説明

練り製品及びその製造方法

【課題】食用油の量が少なく低カロリーで食べやすい練り製品を必要最小限の食用油を用いて油煙の発生を伴わずに製造することができる練り製品の製造方法を提供する。
【解決手段】練り製品の製造方法に関する。すり身1を蒸した後、この表面に食用油2を付着させると共に、過熱水蒸気3を当てて加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薩摩揚げのような練り製品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薩摩揚げのような練り製品は、魚肉のすり身に塩・砂糖などを加えて味付けを行い、丸形などに形を整えた後、これを170〜180℃の食用油で2〜3分揚げることによって製造されている(例えば、特許文献1参照。)。そして食用油で揚げた直後の練り製品には余分な食用油が付着しており、また高温であるため、脱油して風冷する必要がある。
【特許文献1】特開2002−369668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の製造方法にあっては、食用油を入れたフライヤーにすり身を浸漬させた状態で揚げているため、すり身の内部に食用油が浸透し、脱油の際に食用油の切れが悪くなって、薩摩揚げに余分な食用油が残ってしまうという問題がある。このように食用油の量が多い薩摩揚げは食べにくい上に、必要以上の脂質を摂取する原因にもなり、健康上好ましくない。
【0004】
また、新鮮な食用油をフライヤーに入れてすり身を揚げていても、食用油は常に加熱された状態にあるので加熱重合によって劣化する。またすり身の水分が食用油に作用して遊離脂肪酸(フリーラジカル)を発生させるので食用油は加水分解によっても劣化する。このように、フライヤーに入れた食用油は調理時間の経過と共に酸化して劣化するため、食用油を取り替える直前に揚げて得られた薩摩揚げは、最初に揚げて得られた薩摩揚げに比べて、酸化した食用油の影響を強く受けて品質が低下しているものである。この酸化による食用油の劣化の程度は、発生した遊離脂肪酸の量を測定することによって酸化値(AV値)として表されるが、新鮮な食用油の酸化値は0であり、加熱されるとこの酸化値は徐々に上昇し、酸化値が2.0を超えると通常新鮮な食用油に取り替えられる。そして一旦劣化してしまった食用油は廃棄するしかないので、多量の食用油が無駄に消費されてしまうものである。
【0005】
さらに、フライヤーによる油調では油煙が発生し、この油煙が人体に悪影響を及ぼすおそれがあるので、排気設備を設置する必要があるが、このような設備を設置する場合には多額の費用がかかる場合がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、食用油の量が少なく低カロリーで食べやすい練り製品及びこのような練り製品を必要最小限の食用油を用いて油煙の発生を伴わずに製造することができる練り製品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る練り製品の製造方法は、すり身1を蒸した後、この表面に食用油2を付着させると共に、過熱水蒸気3を当てて加熱することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、食用油2を付着させる手段が、塗布・噴霧・浸漬のいずれかであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、食用油2の付着量が1.0〜15.0mg/cmであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、過熱水蒸気3の量及び過熱水蒸気3を当てる時間の少なくともいずれかを変化させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5に係る練り製品は、すり身1を蒸した後、この表面に食用油2を付着させると共に、過熱水蒸気3を当てて加熱されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る練り製品の製造方法によれば、従来の薩摩揚げ等の練り製品に比べて食用油の量が少なく低カロリーで食べやすい練り製品を必要最小限の食用油を用いて油煙の発生を伴わずに製造することができるものである。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、蒸したすり身の表面に容易に食用油を付着させることができるものである。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、食欲をそそる風味を確保しつつ、余分な食用油を摂取しないようにすることができるものである。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、焦げ目を調整することができるものである。
