説明

繊維製品処理剤組成物

【課題】香気性アルコール由来のアルコキシ基を分子内に有するケイ素化合物の加水分解が抑制された繊維製品処理剤組成物並びに該ケイ素化合物の加水分解抑制方法の提供。
【解決手段】(a)一般式(1)で表されるケイ素化合物及び(b)分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基を3つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物を特定割合で含有し、特定のpH範囲を有する繊維製品処理剤組成物、並びに(b)成分を、(a)成分と併用する、pHが2〜6の水中での(a)成分の加水分解抑制方法。


〔式中、Xは、R1基、OR2基、OR3基又はOH基、Yは、X、−O−Si(X)3基又はOH基、R1基は炭素数1〜22の炭化水素基、R2は炭素数1〜4の炭化水素基、OR3基は炭素数6〜16の香気性アルコール由来のアルコキシ基、nは0〜15である。但し、分子中にOR3基を少なくとも一つ有する。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品処理剤組成物及びケイ素化合物の加水分解抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素化合物を用いて、香りの持続性を付与する技術、衣類の風合いを改善する技術が知られている。例えば特許文献1には特定のケイ素化合物、及び脂肪アルキル第4級アンモニウム化合物を含有し、編織物に長期間持続する香気を付与する編織物コンディショナー組成物、特許文献2には特定のケイ素化合物を含有し、編織物に長期間持続する香気を付与する芳香付与成分を含有する、洗浄剤組成物が開示されている。特許文献3には耐加水分解性に優れた特定のケイ酸エステルを含むケイ酸エステル混合物、及びそれらを含有する組成物が開示されている。特許文献4には炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基を3個以上有する第4級アンモニウム化合物が開示されている。
【特許文献1】特開昭54−59498号公報
【特許文献2】特開昭54−93006号公報
【特許文献3】特表2003−526644公報
【特許文献4】特開平10−77575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び特許文献2記載の特定のケイ素化合物は組成物中で加水分解を受け徐々に分解される課題がある。特許文献3には耐加水分解性に優れたケイ素化合物が開示されているが効果は十分でない。特許文献4には分子内に長鎖炭化水素基を3個有する柔軟仕上剤組成物が開示されているが、特定のケイ素化合物の加水分解を抑制することは記載されていない
本発明の課題は、香気性アルコール由来のアルコキシ基を分子内に有するケイ素化合物の加水分解が抑制された繊維製品処理剤組成物、並びに該ケイ素化合物の加水分解抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が0.1〜6質量%、(b)成分の含有量が1〜10質量%であり、組成物の20℃におけるpHが2〜6である繊維製品処理剤組成物、さらに(c)成分として、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基を1つ有するアミン化合物、又はその塩、又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する繊維製品処理剤組成物、並びに下記(b)成分を、下記(a)成分と併用する、20℃におけるpHが2〜6の水中での(a)成分の加水分解抑制方法を提供する。
(a)成分:下記一般式(1)で表されるケイ素化合物
【0005】
【化4】

