説明

繊維用紫外線吸収剤、機能性繊維製品及びその製造方法

【課題】繊維製品に耐洗濯性のある良好な紫外線吸収性、柔軟性と吸水性を与える繊維用紫外線吸収剤を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール化合物及び特定の構造を有するジフェニルアクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種と非イオン界面活性剤とを含む繊維用紫外線吸収剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品に耐洗濯性のある良好な紫外線吸収性、柔軟性及び吸水性を与える繊維用紫外線吸収剤、該紫外線吸収剤で処理してなる機能性繊維製品及び該機能性繊維製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の紫外線による劣化や色相変化を防止する目的で、紫外線吸収剤による処理が行われている。また、近年ではオゾン層破壊による紫外線量増加にともない皮膚への悪影響が懸念されており、人体の紫外線暴露量を低減する目的で繊維製品への紫外線吸収剤の処理の要求が高まっており、各種の紫外線吸収剤が使用されている(特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、特許文献1にあるような化合物は高融点の紫外線吸収剤であり、この化合物の水分散物を繊維製品に処理した場合に柔軟性の低下(ざらつき感の発現)、吸水性の低下が起こるという問題がある。また、この化合物の水分散物をパッド法にて繊維製品に処理した場合には、乾燥後に繊維製品の表面に固形の紫外線吸収剤の粉末が発生し、残留するという問題がある。粉末の発生を防止するためには紫外線吸収剤を極低濃度でしか使用することができず、十分な紫外線吸収効果を得ることはできない。さらに、固形の紫外線吸収剤は特有の着色があり、繊維製品に処理した場合に色相が変化するという問題がある。
【0004】
また、特許文献2にあるようなポリマータイプの紫外線吸収剤では、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収効果が得られるものの、処理後の風合いが硬くなり、吸水性も低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−175783号公報
【特許文献2】特開平4―316679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き事情に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収剤に特有の着色による色相変化がなく、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収性に加え、耐洗濯性のある良好な柔軟性と吸水性とを併せ持った繊維用紫外線吸収剤を提供することを目的とする。
【0007】
さらに該紫外線吸収剤で処理してなる機能性繊維製品及び該機能性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する化合物と特定の界面活性剤とを含む紫外線吸収剤で繊維製品を処理した場合、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収性に加え、特定の化合物の化学構造からは予想外の柔軟性と吸水性とを併せ持ち、さらに紫外線吸収剤に特有の着色による繊維製品の色相変化のない機能性繊維製品が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の事項1)〜6)からなる。
1)(a)下記一般式1及び2で表される化合物の少なくとも1種と(b)非イオン界面活性剤とを含む繊維用紫外線吸収剤。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは水素又はハロゲンを表し、Rは炭素数4〜22のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数4〜22のアルコキシカルボニルエチル基を表し、Rのアルキル基の炭素数とRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数との合計は10〜30であり、Rのアルキル基及びRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の少なくとも一方は炭素数8以上であり、Rのアルキル基の炭素数がRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数以下である場合にはRのアルキル基及びRのアルキル基は分岐アルキル基であり、Rのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基は分岐アルキルのアルコキシ基である)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基又はアルケニル基を表す)
【0014】
2)前記一般式1で表される化合物が、Rが水素であり、Rが3´位又は4´位にあるn−ドデシル基であり、Rがメチル基である化合物、Rが水素であり、Rが3´位にあるt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物、及びRが塩素であり、Rが3´位にあるt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物の群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1)に記載の繊維用紫外線吸収剤。
【0015】
3)前記一般式2で表される化合物が、Rが2−エチルヘキシル基である化合物であることを特徴とする上記1)に記載の繊維用紫外線吸収剤。
【0016】
4)(a)一般式1及び2で表される化合物の少なくとも1種と(b)非イオン界面活性剤との配合比率(質量基準)が(a):(b)=100:10〜20である上記1)〜3)のいずれかに記載の繊維用紫外線吸収剤。
