説明

繊維回収装置

【課題】 装置構成を簡素化しながら、ノズルから押し出された繊維状物を安定した状態で円滑に回収することができる繊維回収装置を提供する。
【解決手段】 ノズル8から押し出された後、気流搬送される繊維状物Sを所定長さの搬送面HMの始端位置に導入する導入手段9と、搬送面HMの裏面側から吸引しつつ当該搬送面HMを繊維状物Sの搬送方向に移動させて、搬送面HMの始端位置に導入した繊維状物Sを搬送面HM上に沿って搬送する吸引搬送手段10と、搬送面HM上に沿って搬送されてきた繊維状物Sを搬送面HMの終端位置において吸引して搬出する吸引搬出手段11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから押し出した樹脂材料等からなる繊維状物を円滑に回収するための繊維回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記繊維状物の回収技術として、例えばノズルから押し出された繊維状物(ファイバー)を熱風等の気体流で搬送して網籠等の容器上に直接落下させて受けることが考えられるが、この場合、気体流に発生する乱流によって繊維状物が周りに散逸し、ノズル等の装置部分に絡まる等の問題が生じ易く、その結果、繊維状物を円滑に回収できず、回収量を損失させる原因ともなっていた。
【0003】
そこで、上記繊維状物の絡まりを防止する目的で、ノズルから押し出した繊維状物を搬送する気体流を熱硬化のための細い通路に通した後、通路幅が広がった拡散室に通流させてから、拡散室の下部に位置しかつ下側でエアー吸引されているベルトコンベアの搬送面上に落下させて回収する装置(特許文献1参照)や、上端開口部の幅が狭く下端開口部の幅を広く形成した箱体内を上側から下側に向けて上記繊維状物を通過させた後、同じくエアー吸引されているベルトコンベアの搬送面上に落下させて回収する装置(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特表平11−504400号公報
【特許文献2】特開2001−288670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載の繊維回収装置は、繊維状物を搬送する気体流を拡散減速させて繊維状物を回収し易くするとともに、気流により搬送された繊維状物を裏側から吸引されるベルトコンベアの搬送面に載せて搬出するものであるが、ベルトコンベアの搬送面に載せて搬出するだけでは繊維状物の散乱等を十分に防止できないおそれがあった。さらに、繊維状物の搬出にベルトコンベアを用いる場合には、繊維回収装置の設置スペースが大きくなり装置が大型化・複雑化するという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置構成を簡素化しながら、ノズルから押し出された繊維状物を安定した状態で円滑に回収することができる繊維回収装置、および、繊維回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る繊維回収装置の第一特徴構成は、ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物を当該搬送面の移動により当該搬送面上に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送面上に沿って搬送された前記繊維状物を吸引して搬出する吸引搬出手段が設けられている点にある。
【0008】
上記構成によれば、ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物が、通気性の搬送面を通過する気流によって搬送面上に押し付けられるとともに、搬送手段によって搬送面の移動に伴い搬送面上に沿って搬送された後、吸引搬出手段によって吸引されて搬出される。すなわち、気流搬送されてきた繊維状物を通気性の搬送面上に沿って搬送してから、例えば他の処理装置や回収容器等に向けて吸引搬出するので、ノズルから押し出された繊維状物を周囲への散逸等の発生もなく円滑に回収できる。さらに、吸引搬出手段としてエアーシュート等の気流搬送手段が採用でき、ベルトコンベア等の大掛かりな装置に比べて構成を簡素にできる。
従って、装置構成を簡素化しながら、ノズルから押し出された繊維状物を安定した状態で円滑に回収することができる繊維回収装置が提供される。
【0009】
同第二特徴構成は、上記第一特徴構成において、前記搬送手段が、前記搬送面を裏面側から吸引しつつ移動させる吸引搬送手段で構成されている点にある。
すなわち、搬送面上に気流搬送された繊維状物が、吸引搬送手段によって搬送面の裏面側から吸引されて搬送面上に安定に捕捉された状態で搬送面上に沿って搬送される。
従って、ノズルから押し出された繊維状物を周囲への散逸等の発生をより一層抑制して円滑に回収することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0010】
同第三特徴構成は、上記第一又は第二特徴構成において、前記気流搬送される繊維状物を前記搬送面上に導入する導入手段が設けられている点にある。
すなわち、ノズルから押し出された後、気流搬送される繊維状物が導入手段によって搬送面上に導入されるので、気流搬送力だけでは繊維状物が周囲へ拡散する等して搬送面上に有効に搬送されないような不都合発生のおそれを回避しながら一層確実に搬送面上に搬送させることができる。
従って、ノズルから押し出された繊維状物を一層円滑に回収することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0011】
同第四特徴構成は、上記第三特徴構成において、前記導入手段が、前記繊維状物を気流搬送する気体流に対して横方向から突き出て前記搬送面上に通流させるように規制する規制部材で構成されている点にある。
すなわち、繊維状物を気流搬送する気体流が横方向から突き出た規制部材によって規制されて搬送面上に通流するので、繊維状物が搬送面上に一層確実に気流搬送される。
