説明

繊維機械

【課題】パッケージの品質を低下させずに糸継作業を迅速に行うことができる繊維機械を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、糸を巻き取る巻取部と、巻取部に巻き取られる前の糸を貯留できるアキュムレータ61と、糸継作業を行うためのスプライサ装置14と、スプライサ装置14より下流側の糸端を捕捉してスプライサ装置14に案内するための下流側糸案内パイプ26と、を備える。下流側糸案内パイプ26は、前記糸端を捕捉する捕捉位置と、捕捉した糸端をスプライサ装置14に案内する案内位置と、の間で移動可能に構成されるとともに、通常時は前記捕捉位置の近傍で待機する。下流側糸案内パイプ26は、前記捕捉位置において、前記スプライサ装置14と前記アキュムレータ61との間に位置する糸を捕捉可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維機械に関するものであり、詳細には、糸継作業における糸端の捕捉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、糸継手段を備えた自動ワインダ(繊維機械)を開示する。特許文献1の自動ワインダは、下方に固定したボビンの糸を、綾振ドラムに圧接して回転するパッケージに巻き取るように構成されている。この自動ワインダにおいて、糸切れ時にはノッターあるいはスプライサ等の糸継装置に設けたサクションノズル及びサクションマウスを回動し、サクションノズルによってボビン側の下糸の糸端を吸引し把握するとともに、サクションマウスによってパッケージの表面の上糸の糸端を吸引し把握する。そして、サクションノズル及びサクションマウスを回動させることで、両方の糸を糸継手段に導入して糸継ぎを行っている。また、特許文献1の自動ワインダにおいては、綾振装置は綾振り幅を変更可能に構成されるとともに、前記サクションマウスの開口幅を最大の綾振り幅とほぼ等しく設定している。
【特許文献1】実開平5−3269号公報
【0003】
また、上記のような構成とは別に、糸切れが発生したときに巻取作業を中断させることなく糸継作業を行う糸巻取機が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示された糸巻取機は、給糸ボビンから引き出された糸を貯留容器に貯留し、糸切れが発生したときには、貯留された糸を使用して糸継作業を行って巻取作業を継続する。
【特許文献2】米国特許第3314621号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにパッケージの表面上の糸端をサクションマウスによって吸引捕捉する構成の場合、サクションマウスの吸引力によってパッケージの表面部分が引っ張られて綾乱れが発生することがあった。また、パッケージでの糸端の捕捉時に端面落ち等が生じて糸継作業がスムーズに行えないこともあった。また、サクションマウスの開口幅を幅広に形成しているため、吸引捕捉に大きな圧力が必要となり、負圧源の容量の増大やランニングコストの上昇等の原因となっていた。
【0005】
また、特許文献2が開示する糸巻取機は、貯留された糸を使用して糸継作業を行ってパッケージの巻取作業を継続できるものの、糸端の捕捉の効率化という観点から改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッケージの品質を低下させずに、糸継作業を迅速に行うことができる繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の繊維機械が提供される。即ち、この繊維機械は、巻取部と、糸貯留装置と、糸継手段と、糸捕捉手段と、を備える。前記巻取部は糸を巻き取る。前記糸貯留装置は前記巻取部に巻き取られる前の糸を貯留できる。前記糸継手段は、糸継作業を行うために、前記糸貯留装置の上流側に配置される。前記糸捕捉手段は、前記糸継手段より下流側の糸端を捕捉して前記糸継手段に案内する。この糸捕捉手段は、前記糸端を捕捉する捕捉位置と、捕捉した糸端を前記糸継手段に案内する案内位置と、の間で移動可能に構成されるとともに、通常時は前記捕捉位置又はその近傍で待機する。そして、繊維機械は、前記捕捉位置の前記糸捕捉手段によって、前記糸継手段と前記糸貯留装置との間に位置する糸を捕捉可能に構成されている。
【0009】
これにより、糸継作業が必要になった場合、捕捉位置での糸の捕捉を糸捕捉手段が素早く開始することができる。従って、糸継作業のサイクルタイムを短縮することができ、繊維機械の稼動効率を向上させることができる。また、巻取部による巻取りを継続しながら、糸貯留装置から糸を引き出して糸継作業を行うことができる。更に、糸継作業に必要な糸は巻取部ではなく糸貯留装置から引き出されるので、巻取部で巻き取る糸が乱れるなどの悪影響を抑制し、又はゼロにすることができる。
【0010】
前記の繊維機械においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記繊維機械の前記巻取部は糸を綾振りしながら巻き取るように構成されている。前記糸捕捉手段は、糸を吸引捕捉するための吸引口を有する。前記吸引口は、前記巻取部の綾振幅より小さい幅で形成される。
【0011】
これにより、吸引口を小さくできるので、糸捕捉手段を容易に小型化できるとともに、吸引捕捉に必要な圧力を低減して省エネルギーを実現することができる。
【0012】