【0016】
本発明の請求項5に係る練り製品によれば、従来の薩摩揚げ等の練り製品に比べて食用油の量が少なく低カロリーであり食が進むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は本実施形態の練り製品の製造装置の一例を示すものであり、この製造装置は、蒸し処理部4と、油付着処理部5と、過熱水蒸気処理部6とを備えて形成されている。
【0019】
蒸し処理部4は、箱状に形成される蒸し処理室7と、蒸し処理室7の対向面に開口された入口8及び出口9を突き抜けて配置される蒸し処理用搬送コンベア10とを備えて形成されている。蒸し処理室7は、水蒸気発生装置11と接続されており、この水蒸気発生装置11で発生した水蒸気を蒸し処理室7内に送り込むことによって、蒸し処理室7内のすり身1に対して蒸し処理を行うことができるようにしてある。また蒸し処理用搬送コンベア10は、テフロン(登録商標)等で形成される無端ベルト12を一対のローラ13,14に巻回して形成されている。
【0020】
油付着処理部5は、蒸し終わったすり身1の表面に食用油2を付着させる手段であって、油噴霧装置15と、油付着用搬送コンベア16とを備えて形成されている。油噴霧装置15は、下面に吹付ノズル17が設けられた上噴霧部18と、上面に吹付ノズル19が設けられた下噴霧部20とを備えて形成されている。上噴霧部18と下噴霧部20は、油付着用搬送コンベア16を介して上下に対向して配置されており、いずれもエアー供給装置21及び油タンク22と接続されている。エアー供給装置21はエアーコンプレッサー等で形成され、上噴霧部18及び下噴霧部20にエアーを供給するものであり、また油タンク22はすり身1の表面に付着させるための菜種油等の食用油2を貯溜し、この食用油2を上噴霧部18及び下噴霧部20に供給するものである。食用油2は加熱されると劣化するので、加熱しない状態で、つまり常温の状態で油タンク22に貯溜されている。そのため、酸化値が0の新鮮な食用油2を常に上噴霧部18及び下噴霧部20に供給することができるものである。なお、食用油2としては、菜種油のほか、サラダ油、オリーブオイル、大豆油、ごま油、米油、その他の加工健康油等を用いることができる。中でも不飽和脂肪酸が少ないものが好ましい。そして、上噴霧部18及び下噴霧部20にエアー供給装置21からエアーを供給すると共に油タンク22から食用油2を供給することによって、上噴霧部18と下噴霧部20の間に位置するすり身1に上下の吹付ノズル17,19から食用油2を噴霧して付着させることができるものである。また油付着用搬送コンベア16は、無端メッシュベルト23を一対のローラ24,25に巻回して形成され、上流側を蒸し処理用搬送コンベア10の下流側と近接させて配置されている。なお、油付着用搬送コンベア16は、上記のように無端メッシュベルト23を用いて形成されているので、下噴霧部20の吹付ノズル19から噴霧された食用油2は問題なくすり身1の下面に付着される。
【0021】
過熱水蒸気処理部6は、箱状に形成される過熱水蒸気処理室26と、過熱水蒸気処理室26の対向面に開口された入口27及び出口28を突き抜けて配置される過熱水蒸気処理用搬送コンベア29とを備えて形成されている。過熱水蒸気処理室26は、下面に噴出ノズル30が複数設けられた上噴出部31と、上面に噴出ノズル32が複数設けられた下噴出部33とを内部に備えて形成されている。上噴出部31と下噴出部33は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア29を介して上下に対向して配置されていると共に、過熱水蒸気処理室26の外に設けられた過熱水蒸気供給装置34と接続されている。過熱水蒸気供給装置34は、ボイラー等で形成され、常圧で100℃の飽和水蒸気をさらに加熱して110〜300℃の高温の過熱水蒸気3を発生させるものであり、またこの過熱水蒸気3を上噴出部31及び下噴出部33に供給するものである。そして、上噴出部31及び下噴出部33に過熱水蒸気供給装置34から過熱水蒸気3を供給することによって、上噴出部31と下噴出部33の間に位置するすり身1に上下の噴出ノズル30,32から無酸素状態で過熱水蒸気3を当てて加熱することができるものである。また過熱水蒸気処理用搬送コンベア29は、無端メッシュベルト35を一対のローラ36,37に巻回して形成され、上流側を油付着用搬送コンベア16の下流側と近接させて配置されている。なお、過熱水蒸気処理用搬送コンベア29は、上記のように無端メッシュベルト35を用いて形成されているので、下噴出部33の噴出ノズル32から噴出された過熱水蒸気3は問題なくすり身1の下面に当たる。
