説明

縮合ピリミジン誘導体及び農園芸用の有害生物防除剤

【課題】本発明の課題は、新規な縮合ピリミジン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用有害生物防除剤を提供することである。
【解決手段】次式(I)で示される縮合ピリミジン誘導体を有効成分とする農園芸用有害生物防除剤。
【化1】


(式中、環Aは下式(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)により表されるベンゼン環、チオフェン環、イミダゾール環、シクロペンテン環、又はシクロヘキセン環を表し、nは0,1,2の整数を表す。)
【化2】


(式中、R、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、ハロゲン化アルケニル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用有害生物防除剤として有用である新規な縮合ピリミジン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の縮合ピリミジン誘導体は新規化合物であり、農園芸の有害生物防除活性を有することも知られていない。
【0003】
【特許文献1】特開平11−349557号公報
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ケミカルソサエティー,1955年,p.3478〜3481
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、新規な縮合ピリミジン誘導体及びそれを有効成分とする農園芸用有害生物防除剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、新規な縮合ピリミジン誘導体が顕著な農園芸の殺虫、殺ダニ、殺線虫及び殺菌活性を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は次の通りである。
【0006】
第1の発明は、次式(I)で示される縮合ピリミジン誘導体に関するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、環Aは下式(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)により表されるピリミジン環上の炭素原子と共に形成するベンゼン環、チオフェン環、イミダゾール環、シクロペンテン環、又はシクロヘキセン環を表し、nは0,1,2の整数を表す。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、ハロゲン化アルケニル基を表す。)
【0011】
第2の発明は、前記式(I)で示される縮合ピリミジン誘導体を有効成分とする農園芸用有害生物防除剤に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の新規な縮合ピリミジン誘導体(前記式(I))は、農園芸の有害生物に対し、優れた防除効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の新規な縮合ピリミジン誘導体は前記式(I)(以下、化合物(I)と表す。)で表される。
ここで、ピリミジン環上の炭素原子と共に形成する環(A)は、前記式(II)で表されるベンゼン環、式(III)で表されるチオフェン環、式(IV)で表されるイミダゾール環、式(V)で表されるシクロペンテン環、又は式(VI)で表されるシクロヘキセン環である。
これらの環上の置換基R、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、ハロゲン化アルケニル基を表す。
【0014】
ここで、R及びRおけるアルキル基としては、炭素原子数1〜4個の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。この内、メチル基が好ましい。
【0015】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、塩素原子が好ましい。
【0016】
におけるハロゲン化アルケニル基としては、炭素原子数2〜6個のハロゲン化アルケニルが好ましく、例えば、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニル基、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル基、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル基、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル基が挙げられる。この内、6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニル基が好ましい。
【0017】
更に、ピリミジン環上の炭素原子と共に形成する環(A)が前記式(II)で表されるベンゼン環、或いは式(III)で表されるチオフェン環である場合、Rは水素原子が好ましい。
ピリミジン環上の炭素原子と共に形成する環(A)が前記式(IV)で表されるイミダゾール環である場合、Rは水素原子又は6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニル基が好ましい。
ピリミジン環上の炭素原子と共に形成する環(A)が前記式(V)で表されるシクロペンテン環、或いは式(VI)で表されるシクロヘキセン環である場合、Rは水素原子が好ましい。
【0018】
nは0、1又2の整数である。
【0019】
本発明の化合物(I)は窒素原子を有しているので、これに由来する酸付加塩も本発明に含まれる。
【0020】
酸付加塩を形成する酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アコニット酸などのカルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、或はサッカリンなどを挙げることができる。
【0021】
以下、本発明の化合物(I)の合成法を詳細に述べる。
〔合成法1〕
本発明の化合物(I)においてnが0である化合物(I−a)は、化合物(VII)と化合物(VIII)とを、溶媒中、塩基存在下で反応させることにより得られる。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、環Aは、前記と同義である。)
【0024】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロルエチレンのような塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族、又は脂環式の炭化水素類、テトラヒドロフラン、シオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルフォラン、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0025】
溶媒の使用量は、化合物(VII)が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0026】
塩基の種類としては、特に限定されず、有機及び無機塩基、例えば第3級アミン(トリエチルアミンなど)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)などの有機塩基、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩基を挙げることができるが、炭酸カリウムのようなアルカリ金属の炭酸塩が好ましい。
【0027】
塩基の使用量は、化合物(VII)1モルに対して1〜5倍モルであるが、1.2〜2.0モルが好ましい。
【0028】
原料化合物である化合物(VIII)の使用量は、化合物(II)1モルに対して、1.0〜5モルであるが、1〜1.5モルが好ましい。
【0029】
反応温度は、特に限定されないが、室温から使用する溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、60〜110℃が好ましい。
【0030】
反応時間は、前記の溶媒の使用量、温度によって変化するが、通常0.5〜8時間である。
【0031】
化合物(VII)は、市販品を用いるか、特許文献1に記載の方法又は下記に示す方法で製造することができる。
【0032】
【化4】

