説明

繊維材料ウェブを乾燥させる方法及び装置

本発明は、繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを乾燥させる方法及び装置であって、乾燥ゾーン(10)の領域において、走行する繊維材料ウェブに蒸気及び高温多湿の空気が供給可能であり、先行する乾燥ゾーン(10)の後で、走行する繊維材料ウェブが、乾燥シリンダ(14)と該乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)とを有する別の乾燥ゾーン(12)に供給される形式の方法及び装置において、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)から、高温空気(18)が取り出され、先行する乾燥ゾーン(10)のための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器(20)を用いて、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)において生じた凝縮水及び/又は新鮮水が、フード(16)から取り出された高温空気(18)によって加熱され、かつ/又は先行する乾燥ゾーン(10)のための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フード(16)から取り出されて第1の熱交換器(20)を通して案内された高温空気(18)が、先行する乾燥ゾーン(10)に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを乾燥させる方法であって、走行する繊維材料ウェブに、先行する乾燥ゾーンの領域において蒸気及び高温多湿の空気を供給し、繊維材料ウェブを、先行する乾燥ゾーンの後で、特にヤンキーシリンダである乾燥シリンダと該乾燥シリンダに配属されたフードとを有する後置された乾燥ゾーンに供給する形式の方法に関する。本発明はさらに、繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを製造する機械であって、先行する乾燥ゾーンが設けられていて、該乾燥ゾーンの領域において、走行する繊維材料ウェブに蒸気及び高温多湿の空気が供給可能であり、先行する乾燥ゾーンに後置された、特にヤンキーシリンダである乾燥シリンダと該乾燥シリンダに配属されたフードとを有する別の乾燥ゾーンが設けられている形式の機械に関する。
【0002】
US7351307B2及びWO2008/077874に開示された方法は、多量の薄葉紙ウェブ(Tissuebahn)を製造するための方法であって、これら公知の方法では、いわゆるベルトプレスが、高圧空気フード及び蒸気供給との関連において、繊維材料ウェブを規定の固形物含有量にまで脱水するために使用される。特にこのような薄葉紙機械のためには、所定の固形物含有量を得るために必要な、特に乾燥プロセス中におけるエネルギ消費を減じることが、重要である。さらに、可能な限り僅かなエネルギコストで、固形物含有量を高めるという要求がある。
【0003】
また例えばEP1959053A1に基づいて、高温空気フードの、ヤンキーシリンダに配属されたフードの排気を、ベルトプレスに供給することも既に公知である。
【0004】
所属の乾燥フードを備えたヤンキーシリンダもしくはベルトプレスを有する乾燥ユニットでは、極めて多量の蒸気が使用される。これに伴うエネルギコストに基づいて、製紙のためのコストも相応に高くなる。従来、ヤンキーシリンダに配属されたフードの、高エネルギ含有量を有する排気は、ヤンキー乾燥機用のフード燃焼空気及び抄紙機において使用される水を予加熱するために使用されていた。
【0005】
ベルトプレスに基づく技術は、汎用の薄葉紙機械に比べてさらに高い蒸気消費を必要とし、これによりエネルギバランスは全体として不都合になる。
【0006】
ベルトプレスに基づくこの技術のためには、さらなるエネルギとして、高温多湿の空気が必要になり、そのためには従来、ヤンキーシリンダに配属されたフードからの排気が使用された。この際に従来は、ベルトプレスに供給される空気の温度をベルトプレスにおいて必要な値に低下させるために、ヤンキーフードからの排気を新鮮空気と混合することが必要であったが、これによってしかしながら高温空気のエンタルピ及び湿度もまた低下してしまった。ヤンキーフードの排気の温度は、ベルトプレスが作動できる温度よりも一定程度高温である。
【0007】
ゆえに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法及び装置もしくは機械を改良して、乾燥プロセスを、特に繊維材料ウェブの脱水のための所要エネルギに関して、乾燥プロセスを最適化することである。この際に乾燥プロセスは、特に、ベルトプレスと、ベルトプレスに後置された、所属の乾燥フードを備えたヤンキーシリンダを有する乾燥ユニットとにおける、組み合わせられた乾燥において、最適化されることが望まれている。
【0008】
