説明

縦樋雨水取出装置

【課題】上縦樋を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる縦樋雨水取出装置を提供すること。
【解決手段】縦樋雨水取出装置1は、上縦樋2と下縦樋3とを連通させる取水用継手筒4と、取水用継手筒4に連通し、取水用継手筒4を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部5と、からなる。取水用継手筒4は、上端部に上縦樋接続筒部6を備え、下端部に下縦樋接続筒部7を備え、上端部と下端部の間に取水用継手筒4の内部を上下に仕切る仕切り部8を備える。仕切り部8は上下に貫通する貫通孔9を備える。そして、仕切り部8より上方へ突出し、その突出長さを調整可能な調整筒体10を、貫通孔9に連通するように仕切り部8に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦樋に取り付けて雨水を外部に取り出す雨水取出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図11に示すように、上縦樋2と下縦樋3との間に取り付けて雨水を外部に取り出す縦樋雨水取出装置50が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この縦樋雨水取出装置50は、上縦樋2と下縦樋3とを連通させる取水用継手筒51と、取水用継手筒51に連通し、取水用継手筒51を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部52と、から主体が構成されている。
【0004】
取水用継手筒51は、上縦樋2に接続する上縦樋接続筒部53を上端部に備え、下縦樋3に接続する下縦樋接続筒部54を下端部に備え、上端部と下端部の間に取水用継手筒51の内部を上下に仕切る仕切り部55を備える。仕切り部55には上下に貫通する貫通孔56が設けてあって、この貫通孔56周縁の仕切り部55からは、上方へ突出する筒体57が形成されている。
【0005】
以上のように構成される縦樋雨水取出装置50が上縦樋2と下縦樋3との間に取り付けられる。上縦樋2から流れ込んでくる雨水は、一旦、仕切り部55で受けられて、この雨水の一部が、筒体57を越えて貫通孔56(下縦樋3)に排水され、残りの雨水が、雨水取出部52に流れ込み外部に取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−156948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記構成の縦樋雨水取出装置50において、上縦樋2を流れる雨水の水量が多い場合に、筒体57の上方への突出長さが長いと、仕切り部55で受けた雨水の大部分は、この筒体57を越えることができない。よって、大量の雨水の大部分が筒体57を越えることができなくては、縦樋雨水取出装置50が雨水で溢れてしまうという問題があった。
【0008】
また、上記構成の縦樋雨水取出装置50において、上縦樋2を流れる雨水の水量が少ない場合に、筒体57の上方への突出長さが短いと、仕切り部55で受けた雨水の大部分が、この筒体57を簡単に越えてしまう。よって、少ない雨水の大部分がこのように筒体57を簡単に越えてしまっては、十分な水量の雨水を外部に取り出すことができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上縦樋を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる縦樋雨水取出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、上縦樋と下縦樋とを連通させる取水用継手筒と、前記取水用継手筒に連通し、前記取水用継手筒を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部と、からなる縦樋雨水取出装置であって、前記取水用継手筒は、上端部に上縦樋接続筒部を備え、下端部に下縦樋接続筒部を備え、上端部と下端部の間に前記取水用継手筒の内部を上下に仕切る仕切り部を備え、前記仕切り部は、上下に貫通する貫通孔を備え、前記仕切り部より上方へ突出し、その突出長さを調整可能な調整筒体を、前記貫通孔に連通するように前記仕切り部に設けたことを特徴とする。
