説明

緩み止めダブルナット

【課題】締結用ボルトナットの緩み止めとしてダブルナットは広く使用されているが、依然として締付け具合は現場作業者の感と経験に頼っている状況であり、緩み止め効果に対する評価も分かれるところである。
【解決手段】従来のダブルナットの上ナットと下ナットを細目左ねじで連結して機能させ、従来と同じ締付け工法にて、従来に比べ軸力が入りやすくかつ緩みづらい、本来ボルトナットに期待される締結力と緩み止めの両方の機能を兼ね備えた緩み止めダブルナットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩み止めダブルナットの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
古くからボルトナットの緩み止めの手段として六角ナットによるダブルナットはよく使われている。また最適なダブルナットの締付け方法も種々研究されており、現在のところ下ナット逆転法が一番有効な方法として認知されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−096210号公報
【特許文献2】特開平11−006516号公報
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上の技術によれば、未だにその締付け指針は明確にされていない状況で、締付け力の評価も割れるところであり、作業現場に至っては熟練した作業者の感や経験に頼った締付けが行われているのが実状のようである。ダブルナットの締め方としては下ナット逆転法の効果が謳われている反面、下ナットを逆転させることで、締付けで蓄えた軸力が半減することや、それに伴うねじ面の摩擦力の減少が考えられ、本来期待されるねじの締結力やねじの緩み止め効果としては弱点となっている。
そこで、この発明は、従来の六角ナットを使用したダブルナットの上下ナットそれぞれに、ダブルナットの持つ弱点を解消する機構を追加することでより効果的な緩み止めダブルナットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、第一発明は、
従来の六角ナットによるダブナット形状の上ナットに追加した凸部に雄ねじを加工し、下ナットに追加した凹部には上ナットのねじに相対する雌ねじを加工し、さらに上下のナットをねじで連結して機能させることを特徴とする緩み止めダブルナットである。
また、第二発明は、上記の上下ナットに共通するねじは並目右ねじであるのに対し、上記凹部、凸部に加工するねじは細目左ねじであることを特徴とする緩み止めダブルナットである。
【発明の効果】
【0007】
第一発明、または第二発明によれば、この新しい形のダブルナットでは、締付け時の上下ナットの接触を従来のナット座面からねじの連結に変えることでボルトナットの締結時にナットに対し軸力が入りやすくなり、結果としてねじ部の摩擦抵抗を増やすことができる。また上下ナットを連結することで、従来できなかった増し締めが可能となり軸力の追加もできる。また、上下ナットの連結部を細目左ねじとした効果で、下ナット逆転法で緩め方向に回転させロッキングさせるまでの回転角度が極わずかで済み、ナット部分や締結物に蓄積した軸力の減少を少なくでき、本来ボルトナットに期待される締結力も兼ね備えた緩み止めダブルナットとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す上ナットと下ナットの図である。
【図2】上ナットと下ナットの仮締め状態の図である。
【図3】〜
【図5】締付け作業手順を示す図である。
【図6】この発明の応用例の図である。
【図7】上下ナット逆組込みの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の一実施形態を、図1に示す。
実施形態については、ねじサイズM20のボルトナットの締結を例として緩み止めダブルナットの締付け作業手順で説明する。ただし、ねじについてはメートルねじに限定されるものではなく、インチなどの特殊ねじでも適応可能である。
まず図1にて共通の雌ねじ4のサイズはM20の並目ピッチ2.5mmとし、上ナット2の凸部5にはサイズM27にて細目ピッチ2mmの左雄ねじ7を加工した。下ナット3の凹部6に上ナットに相対するサイズM27にて細目ピッチ2mmの左雌ねじ8を加工したダブルナット1の形態を示す。
