縫合針
【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な縫合針を提供することを目的とする。
【解決手段】針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されたものである。
【解決手段】針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外科手術で使用される縫合針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば外科手術で使用される縫合針として、体組織への刺入性を向上すべく、本出願人は、特開2000−139931号に開示されるように針本体の断面形状を多角形にした縫合針や、特開2007−268136号に開示されるように針本体の周面対向位置にして長さ方向に凹溝部を形成した縫合針を提案している。
【0003】
これら縫合針は、体組織へ刺入した際、刺入した部位(体組織)との接触面積が少なくなることで刺入抵抗が低減され、よって、体組織への負荷がかかり難く良好な縫合作業が行えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139931号公報
【特許文献2】特開2007−268136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、これら縫合針について更なる研究・実験を重ね、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な縫合針を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の縫合針において、前記小刃6,7は前記凹凸部の凸部4,5の縁部に設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0009】
また、請求項2記載の縫合針において、前記凸部4,5は針本体1の長さ方向に複数設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0010】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1の先端部位は断面三角形状に構成されており、この断面三角形状の先端部位の左右側縁2,3夫々に前記凹凸部が設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0011】
また、針本体1の先端部位の左右側部には凸部4,5が設けられ、この左右の凸部4,5夫々の縁部が小刃6,7に設定されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0012】
また、請求項5記載の縫合針において、左右の前記凸部4,5夫々は複数設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0013】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の縫合針において、左右の前記凸部4,5夫々は前記針本体1の長さ方向に複数並設されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0014】
また、請求項5〜7いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1の先端部位の左右側部には、前記針本体1の長さ方向に延設される直線状の峰部2,3が設けられ、この峰部2,3夫々に前記凸部4,5が設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1は先端から基端まで凹湾曲状に形成されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、例えば体組織へ刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減され、体組織への負荷がかかりにくく良好な縫合が行なえることになるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な縫合針となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る要部の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】実施例1に係る要部の低面図である。
【図6】実施例1に係る要部の側面図である。
【図7】実施例1の製造方法の説明図である。
【図8】実施例1の製造方法の説明図である。
【図9】実施例1の製造方法の説明図である。
【図10】実施例1の製造方法の説明図である。
【図11】実施例1の製造方法の説明図である。
【図12】実験体1に係る要部の平面図である。
【図13】実験体2に係る要部の平面図である。
【図14】実験体1及び実験体2の刺入性能比較実験の結果を示す図である。
【図15】実施例2に係る要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
体組織に刺入した際、左右側部に設けられた凹凸部の縁部から成る小刃6,7によって体組織を鋭利に切り込むことになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減する。この点については後述する刺入性能比較試験により確認済みである。
【0020】
従って、体組織への刺入開始時での刺入抵抗が可及的に低減し、これを契機として、その後の基端側部位における刺入が円滑に行なわれることにもなり、よって、体組織への負荷がかかりにくく良好な縫合作業が行なわれることになる。
【実施例1】
【0021】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、外科手術で使用される縫合針である。