【0033】
(式中、環Aは、前記と同義である。)
【0034】
化合物(IX)は、非特許文献1に記載の方法で製造することができる。
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、環Aは、前記と同義である。)
【0037】
化合物(VIII)は、次に示すように、特許文献1に記載されている方法で製造することができる。
【0038】
【化6】

【0039】
以上のようにして製造された本発明化合物(I−a)は、反応終了後、抽出、濃縮、ロ過などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶、各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で適宣精製することができる。
【0040】
〔合成法2〕
本発明の化合物(I)においてnが1又は2である化合物(I−b)は、下式に示す通り、溶媒中、化合物(I−a)を、酸化剤により酸化することにより得られる。
【0041】
【化7】

【0042】
(式中、環Aは、前記と同義である。)
【0043】
溶媒の種類としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えば、前記の合成法1で使用される溶媒と同様に、炭化水素類、ニトリル類、ケトン類、非プロトン性極性溶媒、或いはメタノール、エタノールなどのアルコール類、水;それらの混合物を挙げることができるが、好ましくはハロゲン化炭化水素類、アルコール類、水である。
【0044】
溶媒の使用量は、化合物(I−a)が5〜80重量%になるようにして使用することができるが、10〜70重量%が好ましい。
【0045】
酸化剤の種類は特に限定されず、例えば、m−クロロ過安息香酸、オキソン(アルドリッチ社製、2KHSO・KHSO・KHSO)、過酸化水素などを挙げることができる。これらの酸化剤は市販品を使用することができる。
【0046】
反応温度は、特に限定されないが、−20℃から溶媒の沸点以下の温度範囲内であり、室温〜70℃が好ましい。
【0047】
反応時間は、前記の濃度,温度によって変化するが、通常0.5〜3時間である。
【0048】
酸化剤の使用量は、化合物(I−a)1モルに対して1〜5モルであるが、1〜2モルが好ましい。
【0049】
以上のようにして製造された本発明目的物(I−b)は、反応終了後、抽出、濃縮、ロ過などの通常の後処理を行い、必要に応じて再結晶,各種クロマトグラフィーなどの公知の手段で適宣精製することができる。
【0050】
〔防除効果〕
本発明の化合物(I)で防除効果が認められる農園芸用有害生物としては、農園芸害虫〔例えば、半翅目(ウンカ類、ヨコバイ類、アブラムシ類、コナジラミ類など)、鱗翅目(ヨトウムシ類、コナガ、ハマキムシ類、メイガ類、シンクイムシ類、モンシロチョウなど)、鞘翅目(ゴミムシダマシ類、ゾウムシ類、ハムシ類、コガネムシ類など)、ダニ目(ハダニ科のミカンハダニ、ナミハダニなど、フシダニ科のミカンサビダニなど)〕、線虫(ネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウ、シンガレセンチュウ、マツノザイセンチュウなど)、ネダニ、衛生害虫(例えば、ハエ、カ、ゴキブリなど)、貯蔵害虫(例えば、コクヌストモドキ類、マメゾウムシ類など)、木材害虫(例えば、イエシロアリ、ヤマトシロアリ、ダイコクシロアリなどのシロアリ類、ヒラタキクイムシ類、シバンムシ類、シンクイムシ類、カミキリムシ類、キクイムシ類など)を挙げることができ、また、農園芸病原菌(例えば、コムギ赤さび病、大麦うどんこ病、キュウリべと病、イネいもち病、トマト疫病など)を挙げることができる。
【0051】
〔有害生物防除剤〕
本発明の農園芸用の有害生物防除剤は、特に、殺虫・殺ダニ及び殺線虫効果が顕著であり、化合物(I)の1種以上を有効成分として含有するものである。
化合物(I)は、単独で使用することもできるが、通常は常法によって、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤などを配合して(例えば、粉剤、乳剤、微粒剤、粒剤、水和剤、油性の懸濁液、エアゾールなどの組成物として調製して)使用することが好ましい。
【0052】
担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、ケイ砂、硫安、尿素などの固体担体、炭化水素(ケロシン、鉱油など)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、塩素化炭化水素(クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチルなど)、アルコール類(メタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、アミド化合物(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ジメチルスルホキシド、水などの液体担体、空気、窒素、炭酸ガス、フレオンなどの気体担体(この場合には、混合噴射することができる)などを挙げることがでる。
【0053】
本剤の有害生物への付着、吸収の向上、薬剤の分散、乳化、展着などの性能を向上させるために使用できる界面活性剤や分散剤としては、例えば、アルコール硫 酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテルなどを挙げることができる。そして、その製剤の性状を改善するためには、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴムなどを補助剤として用いることができる。
本剤の製造では、前記の担体、界面活性剤、分散剤及び補助剤をそれぞれの目的に応じて、各々単独で或いは適宜組み合わせて使用することができる。