【0011】
また、前記調整筒体は、前記仕切り部より上方への突出長さが異なる複数の筒状体の中から選択したものであることが好ましい。
【0012】
または、前記調整筒体は、前記貫通孔に上下に移動自在に嵌め込まれた移動筒体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の縦樋雨水取出装置は、上縦樋を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一の実施形態の縦樋雨水取出装置を示し、(a)は調整筒体を取り付けていない状態の正面断面図を示し、(b1),(b2),(b3)は調整筒体の正面断面図であり、(c)は調整筒体を取り付けた状態の正面断面図であり、(d)は調整筒体の斜視図である。
【図2】同上の縦樋雨水取出装置を示し、(a)は一部破断平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は下面図であり、(d)は側面図である。
【図3】同上の縦樋雨水取出装置を示し、(a)は細い上縦樋と細い下縦樋とを接続した状態の斜視図であり、(b)は太い上縦樋と太い下縦樋とを接続した状態の斜視図である。
【図4】同上の縦樋雨水取出装置を示し、(a)は細い上縦樋と細い下縦樋とを接続した状態の正面断面図であり、(b)は太い上縦樋と太い下縦樋とを接続した状態の正面断面図である。
【図5】同上の縦樋雨水取出装置に取出ホースを外嵌接続した状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は一部破断正面図である。
【図6】同上の縦樋雨水取出装置に取出ホースを内嵌接続した状態を示し、(a)は正面図であり、(b)は一部破断正面図である。
【図7】(a)は建築壁への固定部が突出した縦樋雨水取出装置の斜視図であり、(b1),(b2)は固定部と建築壁とを固定する固着接続具の斜視図であり、(c)は建築壁に固定した縦樋雨水取出装置の正面図である。
【図8】固定部の他例が突出した縦樋雨水取出装置の斜視図である。
【図9】本発明の第二の実施形態の縦樋雨水取出装置を示し、(a)は調整筒体を上方に移動させた状態の正面断面図を示し、(b)は調整筒体を下方に移動させた状態の正面断面図である。
【図10】同上の縦樋雨水取出装置の蓋と接続部材を外した状態を示し、(a)は平面図であり、(b)は分解斜視図である。
【図11】従来の縦樋雨水取出装置の正面断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
第一の実施形態の縦樋雨水取出装置1は、図3(a)に示すように、上縦樋2と下縦樋3の間に取り付けて、上縦樋2から流れてくる雨水の一部を外部に取り出すものである。縦樋雨水取出装置1には取出ホース11が接続され、この取出ホース11は、外部に設置した雨水貯留タンク(図示せず)等に接続される。なお、上縦樋2と下縦樋3は、屋根から地面へ向けて伸びる1本の縦樋を、途中で上下に分割したものである。上縦樋2は、屋根に降った雨水を集めて流す軒樋に接続されている。
【0017】
縦樋雨水取出装置1は、図3(a)に示すように、上縦樋2と下縦樋3とを連通させる円筒状の取水用継手筒4と、この取水用継手筒4に連通し、取水用継手筒4を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部5と、から構成される。取水用継手筒4と雨水取出部5とは樹脂で一体に成形されたものである。なお、取水用継手筒4と雨水取出部5は、別々に形成し接続させたものであってもよい。
【0018】