【0023】
具体的には、針本体1は、図1に図示したように適宜な金属製の直線棒状部材を凹湾曲形成したものであり、その先端には先鋭部1aが設けられ、基端には縫合糸Tを嵌挿連結する断面円形状の連結部1b(孔部)が設けられている。
【0024】
尚、針本体1の全長(直線棒状部材の長さ)は約13mmであり、後述する凸部4,5や断面多角形状部を形成した後に凹湾曲形成している。
【0025】
また、針本体1は、図1に図示したように断面多角形状部が形成されている。
【0026】
本実施例では、この断面多角形状部は形状の異なる断面多角形状部を針本体1の長さ方向に並設して構成されており、具体的には、針本体1の上面(凹湾曲形成した後の内面)にして該針本体1の先端から基端側所定位置P3までの間に形成される平坦面を基準に、各断面多角形状部が形成され、針本体1の先端から基端側所定位置P1(先端から約3mm位置)までの間に設けられる断面三角形状部と、この断面三角形状部よりも基端側(基端側所定位置P1から基端側所定位置P2(先端から約4.5mm位置)までの間)に設けられる断面五角形状部(ベース形状)と、この断面五角形状部よりも基端側(基端側所定位置P2から基端側所定位置P3(先端から約10.5mm)までの間)に設けられる断面四角形状部と、この断面四角形状部よりも基端側(基端側所定位置P3から基端までの間)に設けられる断面円形状部とで構成されている。
【0027】
この構成から、針本体1の先端から基端側所定位置P3までの左右側部の上面側には、針本体1の長さ方向に延設され所定長を有する先鋭の角縁2,3(峰部)が設けられる。
【0028】
尚、この断面多角形状部(断面三角形状部,断面五角形状部及び断面四角形状部)における角縁同士間の面は凹状面に形成しても良く、実際に断面三角形状部の左右側面部には後述する凹溝部8が設けられており、特殊形状の断面三角形状に形成されている。
【0029】
また、針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されている。
【0030】
具体的には、この小刃6,7は、図1〜6に図示したように該針本体1の先端部位(断面三角形状部)の左右側部に形成された峰部2,3(角縁)夫々に凸部4,5が複数設けられ、この凸部4,5夫々の縁部が小刃6,7に設定されており、よって、小刃6,7は針本体1の長さ方向に複数並設されている。
【0031】
つまり、針本体1の左右側部には凹凸部が形成され、各凸部4,5における針本体1の先端側の縁部が小刃6,7に設定されている。
【0032】
次に、この針本体1の先端部位の左右側部に設けられる小刃6,7の製造方法について説明する。
【0033】
先ず、図7,8に図示したように直線棒状部材の断面円形状の部位10をプレスして断面四角形状の部位11を形成し、続いて、図9に図示したようにこの断面四角形状の部位11を切削して断面五角形状の部位12を形成する。
【0034】
続いて、図10に図示したようにこの断面五角形状の部位12を上下の金型13A,13Bでプレスして左右側部に凹溝部8を設けるとともに、左右側部の上方位置に凸部4,5を設ける。この凹溝部8は下金型13Aの左右部位に膨出形成される角状凸部13bで形成され、凸部4,5夫々は下金型13Aに凹設される円弧状凹部13aで形成される。この円弧状凹部13aは下金型13Aの長さ方向に複数並設されており、この円弧状凹部13a同士の間に設けられる図示省略の円弧状凸部により針本体1の左右側部に設けられる各凸部4,5同士間には凹部(凹溝部8を構成する凹部も含む)が形成される。
【0035】
続いて、図11に図示したように断面三角形状の部位12の上部分を切削すると、断面三角形状の部位12には、該断面三角形状の部位12の長さ方向に延設され所定長を有する直線状の峰部2,3(角縁)が設けられ、この峰部2,3夫々には凸部4,5が設けられ、この凸部4,5夫々の縁部により小刃6,7が形成される。
【0036】
尚、小刃6,7としては、針本体1の先端部位の左右側部に複数の凹部を間隔を介して設け、この凹部間の部分の縁部を小刃6,7に設定するようにしても良い。
【0037】
また、本実施例は、前述したように針本体1の先端部位の左右側部には、直線状の凹溝部8が該針本体1の長さ方向に設けられている。尚、凹溝部8は複数本ずつ設けるようにしても良い。
【0038】
この凹溝部8を設けたことにより、例えば体組織に刺入した針本体1を引き抜く際、該凹溝部8により体組織との接触面積が少なくなるため該体組織に対する刺入抵抗及び引き抜き抵抗は可及的に低減されることになる。
【0039】
本実施例は上述のように構成したから、この針本体1の先端部位の左右側部に複数の凸部4,5を設けて複数の小刃6,7を設けたことにより、例えば体組織に刺入した際、この凸部4,5の小刃6,7によって体組織を鋭利に且つ断続的に切り込むことになり、その結果、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。即ち、この凸部4,5夫々が複数設けられ複数の小刃6,7を有することにより、この針本体1の先端部の左右側部は体組織に刺入した際に一定に連続する切り込みでなく、断続的な切り込みを行うことで良好な刺入が達成される。
【0040】
本出願人は、前述した刺入抵抗が可及的に低減されることを実験により確認している。
【0041】
即ち、図12に図示したように本実施例に係る構造(針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5を設けた構造)の実験体1と、図13に図示したように針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5を具備しない実験体2とを用意し、この両者の刺入性能比較実験を行った。
【0042】
