説明

緩衝型船首

【課題】被衝突船と衝突したときに、衝撃力を吸収、分散させ、被衝突船の損害を軽減可能な緩衝型船首を提供する。
【解決手段】緩衝型船首100は、船殻10と船殻10内に収められる縦構成部20と横構成部30とを備える。縦構成部20には複数の折り曲げ部24を配置する。緩衝型船首100は、被衝突船に衝突した場合、先ず圧潰縮小する。これにより、緩衝型船首100の前端には相対的に面積の大きな接触面が形成され、緩衝型船首100は側面に曲がり変形を起こすため、衝撃力が吸収、分散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝型船首に関し、特に圧潰可能な緩衝型船首に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶衝突事故が発生したとき、衝突船の船首が被衝突船の船殻を突き破り被衝突船内部の油流出による深刻な環境汚染が引き起こされるのを避けるために、緩衝型船首の研究開発が進められている。
【0003】
図1の従来の緩衝型船首に関する内部構成の図に示す通り、従来の緩衝型船首は船殻1を備える。船殻1の前端部は主に鈍角に設計され、前端の接触面積を拡大することにより衝撃力を分散させる効果が達成される。それと同時に、船殻1内には、中心線縦桁2、二つの水平縦桁3等の縦強度強化構成及び横肋材4、複数の胸肋材5等の横強度強化構成が設けられている。
これにより、従来の緩衝型船首が正面方向で衝突した場合、大部分の構成が横方向に配置した横肋材4により構成されているために縦方向の強度が弱く、横肋材4は圧潰を起こして衝撃エネルギーを吸収し、被衝突船の受けた衝撃や被害を和らげることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、船首の設計は船舶の流体力学の要望に応じることを主とし、例えばコンテナ船等のように船の速度が速い船舶の船首は、通常、造波抵抗を抑制するために先端を細く尖った形状に設計する故、鈍角形状の船首には不向きである。
特に、従来の緩衝型船首では、構成を圧潰させて吸収できる衝撃エネルギーには限界があり、大型或いは高速の船舶について言えば、緩衝型船首構成が単に圧潰により吸収するエネルギーでは衝撃事故全体の動力エネルギーを帳消しにするには足りない。
【0005】
また、構成強度及び検査メンテナンス、施工空間等の制限に基づくと、従来の緩衝型船首は依然として水平縦桁3等の縦方向強化構成の配置を避けることはできないため、緩衝型船首の前端は容易に圧潰されて構成上にハードスポット(Hard spot)を形成する。このため、従来の緩衝型船首が衝突を起こしたとき、その前端は塑性変形が制限されるだけでなく、一定の比率で被衝突船の船殻への貫通を起こす虞がある。よって、船首の外形に制限されず、且つ上述したハードスポットの欠点を克服する緩衝型船首をいかに提供するかが必然的な課題となる。
本発明の目的は、被衝突船と衝突したときに、衝撃力を吸収、分散させ、被衝突船の損害を軽減可能な緩衝型船首を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の緩衝型船首は、船殻と縦構成部と横構成部とを備える。船殻には収容室を内設し、且つ船殻は前端の圧潰可能段と圧潰可能段後方の緩衝段とに区分される。縦構成部は収容室内に収め、並びに水平に配置する少なくとも一つの水平縦桁と圧潰可能段内に配置し且つ水平層を重ねて配置する複数の胸肋材とを備える。
【0007】
また、水平縦桁と胸肋材の前段には、緩衝型船首の径方向に少なくとも一つの折り曲げ部を配置する。水平縦桁の両側は船殻の内壁に接続し、且つ水平縦桁の両側と船殻の交差箇所にはそれぞれ少なくとも一つの圧潰縮小部を備えさせる。
圧潰縮小部は緩衝段内に配置し、横構成部は収容室内に収め、並びに複数の環状強化肋材を備え、環状強化肋材は船殻の軸方向に沿った緩衝段内に配置する。
【0008】
(発明の効果)
本発明の緩衝型船首は、当該緩衝型船首が被衝突船にぶつかったとき、折り曲げ部箇所が圧潰されて圧潰可能段は漸進的に圧潰縮小を起こす。更に、緩衝型船首の前端に比較的大きな面積を持つ接触面を形成するのと同時に圧潰縮小部は先行して圧潰縮小を起こすために、緩衝型船首は側面が曲がり變形を生じさせる。
これにより、緩衝型船首と被衝突船の接触面積が拡大するため、衝撃力を吸収、分散させる目的を達成し、被衝突船の損害を大幅に軽減することができる。
【0009】