【0054】
本発明の化合物(I)を製剤化した場合の有効成分濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、粉剤では通常0.3〜25重量%、水和剤では通常1〜90重量%、粒剤では通常0.5〜5重量%、油剤では通常0.5〜5重量%、エアゾールでは通常0.1〜5重量%である。
これらの製剤を適当な濃度に希釈して、それぞれの目的に応じて、植物茎葉、土壌、水田の水面に散布するか、或いは直接施用することによって各種の用途に供することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を参考例及び実施例によって具体的に説明する。なお、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
参考例1〔化合物(VII)の合成〕
(1)4−メルカプトキナゾリンの合成
4−クロロキナゾリン(3.8g)をN,N−ジメチルホルムアミド25mlに溶解し、純度70%の水硫化ナトリウム(2.2g)を水20mlに溶解した液を加え、室温で3時間撹拌した。
反応終了後、希塩酸で弱酸性とし、析出した結晶を濾集し、水洗後、乾燥することにより淡黄色粉状結晶である目的物を3.3g得た。
以下に、その物性を示す。
m.p.>240℃
【0057】
(2)4−メルカプトチエノ[2,3−d]ピリミジンの合成
4−クロロチエノ[2,3−d]ピリミジン(3.4g)をN,N−ジメチルホルムアミド25mlに溶解し、純度70%の水硫化ナトリウム(1.8g)を水20mlに溶解した液を加え、室温で3時間撹拌した。
反応終了後、希塩酸で弱酸性とし、析出した結晶を濾集し、水洗後、乾燥することにより淡黄色粉状結晶である目的物を3.0g得た。
以下に、その物性を示す。
m.p.>240
【0058】
実施例1〔化合物(I)の合成〕
(1)4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)キナゾリン(表1中、化合物番号I−1)の合成
4−メルカプトキナゾリン(1.6g)と6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンメタンスルホネート(1.7g)をアセトン100mlに溶解し、炭酸カリウム(1.8g)を加え、約40℃で4時間加熱撹拌した。
反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=3/1溶出)で精製することによって、淡黄色液体である目的物を1.9g得た。
以下に、その物性を示す。
【0059】
nD20.0 1.5726
H−NMR(CDCl,δppm)
1.56〜1.64(2H,m)、1.77〜1.88(2H,m)、
2.02〜2.11(2H,m)、3.36〜3.41(2H,m)、
4.07〜4.24(1H,d−q)、7.55〜8.11(4H,m)、
8.89(1H,s)
【0060】
(2)4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)チエノ[2,3−d]ピリミジン(表1中、化合物番号I−6)の合成
4−メルカプトチエノ[2,3−d]ピリミジン(1.7g)と6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンメタンスルホネート(2.1g)をN,N−ジメチルホルムアミド50mlに溶解し、炭酸カリウム(1.6g)を加え、約40℃で4時間加熱撹拌した。
反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:トルエン)で精製することによって、淡黄色液体である目的物を2.5g得た。
以下に、その物性を示す。
【0061】
nD20.0 1.5813
【0062】
(3)4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニル)チエノ[2,3−d]ピリミジン(化合物I−7)及び4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルフェニル)チエノ[2,3−d]ピリミジン(表1中、化合物番号I−8)の合成
4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)チエノ[2,3−d]ピリミジン(1.5g)を塩化メチレン30mlに溶解し、純度70%のm−クロル過安息香酸(1.9g)の塩化メチレン20ml溶液を室温攪拌下に滴下し、滴下後30分攪拌した。
反応終了後、濃度7重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、水洗、乾燥後、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/トルエン=1/5溶出)で精製することによって、最初のフラクションから淡黄色液体である4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニル)チエノ[2,3−d]ピリミジンを1.2g得、次のフラクションから淡黄色液体である4−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルフェニル)チエノ[2,3−d]ピリミジンを0.2g得た。
以下に、その物性を示す。
【0063】
化合物I−7:
nD22.9 1.5455
質量分析:CI−MS m/e=319(m+1)
【0064】
化合物I−8:
nD23.0 1.5797
質量分析:CI−MS m/e=303(m+1)
【0065】
