説明

練条機の支持体を固定するための装置

【課題】
従来技術の短所を回避できる、保持ロッドに支持体を固定するための装置を提供することである。
【解決手段】
前記装置が、前記保持ロッド(3)に対して軸平行に配置された揺動軸(14)を中心にして揺動可能な、2本アームのレバー(12)を有し、前記レバー(12)は、前記トップローラ支持兼荷重アーム(1)の前記支持体(2)を固定するために、前記保持ロッド(3)に設けられた凹部(11)と係合することが可能である第1のレバーアーム(15)と、手段(13)が、運搬及び組立位置、あるいは固定位置において前記レバー(12)を位置決めするために作用する第2のレバーアーム(16)とを備えていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、練条機の支持体を固定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機の練条機は、支持体に揺動可能に軸支されたトップローラ支持兼荷重アームを含み、このアームは、装置によって保持ロッドに分離可能に固定されている。通例、紡績機の機械長の保持ロッド上には、練条機のトップローラ支持兼荷重アームが複数並べて配置されている。
【0003】
支持体を固定するための本装置の非常に簡単な実施形態では、2つのプレートからなる支持体が、保持ロッドに位置固定される。その際、保持ロッドは、支持体を配置するための孔を有し、その中へ固定ねじが係入する。例えば、これは、特許文献1によって公知である。この場合、短所として、固定ねじを締付するためにトルクを印加することによって、保持ロッドの孔が損傷する恐れがあるという点がある。運転中に練条機に生じるトルクの大部分は、孔内へ突出している固定ねじが受け止める。これにより、固定ねじは孔内で作用を及ぼし、保持ロッドにさらに損傷を引き起こすことにつながる。
【0004】
特許文献2にも支持体を固定するための装置が説明されており、この装置では、トップローラ支持兼荷重アームの、保持ロッド上に設置された支持体が、板ばねとして構成されたレバーアームによって固定される。レバーアームは、保持ロッドに対して軸平行に配置された揺動軸を中心にして揺動可能に配置されており、レバーアームへ作用する調整ねじによって位置決めされ、これにより、レバーアームに対して支持体を、設定された傾斜姿勢に固定することができる。この場合、次のような短所が明らかになっている。すなわち、支持体を保持ロッド上に配置するために、レバーアームは、保持ロッド上に配置された凹部のいずれとも係合できない位置に、操作者によって保持されねばならない。また、運転中に、練条機にトルクが生じ、これが、調整ねじの作用する力に対抗する反力を惹起し、この反力が、練条機に対して荷重がかかっていない状態で調整された支持体の傾斜を変化させる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公告第1133289号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2649207号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の上記短所を回避できる、保持ロッドに支持体を固定するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、この課題は、請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0008】
本発明のその他の有利な態様は、従属請求項に記載されている。
【0009】
請求項1では、本装置が、保持ロッドに対して軸平行に配置された揺動軸を中心にして揺動可能な2本アームのレバーを有することが提示される。その際、レバーは、トップローラ支持兼荷重アームの支持体を固定するために、保持ロッドに設けられた凹部と係合できる第1のレバーアームと、運搬及び組立位置、あるいは固定位置においてレバーを位置決めするための手段が作用する第2のレバーアームとを有する。本装置によって、支持体を保持ロッド上に配置することが容易に可能となる。これは、本発明に係る装置のレバーを運搬及び組立位置へ移行することができ、かつ、この位置に位置決めすることが可能であることによる。第1のレバーアームが、保持ロッド上の凹部のいずれかに誤って係入することも防止される。
【0010】
凹部へ係入する第1のレバーアームの端面は、凸状に湾曲した外輪郭を有しているのが好ましく、その際、この端面の曲率半径は、レバーの揺動軸の中心点から外輪郭までの距離に等しい。また、端面の曲率半径が、端面の縁部と揺動軸の中心点との間における第1のレバーアームの軸方向範囲に等しいことによって、運転中に練条機に生じるトルクによる力は、直接、揺動軸へ向けられている。これにより、従来技術の場合とは異なり、組み立てに関連する表面に対する損傷、特に保持ロッドに対する損傷を回避することができる。