また、折り曲げ部と圧潰縮小部が縦構成部上に直接配置されているため、本発明は鋭角形状、鈍角形状或いは先端の細く尖った形状等の外形に制限されることはなく、各種船舶に広く応用することが可能で、船舶の航行の安全性を高め、人命を守り、汚染を防ぐ実質的な意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の緩衝型船首の内部構成を示す模式図。
【図2】本発明の第1実施形態に関する内部構成の側面を示す模式図。
【図3】本発明の第1実施形態に関する内部構成の上面を示す模式図。
【図4】本発明の第1実施形態に関する作用を示す説明図。
【図5】本発明の第2実施形態に関する内部構成の上面を示す模式図。
【図6】本発明の第2実施形態に関する前面断面を示す模式図。
【図7】本発明の第2実施形態に関する作用を示す説明図。
【図8】本発明の第3実施形態に関する内部構成の上面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図2及び図3には、本発明の第1実施形態に関する内部構成の側面及び内部構成の上面を示す。緩衝型船首100は主に次の構成要素を含む。
【0012】
船殻10には収容室11を内設する。船殻10は、前端に配置する圧潰可能段12と圧潰可能段12後方に配置する緩衝段13とに区分される。
【0013】
縦構成部20は、収容室11内に収められる。また、縦構成部20は、垂直に配置する中心線縦桁21と、水平に配置する二つの水平縦桁22と、圧潰可能段12内に配置し且つ水平層を重ねて配置する複数の胸肋材23と、を備える。
中心線縦桁21と水平縦桁22と胸肋材23の前段にはそれぞれ少なくとも一つの折り曲げ部24を配置し、折り曲げ部24はスエージ(Swage)またはナックルライン(Knuckle Line)のいずれか一つとし、並びに緩衝型船首100の径方向に沿った圧潰面25上に分布させる。
【0014】
横構成部30は、収容室11内に収められ、複数の環状強化肋材31を有している。環状強化肋材31は、船殻10の軸方向に沿って、緩衝段13内に配置されている。
【0015】
本実施形態の作用を図4に基づいて説明する。
緩衝型船首100が被衝突船200に衝突したとき、折り曲げ部24は縦方向の強度が比較的弱いために先に圧潰する。船殻10の圧潰可能段12は折り曲げ部24に隣接する構成の変形により漸進的に圧潰縮小して衝撃エネルギーを吸収する。緩衝型船首100の前端には面積の比較的大きな接触面が形成され、同時に、圧潰可能段12後端に配置した緩衝段13が圧潰縮小され、これにより衝撃エネルギーを吸収し続ける。
【0016】
このように、構成の圧潰縮小による衝撃エネルギーの吸収ができるのみならず、効果的に緩衝型船首100前端の縦方向圧潰強度を低下させて接触面積を拡大して衝撃力を分散させるため、緩衝型船首100が被衝突船200の船殻を貫通する確率を減少させることができる。結果として、被衝突船200が受ける損害を軽減し、船舶の航行の安全性を効果的に高めることができる。
【0017】
(第2実施形態)
図5、図6、図7に本発明の第2実施形態の内部構成、前面の断面、及び作用を示す。
図の通り、前述した第1実施形態と比べて、本実施形態の緩衝型船首100は、水平縦桁22の両側を船殻10の内壁に接続し、且つ水平縦桁22の両側と船殻10の交差箇所にはそれぞれ少なくとも一つの圧潰縮小部26を配置し、圧潰縮小部26は半円形の開孔(Cutout)とし、並びに緩衝型船首100の径方向に沿って設けた圧潰縮小面27上に形成し、且つ緩衝段13内に位置させる相違点がある。
【0018】
これにより、図7に示すように、緩衝型船首100が被衝突船200と衝突した場合、衝撃の反作用力が緩衝型船首100に伝えられ、圧潰縮小部26箇所には応力が集中する。水平縦桁22に設けた圧潰縮小部26には圧潰縮小が生じ、更に緩衝型船首100の側面が湾曲変形するため、緩衝型船首100と被衝突船200の接触面積が拡大され、衝撃力を分散させることができる。
また、前記の側面を湾曲させた緩衝型船首100が被衝突船200の船殻突き抜けるのと同時に、前記の衝突船は更に船首の側面を湾曲変形させて被衝突船200とは滑動してぶつかり合うため、被衝突船200の船殻の破壊率を低下させることができる。
【0019】
(第3実施形態)
図8に本発明の第3実施形態の内部構成を示す。図に示すように、前述した実施形態と比べて、本実施形態の緩衝型船首100は、縦構成部20上に折り曲げ部24と圧潰縮小部26とを同時に設ける相違点がある。
これにより、緩衝型船首100が被衝突船200に衝突した場合、折り曲げ部24は圧潰し、圧潰可能段12には漸進的な圧潰縮小が生じ、更に緩衝型船首100の前端には比較的大きな面積の接触面が形成される。同時に、圧潰縮小部26は先に圧潰縮小を起こし、緩衝型船首100の側面を湾曲変形させるため、緩衝型船首100と被衝突船200の接触面積が拡大される。
