説明

繊維性基材の特性を評価し、繊維性基材を処理する方法

繊維性基材の損傷を評価する方法であって、(a)長さ、根元末端部及び先端末端部を有する前記繊維性基材を供給する工程と、(b)基材水分量を評価する手段を供給する工程と、(c)基材水分量を評価する前記手段を使用し、前記繊維性基材の長さに沿った第一の場所での前記繊維性基材の第一の測定水分量値及び前記繊維性基材の長さに沿った第二の場所での前記繊維性基材の第二の測定水分量値を少なくとも得る工程と、(d)前記測定水分量値を互いに比較して測定水分量の差を得る工程と、(e)前記測定水分量の差を前記繊維性基材の基材損傷値と関係づける工程とを含む方法。繊維性基材を処理する方法であって、(a)上記方法により繊維性基材の損傷を評価し、繊維性基材について関係づけられた基材の損傷値を得る工程と、(b)関係づけられた基材損傷値を使用し少なくとも一つの適切な基材処理組成物を選択する工程と、(c)適切な基材処理組成物を繊維性基材に適用する工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維性基材の特性を評価する方法及び繊維性基材を処理する方法に関する。特に、本発明の一つの態様は、繊維性基材の水分量と繊維性基材の他の物理的及び化粧品特性の相関関係をつくることからなる繊維性基材の特性を評価する方法に関する。特に、本発明の他の態様は、繊維性基材の特性の評価に基づき適切な基材処理組成物を選択することからなる繊維性基材を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維性基材を処理する方法には、一般に種々の処理組成物の少なくともひとつの適用が伴われてよい。そのような処理組成物が、繊維性基材にある望ましい物理的或いは化粧品特性を付与又は取り戻すため選択されてよい。しかし、適切な処理組成物が選択されなければ、望ましい物理的或いは化粧品特性は得られないかもしれない。
【0003】
人毛などケラチン性繊維を含む繊維性基材を処理する場合、一般に処理組成物にはシャンプー、コンディショナー、着色剤、及びスタイリング組成物などが含まれる。これら毛髪処理組成物の製造業者は、毛髪処理組成物の種類或いは銘柄の多数のバージョンを提供でき、多数のバージョンのそれぞれは、具体的な消費者セグメントの特徴であり、それぞれの消費者セグメントの間で一般に見られる毛髪の物理的或いは化粧品の差に基づくであろう要望又は要求を目標にして具体的に設計される。例えば、毛髪コンディショナーの単一銘柄は、乾燥し損傷した毛髪に適切なレベルのコンデイショニングを放出するため設計された第一のバージョンと油っこい毛髪に適切なレベルのコンデイショニングを放出するため設計された第二のバージョンを提案できる。
【0004】
しかし、消費者が多数のバージョンの毛髪処理組成物の銘柄の中から毛髪処理組成物を選択する課題に直面すると、消費者は気づかずに消費者が望んだ特性を提供するよう設計されていないバージョンを選択するかもしれない。そのような場合、消費者は、毛髪処理組成物銘柄の選択されたバージョンの結果に不満足であるかもしれない。消費者の不満足の結果として、例え別のバージョンのその毛髪処理組成物銘柄が消費者に望ましい毛髪特性を提供できても、その後消費者はその同じ毛髪処理組成物銘柄のバージョンのすべてを選択するのを拒むかもしれない。そのような状況が起こると、ひいては製造業者の特定のヘアケア組成物の不必要な販売の減少を引き起こすかもしれない。それ故に、望ましい物理的又は化粧品特性を繊維性基材に付与し或いは取り戻すよう設計される適切な基材処理組成物の選択を含む繊維性基材を処理する方法への要望がある。
【0005】
そしてまた、繊維性基材の物理的又は化粧品特性についての情報を簡単に、早く、正確に及び経済的に提供する繊維性基材の特性を評価する方法への要望がある。繊維性基材の処理方法において、そのような情報は、更に適切な基材処理組成物の選択を案内するために使用されてよい。しかし、繊維性基材の特性を評価する既知の方法は、正確で一貫性のある結果を提供していない。
【0006】