この刺入性能比較実験は、実験体1及び実験体2を同一の被刺入部材に対して同一の圧力で刺入した際に生じる摩擦抵抗値を測定して比較する実験であり、この結果を図14に図示したグラフで表している。尚、グラフの横軸は実験体1及び実験体2の先端からの長さ(mm)であり、縦軸は被刺入部材に対して刺入した際に生じる摩擦抵抗値(N)である。
【0043】
グラフ中の黒線は実験体1を示し、白線は実験体2を示しており、このグラフをみるに、実験体1は実験体2に比し、針本体1の先端から最初の凸部4,5が設けられる約0.6mmの位置から最後の凸部4,5が設けられる約2.5mmの位置にかけて摩擦抵抗値が低い。この凸部4,5が設けられる位置を通過することで刺入抵抗が低いことに起因してか、その後の部位における摩擦抵抗値も低い。
【0044】
以上から、この実験により針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5(小刃6,7)を設けることが極めて有効であることが分かった。
【0045】
よって、本実施例によれば、特に体組織への刺入開始時に抵抗のかかる針本体1の先端部位である左右側部での刺入抵抗が可及的に低減され、これをきっかけとして、その後の針本体1の基端側部位における刺入が円滑に行なわれることにもなり、よって、体組織への負荷がかかり難く良好な縫合作業が行なわれることになる。
【0046】
また、本実施例は、針本体1の先端部位の左右側部に凹溝部8が針本体1の長さ方向に設けられているから、この凹溝部8の存在によっても体組織との接触面積が少なくなるため該体組織に対する刺入抵抗が可及的に低減される。
【0047】
また、本実施例は、針本体1に断面多角形状部が形成されており、この断面多角形状部における角縁によって体組織を鋭利に切り込むことになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。
【0048】
また、本実施例に係る断面多角形状部は形状の異なる断面多角形状部を針本体1の長さ方向に並設して構成されているから、刺入途時にて形状変化させることで切り込み作用を生じさせることになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。
【0049】
具体的には、本実施例は、断面多角形状部は針本体1の先端側に設けられる断面三角形状部と、この断面三角形状部よりも基端側に設けられる断面五角形状部及び断面四角形状部とで構成されているから、刺入途時にて角の数が変わる形状変化させることで切り込み作用を生じさせることになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗を可及的に低減できることになる。
【実施例2】
【0050】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0051】
本実施例は、針本体1の左右側部に凸部4,5及び小刃6,7を設ける他にも、針本体1の先端部にして断面三角形状部の外面部(下面部)に凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃15に設定されている。
【0052】
具体的には、この小刃15は、図15に図示したように該針本体1の先端部(断面三角形状部)の外面部に形成された峰部16(角縁)に針本体1の軸心方向へ向けて凹部14を複数設け、この凹部14の縁部が凸状の小刃15に設定されており、小刃15は針本体1の長さ方向に複数並設されている。
【0053】
この凹部14は前述した左右側部の凸部4,5と同様、プレスにより形成しても良いし、切削により形成しても良い。
【0054】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
1 針本体
2 側縁・峰部
3 側縁・峰部
4 凸部
5 凸部
6 小刃
7 小刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外科手術で使用される縫合針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば外科手術で使用される縫合針として、体組織への刺入性を向上すべく、本出願人は、特開2000−139931号に開示されるように針本体の断面形状を多角形にした縫合針や、特開2007−268136号に開示されるように針本体の周面対向位置にして長さ方向に凹溝部を形成した縫合針を提案している。
【0003】
これら縫合針は、体組織へ刺入した際、刺入した部位(体組織)との接触面積が少なくなることで刺入抵抗が低減され、よって、体組織への負荷がかかり難く良好な縫合作業が行えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139931号公報
【特許文献2】特開2007−268136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、これら縫合針について更なる研究・実験を重ね、その結果、従来にない作用効果を発揮する画期的な縫合針を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の縫合針において、前記小刃6,7は前記凹凸部の凸部4,5の縁部に設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0009】
また、請求項2記載の縫合針において、前記凸部4,5は針本体1の長さ方向に複数設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0010】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1の先端部位は断面三角形状に構成されており、この断面三角形状の先端部位の左右側縁2,3夫々に前記凹凸部が設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0011】