【0017】
5)上記1)〜4)のいずれかに記載の繊維用紫外線吸収剤で処理してなる機能性繊維製品。
【0018】
6)上記1)〜4)のいずれかに記載の繊維用紫外線吸収剤を含む処理液で繊維製品を処理することを特徴とする機能性繊維製品の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収性、柔軟性及び吸水性を持った機能性繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好ましい態様について説明する。
前記一般式1で表される化合物において、Rで表される炭素数4〜22のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、イソテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、セチル基、イソヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、n−エイコシル基、イソエイコシル基、n−ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ベヘニル基、イソベヘニル基などを挙げることができる。これらのうちでは、紫外線吸収剤の着色の観点から、炭素数4〜18のアルキル基であることが好ましい。
【0021】
で表される炭素数1〜22のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、イソテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、セチル基、イソヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、n−エイコシル基、イソエイコシル基、n−ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ベヘニル基、イソベヘニル基などを挙げることができる。
【0022】
炭素数4〜22のアルコキシカルボニルエチル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、n−ブチルオキシカルボニルエチル基、イソブチルオキシカルボニルエチル基、t−ブチルオキシカルボニルエチル基、n−ペンチルオキシカルボニルエチル基、イソペンチルオキシカルボニルエチル基、n−ヘキシルオキシカルボニルエチル基、イソヘキシルオキシカルボニルエチル基、n−ヘプチルオキシカルボニルエチル基、イソヘプチルオキシカルボニルエチル基、n−オクチルオキシカルボニルエチル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基、n−ノニルオキシカルボニルエチル基、イソノニルオキシカルボニルエチル基、n−デシルオキシカルボニルエチル基、イソデシルオキシカルボニルエチル基、n−ウンデシルオキシカルボニルエチル基、イソウンデシルオキシカルボニルエチル基、n−ドデシルルオキシカルボニルエチル基、イソドデシルオキシカルボニルエチル基、n−トリデシルオキシカルボニルエチル基、イソトリデシルオキシカルボニルエチル基、n−テトラデシルオキシカルボニルエチル基、イソテトラデシルオキシカルボニルエチル基、n−ペンタデシルオキシカルボニルエチル基、イソペンタデシルオキシカルボニルエチル基、n−ヘキサデシルオキシカルボニルエチル基、イソヘキサデシルオキシカルボニルエチル基、n−ヘプタデシルオキシカルボニルエチル基、イソヘプタデシルオキシカルボニルエチル基、n−オクタデシルオキシカルボニルエチル基、イソオクタデシルオキシカルボニルエチル基、n−ノナデシルオキシカルボニルエチル基、イソノナデシルオキシカルボニルエチル基、n−エイコシルオキシカルボニルエチル基、イソエイコシルオキシカルボニルエチル基、n−ヘンエイコシルオキシカルボニルエチル基、イソヘンエイコシルオキシカルボニルエチル基、n−ドコシルオキシカルボニルエチル基、イソドコシルオキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。
【0023】
ここで、Rで表されるアルキル基の炭素数とRで表されるアルキル基又はRで表されるアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数との合計は10〜30である。この合計が10〜30の範囲以外の場合、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性、柔軟性、吸水性が劣る傾向がある。得られる機能性繊維製品のより良好な耐洗濯性、柔軟性、吸水性の観点からは、Rのアルキル基とRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数との合計は12〜26であることが好ましい。
【0024】
また、Rのアルキル基及びRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の少なくとも一方は炭素数8以上である。それらの両方の炭素数が8未満である場合には、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性、柔軟性、吸水性が劣る傾向にある。
【0025】
さらに、Rのアルキル基の炭素数がRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数以下である場合にはRのアルキル基及びRのアルキル基は分岐アルキル基であり、Rのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基は分岐アルキルのアルコキシ基である。
【0026】