人毛などケラチン性繊維を含む繊維性基材について、毛髪の物理的又は化粧品特性を評価する方法は、典型的には毛髪の長さに沿ったいくつかの任意の場所で特性と関連づけられるいくつかのパラメーターの単一測定値を取得することを要する。そして、その単一測定値は、その特性を有する毛髪の別の対照試料のそのパラメーターの既知の値としばしば比較される。そのような評価方法は正確でないかもしれないし或いは一貫性のある及び繰返し可能な結果を提供しないかもしれない。というのは、それらの方法は、少なくともいくつかの要因を説明できないからである。第一に、多くの毛髪の物理的又は化粧品特性は温度及び相対湿度などの環境条件に影響される。第二に、毛髪の単一の物理的又は化粧品特性は根元から先端のその毛髪の長さに沿って変化するかもしれない。第三に、毛髪の多くの物理的又は化粧品特性は異なる個体又は個体のグループの中で本質的に変化するかもしれない(すなわち、一つの「対照値」はすべての個体に適さないかもしれない)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その結果として、上記要因を説明することにより正確で一貫性のある結果を提供する繊維性基材の特性を評価する方法に対する要望が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
毛髪などのケラチン性繊維を含む繊維性基材からなる繊維性基材の損傷及び他の物理的又は化粧品特性の正確で繰返し可能な評価が、繊維性基材の長さに沿った少なくとも第一の場所の基材水分量などのパラメーター値を繊維性基材の長さに沿った少なくとも第二の場所のパラメーター値と比較することによって達成されることがわかった。少なくとも二つの測定値を比較することにより、単一測定値を既知の対照値と比較するのとは反対に、損傷又は他の特性評価と関係づけられて測定されたパラメーターの差を示すプロファイルが得られる。これらの関係が繊維性基材の長さに沿ったそれぞれの対応する場所について少なくとも二つの値の間の相対的な差に基づくため、この評価は、測定中の環境条件の変化の影響と無関係である。
【0009】
繊維性基材の損傷を評価する方法であって、
(a)長さ、根元末端部及び先端末端部を有する前記繊維性基材を供給する工程と、
(b)基材水分量を評価する手段を供給する工程と、
(c)基材水分量を評価する前記手段を使用し、前記繊維性基材の長さに沿った第一の場所で前記繊維性基材の第一の測定水分量値及び前記繊維性基材の長さに沿った第二の場所で前記繊維性基材の第二の測定水分量値を少なくとも得る工程と、
(d)前記測定水分量値を互いに比較して測定水分量の差を得る工程と、
(e)前記測定水分量の差を前記繊維性基材の基材損傷値と関係づける工程と
を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様において、繊維性基材を処理する方法であって、
(a)繊維性基材の関係づけられた基材損傷値を得るために上記方法により繊維性基材の損傷を評価する工程と、
(b)関係づけられた基材損傷値を使用し少なくとも一つの適切な基材処理組成物を選択する工程と、
(c)適切な基材処理組成物を繊維性基材に適用する工程と
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書は本発明を特に指摘し、明確に特許請求している特許請求の範囲を要約しているが、本発明は以下の説明からよりよく理解されるであろうと考えられる。
【0012】
I.繊維性基材の損傷及び他の特性を評価する方法
本発明は、繊維性基材の損傷並びに他の特性を評価する方法を提供し、その方法は繊維性基材の水分量と繊維性基材の他の物理的及び化粧品特性の間に相互関係を作ることを含む。
【0013】
繊維性基材の水分量が繊維性基材の長さに沿った少なくとも二つの場所で測定される。しかし、繊維性基材の長さに沿った種々の距離でいくつかのそのような測定値が作られてもよい。そのような複数個の測定値は、測定された水分量の差を示すプロファイル、従って、繊維の代表的な特性の関係づけられたプロファイルを提供する。関係が繊維性基材の長さに沿ったそれぞれの対応する場所の少なくとも二つの値の間の相対的な差に基づくため、そのようなプロファイルは、繊維性基材の全般的な状態のよりよい及びより正確な徴候を提供する。繊維性基材はそれ自身のコントロールの働きをする。