前記の繊維機械においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記糸貯留装置は、導入される糸の経路を案内するための導入案内部を有する。前記捕捉位置は、前記導入案内部の近傍である。
【0013】
これにより、糸貯留装置に導入される糸の経路を導入案内部が案内(規制)することによって、糸継作業時において糸端を一定の狭い領域に存在させることができる。従って、小型の吸引口でも糸端の捕捉を容易に行うことができ、捕捉成功率を向上させることができる。
【0014】
前記の繊維機械においては、前記糸捕捉手段は、前記糸継手段を囲むループ状の軌跡を描いて、前記捕捉位置から前記案内位置を経由して前記捕捉位置又はその近傍に戻ることが好ましい。
【0015】
これにより、糸捕捉手段は糸を糸継手段に案内した後、糸継手段の反対側に回り込むようにして、案内位置から通常時の位置に戻ることができる。従って、糸継手段による糸継ぎが完了した後でも、糸と干渉することなく糸捕捉手段を通常時の位置に戻すことができる。
【0016】
前記の繊維機械においては、前記糸捕捉手段は360度回転可能に構成されることが好ましい。
【0017】
これにより、前記糸捕捉手段を回転させる簡易な構成で、糸捕捉手段を糸に干渉することなく移動させることができる。
【0018】
前記の繊維機械においては、前記糸継手段の上流側の糸端を捕捉して前記糸継手段に案内するための上流側糸捕捉手段を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、下流側の糸端を糸捕捉手段によって迅速に捕捉して糸継手段に案内するとともに、上流側の糸端を上流側糸捕捉手段によって捕捉して糸継手段に案内することができる。従って、糸継作業を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備える巻取ユニット10の概略的な構成を示した正面図である。図2は巻取ユニット10の側面図である。
【0021】
図1及び図2に示す巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダ(繊維機械)は、並べて配置された複数の巻取ユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。図2に示すように、それぞれの巻取ユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム19と、このユニットフレーム19の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0022】
図1に示すように、前記巻取ユニット本体16は、給糸部5と、糸継部6と、糸欠陥検出部7と、糸貯留部8と、巻取部9と、を備えている。なお、以下の説明では、糸20の走行方向上流側及び下流側を単に「上流側」「下流側」と称する場合がある。
【0023】
給糸部5は、給糸ボビン保持部60と、糸解舒補助装置12と、第1テンサ41と、を備える。
【0024】
給糸ボビン保持部60は、糸20を供給するための給糸ボビン21を交換してセットできるように構成されている。この給糸ボビン保持部60には、新たな給糸ボビン21を当該給糸ボビン保持部60へ供給するための図略のボビン供給装置が接続されている。このボビン供給装置としては、例えばマガジン式の供給装置やトレイ式の供給装置を採用することができる。
【0025】
前記給糸部5は、給糸ボビン保持部60にセットされている給糸ボビン21から糸20が全て引き出されて空ボビンとなると、当該空ボビンを給糸ボビン保持部60から排出する。前記ボビン供給装置は、空ボビンを排出した給糸ボビン保持部60に対し、新しい給糸ボビン21を順次供給することができる。
【0026】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には、前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられている。前記センサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させる制御が行われる。
【0027】
糸解舒補助装置12の近傍には、糸20の有無を検知可能なヤーンフィーラ(上流側糸検出センサ)37が設けられている。このヤーンフィーラ37は、給糸ボビン21から引き出される糸20が無くなったことを検出して、ユニット制御部50に糸無し検出信号を送信できるように構成されている。
【0028】
第1テンサ41は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。この第1テンサ41としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、図略のロータリ式のソレノイドにより回動することができる。なお、この第1テンサはゲート式のものに限らず、例えばディスク式のテンサを使用することもできる。
【0029】
糸継部6は、前記給糸部5の下流側に配置される。また、糸継部6は、糸端を捕捉して糸継ぎするための糸継ユニット11を備える。この糸継ユニット11は、スプライサ装置(糸継手段)14と、下流側糸案内パイプ(糸捕捉手段)26と、上流側糸案内パイプ(上流側糸捕捉手段)25と、を備えている。
【0030】