従って、板状等の簡素な規制部材を用いて、繊維状物を気流搬送する気体流を規制し繊維状物を確実に搬送面上に導入することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0012】
同第五特徴構成は、上記第一から第四特徴構成のいずれかにおいて、前記搬送面上に沿って搬送される前記繊維状物の前記搬送面からの浮き上がりを防止するための浮き上がり防止部材が、前記搬送面に対し対向配置されている点にある。
すなわち、前記搬送面に対し対向配置された浮き上がり防止部材によって搬送面からの浮き上がりが防止された状態で、前記繊維状物が搬送面上に沿って搬送される。
従って、板状等の簡素な浮き上がり防止部材を用いて、繊維状物を搬送面上に一層確実に捕捉させて搬送することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0013】
同第六特徴構成は、上記第二から第五特徴構成のいずれかにおいて、前記吸引搬送手段が、通気性の搬送ベルトの表面を前記搬送面として備え且つ当該ベルトの表面から裏面側に向けて吸引する構造のベルト搬送装置で構成されている点にある。
すなわち、通気性の搬送ベルト表面上に導入された繊維状物がベルト表面から裏面側に向けて吸引されてベルト表面に捕捉された状態でベルトの移動に伴い搬送される。
従って、織布等の汎用材料を用いた通気性の搬送ベルトを備えた簡易なベルト搬送装置によって吸引搬送手段を構成した繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0014】
同第七特徴構成は、上記第一から第六特徴構成のいずれかにおいて、前記搬送面上に沿って前記吸引搬出手段の近傍まで搬送された前記繊維状物に対し前記搬送面の裏面から表面側に向けて気流を吹き付けて前記搬送面から分離させる分離手段が設けられている点にある。
すなわち、搬送面上に沿って吸引搬出手段の近傍まで搬送された繊維状物が搬送面の裏面から吹き付けられる気流の力を受けて搬送面から分離するので、吸引搬出手段によってその分離した繊維状物を容易に吸引することができる。
従って、例えば上記吸引搬出手段の吸引力をそれほど強くしなくても、搬送面から分離した繊維状物を散逸させることなく吸引して搬出することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0015】
同第八特徴構成は、上記第一から第七特徴構成のいずれかにおいて、前記吸引搬出手段に吸引させる前記繊維状物を前記吸引搬出手段の吸引口に案内する案内部材が設けられている点にある。
すなわち、前記吸引搬出手段に吸引させる繊維状物が案内部材によって吸引搬出手段の吸引口に案内されるので、搬送面から分離した繊維状物を吸引搬出手段の吸引口に送り込む効果が促進される。
従って、例えば上記吸引搬出手段を小型化するために吸引口を小さく形成した場合であっても、搬送面から分離した繊維状物を周囲に散逸させることなく吸引口に案内して吸引搬出することができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0016】
同第九特徴構成は、上記第一から第八特徴構成のいずれかにおいて、前記ノズルが所定方向に間隔を置いて複数個並置されている点にある。
すなわち、所定方向に間隔を置いて並置された複数個のノズルから押し出された後、搬送面上に気流搬送された複数条の繊維状物が、搬送手段によって搬送面上に沿って搬送されてから、吸引搬出手段によって吸引されて搬出される。
従って、複数個のノズルから同時に原料を押し出して複数条の繊維状物を効率良く生成するとともに、押し出された複数条の繊維状物を円滑に回収することができるので、生産性に優れた繊維回収装置が提供される。
【0017】
同第十特徴構成は、上記第九特徴構成において、前記導入手段が、ノズル並置方向に並ぶ状態で気流搬送される複数条の前記繊維状物をその並び状態のままで前記搬送面上に導入するように広幅に形成されている点にある。
すなわち、前記気流搬送される複数条の繊維状物が、広幅の導入手段によって、ノズル並置方向に並ぶ並び状態のままで前記搬送面上に導入される。
従って、複数個の並置ノズルによって効率良く生成させた複数条の繊維状物の並び状態を維持して絡まり等の発生を防止しつつ搬送面上に搬送することができるので、生産性の向上とともにより安定した繊維回収が実現できる繊維回収装置が提供される。
【0018】
同第十一特徴構成は、上記第九又は第十特徴構成において、前記搬送手段が、前記搬送面を前記複数条の繊維状物の並び方向に沿って移動させるように形成されている点にある。
すなわち、ノズル並置方向に並んだ状態で搬送面上に搬送された複数条の繊維状物がその並び方向に沿って移動する搬送面上を搬送された後、吸引搬出手段によって吸引されて搬出されるので、搬送手段の搬送面並びに吸引搬出手段の吸引口を共に複数条の繊維状物を並び方向から見たときの狭い幅に形成することができる。
従って、装置構成の小型化が可能となる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0019】
同第十二特徴構成は、上記第一から第十一特徴構成のいずれかにおいて、前記搬送手段において前記繊維状物が搬送される空間を外部から仕切る仕切り体が設けられている点にある。
すなわち、搬送手段において搬送面上に沿って繊維状物が搬送される空間が仕切り体によって外部から仕切られるので、当該搬送される繊維状物の外部への拡散を防止して安定した状態で搬送することができる。
従って、繊維状物の搬送面上に沿った搬送を安定に行うことができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0020】
同第十三特徴構成は、上記第十二特徴構成において、前記導入手段において前記繊維状物が搬送される空間を外部から仕切る仕切り体が設けられている点にある。