【0014】
本発明において、繊維性基材の損傷を評価する方法は、
(a)長さ、根元末端部及び先端末端部を有する前記繊維性基材を供給する工程と、
(b)基材水分量を評価する手段を供給する工程と、
(c)基材水分量を評価する前記手段を使用し、前記繊維性基材の長さに沿った第一の場所で前記繊維性基材の第一の測定水分量値及び前記繊維性基材の長さに沿った第二の場所で前記繊維性基材の第二の測定水分量値を少なくとも得る工程と、
(d)前記測定水分量値を互いに比較して測定水分量の差を得る工程と、
(e)前記測定水分量の差を前記繊維性基材の基材損傷値と関係づける工程と
を含む方法である。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、基材の長さに沿った対応する追加の場所で繊維性基材について1つ以上の追加の測定水分量値を得るために、基材水分量を評価する手段が使用される。
【0016】
本発明の他の実施形態において、繊維性基材の長さに沿った第一の場所は繊維性基材の根元末端部の周囲にあり、繊維性基材の長さに沿った第二の場所は繊維性基材の先端末端部の周囲にある。例えば、人毛などケラチン性繊維を含む繊維性基材の場合、繊維性基材の根元末端部は毛髪の根元にあり、繊維性基材の先端末端部は毛髪の先端にある。
【0017】
本発明の更なる実施形態において、繊維性基材の長さに沿った対応する追加の場所並びに繊維性基材の根元と先端末端部の間で繊維性基材について1つ以上の追加の測定水分量値を得るため、基材水分量を評価する手段が使用される。
【0018】
繊維性基材中の水分量の測定が基材の種々の物理的及び化粧品特性を定量化するために使用される。人毛などの繊維性基材は一般にαケラチンと呼ばれる錯体タンパク質を含む。羊毛及び毛髪を含むαケラチン繊維は水に対して特別な親和性を有する。毛髪は吸湿性及び浸透性であり、自然環境から水を吸収する。正常な状態では、水が、毛髪の組成の約12%〜15%を占める。更に、毛髪は水中においてそれ自体の重量の30%超を吸収することができる。典型的に、毛髪は飽和時それ自身の重量の約30%の水を吸収する。もし毛髪が損傷すると、この割合は45%に近づくことがある。しかし、損傷した毛髪に健全な外観を与える水を、毛髪繊維中に保持する能力は減少している。
【0019】
水とのこの相互作用の結果として、ケラチン性繊維のほとんど全ての物理的特性が水の存在で変性されるのかもしれない。例としては、長さ及び直径の変化、内部粘性の変化、ヘア保持及びセッティング性、毛髪強度、及び電気光学的性質が挙げられる。更に、損傷、光沢、色、艶、平滑度、櫛通り易さ、縮れ/髪のなびき具合、量/本体、及び強度などの特性を決定できる。
【0020】
人毛などの繊維性基材の測定水分量の差といくつかの例示された特性それぞれとの間の相関関係がどのようにつくられる可能性があるかが、以下の実施例1〜5に示される。
【0021】
実施例1.毛髪水分量及び毛髪損傷
毛髪の水分量と毛髪損傷の間の相関関係が以下の観測結果との関連に基づき作成される。
【0022】
毛髪は、太陽暴露などの環境要因、並びにブラシがけ、櫛を通すこと、及び化学処理などの日常の手入れやスタイリングの習慣を通して、日々損傷を受ける。細胞膜複合体及び他の生体構造体は毛髪の先端近くでより弱くなるため、手入れする動作が毛髪の先端により近づくにつれて、薄片の持ち上げの増加、大きな塊の薄片の除去、キューティクルの持ち上げ、及び他の種類の損傷作用がおこる。従って、毛髪が成長するにつれ、先端は根元よりさらに多くの損傷作用にさらされるため、根元から先端にかけ損傷レベルの勾配がある。更に、毛髪の損傷の割合は、損傷作用が毛髪の根元から先端に移動するにつれて大きくなる。
【0023】
毛髪の損傷量と頭皮からの毛髪の長さの間の関連を測定するため、100個の毛髪が30.5cm(12インチ)のヘアピースからサンプリングされ、顕微鏡で調べられる。ヘアピースは多くの個体からの混ざった毛髪から作られ、毛髪の状態は人々の頭に依存する。損傷の発生は、それぞれの毛髪のピースの根元から0、7.6cm(3インチ)、15.2cm(6インチ)、22.9cm(9インチ)及び30.5cm(12インチ)の所で評価される。持ち上げられたキューティクル、キューティクルの泡立ち、こわれた/すりきれたキューティクル、及び欠け落ちたキューティクル(暴露された毛皮質を有する)の形体での毛髪の損傷は、SEM顕微鏡で目視評価により確認される。代表的な毛髪の損傷結果は下記の表1に示される。
