説明

緩衝材

【課題】容器内への収納物の収納に際する作業能率の低下を招くことなしに、容器内で、収納物に作用する衝撃を有効に緩和して、収納物への損傷の発生のおそれを、より確実に取り除くことができる緩衝材を提供する。
【解決手段】平面視で多角形状をなす一枚のシートであって、該シートを折り曲げてなる、容器内への配置姿勢で、容器の底面に敷設される底部相当部分2と、該底部相当部分2に連続して、容器の各側面に沿って延びる側部相当部分3〜6とを有してなり、容器内への収納物を衝撃から保護する緩衝材1であって、前記多角形状シートを、軟質ウレタンフォームにて構成するとともに、多角形状シートの各隅部に、平面視で、前記側部相当部分3〜6と底部相当部分2との境界位置に形成される折り曲げ線Rの相互の交点を頂点とするV字状の切欠き部分7〜10を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平面視で多角形状、たとえば方形状をなす一枚のシートであって、該シートを折り曲げてなる、容器内への配置姿勢で、容器の底面に敷設される底部相当部分と、該底部に連続して、容器の各側面に沿って延びる側部相当部分とを有してなり、容器内に収納した果実等を衝撃から保護する緩衝材に関するものであり、とくに、容器内へ収納物を収納する際の作業能率を低下させることなしに、また、緩衝材を介して容器内に収納された収納物を、緩衝材による優れた緩衝作用の下で、十分に保護することができる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂もしくは段ボール等からなる容器と、その容器内に収納される、イチゴ、マンゴー等の果実その他の収納物との間に介装させる緩衝材は、たとえば、果実を出荷する際の、容器の搬送に伴う、容器内での収納物の転がりを抑制するとともに、そのような転がりに起因する、収納物の衝突衝撃を緩和するべく機能し、併せて、収納物の自重を、広い接触面積で分散支持することにより、収納物、とくに、軟らかい果実への損傷の発生を防止するものである。
【0003】
このような緩衝材を介して、収納物を容器内に収納するには、果実等の収納に先立って、緩衝材を、容器の内側に嵌め合わせ、その状態を維持させつつ、たとえば、イチゴ等の複数個の果実を、緩衝材上に配置することにより行うことができるが、緩衝材を、復元性の大きな材料によって構成した場合は、容器の内側に嵌め合わせた緩衝材が、容器の底面から浮き上がり易く、緩衝材の、容器内への嵌合せ姿勢を、果実を収納するまでの間維持させることが困難となって、果実等の収納のための作業能率の低下を招くことがあるため、近年は、緩衝材を、ポリエチレン系樹脂材料等の、柔軟性に優れる熱可塑性樹脂材料にて構成することが行われている。
【0004】
ここにおいて、たとえば、特許文献1では、「果実と容器との間に装填される果実保護用緩衝材であって、熱可塑性樹脂発泡シートを裁断してなり、厚みが0.3〜3mm、見掛け密度が15〜70kg/m3であり、矩形状の底面保護部と、該底面保護部の周縁に折線部を介して連接された4面の側面保護部とを有し、前記折線部は貫通部と非貫通部との連設により構成されていると共に折線部の両端には前記貫通部が配設され、該果実保護用緩衝材の四隅には前記底面保護部の角部を頂点として外周方向に向かって10〜60度の角度で開いた略V字状の切欠きが形成されていることを特徴とする、果実保護用緩衝材」が提案されている。
【0005】
そして、この「果実保護用緩衝材」によれば、「熱可塑性樹脂発泡シートを使用し、特定の厚み、特定の発泡倍率(見掛け密度)とすることにより、折り曲げ性と緩衝性との兼ね合いが良好な緩衝材となり、容器への装填作業性がよく、また果実の損傷を効果的に防ぐことができる。また、折線部を貫通部と非貫通部との連設により構成することにより、緩衝材を折り曲げやすくし、かつ折った場合に適度な戻りを有するものとなり、緩衝材の容器への装填がしやすく、また緩衝材が容器の形状どおりに安定して保持できるものとなる。さらに、折線部の両端には貫通部を配設し、該果実保護用緩衝材の四隅に前記底面保護部の角部を頂点として外周方向に向かって特定の角度で開いた略V字状の切欠きを形成することにより、容器内に装填したときに緩衝材の底面保護部の角部が容器形状に添いやすく、また側面保護部同士が適度に重なり合うことにより、緩衝材が容器内に安定して装填される。」