本発明において、一般式1の化合物は、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性、柔軟性、吸水性の観点から、Rが水素であり、Rが3´位または4´位にあってn−ドデシル基であり、Rがメチル基である化合物、Rが水素であり、Rが3´位にあってt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物、及びRが塩素であり、Rが3´位にあってt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物の群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0027】
また、一般式2で表される化合物において、Rで表される炭素数4〜22のアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、イソテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、セチル基、イソヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、n−エイコシル基、イソエイコシル基、n−ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ベヘニル基、イソベヘニル基などを挙げることができる。
【0028】
炭素数4〜22のアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、オレイル基、リノレイル基、リノレニル基、リシノレイル基などを挙げることができる。
【0029】
なかでも、Rは、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性、柔軟性、吸水性の観点から、炭素数4〜22の分岐のアルキル基であるのが好ましく、2−エチルヘキシル基であるのがより好ましい。
【0030】
本発明において、一般式1及び2で表される化合物は、疎水性であることが好ましい。ここで、疎水性とは、20℃100gのイオン交換水に化合物1gを添加して混合した場合に溶解もしくは乳化分散しないことをいう。疎水性でない場合、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性が劣る傾向にある。
【0031】
また、一般式1及び2で表される化合物は、20℃において液状であることが好ましい。ここで、液状とは、20℃でBH形粘度計(トキメック社製)を用いて測定した粘度が50,000mPa・s以下であることをいう。本発明では、粘度が50,000〜100mPa・sのものを使用することができ、なかでも20,000〜100mPa・sの粘度のものが好ましく、10,000〜1,000mPa・sがより好ましい。粘度が50,000mPa・sを超える場合は取り扱いが困難になる傾向があり、100mPa・s未満の場合は耐洗濯性が劣る傾向がある。
【0032】
このような疎水性で液状の化合物は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0033】
一般式1及び2で表される化合物としては、市販品を使用することができ、例えば、Kemisorb71D(ケミプロ化成株式会社製)、Eversorb81、Eversorb109(以上台湾永光化学工業股ふん有限公司製)、Seesorb502(シプロ化成株式会社製)、Tinuvin571、Tinuvin171、Tinuvin109、Tinuvin99−2、Tinuvin384−2(以上ハンツマン社製)、Chisorb336(DOUBLE BOND CHEMICAL IND., CO., LTD)などが挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる非イオン界面活性剤としては、アルコール類、多環フェノール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類及びポリプロピレングリコールの、アルキレンオキサイド付加物などを挙げることができる。
【0035】
アルコール類としては、直鎖もしくは分岐鎖の、炭素数8〜24のアルコール又はアルケノールなどであり、例えば、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エルシルアルコール、エライジルアルコール、パルミトレイルアルコールなどが挙げられる。
【0036】
多環フェノール類としては、例えば、フェノール、2−クミルフェノール、3−クミルフェノール、4−クミルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、クレゾール、ブチルデノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどの1価のフェノール類;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどの2価のフェノール類;ピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)などの3価のフェノール類;テトラヒドロキシベンゼンなどの4価のフェノール類;もしくはそれらのスチレン類(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン)付加物またはベンジルクロライド反応物などのフェノール類を挙げることができる。
【0037】
アミン類としては、直鎖もしくは分岐鎖の、炭素数8〜44の脂肪族アミンなどがあり、例えば、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヤシアルキルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、イソステアリルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミン、リノレイルアミン、エルシルアミン、エライジルアミン、パルミトレイルアミン、ジヤシアルキルアミン、ジステアリルアミンなどが挙げられる。
【0038】