また、針本体1の先端部位の左右側部には凸部4,5が設けられ、この左右の凸部4,5夫々の縁部が小刃6,7に設定されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0012】
また、請求項5記載の縫合針において、左右の前記凸部4,5夫々は複数設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0013】
また、請求項5,6いずれか1項に記載の縫合針において、左右の前記凸部4,5夫々は前記針本体1の長さ方向に複数並設されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0014】
また、請求項5〜7いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1の先端部位の左右側部には、前記針本体1の長さ方向に延設される直線状の峰部2,3が設けられ、この峰部2,3夫々に前記凸部4,5が設けられていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【0015】
また、請求項1〜8いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体1は先端から基端まで凹湾曲状に形成されていることを特徴とする縫合針に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、例えば体組織へ刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減され、体組織への負荷がかかりにくく良好な縫合が行なえることになるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な縫合針となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1に係る要部の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】実施例1に係る要部の低面図である。
【図6】実施例1に係る要部の側面図である。
【図7】実施例1の製造方法の説明図である。
【図8】実施例1の製造方法の説明図である。
【図9】実施例1の製造方法の説明図である。
【図10】実施例1の製造方法の説明図である。
【図11】実施例1の製造方法の説明図である。
【図12】実験体1に係る要部の平面図である。
【図13】実験体2に係る要部の平面図である。
【図14】実験体1及び実験体2の刺入性能比較実験の結果を示す図である。
【図15】実施例2に係る要部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
体組織に刺入した際、左右側部に設けられた凹凸部の縁部から成る小刃6,7によって体組織を鋭利に切り込むことになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減する。この点については後述する刺入性能比較試験により確認済みである。
【0020】
従って、体組織への刺入開始時での刺入抵抗が可及的に低減し、これを契機として、その後の基端側部位における刺入が円滑に行なわれることにもなり、よって、体組織への負荷がかかりにくく良好な縫合作業が行なわれることになる。
【実施例1】
【0021】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、外科手術で使用される縫合針である。
【0023】
具体的には、針本体1は、図1に図示したように適宜な金属製の直線棒状部材を凹湾曲形成したものであり、その先端には先鋭部1aが設けられ、基端には縫合糸Tを嵌挿連結する断面円形状の連結部1b(孔部)が設けられている。
【0024】
尚、針本体1の全長(直線棒状部材の長さ)は約13mmであり、後述する凸部4,5や断面多角形状部を形成した後に凹湾曲形成している。
【0025】
また、針本体1は、図1に図示したように断面多角形状部が形成されている。
【0026】
本実施例では、この断面多角形状部は形状の異なる断面多角形状部を針本体1の長さ方向に並設して構成されており、具体的には、針本体1の上面(凹湾曲形成した後の内面)にして該針本体1の先端から基端側所定位置P3までの間に形成される平坦面を基準に、各断面多角形状部が形成され、針本体1の先端から基端側所定位置P1(先端から約3mm位置)までの間に設けられる断面三角形状部と、この断面三角形状部よりも基端側(基端側所定位置P1から基端側所定位置P2(先端から約4.5mm位置)までの間)に設けられる断面五角形状部(ベース形状)と、この断面五角形状部よりも基端側(基端側所定位置P2から基端側所定位置P3(先端から約10.5mm)までの間)に設けられる断面四角形状部と、この断面四角形状部よりも基端側(基端側所定位置P3から基端までの間)に設けられる断面円形状部とで構成されている。
【0027】
この構成から、針本体1の先端から基端側所定位置P3までの左右側部の上面側には、針本体1の長さ方向に延設され所定長を有する先鋭の角縁2,3(峰部)が設けられる。
【0028】
尚、この断面多角形状部(断面三角形状部,断面五角形状部及び断面四角形状部)における角縁同士間の面は凹状面に形成しても良く、実際に断面三角形状部の左右側面部には後述する凹溝部8が設けられており、特殊形状の断面三角形状に形成されている。
【0029】
また、針本体1の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃6,7に設定されている。
【0030】
具体的には、この小刃6,7は、図1〜6に図示したように該針本体1の先端部位(断面三角形状部)の左右側部に形成された峰部2,3(角縁)夫々に凸部4,5が複数設けられ、この凸部4,5夫々の縁部が小刃6,7に設定されており、よって、小刃6,7は針本体1の長さ方向に複数並設されている。