【0006】
〔式中、Xはそれぞれ独立に、R1基、OR2基、OR3基又はOH基であり、Yはそれぞれ独立に、X、−O−Si(X)3基又はOH基であり、R1基は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い炭素数1〜22の炭化水素基、R2は炭素数1〜4の炭化水素基、OR3基は炭素数6〜16の香気性アルコール由来のアルコキシ基であり、nは0〜15の数であり、nが0より大きい場合には平均値を示す。但し、分子中にOR3基を少なくとも一つ有する。〕
(b)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基を3つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物
【発明の効果】
【0007】
本発明により、香気性アルコール由来のアルコキシ基を分子内に有するケイ素化合物の加水分解が抑制され、耐加水分解性に優れ、香りの持続性が良好な繊維製品処理剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、上記一般式(1)で表されるケイ素化合物である。一般式(1)において、R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い炭素数1〜22の炭化水素基を示すが、置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、nが0の場合には、炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基が更に好ましく、炭素数10〜18の直鎖アルキル基が更により好ましい。
【0009】
2は炭素数1〜4の炭化水素基を示すが、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
【0010】
OR3基は炭素数6〜16の香気性アルコール由来のアルコキシ基を示すが、炭素数6〜15の香気性アルコール由来のアルコキシ基が好ましく、炭素数6〜13の香気性アルコール由来のアルコキシ基がより好ましい。本発明における香気性アルコール由来のアルコキシ基とは香気性アルコールのアルコール性水酸基から水素原子を除いた基と定義する。
【0011】
香気性アルコールとしては、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、セスキテルペン系アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール又は合成サンダルが挙げられ、具体的には、以下のアルコールが挙げられる。
【0012】
<炭素数6のアルコール>
トランス−2−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノール
<炭素数7のアルコール>
ベンジルアルコール
<炭素数8のアルコール>
3−オクタノール、1−オクテンー3−オール、2−フェニルエチルアルコール、1−フェニルエチルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシ−5−メトキシトルエン
<炭素数9のアルコール>
2,4−ジメチル−2−ヘプタノール、トランス−2−シス−6−ノナジエノール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、4−イソプロピルシクロヘキサノール、3−フェニル−2−プロペン−1−オール、3−フェニルプロピルアルコール
<炭素数10のアルコール>
9−デセノール、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オール、3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オール、3,7−ジメチル−シス−2,6−オクタジエン−1−オール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール、2−メチル−6−メチレン−7−オクテン−2−オール、2−イソプロペニル−5−メチル−4−ヘキセン−1−オール、3,7−ジメチルオクタノール、3,7−ジメチルオクタンー3−オール、2,6−ジメチル−7−オクテン−2−オール、3,7−ジメチル−4,6−オクタジエン−3−オール、p−メンタン−8−オール、1−p−メンテン−4−オール、p−メンタン−3−オール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[1,2,2−]ヘプタン−2−オール、p−メンス−8−エン−3−オール、4−イソプロピルシクロヘキサンメタノール、p−t−ブチルシクロヘキサノール、o−t−ブチルシクロヘキサノール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、2−プロピル−5−メチルフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−4−アリールフェノール、2−メトキシ−4−(1−プロペニル)−フェノール
<炭素数11のアルコール>
4−メチル−3−デセン−5−オール、10−ウンデセノール、6,6−ジメチル−ビシクロ−[3,1,1]−2−ヘプテン−2−エタノール、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)−エタノール、4−フェニル−2−メチル−2−ブタノール、5−プロペニル−2−エトキシフェノール
<炭素数12のアルコール>
2,2−ジメチル−3−(3−メチルフェニル)−プロパノール、1−フェニル−3−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール、3,7−ジメチル−7−メトキシオクタン−2−オール
<炭素数13のアルコール>
2,5,5−トリメチル−1,2,3,4,4α,5,6,7−オクタヒドロ−2−ネフタレノール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ブタン−1−オール
<炭素数14のアルコール>
1−(2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール、α,β−2,2,6−ペンタメチルシクロヘキシルプロパノール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−ペンタン−2−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール
<炭素数15のアルコール>
3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン−3−オール、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−12−オール、(−)−α−ビサボロール、セドロール、パチュリアルコール、ベチベロール、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール、サンタロール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール
<炭素数16のアルコール>
イソボニルシクロヘキサノール
これらの香気性アルコールの中では、トランス−2−ヘキセノール、シス−3−ヘキセノール、2−フェニルエチルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、p−メンタン−3−オール、3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オール、3,7−ジメチル−シス−2,6−オクタジエン−1−オール、4−イソプロピルシクロヘキサンメタノール、3,7−ジメチルオクタノール、3,7−ジメチル−6−オクテン−1−オール、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール、3−フェニル−2−プロペン−1−オール、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−12−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−イソプロペニル−5−メチル−4−ヘキセン−1−オールが好ましい。
【0013】
特に好ましくは、シス−3−ヘキセノール、2−フェニルエチルアルコール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オールである。
【0014】
一般式(1)において、nが0の場合には、4個のXのうち2〜4個、好ましくは3又は4個が−OR3であり、残りが−R1 若しくは―OR2である化合物が好適である。
【0015】
n=0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が挙げられる。より好ましい化合物は式(1−1)又は(1−3)で表される化合物であり、最も好ましくは式(1−1)で表される化合物である。
【0016】
【化5】