この課題を解決するために本発明の方法では、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダに配属されたフードから、高温空気、特に排気を取り出し、先行する乾燥ゾーンのための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器を用いて、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダにおいて発生した凝縮水及び/又は新鮮水を、フードから取り出された高温空気によって加熱し、かつ/又は先行する乾燥ゾーンのための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フードから取り出されて第1の熱交換器を通して案内された高温空気を、先行する乾燥ゾーンに供給するようにした。
【0009】
この方法に基づいて、蒸気発生器からの使用される蒸気は著しく減じられ、これによって相応に全エネルギ消費量が減じられる。この場合特に、製紙プロセスにおいて使用される蒸気を発生させるための熱が回収される。乾燥シリンダもしくはヤンキーシリンダに配属されたフードの排気におけるエンタルピ低下に基づいて、自由になるエネルギが使用される。この際に一方では蒸気が生ぜしめられる。他方では、熱交換器から再び流出する、比較的低い温度の高温空気が、製紙プロセスにおいてさらに使用され、生ぜしめられた蒸気と、低い温度に冷却された高温空気とは、特にベルトプレスにおいてさらに使用することができる。
【0010】
本発明による方法の有利な構成では、第1の熱交換器を用いて、供給される凝縮水及び/又は新鮮水から蒸気を発生させて、該蒸気を先行する乾燥ゾーンに供給する。
【0011】
本発明による方法の択一的な有利な構成では、第1の熱交換器を用いて、最初に凝縮水及び/又は新鮮水を加熱する。第1の熱交換器(20)に続けて、加熱された凝縮水及び/又は新鮮水を膨張気化装置に供給し、該膨張気化装置によって生ぜしめられた蒸気を、先行する乾燥ゾーンに供給する。
【0012】
さらに、膨張気化時に発生した凝縮水を第1の熱交換器に戻し、該第1の熱交換器において、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダにおいて発生した凝縮水及び/又は新鮮水と一緒に、フードから取り出された高温空気によって加熱すると、有利である。
【0013】
本発明による方法の別の有利な構成では、第2の熱交換器を用いて、フードから取り出された高温空気によって新鮮空気を加熱し、このようにして加熱された新鮮空気を、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダに配属されたフードに、燃焼空気及び/又は補給空気として供給するようにした。「補給空気(make-up Luft)」というのは、例えば乾燥ゾーン及び/又は乾燥システムを予加熱するための空気のことである。予加熱は例えば薄葉紙機械の始動時に実施される。
【0014】
取り出された高温空気を初めに、凝縮水及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器を通して、次いで、新鮮空気を加熱するために設けられた第2の熱交換器を通して案内し、その後で先行する乾燥ゾーンに供給すると、有利である。
【0015】
しかしながらまた可能である択一的な有利な構成では、フードから取り出された高温空気を初めに、新鮮空気を加熱するために設けられた第2の熱交換器を通して、次いで、凝縮水及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器を通して案内し、その後で先行する乾燥ゾーンに供給する。
【0016】
本発明による機械、つまり繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを製造する本発明による機械では、先行する乾燥ゾーンのための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器が設けられており、該第1の熱交換器に、高温空気、特に排気が、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダに配属されたフードから供給されていて、フードから取り出された高温空気によって、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダにおいて生じた凝縮水及び/又は新鮮水が加熱され、かつ/又は先行する乾燥ゾーンのための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フードから取り出されて第1の熱交換器を通して案内された高温空気が、先行する乾燥ゾーンに供給されている。
【0017】
本発明による機械の有利な実施形態では、先行する乾燥ゾーンは、吸込み装置、特にサクションローラを有していて、該吸込み装置を介して繊維材料ウェブは、少なくとも1つの透過性のベルト、特に構造化されたベルト又はTADベルト(TAD = Through Air Drying)と一緒に案内されており、初めに透過性のベルトが、次いで繊維材料ウェブが蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。