【0024】
【表1】

表1からわかるように、根元からの距離が増すにつれて、損傷レベルが増加することが証明された。
【0025】
水分量と頭皮からの毛髪の長さ間の関連を決定するため、繊維性基材の水分量を評価するすべての適した手段が使用されてよい。例えば、上で参照した30.5cm(12インチ)のヘアピースの水分量を測定するため、共振周波数を有する高周波数信号発生器及び高‐QLC回路からなる電子装置が使用されてよい。繊維性基材の水分量を評価する適した手段には、シャーマン(Sherman)らの米国特許第6,854,322号に記載されているような方向性カップラーセンサーからなる電子装置も含まれる。水分量を評価するそのような適した手段を使用し基材水分量値を得ることにより、一般に根元からの距離が増すほど水分量値が減少するのがわかる。
【0026】
これらのデータは、ヘアピース中の湿分の量は毛髪の損傷の関数であり、従って毛髪水分量と毛髪損傷の間の相関関係が確立できることを示唆していると思われる。表1に示したように、毛髪に対する損傷のレベルは根元からの距離と共に増加する。更に、水分量を評価する手段により得られる基材水分量値に基づき、毛髪の水分量が根元からの距離と共に減少することがわかる。従って、毛髪損傷の増加は毛髪中の水分の損失をもたらすと思われる。別の言い方をすると、毛髪の水分量は毛髪の損傷量に反比例する。しかし、毛髪の根元での水分量と毛髪の先端での水分量間の差は毛髪の損傷量に比例する。その結果として、毛髪の長さに沿ったいろいろな場所での測定水分量の差は、全体的な毛髪損傷量と関係づけられてよい。
【0027】
又、損傷した毛髪は水分量を失う一方、毛髪の水分の流れを高くし続けると思われる。このように、このダイナミックな変化が損傷を評価するため使用されてもよい。
【0028】
毛髪水分量と毛髪損傷の間の関連は、既知の毛髪損傷変動を有する多数のヘアピースを取得し、ヘアピースの水分量を測定し、及び毛髪損傷の関数として水分量をグラフでプロットすることにより決定される。水分量と毛髪損傷間の実験に基づいた関係を説明するため最適な式が使用される。最適な式を決める方法は当該技術分野において既知である。その結果として、毛髪損傷の評価が毛髪水分量の評価により行われる。
【0029】
実施例2.毛髪水分量、毛髪損傷、及び毛髪の光沢/艶
毛髪の水分量、毛髪損傷、及び毛髪の光沢/艶間で作成される相関関係は実施例1で上記した観測結果及び関連並びに以下の観測結果及び関連に基づいている。
【0030】
毛髪繊維の損傷が大きければ大きいほど、毛髪の光沢はより少なくなり、従って毛髪に、より無光沢な外観を与える。これは損傷の増加により持ち上げられたキューティクル並びにざらざらになった毛髪の表面に起因する。これが光散乱を増し、それによって、その毛髪をすべすべなより健康的な状態を有する毛髪よりもより無光沢に見せる。表皮剥離は毛髪の光沢(正/拡散反射率)を減少するため、表皮剥離の増加に伴い無光沢な現象も増す。力強い櫛通し又はブラシがけなどのけばだった(逆毛をたてる)毛髪及びその他のすり減らし動作は、薄片縁端部をこわし、繊維の表面により多くのでこぼこを作り毛髪を艶消しする。これらの動作は、拡散散乱を増し、毛髪を無光沢にする。
【0031】
上記したように相関関係が毛髪の水分量と毛髪損傷の間で作成される際、毛髪の水分量は、毛髪損傷の関数としての毛髪光沢の評価と間接的に関連づけられる。毛髪の光沢は、手段としてムラカミ(Murakami)GP−200 633nm He−Neレーザーゴニオ光度計を使用し測定される。入射角の関数としての強度測定値を用い光度分布をプロットする。毛髪がより損傷されるにつれ、毛髪表面で反射される光はますます散乱され、強度分布はより広くより小さい強度になる。R.F.スタム(R.F.Stamm)らはJ.Soc.Cosmet.Chem.28巻571頁(1977)で、毛髪光沢=(S−D)/D(式中、Sは正反射率であり、Dはゴニオ光度計で測定されるような拡散反射率である)を提供している。
