緻密に調節された遺伝子発現のためのシステム
本発明は細菌の発現ベクターに関する。特に、本発明は毒性の蛋白質、RNA、および代謝物のインビボでのクローニングおよび発現のために設計された、緻密に調節された細菌発現ベクターを提供する。したがって、本発明は以前には発現できなかった蛋白質およびRNAを発現する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は細菌の発現ベクターに関する。特に、本発明はインビボで毒性のある蛋白質、RNA、および代謝物をクローニングおよび発現するために設計された、緻密に調節された細菌発現ベクターを提供する。なお、本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2003年12月12日出願の仮出願第60/529,255号に基づく優先権を伴う出願である。
【背景技術】
【0002】
背景
組み換え蛋白質の発現のために多くの原核生物発現系が開発されてきたが、 大腸菌(Escherichia coli)のようなグラム陰性菌における大部分の遺伝子発現系は、限られた細菌プロモーターにもっぱら依存してきた。最も広く使用されている細菌プロモータには、ラクトース(lac) プロモーター(Yanisch-Perron et al., Gene 33: 103-109 (1985))、トリプトファン(trp)プロモーター(Tacon et al., Mol. Gen. Genet. 177:427-38 (1980))、ならびにtacプロモーター(deBoer et al. Proc. Natl. Sci. USA 80:21-25 (1983))およびtrcプロモーター(Brosius. Gene 27:161-172 (1984); Amanna and Brosius. Gene 40:183-190 (1985))のようなハイブリッド誘導体が含まれる。他の発現系には、λファージプロモーター(PLおよびPR)(Bernard et al., Gene 5;59-76 (1979); Elvin et al. Gene 37:123-126 (1990))、T7ファージプロモーター(Studier et al., J. Mol. Biol. 189:113-130 (1986))、およびT5ファージプロモーター(Bujard et al. Methods Enzymol. 155:416-433 (1987))の利用が含まれる。これらの系は一般的に使用され、望ましい特徴を多く持っているが、プロモーターからの漏出性発現があり得るため、非常に毒性の強い蛋白質、RNA、または毒性の代謝物を生産する酵素のクローニングができない可能性がある。
【0003】
これらの一般的な発現系からの発現を調節するためには、いくつかの既存の方法がある。通常、細菌のプロモーターは、プロモーター内部にある特異的なDNAオペレーター配列にリプレッサー蛋白質が結合することによって、調節される。通常、発現系にはlacI、λcI、cro、またはテトラサイクリンリプレッサー蛋白質が利用される。T7ファージの発現系では、細菌のプラスミド上に存在するクローニングされた遺伝子の発現を駆動するために、T7 RNAポリメラーゼの調節された発現を利用する。T5ファージ発現系では、リプレッサー蛋白質の使用とT5ファージプロモーター、および高レベルのリプレッサー蛋白質を組み合わせることにより、遺伝子発現が制御される。
【0004】
これらの細菌およびファージ系では、高レベルの発現が可能であるが、望ましくない遺伝子のバックグラウンド発現という問題がしばしば存在する。抑制した条件下でのこの「漏出性の」発現は、主に3つの要素に起因する。まず、細菌のリプレッサー蛋白質はDNAオペレーター部位に結合して100%の効率で遺伝子の転写を阻止するわけではない。リプレッサーとオペレーターの親和性、およびリプレッサー蛋白質の相対的な存在量によっては、相当なレベルのバックグラウンド発現が生じる。第2に、市販の発現系の大部分は、DNA作製および分子生物学技術を容易にするために、中程度から高いコピー数のプラスミドコンストラクトを利用しているが、クローニングされた挿入断片の調節が低下している。挿入断片がそのようなプラスミド上にある場合には、挿入断片の望ましくないバックグラウンド発現がプラスミドのコピー数だけ増幅し、バックグラウンドの遺伝子発現量が増加することになる。第3に、市販の系では、クローニングされた挿入断片が、プラスミドDNA上にある他の強力なプロモーターから読み過し転写を受ける可能性がある。
【0005】
プロモーターコンストラクトの不完全な抑制と、プラスミドのコピー数が多いこと、および転写の読み過しの効果とが組み合わさると、細菌宿主にとって致死的な産物をコードする遺伝子のクローニングを行なう際に大きな問題となる。これらの毒性蛋白質の多くは、少量(1〜10分子)でも致死的であるので、バックグラウンドの発現があればこれらの遺伝子のクローニングができなくなる。
【0006】
したがって、遺伝子発現が細菌宿主にとって望ましくなく、致死的である際に、増殖培養中にプロモーターが遺伝子発現を厳重に調節する発現コンストラクトが、当技術分野では必要とされている。広範囲のグラム陽性菌およびグラム陰性菌においてこの発現系が複製し有用であると、有利であろう。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は細菌の発現ベクターに関する。特に、本発明はインビボで毒性のある蛋白質、RNA、および代謝物をクローニングおよび発現するために設計された、緻密に調節された細菌発現ベクターを提供する。
【0008】
例えば、いくつかの態様では、本発明は転写終結配列および低コピー数の複製起点(例、配列番号:1, 2, 3, および14)を含むベクターを含む組成物を提供する。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列は、rrnBリボゾーム転写終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)である。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0009】
いくつかの態様では、ベクターはさらにプロモーターを含む。本発明は特定のプロモーターに限定されない。いくつかの態様では、プロモーターはオペレーターを含むため、プロモーター/オペレーターである。いくつかの好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはラクトースのプロモーター/オペレーターである。他の好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである(例、配列番号:13に記述される配列)。他の態様では、プロモーターはPBAD, T7, またはT5プロモーターである。いくつかの好ましい態様では、ベクターはさらに多重クローニング部位を含む。いくつかの態様では、ベクターはさらに選択マーカーを含む。
【0010】
いくつかの態様では、ベクターは、例えば1つのトキシンの異なるサブユニットを発現する際、または複数のトキシン遺伝子を同じベクター上で発現する際に使用する、終結配列-プロモーター遺伝子部分または「カセット」を複数含む。いくつかの態様では、複数のカセット中の各カセットは、同じ終結配列-プロモーター領域を含む。いくつかの好ましい態様では、複数のカセットのうちの少なくとも1つのカセットは、異なる終結配列または異なるプロモーターを含む。いくつかの特に好ましい態様では、複数のカセット中の各カセットは、異なる終結配列および異なるプロモーターを含む。
【0011】
いくつかの態様では、ベクターはさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、蛋白質またはRNAは毒性蛋白質または毒性RNAである。他の態様では、蛋白質は毒性の代謝物を有する。
【0012】
別の態様では、本発明はハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸(例、配列番号:13の核酸配列を有するハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸)を含む組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は核酸を含むベクター(例、配列番号:14のベクター)を提供する。いくつかの態様では、ベクターはさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含む。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である(配列番号:9に記述される配列)。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0013】
いくつかの態様では、ベクターは、例えば1つのトキシンの異なるサブユニットを発現する際、または複数のトキシン遺伝子を同じベクター上で発現する際に使用する、終結配列-プロモーター遺伝子部分または「カセット」を複数含む。いくつかの態様では、複数のカセット中の各カセットは、同じ終結配列-プロモーター領域を含む。いくつかの好ましい態様では、複数のカセットのうちの少なくとも1つのカセットは、異なる終結配列または異なるプロモーターを含む。いくつかの特に好ましい態様では、複数のカセット中の各カセットは、異なる終結配列および異なるプロモーターを含む。
【0014】
いくつかの態様では、ベクターはさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、蛋白質またはRNAは毒性蛋白質または毒性RNAである。他の態様では、蛋白質は毒性の代謝物を有する。
【0015】
本発明はさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含むベクター中に挿入された関心対象の遺伝子を提供する段階;および細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は、毒性の蛋白質またはRNAをコードする。別の態様では、関心対象の遺伝子は、毒性の代謝物を有する蛋白質をコードする。好ましい態様では、関心対象の遺伝子は、増殖条件下でベクター中に維持され、細菌宿主中に蛋白質(例、毒性蛋白質)が蓄積する。
【0016】
本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)を含む。いくつかの態様では、転写終結配列はバクテリオファージλの終結配列を含む。別の態様では、終結配列は大腸菌のtrp遺伝子の終結配列を含む。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0017】
いくつかの態様では、ベクターはさらにプロモーターを含む。本発明は特定のプロモーターに限定されない。いくつかの好ましい態様では、プロモーターはラクトースのプロモーター/オペレーターである。他の好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである(例、配列番号:13に記述される配列)。他の態様では、プロモーターはPBAD, T7, またはT5プロモーターである。いくつかの好ましい態様では、ベクターはさらに多重クローニング部位を含む。いくつかの態様では、ベクターはさらに選択マーカーを含む。いくつかの態様では、ベクターは配列番号:1, 2, 3, または14の核酸配列を有する。いくつかの態様では、細菌宿主はグラム陰性菌である(例、大腸菌)。
【0018】
本発明はさらに、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸(例、配列番号:13の核酸配列を有するハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸配列)を含むベクター(例、核酸配列:14の核酸配列を有するベクター)に挿入された関心対象の遺伝子を提供する段階;および細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は毒性の蛋白質またはRNAをコードする。別の態様では、関心対象の遺伝子は毒性代謝物を有する蛋白質をコードする。好ましい態様では、関心対象の遺伝子は、増殖条件下でベクター中に維持され、細菌宿主中に蛋白質(例、毒性蛋白質)が蓄積する。
【0019】
本方法のいくつかの態様では、ベクターはさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含む。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)を含む。いくつかの態様では、転写終結配列はバクテリオファージλの終結配列を含む。別の態様では、終結配列は大腸菌のtrp遺伝子の終結配列を含む。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。いくつかの態様では、本方法はさらにハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質も提供する。
【0020】
別の態様では、本発明はハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター;およびハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質を含むキットを提供する。いくつかの態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸は、配列番号:13の核酸配列を有する。特定の態様では、キットはさらに、毒性の蛋白質またはRNAをコードする関心対象遺伝子を発現するためにキットを使用するための、説明書を含む。
【0021】
定義
本発明の理解を容易にするために、以下にいくつかの用語の定義を示す。
【0022】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、糖成分(ペントース)、リン酸基、および窒素含有の複素環式塩基からなる核酸(例、DNAまたはRNA)の単量体単位をさす。塩基はグリコシド結合した炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖成分に結合しており、塩基と糖のその組み合わせはヌクレオシドと呼ばれる。ヌクレオシドがペントースの3’または5’の位置に結合したリン酸基を含むと、これはヌクレオチドと呼ばれる。機能的に連結したヌクレオチドは通常本明細書では「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」と呼ばれ、左から右の方向に通常の5’端から3’端の方向とした表現で表される。
【0023】
本明細書では、「塩基対」という用語は、例えば、2重鎖DNA分子においてアデニン(A)とチミン(T)、またはシトシン(C)とグアニン(G)のような水素結合したヌクレオチドをさす。RNAでは、ウラシル(U)がチミンに置き換わる。この塩基対という用語は、DNAの長さの測定単位としても一般的に用いられる。塩基対は、DNAまたはRNA分子が2重鎖の構造をとる時のような、水素結合によって成分の塩基が対を作る場合に、「相補的」であると言われる。
【0024】
本明細書で使用される「核酸」および「核酸分子」という用語は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない分子を含む、任意の核酸をさす。この用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-Dマンノシルケオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトクソシン、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAの既知の任意の塩基アナログを含む。
【0025】
モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸が、ホスホジエステル結合によって1方向で隣接する3’酸素に結合してオリゴヌクレオチドを作るので、DNA分子は「5’端」および「3’端」を有すると言われる。したがって、オリゴヌクレオチドの末端は、5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していなければ「5’端」と呼ばれ、その3’端の酸素が続くモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に結合していなければ「3’端」と呼ばれる。2重鎖の核酸分子も5’端および3’端を有すると言われ、「5’」は特定の領域、遺伝子、または構造の受け入れられた開始点を含む末端をさす。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にあっても、やはり5’および3’端を有すると言って良い(これらの末端は遊離端ではない)。そのような場合、内部の核酸配列の5’および3’端は、より大きなオリゴヌクレオチドから単離されたとしたらその断片が持ったはずの5’ および3’端をさす。線状または環状DNA分子のいずれでも、不連続の要素は、「下流」または3’の要素の「上流」または5’にあると呼ばれる。末端は、a) いずれも平滑末端であるか相補的な一本鎖の伸長部分(制限エンドヌクレアーゼの消化後に生成するような部分)を持ち、かつb) 少なくとも一方の末端が5’リン酸基を含む場合に、「適合する」と呼ばれる。したがって適合する末端は、標準的な条件下で2重鎖DNAリガーゼ(例、T4 DNAリガーゼ)によって連結することができる。
【0026】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」または「アニーリング」という用語は、相補的な塩基対の間で水素結合を確立することによって、相補的なヌクレオチド配列(核酸の鎖)が2重鎖、ヘテロ2重鎖、または2本以上の一本鎖核酸を含む複合体を形成することをさす。ハイブリダイゼーションは、相補的ポリヌクレオチドの間の特異的、すなわち無作為ではない、相互作用であり、競合阻害できるものである。