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3130821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された「果実保護用緩衝材」は、熱可塑性樹脂材料にて形成されていることから、たとえ厚みや発泡倍率等を特定しても、緩衝材の本来の機能である、容器内に収納される収納物への衝撃を緩和する機能を十分大きく高めることができず、それ故に、とくに、イチゴやマンゴー等の柔らかい果実の保護に供する場合は、緩衝材による十分な緩衝機能を発揮できない結果として、収納物である果実が損傷する懸念があった。
【0008】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、容器内への収納物の収納に際する作業能率の低下を招くことなしに、容器内で、収納物に作用する衝撃を有効に緩和して、収納物への損傷の発生のおそれを、より確実に取り除くことができる緩衝材を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の緩衝材は、平面視で多角形状をなす一枚のシートであって、該シートを折り曲げてなる、容器内への配置姿勢で、容器の底面に敷設される底部相当部分と、該底部相当部分に連続して、容器の各側面に沿って延びる側部相当部分とを有してなり、容器内への収納物を衝撃から保護するものであって、前記多角形状シートを、軟質ウレタンフォームにて構成するとともに、多角形状シートの各隅部に、平面視で、前記側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成される折り曲げ線の相互の交点を頂点とするV字状の切欠き部分を設けてなるものである。
【0010】
ここで、前記側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成されるそれぞれの折り曲げ線上には、シートの厚み方向に貫通する少なくとも一本の線上切込み部を形成することが好ましく、この場合において、前記側部相当部分には、線上切込み部の所定の位置から、前記折り曲げ線に対して傾斜して延びるとともに、シートの厚み方向に貫通する傾斜切込み部を形成することがさらに好ましい。
なおここで好ましくは、傾斜切込み部の延在長さを、該傾斜切込み部を形成した側部相当部分の幅の、30%〜50%の範囲内とする。
【0011】
ところで、底部相当部分および各側部相当部分の、収納物が接触する表面には、凹凸形状を付与することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の緩衝材によれば、緩衝材としてのシートを、緩衝性や耐久性に優れ、かつ軽量で、素材の配合により密度、硬さ等を変化させることが可能な、熱硬化性の軟質ウレタンフォームからなる多角形状シートにて構成したことにより、軟質ウレタンフォーム製のシートに特有の、優れた緩衝作用に基き、緩衝材を介して容器内に収納される収納物を、容器の搬送時等の衝突衝撃や、それ自身の自重に起因して容器底面から受ける反力から十分有効に保護することができるので、収納物を、たとえばイチゴもしくはマンゴー等の、軟らかく痛み易い果実とした場合であっても、果実への損傷の発生を、従来の、熱可塑性樹脂材料からなる緩衝材に比して、より効果的に防止することができる。
【0013】
しかもここでは、多角形状シートの各隅部に、平面視で、該多角形シートの、前記側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成される折り曲げ線の相互の交点を頂点とするV字状の切欠き部分を設けることにより、緩衝材を、容器の内側に嵌め合わせるに際し、各側部相当部分を、容器の各側面に沿わせて折り曲げることに起因して生じる、容器内の隅部での、隣接する側部相当部分の相互の重なり合いを十分小さく抑え、または、V字状切欠き部分の開き角度の選択のいかんによって完全に防止することができるので、容器内への緩衝材の嵌め合わせ姿勢を、容器底面からの浮き上がりなしに安定に維持させることができ、この結果として、収納物を容器内に収納するための作業能率の低下のおそれを、効果的に取り除くことができる。
【0014】