スプライサ装置14は、後述のクリアラ15が糸欠陥を検出したとき、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の上流側糸と、パッケージ30側の下流側糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0031】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の上流側糸を捕捉して案内する上流側糸案内パイプ25と、パッケージ30側の下流側糸を捕捉して案内する下流側糸案内パイプ26と、が設けられている。
【0032】
下流側糸案内パイプ26は、下流側糸を捕捉するための捕捉位置と、捕捉した下流側糸をスプライサ装置14へ案内するための案内位置と、の間で移動可能となるように構成されている。
【0033】
この下流側糸案内パイプ26は、給糸ボビン21からの糸20を巻取部9で巻き取っているとき(通常時)は、前記捕捉位置の近傍(図2の実線で示す位置)で待機している。一方、糸継作業時には、下流側糸案内パイプ26はアキュムレータ61側の糸(下流側糸)を捕捉した状態で案内位置(図2の鎖線の位置)まで軸35を中心として回動することで、当該糸を上流側に引き出してスプライサ装置14に案内できるように構成されている。そして、スプライサ装置14に下流側糸を受け渡した後は、下流側糸案内パイプ26はスプライサ装置14の背面側に回り込むように回動し、通常時の位置に戻ることができる。このように、下流側糸案内パイプ26は軸35を中心として360度回転可能に構成されており、その先端が側面視で前記スプライサ装置14を囲む円形ループ状の軌跡(図2を参照)を描くようにして、通常時の待機位置から1回転して再び待機位置へ戻ることができるように構成されている。
【0034】
上流側糸案内パイプ25は、上流側糸を捕捉するための捕捉位置(図2の実線の位置)と、捕捉した上流側糸をスプライサ装置14へ案内するための案内位置(図2の鎖線)と、の間で移動可能となるように構成されている。この上流側糸案内パイプ25は、軸33を中心としてスプライサ装置14の正面側で所定の角度範囲で往復回動可能に取り付けられている。
【0035】
上流側糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、同様に下流側糸案内パイプ26の先端にも吸引口34が形成されている。上流側糸案内パイプ25及び下流側糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及び吸引口34に吸引流を作用させることができる。
【0036】
糸欠陥検出部7は、前記糸継部6の下流側に配置される。この糸欠陥検出部7は、走行する糸20の太さを監視するクリアラ(糸欠陥検出器)15を備えている。
【0037】
クリアラ15は適宜のセンサを備えており、このセンサからの信号をアナライザ52で処理することで、スラブ等の糸欠陥を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、糸20の走行速度を検知するセンサ、及び、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。
【0038】
クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠陥を検出したときに糸を切断するためのカッタ(糸切断手段)18が配置されている。また、クリアラ15の下流側には、走行中の糸にワックス付けをするためのワキシング装置17が配置されている。更に、ワキシング装置17の下流側には図略の吸引部が備えられている。この吸引部は適宜の負圧源に接続され、ワックスの滓や糸屑等を吸引除去することができる。
【0039】
糸貯留部8は、前記糸欠陥検出部7の下流側に配置される。また、糸貯留部8は、給糸ボビン21から解舒された糸20を貯留可能なアキュムレータ(糸貯留装置)61を備えている。給糸ボビン21から解舒された糸20はアキュムレータ61に貯留され、その後、アキュムレータ61から引き出されてパッケージ30に巻き取られる。
【0040】
前記アキュムレータ61は、貯留した糸20を上流側及び下流側の両方に同時に引き出すことができるように構成されている。この構成により、貯留されている糸20をパッケージ30に巻き取らせるのと並行して、給糸ボビン21側にも糸20を引き出して糸継作業を行うことができる。なお、アキュムレータ61の構成の詳細については後述する。
【0041】
巻取部9は、前記糸貯留部8の下流側に配置される。また、巻取部9は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、第2テンサ42と、を備える。
【0042】
クレードル23は巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、糸20の巻取りに伴うパッケージ30の径の増大を吸収することができる。前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20がトラバースされる。これにより、所定の巻幅のパッケージ30を形成することができる。
【0043】