すなわち、導入手段において繊維状物が気流搬送される空間が仕切り体によって外部から仕切られるので、当該搬送気流の外部への拡散を防止して安定した流れ状態に規制することができる。
従って、繊維状物の搬送面上への導入を安定に行うことができる繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0021】
同第十四特徴構成は、上記第一から第十三特徴構成のいずれかにおいて、前記吸引搬出手段が、前記繊維状物を粉砕装置に向けて搬出するものである点にある。
すなわち、回収した繊維状物を直接、粉砕装置に搬出することができる。その結果、効率良い粉砕処理と、粉砕装置への供給量の安定維持が可能となる。
従って、回収した繊維状物を次工程で粉砕処理する場合に効率の良い処理を可能とする繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0022】
同第十五特徴構成は、上記第十四特徴構成において、前記繊維状物が、前記粉砕装置によって粉砕して樹脂微粒子を作製するための樹脂微粒子前駆体である点にある。
すなわち、繊維状物として回収され吸引搬出された樹脂微粒子前駆体が粉砕装置によって粉砕されて樹脂微粒子が作成される。
従って、樹脂微粒子の製造に適した繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0023】
同第十六特徴構成は、上記第十五特徴構成において、前記樹脂微粒子がトナー粒子であるである点にある。
すなわち、繊維状物として回収され吸引搬出されたトナー粒子前駆体が粉砕装置によって粉砕されてトナー粒子が作成される。
従って、トナー粒子の製造に適した繊維回収装置の好適な実施形態が提供される。
【0024】
また本発明に係る繊維回収方法の第一特徴構成は、ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物を当該搬送面の移動により当該搬送面上に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送面上に沿って搬送された前記繊維状物を吸引して搬出する搬出工程を有する点にある。
本発明に係る繊維回収方法の第一特徴構成によれば、ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物が、通気性の搬送面を通過する気流によって搬送面上に押し付けられるとともに、搬送面の移動に伴い搬送面上に沿って搬送され、次に、搬送面上に沿って搬送された繊維状物が吸引されて搬出される。すなわち、気流搬送されてきた繊維状物を搬送面上に沿って搬送した後、吸引搬出するので、ノズルから押し出された繊維状物を周囲への散逸等なく円滑に回収できる。
従って、ノズルから押し出された繊維状物を安定した状態で円滑に回収することができる繊維回収方法が提供される。
【0025】
同第二特徴構成は、上記第一特徴構成において、前記搬送工程では、前記搬送面が裏面側から吸引されている点にある。
すなわち、搬送面上に気流搬送された繊維状物が、搬送工程では搬送面の裏面側から吸引されて搬送面上に安定に捕捉されながら搬送面上に沿って搬送される。
従って、ノズルから押し出された繊維状物を周囲への散逸等の発生をより一層抑制して円滑に回収することができる繊維回収方法の好適な実施形態が提供される。
【0026】
同第三特徴構成は、上記第一又は第二特徴構成において、前記搬送工程の前に、前記気流搬送される繊維状物を前記搬送面上に導入する導入工程を有する点にある。
すなわち、導入工程によって、ノズルから押し出された後、気流搬送される繊維状物が搬送面上に導入されるので、気流搬送だけでは繊維状物が周囲へ拡散する等して搬送面上に有効に搬送されないような不都合発生のおそれを回避しながら一層確実に搬送面上に搬送させることができる。
従って、ノズルから押し出された繊維状物を一層円滑に回収することができる繊維回収方法の好適な実施形態が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る繊維回収装置および繊維回収方法の実施形態について、トナー粒子を製造する場合を例にして以下、図面に基づいて説明する。
【0028】
先ず、本発明の繊維回収装置が適用されるトナー製造装置は、図1に示すように、混合装置(例えば、ホソカワミクロン(株)製サイクロミックス)6、ホッパ1A付の一軸型もしくは二軸型のエクストルーダー1、静止型ミキサー2、静止型ミキサー2の出口から分岐した多段の分配流路3Aを有する流路構造体3などが設けられ、エクストルーダー1の出口と静止型ミキサー2の入口の間にはモータ5で駆動されるギアポンプ4が配置されている。さらに、分配流路3Aの最終段の各流路出口に対応させて、押出し用のノズル8が所定方向(図1で、紙面に沿う方向)に間隔を置いて複数個並置されている。また、エクストルーダー1、ギアポンプ4、静止型ミキサー2、流路構造体3には、図示は省略するが、トナー原料をバインダ樹脂の融点以上の高温、例えば130℃〜240℃程度に加熱して低粘度にするためのヒータを備えている。
【0029】
そして、本発明に係る繊維回収装置には、図1〜図3に示すように、ノズル8から押し出された後、通気性の搬送面HM上に気流搬送された繊維状物Sを当該搬送面HMの移動により当該搬送面HM上に沿って搬送する搬送手段10と、搬送面HM上に沿って搬送された繊維状物Sを吸引して搬出する吸引搬出手段11が設けられている。本実施形態では、上記搬送手段10が、搬送面HMを裏面側から吸引しつつ移動させる吸引搬送手段10で構成され、さらに、上記気流搬送される繊維状物Sを搬送面HM上に導入する導入手段9が設けられている。図2において、繊維状物Sは、所定長さの搬送面HMの上方側の始端位置に導入され、下向きに搬送された後、搬送面HMの下方側の終端位置から吸引搬出される。
【0030】