【0018】
この場合繊維材料ウェブは有利には、少なくとも1つの別の透過性のベルト、特にプレスベルトによって被われていて、初めに該別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流され、次いで第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが貫流され、その後で繊維材料ウェブが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。このような構成ではプレスベルトの使用時に、機械的な圧力に加えて、特に高温空気乾燥と蒸気乾燥とが組み合わされて用いられる一種のベルトプレスが得られる。
【0019】
本発明による機械の別の構成では、繊維材料ウェブと一緒に付加的に脱水ベルト、特にフェルトベルトが、吸込み装置もしくはサクションローラを介して案内されていて、初めに、場合によっては別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流され、次いで第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが貫流され、その後で繊維材料ウェブが貫流され、最後に付加的な脱水ベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。
【0020】
本発明による機械の別の構成では、先行する乾燥ゾーンに、第1の熱交換器を用いて、供給された凝縮水及び/又は新鮮水から生ぜしめられた蒸気が供給されている。
【0021】
既に述べたように、しかしながらまた、最初に凝縮水及び/又は新鮮水を、第1の熱交換器を用いて単に加熱し、この第1の熱交換器を用いて加熱された凝縮水及び/又は新鮮水を膨張気化装置に供給することも、同様に可能である。この場合には膨張気化装置によって生ぜしめられた蒸気が、先行する乾燥ゾーンに供給される。
【0022】
相応な蒸発システムは特に、水を循環させるための単数又は複数のポンプをも有することができる。このようなポンプを用いて特に、第1の熱交換器の内部において循環する水が高められた圧力を有することができ、この圧力は例えば特に約3〜約20バールの範囲にある。この水は、熱交換器を通して案内された空気から熱を吸収し、そして膨張させられる。
【0023】
この際に行われる膨張気化時に水圧は低下させられ、これによって蒸気が生ぜしめられる。高圧を有する水は、高い温度において気化、蒸発する。水が高圧に保たれると、水の温度は気化なしに高められる。そして圧力が、先行する温度を下回る沸点温度を有する値に低下させられると、膨張プロセスが自動的に始まる。
【0024】
生ぜしめられた蒸気は、適宜な室において分離され、特に薄葉紙製造時における別の乾燥プロセスのために使用することができる。
【0025】
本発明による機械の有利な構成では、フードから取り出された高温空気によって新鮮空気を加熱するために、第2の熱交換器が設けられており、このようにして加熱された新鮮空気が、後置された乾燥ゾーンの乾燥シリンダに配属されたフードに燃焼空気及び/又は補給空気として供給される。既に述べたように、「補給空気」というのは、例えば乾燥ゾーン及び/又は乾燥システムを予加熱するための空気のことである。予加熱は例えば薄葉紙機械の始動時に実施される。
【0026】
本発明は特に、蒸気消費量に関して、並びに特にヤンキー乾燥機及びベルトプレスの使用時において、特に有利である。生ぜしめられる蒸気量は、特に空気質量流、空気温度及び湿度のような条件や、空気/空気式熱交換器が設けられているかいないかといった条件等に依存している。
【0027】
さらに別の有利な構成では、少なくとも1つの熱交換器が、有利には貫流調整可能なバイパスを、フードから取り出された高温空気のために備えている。
【0028】
次に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による熱回収システムの第1実施形態を示すフローチャートである。
【図2】本発明による熱回収システムの別の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】膨張気化装置を備えた、本発明による熱回収システムの別の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】膨張気化装置を備えた、本発明による熱回収システムの別の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】膨張気化装置を備えた、本発明による熱回収システムの別の実施形態を示すフローチャートである。
【0030】
図1には、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブであってよい、繊維材料ウェブを製造する機械の本発明による熱回収システムの第1実施形態のフローチャートが示されている。
【0031】
この熱回収システムでは、走行する繊維材料ウェブには最初に先行する乾燥ゾーン10の領域において、蒸気及び高温多湿の空気が加えられる。この乾燥ゾーン10に続いて繊維材料ウェブは、後置された乾燥ゾーン12に供給される。