【0017】
〔式中、R1、R2及びR3は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合には、nは平均値を示し、全てのX及びYに対して、1/10以上、好ましくは1/8以上が−OR3であり、残りが−R1又は−OR2である化合物が特に好ましい。nとしては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0018】
nが1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−4)〜(1−6)で表される化合物が挙げられる。より好ましい化合物は式(1−4)又は(1−6)で表される化合物であり、最も好ましくは式(1−4)で表される化合物である。
【0019】
【化6】

【0020】
〔式中、R1、R2及びR3は前記と同じ意味を示す。mは1〜15の数を示し、Tは、−OR3又は−OR2を示す。〕
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物は、下記の方法により合成することができる。
【0021】
方法1:
テトラエトキシシランやアルキルトリエトキシシラン、ジアルキルジエトキシシラン等の炭素数1〜4のアルコキシシラン類とOR3基を有する香気性アルコールとのエステル交換反応。
【0022】
方法2:
テトラクロロシランやアルキルトリクロロシラン等のハロゲン化シラン類とOR3基を有する香気性アルコールとのエステル化反応。
【0023】
方法1において、エステル交換されるアルコキシ基としては、入手性等の点からメトキシ基又はエトキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0024】
方法1のアルコキシシランとOR3基を有する香気性アルコールとのエステル交換反応において、アルコキシシランに対して加える香気性アルコールのモル比により置換度が異なる反応物を与え、アルコキシシランのアルコキシ基に対する香気性アルコールのモル比は(香気性アルコール)/(アルコキシシランのアルコキシ基)=0.55〜10が好ましく、0.55〜5がより好ましく、0.6〜4が更に好ましく、0.7〜3が更により好ましい。
【0025】
方法1におけるエステル交換反応の反応温度は、アルコキシシラン及び香気性アルコールの沸点以下が好ましく、室温(20℃)〜200℃がより好ましく、50〜170℃が更に好ましく、70〜150℃が更により好ましく、90〜130℃が特に好ましい。
【0026】
方法1におけるエステル交換反応は、減圧下で行うことが、反応を速やかに進行させることができる等の点から好ましい。減圧度は反応温度にもよるが、アルコキシシラン及び香気性アルコールの沸点以下で行えばよく、1.3Pa〜常圧(0.1MPa)が好ましく、130Pa〜40kPaがより好ましく、1.3kPa〜13kPaが更に好ましい。反応は反応初期から減圧下で行っても、途中から減圧下で行っても良い。
【0027】
方法1におけるエステル交換反応は、触媒を添加することが、反応を速やかに進行させることができる等の点から好ましい。触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ触媒や、アルミニウムテトライソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド等のルイス酸触媒を用いることができる。
【0028】
方法2のハロゲン化シランにおいて、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0029】
方法2のハロゲン化シランとOR3基を有する香気性アルコールとのエステル化反応において、ハロゲン化シランに対して加える香気性アルコールのモル比により置換度が異なる反応物を与え、ハロゲン化シランに対する香気性アルコールのモル比は(香気性アルコール)/(ハロゲン化シランのハロゲン基)=0.55〜10が好ましく、0.55〜5がより好ましく、0.6〜4が更に好ましく、0.7〜3が更により好ましい。
【0030】
方法2においては反応の進行に伴い酸が副生するため塩基を加えて反応することが好ましい。用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン等の3級アミンやピリジン等が挙げられる。
【0031】
方法2のエステル化反応では多量の塩副生等の点から、溶媒を用いても良く、反応温度は、基質や溶媒が凝固しない低温で行うこともできる。反応終了後、溶媒を除去する必要がある場合には、各種公知の装置・設備を用いることができ、また脱塩には濾過や抽出、電機透析等、公知の方法を用いることができる。
【0032】
方法1のエステル交換反応、方法2のエステル化反応で得られる一般式(1)で表されるケイ素化合物は、他に置換度の異なる混合物があっても、さらにシロキサンが縮合した鎖状または環状の重・縮合物との混合物であっても良い。また、方法1のエステル交換反応、方法2におけるエステル化反応は、2種以上のOR3基を有する香気性アルコールを混合して用いても、2種以上のR1で示される炭化水素基を持つアルコキシシラン又はハロゲン化シランを用いても良い。
【0033】
[(b)成分]
本発明の(b)成分は、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基を3つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、一般式(2)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
〔式中、R21基、R22基及びR23基はそれぞれ独立に、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基である。〕