ここで、側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成されるそれぞれの折り曲げ線上に、シートの厚み方向に貫通する少なくとも一本の線上切込み部を形成したときは、緩衝材を、容器内に嵌め合わせるに当り、各側部相当部分を、容器側面に沿わせて折り曲げることによって、折り曲げ線上に生じる、側部相当部分を折り曲げ前の姿勢に戻そうとする復元力が、前記線上切込み部によって、大幅に軽減されることになって、前記復元力による、緩衝材の底部相当部分の、容器底面からの浮き上がりが十分に抑制されることになるので、収納作業能率の低下を、一層効果的に防止することができる。
【0015】
またここで、側部相当部分に、線上切込み部の所定の位置から、折り曲げ線に対して傾斜して延びるとともに、シートの厚み方向に貫通する傾斜切込み部を、たとえば、シートの厚み寸法と同程度の長さにわたって形成したときは、折り曲げ線上の、複数の線上切込み部の間に存在する連続部分に生じる上記の復元力の、側部相当部分の全体にわたる作用が、前記傾斜切込み部によって部分的に遮断されることになるので、とくに、側部相当部分の、線上切込み部および傾斜切込み部で挟まれる領域の、折り曲げ姿勢を十分に安定化させることができる。
このことに加えて、とくに、5mm以上の厚みの厚いシート状緩衝材においては、線上切込み部での、側部相当部分側の切込み面が、それに対向する、底部相当部分側の切込み面ないしは、その切込み縁に引っ掛かることになって、かかる引っ掛かりが、容器内での緩衝材の折り曲げ姿勢を維持するべく機能することになる。
これらの結果として、たとえば、シート厚みが5mm以上で、上述したような復元力が大きくなる緩衝材であっても、上述した作業能率の低下防止効果を、より一層高めることができる。
【0016】
そして、この場合において、傾斜切込み部の延在長さを、該傾斜切込み部を形成した側部相当部分の幅の、30%〜50%の範囲内としたときは、とくに、シート厚みが5mm以上で、底部相当部分および各側部相当部分の表面に凹凸形状を付与した緩衝材であっても、容器内に嵌め合わせた状態で、緩衝材それ自体が適度な復元力を発揮して、緩衝材の、容器の内面に沿った安定な姿勢を実現することができる。
これを言い換えれば、傾斜切込み部の延在長さを、該傾斜切込み部を形成した側部相当部分の幅の30%未満とした場合は、緩衝材の、容器底面からの浮き上がりを生じさせる復元力を、十分に軽減することができないことから、緩衝材の厚みや、緩衝材表面への凹凸形状の有無によっては、収納物を容器内に収納するための作業能率の低下を招くおそれがあり、この一方で、傾斜切込み部の延在長さを、該傾斜切込み部を形成した側部相当部分の幅の50%を超えるものとした場合は、側部相当部分内での、傾斜切込み部の延在長さが長すぎることによって、軟質ウレタンフォームからなる緩衝材の形状が不安定となる結果、緩衝材が、容器内に嵌め合わせた際に、容器の内面に十分に沿った姿勢とならず、この場合もまた、収納作業能率が低下する懸念がある。
【0017】
なおここで、底部相当部分および各側部相当部分の、収納物が接触する表面に、凹凸形状を付与したときは、収納物の、緩衝材との接触面積を有効に低下させつつ、厚みが厚い凸状部分に、大きな緩衝機能を発揮させることができるので、先に述べたような、軟質ウレタンフォームに固有の、優れた緩衝作用とも相俟って、容器内に収納された果実等の保護をより十分なものとして、果実の損傷のおそれをさらに効果的に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す緩衝材を、容器内に配置した状態を示す斜視図である。
【図3】シート隅部に形成する切欠き部分の変形例を示す部分拡大平面図である。
【図4】他の実施形態を示す平面図である。
【図5】さらに他の実施形態を示す平面図である。
【図6】側部相当部分を折り曲げた姿勢で示す、図5のVI−VI線に相当する箇所での断面図である。
【図7】他の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施形態について説明する。
図1に、平面図で示すところにおいて、1は、平面視で長方形状とすることができる一枚のシートとしての緩衝材を示す。
なお、緩衝材1は、図示は省略するが、正方形状シートとすることができる他、六角形状等の、方形以外の多角形状に形成することも可能である。