【0032】
先行する乾燥ゾーン10は特に、吸込み装置42、有利にはサクションローラを有しており、この吸込み装置42を介して繊維材料ウェブは、少なくとも1つの透過性のベルト、特に構造化された(strukturiert)ベルト又はTADベルトと一緒に案内されており、初めに透過性のベルトが、次いで繊維材料ウェブが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。
【0033】
繊維材料ウェブはさらに、少なくとも1つの別の透過性のベルト、特にプレスベルトによって被われていてもよく、このような場合には初めにこの別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、次いで第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが、その後で繊維材料ウェブが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。この場合プレスベルトの使用時には、一種のベルトプレスが生ぜしめられ、このベルトプレスでは、機械的な圧力に加えて、特に組み合わせられた高温空気乾燥と蒸気乾燥とが行われる。
【0034】
繊維材料ウェブと一緒に付加的に特に脱水ベルト、特にフェルトベルトも、吸込み装置42を介して案内することができ、この場合には初めに別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、次いで、設けられている場合には第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが、その後で繊維材料ウェブが、そしてその次に付加的な脱水ベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される。
【0035】
後置された乾燥ゾーン12は特に乾燥シリンダ14、特にヤンキーシリンダと、この乾燥シリンダ14に配属もしくは対応配置されたフード16を有していることができ、このフード16は特に高温空気フードであってよい。
【0036】
乾燥シリンダ14に配属されたフード16からは、高温空気18、特に排気が取り出される。先行する乾燥ゾーン10のための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器20を用いて、後置された乾燥ゾーン12の乾燥シリンダ14において生じる凝縮水22及び/又は新鮮水が、フード16から取り出された高温空気18によって加熱される。
【0037】
先行する乾燥ゾーン10のための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フード16から取り出されて第1の熱交換器20を通して案内された高温空気18は、先行する乾燥ゾーン10に供給される。高温空気18は熱を凝縮水22もしくは新鮮水に与えるので、高温空気18の温度は低下し、その結果最終的に、先行する乾燥ゾーン10に供給される湿った高温空気18′は、この乾燥ゾーン10における特殊な乾燥のために適した温度を有することになる。熱交換器20に供給される高温空気18は例えば、360℃の範囲の温度を有し、最終的に、先行する乾燥ゾーン10に供給される湿った高温空気18′は、200℃の範囲の温度を有することができる。熱交換器20に供給される凝縮水22は例えば165℃の範囲の温度を有することができる。
【0038】
図示の実施形態では、供給される凝縮水22及び/又は新鮮水から、第1の熱交換器20を用いて直に蒸気24が生ぜしめられ、この蒸気24は次いで先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0039】
図1から分かるように、さらに蒸気分離器26が設けられており、この蒸気分離器26は乾燥シリンダ14とポンプ28との間に配置されていて、このポンプ28を介して熱交換器20に凝縮水22が供給される。さらに図1には蒸気発生器30も示されている。
【0040】
熱交換器20は、空気/水式熱交換器である。
【0041】
図2には、熱回収システムの別の実施形態のフローチャートが示されており、この実施形態は図1に示した実施形態と次の点で異なっている。すなわち図2に示した実施形態では、第2の熱交換器32を用いて、フード16から取り出された高温空気18によって新鮮空気34が加熱され、このようにして加熱された新鮮空気34′は、後置された乾燥ゾーン12の乾燥シリンダ14に配属されたフード16に、燃料空気として供給される。第2の熱交換器32はつまり空気/空気式熱交換器である。
【0042】
この実施形態ではフード16から取り出された高温空気18は初めに、新鮮空気34を加熱するために設けられた第2の熱交換器32を通して、次いで、凝縮水22及び新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器20を通して案内され、その後で先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0043】