第2テンサ42はアキュムレータ61の下流側に配置されており、アキュムレータ61から糸20が解舒される際に発生するテンションを制御するものである。これによって、アキュムレータ61から引き出された糸は適宜のテンションが付与された状態で巻取ボビン22に巻き取られることになる。この第2テンサ42としては第1テンサ41と同様に、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものや、ディスク式のものを用いることができる。
【0044】
巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0045】
次に図3を参照してアキュムレータ61について説明する。図3は、アキュムレータ61の概略的な構成を示す模式断面図である。図3に示すように、アキュムレータ61は、回転軸ケーシング70と、貯留部71と、糸案内部72と、を備える。また、前記回転軸ケーシング70は、上方が開放された円筒状の筒部78と、この筒部78の開放側端部に形成された鍔部79と、を備えている。
【0046】
前記貯留部71は、前記鍔部79の上方に配置されている。この貯留部71は、円板状に形成される支持板81と、この支持板81から上方に突出する複数のロッド部材82と、この複数のロッド部材82の先端部分が接続される円板状の取付板83と、を備える。また、貯留部71は、前記支持板81と前記鍔部79との間に隙間を形成するように配置されており、この隙間の内部を後述の貯留ガイドアーム75が回転できるように構成されている。
【0047】
支持板81は水平に配置されるとともに、この支持板81の上面に、複数のロッド部材82が円周上に等間隔で並べて配置されている。前記貯留部71は、これらのロッド部材82によって略円筒形状を形成するように構成されている。この複数のロッド部材82で構成される略円筒形状の貯留部71の外周部分に糸20を巻き回すことによって、糸20が貯留部71に貯留されることになる。
【0048】
糸案内部72は、前記回転軸ケーシング70の内部に配置されている。回転軸ケーシング70において、前記筒部78の下部(貯留部71と反対側の端部)には導入孔(導入案内部)80が形成されており、給糸ボビン21から引き出された糸20は前記導入孔80から糸案内部72へ導かれるようになっている。
【0049】
前記筒部78の内部には回転軸73が配置され、この回転軸73は、前記回転軸ケーシング70及び貯留部71に対して相対回転可能に支持されている。この回転軸73と前記筒部78の間にはサーボモータ(糸貯留駆動部)55が組み込まれており、回転軸73を正転及び逆転させることができる。また、この回転軸73の中心には、軸孔状の糸通路74が形成されている。
【0050】
この回転軸73の一端(前記導入孔80と反対側の端部)には、円筒状に形成される貯留ガイドアーム(巻付手段)75が固定されている。この貯留ガイドアーム75は、上向きに若干傾斜しながら、回転軸ケーシング70(鍔部79)と支持板81との隙間を通過するようにして径方向に延び、その先端部分の一部が回転軸ケーシング70より若干飛び出すように構成されている。この貯留ガイドアーム75は回転軸73と一体的に回転するように構成される。また、貯留ガイドアーム75の内部は前記糸通路74と接続されている。
【0051】
以上の構成において、糸案内部72の導入孔80から回転軸ケーシング70内に導かれた糸20は、糸通路74及び貯留ガイドアーム75の内部を通って当該貯留ガイドアーム75の先端から排出されることで、前記貯留部71の側面部分に誘導される。従って、前記サーボモータ55を正方向に駆動すると、貯留ガイドアーム75が回転軸73とともに回転し、これによって前記側面部分に糸20が巻き回されることになる。また、アキュムレータ61から上流側に糸20を戻すときには、サーボモータ55をニュートラル(フリー回転可能)な状態とし、下流側糸案内パイプ26が、下流側糸端を吸引捕捉した状態で下方に回転することによって、糸20を上流側に引き出す。このとき、糸20の引き出しに伴って貯留ガイドアーム75が回転軸73とともに糸を引き出す方向に回転し、サーボモータ55は、糸20を糸プール部71に巻き取る駆動方向に対して反対方向に逆回転させられる。
【0052】
前記貯留部71において複数配置されるロッド部材82のそれぞれは、支持板81側の端部から取付板83側の端部へ近づくに従って貯留部71の内側方向へ傾斜するように配置されている。糸20には前記第1テンサ41によって一定のテンションが付与されているので、前記ロッド部材82の傾斜によって、貯留部71に巻き付けられた糸は上方に滑るように自然に移動する。従って、前記貯留ガイドアーム75によって糸20が連続して巻き付けられると、前記傾斜部分に巻き取られた糸が上方へと移動していくので、ロッド部材82で構成される前記側面部分には糸20が螺旋状に整列した状態で貯留されることになる。
【0053】
なお、本実施形態では貯留ガイドアーム75の駆動部(糸貯留駆動部)としてサーボモータ55が使用されているので、貯留ガイドアーム75の回転の急停止又は加減速等を精密に行うことができる。これによって、貯留部71から糸20を上流側へ引き出す場合の引出量やそのタイミング等を正確に制御でき、糸継作業をよりスムーズに行うことができる。
【0054】
図1に示すように、巻取ユニット10は、貯留部71の上部に配置される第1貯留センサ76と、貯留部71の下部に配置される第2貯留センサ77と、を備えている。この2つの貯留センサ(糸貯留量検出手段)76,77は非接触型の光学センサ等で構成されており、それぞれがユニット制御部50に電気的に接続されている。
【0055】
