位置へもたらされ、この動作位置において針床の上側から突出し、編針が、その針幹の一番下の側及び駆動バットの下側により形成される針底面を持ち、この針底面で少なくとも部分的に針溝の底に乗っており、駆動バットのすべての位置で針底面が編針の下部終端面を規定して、編針のすべての部分がこの終端面又はこれより上にあるようにしている。
【0008】
本発明による編機は、その編針が後端部に設けられる駆動バットを持ち、この駆動バットが、編針の短い構造及び編針の前進及び後退のため編機のカムによる力の最適な導入を可能にする、という点ですぐれている。更に駆動バットは、針床に沈下する不動作位置と針床より上へ持上げられる動作位置との間で、移動せしめられる。編針は、針底面が最も下の面に留まり、それにより編針は、複数の部分が針底面から下方へ突出する編針より有利に製造される。本発明による編機の別の利点は、編針が少なくとも部分的に針溝の底により支持され、即ち編針の支持及び運動のために揺動レバーなどが不要なことである。
【0009】
駆動バットを不動作位置から動作位置へ移動させるために、種々の可能性がある。編機の第1の構成では、針長手方向への力の導入により、駆動バットが不動作位置から動作位置へもたらされる。しかし編針が針溝内に揺動可能に設けられ、編針の揺動運動により駆動バットが持上げられるようにすることもできる。
【0010】
カムから編針への最適な力導入のため、駆動バットが更に針幹に固定的に結合されている。
【0011】
しかし原理的に駆動バットを、弾性的に又は継ぎ手を介して針幹に結合することができる。
【0012】
本発明による編機の好ましい構成では、針溝内で駆動バットの下側の下へ付加的な挿入部材が移動することにより、駆動バットが不動作位置から動作位置へもたらされる。この挿入部材に編機の選択装置から作用することができ、それにより編針の駆動バットの下への移動を行って駆動バットを持上げることができる。
【0013】
動作位置で駆動バットが、その下側を針溝底及び/又は針溝にある付加的な挿入部材に支持されると、別の利点が生じる。これによって、例えば編糸により導入される力により駆動バットが意に反して再び針床へ押戻されるのを防止することができる。その際挿入部材が駆動バットの下側の下へ動かされることによってこの挿入部材が編針の選択も行うことができる。
【0014】
更に編針へ制動作用を導入する素子が針幹に設けられている。それにより、駆動バットがカムに係合しない時、規定されない編針運動を防止するため、針溝内における編針の運動を適切に制動することが可能である。
【0015】
更に編針に少なくとも1つのストッパ面が形成されて、編針の駆動バットが針床へ沈下する際、編針の長手方向に対して横向きに向けられる少なくとも1つの拘束面に当接することができる。この手段により、編針が選ばれていなくても、編糸を介して編針の運動方向に作用する力によって、編針が意に反して前方へ引張られるのを防止される。従って対向する針との衝突、及び針カギにある編目への不利な影響が回避される。
【0016】
特に簡単なカム構造を実現するために、編針がただ1つの駆動バットを持っていると、更に有利である。
【0017】
本発明による編機用の編針が1つ又は複数の部分から構成されている。
【0018】
図面により編機の好ましい実施例が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 a,bは第1の編針の側面図及び平面図を示し、c〜eは異なる位置にある編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図2】 a,bは第2の編針の側面図及び平面図を示し、c〜eは異なる位置にある編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図3】 a,bは第3の編針の側面図及び平面図を示し、c〜eは異なる位置にある編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図4】 a,bは第4の編針の側面図及び平面図を示し、c〜eは異なる位置にある編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1のa,bは針幹1を持つ編針10を示し、その前端部に針首2が続き、この針首に更に針かぎ3が続いている。針かぎ3から遠い方の後端部に、編針10は、図示してないカムにより編針10へ運動を導入するための駆動バット4を持っている。針幹1は、編針10のすべての他の部分のように、撓みに対して剛性の素子として構成されている。針幹1の下側及び駆動バット4の下側は針底面NBを形成し、針10のどの部分もこの針底面から下方へ突出していない。駆動バット4はその針幹1に近い方の側にストッパ面5を持ち、このストッパ面5を針床100の拘束面101(図1c)へ当接させることができる。
【0021】