(4)6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)プリン(表1中、化合物番号I−11)及び6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)−7−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニル)プリン(表1中、化合物番号I−12)の合成
6−メルカプトプリン(2.0g)と6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンメタンスルホネート(2.8g)をアセトン100mlに溶解し、炭酸カリウム(1.4g)を加え、約40℃で4時間加熱撹拌した。
反応終了後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗、乾燥後、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=3/1溶出)で精製することによって、最初のフラクションから淡黄色液体である6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)−7−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニル)プリンを0.4g得、次のフラクションから淡黄色結晶である6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)プリンを0.7g得た。
以下に、その物性を示す。
【0066】
化合物I−11:
m.p.63〜65℃
H−NMR(CDCl,δppm)
1.57〜1.60(2H,m)、1.78〜1.83(2H,m)、
2.02〜2.06(2H,m)、3.38〜3.41(2H,m)、
4.06〜4.27(1H,d−q)、8.40(1H,s)、
8.71(1H,s)、13.70(1H,b)
【0067】
化合物I−12:
nD24.5 1.4133
H−NMR(CDCl,δppm)
1.24〜1.28(2H,m)、1.54〜1.58(2H,m)、
1.78〜1.82(2H,m)、1.84〜2.08(6H,m)、
3.42〜3.44(2H,m)、4.09〜4.24(1H,d−q)、
4.43〜4.56(2H,m)、8.01(1H,s)、
8.78(1H,s)
【0068】
(5)6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニル)プリン(表1中、化合物番号I−13)の合成
6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンチオ)プリン(0.5g)を塩化メチレン30mlに溶解し、純度70%のm−クロル過安息香酸(0.6g)の塩化メチレン20ml溶液を室温攪拌下に滴下し、滴下後30分攪拌した。
反応終了後、濃度7重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、水洗、乾燥後、減圧下に溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/トルエン=1/5溶出)で精製することによって、6−(6,6−ジフルオロ−5−ヘキセンスルホニル)プリンを0.3g得た。
以下に、その物性を示す。
【0069】
m.p.139〜140℃
H−NMR(CDCl,δppm)
1.57〜1.60(2H,m)、1.83〜1.85(2H,m)、
2.01〜2.04(2H,m)、3.57〜3.41(2H,s)、
4.04〜4.15(1H,d−q)、8.66(1H,s)、
9.28(1H,s)、10.90(1H,b)
【0070】
(4)表1及び表2中のその他の化合物(I)の合成
前記(1)〜(5)に記載の方法に準じて、表1及び表2中のその他の化合物(I)を合成した。得られた化合物(I)の物性を表1及び表2の右欄に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
実施例2〔製剤の調製〕
(1)粒剤の調製
化合物(I)5重量部、ベントナイト35重量部、タルク57重量部、ネオレックスパウダー(商品名;花王株式会社製)1重量部及びリグニンスルホン酸ソーダ2重量部を均一に混合し、次いで少量の水を添加して混練した後、造粒,乾燥して粒剤を得た。
【0074】
(2)水和剤の調製
化合物(I)10重量部、カオリン70重量部、ホワイトカーボン18重量部、ネオレックスパウダー(商品名;花王株式会社製)1.5重量部及びデモール(商品名;花王株式会社製)0.5重量部を均一に混合し、次いで粉砕して水和剤を得た。
【0075】
(3)乳剤の調製
化合物(I)20重量部及びキシレン70重量部に、トキサノン(商品名;三洋化成工業製)10重量部を加えて均一に混合し、溶解して乳剤を得た。
【0076】
(4)粉剤の調製
化合物(I)を粉5重量部、タルク50重量部及びカオリン45重量部を均一に混合して粉剤を得た。
【0077】
実施例3〔効力試験〕
(1)サツマイモネコブセンチュウに対する効力試験
96穴プレートの各ウエルに、実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水で各々30ppmになるように希釈した薬液を入れ、各ウエルにサツマイモネコブセンチュウの2期幼虫約100頭を放った。
次に、25℃の定温室に放置し、2日後に顕微鏡下(40倍視野)で生死虫数を数えて観察して殺センチュウ率を求めた。
殺センチュウ効果の評価結果は、殺センチュウ率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−6、I−7、I−8、I−13、I−15、I−17がAの殺センチュウ活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺センチュウ活性はDであった。
【0078】
【化8】