雨水取出部5は、図2に示すように、平面断面円状の取水用継手筒4の外周の一部が外側に向けて突出した平面断面U字状の壁面12と、壁面12の底をなす底面13と、壁面12の上部に着脱自在に取り付けられる蓋14から、外郭が形成される。底面13と蓋14とはそれぞれ半楕円状に形成されている。そして、底面13には、上下に貫通する取出孔15が設けられていて、この取出孔15周縁の底面13からは、下方に向けて突出する円筒状の取出筒16が形成されている。また、底面13の取水用継手筒4側の端部には、一対の突出片17が上方に突出している。一対の突出片17,17は、間を置いて形成されていて、この一対の突出片17,17の間が取水用継手筒4から雨水取出部5への雨水の流路となる。なお、この一対の突出片17,17はそれぞれ、壁面12と一体に形成されている。
【0019】
雨水取出部5には、フィルタ(図示せず)が取り付けられ、取水用継手筒4から雨水取出部5の取出孔15へ流れる雨水中のゴミを取り除くことができる。このフィルタは、雨水取出部5から蓋14を取り外すことで、交換可能である。
【0020】
雨水取出部5の取出筒16には、図5(a)に示すように、取出ホース11の一端が接続される。詳しくは、図5(b)に示すように、取出筒16の外周面に取出ホース11の一端の内周面が外嵌され、この外嵌した箇所の外周にさらに締め具18が外嵌されて、取出ホース11の一端は取出筒16に固定されて、内部が連通する。
【0021】
また、他の接続方法としては、図6(a)に示すように、取出筒16の内側に取出ホース11の一端が接続されるものがある。このものでは、図6(b)に示すように、取出ホース11の外周面全周に亘って螺旋状の突起19が形成されていて、取出筒16には取出ホース11の一端が嵌まり込む下向きに開口した環状の嵌合溝20が形成されている。この嵌合溝20の外周面には全周に亘って、突起19に嵌合する螺旋状の溝21が形成されていて、嵌合溝20の内周面には、取出ホース11の内周面に当接する当接面22が形成されている。
【0022】
上記構成の嵌合溝20に取出ホース11の一端を回転させながら挿入していくと、取出ホース11の一端は、内周面が嵌合溝20の当接面22に当接しながら、外周面の螺旋状の突起19が嵌合溝20の螺旋状の溝21に嵌合する。このようにして、取出ホース11の一端は、取出筒16の内側に狭持された状態で接続される。よって、外嵌させる場合のように締め具18でわざわざ固定しなくともよい。また、回転させながら挿入するだけで接続させることができるので、外嵌させる場合と比べて、接続に要する時間を短縮することができる。また、取出ホース11の端部の切断面は、通常、まっすぐ綺麗に切断することが難しく、斜めに切断されていることが多いが、内嵌させることで、その斜めの切断面を露出させなくて済むので、接続状態が綺麗に見える。なお、取出ホース11と取出筒16を嵌め合わせる形状は例示の形状に限定されるものではない。
【0023】
また、縦樋雨水取出装置1は、図7(c)に示すように、建築壁23に固定することが好ましい。図7(a)に示すように、取水用継手筒4の外周面からは、固着部24が突出形成されている。固着部24は、取水用継手筒4の外周面から突出する2つの板状の突起25,25から形成されている。この2つの板状の突起25,25にはそれぞれねじ孔26が2つずつ貫通して設けてある。この固着部24は、図7(b1)に示すT型足27や、図7(b2)に示すL型足28などの固着接続具を介して、建築壁23にねじやボルト等で固定される。T型足27及びL型足28には、それぞれねじ孔が複数設けられている。T型足27やL型足28は例えば一般に市販されている金物であることが好ましい。なお、T型足27やL型足28は樹脂成形されたものであってもよい。
【0024】
また、縦樋雨水取出装置1を建築壁23に固定する構造としては、図8に示すように、図7のT型足27と固着部24とが一体となったT型突起の固着部29であってもよい。この固着部29は、先端の板状部分にねじ孔30が2つ設けてある。この固着部29であれば、図7(c)のように、T型足27と固着部24とをねじやボルト等で固定する作業を行わなくてよいので、施工性が向上したものとなる。また、T型足27ではなく、L型足28が固着部24と一体となったものであってもよい。
【0025】