【0022】
次に上記製造装置を用いて練り製品を製造する方法について説明する。
【0023】
すり身1としては、特に限定されるものではないが、例えば薩摩揚げを作る場合には、イワシ・サメ・カツオ・サバ・ホッケ・スケソウダラ・イトヨリダイなどの魚肉をすり潰したものを用いることができる。またすり身1にはキクラゲ、紅しょうが、ゴボウなどの野菜、じゃこ、イカ、タコ、エビなどの魚介類、薬味などを加えてもよい。そして、このようなすり身1に塩・砂糖などを加えて味付けを行い、あらかじめ厚さ1〜2cm、直径8〜10cm程度の丸形・小判形・角形などに形を整えておく。
【0024】
次に、上記のように形を整えたすり身1を蒸し処理用搬送コンベア10の上流側に載置すると、このすり身1は、蒸し処理室7の入口8から蒸し処理室7内に入り、この中で蒸された後、出口9から出て下流側まで搬送される。このとき蒸し処理の温度は80〜98℃、蒸し時間は5〜30分に設定しておくのが好ましい。
【0025】
その後、蒸し処理室7から出てきたすり身1は、油付着用搬送コンベア16の上流側に乗り移り、そのまま油噴霧装置15の上噴霧部18と下噴霧部20の間を通過して、表面に食用油2が付着された後、下流側まで搬送される。このとき食用油2を付着させる手段が噴霧であるため、蒸したすり身1の表面に容易に食用油2を付着させることができるものである。このようにして、すり身1の表面には新鮮な食用油2が常に付着されるので、従来のフライヤーを使用した油調に比べて、酸化して劣化した食用油2による影響を排除して、品質の低下を防止することができるものである。またすり身1の表面には必要最小限の食用油2が付着されて使用されるだけなので、従来に比べて無駄に使用される食用油2がなく、廃棄される食用油2の量を大幅に減少させることができるものである。そして特にすり身1への食用油2の付着量が1.0〜15.0mg/cm、好ましくは2.0〜6.0mg/cmとなるように油噴霧装置15からの食用油2の噴霧量及び油付着用搬送コンベア16の速度を調整しておくと、食欲をそそる風味を確保しつつ、余分な食用油2を摂取しないようにすることができる練り製品を最終的に得ることができるものである。しかし、食用油2の付着量が1.0mg/cmより少ないと、乾燥しすぎて見栄えが悪い上に、食欲をそそる風味が得られないおそれがある。逆に、食用油2の付着量が15.0mg/cmより多いと、べっとりしすぎており、余分な食用油2を摂取してしまうおそれがある。
【0026】
そして、油付着処理部5において食用油2が付着されたすり身1は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の上流側に乗り移り、そのまま過熱水蒸気処理室26の入口27から過熱水蒸気処理室26内に入り、無酸素状態で過熱水蒸気3を当てられて加熱された後、出口28から出て下流側まで搬送され、薩摩揚げ等の練り製品として得られる。このように、加熱は過熱水蒸気処理室26内で行われ、またすり身1に付着している食用油2の量は少ないので、油煙の発生を大幅に軽減することができるものである。このとき過熱水蒸気3の温度は150〜300℃、過熱水蒸気3を当てる時間は30秒〜10分に設定することができるが、過熱水蒸気供給装置34からの過熱水蒸気3の供給量や過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の速度を調整するなどして、過熱水蒸気3の量及び過熱水蒸気3を当てる時間の少なくともいずれかを変化させるようにすると、練り製品の表面に付く焦げ目の程度を任意に調整することができ、食用油2による照り・つや感と相俟って食欲をそそるような外観に仕上げることができるものである。
【0027】
このようにして製造された練り製品にあっては、すり身1の表面に付着された食用油2に過熱水蒸気3を当てて加熱されているので、従来の薩摩揚げ等の練り製品に比べて食用油2の量が少なく低カロリーであり食が進むものである。