アミド類としては、直鎖もしくは分岐鎖の、炭素数8〜44の脂肪酸アミドなどがあり、例えば、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、イソステアリン酸アミドなどが挙げられる。
【0039】
脂肪酸類としては、直鎖もしくは分岐鎖の、炭素数8〜24の脂肪酸などがあり、例えば、カプリル酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
【0040】
多価アルコール脂肪酸エステル類としては、多価アルコールと直鎖もしくは分岐鎖の炭素数8〜24の脂肪酸との縮合反応物を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、砂糖などを挙げることができる。
【0041】
油脂類としては、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、ナタネ油、オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油、トール油などの植物性油脂;牛脂、豚脂、サメ肝油、マッコウ鯨油などの動物性油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウなどの植物性ロウ;ミツロウ、ラノリンなどの動物性ロウ;モンタンロウなどの鉱物ロウ;牛脂硬化油、ヒマシ硬化油などの硬化油などが挙げられる。
【0042】
なかでも、得られる繊維用紫外線吸収剤の乳化分散性と安定性の観点から、アルコール類と多環フェノール類が好ましく、多環フェノール類がより好ましい。なかでも、フェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール又は2−ナフトールの、(3〜8モル)スチレン付加物、(3〜8モル)α−メチルスチレン付加物又は(3〜8モル)ベンジルクロライド反応物がさらに好ましい。
【0043】
スチレン類の付加は、例えば、フェノール類にスチレン類を120〜150℃で1〜10時間反応させることで得ることができる。フェノール類とスチレン類のモル比は1:1〜10、好ましくは1:3〜8であってよい。
【0044】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリンなどが挙げられる。なかでも、繊維用紫外線吸収剤の乳化分散性と安定性の観点から、エチレンオキサイド、1,2−プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがより好ましい。
【0045】
アルキレンオキサイドの付加方法としては、エチレンオキサイドを単独で付加する方法、エチレンオキサイド付加後にプロピレンオキサイドを付加する方法又はプロピレンオキサイド付加後にエチレンオキサイドを付加する方法などのブロック付加方法、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合物を付加するランダム付加方法などが挙げられるが、好ましくはエチレンオキサイドを単独で付加する方法である。
【0046】
アルキレンオキサイドの付加は、例えば、上記のアルコール類、多環フェノール類、アミン類、アミド類、脂肪酸類、多価アルコール脂肪酸エステル類、油脂類又はポリプロピレングリコールの1モルに、エチレンオキサイド10〜50モルを130〜170℃で付加させることにより行うことができる。
【0047】
アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜200が好ましく、より好ましくは10〜100であり、さらにより好ましくは10〜50である。アルキレンオキサイドの付加モル数が1モルより少ないと、繊維用紫外線吸収剤の乳化安定性が悪くなる傾向にあり、200モルを超えると機能性繊維製品の耐洗濯性が悪くなる傾向にある。
【0048】
本発明では、非イオン界面活性剤として、HLBが10〜18の非イオン界面活性剤を使用した場合に、良好な乳化分散液が得られる傾向がある。
【0049】
この場合、1種類の非イオン界面活性剤を使用してもかまわないし、2種以上の非イオン界面活性剤を組み合わせて用いても良い。また、HLBが10〜18以外の非イオン界面活性剤を組み合わせてHLBを10〜18の範囲としてもかまわない。HLBが12〜16の場合により好ましく、HLBが13〜15である場合にさらに好ましい。ここで、HLBは、グリフィンのHLBによるものであり、親水基とはエチレンオキサイド基をいう。
【0050】
本発明においては、繊維用紫外線吸収剤の乳化安定性を向上させる目的で、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤を併用することができる。併用することができるアニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、前述の非イオン界面活性剤のアニオン化物、直鎖もしくは分岐鎖の、炭素数8〜24のアルコール又はアルケノールのアニオン化物、油脂類のスルホン化物、アルキルベンゼンスルホン酸あるいはその塩などを挙げることができる。これらのアニオン界面活性剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0051】
併用することができるカチオン界面活性剤としては、特に制限はなく、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のアルキルイミダゾリン4級塩などが挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
非イオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の配合比率(質量基準)は、非イオン界面活性剤:アニオン界面活性剤=50:50〜100:0、好ましくは90:10〜100:0の範囲であってよい。アニオン界面活性剤が50質量%を超える場合、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性が低下する傾向にある。