上述した固着部24あるいは固着部29を介して建築壁23に縦樋雨水取出装置1を固定することで、縦樋雨水取出装置1にかかる外力(強風、地震、人が誤って力を加える等)に対する抵抗力を高めることができる。もちろん、上縦樋2や下縦樋3の重量が大きい場合には、外力に対する抵抗力を高めることは特に効果的である。以上のように建築壁23に縦樋雨水取出装置1を固定することで、上縦樋2や下縦樋3から縦樋雨水取出装置1が外れてしまうことを抑制して、上縦樋2や下縦樋3や縦樋雨水取出装置1が破損してしまうことを防止できる。
【0026】
本実施形態の取水用継手筒4の構成についてさらに詳しく説明する。
【0027】
取水用継手筒4は、外径が一定の筒状のものであって、図1(a)に示すように、上縦樋2に接続する上縦樋接続筒部6を上端部に備え、下縦樋3に接続する下縦樋接続筒部7を下端部に備えている。また、上端部と下端部の間には、取水用継手筒4の内部を上下に仕切る仕切り部8を備えている。この仕切り部8には、上下に貫通する貫通孔9を備えている。つまり、仕切り部8は、リング状に形成されており、外周が取水用継手筒4の内周面と一体に形成されている。なお、この仕切り部8は、雨水取出部5の底面13よりも上方位置にある。
【0028】
上縦樋接続筒部6は、図2(a)に示すように、平面視筒状である。上縦樋接続筒部6は、後述する接続部材31を取り付けることで、様々な太さの上縦樋2に接続可能となっている。様々な太さの上縦樋2とは、内径が貫通孔9の外径よりも大きく、外径が上縦樋接続筒部6の内径よりも小さい寸法条件を満たすものを示す。
【0029】
例えば、上縦樋2の外径が上縦樋接続筒部6の内径より小さい場合、図3(a)及び図4(a)に示すように、環状の接続部材31を介して、上縦樋2は上縦樋接続筒部6に接続される。ここで、この環状の接続部材31は、可撓性のものであって、撓むことで、様々な太さの上縦樋2を上縦樋接続筒部6に接続させることができる。なお、接続部材31は、撓んで上縦樋接続筒部6と上縦樋2の間を埋めるので、シール部材としての役割も果たす。また、上縦樋2の外径が上縦樋接続筒部6の内径と略同じ場合、図3(b)及び図4(b)に示すように、リング状のシール部材(図示せず)を介して、上縦樋2は上縦樋接続筒部6に接続される。
【0030】
また、下縦樋接続筒部7は、図1(a)及び図2(c)に示すように、取水用継手筒4の下端部(以後、「接続用外筒32」という)と、仕切り部8から下方に突出する2つの筒体(排水用内筒33と接続用中筒34)から構成される。この3つの筒体は、同心に形成されていて、内側から順番に、排水用内筒33、接続用中筒34、接続用外筒32と並んでいる。排水用内筒33は、貫通孔9周縁の仕切り部8から下方に突出したものであり、接続用中筒34は、排水用内筒33と接続用外筒32の間の仕切り部8から下方に突出したものである。
【0031】
下縦樋接続筒部7は、シール部材(図示せず)を介して、様々な太さの下縦樋3を接続可能となっている。様々な太さの下縦樋3とは、内径が排水用内筒33の外径よりも大きく、外径が接続用外筒32の内径よりも小さいものを示す。実際には、下縦樋3の一端の内周面が、シール部材を介して、排水用内筒33の外周面か接続用中筒34の外周面に接続されるか、または、下縦樋3の一端の外周面が、シール部材を介して、接続用中筒34の内周面か接続用外筒32の内周面に接続される。なお、下縦樋3は下縦樋接続筒部7にシール部材を介さずに接続されてもよい。
【0032】
つまり、下縦樋3の外径が接続用中筒34の内径と略同じ場合、図3(a)及び図4(a)に示すように、リング状のシール部材(図示せず)を介して、下縦樋3は接続用中筒34の内周面に接続される。また、下縦樋3の外径が接続用外筒32の内径と同じ場合、図3(b)及び図4(b)に示すように、リング状のシール部材(図示せず)を介して、下縦樋3は下縦樋接続筒部7の接続用外筒32に接続される。
【0033】