【0028】
(実施形態2)
図2は本実施形態の練り製品の製造装置の一例を示すものであり、この製造装置は、蒸し処理部4と、油付着処理部5と、過熱水蒸気処理部6とを備えて形成されている。このうち蒸し処理部4及び過熱水蒸気処理部6は実施形態1と同様に形成されているのでこれらについての説明は省略し、実施形態1とは異なる油付着処理部5について説明する。
【0029】
油付着処理部5は、蒸し終わったすり身1の表面に食用油2を付着させる手段であって、油付着用搬送コンベア16と、油塗布装置38とを備えて形成されている。油付着用搬送コンベア16は、無端ベルト39を一対のローラ40,41に巻回して形成され、上流側を蒸し処理用搬送コンベア10の下流側と近接させて配置されている。また油塗布装置38は、上スポンジローラ42と、下スポンジローラ43とを備えて形成され、油付着用搬送コンベア16と過熱水蒸気処理用搬送コンベア29との間に配置されている。上スポンジローラ42と下スポンジローラ43は、上下に対向して配置されており、いずれも油タンク22と接続されている。油タンク22はすり身1に付着させる菜種油等の食用油2を貯溜し、この食用油2を上スポンジローラ42及び下スポンジローラ43に供給するものである。食用油2は加熱されると劣化するので、加熱しない状態で、つまり常温の状態で油タンク22に貯溜されている。そのため、酸化値が0の新鮮な食用油2を常に上スポンジローラ42及び下スポンジローラ43に供給することができるものである。なお、食用油2としては、菜種油のほか、サラダ油、オリーブオイル、大豆油、ごま油、米油、その他の加工健康油等を用いることができる。中でも不飽和脂肪酸が少ないものが好ましい。そして、上スポンジローラ42及び下スポンジローラ43に油タンク22から食用油2を供給して染み込ませることによって、上スポンジローラ42と下スポンジローラ43で挟み込まれたすり身1の表面に食用油2を塗布して付着させることができるものである。
【0030】
次に上記製造装置を用いて練り製品を製造する方法について説明する。
【0031】
実施形態1と同様に形を整えたすり身1を蒸し処理用搬送コンベア10の上流側に載置すると、このすり身1は、蒸し処理室7の入口8から蒸し処理室7内に入り、この中で蒸された後、出口9から出て下流側まで搬送される。このとき蒸し処理の温度は80〜98℃、蒸し時間は5〜30分に設定しておくのが好ましい。
【0032】
その後、蒸し処理室7から出てきたすり身1は、油付着用搬送コンベア16の上流側に乗り移り、そのまま下流側から油塗布装置38の上スポンジローラ42と下スポンジローラ43の間を通過して、表面に食用油2が付着される。このとき食用油2を付着させる手段が塗布であるため、蒸したすり身1の表面に容易に食用油2を付着させることができるものである。このようにして、すり身1の表面には新鮮な食用油2が常に付着されるので、従来のフライヤーを使用した油調に比べて、酸化して劣化した食用油2による影響を排除して、品質の低下を防止することができるものである。またすり身1の表面には必要最小限の食用油2が付着されて使用されるだけなので、従来に比べて無駄に使用される食用油2がなく、廃棄される食用油2の量を大幅に減少させることができるものである。そして特にすり身1への食用油2の付着量が1.0〜15.0mg/cm、好ましくは2.0〜6.0mg/cmとなるように上スポンジローラ42及び下スポンジローラ43に染み込ませる食用油2の量及び油付着用搬送コンベア16の速度を調整しておくと、食欲をそそる風味を確保しつつ、余分な食用油2を摂取しないようにすることができる練り製品を最終的に得ることができるものである。しかし、食用油2の付着量が1.0mg/cmより少ないと、乾燥しすぎて見栄えが悪い上に、食欲をそそる風味が得られないおそれがある。逆に、食用油2の付着量が15.0mg/cmより多いと、べっとりしすぎており、余分な食用油2を摂取してしまうおそれがある。
【0033】