【0027】
本明細書で使用される「環状ベクター」という用語は、宿主中で複製可能な閉鎖した環状の核酸配列をさす。
【0028】
本明細書で使用される「ベクター」または「プラスミド」という用語は、細胞中で複製する能力がある染色体外の核酸分子であって、挿入配列を機能的に連結して挿入配列の複製を行なうことのできるものをさす。例には、プラスミドコンストラクト、ファージコンストラクト、コスミドベクター等の環状DNA分子、ならびに線状の核酸コンストラクト(例、λファージコンストラクト、細菌人工染色体(BAC)等)が含まれるがこれらに限定されない。ベクターには、プロモーターおよび/または終結配列のような発現シグナル、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子のような選択マーカー、および挿入配列のクローニングを行なえる1つまたは複数の制限部位が含まれる可能性がある。
【0029】
本明細書で使用される「ポリリンカー」または「多重クローニング部位」という用語は、核酸コンストラクト上の制限酵素部位の集団であって、核酸配列の挿入および/または切り出しに使用されるものをさす。
【0030】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、異種DNA(ベクターのような)で形質転換できる任意の細胞をさす。宿主細胞の例には、FまたはF’因子を含む大腸菌株(例、DH5αFまたはDH5αF’)、またはFまたはF’因子を持たない大腸菌株(例、DH10B)が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
「をコードする核酸分子」「をコードするDNA配列」および「をコードするDNA」という用語は、RNAへの転写およびその後の蛋白質への翻訳後に、特定のペプチドの合成が起きるようなヌクレオチド配列をさす。これらの用語は、RNAへの転写後に非コード機能を有するRNA(例、リボゾームRNAまたはtRNA)を生産するヌクレオチド配列もさす。そのような転写および翻訳は、標準的な遺伝コードに基づいて、インビトロまたはインビボで実際に起こる可能性があるが、または完全に理論的である可能性もある。
【0032】
「遺伝子」という用語は、非コード機能を有するRNA(例、リボゾームRNAまたはtRNA)、ポリペプチド、または前駆体の生産に必要なコード配列を含む、核酸(例、DNA)配列をさす。RNAまたはポリペプチドは、全長または断片の望ましい活性または機能的特性(例、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、等)が維持されている限り、全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によって、コードされている可能性がある。この用語は、遺伝子が全長mRNAに転写され得るように、構造遺伝子のコード領域、およびいずれの側でも約1 kbまたはそれ以上の距離で5’および3’端の両方でコード領域に隣接する配列も含む。コード領域の5’に存在しmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’または下流に存在し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム型またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列が割り込んだコード領域を含む。イントロンは核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子部分である;イントロンはエンハンサーのような調節要素を含む場合がある。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去または「スプライシング」される;したがってイントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物中には存在しない。mRNAは翻訳の際に新生ポリペプチド中の配列すなわちアミノ酸の順序を指定する機能を有する。
【0033】
本明細書で使用される「発現」という用語は、転写(例、遺伝子から)、および場合によっては遺伝子産物への翻訳を意味する。発現過程において、遺伝子産物の配列をコードするDNA鎖はまず相補的RNAに転写されるが、これはしばしばメッセンジャーRNAであり、場合によっては、転写されたメッセンジャーRNAはその後、遺伝子の蛋白質産物に翻訳される。
【0034】
本明細書で使用される「機能的な組み合わせ」または「機能的に連結」という用語は、所望の蛋白質分子の合成を指示する能力のある核酸分子が生産されるような、核酸配列の連結をさす。プロモーター配列が蛋白質をコードする配列に機能的に連結される時には、プロモーターは、コードされた蛋白質の機能的な型が生産されるように翻訳され得るmRNAの発現を指示する。この用語は、機能的な蛋白質が生産されるような、アミノ酸配列の連結もさす。
【0035】
本明細書で使用される「毒性蛋白質」という用語は、宿主細胞中で発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至る蛋白質をさす。
【0036】
本明細書で使用される「毒性RNA」という用語は、宿主細胞中で発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至るRNAをさす。
【0037】
本明細書で使用される「毒性代謝物」という用語は、宿主細胞中で蛋白質が発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至る蛋白質の代謝物をさす。
【0038】
「原核生物の終結配列」、「転写終結配列」または「終結配列」という用語は、RNAポリメラーゼに認識され、転写の終結に至る核酸配列をさす。原核生物の終結配列は、一般的に、後にATに富む配列が続く、2回転対称を有するGCに富む領域を含む。一般的に使用される原核生物の終結配列は、T7終結配列である。当技術分野ではさまざまな終結配列が知られており、本発明の核酸コンストラクト中で利用できるが、これらには、バクテリオファージλに由来するTINT, TL1, TL2, TL3, TR1, TR2, T6S終結シグナル、rrnB終結配列T1およびT2 (rrnBT1T2)のようなリボゾーム終結シグナル、および大腸菌のtrp遺伝子のような細菌遺伝子に由来する終結シグナルが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される「ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター」という用語は、Mnt-Arcホモダイマーによって認識されるプロモーター配列(「ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター」)をさす。いくつかの態様では、プロモーター配列には、1つのArcオペレーター結合配列(O2)および1つのMntオペレーター結合配列(O1)が含まれる。1つの典型的なハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター系の模式図は図12に示されている。いくつかの好ましい態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターは配列番号:13(図14に示されている)の核酸配列を有する。
【0040】
本明細書で使用される「複製可能ベクター」という用語は、宿主細胞中で複製可能なベクターを意味する。
【0041】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列および機能的に連結されたコード配列(例、産物をコードする挿入配列)を特定の宿主生物中で発現するために必要な適当な核酸配列を含む、組み換えDNA分子をさす。原核生物での発現に必要な核酸配列には、通常、しばしば他の配列とともにプロモーター、オペレーター(任意で)、およびリボゾーム結合部位が含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、特定のヌクレオチド配列またはその付近で2重鎖DNAを切断する酵素(例、細菌の)をさす。例には、AvaII, BamHI, EcoRI, HindIII, HincII, NcoI, SmaI, およびRsaIが含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「制限」という用語は、制限酵素による制限部位におけるDNAの切断をさす。
【0044】
本明細書で使用される「制限部位」という用語は、同種の制限エンドヌクレアーゼによって認識される特定のDNA配列をさす。
【0045】
本明細書で使用される「精製」または「精製する」という用語は、試料から不純物を除去することをさす。例えば、細菌宿主細胞中でプラスミドを増殖させ、宿主細胞蛋白質、細菌のゲノムDNA、および他の不純物を除去することにより、プラスミドは精製される。したがって、これにより試料中のプラスミドDNAの割合は増加する。核酸配列の場合は、「精製する」というのは個々の核酸配列を互いに分離することをさす。
【0046】
本明細書で使用される「PCR」という用語は、DNAのある領域を酵素により増殖させるポリメラーゼ連鎖反応をさす。この指数関数的増殖手順は、変性、オリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング、および熱安定性DNAポリメラーゼ(例、それぞれThermus aquaticusまたはThermus flavusから単離されたTaqまたはTfl DNAポリメラーゼ酵素)のようなDNA重合剤によるプライマーの伸長のサイクルを繰り返すことに基づく。
【0047】
本明細書で使用される「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成のルールにより関連するポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)をさす。例えば、「5’-A-G-T-3’」という配列は、「3’-T-C-A-5’」という配列に相補的である。相補性は、核酸塩基の一部のみが塩基対形成ルールにしたがって一致するような「部分的」相補性である場合もある。または、核酸の間の「完全な」または「全くの」相補性である場合もある。核酸鎖の間の相補性の度合いは、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強度に強く影響する。これは増幅反応、および核酸の間の結合に依存する検出方法に特に重要である。
【0048】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い一本鎖ポリヌクレオチドをさす。オリゴヌクレオチドは通常は100残基未満(例、15と50の間)であるが、本明細書では、この用語はより長いポリヌクレオチド鎖も含む。オリゴヌクレオチドはしばしばその長さで呼ばれる。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24-mer」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは自己ハイブリダイゼーションまたは他のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって、2次および3次構造をとり得る。そのような構造には、2本鎖、ヘアピン、十字形、屈曲、3本鎖が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される「形質転換」または「トランスフェクション」という用語は、細胞(例、原核細胞)への外来DNAの導入をさす。形質転換は、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、ポリブレンを介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、およびバイオリスティックを含む、当技術分野で公知のさまざまな方法で実行できる。
【0050】
発明の説明
いくつかの態様では、本発明はクローニングされた遺伝子を非常に厳重に調節できる細菌発現系を提供する。いくつかの態様では、この系では、野生型ラクトースプロモーターの上流のrrnB T1T2転写終結配列と、非常に低コピー数の修飾pSC101複製起点または低コピー数の広宿主域RK2複製起点のいずれかとの組み合わせを利用する。これらの2つの要素を組み合わせると、クローニングされた遺伝子の非常に厳重な調節ができ、それにより非常に毒性の強い蛋白質(例、コリシンD、コリシンE3、およびコリシンE7)をコードする遺伝子のクローニングができるようになるが、これらはそれぞれの免疫蛋白質なしには他の発現系にはクローニングできない。
【0051】
大部分の市販の発現系(例、pETベクター、PBADベクター、等)は中程度から高いコピー数の複製起点と組み合わさった非常に強力なプロモーターを含んでいるため、必然的にクローニングされた遺伝子の「漏出性」発現が見られる。さらに、蛋白質発現ベクターは通常、インデューサーがなくても完全に抑制できない非常に強力な細菌(PTRC、PBAD)またはファージ(T7, T5)のプロモーターを持っている。研究者はしばしばこのようなタイプの発現ベクターに毒性遺伝子をクローニングする際に問題を経験する。さらにこれらの複製起点は宿主域が狭く、すべてのグラム陰性菌で複製できるわけではない。
【0052】
本発明のベクターは、当技術分野の問題の多くを解決する。上流の転写終結配列と、低コピー数の修飾複製起点とを組み合わせると、非常に毒性の強い蛋白質の安定したクローニングおよび発現が可能になる。
【0053】
I. ベクター
いくつかの態様では、本発明は非常に毒性の強い蛋白質の発現のためのベクターを提供する。好ましい態様では、本発明のベクター(典型的なベクターの記述については、実験の項の表1を参照されたい)は、強力な細菌プロモーターの上流にrrnBT1T2転写終結配列(例、配列番号:9の配列を有するrrnBT1T2終結配列)を含む。本発明はrrnBT1T2転写終結配列の使用に限定されない。他の既知の転写終結配列も使用できる。
【0054】
いくつかの態様では、ラクトースプロモーターおよびオペレーター(例、配列番号:10に記述される配列)が使用される。いくつかの態様では、LACIQリプレッサー蛋白質はベクターに含まれる。他の態様では、これは別のベクター、F’因子、または染色体上で提供される。本発明はラクトースプロモーターおよびオペレーターの使用に限定されない。テトラサイクリン、PBAD、T7、およびT5プロモーターを含むがこれらに限定されない他の適当なプロモーターも使用できる。
【0055】
いくつかの態様では、本発明は新規のハイブリッドプロモーター/オペレーター系を含むベクターを提供する。ハイブリッドプロモーター/オペレーターは、サルモネラのバクテリオファージP22から得られるArcおよびMntリプレッサー蛋白質を基本骨格として使用する。
【0056】
ArcおよびMntリプレッサー蛋白質は、構造に類似性を有する、小さな転写調節蛋白質である。ArcとMnt蛋白質のいずれも、2つの機能的ドメイン、すなわちオペレーターDNAに結合するダイマーのN端ドメイン、および機能に必須の蛋白質の4量体化を仲介するC端のコイルドコイルドメインを含む(Knight and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:797-801 (1989))(図12に示されている)。ArcおよびMntの4量体化により、オペレーター部位への結合親和性と特異性の両方を上昇させる協同的相互作用が生じる(Berggrun and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:2301-2305 (2001))。この構造類似性は有するものの、ArcとMntは、21塩基対のうち6塩基対しか共通しないほぼ完全に異なるオペレーター配列を認識する(Vershon et al. J. Mol. Biol. 195:323-31 (1987); Vershon et al. J. Mol. Biol. 195:311-322 (1987))。
【0057】
本発明のプロモーター/リプレッサー系では、野生型Mntリプレッサーと変異型Mnt-Arc蛋白質の2つのリプレッサー蛋白質の共発現が利用される。変異型Mnt-Arc蛋白質はMntの野生型C端2量体化ドメインを有する;しかしN端のDNA結合ドメイン内の6つの残基が、Arcリプレッサーの対応する9つの残基で置換されている(Knight and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:797-801 (1989))。Mnt-Arcホモダイマーは野生型の4量体化能力を有するが、Mntオペレーター(O1)ではなくArcオペレーター配列(O2)を認識する。本発明の新規のリプレッサーヘテロ4量体は、1つの野生型Mntホモダイマーおよび1つのハイブリッドMnt-Arcホモダイマーからなる(図12に示されている)。
【0058】
いくつかの態様では、ハイブリッド細菌プロモーターは、標的細菌中で最高レベルの転写を行なうために、コンセンサスに近いσ70-35および-10の6量体配列からなる。しかし、他の態様では、非大腸菌の細菌宿主中で最適な発現を得るために、別の6量体配列が利用されている。好ましい態様では、上述のrrnBT1T2終結配列は、リードスルー転写から保護するためにプロモーターの上流に位置し、また細胞当たり3〜4コピーに維持される低コピー数の修飾pSC101複製起点(pMPP6から得られる)が利用される(プラスミドpCON12-68A)。図13は本明細書に記述されるハイブリッドプロモーター/オペレーターを利用した本発明の1つの典型的な発現ベクターのマップを示す。
【0059】
