説明

縫合または超音波接合機構によって前もって接合されており、その接合側に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成するための簡素化された方法

【課題】縫合または超音波接合機構によって前もって接合されており、その接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成する簡素化された方法
【解決手段】2つの繊維材料パネルを接合する第1の接合ステップと、焼灼およびストリップ要素の封止によって実施され1つの機械によってその1つの工程において行なわれる第2の不浸透化ステップの2つの方法ステップのみで成り立っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合または超音波接合機構によって前もって接合されており、その接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成するための簡素化された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を透さない繊維材料を形成するために織物材料に境界膜の層をコーティングするまたは重ね合わせることによって作製される多層の繊維品は既に知られている。
【0003】
上記の商品または製品は「ラミネート加工」品と呼ばれ、従来より防護用の衣服または他の液体を透さないすなわち不浸透性の製品および商品を作製するのに使用されている。
【0004】
ラミネート加工された繊維は2つ以上の積層された繊維の層で構成されており、少なくともその1つは境界膜である。
【0005】
最も一般的な3層が積層された配列は、外側の繊維材料と、境界膜と、例えばフリース−パイル構造など内側層を構成する複合的な繊維構造で構成されている。
【0006】
外側の繊維材料は様々なタイプの織物層であり、これは複合的な織物材料である場合とそうでない場合がある。
【0007】
境界膜は合成材料で構成されており、これは一定の方向で、すなわち内側から外側には液体を発散させることができるが反対方向には液体を透さない。
【0008】
用語「複合的な織物構造」(すなわち内側層)は、様々に処理された(成形され、彫り込まれ、毛羽立てられた繊維材料)織物品または繊維状またはフィラメント状の構造を意味しており、これらは織物または不織布、ブラシ仕上げされた、毛羽立てられた、梳毛された材料などを有することができる。
【0009】
積層繊維材料は今のところ衣服、上着または裏当ておよび他の液体を発散させかつ透さない商品や製品を作製するのに使用されている。
【0010】
また上記の製品は従来より「ソフトシェル」商品と呼ばれているが、それは、それらが可撓性で柔軟な接合部を有しておりその外側には耐久性の高い複合的な織物材料を備えその内側には柔軟な織物材料を備えることで着やすさと快適さを実現することができることためである。
【0011】
上記に言及された従来品は、大量の織物材料を除去し付加的な封止ストリップを利用するという条件で極めて複雑な作製方法で作製される。
【0012】
積層織物製品または商品は液体をその外側には透さないが、その内側から外側には液体を発散させることでも知られている。
【0013】
衣料業界では、2つ以上の積層織物材料のパネルまたは断片を接合して、接合部、継ぎ合わせ部または縫合部分を含み永久に不浸透性であるという特徴と十分な可撓性と柔軟性を併せ持つ複合的な織物構造を実現するのに目下ところ利用できる方法は、信頼性が低く非効率的で高価なものしかない。
【0014】
実際、2つ、3つまたは多数の層が積層され、極めて複合的な織物構造の内側層を有する繊維材料に不浸透性の接合部を形成する際に多くの難問に遭遇するが、このような問題は様々な理由によって生じる。
【0015】
先ず、液体がいわゆる「ウィッキング」または毛管現象作用によって織物材料の中に侵入する場合がある。
【0016】
さらに、例えば流体封止物質などの接着性の封止物質を該材料の外側に適用することによって液体が織物材料に侵入するのは阻止することは不可能であり、これは封止領域のみで十分含浸させる必要があり、この作業は困難であるだけでなく処理される繊維の接合部が許容できないほどに硬化してしまうためである。
【0017】
実際、この織物層を形成する個々の糸または織り糸はその間に隙間を形成する複数のフィラメントを有しており、これらの隙間は従来の封止方法では簡単に封止することができないため、上記に言及したウィッキングまたは毛管現象作用が理由で液体が簡単に吸収されてしまう。
【0018】
さらに従来の封止方法は、織物または繊維材料を準備するステップ、準備した繊維材料を接合するステップおよび接合領域を封止するステップの3つの異なる作業ステップが含む点で不利である。
【0019】
該繊維材料を準備するステップでは、また織物繊維を通過する液体の経路に関する上記の開示から、この封止領域において複合的な織物材料の内側層を除去して、この織物材料の不浸透性の部分を構成する保護境界層表面に到達する必要がある。
【0020】