そして、油付着処理部5において食用油2が付着されたすり身1は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の上流側に乗り移り、そのまま過熱水蒸気処理室26の入口27から過熱水蒸気処理室26内に入り、無酸素状態で過熱水蒸気3を当てられて加熱された後、出口28から出て下流側まで搬送され、薩摩揚げ等の練り製品として得られる。このように、加熱は過熱水蒸気処理室26内で行われ、またすり身1に付着している食用油2の量は少ないので、油煙の発生を大幅に軽減することができるものである。このとき過熱水蒸気3の温度は150〜300℃、過熱水蒸気3を当てる時間は30秒〜10分に設定することができるが、過熱水蒸気供給装置34からの過熱水蒸気3の供給量や過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の速度を調整するなどして、過熱水蒸気3の量及び過熱水蒸気3を当てる時間の少なくともいずれかを変化させるようにすると、練り製品の表面に付く焦げ目の程度を任意に調整することができ、食用油2による照り・つや感と相俟って食欲をそそるような外観に仕上げることができるものである。
【0034】
このようにして製造された練り製品にあっては、すり身1の表面に付着された食用油2に過熱水蒸気3を当てて加熱されているので、従来の薩摩揚げ等の練り製品に比べて食用油2の量が少なく低カロリーであり食が進むものである。
【0035】
(実施形態3)
図3は本実施形態の練り製品の製造装置の一例を示すものであり、この製造装置は、蒸し処理部4と、油付着処理部5と、過熱水蒸気処理部6とを備えて形成されている。このうち蒸し処理部4及び過熱水蒸気処理部6は実施形態1と同様に形成されているのでこれらについての説明は省略し、実施形態1とは異なる油付着処理部5について説明する。
【0036】
油付着処理部5は、蒸し終わったすり身1の表面に食用油2を付着させる手段であって、油槽44と、油付着用搬送コンベア16と、エアー吹付装置45とを備えて形成されている。油槽44は、上面が開口された容器で形成されており、すり身1の表面に付着させるための菜種油等の食用油2が加熱されずに貯溜されている。すなわち、食用油2は加熱されると劣化するので、加熱しない状態で、つまり常温の状態で油槽44に貯溜されている。なお、食用油2としては、菜種油のほか、サラダ油、オリーブオイル、大豆油、ごま油、米油、その他の加工健康油等を用いることができる。中でも不飽和脂肪酸が少ないものが好ましい。また油付着用搬送コンベア16は、第1〜第4搬送コンベア46,47,48,49からなり、いずれも無端メッシュベルト50,51,52,53を一対のローラ54,55,56,57,58,59,60,61に巻回して形成されている。第1搬送コンベア46は、上流側が蒸し処理用搬送コンベア10の下流側と近接し、下流側が油槽44の食用油2内に入るように、下り傾斜させた状態で配置されている。第1搬送コンベア46の無端メッシュベルト50の表面には滑り止め用突起62が複数設けられており、この滑り止め用突起62によって搬送中のすり身1が滑り落ちるのを防止している。第2搬送コンベア47は、上流側が第1搬送コンベア46の下流側と近接するように、油槽44の食用油2内において水平な状態で配置されている。第3搬送コンベア48は、上流側が第2搬送コンベア47の下流側と近接し、下流側が油槽44の食用油2内から出るように、上り傾斜させた状態で配置されている。第3搬送コンベア48の無端メッシュベルト52の表面にも滑り止め用突起62が複数設けられており、この滑り止め用突起62によって搬送中のすり身1が滑り落ちるのを防止している。第4搬送コンベア49は、上流側が第3搬送コンベア48の下流側と近接し、下流側が過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の上流側と近接するように配置されている。またエアー吹付装置45は、下面に吹付ノズル63が設けられた上吹付部64と、上面に吹付ノズル65が設けられた下吹付部66とを備えて形成されている。上吹付部64と下吹付部66は、第4搬送コンベア49を介して上下に対向して配置されており、いずれもエアー供給装置21と接続されている。エアー供給装置21はエアーコンプレッサー等で形成され、上吹付部64及び下吹付部66にエアーを供給するものである。そして、上吹付部64及び下吹付部66にエアー供給装置21からエアーを供給することによって、上吹付部64と下吹付部66の間に位置するすり身1に上下の吹付ノズル63,65からエアー68を吹き付けることができるものである。
【0037】
次に上記製造装置を用いて練り製品を製造する方法について説明する。
【0038】
実施形態1と同様に形を整えたすり身1を蒸し処理用搬送コンベア10の上流側に載置すると、このすり身1は、蒸し処理室7の入口8から蒸し処理室7内に入り、この中で蒸された後、出口9から出て下流側まで搬送される。このとき蒸し処理の温度は80〜98℃、蒸し時間は5〜30分に設定しておくのが好ましい。
【0039】