【0031】
つまり、針本体1の左右側部には凹凸部が形成され、各凸部4,5における針本体1の先端側の縁部が小刃6,7に設定されている。
【0032】
次に、この針本体1の先端部位の左右側部に設けられる小刃6,7の製造方法について説明する。
【0033】
先ず、図7,8に図示したように直線棒状部材の断面円形状の部位10をプレスして断面四角形状の部位11を形成し、続いて、図9に図示したようにこの断面四角形状の部位11を切削して断面五角形状の部位12を形成する。
【0034】
続いて、図10に図示したようにこの断面五角形状の部位12を上下の金型13A,13Bでプレスして左右側部に凹溝部8を設けるとともに、左右側部の上方位置に凸部4,5を設ける。この凹溝部8は下金型13Aの左右部位に膨出形成される角状凸部13bで形成され、凸部4,5夫々は下金型13Aに凹設される円弧状凹部13aで形成される。この円弧状凹部13aは下金型13Aの長さ方向に複数並設されており、この円弧状凹部13a同士の間に設けられる図示省略の円弧状凸部により針本体1の左右側部に設けられる各凸部4,5同士間には凹部(凹溝部8を構成する凹部も含む)が形成される。
【0035】
続いて、図11に図示したように断面三角形状の部位12の上部分を切削すると、断面三角形状の部位12には、該断面三角形状の部位12の長さ方向に延設され所定長を有する直線状の峰部2,3(角縁)が設けられ、この峰部2,3夫々には凸部4,5が設けられ、この凸部4,5夫々の縁部により小刃6,7が形成される。
【0036】
尚、小刃6,7としては、針本体1の先端部位の左右側部に複数の凹部を間隔を介して設け、この凹部間の部分の縁部を小刃6,7に設定するようにしても良い。
【0037】
また、本実施例は、前述したように針本体1の先端部位の左右側部には、直線状の凹溝部8が該針本体1の長さ方向に設けられている。尚、凹溝部8は複数本ずつ設けるようにしても良い。
【0038】
この凹溝部8を設けたことにより、例えば体組織に刺入した針本体1を引き抜く際、該凹溝部8により体組織との接触面積が少なくなるため該体組織に対する刺入抵抗及び引き抜き抵抗は可及的に低減されることになる。
【0039】
本実施例は上述のように構成したから、この針本体1の先端部位の左右側部に複数の凸部4,5を設けて複数の小刃6,7を設けたことにより、例えば体組織に刺入した際、この凸部4,5の小刃6,7によって体組織を鋭利に且つ断続的に切り込むことになり、その結果、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。即ち、この凸部4,5夫々が複数設けられ複数の小刃6,7を有することにより、この針本体1の先端部の左右側部は体組織に刺入した際に一定に連続する切り込みでなく、断続的な切り込みを行うことで良好な刺入が達成される。
【0040】
本出願人は、前述した刺入抵抗が可及的に低減されることを実験により確認している。
【0041】
即ち、図12に図示したように本実施例に係る構造(針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5を設けた構造)の実験体1と、図13に図示したように針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5を具備しない実験体2とを用意し、この両者の刺入性能比較実験を行った。
【0042】
この刺入性能比較実験は、実験体1及び実験体2を同一の被刺入部材に対して同一の圧力で刺入した際に生じる摩擦抵抗値を測定して比較する実験であり、この結果を図14に図示したグラフで表している。尚、グラフの横軸は実験体1及び実験体2の先端からの長さ(mm)であり、縦軸は被刺入部材に対して刺入した際に生じる摩擦抵抗値(N)である。
【0043】
グラフ中の黒線は実験体1を示し、白線は実験体2を示しており、このグラフをみるに、実験体1は実験体2に比し、針本体1の先端から最初の凸部4,5が設けられる約0.6mmの位置から最後の凸部4,5が設けられる約2.5mmの位置にかけて摩擦抵抗値が低い。この凸部4,5が設けられる位置を通過することで刺入抵抗が低いことに起因してか、その後の部位における摩擦抵抗値も低い。
【0044】
以上から、この実験により針本体1の先端部位の左右側部に凸部4,5(小刃6,7)を設けることが極めて有効であることが分かった。
【0045】
よって、本実施例によれば、特に体組織への刺入開始時に抵抗のかかる針本体1の先端部位である左右側部での刺入抵抗が可及的に低減され、これをきっかけとして、その後の針本体1の基端側部位における刺入が円滑に行なわれることにもなり、よって、体組織への負荷がかかり難く良好な縫合作業が行なわれることになる。
【0046】
また、本実施例は、針本体1の先端部位の左右側部に凹溝部8が針本体1の長さ方向に設けられているから、この凹溝部8の存在によっても体組織との接触面積が少なくなるため該体組織に対する刺入抵抗が可及的に低減される。
【0047】
また、本実施例は、針本体1に断面多角形状部が形成されており、この断面多角形状部における角縁によって体組織を鋭利に切り込むことになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。
【0048】
また、本実施例に係る断面多角形状部は形状の異なる断面多角形状部を針本体1の長さ方向に並設して構成されているから、刺入途時にて形状変化させることで切り込み作用を生じさせることになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗が可及的に低減されることになる。
【0049】
具体的には、本実施例は、断面多角形状部は針本体1の先端側に設けられる断面三角形状部と、この断面三角形状部よりも基端側に設けられる断面五角形状部及び断面四角形状部とで構成されているから、刺入途時にて角の数が変わる形状変化させることで切り込み作用を生じさせることになり、体組織に刺入した際の刺入抵抗を可及的に低減できることになる。