【0053】
非イオン界面活性剤とカチオン界面活性剤の配合比率(質量基準)は、非イオン界面活性剤:カチオン界面活性剤=50:50〜100:0、好ましくは90:10〜100:0の範囲であってよい。カチオン界面活性剤が50質量%を超える場合、得られる機能性繊維製品の耐洗濯性が低下する傾向にある。
【0054】
一般式1及び2で表される化合物と非イオン界面活性剤の配合比率(質量基準)は、100:5〜100:30、好ましくは100:10〜100:20の範囲であってよい。界面活性剤が30質量%を超えると耐洗濯性が低下する傾向にあり。5質量%未満であると繊維用紫外線吸収剤の乳化分散性が低下する傾向にある。
【0055】
本発明の繊維用紫外線吸収剤の液状媒体としては、水又は水と水に混和する親水性溶剤との混合溶媒であることが好ましい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ブチルグリコール、ソルフィットなどが挙げられる。
【0056】
一般式1及び2で表される化合物は、本発明の繊維用紫外線吸収剤中に5〜50質量%の量で含まれることが好ましい。より好ましくは15〜35質量%である。5質量%未満であると良好な乳化分散液が得られない傾向にあり、50質量%を超える場合は高粘度となり取り扱いが困難になる傾向がある。
【0057】
本発明の繊維用紫外線吸収剤は、例えば、次のようにして製造することができる。一般式1及び2で表される化合物と非イオン界面活性剤(例えば、トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物)を70〜100℃に加熱しながら均一に混合し、そこに撹拌しながら徐々に0〜100℃の水〜熱水を添加していくのである。一般式1及び2で表される化合物と非イオン界面活性剤の混合物が20℃で均一な透明液状又は乳化分散液状となる場合は、ここに徐々に0℃〜100℃の水〜熱水を添加していくことで繊維用紫外線吸収剤を得ることができる。一般式1及び2で表される化合物は、好ましくは液状の化合物であるため、上記のような簡単な操作で乳化分散することができ、従来の固体の紫外線吸収剤を乳化分散する場合のようにビーズミルやボールミルなどの装置を用いて長時間微粒子化乳化分散する必要がない。
【0058】
得られた乳化分散液は、ホモミキサー(プライミクス(株)製)、ホモジナイザー(NIRO SOAVI社製)または(APV GAULIN社製)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)製)、アルチマイザー(株式会社スギノマシン製)、スターバースト(株式会社スギノマシン製)などの高圧乳化機で粒子を均一化することもできる。
【0059】
得られる繊維用紫外線吸収剤の粒子の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以下である。粒径が1μmを超えた場合、繊維用紫外線吸収剤の安定性が低下する傾向にある。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0060】
本発明の繊維用紫外線吸収剤は、従来公知の紫外線吸収剤を本発明の効果が阻害されない程度に併用または混合して用いても良い。
【0061】
また、本発明の繊維用紫外線吸収剤には、柔軟剤、平滑剤、浸透剤、分散均染剤、キレート剤、酸化防止剤、消泡剤、難燃剤、染料安定剤、フィックス剤、防皺剤、抗菌剤、抗かび剤、防虫剤、防汚剤、帯電防止剤、アミノプラスト樹脂、アクリルポリマー、グリオキザール樹脂、メラミン樹脂、天然ワックス、シリコーン樹脂、増粘剤、高分子化合物、架橋剤等を本発明の効果が阻害されない程度に配合することもさしつかえないし、本発明の繊維用紫外線吸収剤で繊維製品を処理する前後にあるいは同時にこれらの薬剤で処理してもよい。
【0062】
本発明の繊維用紫外線吸収剤による繊維製品の処理は、その方法には特に制限はなく、例えば、パッド法、浸漬法などの公知の方法にて実施することができる。パッド法の場合、処理浴の濃度は、一般式1及び2で表される化合物の濃度が、例えば、1〜30質量%の範囲であることが好ましい。また、浸漬法の場合は、処理浴の濃度は、一般式1及び2で表される化合物の濃度が、例えば、1〜30%o.w.f.の範囲であることが好ましい。繊維製品にパッド法、浸漬法で付与する場合、繊維質量に対して一般式1及び2で表される化合物を0.3〜10質量%を付与して使用することができる。0.3質量%未満では十分な紫外線吸収効果が発揮され難く、10質量%を超えて使用しても紫外線吸収効果の向上は少なく経済的ではない。
【0063】
パッド法の場合、繊維製品を処理液に浸漬し、マングルなどを用いて所定のピクアップ量に調整したのち乾燥することで、耐洗濯性が良好な機能性繊維製品を得ることができる。浸漬法の場合、通常一般に使用される染色機械、すなわち、ウインス、液流染色機、ジッカー、チーズ染色機、かせ染色機等を用いて、所定の温度で所定の時間処理を行ったのち脱水し、乾燥することで、耐洗濯性が良好な機能性繊維製品を得ることができる。乾燥する条件に特に制限はなく、例えば、0〜200℃で10秒〜数日間乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100℃以上の温度、好ましくは110〜180℃程度の温度で、10秒〜10分間、好ましくは30秒〜3分間程度加熱処理(キュアリング)してもよい。
【0064】
本発明の繊維用紫外線吸収剤は、繊維製品に単独で処理することができるが、染色加工、仕上げ加工などの工程で使用することもできる。この場合、染色加工浴や仕上げ加工浴に通常使用されている染料や無機又は有機の化学薬品が問題なく使用できる。
【0065】