前記一般式(2)において、R21基、R22基及びR23基としては、それぞれ独立に下記(i)〜(iii)に示す基が好ましい。
(i)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜22、好ましくは14〜20の飽和炭化水素基
(ii)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜22、好ましくは14〜20の二重結合を1個以上有する不飽和炭化水素基
(iii)上記基(i)及び基(ii)が混在するもの
(b)成分は、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、アルカノールアミン又はアミノアルキルアミン等のアミンとを、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基が3つ存在するように、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができる。上記の好ましい炭化水素組成を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは達成できない場合は、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、または蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得ることが出来る。
【0036】
上記アミノアルキルアミンは分子内に1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基から選ばれる、少なくとも2種以上のアミノ基を有するアミンが好ましい。またアルカノールアミンは分子内にヒドロキシ基を必須とし、1級〜3級アミノ基を有するアミンが好ましい。より具体的な例として、ジアルキルモノアルカノールアミン(好ましくはジメチルモノエタノールアミンもしくはジメチルモノプロパノールアミン)、モノアルキルジアルカノールアミン(好ましくはメチルジエタノールアミンもしくはメチルジプロパノールアミン)、またはトリアルカノールアミン(好ましくはトリエタノールアミンもしくはトリプロパノールアミン)、またはジ(アミノアルキル)アルキルアミン(例えば、N−メチル−N,N−ジ(3−アミノプロピル)アミン)、ジアルキルアミノアルキルアミン(例えば、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミン)、アルキルアミノプロピルモノアルキルアルカノールアミン(好ましくは、N−メチルーN−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン)が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましくはN−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルーN−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンである。
【0037】
エステル化反応、アミド化反応又はエステル交換反応において、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、前記アミンのヒドロキシル基、及び1級〜2級アミノ基の合計モル数とのモル比は、0.5:1〜1:1が好ましく、0.6:1〜0.98:1がより好ましい。
【0038】
一般式(2)で表される第3級アミンの酸塩としては、無機酸及び有機酸で中和された酸塩が挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸であり、好ましい有機酸は炭素数1〜10の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1〜20の1価又は多価のスルホン酸、又は炭素数6〜36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数6〜36)硫酸エステルである。より好ましくはメチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、炭素数12〜36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数12〜36)硫酸エステルである。一般式(2)で表される第3級アミンの4級化物としては、一般式(2)で表される第3級アミンを、アルキルハライド、ジアルキル硫酸、アルキレンオキシド等のアルキル化剤で4級化した化合物が挙げられる。アルキルハライドとしてはメチルクロリドが好ましく、ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸が好ましく、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシドが好ましい。また、アルキル化剤を用いた4級化反応は、溶媒存在下(例えば、エタノール)でも行うことができるが、合成物の臭い、保存安定性を維持する観点及び/又は不純物の生成を抑える観点から、無溶媒下で行うことも出来る。
【0039】
[(c)成分]
本発明の組成物は(c)成分として、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基を1つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。(c)成分としては、一般式(3)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
【化8】