好ましい態様では、リプレッサー蛋白質の結合のための2つのオペレーターの半分の部位O1およびO2は、-35および/または-10の6量体の下流になるように位置している;したがって、リプレッサー結合は、RNAポリメラーゼの転写開始を直接阻害する。本発明の開発の際に行われた実験では、O1とO2のオペレーターの半分の部位の好ましい位置は、直接隣接するオペレーター部位を利用することが示された。両方のオペレーターの半分の部位は-35および-10の6量体の下流にあるので、MntおよびMnt-Arc変異型リプレッサーの抑制能力を変えることなく、別の「種特異的」プロモーターを置換することができる。ハイブリッドプロモーターのDNA配列は、図14(配列番号:13)に示されている。オペレーターO1およびO2がDNA中で正しい方向にある場合には、野生型Mntダイマーと変異型Mnt-Arcダイマーは安定なヘテロ4量体を形成し、高い親和性および特異性でオペレーターに結合する。ヘテロ4量体が「ハイブリッド」オペレーターに安定に結合すると、遺伝子発現が強力に抑制される。野生型Mntまたは野生型Arcがハイブリッドオペレーター(O1-O2)を認識できないことに注意されたい。まだ各オペレーター配列(独立してO1またはO2)を認識できるが、4量体の形成がないために、これらの野生型リプレッサー蛋白質は領域に強くは結合しない。
【0060】
病原性細菌がMntおよび/またはArcリプレッサーを獲得しても、以下の理由のために毒性遺伝子の発現に対して、すぐに抵抗性になるわけではない:(1) 野生型Mntの4量体はハイブリッドオペレーター配列を認識しない。(2) 野生型Arcの4量体はハイブリッドオペレーター配列を認識しない。(3) 獲得されたArcとMnt蛋白質の間の相同組み換えによって形成されるMnt-Arc蛋白質は、抑制にやはり必要な野生型コピーを除去する。さらに、バクテリオファージP22はサルモネラ種に限定されており、このファージ由来の遺伝子に大腸菌および他の病原菌がさらされる可能性はより低い。したがって、本発明のハイブリッドプロモーター/リプレッサー系は、任意の細菌種において遺伝子およびRNAの発現の調節をするために理想的である。
【0061】
別の好ましい態様では、本発明のベクターは低コピー数の複製起点(例、低コピー数の修飾pSC101 (配列番号:11)またはRK2 (配列番号:12))を含む。本発明は低コピー数の修飾pSC101またはRK2複製起点に限定されない。他の複製起点の例には、野生型pSC101, p15a, pACYCが含まれるがこれらに限定されない。
【0062】
別の態様では、ベクターは関心対象の遺伝子および選択マーカー(例、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等のような抗生物質耐性遺伝子)をコードする核酸の挿入のための多重クローニング部位を含む。さらに別の態様では、本発明のベクターは蛋白質精製タグ(例、Hisタグ、インテインタグ)を含む。いくつかの態様では、翻訳が増加/低下するように、リボゾーム結合部位が修飾されている。
【0063】
II. 本発明の実施
本発明のベクターは、大腸菌および他の密接に関連した細菌におけるクローニングおよび発現のための、緻密に調節された発現系を構成する。
【0064】
A. 発現
図1および図13は本発明の典型的なベクターを示す。関心対象の遺伝子を野生型ラクトースプロモーター(図1のlacOP)の制御下の多重クローニング部位(図1のMCS)にクローニングする。このプロモーターは、染色体、F’因子、および/または第2のプラスミドのいずれかが供給するラクトースリプレッサー蛋白質(LacI)によって抑制されている。IPTGによる誘導またはLacIリプレッサー蛋白質の除去によって、ラクトースプロモーターの抑制が外れ、クローニングされた遺伝子の強力な発現が起きる。他の態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター系が利用される。プロモーターは、リボゾームrrnB T1およびT2転写終結配列(図1のrrnBT1T2)によって、リードスルー転写および「漏出性」発現から保護されている。プロモーター領域の上流に位置すると、これらの終結配列は、プロモーター領域への転写のリードスルーを非常に効率良く予防する。いくつかの態様では、発現系は低コピー数の修飾pSC101複製起点(pMPP6から得られる)を利用するが、これは細胞当たり3〜4コピーに維持される。コピー数が少ないことは、クローニングされた遺伝子の任意の「漏出性」発現がさらに抑えられる。他の態様では、広範囲のグラム陰性菌中で複製可能な、低コピー数のRK2複製起点からの複製起点が利用される。RK2複製起点を利用すると、この発現系を大腸菌のみではなく、病原菌から産業用の細菌までの種々の細菌で使用できる。RK2のコピー数が少ないために、クローニングされた遺伝子の任意の「漏出性」発現がさらに抑えられる。
【0065】
本発明のベクターは、細菌宿主において任意の蛋白質またはRNAを発現するために適している。しかし、低コピー数と緻密に調節された発現を組み合わせたために、プラスミドは毒性蛋白質、毒性RNA、および毒性代謝物を有する蛋白質の維持、複製、および発現に特に適している。本発明のベクターは、漏出性発現が細胞死を引き起こす可能性のある毒性蛋白質の発現も可能にする。本発明の開発の際に行われた実験では、トキシンコリシン蛋白質のクローニング、維持、および発現が示された(例、実施例3を参照されたい)。
【0066】
本発明のベクターは、さまざまな毒性の蛋白質、RNA、および毒性代謝物を有する蛋白質に使用するのに適している。例えば、いくつかの態様では、本発明のベクターは抗菌剤(例、抗生物質)の発現に使用される。薬剤には、カチオンに富む抗菌ペプチド、プロリンに富む抗菌ペプチド、コリシン、バクテリオシン、ディフェンシン、リシン、ピロコリシン、ペキシガナン、ルセガガン(lsegagan)、プロテグリン-1、タナチン、アスタシジン1、サルコトキシンIA、およびマイクロシンJ25のような蛋白質またはペプチド剤が含まれる可能性がある。さらに薬剤には、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、短い干渉RNA(siRNA)、触媒性RNA、およびRNAアプタマーも含まれる可能性がある。
【0067】
別の態様では、本発明は上述のコンストラクトを含む細菌宿主細胞を提供する。宿主細胞の具体例には、大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびヘリコバクター(Helicobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセス(Streptomyces)およびブドウ球菌(Staphylococcus)属のさまざまな種が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
宿主細胞中のコンストラクトは、通常の方法で使用して、組み換え配列がコードする遺伝子産物を生産することができる。いくつかの態様では、コンストラクトの宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって行なえる(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)を参照されたい)。
【0069】
本発明のいくつかの態様では、適当な宿主株の形質転換と適当な細胞密度への宿主株の増殖の後、適当な方法(例、温度変化または化学的な誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、さらに一定期間、細胞を培養する。本発明の別の態様では、細胞は通常、遠心により回収し、物理または化学的な手段で破壊し、さらに精製するために、得られた粗抽出物を保管する。本発明のさらに別の態様では、蛋白質の発現に利用した微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械的破壊、または溶菌剤の使用を含む任意の都合の良い方法によって破壊できる。
【0070】
本発明はまた本発明のベクターを含む組み換え細胞培養から、発現された蛋白質を回収および精製する方法も提供するが、方法は硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、金属イオンキレートクロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない。いくつかの好ましい態様では、蛋白質の回収および精製する方法は、蛋白質上の精製タグ(例、Hisタグまたはインテインタグ)と相互作用をするよう選択された金属イオンキレートクロマトグラフィーまたはアフィニティクロマトグラフィーを含む。本発明の他の態様では、成熟蛋白質の構造の完了に、必要ならば蛋白質の折たたみ段階が使用できる。本発明のまた別の態様では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が精製の最終段階に使用できる。
【0071】
B. キット
いくつかの態様では、本発明は本発明のベクターを含むキットを提供する。本明細書で使用される「キット」という用語は、物質の配達のための任意の配達システムをさす。クローニングおよび発現系では、そのような配達システムは、1つの場所から別の場所へのクローニング構成要素および/または補助物質(例、緩衝液、構成要素の使用説明書等)の保管、輸送、または配達を可能にするシステムを含む。いくつかの態様では、キットは遺伝子(例、毒性蛋白をコードする遺伝子)のクローニングに必要なすべての構成要素を含み、これは例えば、ベクター、緩衝液、塩、酵素、対照、およびクローニング用キットの使用説明書を含むが、これらに限定されない。別の態様では、キットはさらに関心対照の遺伝子のクローニングおよび発現のための構成要素を含む。遺伝子発現に有用な更なる構成要素には、遺伝子発現レベルの定量のための対照プラスミド、および蛋白質精製のための構成要素(例、樹脂および緩衝液)が含まれる。
【0072】
実験
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様および局面を示し、さらに説明するために提供されるものであり、その範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0073】
実施例1
プラスミドの作製
本実施例では、本発明の典型的プラスミドの作製を記述する。表1は以下に記述するプラスミドの名前と、対応する図および配列番号を示す。プラスミドおよび選択されたベクター要素の配列は図11に示されている。
(表1) プラスミド
【0074】
A. 材料と方法
細菌の株および培地
使用された大腸菌の株はNovagen(ウィスコンシン州マジソン)から得たNovaBlue (endA1 hsdR17(rK12-mK12+) supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 Δlac F’(proA+B+ lacIqZΔM15::Tn10 (TcR)))だった。すべてのクローニングは当技術分野で公知の標準的な方法を用いて行われ、プラスミドの選択のために50μg/mlカナマイシンを添加したLuria Bertani増殖培地が用いられた。コリシンのような毒性遺伝子産物のクローニングには、さらにラクトースプロモーターを抑制するために、増殖培地に0.8%グルコースが添加された。
【0075】
B. プラスミドの作製
pCON3-86Bの作製
pMPP6複製起点およびカナマイシン耐性遺伝子を含むDNA領域は、プラスミドpZS24-MCS1 (Lutz and Bujard, Nucleic Acids Res. 25(6):1203-1210 (1997); Manen et al., Mol Microbiol 11(5):875-884 (1994))に由来した。pMPP6複製起点内部のNde I制限部位は、位置指定突然変異導入法により削除された。野生型ラクトースプロモーターは大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅され、Aat IIおよびKpn I制限部位を介してpMPP6複製起点およびカナマイシン耐性遺伝子と合わせた。rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2はプラスミドpRLG593 (Ross et al., J Bacteriol 180:5375-83 (1998); Glaser et al., 302:74-6 (1983))からPCR増幅され、ベクターにサブクローニングし、プラスミドpCON3-86Bが得られた。
【0076】
pCON7-74の作製
カナマイシン耐性遺伝子、rrnB終結配列、ラクトースプロモーター、および多重クローニング部位を含むpCON3-86BのDNA領域をPCR増幅し、Nco IおよびMlu I制限部位を介してミニRK2ベクターpCON4-43にサブクローニングした。得られたコンストラクトがpCON7-74である。
【0077】
pCON7-71の作製
lacIQ遺伝子をコードするDNA領域をプラスミドpCON1-94からPCR増幅し、Xmn I制限部位を介してpCON7-74にサブクローニングした。得られたコンストラクトがpCON7-71である。
【0078】
pCON5-25の作製
lacZをコードするDNA領域を大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅し、Kpn IおよびHindIII制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。得られたベクターがpCON5-25である。
【0079】
pCON7-77の作製
lacZをコードするDNA領域を大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅し、Kpn IおよびHindIII制限部位を介してpCON7-74にサブクローニングした。得られたベクターがpCON7-77である。
【0080】
pCON7-58の作製
コリシンDをコードするDNA領域をプラスミドpColD-CA23 (Lehrbach and Broda, J Gen Microbiol 130:401-10 (1984))からPCR増幅し、Nde I Eco RV制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON7-58である。
【0081】
pCON4-42の作製
コリシンE3をコードするDNA領域はプラスミドpColE3-CA38 (Vernet et al., Gene 34(1):87-93 (1985))からPCR増幅し、Kpn I Mlu I制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON4-42である。
【0082】
pCON7-11の作製
コリシンE7をコードするDNA領域はプラスミドpColE7-K317 (Watson et al., J Bacteriol 147(2):569-77 (1981))からPCR増幅し、Kpn I Eco RI制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON7-11である。
【0083】
実施例2
遺伝子発現
この実施例は実勢例1に記述されたベクターからの発現レベルの測定を記述する。
【0084】
βガラクトシダーゼ活性の標準的測定法を用いて、ベクターpCON3-86B, pCON5-25, pCON7-74, およびpCON7-77のプロモーター活性を、抑制条件(0.8%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLuria-Bertani培地)および発現条件(1 mM IPTGおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLuria-Bertani培地)で測定した。培養菌は0.3-0.5のOD600nmで2重に測定し、ミラーユニットで表されている。結果は図10に示されている。
【0085】
図10に示されるように、抑制培地中のpCON5-25およびpCON7-77のプロモーター活性は、βガラクトシダーゼの遺伝子を含まないベクターpCON3-86BおよびpCON7-74とあまり差がない。しかし、1 mM IPTGで抑制を外すと、pCON5-25(修飾pSC101起点を有する)のプロモーター活性は、約50倍増加し、pCON7-77(RK2起点を有する)の活性は約140倍増加した。これらの実験は、これらのベクターの制御の厳重さを示す。
【0086】
実施例3
毒性蛋白質の発現
本発明のベクターを用いて、同種免疫蛋白質の非存在下で、コリシンD (pCON7-58), E3 (pCON4-42), E7 (pCON7-11), E3 (pCON12-82)をコードする遺伝子が、プロモーターの抑制除去に伴い高レベルに蛋白質/RNAを発現する能力を伴って、クローニングされ、安定に維持された。
【0087】
実施例4
野生型Mntおよび変異型Mnt-Arcリプレッサーを含むベクターの作製
この実施例は、野生型Mntおよび変異型Mnt-Arcリプレッサーを含む発現ベクターの作製を記述する。図12は本発明のハイブリッドプロモーター/オペレーターの模式図である。図14はハイブリッドプロモーターの核酸配列(配列番号:13)を示す。
【0088】
野生型Mntリプレッサーをコードするmnt遺伝子は、P22ファージDNAからPCR増幅し、pCON7-42にサブクローニングした。得られたコンストラクトpCON9-53では、ベクター骨格において上流に位置する強力なプロモーターから構成的に発現されている。
【0089】
変異型Mnt-Arcリプレッサーを含むベクターは、以下のようにして作製された。SphI部位は位置指定突然変異導入法によりpCON9-53に導入され、プラスミドpCON12-35が作製された。MntのN端の残基は、pCON12-35をKpnI SphIで消化して除去された。ArcリプレッサーのN端の9残基を含むオリゴヌクレオチドリンカーカセットが、KpnI SphI消化によって消化されたpCON12-35骨格にサブクローニングされた。mnt-arcを構成的に発現する得られたベクターが、pCON12-44である。
【0090】