ここで、上記複数個のノズル8の並置幅に対応して気流搬送するように、ノズル8の両横脇に沿ってノズル並置幅よりも長さが長いスリット状の熱風吹出口7A(図2参照)を有する広幅の延伸用エアー吹き出し装置7が設けられている。そして、上記導入手段9は、ノズル並置方向に並ぶ状態で気流搬送される複数条の繊維状物Sをその並び状態のままで搬送面HM上に導入するように広幅に形成され、また、前記吸引搬送手段10は、前記複数条の繊維状物Sをその並び状態のままで搬送面HM上に沿って搬送するように広幅に形成されている。
【0031】
上記導入手段9は、具体的には、前記繊維状物Sを搬送する気体流に対して横方向から突き出て前記搬送面HM上に通流させるように規制する規制部材13で構成されている。規制部材13はノズル並置幅と同じ幅に形成されて支柱21に支持され、先端部が基端部に対して前記繊維状物Sの搬送方向下流側に位置する斜め姿勢(下向き姿勢)で前記搬送面HMと対向配置された2個の規制部材13−1、13−2を備えている。ここで、各規制部材13−1、13−2の設置角度は気流搬送された繊維状物Sを搬送面HMの始端位置に安定して導入できるように設定され、具体的には、水平方向に対し20〜60度の範囲が好ましく、より好ましくは30〜45度の範囲である。
【0032】
また搬送面HMに捕捉された繊維状物Sは面に垂直な方向にある程度の嵩高さを持つので、各規制部材13−1、13−2と搬送面HMはある程度距離を保つ必要があるが、距離を長く設定すると気体流が必要以上に外部へ拡散され、気体流の流れ方向の規制が安定に行えず、繊維状物Sを搬送面HMに導入する効果が十分に得られない。同時に、繊維状物Sが搬送時に搬送面HMから浮き上がって拡散するおそれがあるので、上記2番目の規制部材13−2が、搬送面HM上に沿って搬送される繊維状物Sの搬送面HMからの浮き上がりを防止するための浮き上がり防止部材として、搬送面HMに対し対向配置されている。具体的には、各規制部材13−1、13−2と搬送面HMとの距離は10〜60mmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜40mmの範囲である。
【0033】
また、上記吸引搬送手段10は、通気性の搬送ベルト14の表面を前記搬送面HMとして備え且つ当該ベルト14の表面から裏面側に向けて吸引して繊維状物Sを捕集する構造のベルト搬送装置で構成されている。ベルト14は、複数個のローラ15に懸架された状態でローラ15の回転により下方側に移動する。尚、ローラ15の1個がモータ17で駆動回転される。
【0034】
搬送面HM上の吸引面の長さ(図2において繊維状物Sを搬送する右側表面の長さ)は、短すぎると気流搬送されてきた繊維状物Sを搬送面HM上に安定して捕捉する距離に足りず、繊維状物Sが搬送面HM上から浮き上がってしまい、また、周辺の気体流を十分に吸引することができず、気体流による繊維状物Sの舞い上がりや散乱を生じる。従って、吸引面はより長く設定するのが望ましいが、装置スペースやコストの問題が生じる。具体的には、搬送面HM上の吸引面の長さは300〜700mmの範囲が好ましく、より好ましくは400〜600mmの範囲である。
【0035】
搬送ベルト14の移動速度が遅すぎると搬送面HM上に繊維状物Sが過剰に積み重なり、後述の吸引口11Aでの詰まりやもれを生じ、安定した回収の妨げになる。一方搬送ベルト14の移動速度が速すぎると捕捉時に繊維状物Sに対して過剰な張力がかかり糸切れを生じ、安定した回収の妨げになる。従って、搬送ベルト14の移動速度は5〜40m/分の範囲に設定するのが好ましく、より好ましくは10〜20m/分の範囲である。
【0036】
上記ベルト搬送装置15の内部には、上記ベルト14の表面から裏面側にエアーを吸引するブロア16が設置されている。尚、ベルト裏面とブロア16の間に圧力損失部を設けて、搬送面HM上での吸引力を均一化している。ブロア16に吸入されたエアー(熱風)は前記延伸用エアー吹き出し装置7に戻されて、繊維状物Sの気流搬送に用いられるので、熱効率が高くできる。
【0037】
上記搬送面HM上の吸引速度は繊維生成速度に依存する。即ち、搬送面HM上の吸引速度は繊維生成速度に対してできるかぎり大きい方が繊維状物Sをより効果的に吸引捕捉でき、且つ熱風(気体流)をより多く吸引できるが、一方で搬送面終端位置における搬送面HM上からの繊維状物Sの分離及び吸引搬出手段11(エアーシュート)による吸引を円滑に安定して行なうことができるように上限速度を設定する必要がある。さらに、繊維状物Sの気流搬送速度を大きくして、ブロア16による吸引を行なわないようにすることも可能である。具体的には、搬送面HM上の吸引速度V1(m/秒)と繊維生成速度V2(m/秒)の速度比V1/V2は0<V1/V2<0.5の範囲に設定するのが好ましく、より好ましくは0.2<V1/V2<0.4である。また、繊維生成速度V2(m/秒)の値は0<V2<130の範囲にある。
【0038】
尚、図2では、ベルト搬送装置15の上面に支柱23で支持された状態で、最上段の規制部材13−1よりも気流搬送方向の上流側において、繊維状物Sを搬送する気体流を挟んで規制部材13−1の反対側に位置し当該気体流に対して横方向から突き出て規制する別の規制部材19を設けている。即ち、繊維状物Sの流入位置は規制部材13−1に当接する流入位置(1)の場合や、規制部材13−1の先端部と搬送面HMの中間の流入位置(2)の場合や、規制部材19に当接する流入位置(3)の場合のように種々調整でき、いずれの場合においても、規制部材19によって気流(熱風)を逃がしながら繊維状物Sがベルト搬送装置15の上方から流出することを防止することができる。上記規制部材19は下向き姿勢に設置し、傾斜角度は鉛直方向に対し20〜60度の範囲が好ましく、より好ましくは30〜45度の範囲である。
【0039】