本発明の繊維用紫外線吸収剤で処理し得る繊維製品の素材には特に限定はなく、種々の例を挙げることができる。例えば、綿、カポック、亜麻、苧麻、大麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、羊毛、カシミヤ、モヘア、アルパカ、ラクダ毛、絹、羽毛などの天然繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセルなどの再生繊維、酢酸セルロース繊維、プロミックスなどの半合成繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ベンゾエート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリイミド繊維などの合成繊維、石綿、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、チラノ繊維、無機ウィスカー、ロックファイバー、スラグファイバーなどの無機繊維、これらの複合繊維、混紡繊維などからなる繊維製品を挙げることができる。
【0066】
なかでも、綿、麻、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、テンセル(商標)などのセルロース繊維を含むセルロース系繊維であることが好ましい。セルロース系繊維の中には上記のセルロース繊維が30%以上含まれていることが好ましく、50%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。
【0067】
このように繊維製品として特にセルロース系繊維製品を使用することで、セルロース系繊維製品が本来持っている吸水性と柔軟性を阻害することなく耐洗濯性のある紫外線吸収効果を持った機能性繊維製品を得ることができる。
【0068】
また、繊維製品の形態に特に制限はなく、例えば、短繊維、長繊維、糸、織物、編物、わた、スライバー、トップ、不織布、合成紙などを挙げることができる。
【0069】
本発明に使用する一般式1及び2で表される化合物は疎水性であるにもかかわらず、繊維製品に処理した場合には良好な吸水性を発現する。この理由は定かではないが、一般式1及び2で表される化合物の一部が繊維製品の内部に吸収されることで、同時に水分が吸収されやすい状態になっているからであると考えられる。
【0070】
内部に吸収された一般式1及び2で表される化合物は、特定の粘度を持つ液状であるため、繊維同士の摩擦を低減し、良好な風合いを与えるものと考えられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例では、下記の薬剤を用いた。
【0072】
紫外線吸収剤1:Kemisorb71D(2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチル−3´−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾールと2−(2´−ヒドロキシ−5´−メチル−4´−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾールとの混合物)(ケミプロ化成株式会社製、20℃粘度=4600mPa・s)
【0073】
紫外線吸収剤2:Seesorb502(2´−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)(シプロ化成株式会社製、20℃粘度=4600mPa・s)
【0074】
紫外線吸収剤3:Eversolb81(ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、炭素数7〜9の分岐及び直鎖アルキルエステル)(台湾永光化学工業股ふん有限公司製)を使用した。
【0075】
紫外線吸収剤4:RUVA−93(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルメタクリレート)(大塚化学株式会社製)を使用した。
【0076】
紫外線吸収剤5:Seesorb703(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)(シプロ化成株式会社製)
【0077】
非イオン界面活性剤1:ニューコール610(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、HLB=13.8)(日本乳化剤株式会社製)
【0078】
アニオン界面活性剤1:エレミノールMON−7(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)(三洋化成工業株式会社製)
【0079】
アニオン界面活性剤2:(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)
98%硫酸(1.35モル)中にナフタレン(1モル)を70℃以下で添加し、撹拌溶解する。150〜160℃で3時間反応させた後、100℃以下に冷却し80℃の熱水を加え90質量%溶液とする。90〜95℃で37%ホルムアルデヒド水溶液(0.9モル)を添加し、次いで加圧下120〜125℃で2時間反応させる。冷却後、水で希釈し、アンモニア水でpH=8.5に中和して、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物を38質量%含む黒色液状組成物を得た。これをアニオン界面活性剤2とした。
【0080】
実施例1
一般式1で表される化合物として紫外線吸収剤1(300質量部)、非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤1(40質量部)を乳化容器に仕込み、撹拌混合しながら加熱昇温して80℃とする。その中に撹拌混合しながら80℃の熱水(660質量部)を徐々に加えた後、同温度にてホモジナイザー処理を行った。その後20℃まで冷却し、不揮発分34.0質量%で平均粒子径0.1μmの白色液状の繊維用紫外線吸収剤を得た。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0081】
実施例2