mntおよびmnt-arcの両方の遺伝子を含むプラスミドpCON12-55は以下のようにして作製された。プロモーター-mnt-arcカセットは、隣接するSpeI SacI制限部位を用いてpCON12-44からPCR増幅された。この消化された断片は、pCON9-53に直接サブクローニングされ、プラスミドpCON12-55が得られた。
【0091】
「ハイブリッド」プロモーター/オペレーターの作製
隣接するAatII KpnI部位を有する、「ハイブリッド」プロモーター/オペレーターを含むオリゴヌクレオチドは、相補鎖のクレノウ合成の鋳型として使用された。dsDNA断片をAatII KpnIで消化し、pMPP6 ori骨格(修飾pSC101起点)にサブクローニングした。得られたプラスミドはpCON12-25Eである。rrnB T1T2終結配列は、AatII KpnI消化によりpCON3-86Bから除去し、pCON12-25Eにサブクローニングして、発現ベクターpCON12-68A(図13に示す)を作製した。pCON12-68Aは、rrnBT1T2転写終結配列、「ハイブリッド」プロモーター/オペレーター、多重クローニング部位、修飾pSC101複製起点、およびカナマイシン耐性遺伝子を含む。
【0092】
lacZおよびcolE3遺伝子のクローニング
βガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子は、KpnI HindIII消化によってpCON5-25から除去され、pCON12-68Aへサブクローニングされ、プラスミドpCON12-29Eを生じた。
【0093】
コリシンE3をコードするコリシンE3遺伝子は、KpnI EcoRIによってpCON4-42から除去し、pCON12-68Aにサブクローニングし、プラスミドpCON12-82を得た。
【0094】
結果
βガラクトシダーゼ活性の標準的な測定方法を用いて、リプレッサーの存在下および非存在下でのベクターpCON12-25EおよびpCON12-29Eのプロモーター活性を測定した。培養菌は50μg/mlカナマイシン(およびpCON12-55が存在すれば10μg/mlクロラムフェニコール)を添加したLuria-Bertani培地で増殖させた。培養菌は0.3-0.5のOD600nmで2重に測定し、ミラーユニットで表されている。結果は図15に示されている。
【0095】
図15に示されるように、リプレッサー蛋白質(野生型Mntおよび変異型Mnt-Arc; pCON12-55が提供する)の非存在下のpCON12-29Eのプロモーター活性は、約4300ミラーユニットだった。野生型Mntまたは野生型Arcリプレッサー(別のプラスミドで提供される)をpCON12-29Eに添加しても、プロモーター活性のレベルは有意に低下しなかった。しかし、pCON12-29Eがmntおよびmnt-arcリプレッサー遺伝子の両方を含むpCON12-55と組み合わさると、プロモーター活性は約60倍低下し、バックグラウンド(70ミラーユニット)と区別できないレベルになった。このアッセイは、ハイブリッドプロモーター/オペレーター系が遺伝子発現を調節する際の厳重さを示す。
【0096】
上記明細書に述べられるすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の組成物、方法、系、およびキットのさまざまな修正および変更は、本発明の範囲および精神を離れることなく、当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい態様に関して説明されてきたが、請求される本発明はそのような特定の態様に不当に限定されてはならない。実際、関連する分野の当業者に明らかな、本発明を実施するために記述された様式のさまざまな修正は、以下の請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の典型的なベクターの一部の模式図を示す。
【図2】プラスミドpCON3-86Bのマップを示す。
【図3】プラスミドpCON7-74のマップを示す。
【図4】プラスミドpCON7-71のマップを示す。
【図5】プラスミドpCON5-25のマップを示す。
【図6】プラスミドpCON7-77のマップを示す。
【図7】プラスミドpCON7-58のマップを示す。
【図8】プラスミドpCON4-42のマップを示す。
【図9】プラスミドpCON7-11のマップを示す。
【図10】本発明のベクターを利用した遺伝子発現測定の結果を示す。
【図11】図11A〜Iは、本発明の典型的なベクターおよびベクター成分の核酸配列を示す。
【図12】本発明の野生型Mntオペレーター、野生型Arcオペレーター、およびハイブリッドプロモーター/オペレーターの模式図を示す。
【図13】本発明の典型的な発現ベクター(pCON12-68A)のマップを示す。
【図14】本発明のハイブリッドMnt-Arcプロモーターの核酸配列(配列番号:13)を示す。
【図15】βガラクトシダーゼアッセイを用いた、本発明のいくつかのベクターのプロモーター活性を示す。
【図16】プラスミドpCON9-53のマップを示す。
【図17】プラスミドpCON12-25Eのマップを示す。
【図18】プラスミドpCON12-29Eのマップを示す。
【図19】プラスミドpCON12-35のマップを示す。
【図20】プラスミドpCON12-44のマップを示す。
【図21】プラスミドpCON12-55のマップを示す。
【図22】プラスミドpCON12-68Aのマップを示す。
【図23】プラスミドpCON12-82のマップを示す。
【図24】図24A〜Hは、本発明の典型的なベクターおよびベクター成分の核酸列を示す。
【図01】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は細菌の発現ベクターに関する。特に、本発明はインビボで毒性のある蛋白質、RNA、および代謝物をクローニングおよび発現するために設計された、緻密に調節された細菌発現ベクターを提供する。なお、本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2003年12月12日出願の仮出願第60/529,255号に基づく優先権を伴う出願である。
【背景技術】
【0002】
背景
組み換え蛋白質の発現のために多くの原核生物発現系が開発されてきたが、 大腸菌(Escherichia coli)のようなグラム陰性菌における大部分の遺伝子発現系は、限られた細菌プロモーターにもっぱら依存してきた。最も広く使用されている細菌プロモータには、ラクトース(lac) プロモーター(Yanisch-Perron et al., Gene 33: 103-109 (1985))、トリプトファン(trp)プロモーター(Tacon et al., Mol. Gen. Genet. 177:427-38 (1980))、ならびにtacプロモーター(deBoer et al. Proc. Natl. Sci. USA 80:21-25 (1983))およびtrcプロモーター(Brosius. Gene 27:161-172 (1984); Amanna and Brosius. Gene 40:183-190 (1985))のようなハイブリッド誘導体が含まれる。他の発現系には、λファージプロモーター(PLおよびPR)(Bernard et al., Gene 5;59-76 (1979); Elvin et al. Gene 37:123-126 (1990))、T7ファージプロモーター(Studier et al., J. Mol. Biol. 189:113-130 (1986))、およびT5ファージプロモーター(Bujard et al. Methods Enzymol. 155:416-433 (1987))の利用が含まれる。これらの系は一般的に使用され、望ましい特徴を多く持っているが、プロモーターからの漏出性発現があり得るため、非常に毒性の強い蛋白質、RNA、または毒性の代謝物を生産する酵素のクローニングができない可能性がある。
【0003】
これらの一般的な発現系からの発現を調節するためには、いくつかの既存の方法がある。通常、細菌のプロモーターは、プロモーター内部にある特異的なDNAオペレーター配列にリプレッサー蛋白質が結合することによって、調節される。通常、発現系にはlacI、λcI、cro、またはテトラサイクリンリプレッサー蛋白質が利用される。T7ファージの発現系では、細菌のプラスミド上に存在するクローニングされた遺伝子の発現を駆動するために、T7 RNAポリメラーゼの調節された発現を利用する。T5ファージ発現系では、リプレッサー蛋白質の使用とT5ファージプロモーター、および高レベルのリプレッサー蛋白質を組み合わせることにより、遺伝子発現が制御される。
【0004】
これらの細菌およびファージ系では、高レベルの発現が可能であるが、望ましくない遺伝子のバックグラウンド発現という問題がしばしば存在する。抑制した条件下でのこの「漏出性の」発現は、主に3つの要素に起因する。まず、細菌のリプレッサー蛋白質はDNAオペレーター部位に結合して100%の効率で遺伝子の転写を阻止するわけではない。リプレッサーとオペレーターの親和性、およびリプレッサー蛋白質の相対的な存在量によっては、相当なレベルのバックグラウンド発現が生じる。第2に、市販の発現系の大部分は、DNA作製および分子生物学技術を容易にするために、中程度から高いコピー数のプラスミドコンストラクトを利用しているが、クローニングされた挿入断片の調節が低下している。挿入断片がそのようなプラスミド上にある場合には、挿入断片の望ましくないバックグラウンド発現がプラスミドのコピー数だけ増幅し、バックグラウンドの遺伝子発現量が増加することになる。第3に、市販の系では、クローニングされた挿入断片が、プラスミドDNA上にある他の強力なプロモーターから読み過し転写を受ける可能性がある。
【0005】
プロモーターコンストラクトの不完全な抑制と、プラスミドのコピー数が多いこと、および転写の読み過しの効果とが組み合わさると、細菌宿主にとって致死的な産物をコードする遺伝子のクローニングを行なう際に大きな問題となる。これらの毒性蛋白質の多くは、少量(1〜10分子)でも致死的であるので、バックグラウンドの発現があればこれらの遺伝子のクローニングができなくなる。
【0006】
したがって、遺伝子発現が細菌宿主にとって望ましくなく、致死的である際に、増殖培養中にプロモーターが遺伝子発現を厳重に調節する発現コンストラクトが、当技術分野では必要とされている。広範囲のグラム陽性菌およびグラム陰性菌においてこの発現系が複製し有用であると、有利であろう。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は細菌の発現ベクターに関する。特に、本発明はインビボで毒性のある蛋白質、RNA、および代謝物をクローニングおよび発現するために設計された、緻密に調節された細菌発現ベクターを提供する。
【0008】
例えば、いくつかの態様では、本発明は転写終結配列および低コピー数の複製起点(例、配列番号:1, 2, 3, および14)を含むベクターを含む組成物を提供する。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列は、rrnBリボゾーム転写終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)である。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0009】
いくつかの態様では、ベクターはさらにプロモーターを含む。本発明は特定のプロモーターに限定されない。いくつかの態様では、プロモーターはオペレーターを含むため、プロモーター/オペレーターである。いくつかの好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはラクトースのプロモーター/オペレーターである。他の好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである(例、配列番号:13に記述される配列)。他の態様では、プロモーターはPBAD, T7, またはT5プロモーターである。いくつかの好ましい態様では、ベクターはさらに多重クローニング部位を含む。いくつかの態様では、ベクターはさらに選択マーカーを含む。
【0010】
いくつかの態様では、ベクターは、例えば1つのトキシンの異なるサブユニットを発現する際、または複数のトキシン遺伝子を同じベクター上で発現する際に使用する、終結配列-プロモーター遺伝子部分または「カセット」を複数含む。いくつかの態様では、複数のカセット中の各カセットは、同じ終結配列-プロモーター領域を含む。いくつかの好ましい態様では、複数のカセットのうちの少なくとも1つのカセットは、異なる終結配列または異なるプロモーターを含む。いくつかの特に好ましい態様では、複数のカセット中の各カセットは、異なる終結配列および異なるプロモーターを含む。
【0011】
いくつかの態様では、ベクターはさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、蛋白質またはRNAは毒性蛋白質または毒性RNAである。他の態様では、蛋白質は毒性の代謝物を有する。
【0012】
別の態様では、本発明はハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸(例、配列番号:13の核酸配列を有するハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸)を含む組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明は核酸を含むベクター(例、配列番号:14のベクター)を提供する。いくつかの態様では、ベクターはさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含む。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である(配列番号:9に記述される配列)。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0013】
いくつかの態様では、ベクターは、例えば1つのトキシンの異なるサブユニットを発現する際、または複数のトキシン遺伝子を同じベクター上で発現する際に使用する、終結配列-プロモーター遺伝子部分または「カセット」を複数含む。いくつかの態様では、複数のカセット中の各カセットは、同じ終結配列-プロモーター領域を含む。いくつかの好ましい態様では、複数のカセットのうちの少なくとも1つのカセットは、異なる終結配列または異なるプロモーターを含む。いくつかの特に好ましい態様では、複数のカセット中の各カセットは、異なる終結配列および異なるプロモーターを含む。
【0014】
いくつかの態様では、ベクターはさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、蛋白質またはRNAは毒性蛋白質または毒性RNAである。他の態様では、蛋白質は毒性の代謝物を有する。
【0015】
本発明はさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含むベクター中に挿入された関心対象の遺伝子を提供する段階;および細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は、毒性の蛋白質またはRNAをコードする。別の態様では、関心対象の遺伝子は、毒性の代謝物を有する蛋白質をコードする。好ましい態様では、関心対象の遺伝子は、増殖条件下でベクター中に維持され、細菌宿主中に蛋白質(例、毒性蛋白質)が蓄積する。
【0016】
本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)を含む。いくつかの態様では、転写終結配列はバクテリオファージλの終結配列を含む。別の態様では、終結配列は大腸菌のtrp遺伝子の終結配列を含む。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。
【0017】
いくつかの態様では、ベクターはさらにプロモーターを含む。本発明は特定のプロモーターに限定されない。いくつかの好ましい態様では、プロモーターはラクトースのプロモーター/オペレーターである。他の好ましい態様では、プロモーター/オペレーターはハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである(例、配列番号:13に記述される配列)。他の態様では、プロモーターはPBAD, T7, またはT5プロモーターである。いくつかの好ましい態様では、ベクターはさらに多重クローニング部位を含む。いくつかの態様では、ベクターはさらに選択マーカーを含む。いくつかの態様では、ベクターは配列番号:1, 2, 3, または14の核酸配列を有する。いくつかの態様では、細菌宿主はグラム陰性菌である(例、大腸菌)。
【0018】
本発明はさらに、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸(例、配列番号:13の核酸配列を有するハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター核酸配列)を含むベクター(例、核酸配列:14の核酸配列を有するベクター)に挿入された関心対象の遺伝子を提供する段階;および細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、関心対象の遺伝子は毒性の蛋白質またはRNAをコードする。別の態様では、関心対象の遺伝子は毒性代謝物を有する蛋白質をコードする。好ましい態様では、関心対象の遺伝子は、増殖条件下でベクター中に維持され、細菌宿主中に蛋白質(例、毒性蛋白質)が蓄積する。
【0019】
本方法のいくつかの態様では、ベクターはさらに転写終結配列および低コピー数の複製起点を含む。本発明は特定の転写終結配列に限定されない。いくつかの好ましい態様では、転写終結配列はrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2(例、配列番号:9に記述される配列)を含む。いくつかの態様では、転写終結配列はバクテリオファージλの終結配列を含む。別の態様では、終結配列は大腸菌のtrp遺伝子の終結配列を含む。本発明は特定の低コピー数の複製起点にも限定されない。いくつかの好ましい態様では、低コピー数の複製起点は、低コピー数の修飾pSC101複製起点(例、配列番号:10に記述される配列)またはRK2複製起点(例、配列番号:11に記述される配列)である。他の態様では、低コピー数の複製起点は野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、またはpACYC複製起点である。いくつかの態様では、本方法はさらにハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質も提供する。