この準備ステップはそれ自体が表面を削ぐまたは傷つけるステップであり、このステップは、例えば表面を削ぐ、傷つけるおよびサンドブラストで仕上げる装置および工程など様々な機械でおよび様々な方法によって行なう必要がある。
【0021】
上記の接合ステップでは、上記に開示されるように複数の断片で繊維パネルを準備した後、該パネルまたは断片は、例えば継ぎ合わせ、超音波および高周波法などの様々な接合方法によって接合される、その一方でその接合面に不浸透性の保護境界部分を露出させたまま見られるようにしておく。
【0022】
繊維パネルを接合した後さらに接合領域を封止する必要があり、この作業は封止用のテープ貼り機によって行なわれ、この機械は、接合領域の面の保護境界部が自由に残されるように不浸透性の接着テープまたはストリップを加熱して貼り付ける。
【0023】
これにより接合領域は最終的に封止され、所望の不浸透性を有することになる。
【0024】
このような封止は、保護境界の予め覆われなかった不浸透性の部分に接着テープまたはストリップを付着させることによって達成される。
【0025】
したがって上記に言及される従来の方法には主に準備ステップ、接合ステップおよび密閉ステップの3つの作業ステップがあり、これらのステップはそれぞれ1つまたは複数の作業で行なう必要がある。
【0026】
表面を削る作業は、このステップの間に境界膜が損傷されやすくあるいは織物繊維部分が未処理のまま残される場合があるため極めて注意を必要とする難しい作業である。
【0027】
いくつかのケースでは、例えば外側の繊維材料とその下の境界膜の接着性が低いなどの繊維材料の特徴により、あるいは衣料品の頻繁な使用により、繊維パネル同士を前もって機械的に接続または接合する必要があり、単に溶接またはシール接合では十分な封止特性を実現することができないため、この作業は継ぎ合わせまたは超音波のいずれかによって行なわれ、接合領域はこのとき上記に明言したようにテーピングによって不浸透にされる。
【0028】
したがって実際に実施するには、従来の不浸透性の接合方法では、繊維パネルの内側にある繊維パイルの表面に機械的に傷をつけるステップと、さらに第2の繊維パネルの表面に傷をつけるステップと、表面に傷がつけられた2つの繊維パネルを封止または超音波接合工程によって接合するステップと、接合ラインに不浸透性のテープまたはストリップを貼り付けるステップの4つの作業ステップが必要である。
【0029】
上述のように機械的に表面に傷をつける該2つの作業は実施するのが極めて難しく、長い作業時間を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって本発明の趣旨は、縫合または超音波接合機構によって前もって接合されておりその接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して、不浸透性の接合部を形成するための簡素化された方法を提供することである。
【0031】
上記に言及した趣旨の範囲内での本発明の主たる目的は、上記に言及した準備工程および機械的に表面を傷つける工程を含まない接合方法を提供することであり、この場合目下必要とされる4つの接合工程の代わりに2つの接合工程のみによって接合を達成することができる。
【0032】
本発明の別の目的は、防護用または非防護用の衣料品、関連する靴および専門的および服飾品的装備品を作製することが可能であり、費用が安く安全な方式で実施することができ、作製された商品は見た目も優れており極めて優れた不浸透性を持ち厚さが極めて薄くなる方法を提供することである。
【0033】
本発明のさらに別の目的は、その特別に設計された作業ステップにより、作業中極めて信頼性が高く安全である方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の一態様によると、上記に言及した趣旨および目的ならびに別の目的は以下でより明白になると思われ、これらは、縫合または超音波接合機構によって前もって接合されておりその接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して、不浸透性の接合部を形成するための簡素化された方法によって達成され、該方法は、2つの繊維材料のパネルを接合する第1の接合ステップと、1つの機械によってその1つの工程の中で行なわれる焼灼およびストリップ要素の封止によって実施される第2の不浸透化ステップの2つの方法ステップのみで成り立っていることを特徴とする。
【0035】
この最初の作業ステップは、内側の繊維層にあるパイル材料を除去しないそのままの状態の2層/3層の2つの繊維パネルに対して縫合または継ぎ合わせ接合あるいは超音波機械によるスポットシーリング工程によって行なわれる。
【0036】
第2の作業ステップは、接合ラインにおいておよび該接合ラインに隣接する面で繊維パネルの内側部分、例えばそのパイルを過熱された空気によって焼灼し、これにより同一の1つの機械を使用してパイル構造を改変させ、該焼灼工程の直後に焼灼された部分にシール、すなわち不浸透性の接着ストリップを貼り付けることにより成り立っている。
【0037】