【0011】
このレバーは、ほぼL字形の形状であるのが好ましい。
【0012】
このために、第1のレバーアーム及び第2のレバーアームは、両者の長手方向軸間に80°から120°までの間の角度αを有するように構成することができる。特に、レバーを位置決めするための手段は、ねじであってもよい。レバーがほぼL字形の構成であるので、運搬目的及び組立目的のために揺動軸を中心に旋回することによってレバーを位置決めすることが可能であり、その際、レバーの第2のレバーアームが、締付されたねじ上に位置して運搬及び組立位置に保持されており、その一方で、第1のレバーアームが、保持ロッドの凹部と係合しないように位置決めすることが可能である。レバーがこの位置にあるとき、トップローラ支持兼荷重アームの支持体は、組立のために保持ロッド上に設置することが可能であり、かつ、軸方向及び径方向に自由に摺動可能である。
【0013】
その一方、ねじを螺出することによってレバーを保持ロッドの方向へ旋回した後、固定位置において、第1のレバーアームは保持ロッドの凹部と係合した状態にある。この旋回後、ねじは再び締付され、その結果、ねじは、第1のレバーアームから遠い側の、第2のレバーアームの側面に作用し、レバーをこの位置に固定する。この際、必要とされる、ねじの締付モーメントは非常にわずかである。なぜなら、レバーの、本発明に係る構造上の形態によって、ねじが受け止めねばならない力は、トップローラ支持兼荷重アームが閉じる際に係止位置を克服するために生じる力のみであるからである。練条機の運転中にトルクによって生じる力は、直接、揺動軸に作用するが、ねじには作用しない。これにより、組立関連の構成部材に対する損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】運搬及び組立位置にあるトップローラ支持兼荷重アームの側面図であり、部分断面を含む。
【図2】図1に示された部分断面の詳細図Iである。
【図3】固定位置にあるトップローラ支持兼荷重アームの側面図であり、部分断面を含む。
【図4】図3に示された部分断面の詳細図IIIである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を図に示した実施例を基にして詳しく説明する。
【0016】
図1は、紡績機用の練条機が有するトップローラ支持兼荷重アーム1の支持体2の側面図であり、部分断面図を含む。トップローラ支持兼荷重アーム1は、支持体2に揺動可能に軸支されており、操作レバー10を介して作動することができる。支持体2は、紡績機の、位置固定された保持ロッド3に、装置を用いて回動不能に保持されている。トップローラ支持兼荷重アーム1は、それぞれ出口ローラ7、中央ローラ8、入口ローラ9として配置されたトップローラのためのガイド4、5、6を有する。練条機のこれらのトップローラは、双子ローラとして構成されているのが好ましく、ローラの軸でガイド4、5、6の収容部に軸支されている。保持ロッド3に対するトップローラ支持兼荷重アーム1の支持体2の固定は、2本アームのレバー12を含む、支持体2に配置された装置を用いて行われ、このレバーは、保持ロッド3に対して軸平行に配置された揺動軸14を中心にして、運搬及び組立位置へ、あるいは固定位置へ移行することができる。前者の位置は図1に、後者の位置は図3に示されている。
【0017】
2本アームのレバー12が運搬及び組立位置から固定位置へと移行するために、及び、その逆へと移行するために、並びに、両位置の一方の位置に保持するために、支持体2に配置された調整ねじ13が備えられている。このねじには外からアクセスが可能である。
【0018】
図2は、図1に示された部分断面を、図1よりも拡大して示した詳細図Iである。この図では、支持体2内の本発明に係る装置が、より明確に見て取れる。揺動軸14は、保持ロッド4に対して軸平行に支持体2内に配置されている。レバー12は、揺動軸14を中心に揺動可能に配置されており、調整ねじ13によってレバーの運搬及び組立位置に保持される。レバー12は、ほぼL字形に形成されており、端面が凸状に湾曲した外輪郭を具備する第1のレバーアーム15を有し、この端面は、保持ロッド3の凹部11と係合することが可能である。さらに、レバー12は、調整ねじ13が作用する第2のレバーアーム16を有する。第1のレバーアーム15と第2のレバーアーム16とは、揺動軸14の中心点から延びており、その際、第1のレバーアーム15の長手方向軸と第2のレバーアーム16の長手方向軸とは、80°から120°までの角度αを形成する。
【0019】
