説明

繊維製品の防染技術

【課題】 本発明は染料の選択が必要でなく、厳密な工程管理も必要とせず、なおかつ多重防染も可能な繊維製品の防染技術に関するものである。
【解決手段】 熱膨張性マイクロスフェアーを防染剤に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維製品の捺染加工における防染法に適用する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品の防染は次のような工業技術が実施されている。
【0003】
酸化剤、還元剤を使って染料を分解し繊維に染まらなくする科学的分解を利用する防染技術。
【0004】
活性炭、ゼオライトなどの吸着剤を捺染糊に含有させて、この捺染糊上に重ねた染料の吸着を利用する物理的防染技術。
【0005】
酸性で染まる染料には捺染糊にアルカリ性物質を含有した捺染糊を防染剤とし、アルカリ性で染まる染料は酸性物質を含有した捺染糊を防染剤とする技術。
【0006】
これらの防染技術は酸化剤又は還元剤で分解する染料と分解されない染料とに選択する必要がある。
又、吸着剤を利用する防抜染技術は防染効果に限界があり、酸性物質、アルカリ性物質を利用する防染技術は酸あるいはアルカリの滲み出しがありその使用量を厳密に管理しないと鮮鋭な防染柄が得られない。
【0007】
又、従来の防染技術では防染柄部分をさらに防染する多重防染柄は得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は染料の選択が必要でなく、厳密な工程管理も必要でない防染技術であって、なおかつ多重防染柄が得られる防染技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、防染剤として熱により発泡する薬品を利用する防染技術である。
防染糊に重ねて捺染された色糊が印捺された色糊が繊維に染着することを発砲層により遮断し防染する。
【0010】
熱により発泡する薬品としては、熱により分解し炭酸ガス、窒素ガス及び水蒸気を発生するアゾジカルボンアミド、ジニトロンペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジッドなどがある。
【0011】
又、熱により体積膨張するマイクロスフェアーがあり、本発明はこのマイクロスフェアーを防染剤に利用する。
本発明でいう熱膨張性マイクロスフェアーとはマツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬社製品名)やエクスパンセル(アクゾノーベル社製品名)として代表されるものである。
【0012】
本発明の防染剤は捺染糊にマイクロスフェアーを配合したものであり、捺染糊は、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、デンプン、グアガムなどが使用できる。
【0013】
さらに、捺染糊にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂などの合成樹脂を1種類又は数種類配合することもできる。
【0014】
本発明の防染剤は、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、及び界面活性剤を捺染作業性の改善、挿色染料の発色向上を目的に配合する事ができる。
【0015】
次に本発明の防染技術の工程について説明する。
本発明の防染剤をスクリーン型や彫刻ロールで防染柄を繊維製品に印捺し、次いで対象となる繊維製品に合わせた染料糊で防染柄を被うように印捺し、乾燥後蒸熱処理する。
【0016】
蒸熱処理が終了後、繊維製品に合わせた洗浄処理を行う。
【0017】
白色防染柄は本発明の防染剤に染料を配合しない。
【0018】
着色防染柄の場合は本発明の防染剤に対象となる繊維製品に合わせて染料を配合する。
【0019】
防染柄部分にも防染柄を表現する多重防染加工をする場合は、防染柄の上に別の柄の防染柄を重ねる事によって得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の防染剤は熱膨張性マイクロスフェアーを利用するもので、蒸熱処理中に防染剤の体積が膨張し、上に重ねた染料糊が繊維製品に届かなくなり防染するものである。従って、背景技術で示した染料の選択が必要でなく、防染剤の使用の厳密な管理も必要としない。
すなわち反応染料には反応染料防染剤、酸性染料には酸性染料防染剤、分散染料には分散染料防染剤といった使い分けを要しない。
【0021】
本発明の対象となる繊維製品は、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維、綿、麻、レーヨン等のセルロース繊維、ウール、シルク等のタンパク繊維に適用できる。
又、繊維製品の形態は織物、編物のどちらにも適用できる。
【発明を実施するための最良形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態について以下の実施例を通じて説明する。
【実施例1】
【0023】
アルギン酸ソーダ2%(重量%以下同じ)、グアガム6%、ウレタン樹脂乳液15%で構成された捺染糊に熱膨張マイクロスフェアーを20%、C.I.DISPERSE RED 88を2%配合してポリエステル用の着色防染剤を作成した。
ポリエステルデシンにこの着色防染剤をスクリーン型で水玉模様に捺染した。
【0024】
次にC.I.DISPERSE BLUE 214 4%の通常のポリエステル用捺染糊を作成し、水玉の防染柄の上に重ねて布帛全面に捺染した。
【0025】
この捺染布を175℃×7分の蒸熱処理して、通常のポリエステル洗浄条件で洗浄したところ、青色の中に鮮明な赤の水玉模様のある防染加工布が得られた。
【実施例2】
【0026】
アルギン酸ソーダ5%、尿素10%、重曹3%を含有する捺染糊に熱膨張マイクロスフェアーを10%配合した綿用の防染剤を作成し、これにC.I.REACTIVE YELLOW 85を2%配合した黄色の着色防染剤及び、C.I.REACTIVE GREEN 8を4%配合した緑の着色防染剤を作成した。
この着色防染剤を綿天竺にスクリーン型を使って黄色のストライプ柄の上に緑色のストライプ柄が交差するように捺染した。
【0027】
次にC.I.REACTIVE BLACK 8 10%の綿用の捺染糊を作成し、交差したストライプ柄の上に重ねて布帛全面に捺染した。
【0028】
この捺染された綿天竺を105℃×10分の蒸熱処理し、通常の反応染料の洗浄法で洗浄したところ、黒色の中に黄色と緑色のストライプ模様のある防染柄が得られた。
しかも、緑色のストライプ柄は黄色のストライプ柄で防染されている多重防染模様となっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱により膨張する薬品を含む捺染糊を防染剤として利用する繊維製品の防染加工。
【請求項2】
請求項1の熱により体積膨張する薬品として、発泡性マイクロスフェアーを3〜30重量パーセント含有する防染加工用捺染糊組成物。

【公開番号】特開2007−100285(P2007−100285A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322849(P2005−322849)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(591193679)林化学工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】