基本的にはしかしながら例えば次のような構成も可能である。すなわち可能な別の構成では、取り出された高温空気18は初めに、凝縮水22及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器20を通して、次いで新鮮空気34を加熱するために設けられた第2の熱交換器32を通して案内され、その後で先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0044】
その他の点では、この実施形態は少なくともほぼ、図1に示した実施形態と同じ構造を有しており、図1及び図2において互いに対応する部材には同じ符号が使用されている。
【0045】
図3には、熱回収システムのさらに別の実施形態のフローチャートが示されており、この実施形態は図1に示した実施形態と次の点で異なっている。すなわち図3に示した実施形態では、凝縮水22及び/又は新鮮水は第1の熱交換器20を通して、例えば約3〜約20バールの範囲にある高められた圧力下で加熱され、この第1の熱交換器20を用いて加熱されかつ高められた圧力下にある凝縮水22及び/又は新鮮水は、次いで膨張気化装置36に供給される。つまりこの場合に膨張気化(フラッシング(Flashing))によって生ぜしめられた蒸気24であって、供給された加熱された凝縮水22もしくは新鮮水に比べて低い圧力を有する蒸気24は、先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0046】
熱交換器20は、フード16から取り出される高温空気18のために有利には貫流を制御可能なバイパス38を備えている。これによって、先行する乾燥ゾーン10のために生ぜしめられた蒸気の量や、燃焼空気の予加熱(例えば図4参照)又は、先行する乾燥ゾーン10に配属された乾燥フード又は高温空気フード40のおける温度の上昇に関して大きなフレキシビリティを得ることができる。
【0047】
図3から分かるように、膨張気化時に生じる凝縮水22′は第1の熱交換器20に戻され、この第1の熱交換器20において、後置された乾燥ゾーン12の乾燥シリンダ14において生じる凝縮水22及び/又は新鮮水と一緒に、フード16から取り出された高温空気18によって加熱されることができる。
【0048】
その他の点では、この実施形態は少なくともほぼ、図1に示した実施形態と同じ構造を有しており、互いに対応する部材には同じ符号が使用されている。
【0049】
図4には、熱回収システムの別の実施形態のフローチャートが示されており、この実施形態は図3に示した実施形態と主として次の点で異なっている。すなわち図4に示した実施形態では、付加的に第2の熱交換器32を用いて、フード16から取り出された高温空気18によって新鮮空気34が加熱され、このようにして加熱された新鮮空気34′は、後置された乾燥ゾーン12の乾燥シリンダ14に配属されたフード16に燃焼空気として供給される。
【0050】
図4の実施形態では、取り出された高温空気18は最初に、凝縮水22及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器20を通して、次いで、新鮮空気34を加熱するために設けられた第2の熱交換器32を通して案内され、その後で先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0051】
空気/空気式熱交換器である第2の熱交換器32はこの実施形態においても、有利には貫流調整可能なバイパス38を、フード16から取り出された高温空気18のために備えていることができる。
【0052】
その他の点では、この実施形態は少なくともほぼ、図3に示した実施形態と同じ構造を有しており、互いに対応する部材には同じ符号が使用されている。
【0053】
図5には、熱回収システムの別の実施形態のフローチャートが示されており、この実施形態は図4に示した実施形態と主として次の点で異なっている。すなわち図5に示した実施形態では、フード16から取り出された高温空気18は最初に、新鮮空気34を加熱するために設けられた第2の熱交換器32を通して、次いで、凝縮水22及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器20を通して案内され、その後で、先行する乾燥ゾーン10に供給される。
【0054】
その他の点では、この実施形態は少なくともほぼ、図4に示した実施形態と同じ構造を有しており、互いに対応する部材には同じ符号が使用されている。
【0055】
以下に記載の表には具体的な例が示されており、この例は、後置された乾燥ゾーン12のシリンダ14に配属されたフード又は乾燥フード16の排気のエネルギ含有量に対応する、蒸気発生のためのポテンシャルを示している。生ぜしめられた蒸気は少なくとも部分的に、特に、先行する乾燥ゾーン10に配属された蒸気ブローボックスにおいて又はヤンキー乾燥機において使用される。この場合例えば、熱回収のために単に第1の熱交換器20だけが設けられている、図3に示した実施形態の熱回収システムを前提としている。
【0056】
表に示した例における前提条件は以下の通りである:
・ヤンキーフードの排気の温度:360℃