ここで、緩衝材1は、図2に示す、容器100の内面に接触させた配置姿勢で、容器100の底面上に敷設される底部相当部分2と、底部相当部分2に連続して、容器100の各側面に沿って延びる側部相当部分3〜6とを有する。
【0020】
このような緩衝材1は、図2に示す如く、側部相当部分3〜6のそれぞれを、図1に仮想線で示す、底部相当部分2と各側部相当部分3〜6との境界位置の折り曲げ線Rで折り曲げた状態で、容器100内に配置することで、内側に収納される、図示しない収納物、たとえば、イチゴ等の果実の出荷時その他の、容器100の移送に伴う、衝突衝撃を緩和するべく機能して、果実への損傷の発生を防止するものである。
【0021】
ここにおいて、この発明では、緩衝材1を、とくに緩衝性に優れるとともに、素材の配合割合等によって硬さ等を変えることのできる、熱硬化性の軟質ウレタンフォームにて形成することにより、容器100の搬送に際し、容器100と果実の間に介装させた緩衝材1に当接する果実への衝撃入力を大幅に緩和できるので、緩衝材1による、果実保護機能を大きく向上させることができる。
【0022】
軟質ウレタンフォームからなる緩衝材1の配合としては、ポリオール、イソシアネート、その他発泡助剤があげられる。
このポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;エチレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−2−クロロアニリン、4,4’−メチレン−ビス−2−エチルアニリンなどのアミン化合物又は低分子ポリオール若しくはアミン化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合して得られる、ビスフェノールのプロピレンオキシド付加物などのポリエーテルポリオール;更には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコールとフタル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸などの多塩基酸との縮合重合物であって末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ヒマシ油、トール油などを用いることができる。
【0023】
ポリオール成分配合液はポリオール、触媒、整泡剤、必要に応じて添加されるその他の添加成分を配合して混合することにより調製される。
【0024】
ウレタン配合原液の調製に用いるイソシアネート成分としては特に制限はなく、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートであって、脂肪族系及び芳香族ポリイソシアネート化合物、更にこれらの変性物が包含される。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの変性物としては、カルボジイミド変性物、プレポリマー変性物が挙げられる。本発明において好ましいポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネート又は芳香族系ポリイソシアネートの変性物であり、特に好ましくはジフェニルメタンイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
また、発泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に使用される全ての発泡剤が使用できる。例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド、液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等、熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等がある。これらのうち、好ましい発泡剤としては、メチレンクロライド、水等が挙げられる。整泡剤としては、シリコーンオイル等を用いることができる。
【0026】
触媒としては、通常のポリウレタンフォームの製造に使用される全ての触媒が使用できる。例えば、ジブチルチンジウラレート、スタナスオクトエート等の錫系触媒、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0027】