【0032】
毛髪光沢を毛髪損傷と関係づけるため、根元から先端まで既知の損傷差の30.5cm(12インチ)のヘアピースがサンプリングされ、手段としてゴニオ光度計により、いくつかの長さのヘアピースで毛髪光沢が測定される。それぞれの長さの毛髪について既知の損傷レベルに対応する測定毛髪光沢値は、毛髪損傷の関数としての毛髪光沢の実験に基づいた関係になる。毛髪光沢と毛髪損傷間の関係を説明するため最適な式が使用される。最適な式を決める方法は当該技術分野において既知である。
【0033】
実施例1で上記した毛髪水分量と毛髪損傷間の関係を使用することにより、毛髪光沢の評価が毛髪水分量の評価により行われる。
【0034】
実施例3.毛髪水分量、毛髪損傷、及び毛髪平滑度/櫛通りやすさ
毛髪の水分量、毛髪損傷、及び毛髪平滑度/櫛通りやすさ間で作成された相関関係は実施例1で上記した観測結果及び関連並びに以下の観測結果及び関連に基づいている。
【0035】
毛髪繊維の損傷が大きければ大きいほど、毛髪の粗さを増す持ち上げられ、さらにこわされたキューティクルによる毛髪の表面磨擦の増加は大きくなる。人毛のキューティクルは、頭皮の近くの根元末端部に平滑なこわれていない薄片縁端部を含有する。キューティクル損傷は、頭皮から数cm離れて観察され、屋外暴露並びに櫛通し、ブラシがけ、シャンプーするなどの日常の手入れ動作の結果からの機械的損傷によりもたらされるこわれた薄片縁端部により証明される。毛髪損傷は持ち上げられたキューティクル並びにこわれた薄片縁端部によって毛髪繊維摩擦を増すので、櫛通りやすさにとって毛髪と毛髪の摩擦は櫛と毛髪の摩擦よりより重要である。従って、毛髪損傷の測定は毛髪平滑度/櫛通りやすさの評価もまた正確に提供できる。
【0036】
上記したように毛髪の水分量と毛髪損傷間で相関関係が作成される際、毛髪の水分量は毛髪損傷の関数として毛髪平滑度/櫛通りやすさの評価と間接的に関連づけられる。毛髪平滑度/櫛通りやすさはインストロン5542電気機械の引張り試験機を使用し摩擦解析/櫛通り抵抗力測定により測定される。櫛が引張り試験機にとりつけられ、ヘアピースの中を引っ張られる。櫛通り抵抗力測定値が記録される。損傷した毛髪の表面の粗さの増加のため、毛髪損傷の増加は櫛通り抵抗力の増加となる。
【0037】
毛髪平滑度/櫛通りやすさを毛髪損傷と関連づけるため、根元から先端まで既知の損傷差の30.5cm(12インチ)のヘアピースがサンプリングされ、櫛通り抵抗力がいくつかの長さのヘアピースで測定される。それぞれの長さの毛髪の既知の損傷レベルに対応する測定櫛通り抵抗力値は、毛髪損傷の関数としての毛髪平滑度/櫛通りやすさの実験に基づいた関係になる。毛髪光沢と毛髪損傷の間の関係を説明するため最適な式が使用される。最適な式を決める方法は当該技術分野において既知である。
【0038】
実施例1で上記した毛髪水分量と毛髪損傷間の関係を使用することにより、毛髪平滑度/櫛通りやすさの評価が毛髪水分量の評価により行われる。
【0039】
実施例4.毛髪水分量及び毛髪の縮れ/髪のなびき具合
毛髪の水分量と毛髪の縮れ/髪のなびき具合間で作成された相関関係は以下の観測結果と関連に基づいている。
【0040】
毛髪水分量は毛髪の縮れ/髪のなびき具合特性に直接影響を与える。これは毛髪の水分量が一般にいかなる他の変数より静電気により大きい影響を及ぼすためである、というのは水分量の直接の作用が毛髪の電気抵抗(コンダクタンス)に基づいているからである。従って、水分量が増加すると静電気を発生しにくくなるように毛髪表面の伝導度が高まる。
【0041】
毛髪の水分量は、直接毛髪の縮れ/髪のなびき具合の評価と関係づけられる。ヘアピースは湿潤環境の範囲で平衡化され、ヘアピースの水分レベルが実施例1で上記したように測定される。作られた縮れ髪/髪のなびき具合現象ついて、それぞれのヘアピースはコントロールされた方法で櫛が通され、像が造られる。これらの像は、縮れ髪/髪のなびき具合について、ヘアピースから分離された縮れ/髪のなびき具合毛髪の繊維数又はピクセル領域数によって定量的に分析される。測定水分量に対する測定毛髪の縮れ/髪のなびき具合は、毛髪水分量の関数としての毛髪の縮れ/髪のなびき具合の実験に基づいた関係になる。ヘアピースの既知の水分レベルとその結果である毛髪の縮れ/髪のなびき具合間の関係を説明するため最適な式が使用される。最適な式を決める方法は当該技術分野において既知である。