・ヤンキーフードの排気の水分:450g水/kg空気
・熱回収(WR)後におけるヤンキーフードの排気の温度:250℃
・ヤンキーフードの排気流:6.45kg/s
・凝縮水圧:15バール
・熱回収前の凝縮水温度:110℃
・熱回収後の凝縮水温度:183℃
・膨張気化によって発生した蒸気の圧力:3バール。
【0057】
【表1】

蒸気発生ポテンシャルは、この例では、3バールの圧力において蒸気2020kg/Hである。
【符号の説明】
【0058】
10 先行する乾燥ゾーン、 12 後置された乾燥ゾーン、 14 乾燥シリンダ、 16 フード、乾燥フード、 18 高温空気、 18′ 高温空気、 20 第1の熱交換器、 22 凝縮水、 22′ 凝縮水、 24 蒸気、 26 蒸気分離器、 28 ポンプ、 30 蒸気発生器、 32 第2の熱交換器、 34 新鮮空気、 34′ 新鮮空気、 36 膨張気化装置、 38 バイパス、 40 フード、乾燥フード、 42 吸込み装置、サクションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを乾燥させる方法であって、走行する繊維材料ウェブに、先行する乾燥ゾーン(10)の領域において蒸気及び高温多湿の空気を供給し、繊維材料ウェブを、先行する乾燥ゾーン(10)の後で、特にヤンキーシリンダである乾燥シリンダ(14)と該乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)とを有する後置された乾燥ゾーン(12)に供給する形式の方法において、
後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)から、高温空気(18)、特に排気を取り出し、先行する乾燥ゾーン(10)のための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器(20)を用いて、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)において発生した凝縮水(22)及び/又は新鮮水を、フード(16)から取り出された高温空気(18)によって加熱し、かつ/又は先行する乾燥ゾーン(10)のための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フード(16)から取り出されて第1の熱交換器(20)を通して案内された高温空気(18)を、先行する乾燥ゾーン(10)に供給することを特徴とする、繊維材料ウェブを乾燥させる方法。
【請求項2】
第1の熱交換器(20)を用いて、供給される凝縮水(22)及び/又は新鮮水から蒸気(24)を発生させて、該蒸気(24)を先行する乾燥ゾーン(10)に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の熱交換器(20)を用いて加熱された凝縮水(22)及び/又は新鮮水を、第1の熱交換器(20)に続けて、膨張気化装置(36)に供給し、該膨張気化装置(36)によって生ぜしめられた蒸気(24)を、先行する乾燥ゾーン(12)に供給する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
膨張気化時に発生した凝縮水(22′)を第1の熱交換器(20)に戻し、該第1の熱交換器(20)において、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)において発生した凝縮水(22)及び/又は新鮮水と一緒に、フード(16)から取り出された高温空気(18)によって加熱する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
第2の熱交換器(32)を用いて、フード(16)から取り出された高温空気(18)によって新鮮空気(34)を加熱し、このようにして加熱された新鮮空気(34′)を、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)に、燃焼空気及び/又は補給空気として供給する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
取り出された高温空気(18)を初めに、凝縮水(22)及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器(20)を通して、次いで、新鮮空気(34)を加熱するために設けられた第2の熱交換器(32)を通して案内し、その後で先行する乾燥ゾーン(10)に供給する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
フード(16)から取り出された高温空気(18)を初めに、新鮮空気(34)を加熱するために設けられた第2の熱交換器(32)を通して、次いで、凝縮水(22)及び/又は新鮮水を加熱するために設けられた第1の熱交換器(20)を通して案内し、その後で先行する乾燥ゾーン(10)に供給する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