上記流入位置(2)の場合に規制部材13を複数個(2個以上)設置した時、気体流をより効果的に外部に拡散できるように最上段の規制部材13−1は規制部材19に対しノズル8から押し出された繊維状物Sを挟んで対向する位置に設置するのが好ましく、両規制部材13−1,19が同じ向きであれば上向き姿勢で対向設置してもよい。また両規制部材13−1,19の傾斜角及び先端の間隙はそれぞれ繊維生成速度に応じて、適切な角度及び間隙に設定され、両規制部材13−1,19の傾斜角は鉛直方向に対し20〜60度の範囲が好ましく、より好ましくは30〜45度の範囲である。両規制部材13−1,19の先端間隙は繊維状物Sが両先端に当接しない程度に設定する。ただし、先端間隙が広すぎると、気体流が広い間隙を通過するため両規制部材13−1,19によって気体流を十分に拡散できない。従って、両規制部材13−1,19の先端間隙は30〜100mmの範囲が好ましく、より好ましくは50〜80mmの範囲である。なお、各流入位置(1)(2)(3)において、ノズル8から規制部材19の先端までの距離は、規制部材19によって、あるいは規制部材19と規制部材13−1(両規制部材13−1,19が対向する場合)によって気体流をより効果的に拡散できるように、100〜500mmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは200〜400mmの範囲である。
【0040】
また、前記吸引搬出手段11は繊維状物Sを粉砕装置12に向けて搬出するものであって、搬送面HM上に沿って搬送された複数条の繊維状物Sの並び方向に沿って広幅に形成されている。吸引搬出手段11は、具体的には、広幅に形成された長孔状の吸引口11Aを備えたエアーシュート11によって構成され、エアーシュート11は図示しないブロアによって吸引されている。吸引口11Aの搬送面HMに対する設置角度は、前記搬送面HM上に沿って搬送された繊維状物Sを円滑に安定して吸引できるように設定され、0〜90度の範囲に設定するのが好ましく、より好ましくは30〜60度の範囲である。吸引口11Aと搬送面HMとの距離は吸引口11Aと搬送面HMが接しない距離を保ち、且つ十分な吸引力を得ることができる距離に設定する。従って、吸引口11Aと搬送面HMとの距離X(mm)は0<X<40の範囲が好ましく、より好ましくは10<X<30の範囲である。
【0041】
また、シュート吸引速度は小さすぎると、搬送された繊維状物Sを十分に吸引回収できず、吸引口11Aからのもれや詰まりを生じてしまう。逆に吸引速度が大きすぎると、繊維状物Sが吸引口11Aを通過する時に過剰な張力がかかって糸切れを生じ安定した回収の妨げとなる。従って、安定して回収できる速度に設定することが望ましく、シュート吸引V3(m/秒)と繊維生成速度V2(m/秒)の速度比V3/V2は0.15<V3/V2<0.4の範囲に設定するのが好ましい。
【0042】
また、吸引口11Aの幅については、吸引口11Aまで搬送された繊維状物Sは吸引口11Aの幅方向にある程度の嵩高さを持つので、吸引口11Aの幅が狭すぎると、吸引口11Aで繊維の詰まりやもれを生じて安定した吸引回収ができない。またできる限り小さいブロア風量でエアーシュート11の所望の吸引速度を得ることができる範囲が望ましい。従って、吸引口11Aの幅は、10〜50mmの範囲に設定することが好ましく、より好ましくは20〜40mmの範囲である。
【0043】
さらに、前記搬送面HM上に沿って前記吸引搬出手段11の近傍まで搬送された繊維状物Sに対し搬送面HMの裏面から表面側に向けて気流を吹き付けて搬送面HMから分離させる分離手段20が設けられている。分離手段20は、搬送面HMの終端位置において搬送面HM上から繊維状物Sを均等に分離させるため、具体的には、圧縮空気を吹き出す広幅のエアー噴出しノズルで構成されている。また、ノズルより噴出されるエアー噴出角度は吸引口11Aの設置角度によって、繊維状物Sが円滑に分離し、安定した吸引の妨げにならないような角度に設定され、具体的には、搬送面HM上にある繊維状物Sの向き(鉛直方向)に対し30〜150度の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは60〜120度の範囲である。
【0044】
また、前記吸引搬出手段11(エアーシュート)に吸引させる繊維状物Sを前記吸引搬出手段11の吸引口11Aに案内する案内部材18が設けられている。具体的には、先端側が下向きに傾斜した2個の板状の案内部材18−1,18−2を設けている。上流側の案内部材18−1は、吸引口11Aに向く状態で例えば水平方向に対し20〜60度の範囲に設置するのが好ましく、より好ましくは30〜45度の範囲である。また、下流側の案内部材18−2は、先端部が吸引口11Aに沿う状態に設置している。
【0045】
さらに、前記導入手段9及び前記吸引搬送手段10において前記繊維状物Sが搬送される空間を外部から仕切る仕切り体24が設けられている。具体的には、仕切り体24は、当該繊維状物Sの搬送方向と交差する方向の両側(即ち、広幅に形成した導入手段9及び吸引搬送手段10の広幅方向の両側)に設けられている。なお、仕切り体24は周辺部が支柱21、23に固定保持されている。
【0046】
上記規制部材13,19、案内部材18及び仕切り体24は、サイズ、強度、耐熱等の必要に応じて、例えばステンレス、鉄、アルミ等の各種金属やアクリル、塩化ビニル等の各種樹脂又はその他の材質で構成することができ、形態としては網状やメッシュ、パンチングプレート等の通気性を持つもので構成できる。また、シート材や板材等の通気性を持たないもので構成してもよい。いずれの材質及び形態においても、表面(繊維が接する可能性がある側)は繊維が滑り易い状態であることが好ましく、例えば、使用する材質によってはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)加工や電解研磨等で表面を滑り易くすることが好ましい。上記通気性を持たせるための開孔の状態はバリや毛羽立ちがなく、繊維の引っかかり等を生じず、且つ繊維が通過しない程度であることが好ましく、また、熱風(気体流)が通過するのに十分な通気度を有することが好ましい。ただし、通気度が大きすぎると気体流が外部に拡散しすぎてしまい規制部材13,19による気体流の流れ方向の規制効果が十分に得られないので、規制部材13,19による気体流の流れ方向の規制が安定して行える程度の通気度であることが好ましい。例えばパンチングプレートを用いた場合、開孔径は1〜6mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜4mmの範囲である。開孔率は15〜50%の範囲が好ましく、より好ましくは20〜40%の範囲である。