第1貯留センサ76は、貯留部71を構成するロッド部材82の上端側に巻き付けられた糸を検出できるように貯留部71の上端側に配置され、アキュムレータ61の最大貯留状態を検知する。また、第2貯留センサ77は、ロッド部材82の下端側に巻かれた糸を検出できるように貯留部71の下流側に配置され、アキュムレータ61の糸貯留不足を検知する。ユニット制御部50は、第1貯留センサ76及び第2貯留センサ77からの糸検出信号に基づいて、サーボモータ55の回転速度(貯留部71への糸20の供給速度)を制御する。これによって、アキュムレータ61の糸貯留量を過不足が生じないように調節することができる。
【0056】
なお、アキュムレータ61において糸20が貯留部71に巻き付けられる速度(換言すれば、貯留部71への糸供給速度)は、糸の巻取を開始した時点では、時間とともに増加するパッケージ30の糸巻取速度と等しい速度又はそれよりも速い速度になるように制御される。そして、巻取開始から所定時間が過ぎ、糸継作業時に必要な糸量がアキュムレータ61に貯留されたときには、パッケージ30の糸巻取速度と等しい速度で糸を貯留部71に巻き付け、アキュムレータ61に貯留された糸量を維持させるように制御される。なお、糸継作業時に必要な糸量とは、後述するスプライサ装置14での糸継作業のためにアキュムレータ61から上流側へ引き出される糸量に、当該糸継作業と並行して行われるパッケージ30への巻取のためにアキュムレータ61から下流側へ引き出される糸量を加算したものである。貯留部71においては、この必要な糸量以上の糸を貯留した状態を常に維持することが好ましい。
【0057】
前記アキュムレータ61の貯留部71から解舒された糸20は、巻取ドラム24により駆動されるパッケージ30に巻き取られる。そして、このときに第2テンサ42が糸20へ付与するテンションは、ユニット制御部50により巻取速度に応じて制御される。
【0058】
次に、図4及び図5を参照して、下流側糸案内パイプ26の位置の制御について説明する。図4は、待機位置の下流側糸案内パイプ26とアキュムレータ61との位置関係を詳細に示す正面側からの斜視図である。図5は、糸継作業時の下流側糸案内パイプ26及び上流側糸案内パイプ25の位置関係を示した正面図である。なお、本明細書において「待機位置」とは、糸継作業が開始されるまでの通常の巻取作業において下流側糸案内パイプ26が保持されている位置をいう。
【0059】
下流側糸案内パイプ26が待機位置に保持されているときは、図4に示すように、その先端部がアキュムレータ61の筒部78の下方近傍に位置している。下流側糸案内パイプ26は、走行する糸20に対して装置の背面側で待機しており、糸継作業時には正面側へ倒れるように下方回動することで、糸20を捕捉してスプライサ装置14まで案内する。アキュムレータ61と、クリアラ15との間で糸端を捕捉するように捕捉位置が設定されているので、糸端がアキュムレータ61内部に入り込んでしまう前に糸の捕捉をすることができる。
【0060】
下流側糸案内パイプ26の先端部には、クランプ部65が取り付けられている。クランプ部65はカバー状に形成されており、下流側糸案内パイプ26の先端部を囲うように下流側糸案内パイプ26に装着されている。また、クランプ部65には、下流側糸案内パイプ26の先端面に密着して吸引口34を塞ぐことが可能なクランプ壁が形成されている。
【0061】
クランプ部65は下流側糸案内パイプ26に回動可能に支持されており、前記クランプ壁が下流側糸案内パイプ26の先端面に密着して吸引口34を塞ぐ閉鎖位置と、吸引口34を開放する開放位置と、の間で切り替えることができる。このクランプ部65には図略の付勢バネが取り付けられており、この付勢バネは前記クランプ部65を閉鎖位置側へ常時付勢している。
【0062】
図4に示すように、アキュムレータ61の筒部78の下部には、板状に形成されるカム部67が支持棒を介して取り付けられている。また、前記クランプ部65には凸部66が形成されており、この凸部66が前記カム部67に接触して押されることで、クランプ部65が閉鎖位置から開放位置に切り替わるように構成されている。
【0063】
この構成で、下流側糸案内パイプ26が待機位置にあるとき、凸部66とカム部67とは離間している。そして、この待機位置から下流側糸案内パイプ26が装置正面側へ回動し、その先端が糸20に近づくのとほぼ同時に、凸部66がカム部67に接触し、クランプ部65が開放位置側に押されて吸引口34が開放される。なお、待機位置において前記凸部66と前記カム部67とを最初から接触させ、常に吸引口34を開放させる構成とすることもできる。
【0064】
次に、クリアラ15が糸欠陥を検出したときの糸継作業について説明する。クリアラ15は、糸太さの監視により糸欠陥を検出すると、ユニット制御部50に糸欠陥検出信号を送信する。この糸欠陥検出信号に基づき、前記ユニット制御部50は前記カッタ18を操作して、糸20を切断する。同時にユニット制御部50は、アキュムレータ61のサーボモータ55を停止させることにより、貯留ガイドアーム75の回転を停止させる。これにより、下流側糸の糸端は、アキュムレータ61の導入孔80より下方で停止させられる。
【0065】
次にユニット制御部50は、前記待機位置で保持されていた下流側糸案内パイプ26を、捕捉位置を経由して図2の鎖線で示す案内位置まで下方回動させる。これによって、クリアラ15によって検出された糸欠陥の部分が貯留部71から解舒されて、アキュムレータ61より上流側へ戻される。