その後、蒸し処理室7から出てきたすり身1は、第1搬送コンベア46の上流側に乗り移り、そのまま油槽44の食用油2内に導かれて浸漬される。引き続きすり身1は、第1搬送コンベア46から第2搬送コンベア47に乗り移り、第2搬送コンベア47から第3搬送コンベア48に乗り移って油槽44の食用油2内から引き上げられる。このように、食用油2を付着させる手段が浸漬であるため、蒸したすり身1の表面に容易に食用油2を付着させることができるものである。このようにして、すり身1の表面には新鮮な食用油2が常に付着されることとなり、従来のフライヤーを使用した油調に比べて、酸化して劣化した食用油2による影響を排除して、品質の低下を防止することができるものである。また油槽44の食用油2は加熱されていないので酸化による劣化が起こりにくく、そのため従来のフライヤーによる油調の場合に比べて食用油2の取替えの回数を少なくすることができ、廃棄される食用油2の量を大幅に減少させることができるものである。なお、第1〜第3搬送コンベア46,47,48は、無端メッシュベルト50,51,52を用いて形成されているので、すり身1の下面にも食用油2は問題なく付着される。油槽44の食用油2内から引き上げられたすり身1は、第4搬送コンベア49の上流側に乗り移り、そのままエアー吹付装置45の上吹付部64と下吹付部66の間を通過して、表面の余分な食用油2がエアー68で吹き飛ばされた後、下流側まで搬送される。なお、第4搬送コンベア49は、無端メッシュベルト53を用いて形成されているので、下吹付部66の吹付ノズル65からのエアー68は問題なくすり身1の下面に吹き付けられる。また食用油2の付着量が1.0〜15.0mg/cm、好ましくは2.0〜6.0mg/cmとなるようにエアー吹付装置45によるエアー68の吹付量及び第4搬送コンベア49の速度を調整しておくと、食欲をそそる風味を確保しつつ、余分な食用油2を摂取しないようにすることができる練り製品を最終的に得ることができるものである。しかし、食用油2の付着量が1.0mg/cmより少ないと、乾燥しすぎて見栄えが悪い上に、食欲をそそる風味が得られないおそれがある。逆に、食用油2の付着量が15.0mg/cmより多いと、べっとりしすぎており、余分な食用油2を摂取してしまうおそれがある。
【0040】
そして、油付着処理部5において食用油2が付着されたすり身1は、過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の上流側に乗り移り、そのまま過熱水蒸気処理室26の入口27から過熱水蒸気処理室26内に入り、無酸素状態で過熱水蒸気3を当てられて加熱された後、出口28から出て下流側まで搬送され、薩摩揚げ等の練り製品として得られる。このように、加熱は過熱水蒸気処理室26内で行われ、またすり身1に付着している食用油2の量は少ないので、油煙の発生を大幅に軽減することができるものである。このとき過熱水蒸気3の温度は150〜300℃、過熱水蒸気3を当てる時間は30秒〜10分に設定することができるが、過熱水蒸気供給装置34からの過熱水蒸気3の供給量や過熱水蒸気処理用搬送コンベア29の速度を調整するなどして、過熱水蒸気3の量及び過熱水蒸気3を当てる時間の少なくともいずれかを変化させるようにすると、練り製品の表面に付く焦げ目の程度を任意に調整することができ、食用油2による照り・つや感と相俟って食欲をそそるような外観に仕上げることができるものである。
【0041】
このようにして製造された練り製品にあっては、すり身1の表面に付着された食用油2に過熱水蒸気3を当てて加熱されているので、従来の薩摩揚げ等の練り製品に比べて食用油2の量が少なく低カロリーであり食が進むものである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0043】
(実施例)
すり身としては、スケソウダラとイトヨリダイをすり潰して混ぜ合わせたものを用いた。そして、このすり身に塩・砂糖などを加えて味付けを行い、ひら天を作るためにあらかじめ厚さ1.2cm、直径9.0cm程度の丸形に形を整えておいた。
【0044】
次に、練り製品の製造装置を用い、上記のように形を整えたすり身を蒸し処理部で蒸した。このとき蒸し処理の温度は95℃、蒸し時間は15分に設定しておいた。
【0045】
その後、蒸したすり身の表面に油付着処理部で食用油(菜種油)を付着させた。このとき食用油の付着量は3.2mg/cmであった。
【0046】