【0041】
〔式中、R31基は、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基であり、R32基及びR33基はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。〕
前記一般式(3)において、R31基としては、下記(i)〜(iii)に示す基が好ましい。
(i)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数9〜22、好ましくは11〜20の飽和炭化水素基
(ii)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数9〜22、好ましくは11〜20の二重結合を1個以上有する不飽和炭化水素基
(iii)上記基(i)及び基(ii)が混在するもの
(c)成分は、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、アルカノールアミン又はアミノアルキルアミン等のアミンとを、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基が1つ存在するように、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができる。
【0042】
(c)成分の製造に用いられるアミノアルキルアミン及びアルカノールアミンとしては、(b)成分の製造に用いられる上記アミノアルキルアミン及びアルカノールアミンと同様のものが挙げられる。
【0043】
エステル化反応、アミド化反応又はエステル交換反応において、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、前記アミンとのモル比は、0.5:1〜1:1が好ましく、0.6:1〜0.98:1がより好ましい。
【0044】
一般式(3)で表される第3級アミンの酸塩を製造する際に用いられる無機酸及び有機酸としては、上記一般式(2)で表される第3級アミンの酸塩の製造に用いられるものと同様の無機酸及び有機酸が挙げられる。
【0045】
一般式(3)で表される第3級アミンの4級化物を製造する際に用いられるアルキル化剤としては、上記一般式(2)で表される第3級アミンの4級化物の製造に用いられるものと同様のアルキル化剤が挙げられる。
【0046】
[繊維製品処理剤組成物及び(a)成分の加水分解抑制方法]
本発明の繊維製品処理剤組成物は、上記(a)成分及び(b)成分を含有する。
本発明の組成物中の(a)成分の含有量は0.1〜6質量%であり、0.2〜6質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましい。本発明の組成物中の(b)成分の含有量は、1〜10質量%であり、1〜8質量%が好ましく、1.5〜7質量%がより好ましい。また、本発明の組成物中の(a)成分と(b)成分の質量比は、(a)成分/(b)成分=1/50〜2/1が好ましく、1/50〜1/1がより好ましく、1/30〜1/1.5が更に好ましい。
【0047】
また、本発明の組成物は(c)成分を含有することが好ましい。組成物中の(b)成分と(c)成分の質量比は、(b)成分/(c)成分=1/10〜4/1が好ましく、1/5〜3/1がより好ましく、1/3〜3/1が更に好ましい。
【0048】
本発明の(a)成分は、20℃におけるpHが2〜6の水中において加水分解を受けやすく、分解し易い。本発明においては、このようなpH範囲においても、本発明の(b)成分を併用することにより、(a)成分の加水分解を抑制することができる。
【0049】
本発明の組成物は、更に(d)成分として、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる非イオン界面活性剤としては、分子内に炭素数8〜36の炭化水素基を有し、炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均2〜200モル、好ましくは8〜150モル付加した非イオン界面活性剤が好適である。
【0050】
非イオン界面活性剤としては、下記一般式(4)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0051】
41−E−〔(R42O)a−R43b (4)
〔式中、R41は、炭素数8〜18、好ましくは8〜16のアルキル基又はアルケニル基である。R42は、炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。R43は、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。aは、2〜100、好ましくは4〜80、より好ましくは5〜60、特に好ましくは8〜50の数を示す。Eは、−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Eが−O−又は−COO−の場合bは1であり、Eが−CON<又は−N<の場合bは2である。〕
一般式(4)で表される化合物の具体例として、以下の式(4−1)〜(4−4)で表される化合物を挙げることができる。
【0052】
41−O−(C24O)d−H (4−1)
〔式中、R41は前記の意味を示す。dは2〜100、好ましくは10〜50の数である。〕
41−O−(C24O)e−(C36O)f−H (4−2)
〔式中、R41は前記の意味を示す。eは1〜100、fは1〜100の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0053】
【化9】

【0054】
〔式中、R41は前記の意味を示す。g、h、i及びjはそれぞれ独立に0〜40の数であり、g+h+i+jは5〜150、好ましくは5〜100の数であり、(C24O)と(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。R44及びR45は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である〕。
【0055】
本発明の組成物中の(d)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、更に(e)成分として、炭素数12〜24の脂肪酸、その塩又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステル、及び炭素数12〜36の1価アルコールから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0057】
炭素数12〜24の脂肪酸、その塩又はその低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルの具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、ベヘニン酸等の炭素数12〜24の飽和又は不飽和脂肪酸、又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、炭素数2〜8のアルカノールアミン塩又はアルカノールアンモニウム塩、あるいは前記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、n−プロピルエステル等が挙げられる。また、炭素数12〜36の1価アルコールの具体例としては、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、炭素数24、28若しくは36のゲルベアルコール等が挙げられる。
【0058】
本発明の組成物中の(e)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましく、0.2〜5質量%が更に好ましい。
【0059】
本発明の組成物は、更に(f)成分として、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基を2つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することができる。(f)成分としては、一般式(5)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0060】
【化10】