【0066】
すると、下流側糸案内パイプ26が捕捉位置へ移動する直前に、アキュムレータ61に配置されたカム部67とクランプ部65の凸部66とが接触し、吸引口34が開放される。これによって吸引口34の近傍に吸引流が作用するので、導入孔80から垂れ下がった状態の糸端が吸引口34に吸引捕捉される。下流側糸案内パイプ26が更に回動し、捕捉位置を離れるのとほぼ同時に、カム部67による凸部66の押圧が解除され、クランプ部65は前記付勢バネによって再び閉鎖位置に戻る。このとき、糸端の一部が吸引口34に吸い込まれているので、下流側糸案内パイプ26の先端部分とクランプ部65とに糸端が挟まれた状態となる。
【0067】
上記に示したように、下流側糸案内パイプ26が捕捉位置を通過するのに連動して、クランプ部65が閉鎖位置から開放位置へ切り替わって再び閉鎖位置へと戻る一連の動作が行われる。従って、下流側糸案内パイプ26を捕捉位置で停止させる制御は必ずしも必要でなく、捕捉位置を通過する瞬間に糸を素早く捕捉して、ノンストップでスプライサ装置14まで下流側糸を案内することができる。なお、吸引捕捉を確実に行うために、捕捉位置でいったん停止するように制御することも可能である。
【0068】
糸端をクランプした下流側糸案内パイプ26は、図2において鎖線で示す案内位置まで回動し、いったん停止する。次に、上流側糸案内パイプ25が待機位置で上流側糸を吸引捕捉し、図5に鎖線で示す案内位置まで回動する。この回動によって、スプライサ装置14に上流側糸が案内される。
【0069】
上流側糸案内パイプ25及び下流側糸案内パイプ26によって上流側の糸端と下流側の糸端とがスプライサ装置14に案内されると、スプライサ装置14によって糸継作業が開始される。糸欠陥を含む下流側糸の糸端部は、スプライサ装置14のカッタにより切断される。
【0070】
スプライサ装置14に下流側糸を引き渡した下流側糸案内パイプ26は、図2の鎖線で示す案内位置からスプライサ装置14の背面側に回り込むように回動して、待機位置へと戻る。この際、スプライサ装置14下方に配置された図略のカム部によってクランプ部65が開放位置へ移動するので、クランプ部65によるニップが解除され、切断された糸端が下流側糸案内パイプ26内に吸引除去される。
【0071】
スプライサ装置14による糸継作業の完了後は、下流側糸案内パイプ26が待機位置へ戻るのを待たずに、アキュムレータ61への糸20の貯留が再開される。この結果、スプライサ装置14の正面側に糸20の走行経路が形成される。下流側糸案内パイプ26はスプライサ装置14の背面側に回り込むように回動するので、スプライサ装置14の正面側に走行する糸20に干渉することなくスムーズに待機位置へと戻ることができる。一方、上流側糸案内パイプ25は、スプライサ装置14に上流側糸を引き渡した後、スプライサ装置14の正面側を通って待機位置へと戻る。
【0072】
上記の糸継作業はパッケージ30への糸20の巻取作業と並行して行われるので、巻取ドラム24を停止及び逆転させることなく糸欠陥を除去することができる。糸継作業が終了すると、サーボモータ55は正転を開始してアキュムレータ61への糸の供給を再開する。前記糸継作業によって消費された糸量を回復させるため、貯留部71への糸20の供給速度は、パッケージ30の巻取速度よりも大きくなるよう制御される。所定量の糸が貯留されると、ユニット制御部50はアキュムレータ61への糸の供給速度をパッケージ30の糸巻取速度と等しい速度に戻す。
【0073】
次に、給糸ボビン21の交換時の糸継動作を説明する。給糸ボビン21から供給される糸が無くなったことを前記ヤーンフィーラ37が検出すると、当該ヤーンフィーラ37は糸無し検出信号をユニット制御部50に送信する。この糸無し検出信号を受信したユニット制御部50は、アキュムレータ61への糸の供給を停止させる。このとき、サーボモータ55を停止させるタイミングを調節して糸端が所定の位置に止まるようにすると、糸の捕捉が容易になり、更に糸の無駄を抑制できて好ましい。
【0074】
そして、ユニット制御部50は、下流側糸案内パイプ26を回動させてアキュムレータ61入口近傍の糸20を吸引捕捉するとともに、この状態で前記案内位置まで下方回動させることにより、スプライサ装置14に下流側糸を導く。下流側糸をスプライサ装置14に導いた後は、下流側糸案内パイプ26はスプライサ装置14の背面側に回り込んで待機位置へと回動する。なお、この下流側糸案内パイプ26の回動については糸欠陥検出時と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
前記ボビン供給装置によって新しい給糸ボビン21が供給されると、その新しい給糸ボビン21側の糸は、上流側糸案内パイプ25によってスプライサ装置14まで導かれる。そして、下流側糸と上流側糸とをスプライサ装置14で糸継ぎした後、サーボモータ55を制御して、糸20が貯留される方向に貯留ガイドアーム75を回転させる。
【0076】
糸継作業はパッケージ30への糸の巻取作業と並行して行われるので、巻取ドラム24を停止及び逆転させることなく、給糸ボビン21の交換を行うことができる。糸継作業が終了すると、サーボモータ55は正転を開始して、新しい給糸ボビン21の糸20をアキュムレータ61へ供給する。
【0077】