図1のc〜eは、編針10が水平に移動可能に挿入されている針溝115の範囲における針床100の断面図を示す。編針10は、覆い帯片110により針溝115内で垂直方向に固定される。編針10の後ろで針溝115内に、持上げシンカの形の別の挿入部材20があり、覆い帯片210により同様に垂直方向に固定されている。挿入部材20も駆動バット21を持ち、ここには図示してないカムにより、この駆動バット21の所で挿入部材20へ直線運動が導入可能である。図1cでは、編針10及び挿入部材20がそれぞれ不動作位置にある。編針10の駆動バット4は針床100へ完全に沈下している。駆動バット4のストッパ面5は針床100の拘束面101に当接し、それにより編針10は歯口間隙300の方へ運動することができない。挿入部材20は編針10に近い方の端部に斜面22を持ち、歯口間隙300の方へ挿入部材20の移動により、この斜面22が編針10の駆動バット4にある斜面6に当接可能である。さて挿入部材20が矢印30の方向へ移動されると、図1dに示す状態が生じる。編針10の駆動バット4が、その斜面6で挿入部材20の斜面22上を上方へ矢印40の方向に滑り、動作位置へ導かれる。ここには図示してないカムにより、駆動バット4従って編針10へ運動を導入することができる。図1eでは、編針10が図示してないカムにより歯口間隙300の方へ動かされて、編成過程に関与する。その際編針の駆動バット4の支持面は針溝115の底の面104上又は挿入部材20の上側23上を滑る。それにより駆動バット4が意に反して不動作位置へ沈下するのを確実に防止される。
【0022】
図2のa,bには編針10′の第2の実施例が示されているが、針幹1′の下部範囲に脚辺8′が形成されて、駆動バット4′の方へ延び、少なくともその駆動バット4′に近い方の端部を左又は右へ曲げられ、従って図2bからわかるように編針10′の側面から突出しているという点で、図1の編針10とは相違している。それにより脚辺8′は、針溝115の図1bには示されてない壁に接触し、それにより編針10′が制動される。
【0023】
図2cに示すように、編針10′の範囲7′は、編針10′の運動方向に対して横向きに針床100へ入れられた線103の形の円柱状素子に載っている。図2cにおいて、編針10′及び図1の挿入部材に相当する挿入部材20は、それぞれ不動作位置にある。駆動バット4′は針床100へ完全に沈下している。駆動バット4′のストッパ面5′は針床100の拘束面101に当接しているので、編針10′は歯口間隙300の方へ運動することができない。挿入部材20は再びその編針10′に近い方の端部に斜面22を持ち、歯口間隙300の方へ挿入部材20の移動により、この斜面22が編針10′の駆動バット4′にある斜面6′に当接可能である。
【0024】
さて挿入部材20が更に矢印30′の方向へ移動されると、図2dに示すように、駆動バット4′が斜面6′及び22を介して上方へ矢印40′の方向に動作位置へ導かれる。駆動バット4′はここから図示しないカムにより捕捉され、それにより編針10′が長手方向に動かされる。図2eでは、編針10′がここには示してないカムにより歯口間隙300の方へ動かされて、編物形成動作を行う。その際編針10′の駆動バット4′の支持面は、針溝115の底にある面104上を滑るか、又は挿入部材20の上側23上を滑る。脚辺8′による編針10′の制動は、針溝115内にある編針10′の制御されない投げ出しを防止する。
【0025】
図3のa及びbは、編針10″を制動するため付加的な素子8″が編針10″の片側又は両側に取付けられているという点で、図2の編針10′とは相違する別の編針10″を示す。
【0026】
図3のc〜eからわかるように、駆動バット4″を持上げるために、双腕レバーの形のレバー素子20′が使用される。レバー素子20′の腕A及びBは支点Dの周りに揺動可能である。
【0027】
図3cでは、編針10″及びレバー素子20′はそれぞれ不動作位置にある。編針10″の駆動バット4″は針床100へ完全に沈下している。編針10″の駆動バット4″のストッパ面5″は、針床100の拘束面101に当接しているので、編針10″は歯口間隙300の方へ運動を行うことができない。駆動バット4″はその下側に面6″を持ち、この面でレバー素子20′の腕Aの上側22′に載っている。図3dに示すように、レバー素子20′の腕Bへ矢印30″の方向に力が導入されると、レバー素子20′がその支点の周りに揺動し、それにより腕Aが上方へ動いて、駆動バット4″を矢印40″の方向に動作位置へ持上げる。今やここには示されていないカムが駆動バット4″に作用して、針溝115に沿って針10″を動かすことができる。
【0028】
図3eでは、編針10″がカムにより歯口間隙300の方へ動かされて、編物形成のための動作を行うことができる。その際編針10″の駆動バット4″の支持面は、針溝115の底にある面104上を滑るか又はレバー素子20′の上側22上を滑る。素子8″により、編針10″が制動され、従って針溝115内で制御されずに投げ出されることはない。
【0029】
図4のa,bには、図2の編針10′に大幅に一致する第4の編針10′′′が示され、針幹1′′′の下部範囲に形成される脚辺8′′′が、駆動バット4′′′から針首2′′′の方へ延びている。この脚辺8′′′もその端部を左方又は右方へ曲げられて、図4bからわかるように編針10′′′の一方の側面から突出している。それにより脚辺8′′′が針溝115の壁に接触して、編針10′′′の制動を行う。
【0030】