本発明の別の特徴および利点は、以下の本発明の好ましい(他を除外するものではない)一実施形態の詳細な開示からより明らかになり、これは添付の図面において限定ではなく示唆するための例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】超音波によって接合されている3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業ステップの作業シーケンスを示す断面図である。
【図2】超音波によって接合されている3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業ステップの作業シーケンスを示す断面図である。
【図3】超音波によって接合されている3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業ステップの作業シーケンスを示す断面図である。
【図4】簡単な縫合または継ぎ合わせ工程によって接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【図5】簡単な縫合または継ぎ合わせ工程によって接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【図6】簡単な縫合または継ぎ合わせ工程によって接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【図7】折りたたみ式の継ぎ目によって互いに接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【図8】折りたたみ式の継ぎ目によって互いに接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【図9】折りたたみ式の継ぎ目によって互いに接合された3層の繊維材料に不浸透性の接合部を形成するための作業シーケンスを示す別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上記に言及した図面の数字によって表される内容を参照すると、縫合または超音波接合機構によって前もって接合されており、その接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成するための簡素化された方法は、参照番号11および12によって全体的に示される2つの繊維または織物パネルまたは断片を縫合または超音波接合によって接合する第1の作業ステップと、1つの機械によって1つの処理工程において行なわれる焼灼および継ぎ合わせステップで構成される第2の不浸透化させる接合作業の2つの作業ステップのみで成り立っている。
【0040】
参照番号1は外側の繊維材料を示し、2は保護境界、3は例えばパイル繊維材料など多層の内側繊維材料を示しており、参照番号4は不浸透性の接着ストリップまたはテープを示している。
【0041】
図1、図2および図3は、超音波式の溶接工程5による繊維パネル11と12の接合を示している。
【0042】
図4、図5および図6は、簡単な縫合による繊維パネル11と12の接合を示しており、これは全体的に参照番号6で示されている。
【0043】
図7、図8および図9は、折りたたみ式の縫合または継ぎ合わせによる繊維パネル11と12の接合を示しており、これは全体的に参照番号7で示されている。
【0044】
本発明によると第1の接合工程は、図1、図4および図7に概略的に示されており、2層/3層の2つの繊維パネルのその自然な状態から始まって簡単な縫合6または複雑な縫合7のいずれかによって、あるいは超音波による継ぎ合わせ機によって行なわれるスポットシール工程5によって行なわれる。
【0045】
第2の作業ステップは、図2、図5および図8に概略的に示される焼灼工程を行なう特別に設計された1つの機械によって行なわれる。
【0046】
該焼灼工程またはステップは、過熱された空気を、例えばパイル繊維構成の繊維パネルの内側部分3に対して接合ラインのところで該ラインに隣接する面に吹き付けることで影響を受けた繊維の表面の織物構造を改変させることによって行なわれる。
【0047】
このような接続では、該焼灼ステップは好ましくは200℃から350℃に変化する温度であり好ましくは1.5から2.5バールに変化する圧力の1つまたは複数の過熱された空気噴射によって行なわれる局所化された処理法であることに注目すべきである。
【0048】
この高温の処理方法は、パイル、フリース、毛羽立てられた、ブラシ仕上げされた不織布タイプの2層または3層が積層された複合的な繊維材料に対して、あるいは滑らかなまたは特定の構造が与えられたまたは特定の質感が与えられた面を有する繊維材料の層に対して行なうことができる。
【0049】
この最初のケースでは焼灼ステップによって繊維ファイバが可塑化した状態になり平らにされその一部が除去されるため、繊維ファイバの表面構造が完全に改変される。
【0050】
2番目のケースでは、表面の繊維パイルが除去され、これにより繊維材料が滑らかになり緻密になる。
【0051】