以上に示すように、本実施形態の自動ワインダは、巻取部9と、アキュムレータ61と、スプライサ装置14と、下流側糸案内パイプ26と、を備える。巻取部9は糸を巻き取る。アキュムレータ61は、巻取部9に巻き取られる前の糸を貯留できる。スプライサ装置14は、糸継作業を行うために、アキュムレータ61の上流側に配置される。下流側糸案内パイプ26は、スプライサ装置14より下流側の糸端を捕捉してスプライサ装置14に案内する。この下流側糸案内パイプ26は、前記糸端を捕捉する捕捉位置と、捕捉した糸端をスプライサ装置14に案内する案内位置と、の間で移動可能に構成されるとともに、通常時は前記捕捉位置の近傍で待機する。そして、自動ワインダは、前記捕捉位置の下流側糸案内パイプ26によって、スプライサ装置14とアキュムレータ61との間に位置する糸を捕捉可能に構成されている。
【0078】
これにより、糸継作業が必要になった場合、下流側糸案内パイプ26が捕捉位置へ短時間で移動し、糸の捕捉を素早く開始することができる。従って、糸継作業のサイクルタイムを短縮することができ、巻取ユニット10が生産するパッケージ30の生産効率を向上させることができる。また、巻取部9による巻取りを継続しながら、アキュムレータ61から糸を引き出して糸継作業を行うことができる。また、糸継作業に必要な糸は巻取部9ではなくアキュムレータ61から引き出されるので、従来の構成のように、サクションマウスによってパッケージの表面が引っ張られて綾乱れが生じたり、パッケージに端面落ちが生じたりすることもない。このように、糸継作業がパッケージ30の巻取に与える悪影響を抑制し、又はゼロにすることができる。更に、巻取部9では連続的に巻取作業が行われるので、パッケージの巻状態を一定とすることができ、高品質なパッケージを形成することができる。
【0079】
また、本実施形態において、自動ワインダが備える巻取部9は、巻取ドラム24の綾振溝27によって糸を綾振りしながら巻き取るように構成されている。下流側糸案内パイプ26は、糸を吸引捕捉するための吸引口34を有する。前記吸引口34は、前記巻取部9の綾振幅より小さい幅で形成される。
【0080】
これにより、吸引口34を従来のサクションマウスのようにパッケージ30の巻幅全体を含むように幅広状に構成する必要がなくなるので、下流側糸案内パイプ26をコンパクトに構成することができる。また、吸引口34を小さくできるので、吸引捕捉に必要な圧力を低減して省エネルギーを実現することができる。
【0081】
また、本実施形態において、前記アキュムレータ61は、導入される糸の経路を案内するための導入孔80を有する。前記捕捉位置は、導入孔80近傍である。糸継作業時においては、前記導入孔80の近傍の糸を下流側糸案内パイプ26の吸引口34が捕捉する。
【0082】
これにより、アキュムレータ61に導入される糸20の経路を導入孔80が案内(規制)することによって、糸継作業時では、アキュムレータ61の導入孔80の下方の狭い領域に糸端を存在させることができる。従って、小型の吸引口34でも糸端の捕捉を容易に行うことができ、捕捉成功率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態の自動ワインダが備える下流側糸案内パイプ26は、図2に示すように、その先端がスプライサ装置14を囲むループ状の軌跡を描くようにして、前記捕捉位置から前記案内位置を経由して前記捕捉位置又はその近傍に戻るように構成されている。
【0084】
これにより、下流側糸案内パイプ26は糸をスプライサ装置14に案内した後、スプライサ装置14の背面側を回り込むように案内位置から通常時の位置に戻ることができる。従って、糸継手段による糸継ぎ後も、糸と干渉することなく下流側糸案内パイプ26を通常時の位置に戻すことができる。
【0085】
また、本実施形態の自動ワインダが備える下流側糸案内パイプ26は、360度回転可能に構成される。
【0086】
これにより、下流側糸案内パイプ26を回転させる簡易な構成で、捕捉位置から案内位置を経由して捕捉位置の近傍まで糸と干渉することなく移動できる構成を実現できる。
【0087】
また、本実施形態の自動ワインダは、スプライサ装置14の上流側の糸端を捕捉して前記スプライサ装置14に案内するための上流側糸案内パイプ25を備える。
【0088】
これにより、下流側の糸端を下流側糸案内パイプ26によって迅速に捕捉してスプライサ装置14に案内するとともに、上流側の糸端を上流側糸案内パイプ25によって捕捉してスプライサ装置14に案内することができる。従って、糸継作業を迅速に行うことができる。
【0089】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0090】
上記実施形態では、下流側糸案内パイプ26は、アキュムレータ61に糸が導入される部分の背面側で待機している。しかしながら、アキュムレータ61近傍であれば、下流側糸案内パイプ26の待機位置を適宜変更することができる。例えば、糸を捕捉する捕捉位置で下流側糸案内パイプ26を待機させることができる。これにより、糸継作業が開始されて糸を捕捉するまでの時間を短縮することができるので、糸継作業を一層効率化できる。
【0091】
また、上記実施形態の構成に代えて、給糸ボビン21の糸が無くなったことをヤーンフィーラ37が検知した場合に、アキュムレータ61への糸の供給を停止する代わりに供給速度を減速させる構成に変更することができる。即ち、糸が完全に停止しなくても、アキュムレータ61に糸端が完全に引き込まれる前に下流側糸案内パイプ26で捕捉することができれば、糸継作業のために糸をスプライサ装置14まで案内することが可能である。これにより、給糸ボビン21の糸20が無くなったときに、下流側ではパッケージ30の巻取を継続しながら、アキュムレータ61よりも上流の位置で糸端を容易に捕捉して新しい給糸ボビンの糸と糸継ぎすることができる。