一般式2で表される化合物として紫外線吸収剤2(300質量部)、非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤1(40質量部)を乳化容器に仕込み、撹拌混合しながら加熱昇温して80℃とする。その中に撹拌混合しながら80℃の熱水(660質量部)を徐々に加えた後、同温度にてホモジナイザー処理を行った。その後20℃まで冷却し、不揮発分34.0質量%で平均粒子径0.1μmの白色液状の繊維用紫外線吸収剤を得た。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0082】
実施例3
一般式1で表される化合物として紫外線吸収剤3(300質量部)、非イオン界面活性剤として非イオン界面活性剤1(40質量部)を乳化容器に仕込み、撹拌混合しながら加熱昇温して80℃とする。その中に撹拌混合しながら80℃の熱水(660質量部)を徐々に加えた後、同温度にてホモジナイザー処理を行った。その後20℃まで冷却し、不揮発分34.0質量%で平均粒子径0.1μmの白色液状の繊維用紫外線吸収剤を得た。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0083】
比較例1:高分子紫外線吸収剤乳化分散物の調製
非イオン界面活性剤1(6質量部)、アニオン界面活性剤1(2質量部)、メタクリル酸メチル(10質量部)、水(29質量部)、紫外線吸収剤4(20質量部)を用い、窒素気流下に、95℃で30分間乳化を行った。
【0084】
次いで、過硫酸アンモニウム(0.2質量部)と水(38質量部)の水溶液を、前記反応容器に添加し、90℃で90分間反応を行い、不揮発分35.0質量%、平均粒子径0.3μm、質量平均分子量(Mw)350,000の白色液状の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤水乳化分散物を得た。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0085】
分子量の測定はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算校正曲線より測定した。測定条件は以下の通りである。
装置 :HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム :TSK−gel Super HZ2000 ×30cm 2本、
Super HZ4000 ×15cm 1本
流速 :0.70mL/min
試料濃度:0.1g/L
濾過 :0.45μm−Millex−LH(ミリポア)
注入量 :0.200mL
温度 :23℃
検出器 :示差屈折率検出器(東ソー製 RI−8020)
【0086】
比較例2:紫外線吸収剤乳化分散物の調製
紫外線吸収剤5(300質量部)、アニオン界面活性剤2(50質量部)、水(580質量部)を攪拌機で予備分散した後、五十嵐機械製造株式会社製サンドグラインダーで2時間分散撹拌処理して、不揮発分34.3質量%、平均粒子径0.4μmの微黄白色液状の紫外線吸収剤水乳化分散物を得た。平均粒径は、レーザ回折式/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)にて測定した。百分率積算値が50%の粒径(メジアン粒径)を平均粒径(μm)とした。
【0087】
実施例4
実施例1で得られた繊維用紫外線吸収剤を水で希釈して、固形分濃度1.7%の処理浴を調製した。これに綿ニット晒し布(シルケット加工済み漂白綿100%ニット、165g/m、株式会社色染社より購入)、ポリエステル織物精練布(ポリエステル100%タフタ布 株式会社谷頭商店より購入)及び6,6−ナイロン100%ジャージ(株式会社谷頭商店より購入)を浸漬し、ピックアップ率70%にてロールで絞り、120℃で2分間乾燥して機能性繊維製品を得た。
【0088】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995))10回前後での平均紫外線遮蔽率、吸水性、風合い、白度及び粉末発生の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
実施例5、6及び比較例3、4、5
実施例1の繊維用紫外線吸収剤を実施例2、3の繊維用紫外線吸収剤及び比較例1、2の乳化分散物及び水に換えた以外は実施例4と同様に操作して実施例5、6及び比較例3、4、5の機能性繊維製品を得た。
【0090】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995))10回前後での平均紫外線遮蔽率、吸水性、風合い、白度及び粉末発生の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
実施例7
実施例1で得られた繊維用紫外線吸収剤を水で希釈して、固形分濃度1.7g/Lの処理浴を調製した。この浴を用いて、ミニカラー染色機(テクサム技研株式会社製)にて、浴比=1:10で、綿ニット晒し布(シルケット加工済み漂白綿100%ニット、165g/m、株式会社色染社より購入)、ポリエステル織物精練布(ポリエステル100%タフタ布 株式会社谷頭商店より購入)及び6,6−ナイロン100%ジャージ(株式会社谷頭商店より購入)を浸漬処理後、水洗(1回)、乾燥(60℃×30分)して、機能性繊維製品を得た。
【0092】
綿ニット晒し布の場合浸漬処理は80℃で30分間行った。ポリエステル織物精練布の場合浸漬処理は130℃で30分間行った。6,6−ナイロン100%ジャージの場合浸漬処理は80℃で30分間行った。
【0093】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995))10回前後での平均紫外線遮蔽率、吸水性、風合い、白度の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0094】
実施例8、9及び比較例6、7、8
実施例1の繊維用紫外線吸収剤を実施例2、3の繊維用紫外線吸収剤及び比較例1、2の乳化分散物及び水に換えた以外は実施例7と同様に操作して実施例8、9及び比較例6、7、8の機能性繊維製品を得た。
【0095】