【0061】
〔式中、R51基及びR52基はそれぞれ独立に、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基であり、R53基は炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。〕
前記一般式(5)において、R51基及びR52基としては、それぞれ独立に下記(i)〜(iii)に示す基が好ましい。
(i)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜22、好ましくは14〜20の飽和炭化水素基
(ii)エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数12〜22、好ましくは14〜20の二重結合を1個以上有する不飽和炭化水素基
(iii)上記基(i)及び基(ii)が混在するもの
(f)成分は、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、アルカノールアミン又はアミノアルキルアミン等のアミンとを、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基が2つ存在するように、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができる。
【0062】
本発明の組成物中の(f)成分の含有量は、3〜30質量%が好ましく、4〜25質量%がより好ましく、4〜20質量%が更に好ましい。
【0063】
本発明の組成物は、粘度を調整する目的で、(g)成分として無機あるいは有機の電解質を配合する事ができる。無機電解質としては、塩酸、硫酸、りん酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムがより好ましい。有機電解質としてはグリコール酸、クエン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩が好ましく、グリコール酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウムなどがより好ましい。本発明の組成物中の(g)成分の含有量は、0〜5質量%が好ましく、0〜4質量%がより好ましく、0.0001〜3質量%が更に好ましい。
【0064】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、柔軟剤組成物、糊剤組成物、シワ取り剤組成物、アイロン掛け用組成物等として繊維製品の処理に用いることができる。
【実施例】
【0065】
実施例及び比較例で使用した各成分をまとめて以下に示す。尚、例中の%は、特記しない限り質量%である。
【0066】
<(a)成分>
(a−1):下記合成例1で得たケイ素化合物
(a−2):下記合成例2で得たケイ素化合物
(a−3):下記合成例3で得たケイ素化合物
<(b)成分>
(b−1):N,N,N−トリ(2−(アルカノイルオキシ)エチル)アミン(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=20/50/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
(b−2):N,N,N−トリ[2−(アルカノイルオキシ)エチル]−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=20/50/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
(b−3):N,N−ジ[2−(アルカノイルオキシ)エチル]−N−[3−(アルカノイルアミノ)プロピル]−N−メチルアンモニウムクロリド(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=10/60/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
(b−4):N,N,N−トリ(2−(ステアロイルオキシ)エチル)アミン
<(c)成分>
(c−1):N−[2−(アルカノイルオキシ)エチル]―N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=20/50/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
(c−2):N−[3−(アルカノイルアミノ)プロピル]−N,N−ジヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムクロリド(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=10/60/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
(c−3):N−[3−(ステアロイルアミノ)プロピル]−N,N−ジメチルアミン
<(d)成分>
(d−1):イソトリデシルアルコールのポリオキシエチレン40モル付加物
<(e)成分>
(e−1):ステアリン酸メチルエステル60質量部とオレイン酸メチルエステル40質量部の混合物
(e−2):ステアリン酸
<(f)成分>
(f−1):N,N−ジ[2−(アルカノイルオキシ)エチル]−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート(アルカノイル基は、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸の質量比がオレイン酸/ステアリン酸/パルミチン酸=20/50/30である混合脂肪酸から誘導される基である。)
<(g)成分>
(g−1):塩化カルシウム
合成例1:ケイ素化合物(a−1)の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、3,7−ジメチル−トランス−2,6−オクタジエン−1−オール72.5g(0.47mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜120℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに4時間攪拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行いケイ素化合物(a−1)を得た。
【0067】
合成例2:ケイ素化合物(a−2)の合成
100mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン18.78g(0.09mol)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール 63.0g(0.324mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.635mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら109〜110℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行いケイ素化合物(a−2)を得た。
【0068】
合成例3:ケイ素化合物(a−3)の合成
200mLの四つ口フラスコにヘキサデシルトリエトキシシラン50.56g(0.13mol)、2−フェニルエタノール44.43g(0.36mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.375mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら113〜120℃で2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い化合物(a−3)を得た。
【0069】
合成例1〜3で得られたケイ素化合物の名称及び構造を表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜12及び比較例1〜4
表2に示す成分を用い、表2に示す組成の繊維製品処理剤組成物を調製した。得られた繊維製品処理剤組成物について、下記方法で耐加水分解性及び香りの持続性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
<耐加水分解性の評価方法>
繊維製品処理剤組成物を、No.11のガラス規格瓶に入れ40℃で2週間保存した。保存後の組成物中に含有される(a)成分が加水分解することによって生成した香気性アルコールの量を高速液体クロマトグラフィー(検出器UV)で定量した。また、各(a)成分を苛性ソーダ水溶液で100%加水分解させ、(a)成分の単位質量あたりから発生した香気性アルコールの量から換算して(a)成分の加水分解率を求めた。
【0073】
<香りの持続性の評価方法>
前記記載の耐加水分解性の評価方法で使用した、40℃で2週間保存した繊維製品処理剤組成物を用いて市販の木綿タオルを以下の方法で処理し、香りの持続性を評価した。
【0074】
(1)前処理した木綿タオルの調製方法
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製 アタック)を用いて、木綿タオル(木綿100%、約34cm×86cm、約68g/1枚当たり)24枚を日立全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0075】
(2)木綿タオルへの組成物の処理
National製電気バケツ(N−BK2)に、5リットルの水道水を投入し、繊維製品処理剤組成物を7g/繊維1kgとなるように投入し、前記の木綿タオル2枚を投入し5分間処理した。処理後、日立製2槽式洗濯機(型番:PS−H35L)の脱水槽で3分間脱水した。脱水した木綿タオルを25℃、40%RHで12時間乾燥させた。
【0076】
(3)処理した木綿タオルを23℃、45%RHの環境下で5日間乾燥させ、木綿タオルの香りを、10人のパネラーが下記基準で評価し平均値で示した。平均点が1.0以上を合格とした。
0:まったく香らない
1:わずかに香る
2:やや香る
3:明らかに香る
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有し、組成物中の(a)成分の含有量が0.1〜6質量%、(b)成分の含有量が1〜10質量%であり、組成物の20℃におけるpHが2〜6である繊維製品処理剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表されるケイ素化合物
【化1】