そして、食用油を付着させたすり身に過熱水蒸気処理部で過熱水蒸気を当てて加熱した。このとき過熱水蒸気の温度は270℃、過熱水蒸気を当てる時間は2分に設定しておいた。
【0047】
このようにして、実施例の練り製品(過熱水蒸気ひら天)を得た。
【0048】
(比較例)
実施例と同様のすり身を用い、これを170℃の食用油(菜種油)を入れたフライヤーに浸漬させ、この状態で3分揚げることによって、比較例の練り製品(通常のひら天)を得た。
【0049】
そして、実施例及び比較例について、衛生試験法・注解2000に基づいて試験を行った。また、AVチェッカー(油脂劣化度判定試験紙)を用いて、各練り製品の表面に残存している食用油の油脂劣化度(酸化値)を測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1にみられるように、実施例では比較例に比べて脂質を90%近く減少させることができ、カロリーも25%減少させることができることが確認される。
【0052】
なお、食用油の付着量を0.2mg/cm、1.9mg/cm、6.6mg/cm、16.2mg/cmと変えて実施例と同様に練り製品を製造した。これらの練り製品の脂質はそれぞれ0.4g/100g、0.4g/100g、0.8g/100g、1.0g/100gであり、比較例に比べて脂質が減少していることが確認される。
【0053】
次に、10代〜50代の男女76名(内訳は下記表2参照)に実施例及び比較例の練り製品をそれぞれ試食してもらい、下記質問事項を内容とするアンケートを実施した。
【0054】
1.どちらのひら天が油分が強いと感じられましたか?
2.どちらのひら天がしっかりとした食感に感じられましたか?
3.どちらのひら天がヘルシー感を感じられましたか?
上記アンケートの結果を下記表3及び図4に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
表3及び図4にみられるように、食感については比較例の練り製品の方がしっかりしていると感じている人が過半数を占めているものの、油分については実施例の練り製品の方が少ないと感じている人が70%近くを占めており、さらに実施例の練り製品の方にヘルシー感を感じている人が60%近くを占めていることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態1の一例を示す概略断面図である。
【図2】実施形態2の一例を示す概略断面図である。
【図3】実施形態3の一例を示す概略断面図である。
【図4】(a)はアンケートの質問事項1に対する回答の結果を示す円グラフ、(b)はアンケートの質問事項2に対する回答の結果を示す円グラフ、(c)はアンケートの質問事項3に対する回答の結果を示す円グラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 すり身
2 油
3 過熱水蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すり身を蒸した後、この表面に食用油を付着させると共に、過熱水蒸気を当てて加熱することを特徴とする練り製品の製造方法。
【請求項2】
食用油を付着させる手段が、塗布・噴霧・浸漬のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の練り製品の製造方法。
【請求項3】
食用油の付着量が1.0〜15.0mg/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の練り製品の製造方法。
【請求項4】
過熱水蒸気の量及び過熱水蒸気を当てる時間の少なくともいずれかを変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の練り製品の製造方法。
【請求項5】
すり身を蒸した後、この表面に食用油を付着させると共に、過熱水蒸気を当てて加熱されたことを特徴とする練り製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−306982(P2008−306982A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157865(P2007−157865)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(300004588)カネテツデリカフーズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】