【実施例2】
【0050】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0051】
本実施例は、針本体1の左右側部に凸部4,5及び小刃6,7を設ける他にも、針本体1の先端部にして断面三角形状部の外面部(下面部)に凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃15に設定されている。
【0052】
具体的には、この小刃15は、図15に図示したように該針本体1の先端部(断面三角形状部)の外面部に形成された峰部16(角縁)に針本体1の軸心方向へ向けて凹部14を複数設け、この凹部14の縁部が凸状の小刃15に設定されており、小刃15は針本体1の長さ方向に複数並設されている。
【0053】
この凹部14は前述した左右側部の凸部4,5と同様、プレスにより形成しても良いし、切削により形成しても良い。
【0054】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
1 針本体
2 側縁・峰部
3 側縁・峰部
4 凸部
5 凸部
6 小刃
7 小刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針本体の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃に設定されていることを特徴とする縫合針。
【請求項2】
請求項1記載の縫合針において、前記小刃は前記凹凸部の凸部の縁部に設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項3】
請求項2記載の縫合針において、前記凸部は針本体の長さ方向に複数設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体の先端部位は断面三角形状に構成されており、この断面三角形状の先端部位の左右側縁夫々に前記凹凸部が設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項5】
針本体の先端部位の左右側部には凸部が設けられ、この左右の凸部夫々の縁部が小刃に設定されていることを特徴とする縫合針。
【請求項6】
請求項5記載の縫合針において、左右の前記凸部夫々は複数設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の縫合針において、左右の前記凸部夫々は前記針本体の長さ方向に複数並設されていることを特徴とする縫合針。
【請求項8】
請求項5〜7いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体の先端部位の左右側部には、前記針本体の長さ方向に延設される直線状の峰部が設けられ、この峰部夫々に前記凸部が設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体は先端から基端まで凹湾曲状に形成されていることを特徴とする縫合針。
【請求項1】
針本体の先端部位の左右側部には凹凸部が設けられ、この凹凸部の縁部が小刃に設定されていることを特徴とする縫合針。
【請求項2】
請求項1記載の縫合針において、前記小刃は前記凹凸部の凸部の縁部に設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項3】
請求項2記載の縫合針において、前記凸部は針本体の長さ方向に複数設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体の先端部位は断面三角形状に構成されており、この断面三角形状の先端部位の左右側縁夫々に前記凹凸部が設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項5】
針本体の先端部位の左右側部には凸部が設けられ、この左右の凸部夫々の縁部が小刃に設定されていることを特徴とする縫合針。
【請求項6】
請求項5記載の縫合針において、左右の前記凸部夫々は複数設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項7】
請求項5,6いずれか1項に記載の縫合針において、左右の前記凸部夫々は前記針本体の長さ方向に複数並設されていることを特徴とする縫合針。
【請求項8】
請求項5〜7いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体の先端部位の左右側部には、前記針本体の長さ方向に延設される直線状の峰部が設けられ、この峰部夫々に前記凸部が設けられていることを特徴とする縫合針。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の縫合針において、前記針本体は先端から基端まで凹湾曲状に形成されていることを特徴とする縫合針。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−136087(P2011−136087A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298915(P2009−298915)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000105279)ケイセイ医科工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000105279)ケイセイ医科工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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