【0079】
(2)ハスモンヨトウに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液中にダイズ本葉をそれぞれ30秒間浸漬し、それぞれプラスチックカップに入れた。
風乾後、各カップにハスモンヨトウ2齢幼虫10頭を放ち,蓋をして25℃の低温室に放置して、2日後に生死虫数を数えて死虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−15がCの殺虫活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺虫活性はDであった。
【0080】
(3)コナガに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液中にキャベツ葉片(5×5cm)を30秒間浸漬し、それぞれプラスチックカップに1枚ずつ入れて風乾した。
各カップにコナガ3齢幼虫10頭を放って蓋をし、25℃低温室に放置し、2日後に生死虫数を数えて死虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−7、I−8、I−13、I−15〜17、I−18がBの殺虫活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺虫活性はDであった。
【0081】
(4)トビイロウンカに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が100ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬し、風乾後ガラス円筒に挿入した。各ガラス円筒内にトビイロウンカ(4齢幼虫)10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃の定温室に放置し、4日後にガラス円筒内の生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−6、I−7、I−8、I−11、I−12、I−13、I−15、I−16、I−17、I−19がAの殺虫活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺虫活性はDであった。
【0082】
(5)ツマグロヨコバイに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が100ppmになるように希釈し、これらの薬液中にイネ稚苗をそれぞれ30秒間浸漬、風乾した後、ガラス円筒に挿入した。
各ガラス円筒内にツマグロヨコバイ(4齢幼虫)10頭を放ち、多孔質の栓をし、25℃の定温室に放置し、4日後にガラス円筒内の生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−7、I−8、I−13、I−15、I−17、I−19がAの殺虫活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺虫活性はDであった。
【0083】
(6)ヒラタコクヌストモドキに対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が500ppmになるように希釈し、これらの薬液1mlをそれぞれプラスチックカップ内に敷いたろ紙(直径7.8cm)全体に含浸させた後、風乾した。
各カップ内にヒラタコクヌストモドキ成虫10頭を放って蓋をし、25℃の定温室に放置し、5日後に生死虫数を数えて殺虫率を求めた。
殺虫効果の評価結果は、殺虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物,I−1、I−6、I−15がCの殺虫活性を示した。
また、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺虫活性はDであった。
【0084】
(7)ナミハダニ雌成虫に対する効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表1及び2に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液に10頭のナミハダニ雌成虫を寄生させたインゲン葉片(直径20mm)を15秒間浸漬して風乾した。これらの葉片を25℃の定温室に放置し、3日後に各葉片における生死虫数を数えて殺ダニ率を求めた。
殺成虫効果の評価結果は、殺成虫率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−6、I−7、I−8、I−12、I−15、I−19がAの殺成虫活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺成虫活性はDであった。
【0085】
(8)ナミハダニ殺卵効力試験
実施例2の(2)に準じて調製した表3〜6に示される化合物(I)のそれぞれの水和剤を、水(界面活性剤(0.01%)を含む)で該化合物が300ppmになるように希釈し、これらの薬液にインゲン葉片(直径20mm)(5頭のナミハダニ雌成虫を24時間寄生産卵させた後に、成虫を除去したもの)を15秒間浸漬して風乾した。これらの葉片を25℃の定温室に放置し、7日後に各葉片における孵化幼虫数を数えて殺卵率を求めた。
殺卵効果の評価結果は、殺卵率の範囲によって、4段階(A:100%、B:100未満〜80%、C:80未満〜60%、D:60%未満)で示した。
この結果、化合物I−1、I−6、I−7、I−12、I−1、I−15、I−19がAの殺卵活性を示した。
なお、同様にして特許文献1記載の下記化合物(15−10)を試験した結果、殺卵活性はDであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)で示される縮合ピリミジン誘導体。
【化1】

(式中、環Aは下式(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)により表されるベンゼン環、チオフェン環、イミダゾール環、シクロペンテン環、又はシクロヘキセン環を表し、nは0,1,2の整数を表す。)
【化2】

(式中、R、Rは、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表し、Rは、水素原子、又はハロゲン化アルケニル基を表す。)
【請求項2】
請求項1の式(I)で示される縮合ピリミジン誘導体を有効成分とする農園芸用有害生物防除剤。

【公開番号】特開2006−16331(P2006−16331A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195183(P2004−195183)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】