図4cからわかるように、駆動バット4′′′を持上げるため、駆動バット4′′′に近い力の端部に突起24″を持っているという点で挿入部材20とは相違する挿入部材20″が使用される。図4cにおいて、編針10′′′及び挿入部材20″はそれぞれ不動作位置にあり、即ち編針10′′′の駆動バット4′′′は針床100へ完全に沈下している。針床100は斜面105を持っている。歯口間隙300の方へ挿入部材20″の移動により、突起24″が駆動バット4′′′の後端部にある垂直な面6′′′に当接可能である。図4dによれば、挿入部材20″は矢印30′′′の方向に移動されており、それにより編針10′′′の駆動バット4′′′の斜面5′′′が、針床100にある斜面105上を上方へ矢印40′′′の方向に動作位置へ導かれている。この位置から駆動バット4′′′は、図示しないカムにより捕捉され、それにより運動が編針10′′′へ導入される。図4eは押出された位置にある編針10′′′を示し、この位置で編針が編成機能を実行することができる。編針10′′′の駆動バット4′′′の支持面は、針溝115内を編針10′′′が動く際、針溝115の底にある面104上を滑るか、又は挿入部材20″の上側22″上を滑る。その際編針10′′′の運動は脚辺8′′′により制動される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの針床を持つ編機であって、針床(100)の針溝(115)内に編針(10,10′,10″,10′′′)が長手方向移動可能に設けられ、編針(10,10′,10″,10′′′)がその後端部に設けられる駆動バット(4,4′,4″,4′′′)を持ち、編針(10,10′,10″,10′′′)が選択されない場合、駆動バット(4,4′,4″,4′′′)がその不動作位置において針床(100)の上側から突出せず、編針(10,10′,10″,10′′′)が選択される場合、駆動バット(4,4′,4″,4′′′)がその動作位置へもたらされ、この動作位置において針床(100)の上側から突出し、編針(10,10′,10″,10′′′)が、その針幹(1,1′,1″,1′′′)の一番下の側及び駆動バット(4,4′,4″,4′′′)の下側により形成される針底面(NB)を持ち、この針底面(NB)で少なくとも部分的に針溝(115)の底に乗っており、駆動バット(4,4′,4″,4′′′)のすべての位置で針底面(NB)が編針(10,10′,10″,10′′′)の下部終端面を規定して、編針(10,10′,10″,10′′′)のすべての部分がこの終端面又はこれより上にあるようにしている、編機。
【請求項2】
針長手方向(30,30′,30′′′)への力の導入により、駆動バット(4,4′,4″,4′′′)が不動作位置から動作位置へもたらされることを特徴とする、請求項1に記載の編機。
【請求項3】
編針(10,10′,10″,10′′′)が針溝(115)内に揺動可能に設けられ、編針(10,10′,10″,10′′′)の揺動運動により駆動バット(4,4′,4″,4′′′)が持上げられることを特徴とする、請求項1に記載の編機。
【請求項4】
駆動バット(4,4′,4″,4′′′)が針幹(1,1′,1″,1′′′)に固定的に結合されていることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の編機。
【請求項5】
針溝(115)内で駆動バット(4,4′,4′′′)の下側の下へ付加的な挿入部材(20,20″)が移動することにより、駆動バット(4,4′,4′′′)が不動作位置から動作位置へもたらされることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の編機。
【請求項6】
動作位置で駆動バット(4,4′,4″,4′′′)が、その下側を針溝底及び/又は針溝(115)にある付加的な挿入部材(20,20′,20′′′)に支持されることを特徴とする、請求項1〜5の1つに記載の編機。
【請求項7】
編針(10′,10″,10′′′)へ制動作用を導入する素子(8′,8″,8′′′)が針幹(1′,1″,1′′′)に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の編機。
【請求項8】
編針(10,10′,10″,10′′′)に少なくとも1つのストッパ面(5,5′,5″,5′′′)が形成されて、編針(10,10′,10″,10′′′)の駆動バット(4,4′,4″,4′′′)が針床(100)へ沈下する際、編針(10,10′,10″,10′′′)の長手方向に対して横向きに向けられる少なくとも1つの拘束面(101)に当接することを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載の編機。
【請求項9】
編針(10,10′,10″,10′′′)がただ1つの駆動バット(4,4′,4″,4′′′)を持っていることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載の編機。
【請求項10】
編針(10,10′,10″,10′′′)が1つ又は複数の部分から構成されていることを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載の編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−140744(P2012−140744A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−290572(P2011−290572)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(591114995)ハー・シユトル・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (16)
【Fターム(参考)】