ポリオール成分配合液には、更に必要に応じて、難燃剤、その他の添加成分を配合しても良い。難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のような従来公知の難燃剤の他、尿素、チオ尿素のような有機質粉末或いは金属水酸化物、三酸化アンチモン等の無機質粉末を用いることができる。また、その他の助剤としては、顔料、染料などの着色粉末、タルク、グラファイトなどの粉末、ガラス短繊維、その他の無機増量剤や有機溶媒などが挙げられる。
【0028】
そして、このような材料によって形成した緩衝材1としての軟質ウレタンフォームの発泡倍率は、50〜80倍とすることができ、また、軟質ウレタンフォームの密度は、0.0125〜0.02g/cmとすることができる。
【0029】
ところで、上述したような、軟質ウレタンフォームからなる緩衝材1は、緩衝性に極めて優れた性能を発揮することができるも、単純な平坦シート状部材からなる緩衝材を、容器100内に嵌め合わせるに際しては、緩衝材自身の弾性復元力に基いて、底部相当部分が、容器底面から浮き上がり易く、底部相当部分および側部相当部分のそれぞれを、容器底面および側面の各々に沿って接触した状態に維持することが困難となる結果、緩衝材の内側に配置される果実、たとえば、複数のイチゴ等の収納作業を、十分効率的に行い得なくなるおそれがある。
【0030】
そこで、緩衝材1としての矩形状シートの各隅部に、図1に示すように、平面視で、側部相当部分3〜6と底部相当部分2との境界位置に形成される、図に仮想線で示す折り曲げ線Rの相互の交点A〜Dを頂点とするV字状の切り欠き部分7〜10をそれぞれ形成し、これにより、緩衝材1を容器100内に配置する場合の、隣り合う側部相当部分3〜6の相互の重なり合いを、図2に示すように十分に防止することで、側部相当部分の相互の重なり合いに起因する、緩衝材1の弾性復元力の発生を有効に抑制して、緩衝材1の底部相当部分2の、容器底面からの浮き上がりを防止することができる。
そして、この結果として、収納物の、容器100内への収納作業を、極めて容易に行うことができ、作業能率の低下を有利に防止することができる。
【0031】
方形の容器100に対する、かかるV字状の切欠き部分7〜10の、図1に示す開き角度θは、緩衝材1を、容器内に、側部相当部分3〜6の相互の、小さな重なり領域の下で、または、全く重なることなく配置するとともに、収納物が、容器側面に直接的に接触することを防止するとの観点から、1°〜90°とすることが好ましい。
なお、V字状の切欠き部分は、緩衝材1の、容器内への配置姿勢での、側部相当部分の相互の重なり領域を小さくできるものであればよいので、図3に、部分拡大平面図で誇張して示すように、V字状の切欠き部分17を構成する各切断面17a、17bの、それぞれが隣接する折り曲げ線Rからの立ち上がり角度α、βを、互いに相違させることもできる。
【0032】
ここにおいて、容器内への収納物の収納作業効率を、より一層高めるべく、緩衝材の、容器内への嵌合姿勢をさらに安定させるためには、図4に示すように、緩衝材21の、各側部相当部分23〜26と底部相当部分22との境界位置に形成されるそれぞれの折り曲げ線R上に、シートの厚み方向に貫通する複数の線上切込み部31a、31bを形成することが好ましい。
このことによれば、緩衝材21を、容器内に嵌め合わせた際に、折り曲げ線R上の、隣り合う線上切込み部31a、31bの間に位置する連続部分32だけに、側部相当部分23〜26を、嵌め合わせ前の姿勢に戻そうとする復元力が生じることになって、そのような復元力を大きく軽減できるので、容器内への嵌め合わせ姿勢のさらなる安定化をもたらすことができ、その結果として、収納作業の能率を向上させる効果がより一層高まることになる。
ここで、かかる復元力は、図示のような、平面視で長方形状をなす緩衝材21で、シート厚みが3mm以上であって、長辺側の側部相当部分23、25の幅Jが、底部相当部分22の短辺の長さKの40%未満である場合に、とくに大きなものとなるため、このような場合に、上述したような、復元力を軽減させる線上切込み部31a、31bを形成することが、収納作業能率を有効に向上させるとの観点から効果的である。
【0033】