図2にて上ナット2と下ナット3を仮締めしたダブルナット1の形態を示す。雄ねじ7と雌ねじ8の連結部を9とした。
図3にてねじサイズM20のボルト10にダブルナット1を締め込む形を示す。図のように上下ナットは連結した仮締めの状態で、同時にボルトに締め込む必要がある。ボルト10との嵌合状態で上下ナットの間にすきまが生じる。
【0009】
図4にてボルト10とダブルナット1で締結物12を挟み込んだ状態を示す。ボルト10をスパナ等で固定してから、まず下ナット3をスパナで締め込む。次に上ナット2をスパナで締め込む。この際上ナット2と下ナット3の連結部9が細目左ねじのため、ねじ相互のピッチの差の分でねじ込まれる。すなわち一回転あたり2.5mmの送りに対し2mmの戻し回転から0.5mmの締め込み量となる。再度下ナット3と上ナット2を交互に増し締めし軸力を追加する。
図5にて従来のダブルナットと同じく下ナット逆転法に基づき下ナット3をスパナで緩める方向に回転させ上ナット2とロッキング(羽交い絞め)させる。この際上ナット2はスパナで固定する。ロッキングの際に起きるボルト10とダブルナット1のねじ部の接触状況の変化については図4、図5に表現した。
ダブルナット1の解放手順は、まず上ナット2をスパナで緩めたのち下ナット3を緩める。取り外す際はダブルナット1の形で同時に戻し回転させる。
「実施形態の効果」
【0010】
この実施形態によれば、ダブルナット1は座面同士の接触でなく、連結部9のねじによるくさび効果でボルト10に対し軸力が付加されやすい。また上下ナットがねじで連結されているため、従来の上下ナットが分離した形のダブルナットのように、下ナット3を増し締めした時に上ナット2を締め込むことで蓄えた軸力が減じてしまうことなく、上下ナットを交互に増し締めして軸力を順次追加することができる。また、下ナット逆転法によるロッキングの際、戻し回転角度は連結部9の効果により、下ナット3が戻そうとする回転に対し左ねじが送り方向に回転するため、従来の5分の1程度の戻し量で締め付けられ、従来と比べ極わずかの軸力低下で済む。また緩みに対しても左ねじが緩み防止の方向に作用する。従来のダブルナットでは下ナットが主に軸直角方向の緩めようとする力を受けてしまうが、緩み止めダブルナット1では連結部9の機構があることにより、上下ナット全体で緩み止めの効果を発揮することができる。
「他の実施形態」
【0011】
図1〜図5の実施形態では、ボルト10とダブルナット1で被締結物12を挟み込む形態であったが、他の実施形態では図6のように、六角穴付きボルト13や植え込みボルトを使用した締付けにも緩み止めダブルナット1は利用できる。また軸方向荷重やより大きな軸力を必要とする場合は、図7のようにダブルナット1を上下逆に組み込んで、逆転法によるロッキングを行わず上下ナットの増し締めのみで強力に締め込む形でもよく、また図6と図7の併用のものでも良い。
【符号の説明】
【0012】
1 ダブルナット 2 上ナット
3 下ナット 4 上下ナット共通の雌ねじ
5 上ナット凸部 6 下ナット凹部
7 上ナット凸部のねじ 8 下ナット凹部のねじ
9 連結部 10 ボルト 11 平座金
12 被締結物 13 六角穴付きボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径側に同じサイズの雌ねじ4を有するダブルナット1の上ナット凸部5に細目左雄ねじ7を加工し、下ナット3の凹部6に上ナットに相対する細目左雌ねじ8を加工し、上下のナットを連結して機能させることを特徴とする緩み止めダブルナット。
【請求項2】
より大きな軸力を必要とする場合や軸方向荷重に対して、ダブルナット1を逆に組み込んで、増し締めのみで強力に締め付けることを特徴とする請求項1記載の緩み止めダブルナット。
【請求項3】
雌ねじ4や連結部9に加工のねじはメートルねじに限定されず、各種のねじ規格で対応可能なことを特徴とする請求項1に記載の緩み止めダブルナット

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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