トップローラ支持兼荷重アーム1の運搬及び組立位置において、第1のレバーアーム15の端面は、保持ロッド3から遠い側に位置決めされており、この位置決めは、端面が凹部11から離されて調整ねじ13の方向へ揺動されることによって行われる。レバー12を運搬及び組立位置に保持するために、調整ねじ13は締付され、その結果、支持体2の中へ突出する。その際、この位置において保持ロッド3に対してほぼ垂直に向いている第2のレバーアーム16は、調整ねじ13上にある。
【0020】
トップローラ支持兼荷重アーム1の支持体2を保持ロッド3に位置固定するために、保持ロッド3にはほぼ楔状の凹部11が設けられている。トップローラ支持兼荷重アーム1が保持ロッド3上を摺動した後、調整ねじ13は螺出され、その結果、レバー12を、その固定位置へ旋回することができる。これが、図3及び図4に示されている。
【0021】
図3は、本発明に係る装置によって保持ロッド3に定置されているトップローラ支持兼荷重アーム1を示す。練条機の運転中、支持体2にはトルクMが作用する。このトルクの作用方向が矢印で示されている。
【0022】
図4の詳細図IIIは、固定位置にある本装置のレバー12を図3よりも大きく拡大して示したものである。レバー12の固定位置では、第1のレバーアーム15は、半径Rの、端面の湾曲した外輪郭が、保持ロッド3の楔状の凹部11に当接している。一方、調整ねじ13は、第2のレバーアーム16に当接しており、レバー12をこの位置に保持する。第1のレバーアーム15の外輪郭の端面が有する曲率半径Rは、第1のレバーアーム15の端面の縁部から揺動軸14の中心点Mまでの距離に等しい。
【0023】
第1のレバーアーム15の端面が有する曲率半径Rの中心点は揺動軸14の中心点と一致するので、あるいは、凹部11に当接している第1のレバーアーム15の端面が凸状曲面であるために、レバー12の軸方向範囲にわたって延びる線状加圧は常に同じ距離Rを有して揺動軸14の長手方向軸に対して軸平行に惹起されるので、トルクMによって生じる力は、直接、揺動軸14の方へ向けられている。保持ロッド3と揺動軸14との間における力の伝達平面にずれが生じることがなく、従って、練条機の運転中に余分なトルクが揺動軸14に伝わることがない。レバー12を運搬及び組立位置に位置決めすることによって、支持体2を保持ロッド3上に配置することが容易になる。なぜなら、支持体2の摺動中、レバー12が、機械長の保持ロッド3に設けられた凹部11と係合することがあり得ないからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績機の保持ロッド(3)に支持体(2)を固定するための装置であって、トップローラ支持兼荷重アーム(1)が前記支持体(2)に揺動可能に軸支されて配置されている装置において、
前記保持ロッド(3)に対して軸平行に配置された揺動軸(14)を中心にして揺動可能な、2本アームのレバー(12)を有し、その際、前記レバー(12)が、前記トップローラ支持兼荷重アーム(1)の前記支持体(2)を固定するために、前記保持ロッド(3)に設けられた凹部(11)と係合することが可能である第1のレバーアーム(15)と、手段(13)が、運搬及び組立位置、あるいは固定位置において前記レバー(12)を位置決めするために作用する第2のレバーアーム(16)とを備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記凹部(11)へ係入する前記第1のレバーアーム(15)が、端面の、凸状に湾曲した外輪郭を有し、前記端面の曲率半径(R)が、前記レバー(12)の前記揺動軸(14)の中心点(M)から前記外輪郭までの距離に一致することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レバー(12)がほぼL字形に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のレバーアーム(15)と前記第2のレバーアーム(16)とが、これらのレバーの長手方向軸間に80°から120°までの間の角度(α)を形成するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記レバー(12)を位置決めするための前記手段が、ねじ(13)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−174112(P2009−174112A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13237(P2009−13237)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(509024444)エリコン・テクスタイル・コンポーネンツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【Fターム(参考)】