繊維材料ウェブ、特に厚紙ウェブ、ペーパウェブ又は薄葉紙ウェブを製造する機械であって、先行する乾燥ゾーン(10)が設けられていて、該乾燥ゾーン(10)の領域において、走行する繊維材料ウェブに蒸気及び高温多湿の空気が供給可能であり、先行する乾燥ゾーン(10)に後置された、特にヤンキーシリンダである乾燥シリンダ(14)と該乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)とを有する別の乾燥ゾーン(12)が設けられている形式の機械、特に請求項1から7までのいずれか1項記載の方法を実施する機械において、
先行する乾燥ゾーン(10)のための蒸気の少なくとも一部を生ぜしめるために、第1の熱交換器(20)が設けられており、該第1の熱交換器(20)に、高温空気(18)、特に排気が、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)から供給されていて、フード(16)から取り出された高温空気(18)によって、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)において生じた凝縮水(22)及び/又は新鮮水が加熱され、かつ/又は先行する乾燥ゾーン(10)のための高温多湿の空気の少なくとも一部を生ぜしめるために、フード(16)から取り出されて第1の熱交換器(20)を通して案内された高温空気(18)が、先行する乾燥ゾーン(10)に供給されていることを特徴とする、繊維材料ウェブを製造する機械。
【請求項9】
先行する乾燥ゾーン(10)は、吸込み装置(42)、特にサクションローラを有していて、該吸込み装置(42)を介して繊維材料ウェブは、少なくとも1つの透過性のベルト、特に構造化されたベルト又はTADベルトと一緒に案内されており、初めに透過性のベルトが、次いで繊維材料ウェブが蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流される、請求項8記載の機械。
【請求項10】
繊維材料ウェブは、少なくとも1つの別の透過性のベルト、特にプレスベルトによって被われていて、初めに該別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流され、次いで第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが貫流され、その後で繊維材料ウェブが貫流される、請求項9記載の機械。
【請求項11】
繊維材料ウェブと一緒に付加的に脱水ベルト、特にフェルトベルトが、吸込み装置(42)を介して案内されていて、初めに、場合によっては別の透過性のベルトもしくはプレスベルトが、蒸気もしくは高温多湿の空気によって貫流され、次いで第1の透過性のベルトもしくは構造ベルトが貫流され、その後で繊維材料ウェブが貫流され、最後に付加的な脱水ベルトが貫流される、請求項9又は10記載の機械。
【請求項12】
先行する乾燥ゾーン(10)に、第1の熱交換器(20)を用いて、供給された凝縮水(22)及び/又は新鮮水から生ぜしめられた蒸気(24)が供給されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の機械。
【請求項13】
第1の熱交換器(20)を用いて加熱された凝縮水(22)及び/又は新鮮水が、膨張気化装置(36)に供給され、該膨張気化装置(36)によって生ぜしめられた蒸気(24)が、先行する乾燥ゾーン(10)に供給されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の機械。
【請求項14】
フード(16)から取り出された高温空気(18)によって新鮮空気(34)を加熱するために、第2の熱交換器(32)が設けられており、このようにして加熱された新鮮空気(34′)が、後置された乾燥ゾーン(12)の乾燥シリンダ(14)に配属されたフード(16)に燃焼空気及び/又は補給空気として供給されている、請求項8から13までのいずれか1項記載の機械。
【請求項15】
少なくとも1つの熱交換器(20,32)が、有利には貫流調整可能なバイパス(38)を、フード(16)から取り出された高温空気(18)のために備えている、請求項8から14までのいずれか1項記載の機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−517538(P2012−517538A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549506(P2011−549506)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050895
【国際公開番号】WO2010/091950
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(506408818)フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (52)
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D−89522 Heidenheim, Germany
【Fターム(参考)】