この作業ステップでは、過熱された空気噴射は、処理される面を焼灼するのに必要な空気噴射の温度、流量および圧力を用いて関係する接合領域にのみ向けられる。
【0052】
焼灼ステップによって関連する織物材料層を改変して緻密にすることでそれを次に続く溶接/シーリング工程に適したものにすることが可能であるが、それは、このようにして実現した面によっていかなる液体もそこを通過するのを阻止され、さらに接着剤が機械的強度の低い1本のフィラメントに作用するのではなく圧縮された面全体に作用することにより、引き裂こうとする行為に負けない優れた機械的強度を実現するためである。
【0053】
さらに焼灼ステップによって繊維の接合領域の厚さを大いに縮小することができ、これは毛羽立てられたパイル繊維材料を加工する際に大変有利である。
【0054】
焼灼工程の後、不浸透性の接着ストリップまたはテープ4が同一の焼灼機械によって焼灼された部分に直ちに溶接または封止され、この接着ストリップは、種々の繊維材料および技術的および市場の要求に容易に適合するように様々な特徴、組成および厚みを有する接着フィルムであってよく、該接着ストリップは、例えば色付きの光を反射するカスタマイズされたフィルムなどである。
【0055】
本発明によって意図される趣旨および目的が十分に達成されることが分かっている。
【0056】
実際、本発明によって3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成する、従来の方法よりはるかに簡単な方法が提供され、この方法は繊維パネルを接合するステップと、形成された接合部を焼灼/テーピングするステップの主に2つの作業ステップのみで成り立っている。
【0057】
具体的には本発明により迅速かつ費用のかからない方法で、複合的な織物構造を有する2層または3層が積層された繊維材料に対してその接合面で不浸透性の接合を行なうことが可能である。
【0058】
本発明を実施する際、使用される材料ならびにこれに付随するサイズおよび形状はいずれも要件に応じて任意であってよい。
【符号の説明】
【0059】
1 外側繊維材料
2 保護境界層
3 内側繊維材料
4 接着ストリップ
5 超音波接合
6 簡単な縫合
7 複雑な縫合
11、12 繊維パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合または超音波接合機構によって前もって接合されており、その接合面に複合的な構造がある場合とない場合のある3層または2層の繊維材料に対して不浸透性の接合部を形成する簡素化された方法であって、2つの繊維材料のパネルを接合する第1の接合ステップと、1つの機械によってその1つの工程において行なわれる焼灼およびストリップ要素の封止によって実施される第2の不浸透化ステップの2つの方法ステップのみで成り立っていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の接合ステップが、そのままの状態の2層/3層の2つの繊維パネルを、簡単なまたは複雑な縫合のいずれかによってあるいは超音波機械によるスポット式の継ぎ合わせ工程によって行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のステップが焼灼工程および該焼灼工程の直後に焼灼された部分に不浸透性の接着ストリップを貼り付けて封止する工程を行なう1つの機械を使用して実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記焼灼ステップが、過熱された空気を、例えばパイル繊維構成の前記繊維パネルの内側部分に対して接合ラインのところで該ラインに隣接する面に吹き付けることで影響を受けた面の織物構造を改変させることにより実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記焼灼ステップが、所与の温度と圧力の1つまたは複数の過熱された空気噴射を利用する局所化された処理法によって行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記焼灼処理法が、好ましくは200℃から350℃に変化する温度まで過熱され、好ましくは1.5から2.5バールに変化する圧力の空気噴射によって行なわれることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記焼灼ステップが、毛羽立てられたパイル、フリース、ブラシ仕上げされたまたは不織布である複合的な(2層または3層の)積層された繊維材料に対して、および滑らかなまたは特定の構造が与えられた面のいずれかを有する繊維層に対して行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−154018(P2012−154018A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279025(P2011−279025)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(511026186)
【Fターム(参考)】