【0047】
上記通気性を持つ形態は熱風を外部に拡散することにより吸引温度を下げる効果及び気体流の減速効果を有する。即ち、通気性を持たない形態の時、熱風は規制部材13,19以外の部分から外部に拡散するが、通気性を持つ形態の時はそれに加えて熱風が開孔部を通過するので、その分外部への拡散効果は高まり通気性を持たない形態の時よりも吸引温度は5〜10℃程度低くなる。また熱風が開孔部を通過することにより気体流はより減速した状態になり、且つ幅方向への気体流の拡散が抑制され、流れ方向の規制をより安定して行うことができる。
【0048】
上記トナー製造装置において、複数の成分からなるトナー原料は、ホッパ1Aからエクストルーダー1内に投入されると、ヒータによって加熱されて溶融状態となり混合されながら出口側に送られる。エクストルーダー1から送り出されたトナー原料の溶融混合物は、ギアポンプ4で圧力及び押し出し量を調整された後、静止型ミキサー2内の螺旋形の流路と多段の分配流路3Aを通流する間に混合が促進され、トナー原料の各成分が均一に細かく分散した状態になる。そして、複数のノズル8から下向きに繊維状に押し出された繊維状物S(トナー原料の溶融混合物)が、延伸用エアー吹き出し装置7から吹き出す熱風(温度:150〜260℃程度)によって延伸された後、周囲の空気によって冷却されて固化しつつ押し出し方向に沿って搬送され、導入手段9に流入する。導入手段9によって搬送面HMの始端位置に導入された繊維状物Sは搬送面HM上を搬送され、終端位置に達した後、搬送面HMから分離され、エアーシュート11によって吸引されて粉砕装置12に搬送され、所望の粒度のトナー粒子を得るように粉砕処理される。即ち、繊維状物Sが粉砕装置12によって粉砕してトナー粒子を作成するためのトナー前駆体である。なお、上記粉砕装置12は、例えば、ホソカワミクロン(株)製:ACMパルベライザで構成される。ここで、上記延伸用エアー吹き出し装置7から吹き出す高温(150〜260℃)の押し出し熱風は、規制部材19及び13により拡散され、また搬送面HMの裏側に設置したブロア16により吸引される。その結果、上記エアーシュート11の吸気温度は大気温度20℃の時で30〜40℃の範囲(この範囲は熱風温度に依存する)になるが、粉砕装置12では、上記熱風温度の影響を受けずに運転処理できる。
【0049】
最後に、本発明に係る繊維回収方法は、ノズル8から押し出された後、通気性の搬送面HM上に気流搬送された繊維状物Sを搬送面HMの移動により搬送面HM上に沿って搬送する搬送工程Bと、前記搬送面HM上に沿って搬送された前記繊維状物Sを前記搬送面HMの終端位置において吸引して搬出する搬出工程Cを有し、さらに、上記搬送工程Bでは、搬送面HMが裏面側から吸引されており、搬送工程Bの前に、気流搬送される繊維状物Sを搬送面HM上に導入する導入工程Aを有する。ここで、本実施形態では、導入工程Aは上記説明した繊維回収装置において導入手段9に対応し、搬送工程Bは吸引搬送手段10に対応し、搬出工程Cは吸引搬出手段11に対応する。
【0050】
次に上記繊維回収装置・方法における運転条件の一例を説明する。
原料:ポリエステル系トナー用樹脂
押出し熱風温度:220℃
繊維状物Sの生成速度(ノズル押し出し速度):約42m/秒
繊維径:5μm
ベルト搬送装置15の最上面とノズル8との距離:300mm
1番目の規制部材13−1の角度:40度
(ベルト表面との距離:30mm)
2番目の規制部材13−2の角度:45度
(ベルト表面との距離:30mm)
搬送面HM上の吸引速度:12m/秒
ベルト14の移動速度:16m/min
ベルト14の搬送面HMの長さ:450mm
1番目の案内部材18−1の角度:45度
エアーシュートの吸引口幅:20mm
同設置角度(対ベルト表面):45度
同吸引速度:16m/秒
同シュート内吸気温度:35℃(外気温度20℃)
【0051】
図2に、本発明の繊維回収装置における繊維状物Sの搬送状態を破線で示しているが、繊維状物Sが周囲に散逸することなく、円滑に搬送回収される様子が確認できた。即ち、ノズル8から押し出され熱風によって気流搬送されて繊維生成速度42m/秒で吹き出し形成された線径5μmの繊維状物Sは、規制部材13−1,13−2で熱風を拡散しながら搬送面HMの始端位置に導入され、搬送面HM上に吸引された低速状態で終端位置まで吸引搬送された後、搬送面HMから分離され、案内部材18−1,18−2で案内されつつ、吸引口11Aからエアーシュート11の内部に吸引され、ダクトを経由して粉砕装置12まで空気搬送される。
【0052】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、導入手段9として2個の規制部材13−1、13−2を備えたが、2番目の規制部材13−2は省略しても良い。また、2つの案内部材18−1,18−2を設けたが、上流側の案内部材18−1は省略しても良い。図4に、2番目の規制部材13−2を残し、上流側の案内部材18−1を省略した場合の配置例を示し、図5に、2番目の規制部材13−2と上流側の案内部材18−1の両方を省略した場合の配置例を示す。以上のように、規制部材13と案内部材18は少なくとも夫々1個設置する必要があるが、搬送面HMの長さやノズル8からシュート吸引口11Aまでの距離及び各規制部材13の縦方向の間隔を考慮して、多数設置する方が繊維状物Sの搬送面HM上への導入効果及び気体流(熱風)の拡散効果が高まる。なお規制部材13または案内部材18を複数個(2個以上)設置する場合、縦方向の設置間隔が狭すぎると気体流を外部に拡散する空間が小さくなり、十分な拡散効果が得られない。また設置間隔は搬送面HMの長さに対応して設定され、規制部材13または案内部材18の縦方向の設置間隔は100〜500mmの範囲が好ましく、より好ましくは200〜400mmの範囲である。