図4に示すところでは、それぞれの折り曲げ線R上に、それの中間部分に位置する線上切込み部31aのみならず、折り曲げ線Rの両端部分に位置して、V字状の切欠き部分27〜30の頂点A〜Dに到達する線上切込み部31bをも形成しているところ、かかる線上切込み部31bにより、底部相当部分22を、それの各隅部を含む全体にわたって、容器底面に十分に沿わせて敷設することが可能となるので、底部相当部分22の、容器底面からの浮き上がりのおそれを、有効に取り除くことができる。
なお、図示は省略するが、折り曲げ線上に形成する線上切込み部分は、両端部分の線上切込み部31bまたは、中間部分の線上切込み部31aのいずれか一方のみとすることもできる。
【0034】
なおここで、上記したような、側部相当部分23〜26を、嵌め合わせ前の姿勢に戻そうとする、連続部分32での復元力を有効に軽減させるとの観点から、単一の折り曲げ線R上での、複数の線上切込み部31a、31bのそれぞれの延在長さLa、Lbの合算値は、その折り曲げ線Rの全長Lの、75〜80%の範囲内とすることが好ましい。
また、同様の観点から、線上切込み部31a、31bの間の連続部分32の、折り曲げ線R上の長さLcは、中間部分の線上切込み部31aの延在長さLaの、25〜35%とすることが好ましい。
【0035】
具体的には、たとえば、線上切込み部31aの延在長さLaを4cmとした場合は、連続部分23の長さLcを1cmとすることができる。
なお、先に述べた復元力は、シートの厚みが厚くなるに従って増大することから、緩衝材20のシート厚みに応じて、線上切込み部31a、32bの延在長さLa、Lbや形成本数を選択することが好ましい。
【0036】
ここで、たとえば、緩衝材のシート厚みが5mm以上である場合や、シート厚みが3mm〜5mmの緩衝材で、その表面に、後述する凹凸形状を付与した場合は、上記の線上切込み部によっても、上記の復元力を十分に軽減し得ないことがあるので、このような場合には、図5に示すように、側部相当部分43〜46に、折り曲げ線Rの中間部分のそれぞれの線上切込み部51aの所定の位置から、折り曲げ線Rに対して傾斜して延びるとともに、シートの厚み方向に貫通する傾斜切込み部53を、たとえば、各線上切込み部51aにつき二本形成することができる。
なお、傾斜切込み部は、線上切込み部一本当り三本以上形成することも可能である。
【0037】
側部相当部分43〜46に、線上切込み部51aに連通するこのような傾斜切込み部53を設けることにより、緩衝材41の、容器内への嵌合せ姿勢で、連続部分52に生じる弾性復元力の、側部相当部分内での伝達が部分的に遮断されることになって、たとえば、図示の如く、一本の線上切込み部51aに、二本の傾斜切込み部53を連通させて設けた場合は、とくに、側部相当部分の、二本の傾斜切込み部53間に挟まれる領域への、前記復元力の伝達が十分抑制されて、その領域の折り曲げ姿勢を、容器側面による支持の下、安定的に維持できるので、シート厚みが、たとえば5mm以上の緩衝材41であっても、果実の、容器内への収納作業の能率を大きく向上させることができる。
【0038】
しかも、このような傾斜切込み部53を形成してなる緩衝材41を、容器内に嵌め合せるために、側部相当部分43〜46を、折り曲げ線Rに沿って折り曲げた場合は、図6に、側部相当部分45を折り曲げた状態での、線上切込み部51aに直交する断面で示すように、線上切込み部51aでの、側部相当部分45側の切込み面45aの、図では側縁が、底部相当部分42側の切込み面42aに引っ掛かることになるので、かかる引っ掛かりによって、側部相当部分45の、折り曲げ前の姿勢への復元をさらに効果的に防止することができる。
【0039】
ここで、たとえば、長辺側の側部相当部分43に形成した傾斜切込み部53の延在長さMは、その側部相当部分43の幅の、30〜50%の範囲内とすることが、緩衝材41の、容器内への、安定した嵌め合わせ姿勢を実現する上で好ましい。
一方、短辺側の側部相当部分44に形成した傾斜切込み部の延在長さは、その側部相当部分44の幅の、30〜50%とすることが、同様の観点から好ましい。
【0040】
かかる場合において、傾斜切込み部53の、線上切込み部51aからの傾斜角度は、たとえば、45〜90°の範囲内とすることができる。
なお、図5に示すように、各線上切込み部51aにつき、傾斜切込み部53を二本形成したときは、二本の傾斜切込み部53のそれぞれの延在態様を、平面視で、線上切込み部51aに向かうに従い相互に接近する姿勢とすることができる。