この機能性繊維製品の洗濯(JIS L 0217(1995))10回前後での平均紫外線遮蔽率、吸水性、風合い、白度の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0096】
評価試験
(1)紫外線吸収効果の評価
日立ハイテクノロジーズ製U−3000形分光光度計を用い、波長280〜390nmの範囲で各波長(5nm毎)の光の遮断率を測定し、その平均値を平均紫外線遮蔽率(UVカット率)とした。値が大きいほど紫外線遮蔽効果(紫外線吸収効果)が大きいと判断した。
【0097】
(2)吸水性の評価
JIS L 1907(滴下法)に従い、機能性繊維製品に水滴を1滴滴下し、水滴が完全に消失するまでの時間(秒)を測定した。水滴が消失するまでの時間が短いほど吸水性良好と判断した。
【0098】
ポリエステル織物精練布については180秒以内に水滴を吸収しなかったため、水滴の広がり度合いを目視にて判定した。水滴の広がり度合いが広いほど吸水性良好と判断した。
【0099】
(3)柔軟性の評価
柔軟性を触感にて評価した。柔軟性の評価は以下の基準に基づいて判定した。
S:非常に柔軟である
A:柔軟である
B:やや柔軟である
C:粗硬である
なお、AとBの中間位をABとして、BとCの中間位をBCとして表記する。
【0100】
(4)白度の測定
ミノルタ製積分球形光束計スペクトロフォトメーターCM−3700dを用い、白度を測定した。
【0101】
(5)粉末発生の評価
粉末発生の有無を目視にて評価した。
A:粉末発生が認められない
C:粉末発生が認められる
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1より、パッド法にて製造した本発明の機能性繊維製品は、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収効果、吸水性、柔軟性を示し、白度良好であったことがわかる。また、粉末発生が認められず良好であった。
【0105】
表2より、浸漬法にて製造した本発明の機能性繊維製品は、耐洗濯性のある良好な紫外線吸収効果、吸水性、柔軟性を示し、白度良好であったことがわかる。
これらは、処理方法にかかわらず良好な性能を示す結果を示すものであった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明により得られる機能性繊維製品は、優れた紫外線吸収効果を持ち、繊維の劣化、色相の変化、人体への紫外線の影響を低減することができる。さらに、本発明の機能性繊維製品は良好な風合いと吸水性を発現するため、スポーツウエアや直接肌に接する衣料(特にセルロース系繊維から成る衣料)に本発明の機能性繊維製品を応用することが好適である。また、本発明の機能性繊維製品は耐洗濯性があることから長期間にわたって上記の効果を発揮することができる。よって、本発明は、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式1及び2で表される化合物の少なくとも1種と(b)非イオン界面活性剤とを含む繊維用紫外線吸収剤。
【化1】

(式中、Rは水素又はハロゲンを表し、Rは炭素数4〜22のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数4〜22のアルコキシカルボニルエチル基を表し、Rのアルキル基の炭素数とRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数との合計は10〜30であり、Rのアルキル基及びRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の少なくとも一方は炭素数8以上であり、Rのアルキル基の炭素数がRのアルキル基又はRのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基の炭素数以下である場合にはRのアルキル基及びRのアルキル基は分岐アルキル基であり、Rのアルコキシカルボニルエチル基中のアルコキシ基は分岐アルキルのアルコキシ基である)
【化2】

(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基又はアルケニル基を表す)
【請求項2】
前記一般式1で表される化合物が、Rが水素であり、Rが3´位又は4´位にあるn−ドデシル基であり、Rがメチル基である化合物、Rが水素であり、Rが3´位にあるt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物、及びRが塩素であり、Rが3´位にあるt−ブチル基であり、Rが2−エチルヘキシルオキシカルボニルエチル基である化合物の群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の繊維用紫外線吸収剤。
【請求項3】
前記一般式2で表される化合物が、Rが2−エチルヘキシル基である化合物であることを特徴とする請求項1に記載の繊維用紫外線吸収剤。
【請求項4】
(a)一般式1及び2で表される化合物の少なくとも1種と(b)非イオン界面活性剤との配合比率(質量基準)が(a):(b)=100:10〜20である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維用紫外線吸収剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維用紫外線吸収剤で処理してなる機能性繊維製品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維用紫外線吸収剤を含む処理液で繊維製品を処理することを特徴とする機能性繊維製品の製造方法。

【公開番号】特開2012−167382(P2012−167382A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26498(P2011−26498)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】