【0020】
別の態様では、本発明はハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター;およびハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質を含むキットを提供する。いくつかの態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸は、配列番号:13の核酸配列を有する。特定の態様では、キットはさらに、毒性の蛋白質またはRNAをコードする関心対象遺伝子を発現するためにキットを使用するための、説明書を含む。
【0021】
定義
本発明の理解を容易にするために、以下にいくつかの用語の定義を示す。
【0022】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、糖成分(ペントース)、リン酸基、および窒素含有の複素環式塩基からなる核酸(例、DNAまたはRNA)の単量体単位をさす。塩基はグリコシド結合した炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖成分に結合しており、塩基と糖のその組み合わせはヌクレオシドと呼ばれる。ヌクレオシドがペントースの3’または5’の位置に結合したリン酸基を含むと、これはヌクレオチドと呼ばれる。機能的に連結したヌクレオチドは通常本明細書では「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」または「核酸配列」と呼ばれ、左から右の方向に通常の5’端から3’端の方向とした表現で表される。
【0023】
本明細書では、「塩基対」という用語は、例えば、2重鎖DNA分子においてアデニン(A)とチミン(T)、またはシトシン(C)とグアニン(G)のような水素結合したヌクレオチドをさす。RNAでは、ウラシル(U)がチミンに置き換わる。この塩基対という用語は、DNAの長さの測定単位としても一般的に用いられる。塩基対は、DNAまたはRNA分子が2重鎖の構造をとる時のような、水素結合によって成分の塩基が対を作る場合に、「相補的」であると言われる。
【0024】
本明細書で使用される「核酸」および「核酸分子」という用語は、DNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない分子を含む、任意の核酸をさす。この用語は、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-Dマンノシルケオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトクソシン、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、および2,6-ジアミノプリンを含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAの既知の任意の塩基アナログを含む。
【0025】
モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸が、ホスホジエステル結合によって1方向で隣接する3’酸素に結合してオリゴヌクレオチドを作るので、DNA分子は「5’端」および「3’端」を有すると言われる。したがって、オリゴヌクレオチドの末端は、5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していなければ「5’端」と呼ばれ、その3’端の酸素が続くモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸に結合していなければ「3’端」と呼ばれる。2重鎖の核酸分子も5’端および3’端を有すると言われ、「5’」は特定の領域、遺伝子、または構造の受け入れられた開始点を含む末端をさす。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にあっても、やはり5’および3’端を有すると言って良い(これらの末端は遊離端ではない)。そのような場合、内部の核酸配列の5’および3’端は、より大きなオリゴヌクレオチドから単離されたとしたらその断片が持ったはずの5’ および3’端をさす。線状または環状DNA分子のいずれでも、不連続の要素は、「下流」または3’の要素の「上流」または5’にあると呼ばれる。末端は、a) いずれも平滑末端であるか相補的な一本鎖の伸長部分(制限エンドヌクレアーゼの消化後に生成するような部分)を持ち、かつb) 少なくとも一方の末端が5’リン酸基を含む場合に、「適合する」と呼ばれる。したがって適合する末端は、標準的な条件下で2重鎖DNAリガーゼ(例、T4 DNAリガーゼ)によって連結することができる。
【0026】
本明細書で使用される「ハイブリダイゼーション」または「アニーリング」という用語は、相補的な塩基対の間で水素結合を確立することによって、相補的なヌクレオチド配列(核酸の鎖)が2重鎖、ヘテロ2重鎖、または2本以上の一本鎖核酸を含む複合体を形成することをさす。ハイブリダイゼーションは、相補的ポリヌクレオチドの間の特異的、すなわち無作為ではない、相互作用であり、競合阻害できるものである。
【0027】
本明細書で使用される「環状ベクター」という用語は、宿主中で複製可能な閉鎖した環状の核酸配列をさす。
【0028】
本明細書で使用される「ベクター」または「プラスミド」という用語は、細胞中で複製する能力がある染色体外の核酸分子であって、挿入配列を機能的に連結して挿入配列の複製を行なうことのできるものをさす。例には、プラスミドコンストラクト、ファージコンストラクト、コスミドベクター等の環状DNA分子、ならびに線状の核酸コンストラクト(例、λファージコンストラクト、細菌人工染色体(BAC)等)が含まれるがこれらに限定されない。ベクターには、プロモーターおよび/または終結配列のような発現シグナル、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子のような選択マーカー、および挿入配列のクローニングを行なえる1つまたは複数の制限部位が含まれる可能性がある。
【0029】
本明細書で使用される「ポリリンカー」または「多重クローニング部位」という用語は、核酸コンストラクト上の制限酵素部位の集団であって、核酸配列の挿入および/または切り出しに使用されるものをさす。
【0030】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、異種DNA(ベクターのような)で形質転換できる任意の細胞をさす。宿主細胞の例には、FまたはF’因子を含む大腸菌株(例、DH5αFまたはDH5αF’)、またはFまたはF’因子を持たない大腸菌株(例、DH10B)が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
「をコードする核酸分子」「をコードするDNA配列」および「をコードするDNA」という用語は、RNAへの転写およびその後の蛋白質への翻訳後に、特定のペプチドの合成が起きるようなヌクレオチド配列をさす。これらの用語は、RNAへの転写後に非コード機能を有するRNA(例、リボゾームRNAまたはtRNA)を生産するヌクレオチド配列もさす。そのような転写および翻訳は、標準的な遺伝コードに基づいて、インビトロまたはインビボで実際に起こる可能性があるが、または完全に理論的である可能性もある。
【0032】
「遺伝子」という用語は、非コード機能を有するRNA(例、リボゾームRNAまたはtRNA)、ポリペプチド、または前駆体の生産に必要なコード配列を含む、核酸(例、DNA)配列をさす。RNAまたはポリペプチドは、全長または断片の望ましい活性または機能的特性(例、酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、等)が維持されている限り、全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によって、コードされている可能性がある。この用語は、遺伝子が全長mRNAに転写され得るように、構造遺伝子のコード領域、およびいずれの側でも約1 kbまたはそれ以上の距離で5’および3’端の両方でコード領域に隣接する配列も含む。コード領域の5’に存在しmRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’または下流に存在し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNAおよびゲノム型の両方を含む。遺伝子のゲノム型またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列が割り込んだコード領域を含む。イントロンは核RNA(hnRNA)に転写される遺伝子部分である;イントロンはエンハンサーのような調節要素を含む場合がある。イントロンは、核転写物または一次転写物から除去または「スプライシング」される;したがってイントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物中には存在しない。mRNAは翻訳の際に新生ポリペプチド中の配列すなわちアミノ酸の順序を指定する機能を有する。
【0033】
本明細書で使用される「発現」という用語は、転写(例、遺伝子から)、および場合によっては遺伝子産物への翻訳を意味する。発現過程において、遺伝子産物の配列をコードするDNA鎖はまず相補的RNAに転写されるが、これはしばしばメッセンジャーRNAであり、場合によっては、転写されたメッセンジャーRNAはその後、遺伝子の蛋白質産物に翻訳される。
【0034】
本明細書で使用される「機能的な組み合わせ」または「機能的に連結」という用語は、所望の蛋白質分子の合成を指示する能力のある核酸分子が生産されるような、核酸配列の連結をさす。プロモーター配列が蛋白質をコードする配列に機能的に連結される時には、プロモーターは、コードされた蛋白質の機能的な型が生産されるように翻訳され得るmRNAの発現を指示する。この用語は、機能的な蛋白質が生産されるような、アミノ酸配列の連結もさす。
【0035】
本明細書で使用される「毒性蛋白質」という用語は、宿主細胞中で発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至る蛋白質をさす。
【0036】
本明細書で使用される「毒性RNA」という用語は、宿主細胞中で発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至るRNAをさす。
【0037】
本明細書で使用される「毒性代謝物」という用語は、宿主細胞中で蛋白質が発現されると細胞死または細胞増殖の阻害に至る蛋白質の代謝物をさす。
【0038】
「原核生物の終結配列」、「転写終結配列」または「終結配列」という用語は、RNAポリメラーゼに認識され、転写の終結に至る核酸配列をさす。原核生物の終結配列は、一般的に、後にATに富む配列が続く、2回転対称を有するGCに富む領域を含む。一般的に使用される原核生物の終結配列は、T7終結配列である。当技術分野ではさまざまな終結配列が知られており、本発明の核酸コンストラクト中で利用できるが、これらには、バクテリオファージλに由来するTINT, TL1, TL2, TL3, TR1, TR2, T6S終結シグナル、rrnB終結配列T1およびT2 (rrnBT1T2)のようなリボゾーム終結シグナル、および大腸菌のtrp遺伝子のような細菌遺伝子に由来する終結シグナルが含まれる。
【0039】
本明細書で使用される「ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター」という用語は、Mnt-Arcホモダイマーによって認識されるプロモーター配列(「ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター」)をさす。いくつかの態様では、プロモーター配列には、1つのArcオペレーター結合配列(O2)および1つのMntオペレーター結合配列(O1)が含まれる。1つの典型的なハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター系の模式図は図12に示されている。いくつかの好ましい態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターは配列番号:13(図14に示されている)の核酸配列を有する。
【0040】
本明細書で使用される「複製可能ベクター」という用語は、宿主細胞中で複製可能なベクターを意味する。
【0041】
本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、所望のコード配列および機能的に連結されたコード配列(例、産物をコードする挿入配列)を特定の宿主生物中で発現するために必要な適当な核酸配列を含む、組み換えDNA分子をさす。原核生物での発現に必要な核酸配列には、通常、しばしば他の配列とともにプロモーター、オペレーター(任意で)、およびリボゾーム結合部位が含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、特定のヌクレオチド配列またはその付近で2重鎖DNAを切断する酵素(例、細菌の)をさす。例には、AvaII, BamHI, EcoRI, HindIII, HincII, NcoI, SmaI, およびRsaIが含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される「制限」という用語は、制限酵素による制限部位におけるDNAの切断をさす。
【0044】
本明細書で使用される「制限部位」という用語は、同種の制限エンドヌクレアーゼによって認識される特定のDNA配列をさす。
【0045】
本明細書で使用される「精製」または「精製する」という用語は、試料から不純物を除去することをさす。例えば、細菌宿主細胞中でプラスミドを増殖させ、宿主細胞蛋白質、細菌のゲノムDNA、および他の不純物を除去することにより、プラスミドは精製される。したがって、これにより試料中のプラスミドDNAの割合は増加する。核酸配列の場合は、「精製する」というのは個々の核酸配列を互いに分離することをさす。
【0046】
本明細書で使用される「PCR」という用語は、DNAのある領域を酵素により増殖させるポリメラーゼ連鎖反応をさす。この指数関数的増殖手順は、変性、オリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング、および熱安定性DNAポリメラーゼ(例、それぞれThermus aquaticusまたはThermus flavusから単離されたTaqまたはTfl DNAポリメラーゼ酵素)のようなDNA重合剤によるプライマーの伸長のサイクルを繰り返すことに基づく。
【0047】
本明細書で使用される「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成のルールにより関連するポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)をさす。例えば、「5’-A-G-T-3’」という配列は、「3’-T-C-A-5’」という配列に相補的である。相補性は、核酸塩基の一部のみが塩基対形成ルールにしたがって一致するような「部分的」相補性である場合もある。または、核酸の間の「完全な」または「全くの」相補性である場合もある。核酸鎖の間の相補性の度合いは、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効率および強度に強く影響する。これは増幅反応、および核酸の間の結合に依存する検出方法に特に重要である。
【0048】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い一本鎖ポリヌクレオチドをさす。オリゴヌクレオチドは通常は100残基未満(例、15と50の間)であるが、本明細書では、この用語はより長いポリヌクレオチド鎖も含む。オリゴヌクレオチドはしばしばその長さで呼ばれる。例えば、24残基のオリゴヌクレオチドは、「24-mer」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは自己ハイブリダイゼーションまたは他のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって、2次および3次構造をとり得る。そのような構造には、2本鎖、ヘアピン、十字形、屈曲、3本鎖が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される「形質転換」または「トランスフェクション」という用語は、細胞(例、原核細胞)への外来DNAの導入をさす。形質転換は、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、ポリブレンを介したトランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、およびバイオリスティックを含む、当技術分野で公知のさまざまな方法で実行できる。
【0050】
発明の説明
いくつかの態様では、本発明はクローニングされた遺伝子を非常に厳重に調節できる細菌発現系を提供する。いくつかの態様では、この系では、野生型ラクトースプロモーターの上流のrrnB T1T2転写終結配列と、非常に低コピー数の修飾pSC101複製起点または低コピー数の広宿主域RK2複製起点のいずれかとの組み合わせを利用する。これらの2つの要素を組み合わせると、クローニングされた遺伝子の非常に厳重な調節ができ、それにより非常に毒性の強い蛋白質(例、コリシンD、コリシンE3、およびコリシンE7)をコードする遺伝子のクローニングができるようになるが、これらはそれぞれの免疫蛋白質なしには他の発現系にはクローニングできない。