【0092】
また、上記実施形態は、糸欠陥検出時において糸の切断はアキュムレータ61から糸を引き出した直後に行われる構成であるが、糸欠陥部分をアキュムレータ61から引き出した後の任意のタイミングで糸を切断するように変更することができる。
【0093】
また、本発明は、自動ワインダに限定されず、他の各種の繊維機械に適用することができる。例えば、スライバから糸を紡績して所定長のパッケージを形成する紡績機に本発明を適用することができる。
【0094】
本発明を適用した紡績機としては、例えば以下のような構成が考えられる。即ち、この紡績機は、ケーシングと、複数の紡績ユニットと、ブロアボックスと、原動機ボックスとを備える。各紡績ユニットは、ドラフト装置と、紡績装置と、糸送り装置と、糸貯留装置と、巻取装置と、を主要な構成として備える。ドラフト装置は紡績機本体のケーシングの上端近傍に設けられており、このドラフト装置から送られてくる繊維束を紡績装置で紡績する。紡績装置によって紡績された糸は糸送り装置で下方の糸貯留装置へ送られ、糸貯留装置にいったん貯留される。糸貯留装置に貯留された糸は巻取装置によって更にパッケージに巻き取られる。また、紡績装置と、糸貯留装置の間には糸の欠陥を検出して糸切断を行い、糸欠陥部分を除去するためのクリアラが備えられる。
【0095】
そして、紡績機は、糸継作業を行うための糸継手段と、糸継手段の上流側の糸を案内するための上流側糸案内手段と、糸継手段の下流側の糸を案内するための下流側糸案内手段と、を備える。前記下流側糸捕捉手段は前記糸貯留装置近傍を待機位置とする。この構成で、糸欠陥の検出やスライバの交換のために糸継作業の必要が生じた場合には、糸貯留装置側の糸端を前記下流側糸捕捉手段で捕捉して糸継手段に案内するとともに、紡績装置側の糸端を上流側糸捕捉手段で捕捉して糸継手段に案内する。そして、案内された上流側の糸端と下流側の糸端とを糸継手段で糸継ぎする。この際、巻取作業は停止することなく継続されるので紡績機の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備える巻取ユニットの概略的な構成を示した正面図。
【図2】巻取ユニットの概略的な構成を示した側面図。
【図3】アキュムレータの様子を示した模式断面図。
【図4】待機位置の下流側糸案内パイプとアキュムレータとの位置関係を示した斜視図。
【図5】糸継作業時の下流側糸案内パイプ及び上流側糸案内パイプの位置関係を示した正面図。
【符号の説明】
【0097】
10 巻取ユニット
14 スプライサ装置(糸継手段)
20 糸
21 給糸ボビン
25 上流側糸案内パイプ(上流側糸捕捉手段)
26 下流側糸案内パイプ(糸捕捉手段)
30 パッケージ
61 アキュムレータ(糸貯留装置)
80 導入孔(導入案内部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取る巻取部と、
前記巻取部に巻き取られる前の糸を貯留できる糸貯留装置と、
糸継作業を行うために、前記糸貯留装置の上流側に配置される糸継手段と、
前記糸継手段より下流側の糸端を捕捉して前記糸継手段に案内するために、前記糸端を捕捉する捕捉位置と、捕捉した糸端を前記糸継手段に案内する案内位置と、の間で移動可能に構成されるとともに、通常時は前記捕捉位置又はその近傍で待機する糸捕捉手段と、
を備え、
前記捕捉位置の前記糸捕捉手段によって、前記糸継手段と前記糸貯留装置との間に位置する糸を捕捉可能に構成されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記巻取部は糸を綾振りしながら巻き取るように構成されており、
前記糸捕捉手段は、糸を吸引捕捉するための吸引口を有し、
前記吸引口は、前記巻取部の綾振幅より小さい幅で形成されることを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維機械であって、
前記糸貯留装置は、導入される糸の経路を案内するための導入案内部を有し、
前記捕捉位置は、前記導入案内部の近傍であることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記糸捕捉手段は、前記糸継手段を囲むループ状の軌跡を描いて、前記捕捉位置から前記案内位置を経由して前記捕捉位置又はその近傍に戻ることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維機械であって、
前記糸捕捉手段は360度回転可能に構成されることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記糸継手段の上流側の糸端を捕捉して前記糸継手段に案内するための上流側糸捕捉手段を備えることを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−47360(P2010−47360A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212734(P2008−212734)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】