【0053】
上記実施形態では、吸引搬送手段10(ベルト搬送装置)において搬送面HMが垂直方向に向くように構成したが、搬送面HMの向きは任意の方向に設定することができる。例えば、図6に示すように、搬送面HMが水平方向に向くように構成してもよい。図6では、前記導入手段9として、当該気体流を整流して搬送面HM上に導くために、複数条の繊維状物Sを搬送する気体流を挟むように間隙を隔て対向位置した複数の規制部材22(22−1、22−2、22−3、22−4、22−5、22−6)が設けられている。ここで、ベルト搬送装置10の搬送方向下流側で搬送面HMに対し対向配置された規制部材22−6については、搬送時において、吸引されない一部気体流による繊維状物Sの搬送面HMからの浮き上がり(舞い上がり)を効果的に防止するための浮き上がり防止部材として機能するので、搬送面HMに対し平行状態に維持することが望ましい。尚、搬送面HMと規制部材22−6の間隔は30〜150mmの範囲に設定するのが好ましく、より好ましくは50〜100mmの範囲である。
【0054】
また、気体流の流入側に位置する一対の規制部材22−1と22−2、及び22−3と22−4については、図6に破線で示すように向きが同じ向きであれば、下方斜め向きでも、上方斜め向きでもよい。さらに上記規制部材22−6以外の規制部材22については、図7に示す規制部材22−7〜9の如く、気体流に当接する状態で気体流を挟んで流れ方向での位置をずらしながら(即ち対向させるのではなく)交互に反対側に位置するように設置してもよい。ここで、図7において最下段の規制部材22−6は、搬送面HMに対し対向配置された浮き上がり防止部材として機能する。規制部材22の個数は最下段に位置する規制部材22−5、及び22−6を除いて上側に、対向配置の場合(図6)は少なくとも1組、非対向配置の場合(図7)は少なくとも1個設置する必要があるが、ノズル8から搬送面HMまでの距離や規制部材22の縦方向の間隔を考慮して、多数設置する方が気流(熱風)の拡散効果が高まる。
【0055】
なお、図6及び図7において、吸引搬出手段(エアーシュート11)の吸引口11Aは、ベルト搬送装置10の上面(搬送面HM)の終端角部付近に配置するのが好ましい。また、図6及び図7には、分離手段20(エアー噴出しノズル)を設置しているが、繊維状物Sは角部通過時に遠心力を受けて搬送面HMから分離し易いので省略してもよい。なお、図6及び図7において、図示はしないが、吸引搬出手段(エアーシュート11)に吸引させる繊維状物Sを吸引口11Aに案内する案内部材を設けてもよい。
【0056】
さらに、上記図1から図7に示す実施形態では、吸引搬送手段10における搬送面HMの移動方向を複数条の繊維状物Sの並び方向と交差(直交)する状態に形成したが、図8に示すように、吸引搬送手段10が、搬送面HMを複数条の繊維状物Sの並び方向(紙面に対し垂直方向)に沿って移動させることも可能である。図8では、紙面に対し垂直方向に並ぶ複数条の繊維状物Sが、導入手段9を構成する複数の規制部材22−10〜22−15によって規制されて搬送面HM上に導入され、搬送面HM(搬送ベルト14)上を紙面垂直方向の奥側から手前側に吸引搬送された後、エアーシュート11の吸引口11Aから吸引搬出される。なお、図示はしないが、吸引搬出手段(エアーシュート11)に吸引させる繊維状物Sを吸引口11Aに案内する案内部材を設けてもよい。
【0057】
そして、図8に示す形態では、ノズル8の個数が増えて複数条の繊維状物Sの並び方向の長さが広くなった場合でも、搬送ベルト14の幅及びエアーシュート11の吸引口11Aの幅は、複数条の繊維状物Sを並び方向からみたとき(図8の状態)の左右への広がりをカバーできる程度であればよく、広幅にする必要がないので、装置を小型化できる利点が得られる。なお、図示はしないが、並置されるノズル8の個数が多くなる場合には、多数のノズル8を複数の流路構造体3(図1参照)に分けて組み込み、各流路構造体3を一列状に近接して並べた配置、2列状に並べて列同士及び各列内で近接させた配置など、複数のノズル8の配置は種々の状態に設定することができる。
【0058】
図示はしないが、図8において、図1から図7に示す実施形態の仕切り体24と同様の仕切り体を設置してもよい。例えば、広幅の導入手段9(規制部材22)の幅方向の両端側(外側)に仕切り体を設置するか、あるいは、図に示す規制部材22を除去して、繊維状物Sの搬送方向と交差する方向の両側(図8の状態で左右両側)に仕切り体を設置する。なお、仕切り体は単なる板材でもよいが、通気性を有するパンチングプレートがより好ましい。そして、かかる仕切り体により、繊維状物Sが上方から気流搬送されて搬送面HMに当たったときの周囲への拡散を抑制する効果が得られる。また、図8において、必要に応じて(例えば搬送面HM上の繊維状物Sの導入位置から吸引搬出位置までの搬送距離が長いような場合)、ベルト搬送装置10の幅方向の両側(図8で左右両側)に仕切り体を設置してもよい。さらに、図8において、規制部材22を除去し、仕切り体も設けないようにして、装置構成を一層簡素化することも可能である。
そして、上記のように、導入手段9(規制部材22)を設けない場合は、吸引搬送手段10が、ノズル8から押し出された後、搬送面HMまで気流搬送された繊維状物Sを搬送面HMの裏面側から吸引しつつ当該搬送面HMの移動により搬送面HM上に沿って搬送することになる。
【0059】
上記実施形態では、吸引搬出手段11をエアーシュートで構成したが、これ以外に、エジェクターで構成しても良い。
【0060】