【0051】
大部分の市販の発現系(例、pETベクター、PBADベクター、等)は中程度から高いコピー数の複製起点と組み合わさった非常に強力なプロモーターを含んでいるため、必然的にクローニングされた遺伝子の「漏出性」発現が見られる。さらに、蛋白質発現ベクターは通常、インデューサーがなくても完全に抑制できない非常に強力な細菌(PTRC、PBAD)またはファージ(T7, T5)のプロモーターを持っている。研究者はしばしばこのようなタイプの発現ベクターに毒性遺伝子をクローニングする際に問題を経験する。さらにこれらの複製起点は宿主域が狭く、すべてのグラム陰性菌で複製できるわけではない。
【0052】
本発明のベクターは、当技術分野の問題の多くを解決する。上流の転写終結配列と、低コピー数の修飾複製起点とを組み合わせると、非常に毒性の強い蛋白質の安定したクローニングおよび発現が可能になる。
【0053】
I. ベクター
いくつかの態様では、本発明は非常に毒性の強い蛋白質の発現のためのベクターを提供する。好ましい態様では、本発明のベクター(典型的なベクターの記述については、実験の項の表1を参照されたい)は、強力な細菌プロモーターの上流にrrnBT1T2転写終結配列(例、配列番号:9の配列を有するrrnBT1T2終結配列)を含む。本発明はrrnBT1T2転写終結配列の使用に限定されない。他の既知の転写終結配列も使用できる。
【0054】
いくつかの態様では、ラクトースプロモーターおよびオペレーター(例、配列番号:10に記述される配列)が使用される。いくつかの態様では、LACIQリプレッサー蛋白質はベクターに含まれる。他の態様では、これは別のベクター、F’因子、または染色体上で提供される。本発明はラクトースプロモーターおよびオペレーターの使用に限定されない。テトラサイクリン、PBAD、T7、およびT5プロモーターを含むがこれらに限定されない他の適当なプロモーターも使用できる。
【0055】
いくつかの態様では、本発明は新規のハイブリッドプロモーター/オペレーター系を含むベクターを提供する。ハイブリッドプロモーター/オペレーターは、サルモネラのバクテリオファージP22から得られるArcおよびMntリプレッサー蛋白質を基本骨格として使用する。
【0056】
ArcおよびMntリプレッサー蛋白質は、構造に類似性を有する、小さな転写調節蛋白質である。ArcとMnt蛋白質のいずれも、2つの機能的ドメイン、すなわちオペレーターDNAに結合するダイマーのN端ドメイン、および機能に必須の蛋白質の4量体化を仲介するC端のコイルドコイルドメインを含む(Knight and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:797-801 (1989))(図12に示されている)。ArcおよびMntの4量体化により、オペレーター部位への結合親和性と特異性の両方を上昇させる協同的相互作用が生じる(Berggrun and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:2301-2305 (2001))。この構造類似性は有するものの、ArcとMntは、21塩基対のうち6塩基対しか共通しないほぼ完全に異なるオペレーター配列を認識する(Vershon et al. J. Mol. Biol. 195:323-31 (1987); Vershon et al. J. Mol. Biol. 195:311-322 (1987))。
【0057】
本発明のプロモーター/リプレッサー系では、野生型Mntリプレッサーと変異型Mnt-Arc蛋白質の2つのリプレッサー蛋白質の共発現が利用される。変異型Mnt-Arc蛋白質はMntの野生型C端2量体化ドメインを有する;しかしN端のDNA結合ドメイン内の6つの残基が、Arcリプレッサーの対応する9つの残基で置換されている(Knight and Sauer. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:797-801 (1989))。Mnt-Arcホモダイマーは野生型の4量体化能力を有するが、Mntオペレーター(O1)ではなくArcオペレーター配列(O2)を認識する。本発明の新規のリプレッサーヘテロ4量体は、1つの野生型Mntホモダイマーおよび1つのハイブリッドMnt-Arcホモダイマーからなる(図12に示されている)。
【0058】
いくつかの態様では、ハイブリッド細菌プロモーターは、標的細菌中で最高レベルの転写を行なうために、コンセンサスに近いσ70-35および-10の6量体配列からなる。しかし、他の態様では、非大腸菌の細菌宿主中で最適な発現を得るために、別の6量体配列が利用されている。好ましい態様では、上述のrrnBT1T2終結配列は、リードスルー転写から保護するためにプロモーターの上流に位置し、また細胞当たり3〜4コピーに維持される低コピー数の修飾pSC101複製起点(pMPP6から得られる)が利用される(プラスミドpCON12-68A)。図13は本明細書に記述されるハイブリッドプロモーター/オペレーターを利用した本発明の1つの典型的な発現ベクターのマップを示す。
【0059】
好ましい態様では、リプレッサー蛋白質の結合のための2つのオペレーターの半分の部位O1およびO2は、-35および/または-10の6量体の下流になるように位置している;したがって、リプレッサー結合は、RNAポリメラーゼの転写開始を直接阻害する。本発明の開発の際に行われた実験では、O1とO2のオペレーターの半分の部位の好ましい位置は、直接隣接するオペレーター部位を利用することが示された。両方のオペレーターの半分の部位は-35および-10の6量体の下流にあるので、MntおよびMnt-Arc変異型リプレッサーの抑制能力を変えることなく、別の「種特異的」プロモーターを置換することができる。ハイブリッドプロモーターのDNA配列は、図14(配列番号:13)に示されている。オペレーターO1およびO2がDNA中で正しい方向にある場合には、野生型Mntダイマーと変異型Mnt-Arcダイマーは安定なヘテロ4量体を形成し、高い親和性および特異性でオペレーターに結合する。ヘテロ4量体が「ハイブリッド」オペレーターに安定に結合すると、遺伝子発現が強力に抑制される。野生型Mntまたは野生型Arcがハイブリッドオペレーター(O1-O2)を認識できないことに注意されたい。まだ各オペレーター配列(独立してO1またはO2)を認識できるが、4量体の形成がないために、これらの野生型リプレッサー蛋白質は領域に強くは結合しない。
【0060】
病原性細菌がMntおよび/またはArcリプレッサーを獲得しても、以下の理由のために毒性遺伝子の発現に対して、すぐに抵抗性になるわけではない:(1) 野生型Mntの4量体はハイブリッドオペレーター配列を認識しない。(2) 野生型Arcの4量体はハイブリッドオペレーター配列を認識しない。(3) 獲得されたArcとMnt蛋白質の間の相同組み換えによって形成されるMnt-Arc蛋白質は、抑制にやはり必要な野生型コピーを除去する。さらに、バクテリオファージP22はサルモネラ種に限定されており、このファージ由来の遺伝子に大腸菌および他の病原菌がさらされる可能性はより低い。したがって、本発明のハイブリッドプロモーター/リプレッサー系は、任意の細菌種において遺伝子およびRNAの発現の調節をするために理想的である。
【0061】
別の好ましい態様では、本発明のベクターは低コピー数の複製起点(例、低コピー数の修飾pSC101 (配列番号:11)またはRK2 (配列番号:12))を含む。本発明は低コピー数の修飾pSC101またはRK2複製起点に限定されない。他の複製起点の例には、野生型pSC101, p15a, pACYCが含まれるがこれらに限定されない。
【0062】
別の態様では、ベクターは関心対象の遺伝子および選択マーカー(例、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン等のような抗生物質耐性遺伝子)をコードする核酸の挿入のための多重クローニング部位を含む。さらに別の態様では、本発明のベクターは蛋白質精製タグ(例、Hisタグ、インテインタグ)を含む。いくつかの態様では、翻訳が増加/低下するように、リボゾーム結合部位が修飾されている。
【0063】
II. 本発明の実施
本発明のベクターは、大腸菌および他の密接に関連した細菌におけるクローニングおよび発現のための、緻密に調節された発現系を構成する。
【0064】
A. 発現
図1および図13は本発明の典型的なベクターを示す。関心対象の遺伝子を野生型ラクトースプロモーター(図1のlacOP)の制御下の多重クローニング部位(図1のMCS)にクローニングする。このプロモーターは、染色体、F’因子、および/または第2のプラスミドのいずれかが供給するラクトースリプレッサー蛋白質(LacI)によって抑制されている。IPTGによる誘導またはLacIリプレッサー蛋白質の除去によって、ラクトースプロモーターの抑制が外れ、クローニングされた遺伝子の強力な発現が起きる。他の態様では、ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーター系が利用される。プロモーターは、リボゾームrrnB T1およびT2転写終結配列(図1のrrnBT1T2)によって、リードスルー転写および「漏出性」発現から保護されている。プロモーター領域の上流に位置すると、これらの終結配列は、プロモーター領域への転写のリードスルーを非常に効率良く予防する。いくつかの態様では、発現系は低コピー数の修飾pSC101複製起点(pMPP6から得られる)を利用するが、これは細胞当たり3〜4コピーに維持される。コピー数が少ないことは、クローニングされた遺伝子の任意の「漏出性」発現がさらに抑えられる。他の態様では、広範囲のグラム陰性菌中で複製可能な、低コピー数のRK2複製起点からの複製起点が利用される。RK2複製起点を利用すると、この発現系を大腸菌のみではなく、病原菌から産業用の細菌までの種々の細菌で使用できる。RK2のコピー数が少ないために、クローニングされた遺伝子の任意の「漏出性」発現がさらに抑えられる。
【0065】
本発明のベクターは、細菌宿主において任意の蛋白質またはRNAを発現するために適している。しかし、低コピー数と緻密に調節された発現を組み合わせたために、プラスミドは毒性蛋白質、毒性RNA、および毒性代謝物を有する蛋白質の維持、複製、および発現に特に適している。本発明のベクターは、漏出性発現が細胞死を引き起こす可能性のある毒性蛋白質の発現も可能にする。本発明の開発の際に行われた実験では、トキシンコリシン蛋白質のクローニング、維持、および発現が示された(例、実施例3を参照されたい)。
【0066】
本発明のベクターは、さまざまな毒性の蛋白質、RNA、および毒性代謝物を有する蛋白質に使用するのに適している。例えば、いくつかの態様では、本発明のベクターは抗菌剤(例、抗生物質)の発現に使用される。薬剤には、カチオンに富む抗菌ペプチド、プロリンに富む抗菌ペプチド、コリシン、バクテリオシン、ディフェンシン、リシン、ピロコリシン、ペキシガナン、ルセガガン(lsegagan)、プロテグリン-1、タナチン、アスタシジン1、サルコトキシンIA、およびマイクロシンJ25のような蛋白質またはペプチド剤が含まれる可能性がある。さらに薬剤には、アンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、短い干渉RNA(siRNA)、触媒性RNA、およびRNAアプタマーも含まれる可能性がある。
【0067】
別の態様では、本発明は上述のコンストラクトを含む細菌宿主細胞を提供する。宿主細胞の具体例には、大腸菌、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびヘリコバクター(Helicobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセス(Streptomyces)およびブドウ球菌(Staphylococcus)属のさまざまな種が含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
宿主細胞中のコンストラクトは、通常の方法で使用して、組み換え配列がコードする遺伝子産物を生産することができる。いくつかの態様では、コンストラクトの宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって行なえる(例えば、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (1986)を参照されたい)。
【0069】
本発明のいくつかの態様では、適当な宿主株の形質転換と適当な細胞密度への宿主株の増殖の後、適当な方法(例、温度変化または化学的な誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、さらに一定期間、細胞を培養する。本発明の別の態様では、細胞は通常、遠心により回収し、物理または化学的な手段で破壊し、さらに精製するために、得られた粗抽出物を保管する。本発明のさらに別の態様では、蛋白質の発現に利用した微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械的破壊、または溶菌剤の使用を含む任意の都合の良い方法によって破壊できる。
【0070】
本発明はまた本発明のベクターを含む組み換え細胞培養から、発現された蛋白質を回収および精製する方法も提供するが、方法は硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、金属イオンキレートクロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない。いくつかの好ましい態様では、蛋白質の回収および精製する方法は、蛋白質上の精製タグ(例、Hisタグまたはインテインタグ)と相互作用をするよう選択された金属イオンキレートクロマトグラフィーまたはアフィニティクロマトグラフィーを含む。本発明の他の態様では、成熟蛋白質の構造の完了に、必要ならば蛋白質の折たたみ段階が使用できる。本発明のまた別の態様では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が精製の最終段階に使用できる。
【0071】
B. キット
いくつかの態様では、本発明は本発明のベクターを含むキットを提供する。本明細書で使用される「キット」という用語は、物質の配達のための任意の配達システムをさす。クローニングおよび発現系では、そのような配達システムは、1つの場所から別の場所へのクローニング構成要素および/または補助物質(例、緩衝液、構成要素の使用説明書等)の保管、輸送、または配達を可能にするシステムを含む。いくつかの態様では、キットは遺伝子(例、毒性蛋白をコードする遺伝子)のクローニングに必要なすべての構成要素を含み、これは例えば、ベクター、緩衝液、塩、酵素、対照、およびクローニング用キットの使用説明書を含むが、これらに限定されない。別の態様では、キットはさらに関心対照の遺伝子のクローニングおよび発現のための構成要素を含む。遺伝子発現に有用な更なる構成要素には、遺伝子発現レベルの定量のための対照プラスミド、および蛋白質精製のための構成要素(例、樹脂および緩衝液)が含まれる。
【0072】
実験
以下の実施例は本発明の特定の好ましい態様および局面を示し、さらに説明するために提供されるものであり、その範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0073】
実施例1
プラスミドの作製
本実施例では、本発明の典型的プラスミドの作製を記述する。表1は以下に記述するプラスミドの名前と、対応する図および配列番号を示す。プラスミドおよび選択されたベクター要素の配列は図11に示されている。
(表1) プラスミド
【0074】
A. 材料と方法
細菌の株および培地
使用された大腸菌の株はNovagen(ウィスコンシン州マジソン)から得たNovaBlue (endA1 hsdR17(rK12-mK12+) supE44 thi-1 recA1 gyrA96 relA1 Δlac F’(proA+B+ lacIqZΔM15::Tn10 (TcR)))だった。すべてのクローニングは当技術分野で公知の標準的な方法を用いて行われ、プラスミドの選択のために50μg/mlカナマイシンを添加したLuria Bertani増殖培地が用いられた。コリシンのような毒性遺伝子産物のクローニングには、さらにラクトースプロモーターを抑制するために、増殖培地に0.8%グルコースが添加された。
【0075】
B. プラスミドの作製
pCON3-86Bの作製
pMPP6複製起点およびカナマイシン耐性遺伝子を含むDNA領域は、プラスミドpZS24-MCS1 (Lutz and Bujard, Nucleic Acids Res. 25(6):1203-1210 (1997); Manen et al., Mol Microbiol 11(5):875-884 (1994))に由来した。pMPP6複製起点内部のNde I制限部位は、位置指定突然変異導入法により削除された。野生型ラクトースプロモーターは大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅され、Aat IIおよびKpn I制限部位を介してpMPP6複製起点およびカナマイシン耐性遺伝子と合わせた。rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2はプラスミドpRLG593 (Ross et al., J Bacteriol 180:5375-83 (1998); Glaser et al., 302:74-6 (1983))からPCR増幅され、ベクターにサブクローニングし、プラスミドpCON3-86Bが得られた。
【0076】
pCON7-74の作製
カナマイシン耐性遺伝子、rrnB終結配列、ラクトースプロモーター、および多重クローニング部位を含むpCON3-86BのDNA領域をPCR増幅し、Nco IおよびMlu I制限部位を介してミニRK2ベクターpCON4-43にサブクローニングした。得られたコンストラクトがpCON7-74である。
【0077】
pCON7-71の作製