上述した構成の取水用継手筒4には、図1(d)に示すような、調整筒体10が仕切り部8上に取り付けられる。調整筒体10は、仕切り部8より上方へ突出する筒状のものであって、その突出長さを調整可能なものである。本実施形態においては、調整筒体10は、図1(b1),(b2),(b3)に示すような、仕切り部8より上方への突出長さが異なる複数(本例では3つ)の筒状体35,36,37の中から1つを選択したものである。なお、筒状体は複数であればよく、2つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0034】
筒状体35,36,37は、筒部38とフランジ部39から構成され、それぞれ、筒部38の一端からフランジ部39が外側に向かって突出している。筒部38は、内径が貫通孔9の径と略同寸に形成されている。フランジ部39はリング状に形成されており、リング状の仕切り部8の外径と略同じ外径となっている。筒状体35,36,37は、仕切り部8上に取り付けられると、図1(c)に示すように、筒部38と貫通孔9とが連通し、フランジ部39の下面が、仕切り部8の上面に当接する。なお、図1(c)は、図1(b3)の筒状体37を、仕切り部8上に取り付けた状態を示している。
【0035】
上記構成の調整筒体10(筒状体35,36,37のうちいずれか1つ)を、縦樋雨水取出装置1に取り付けて、この縦樋雨水取出装置1を、上縦樋2と下縦樋3との間に接続する。上縦樋2から流れ込んでくる雨水は、一旦、筒状体35,36,37のフランジ部39で受け止められる。この時、フランジ部39で受け止められた雨水の一部は、筒部38を越えて貫通孔9に流れ込み下縦樋3に排水され、残りの雨水は、一対の突出片17,17の間を通って、雨水取出部5に流れ込み外部へと取り出される。
【0036】
ここで、筒状体35,36,37の中からいずれの筒状体を選択すればよいかの1つの目安について説明する。
【0037】
上縦樋2を流れる雨水の量が多い場合(上縦樋2の太さが太い場合、上縦樋2に接続される軒樋の水量が多い場合、雨量の多い地域に設置される場合等)には、上方への突出長さの短い筒状体37を取り付ける。このように、上方への突出長さの短い筒状体37を取り付けることで、一旦、筒状体37のフランジ部39で受け止めた雨水の大部分を、筒部38を越えさせて貫通孔9に流れ込ませることができる。つまり、上縦樋2を流れる雨水の量が多い場合には、縦樋雨水取出装置1に流れ込んできた雨水の排水する水量を増やし、取り出す水量を減らすことで、流れ込んできた雨水の大部分を下縦樋3に排水して、縦樋雨水取出装置1が雨水で溢れてしまうことを抑制できる。
【0038】
また、上縦樋2を流れる雨水の量が少ない場合(上縦樋2の太さが細い場合、上縦樋2に接続される軒樋の水量が少ない場合、雨量の少ない地域に設置される場合等)には、上方への突出長さの長い筒状体35を取り付ける。このように、上方への突出長さの長い筒状体35を取り付けることで、一旦、筒状体35のフランジ部39で受け止めた雨水が筒部38を越え難いようにして、この雨水の大部分を雨水取出部5に流れ込ませることができる。つまり、上縦樋2を流れる雨水の量が少ない場合には、縦樋雨水取出装置1に流れ込んできた雨水の排水する水量を減らして、取り出す水量を増やすことで、流れ込んできた少ない雨水の大部分を雨水取出部5に取り出すことができる。
【0039】
なお、上縦樋2を流れる雨水が多い場合、少ない場合それぞれの場合に、図1(b2)に示す筒状体36を選択すれば、縦樋雨水取出装置1に流れ込んできた雨水の排水する水量と取り出す水量を、筒状体35や筒状体37を選択した場合とは違う水量にそれぞれ調整することができる。
【0040】
以上のように、上縦樋2を流れる雨水の量に応じて、筒状体35,36,37の中からいずれかの筒状体を選択すればよい。なお、上縦樋2を流れる雨水の量だけでなく、外部に取り出したい雨水の量も、選択の目安となる。
【0041】
筒状体35,36,37のフランジ部39の一部からは、図1(d)に示すように、上方に突出する隙間形成用突起40が2つ径方向に並んで形成されている。なお、内側の隙間形成用突起40は、筒部38と一体となっている。この内側の隙間形成用突起40は、図4(a)に示すように、径の細い上縦樋2が上縦樋接続筒部6の奥まで挿入された場合に、上縦樋2の下端面に当接する。また、外側の隙間形成用突起40は、図4(b)に示すように、径の太い上縦樋2が上縦樋接続筒部6の奥まで挿入された場合に、上縦樋2の下端面に当接する。