〔式中、Xはそれぞれ独立に、R1基、OR2基、OR3基又はOH基であり、Yはそれぞれ独立に、X、−O−Si(X)3基又はOH基であり、R1基は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い炭素数1〜22の炭化水素基、R2は炭素数1〜4の炭化水素基、OR3基は炭素数6〜16の香気性アルコール由来のアルコキシ基であり、nは0〜15の数であり、nが0より大きい場合には平均値を示す。但し、分子中にOR3基を少なくとも一つ有する。〕
(b)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基を3つ有するアミン化合物、その塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物
【請求項2】
(b)成分が、一般式(2)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の繊維製品処理剤組成物。
【化2】

〔式中、R21基、R22基及びR23基はそれぞれ独立に、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜22の炭化水素基である。〕
【請求項3】
(a)成分と(b)成分の質量比が、(a)成分/(b)成分=1/50〜2/1である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項4】
さらに(c)成分として、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基を1つ有するアミン化合物、又はその塩、又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項1〜3いずれかに記載の繊維製品処理剤組成物。
【請求項5】
(c)成分が、一般式(3)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の繊維製品処理剤組成物。
【化3】

〔式中、R31基は、エステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数9〜22の炭化水素基であり、R32基及びR33基はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である。〕
【請求項6】
請求項1記載の(b)成分を、請求項1記載の(a)成分と併用する、20℃におけるpHが2〜6の水中での(a)成分の加水分解抑制方法。

【公開番号】特開2010−144310(P2010−144310A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326079(P2008−326079)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】