lacIQ遺伝子をコードするDNA領域をプラスミドpCON1-94からPCR増幅し、Xmn I制限部位を介してpCON7-74にサブクローニングした。得られたコンストラクトがpCON7-71である。
【0078】
pCON5-25の作製
lacZをコードするDNA領域を大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅し、Kpn IおよびHindIII制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。得られたベクターがpCON5-25である。
【0079】
pCON7-77の作製
lacZをコードするDNA領域を大腸菌K12 MG1655ゲノムDNAからPCR増幅し、Kpn IおよびHindIII制限部位を介してpCON7-74にサブクローニングした。得られたベクターがpCON7-77である。
【0080】
pCON7-58の作製
コリシンDをコードするDNA領域をプラスミドpColD-CA23 (Lehrbach and Broda, J Gen Microbiol 130:401-10 (1984))からPCR増幅し、Nde I Eco RV制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON7-58である。
【0081】
pCON4-42の作製
コリシンE3をコードするDNA領域はプラスミドpColE3-CA38 (Vernet et al., Gene 34(1):87-93 (1985))からPCR増幅し、Kpn I Mlu I制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON4-42である。
【0082】
pCON7-11の作製
コリシンE7をコードするDNA領域はプラスミドpColE7-K317 (Watson et al., J Bacteriol 147(2):569-77 (1981))からPCR増幅し、Kpn I Eco RI制限部位を介してpCON3-86Bにサブクローニングした。形質転換体は50μg/mlカナマイシンおよび0.8%グルコースを添加したLB培地上にまいた。得られたベクターがpCON7-11である。
【0083】
実施例2
遺伝子発現
この実施例は実勢例1に記述されたベクターからの発現レベルの測定を記述する。
【0084】
βガラクトシダーゼ活性の標準的測定法を用いて、ベクターpCON3-86B, pCON5-25, pCON7-74, およびpCON7-77のプロモーター活性を、抑制条件(0.8%グルコースおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLuria-Bertani培地)および発現条件(1 mM IPTGおよび50μg/mlカナマイシンを添加したLuria-Bertani培地)で測定した。培養菌は0.3-0.5のOD600nmで2重に測定し、ミラーユニットで表されている。結果は図10に示されている。
【0085】
図10に示されるように、抑制培地中のpCON5-25およびpCON7-77のプロモーター活性は、βガラクトシダーゼの遺伝子を含まないベクターpCON3-86BおよびpCON7-74とあまり差がない。しかし、1 mM IPTGで抑制を外すと、pCON5-25(修飾pSC101起点を有する)のプロモーター活性は、約50倍増加し、pCON7-77(RK2起点を有する)の活性は約140倍増加した。これらの実験は、これらのベクターの制御の厳重さを示す。
【0086】
実施例3
毒性蛋白質の発現
本発明のベクターを用いて、同種免疫蛋白質の非存在下で、コリシンD (pCON7-58), E3 (pCON4-42), E7 (pCON7-11), E3 (pCON12-82)をコードする遺伝子が、プロモーターの抑制除去に伴い高レベルに蛋白質/RNAを発現する能力を伴って、クローニングされ、安定に維持された。
【0087】
実施例4
野生型Mntおよび変異型Mnt-Arcリプレッサーを含むベクターの作製
この実施例は、野生型Mntおよび変異型Mnt-Arcリプレッサーを含む発現ベクターの作製を記述する。図12は本発明のハイブリッドプロモーター/オペレーターの模式図である。図14はハイブリッドプロモーターの核酸配列(配列番号:13)を示す。
【0088】
野生型Mntリプレッサーをコードするmnt遺伝子は、P22ファージDNAからPCR増幅し、pCON7-42にサブクローニングした。得られたコンストラクトpCON9-53では、ベクター骨格において上流に位置する強力なプロモーターから構成的に発現されている。
【0089】
変異型Mnt-Arcリプレッサーを含むベクターは、以下のようにして作製された。SphI部位は位置指定突然変異導入法によりpCON9-53に導入され、プラスミドpCON12-35が作製された。MntのN端の残基は、pCON12-35をKpnI SphIで消化して除去された。ArcリプレッサーのN端の9残基を含むオリゴヌクレオチドリンカーカセットが、KpnI SphI消化によって消化されたpCON12-35骨格にサブクローニングされた。mnt-arcを構成的に発現する得られたベクターが、pCON12-44である。
【0090】
mntおよびmnt-arcの両方の遺伝子を含むプラスミドpCON12-55は以下のようにして作製された。プロモーター-mnt-arcカセットは、隣接するSpeI SacI制限部位を用いてpCON12-44からPCR増幅された。この消化された断片は、pCON9-53に直接サブクローニングされ、プラスミドpCON12-55が得られた。
【0091】
「ハイブリッド」プロモーター/オペレーターの作製
隣接するAatII KpnI部位を有する、「ハイブリッド」プロモーター/オペレーターを含むオリゴヌクレオチドは、相補鎖のクレノウ合成の鋳型として使用された。dsDNA断片をAatII KpnIで消化し、pMPP6 ori骨格(修飾pSC101起点)にサブクローニングした。得られたプラスミドはpCON12-25Eである。rrnB T1T2終結配列は、AatII KpnI消化によりpCON3-86Bから除去し、pCON12-25Eにサブクローニングして、発現ベクターpCON12-68A(図13に示す)を作製した。pCON12-68Aは、rrnBT1T2転写終結配列、「ハイブリッド」プロモーター/オペレーター、多重クローニング部位、修飾pSC101複製起点、およびカナマイシン耐性遺伝子を含む。
【0092】
lacZおよびcolE3遺伝子のクローニング
βガラクトシダーゼをコードするlacZ遺伝子は、KpnI HindIII消化によってpCON5-25から除去され、pCON12-68Aへサブクローニングされ、プラスミドpCON12-29Eを生じた。
【0093】
コリシンE3をコードするコリシンE3遺伝子は、KpnI EcoRIによってpCON4-42から除去し、pCON12-68Aにサブクローニングし、プラスミドpCON12-82を得た。
【0094】
結果
βガラクトシダーゼ活性の標準的な測定方法を用いて、リプレッサーの存在下および非存在下でのベクターpCON12-25EおよびpCON12-29Eのプロモーター活性を測定した。培養菌は50μg/mlカナマイシン(およびpCON12-55が存在すれば10μg/mlクロラムフェニコール)を添加したLuria-Bertani培地で増殖させた。培養菌は0.3-0.5のOD600nmで2重に測定し、ミラーユニットで表されている。結果は図15に示されている。
【0095】
図15に示されるように、リプレッサー蛋白質(野生型Mntおよび変異型Mnt-Arc; pCON12-55が提供する)の非存在下のpCON12-29Eのプロモーター活性は、約4300ミラーユニットだった。野生型Mntまたは野生型Arcリプレッサー(別のプラスミドで提供される)をpCON12-29Eに添加しても、プロモーター活性のレベルは有意に低下しなかった。しかし、pCON12-29Eがmntおよびmnt-arcリプレッサー遺伝子の両方を含むpCON12-55と組み合わさると、プロモーター活性は約60倍低下し、バックグラウンド(70ミラーユニット)と区別できないレベルになった。このアッセイは、ハイブリッドプロモーター/オペレーター系が遺伝子発現を調節する際の厳重さを示す。
【0096】
上記明細書に述べられるすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の組成物、方法、系、およびキットのさまざまな修正および変更は、本発明の範囲および精神を離れることなく、当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい態様に関して説明されてきたが、請求される本発明はそのような特定の態様に不当に限定されてはならない。実際、関連する分野の当業者に明らかな、本発明を実施するために記述された様式のさまざまな修正は、以下の請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の典型的なベクターの一部の模式図を示す。
【図2】プラスミドpCON3-86Bのマップを示す。
【図3】プラスミドpCON7-74のマップを示す。
【図4】プラスミドpCON7-71のマップを示す。
【図5】プラスミドpCON5-25のマップを示す。
【図6】プラスミドpCON7-77のマップを示す。
【図7】プラスミドpCON7-58のマップを示す。
【図8】プラスミドpCON4-42のマップを示す。
【図9】プラスミドpCON7-11のマップを示す。
【図10】本発明のベクターを利用した遺伝子発現測定の結果を示す。
【図11】図11A〜Iは、本発明の典型的なベクターおよびベクター成分の核酸配列を示す。
【図12】本発明の野生型Mntオペレーター、野生型Arcオペレーター、およびハイブリッドプロモーター/オペレーターの模式図を示す。
【図13】本発明の典型的な発現ベクター(pCON12-68A)のマップを示す。
【図14】本発明のハイブリッドMnt-Arcプロモーターの核酸配列(配列番号:13)を示す。
【図15】βガラクトシダーゼアッセイを用いた、本発明のいくつかのベクターのプロモーター活性を示す。
【図16】プラスミドpCON9-53のマップを示す。
【図17】プラスミドpCON12-25Eのマップを示す。
【図18】プラスミドpCON12-29Eのマップを示す。
【図19】プラスミドpCON12-35のマップを示す。
【図20】プラスミドpCON12-44のマップを示す。
【図21】プラスミドpCON12-55のマップを示す。
【図22】プラスミドpCON12-68Aのマップを示す。
【図23】プラスミドpCON12-82のマップを示す。
【図24】図24A〜Hは、本発明の典型的なベクターおよびベクター成分の核酸列を示す。
【図01】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の転写終結配列、プロモーター、クローニング部位、および低コピー数の複製起点を含むベクターを含む組成物であって、該1つまたは複数の転写終結配列は該プロモーターの上流にある組成物。
【請求項2】
転写終結配列がバクテリオファージλ終結配列、大腸菌(E. coli) trp遺伝子終結配列、およびrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2が配列番号:9の核酸配列を有する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点およびRK2複製起点からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
低コピー数の複製起点が野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
低コピー数の修飾pSC101複製起点が配列番号:10の核酸配列を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
RK2複製起点が配列番号:11の核酸配列を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
プロモーターがプロモーター/オペレーターを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
プロモーター/オペレーターがラクトースプロモーター/オペレーターである、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
プロモーターがPBAD, T7, およびT5プロモーターからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
プロモーター/オペレーターがハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターが配列番号:13の核酸配列を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
クローニング部位が多重クローニング部位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
ベクターがさらに選択マーカーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
ベクターが配列番号:1の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ベクターが配列番号:2の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ベクターが配列番号:3の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
ベクターが配列番号:14の核酸配列を有する、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
ベクターがさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含み、核酸配列がプロモーターに機能的に連結している、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
蛋白質またはRNAが毒性蛋白質または毒性RNAである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
蛋白質が毒性の代謝物を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含む組成物。
【請求項23】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸が、配列番号:13の核酸配列を有する、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
請求項22記載の核酸を含むベクター。
【請求項25】
さらに1つまたは複数の転写終結配列、クローニング部位、および低コピー数の複製起点を含む、該1つまたは複数の転写終結配列は該プロモーターの上流にある、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
転写終結配列がバクテリオファージλ終結配列、大腸菌trp遺伝子終結配列、およびrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2の群より選択される、請求項25記載のベクター。
【請求項27】
rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2が配列番号:9の核酸配列を有する、請求項26記載のベクター。
【請求項28】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項25記載のベクター。
【請求項29】
低コピー数の修飾pSC101複製起点が配列番号:10の核酸配列を有する、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
RK2複製起点が配列番号:11の核酸配列を有する、請求項28記載のベクター。
【請求項31】
クローニング部位が多重クローニング部位を含む、請求項25記載のベクター。
【請求項32】
ベクターがさらに選択マーカーを含む、請求項25記載のベクター。
【請求項33】
ベクターが配列番号:14の核酸配列を有する、請求項25記載のベクター。
【請求項34】
さらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含み、核酸配列がプロモーターに機能的に連結している、請求項25記載のベクター。
【請求項35】
蛋白質またはRNAが毒性蛋白質または毒性RNAである、請求項34記載のベクター。
【請求項36】
蛋白質が毒性の代謝物を有する、請求項34記載のベクター。
【請求項37】
a) 1つまたは複数の転写終結配列、プロモーター、および低コピー数の複製起点を含むベクター中で関心対象の遺伝子を提供する段階であって、該1つまたは複数の転写終結配列のうちの少なくとも1つは該プロモーターの上流にあり、関心対象の遺伝子は該プロモーターに機能的に連結している段階;および
b) 細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階、
を含む方法。
【請求項38】
関心対象の遺伝子が毒性の蛋白質またはRNAをコードしている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
関心対象の遺伝子が毒性の代謝物を有する蛋白質をコードしている、請求項37記載の方法。
【請求項40】
関心対象の遺伝子が、増殖条件下でベクター中に維持される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
毒性蛋白質が細菌宿主中に蓄積する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
転写終結配列がrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である、請求項37記載の方法。