【0042】
それ故に、毛髪の縮れ/髪のなびき具合の評価が毛髪水分量の評価によって行われる。
【0043】
実施例5.毛髪水分量及び毛髪強度
毛髪の水分量と毛髪強度の間で作成された相関関係は下記の観測結果及び関連に基づいている。
【0044】
水分量の変化に対応するものとして毛髪の内部粘度変化並びに長さ及び直径の両方の変動がある。更に、ケラチン繊維が引き伸ばされるにつれ、乾燥状態(相対湿度90%未満)で、でこぼこの皮質の破壊(損傷)はより引き起こされやすくなる。これは、繊維が乾燥している場合キューティクルより延伸性がはるかに少ない毛髪の毛皮質に起因する。
【0045】
毛髪繊維の膨潤挙動はその構造に関係がある。換言すれば、繊維直径の増加は水分摂取の増加につれて見られる。繊維の膨潤は、濡れた及び乾燥状態両方の引張特性に直接関係があると思われている。これらの引張特性は繊維直径に比例し、繊維直径から決定される。線密度は繊維の断面積及び直径に比例する。その結果として、繊維の引張特性は繊維直径に比例する。膨潤する繊維の割合は繊維により吸収される水の量に比例する。従って、毛髪水分量は繊維の引張り強度と関連づけられてよい。
【0046】
又、羊毛の場合は伸張性の規則的な増加(破断までの伸び率)が相対湿度の増加と共におこり、この同じ関係が毛髪の場合に当てはまると思われている。毛髪においては、相対湿度が増加するにつれ、毛髪の伸張性が増加し、弾性率は減少する。羊毛も毛髪もともにほぼ同一の要因に対して相対湿度の関数として水を定量的に結合するため、羊毛における場合と同様に、毛髪について相対湿度応力ひずみの関係があってよい。
【0047】
更に、毛髪のねじれ挙動は毛髪繊維の外部キューティクル層に左右される。毛髪繊維の損傷レベルに基づき、水はねじれ挙動にさまざまに影響を与えると思われている。更に、パーマネントウエーブ、漂白、又は乾燥により損傷を受けた毛髪は、乾燥状態において、バージン(化学的に不変の)の毛髪より硬直さ・硬さがより少ないと思われている。
【0048】
ねじれ挙動と同様に、繊維の硬さも相対湿度と共に変化している。毛髪の水分量が増加するにつれて毛髪繊維の硬さは減少する。この同じ関係は剛性について当てはめることができる。剛性は、センチメートル当り1回転ねじるのに必要なトルクである。剛性は、曲げ時状態での硬さに類似している。毛髪水分の増加と共に繊維硬さは減少し、その結果として、応力下の繊維強度は高くなる。
【0049】
毛髪の水分量は、毛髪強度の評価と直接に関連づけられる。インストロン5542電気機械の引張り試験機を使用することにより、ヘアピースは湿潤環境の範囲で平衡化されヘアピースの水分レベルが測定される。次に、それぞれのヘアピースは一定の相対湿度で引張り強度についてテストされる。測定水分量に対応する測定引張り強度が毛髪水分量の関数としての強度の実験に基づいた関係となる。ヘアピースの既知の水分レベルとその結果である毛髪強度間の関係を説明するため最適な式が使用される。最適な式を決める方法は当該技術分野において既知である。
【0050】
それ故に、毛髪強度の評価は毛髪水分量の評価によって行われる。
【0051】
II.繊維性基材を処理する方法
本発明の他の態様において、繊維性基材を処理する方法であって、
(a)上記方法により繊維性基材の損傷を評価し、繊維性基材の関係づけられた基材の損傷値を得る工程と、
(b)関係づけられた基材損傷値を使用して少なくとも一つの適切な基材処理組成物を選択する工程と、
(c)適切な基材処理組成物を繊維性基材に適用する工程と
を含む方法が提供される。
【0052】
本明細書で使用する時、「適切な基材処理組成物」は処理方法を実施する者に望まれる物理的又は化粧品特性を有する繊維性基材を付与或いは取り戻す組成物である。人毛などケラチン性繊維を含む繊維性基材を処理する場合、一般に処理組成物としては、シャンプー、コンディショナー、着色剤及びスタイリング組成物などが挙げられる。