【0020】
本実施形態は、前述の実施形態以上に有意的に衝撃力の吸収及び分散を行う効果を有し、大幅に被衝突船200の損害を低下させることができる。それと同時に、本実施形態では折り曲げ部24と圧潰縮小部26を直接縦構成部20上に配置するため、緩衝型船首100は鋭角形状、鈍角形状、或いは先端の細く尖った形状等の外観に制限されることなく各種船舶への応用が可能である。結果として、船舶航行の安全性を高め、人命の保障と汚染防止に対して実質的な意義を備える。
【0021】
また、本実施形態は、折り曲げ部24の両端と船殻10内壁隣接箇所にはそれぞれ穿孔28が配置され、しかも船殻10の内壁とは接続していないため、施工時の板材レイアウトの困難度を低下させ、並びにハンダ付け組み立て作業を便利にすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ・・・ 船殻
2 ・・・ 中心線縦桁
3 ・・・ 水平縦桁
4 ・・・ 横肋材
5 ・・・ 胸肋材
100 ・・・ 緩衝型船首
10 ・・・ 船殻
11 ・・・ 収容室
12 ・・・ 圧潰可能段
13 ・・・ 緩衝段
20 ・・・ 縦構成部
21 ・・・ 中心線縦桁
22 ・・・ 水平縦桁
23 ・・・ 胸肋材
24 ・・・ 折り曲げ部
25 ・・・ 圧潰面
26 ・・・ 圧潰縮小部
27 ・・・ 圧潰縮小面
28 ・・・ 穿孔
30 ・・・ 横構成部
31 ・・・ 環状強化肋材
200 ・・・ 被衝突船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船殻と縦構成部と横構成部とを備える緩衝型船首であって、
前記船殻は、収容室を内設し、前端に配置する圧潰可能段と当該圧潰可能段の後方に位置する緩衝段とに区分され、
前記縦構成部は、前記収容室内に収められ、水平に配置する少なくとも一つの水平縦桁と前記圧潰可能段内に配置され水平層を重ねて配置する複数の胸肋材とを有し、
前記水平縦桁と前記胸肋材との前段には、前記緩衝型船首の径方向に沿って少なくとも一つの折り曲げ部が配置され、
前記横構成部は、前記収容室内に収められ、複数の環状強化肋材を有し、
前記環状強化肋材は、前記船殻の軸方向に沿って前記緩衝段内に配置され、
前記緩衝型船首が被衝突船に衝突したとき、前記折り曲げ部が圧潰されて前記圧潰可能段は漸進的に圧潰縮小を起こし、前記緩衝型船首の前端に相対的に大きな面積を持つ接触面が形成されることにより衝撃力が吸収、分散されることを特徴とする緩衝型船首。
【請求項2】
前記折り曲げ部は、スエージまたはナックルラインのどちらかであることを特徴とする請求項1に記載の緩衝型船首。
【請求項3】
前記水平縦桁の両側は前記船殻の内壁に接続し、
前記水平縦桁の両側と前記船殻との交差箇所にはそれぞれ少なくとも一つの圧潰縮小部を設け、
前記圧潰縮小部は前記緩衝段内に配置されることを特徴とする請求項1記載の緩衝型船首。
【請求項4】
船殻と縦構成部と横構成部とを備える緩衝型船首であって、
前記船殻は、収容室を内設し、前端に配置する圧潰可能段と当該圧潰可能段の後方に位置する緩衝段とに区分され、
前記縦構成部は、前記収容室内に収められ、水平に配置する少なくとも一つの水平縦桁と前記圧潰可能段内に配置され水平層を重ねて配置する複数の胸肋材とを有し、
前記水平縦桁の両側は前記船殻の内壁に接続し、
前記水平縦桁の両側と前記船殻の交差箇所にはそれぞれ少なくとも一つの圧潰縮小部を配置し、
前記圧潰縮小部は前記緩衝段内に設けられ、
前記横構成部は前記収容室内に収められ、複数の環状強化肋材を有し、
前記環状強化肋材は前記船殻の軸方向に沿って前記緩衝段内に配置され、
前記緩衝型船首が被衝突船に衝突したとき、前記圧潰縮小部の圧潰縮小により前記緩衝型船首の側面が湾曲変形され、前記被衝突船との接触面積が拡大することにより衝撃力が吸収及び分散されることを特徴とする緩衝型船首。
【請求項5】
前記圧潰縮小部は開孔であることを特徴とする請求項3または4に記載の緩衝型船首。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−84272(P2011−84272A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233420(P2010−233420)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(510276803)