【請求項43】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項44】
ベクターがさらにプロモーター/オペレーターを含む、請求項37記載の方法。
【請求項45】
プロモーター/オペレーターがラクトースプロモーター/オペレーター、およびハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項46】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターが配列番号:13の核酸配列を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
プロモーターがPBAD, T7, およびT5プロモーターからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項48】
ベクターがさらに選択マーカーをコードする遺伝子を含む、請求項37記載の方法。
【請求項49】
ベクターが配列番号:1, 2, 3, および14からなる群より選択される核酸配列を有する、請求項37記載の方法。
【請求項50】
細菌宿主がグラム陰性細菌である、請求項37記載の方法。
【請求項51】
グラム陰性細菌が大腸菌である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
a) ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター中で、プロモーターに機能的に連結した関心対象の遺伝子を提供する段階;および
b) 関心対象の遺伝子を細菌宿主中で発現する段階、
を含む方法。
【請求項53】
関心対象の遺伝子が毒性の蛋白質またはRNAをコードする、請求項52記載の方法。
【請求項54】
関心対象の遺伝子が、毒性の代謝物を有する蛋白質をコードする、請求項52記載の方法。
【請求項55】
関心対象の遺伝子が、増殖条件下でベクター中に維持される、請求項52記載の方法。
【請求項56】
毒性蛋白質が細菌宿主中に蓄積する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
ベクターがさらに、1つまたは複数の転写終結配列、および低コピー数の複製起点を含み、該1つまたは複数の転写終結配列のうちの少なくとも1つが該プロモーターオペレーターの上流にある、請求項52記載の方法。
【請求項58】
転写終結配列がrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項60】
ベクターがさらに選択マーカーをコードする遺伝子を含む、請求項52記載の方法。
【請求項61】
ベクターが配列番号:1, 2, 3, および14からなる群より選択される核酸配列を有する、請求項52記載の方法。
【請求項62】
細菌宿主がグラム陰性細菌である、請求項52記載の方法。
【請求項63】
グラム陰性細菌が大腸菌である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
さらにハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質を提供する段階を含む、請求項52記載の方法。
【請求項65】
a) ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター;および
b) ハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質、
を含む、キット。
【請求項66】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸が、配列番号:13の核酸配列を有する、請求項65記載のキット。
【請求項67】
さらに毒性の蛋白質またはRNAをコードする関心対象の遺伝子を発現するためのキットの使用説明書を含む、請求項65記載のキット。
【請求項1】
1つまたは複数の転写終結配列、プロモーター、クローニング部位、および低コピー数の複製起点を含むベクターを含む組成物であって、該1つまたは複数の転写終結配列は該プロモーターの上流にある組成物。
【請求項2】
転写終結配列がバクテリオファージλ終結配列、大腸菌(E. coli) trp遺伝子終結配列、およびrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2が配列番号:9の核酸配列を有する、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点およびRK2複製起点からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
低コピー数の複製起点が野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
低コピー数の修飾pSC101複製起点が配列番号:10の核酸配列を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
RK2複製起点が配列番号:11の核酸配列を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
プロモーターがプロモーター/オペレーターを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
プロモーター/オペレーターがラクトースプロモーター/オペレーターである、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
プロモーターがPBAD, T7, およびT5プロモーターからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
プロモーター/オペレーターがハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターが配列番号:13の核酸配列を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
クローニング部位が多重クローニング部位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
ベクターがさらに選択マーカーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
ベクターが配列番号:1の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
ベクターが配列番号:2の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ベクターが配列番号:3の核酸配列を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
ベクターが配列番号:14の核酸配列を有する、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
ベクターがさらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含み、核酸配列がプロモーターに機能的に連結している、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
蛋白質またはRNAが毒性蛋白質または毒性RNAである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
蛋白質が毒性の代謝物を有する、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含む組成物。
【請求項23】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸が、配列番号:13の核酸配列を有する、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
請求項22記載の核酸を含むベクター。
【請求項25】
さらに1つまたは複数の転写終結配列、クローニング部位、および低コピー数の複製起点を含む、該1つまたは複数の転写終結配列は該プロモーターの上流にある、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
転写終結配列がバクテリオファージλ終結配列、大腸菌trp遺伝子終結配列、およびrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2の群より選択される、請求項25記載のベクター。
【請求項27】
rrnBリボゾーム終結配列T1およびT2が配列番号:9の核酸配列を有する、請求項26記載のベクター。
【請求項28】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項25記載のベクター。
【請求項29】
低コピー数の修飾pSC101複製起点が配列番号:10の核酸配列を有する、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
RK2複製起点が配列番号:11の核酸配列を有する、請求項28記載のベクター。
【請求項31】
クローニング部位が多重クローニング部位を含む、請求項25記載のベクター。
【請求項32】
ベクターがさらに選択マーカーを含む、請求項25記載のベクター。
【請求項33】
ベクターが配列番号:14の核酸配列を有する、請求項25記載のベクター。
【請求項34】
さらに関心対象の蛋白質またはRNAをコードする核酸配列を含み、核酸配列がプロモーターに機能的に連結している、請求項25記載のベクター。
【請求項35】
蛋白質またはRNAが毒性蛋白質または毒性RNAである、請求項34記載のベクター。
【請求項36】
蛋白質が毒性の代謝物を有する、請求項34記載のベクター。
【請求項37】
a) 1つまたは複数の転写終結配列、プロモーター、および低コピー数の複製起点を含むベクター中で関心対象の遺伝子を提供する段階であって、該1つまたは複数の転写終結配列のうちの少なくとも1つは該プロモーターの上流にあり、関心対象の遺伝子は該プロモーターに機能的に連結している段階;および
b) 細菌宿主中で関心対象の遺伝子を発現する段階、
を含む方法。
【請求項38】
関心対象の遺伝子が毒性の蛋白質またはRNAをコードしている、請求項37記載の方法。
【請求項39】
関心対象の遺伝子が毒性の代謝物を有する蛋白質をコードしている、請求項37記載の方法。
【請求項40】
関心対象の遺伝子が、増殖条件下でベクター中に維持される、請求項37記載の方法。
【請求項41】
毒性蛋白質が細菌宿主中に蓄積する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
転写終結配列がrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である、請求項37記載の方法。
【請求項43】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項44】
ベクターがさらにプロモーター/オペレーターを含む、請求項37記載の方法。
【請求項45】
プロモーター/オペレーターがラクトースプロモーター/オペレーター、およびハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターオペレーターからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項46】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーターが配列番号:13の核酸配列を有する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
プロモーターがPBAD, T7, およびT5プロモーターからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項48】
ベクターがさらに選択マーカーをコードする遺伝子を含む、請求項37記載の方法。
【請求項49】
ベクターが配列番号:1, 2, 3, および14からなる群より選択される核酸配列を有する、請求項37記載の方法。
【請求項50】
細菌宿主がグラム陰性細菌である、請求項37記載の方法。
【請求項51】
グラム陰性細菌が大腸菌である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
a) ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター中で、プロモーターに機能的に連結した関心対象の遺伝子を提供する段階;および
b) 関心対象の遺伝子を細菌宿主中で発現する段階、
を含む方法。
【請求項53】
関心対象の遺伝子が毒性の蛋白質またはRNAをコードする、請求項52記載の方法。
【請求項54】
関心対象の遺伝子が、毒性の代謝物を有する蛋白質をコードする、請求項52記載の方法。
【請求項55】
関心対象の遺伝子が、増殖条件下でベクター中に維持される、請求項52記載の方法。
【請求項56】
毒性蛋白質が細菌宿主中に蓄積する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
ベクターがさらに、1つまたは複数の転写終結配列、および低コピー数の複製起点を含み、該1つまたは複数の転写終結配列のうちの少なくとも1つが該プロモーターオペレーターの上流にある、請求項52記載の方法。
【請求項58】
転写終結配列がrrnBリボゾーム終結配列T1およびT2である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
低コピー数の複製起点が、低コピー数の修飾pSC101複製起点、RK2複製起点、野生型pSC101複製起点、p15a複製起点、およびpACYC複製起点からなる群より選択される、請求項57記載の方法。
【請求項60】
ベクターがさらに選択マーカーをコードする遺伝子を含む、請求項52記載の方法。
【請求項61】
ベクターが配列番号:1, 2, 3, および14からなる群より選択される核酸配列を有する、請求項52記載の方法。
【請求項62】
細菌宿主がグラム陰性細菌である、請求項52記載の方法。
【請求項63】
グラム陰性細菌が大腸菌である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
さらにハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質を提供する段階を含む、請求項52記載の方法。
【請求項65】
a) ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸を含むベクター;および
b) ハイブリッド変異型Mnt-Arcリプレッサー蛋白質、
を含む、キット。
【請求項66】
ハイブリッド変異型Mnt-Arcプロモーター核酸が、配列番号:13の核酸配列を有する、請求項65記載のキット。
【請求項67】
さらに毒性の蛋白質またはRNAをコードする関心対象の遺伝子を発現するためのキットの使用説明書を含む、請求項65記載のキット。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A−1】
【図11A−2】
【図11B−1】
【図11B−2】
【図11C−1】
【図11C−2】
【図11D−1】
【図11D−2】
【図11D−3】
【図11E−1】
【図11E−2】
【図11E−3】
【図11F−1】
【図11F−2】
【図11F−3】
【図11G−1】
【図11G−2】
【図11G−3】
【図11H−1】
【図11H−2】
【図11H−3】
【図11I−1】
【図11I−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B−1】
【図24B−2】
【図24C−1】
【図24C−2】
【図24C−3】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G−1】
【図24G−2】
【図24H−1】
【図24H−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A−1】
【図11A−2】
【図11B−1】
【図11B−2】
【図11C−1】
【図11C−2】
【図11D−1】
【図11D−2】
【図11D−3】
【図11E−1】
【図11E−2】
【図11E−3】
【図11F−1】
【図11F−2】
【図11F−3】
【図11G−1】
【図11G−2】
【図11G−3】
【図11H−1】
【図11H−2】
【図11H−3】
【図11I−1】
【図11I−2】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B−1】
【図24B−2】
【図24C−1】
【図24C−2】
【図24C−3】
【図24D】
【図24E】
【図24F】
【図24G−1】
【図24G−2】
【図24H−1】
【図24H−2】
【公表番号】特表2007−530013(P2007−530013A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544067(P2006−544067)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041601
【国際公開番号】WO2005/072092
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506200108)コンジュゴン インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/041601
【国際公開番号】WO2005/072092
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506200108)コンジュゴン インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】
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