【0053】
本発明の方法を使用し評価され及び処理されてよい繊維には、繊維の誘電率が水のそれとは著しく異なる種々の天然材料が含まれてよい。天然とは、材料が、植物、動物、及び昆虫由来のもの、又は植物、動物、及び昆虫の副産物由来のものであることを意味する。
【0054】
本発明に有用な天然繊維の非限定例としては、絹繊維、ケラチン繊維及びセルロース繊維がある。ケラチン繊維の非限定例としては羊毛繊維、ラクダの毛の繊維、及び人毛などから成る群から選択されるものが挙げられる。セルロース繊維の非限定例としては木材パルプ繊維、綿繊維、大麻繊維、黄麻繊維、亜麻繊維、及びこれらの混合物から成る群から選択されるものが挙げられる。
【0055】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、どの文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であるとの容認と解釈されるべきではない。
【0056】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性基材の損傷を評価する方法であって、
a)長さ、根元末端部及び先端末端部を有する前記繊維性基材を供給する工程と、
b)基材水分量を評価する手段を供給する工程と、
c)基材水分量を評価する前記手段を使用し、前記繊維性基材の長さに沿った第一の場所で前記繊維性基材の第一の測定水分量値及び前記繊維性基材の長さに沿った第二の場所で前記繊維性基材の第二の測定水分量値を少なくとも得る工程と、
d)前記測定水分量値を互いに比較して測定水分量の差を得る工程と、
e)前記測定水分量の差を前記繊維性基材の基材損傷値と関係づける工程と
を含む方法。
【請求項2】
基材水分量を評価する前記手段を使用して、前記繊維性基材の長さに沿った対応する追加の場所で、前記繊維性基材について1つ以上の追加の測定水分量値を得る請求項1に記載の繊維性基材の損傷を評価する方法。
【請求項3】
前記繊維性基材の長さに沿った前記第一の場所が、前記繊維性基材の前記根元末端部の周囲にあり、前記繊維性基材の長さに沿った前記第二の場所が、前記繊維性基材の前記先端末端部の周囲にある請求項1又は2に記載の繊維性基材の損傷を評価する方法。
【請求項4】
前記繊維性基材が、絹繊維、ケラチン繊維、及びセルロース繊維から成る群から選択される繊維を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維性基材の損傷を評価する方法。
【請求項5】
前記繊維性基材が、人毛及び獣毛から成る群から選択されるケラチン繊維を含む請求項4に記載の繊維性基材の損傷を評価する方法。
【請求項6】
基材水分量を評価する前記手段が、電子装置である請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維性基材の損傷を評価する方法。
【請求項7】
繊維性基材の処理方法であって、
a)請求項1〜6のいずれか一項の方法により前記繊維性基材の損傷を評価する工程と、
b)前記関係づけられた基材損傷値を使用して少なくとも一つの適切な基材処理組成物を選択する工程と、
c)前記適切な基材処理組成物を前記繊維性基材に適用する工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記適切な基材処理組成物が、シャンプー、コンディショナー、着色剤及びスタイリング組成物から成る群から選択される請求項7に記載の繊維性基材の処理方法。

【公表番号】特表2007−532925(P2007−532925A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508650(P2007−508650)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/014088
【国際公開番号】WO2005/106464
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】