【0042】
以上のように、隙間形成用突起40をフランジ部39の一部に設けて、上縦樋2の下端面が、フランジ部39に当接しないようにしたことで、上縦樋2が隙間形成用突起40に当接するまで挿入された場合であっても、上縦樋2の下端面とフランジ部39の間に隙間を形成することができる。よって、この隙間を通じて、上縦樋2を流れる雨水を雨水取出部5まで取り出すことができる。なお、上縦樋2は、気温の変動等で上縦樋2や取水用継手筒4が伸縮しても、上縦樋接続筒部6から外れ難い程度に差し込まれた状態で接続されればよく、下端が隙間形成用突起40に当接するまで差し込まれた状態で接続されなくてもよい。
【0043】
ここで、図1(b)に示すように、筒状体35,36,37の隙間形成用突起40はそれぞれ、筒部38と同じ突出長さとなっている。そのため、上縦樋2が隙間形成用突起40に当接するまで挿入された場合にできる、上縦樋2の下端面とフランジ部39の間の上下隙間は、筒状体35,36,37のそれぞれの筒部38の突出長さに応じた広さとなる。つまり、筒部38の長い筒状体35を選択した場合には、上縦樋2の下端面とフランジ部39の間の上下隙間を広くとることができるので、雨水が筒部38を越え難いようにしたうえで、その雨水が流れる流路を広く取ることができ、フランジ部39で受けた雨水の大部分を雨水取出部5に取り出すことができる。また、筒部38の短い筒状体37を選択した場合には、上縦樋2の下端面とフランジ部39の間の上下隙間が狭いので、雨水が筒部38を越え易く、その雨水が流れる流路も狭いので、フランジ部39で受けた雨水の大部分を下縦樋3に排水することができる。以上のように、上縦樋2が隙間形成用突起40に当接するまで挿入された場合であっても、選択した筒状体(筒状体35,36,37のうちいずれか1つ)に応じた適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。
【0044】
続いて、第二の実施形態の縦樋雨水取出装置1について説明する。第一の実施形態の縦樋雨水取出装置1に対応する構成については図面上に同じ符号を付けて説明を省略し、異なる構成についてのみ詳しく説明する。
【0045】
本実施形態の縦樋雨水取出装置1は、図9に示すように、第一の実施形態の、貫通孔9周縁の仕切り部8から下方に突出する排水用内筒33が、仕切り部8の上方にも突出している。また、仕切り部8より上方へ突出し、その突出長さを調整可能な調整筒体10は、この排水用内筒33の内周面に、上下に移動自在に嵌め込まれた移動筒体41となっている。ここで、排水用内筒33の内径と貫通孔9の径は同じであって、排水用内筒33の内周面の一部が、貫通孔9となっている。つまり、移動筒体41は、貫通孔9に上下に移動自在に嵌め込まれたものでもある。
【0046】
移動筒体41は、筒状のものであって、図9及び図10(b)に示すように、外周面の下部に、螺旋状の突起42が突出形成されている。そして、排水用内筒33の内周面の下部には、この螺旋状の突起42に嵌合する螺旋状の溝43が形成されている。排水用内筒33の内周面の上部には、リング状のシール部材44が取り付けられ、このシール部材44が移動筒体41の外周面の上部に当接して、止水可能となっている。
【0047】
移動筒体41は、排水用内筒33の内側で回転させることで、外周面の螺旋状の突起42が、排水用内筒33の内周面の螺旋状の溝43に嵌合して、螺進退を行い、図9(a)に示す上端位置から、図9(b)に示す下端位置まで、上下に移動自在となる。ここで、移動筒体41が下端位置に位置した状態で、移動筒体41の上端面は、排水用内筒33の上端面と略面一となる。なお、移動筒体41は排水用内筒33の内周面に沿って、上下に移動自在であれば、移動筒体41の外周面と排水用内筒33の内周面の構成は、上述の構成に限定されず、他の嵌合構造であってもよい。また、移動筒体41は、図9(a)に示す上端位置よりもさらに上方に移動可能に形成されていてもよい。