また、繊維状物Sは、トナー前駆体に限らず、例えば、粉体塗料製造用の前駆体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る繊維回収装置及び方法は、トナー製造用以外の各種繊維状物の回収に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る繊維回収装置が適用されるトナー製造装置の全体構成図
【図2】本発明に係る繊維回収装置の側面図
【図3】図2の装置の正面図
【図4】図2の装置の変形例を示す側面図
【図5】図2の装置の変形例を示す側面図
【図6】本発明に係る繊維回収装置の他の実施形態を示す側面図
【図7】本発明に係る繊維回収装置の他の実施形態を示す側面図
【図8】本発明に係る繊維回収装置の他の実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0063】
1 エクストルーダー
2 静止型ミキサー
3 流路構造体
3A 流路
4 ギアポンプ
5 モータ
6 混合装置
7 延伸用エアー吹き出し装置
7A 吹出口
8 ノズル
9 導入手段
10 搬送手段(吸引搬送手段、ベルト搬送装置)
11 吸引搬出手段(エアーシュート)
11A 吸引口
12 粉砕装置
13 規制部材
13−2 浮き上がり防止部材
14 搬送ベルト
15 ローラ
16 ブロア
17 モータ
18 案内部材
19 別の規制部材
20 分離手段(エアー噴出しノズル)
21 支柱
22 規制部材
22−6 浮き上がり防止部材
23 支柱
24 仕切り体
HM 搬送面
S 繊維状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物を当該搬送面の移動により当該搬送面上に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送面上に沿って搬送された前記繊維状物を吸引して搬出する吸引搬出手段が設けられている繊維回収装置。
【請求項2】
前記搬送手段が、前記搬送面を裏面側から吸引しつつ移動させる吸引搬送手段で構成されている請求項1記載の繊維回収装置。
【請求項3】
前記気流搬送される繊維状物を前記搬送面上に導入する導入手段が設けられている請求項1又は2記載の繊維回収装置。
【請求項4】
前記導入手段が、前記繊維状物を気流搬送する気体流に対して横方向から突き出て前記搬送面上に通流させるように規制する規制部材で構成されている請求項3記載の繊維回収装置。
【請求項5】
前記搬送面上に沿って搬送される前記繊維状物の前記搬送面からの浮き上がりを防止するための浮き上がり防止部材が、前記搬送面に対し対向配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項6】
前記吸引搬送手段が、通気性の搬送ベルトの表面を前記搬送面として備え且つ当該ベルトの表面から裏面側に向けて吸引する構造のベルト搬送装置で構成されている請求項2〜5のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項7】
前記搬送面上に沿って前記吸引搬出手段の近傍まで搬送された前記繊維状物に対し前記搬送面の裏面から表面側に向けて気流を吹き付けて前記搬送面から分離させる分離手段が設けられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項8】
前記吸引搬出手段に吸引させる前記繊維状物を前記吸引搬出手段の吸引口に案内する案内部材が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項9】
前記ノズルが所定方向に間隔を置いて複数個並置されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項10】
前記導入手段が、ノズル並置方向に並ぶ状態で気流搬送される複数条の前記繊維状物をその並び状態のままで前記搬送面上に導入するように広幅に形成されている請求項9記載の繊維回収装置。
【請求項11】
前記搬送手段が、前記搬送面を前記複数条の繊維状物の並び方向に沿って移動させるように形成されている請求項9又は10記載の繊維回収装置。
【請求項12】
前記搬送手段において前記繊維状物が搬送される空間を外部から仕切る仕切り体が設けられている請求項1〜11のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項13】
前記導入手段において前記繊維状物が搬送される空間を外部から仕切る仕切り体が設けられている請求項12記載の繊維回収装置。
【請求項14】
前記吸引搬出手段が、前記繊維状物を粉砕装置に向けて搬出するものである請求項1〜13のいずれか1項に記載の繊維回収装置。
【請求項15】
前記繊維状物が、前記粉砕装置によって粉砕して樹脂微粒子を作製するための樹脂微粒子前駆体である請求項14記載の繊維回収装置。
【請求項16】
前記樹脂微粒子がトナー粒子である請求項15記載の繊維回収装置。
【請求項17】
ノズルから押し出された後、通気性の搬送面上に気流搬送された繊維状物を当該搬送面の移動により当該搬送面上に沿って搬送する搬送工程と、前記搬送面上に沿って搬送された前記繊維状物を吸引して搬出する搬出工程を有する繊維回収方法。
【請求項18】
前記搬送工程では、前記搬送面が裏面側から吸引されている請求項17記載の繊維回収方法。
【請求項19】
前記搬送工程の前に、前記気流搬送される繊維状物を前記搬送面上に導入する導入工程を有する請求項17又は18記載の繊維回収方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−328582(P2006−328582A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152746(P2005−152746)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(502360363)株式会社ホソカワ粉体技術研究所 (59)
【Fターム(参考)】