【0041】
そしてまた、線上切込み部51aの、傾斜切込み部53が連通される前記所定位置は、線上切込み部51aの端縁位置と、該端縁位置から、線上切込み部51aに沿って、その延在長さLaの、15〜20%の距離だけ離れた位置との間とすることができる。
【0042】
ところで、果実への衝突衝撃をより一層緩和するためには、図7、8に示すように、底部相当部分62および各側部相当部分63〜66の、収納物が接触する表面に、凹凸形状を付与することが好ましい。
このことによれば、凹状部分74を形成したことに基き、果実表面の、緩衝材60との総接触面積が低減される一方で、果実表面の大部分が接触することになる、厚みが厚い凸状部分75が、大きな緩衝機能を発揮することになり、果実の衝突衝撃を有効に緩和させるとともに、果実の自重を効果的に分散支持することができるので、果実への損傷の発生のおそれを、より確実に取り除くことが可能となる。
【0043】
凹凸形状を付与したこの緩衝材60では、図8に断面図で示すように、たとえば、凸状部分75での最大シート厚みTmaxを5mmとし、また、凹状部分74での最小シート厚みTminを3mmとすることができる。
なお、図7、8に示すものよりも先に述べた実施形態において、シート表面に、このような凹凸形状を付与する場合で、「シート厚み」というときは、凸状部分75での最大シート厚みTmaxを意味するものとする。
また、かかる凹状部分74および凸状部分75の曲率半径は、たとえば、3mm〜50mmとすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1、21、41、61 緩衝材
2、12、22、42、62 底部相当部分
3〜6、13、16、23〜26、43〜46、63〜66 側部相当部分
7〜10、27〜30、43〜50、67〜70 切欠き部分
17a、17b 切断面
31a、51a、31b、51b 線上切込み部
32、52 連続部分
42a、45a 切込み面
65 凸状部分
66 凹状部分
100 容器
R 折り曲げ線
A〜D 折り曲げ線の交点
α、β 切断面の立ち上がり角度
J 側部相当部分の幅
K 底部相当部分の短辺の長さ
L 折り曲げ線の全長
La、Lb 線上切込み部の延在長さ
Lc 連続部分の長さ
Tmax 最大シート厚み
Tmin 最小シート厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で多角形状をなす一枚のシートであって、該シートを折り曲げてなる、容器内への配置姿勢で、容器の底面に敷設される底部相当部分と、該底部相当部分に連続して、容器の各側面に沿って延びる側部相当部分とを有してなり、容器内への収納物を衝撃から保護する緩衝材であって、前記多角形状シートを、軟質ウレタンフォームにて構成するとともに、多角形状シートの各隅部に、平面視で、前記側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成される折り曲げ線の相互の交点を頂点とするV字状の切欠き部分を設けてなる緩衝材。
【請求項2】
前記側部相当部分と底部相当部分との境界位置に形成されるそれぞれの折り曲げ線上に、シートの厚み方向に貫通する少なくとも一本の線上切込み部を形成してなる請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記側部相当部分に、線上切込み部の所定の位置から、前記折り曲げ線に対して傾斜して延びるとともに、シートの厚み方向に貫通する傾斜切込み部を形成してなる請求項2に記載の緩衝材。
【請求項4】
傾斜切込み部の延在長さを、該傾斜切込み部を形成した側部相当部分の幅の、30%〜50%の範囲内としてなる請求項3に記載の緩衝材。
【請求項5】
底部相当部分および各側部相当部分の、収納物が接触する表面に、凹凸形状を付与してなる請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−148809(P2012−148809A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9901(P2011−9901)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】