【0048】
上記構成の調整筒体10(移動筒体41)を、縦樋雨水取出装置1に取り付けて、この縦樋雨水取出装置1を、上縦樋2と下縦樋3との間に接続する。上縦樋2から流れ込んでくる雨水は、一旦、排水用内筒33の外周面と取水用継手筒4の内周面の間の仕切り部8で受け止められる。この時、仕切り部8で受け止められた雨水の一部は、排水用内筒33と移動筒体41を越えて貫通孔9に流れ込み下縦樋3に排水され、残りの雨水は、一対の突出片17,17の間を通って、雨水取出部5に流れ込み外部へと取り出される。
【0049】
本実施形態においては、上縦樋2を流れる雨水の量に応じて、移動筒体41を上下に移動させて、移動筒体41の、排水用内筒33よりも上方への突出長さ(仕切り部8よりも上方への突出長さ)を調整すれば、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。なお、上縦樋2を流れる雨水の量だけでなく、外部に取り出したい雨水の量も、突出長さの目安となる。
【0050】
また、本実施形態においては、仕切り部8の一部からは、図9及び図10に示すように、上方に突出する隙間形成用突起40が2つ径方向に並んで形成されている。なお、隙間形成用突起40の上方への突出長さは、排水用内筒33の仕切り部8より上方への突出長さと略同じである。このように、隙間形成用突起40を仕切り部8の一部に設けて、上縦樋2の下端面が、仕切り部8に当接しないようにしたことで、上縦樋2が隙間形成用突起40に当接するまで挿入された場合であっても、上縦樋2の下端面と仕切り部8の間に隙間ができる。よって、この隙間を通じて、上縦樋2を流れる雨水を雨水取出部5まで取り出すことができる。
【0051】
(各実施形態の作用効果)
第一と第二の実施形態の縦樋雨水取出装置1は、上縦樋2と下縦樋3とを連通させる取水用継手筒4と、取水用継手筒4に連通し、取水用継手筒4を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部5と、からなる。取水用継手筒4は、上端部に上縦樋接続筒部6を備え、下端部に下縦樋接続筒部7を備え、上端部と下端部の間に取水用継手筒4の内部を上下に仕切る仕切り部8を備える。仕切り部8は上下に貫通する貫通孔9を備える。そして、仕切り部8より上方へ突出し、その突出長さを調整可能な調整筒体10を、貫通孔9に連通するように仕切り部8に設けたことを特徴とする。
【0052】
このような構成としたことで、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が多い場合には、調整筒体10の上方への突出長さを短くし、この調整筒体10を越えて下縦樋3に排水される雨水の水量を多くして、縦樋雨水取出装置1が雨水で溢れてしまうことを抑制できる。また、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が少ない場合には、調整筒体10の上方への突出長さを長くして、この調整筒体10を越えて下縦樋3に排水される雨水の水量を減らして、雨水取出部5に取り出す雨水の水量を増やすことができる。
【0053】
以上のように、調整筒体10の仕切り部8より上方への突出長さを最適な長さに調整することで、この縦樋雨水取出装置1は、上縦樋2を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。
【0054】
また、第一の実施形態の縦樋雨水取出装置1においては、調整筒体10は、仕切り部8より上方への突出長さが異なる複数の筒状体35,36,37…の中から選択したものであることを特徴とする。
【0055】
このような構成としたことで、上縦樋2を流れる雨水の水量に合せて、最適な突出長さの筒状体を、仕切り部8より上方への突出長さが異なる複数の筒状体35,36,37…の中から1つ選べばよい。例えば、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が多い場合には、上方への突出長さの短い筒状体37を選択し、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が少ない場合には、上方への突出長さの長い筒状体35を選択するだけでよい。このように選択するだけで、調整筒体10の仕切り部8より上方への突出長さを最適な長さに容易に調整することができ、上縦樋2を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。
【0056】
また、第二の実施形態の縦樋雨水取出装置1においては、調整筒体10は、貫通孔9に上下に移動自在に嵌め込まれた移動筒体41であることを特徴とする。
【0057】
このような構成としたことで、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が多い場合には、上方への突出長さが短くなるように移動筒体41を下方に移動させ、上縦樋2から流れ込む雨水の水量が少ない場合には、上方への突出長さが長くなるように移動筒体41を上方に移動させればよい。よって、複数の調整筒体10を準備する必要がなく、移動筒体41を上下に移動させるだけで、調整筒体10の仕切り部8より上方への突出長さを最適な長さに調整することができ、上縦樋2を流れる雨水の水量に合わせて、適切な水量の雨水を外部に取り出すことができる。
【0058】
(変更例)
第一及び第二の実施形態においては、フランジ部39又は仕切り部8の一部に隙間形成用突起40を形成したが、一部ではなく、複数箇所に設けてもかまわない。
【0059】
また、第一及び第二の実施形態においては、隙間形成用突起40を2つ径方向に並べて形成したが、径方向に延びる1つの隙間形成用突起40としてもよい。その場合、隙間形成用突起40の強度も強くなり、成形もしやすい。
【0060】
また、第二の実施形態において、排水用内筒33を仕切り部8の上下に突出するものとしたが、第一の実施形態の排水用内筒33と同様に、仕切り部8の下方にのみ突出するものであっても構わない。
【0061】
なお、図8に示す固着部29は、縦樋雨水取出装置1に限らず、上縦樋2と下縦樋3の間に取り付けられて、上縦樋2や下縦樋3の伸縮を吸収する筒状の伸縮縦継手(雨水取出機能を有さないもの)に形成してもかまわない。
【0062】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 縦樋雨水取出装置
2 上縦樋
3 下縦樋
4 取水用継手筒
5 雨水取出部
6 上縦樋接続筒部
7 下縦樋接続筒部
8 仕切り部
9 貫通孔
10 調整筒体
35,36,37 筒状体
40 移動筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縦樋と下縦樋とを連通させる取水用継手筒と、前記取水用継手筒に連通し、前記取水用継手筒を流れる雨水を外部に取り出す雨水取出部と、からなる縦樋雨水取出装置であって、
前記取水用継手筒は、上端部に上縦樋接続筒部を備え、下端部に下縦樋接続筒部を備え、上端部と下端部の間に前記取水用継手筒の内部を上下に仕切る仕切り部を備え、
前記仕切り部は、上下に貫通する貫通孔を備え、
前記仕切り部より上方へ突出し、その突出長さを調整可能な調整筒体を、前記貫通孔に連通するように前記仕切り部に設けたことを特徴とする縦樋雨水取出装置。
【請求項2】
前記調整筒体は、前記仕切り部より上方への突出長さが異なる複数の筒状体の中から選択したものであることを特徴とする請求項1に記載の縦樋雨水取出装置。
【請求項3】
前記調整筒体は、前記貫通孔に上下に移動自在に嵌め込まれた移動筒体であることを特徴とする請求項1に記載の縦樋雨水取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−46955(P2012−46955A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190005(P2010−190005)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)