説明

繊維製品処理剤

【課題】 優れた柔軟性と吸水性を両立できる繊維製品処理剤の提供。
【解決手段】 (a)一般式(I)で表される(ポリ)グリセリルモノエーテル、(b)シリコーン化合物、(c)アルキレンテレフタレート単位及び/又はアルキレンイソフタレート単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む重量平均分子量1000〜100000の高分子化合物及び(d)特定の3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物(d1)、及び/又はカチオン性水溶性高分子化合物(d2)を含有する繊維製品処理剤、並びにこの繊維製品処理剤を洗濯の濯ぎ工程の段階で濯ぎ水に添加して繊維製品を処理する繊維製品処理方法。
R−O−(C362n−H (I)
(式中、RはC6-22の脂肪族炭化水素基、−(C362)−はグリセリン骨格で、nは1〜7の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品処理剤及び繊維製品処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン化合物は繊維製品に独特のスベリ性や感触を付与できるため、繊維製品処理剤に汎用に用いられる化合物であり、近年、特許文献1〜3に記載されているように、一般家庭の洗濯工程で用いられる処理剤において、シリコーン化合物を主基剤とする繊維製品処理剤が研究されている。
【0003】
一方、アルキレンテレフタレートやアルキレンイソフタレートを構成単位とするポリエステル系高分子化合物は、ソイルリリース剤(汚れ剥離剤)として知られており、洗剤などに応用されている。また、工業的に繊維製品にソイルリリース効果を付与する目的から、特許文献4にはポリエステル系高分子化合物とポリエーテル変性シリコーンを併用する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−279581号公報
【特許文献2】特開2000−110076号公報
【特許文献3】特開平5−508889号公報
【特許文献4】特開平9−291483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコーン化合物を主基剤とする繊維製品処理剤は、繊維製品に好ましい風合いを与える一方、吸水性を悪化させ、特に木綿を含有する繊維製品の吸水性を損なうため、その改善が強く求められている。特許文献1〜3はこうした課題に対して、未だ満足できる効果を有するものではない。
【0005】
一方、特許文献4は繊維製品に防汚効果を付与する工程における課題を解決する手段を開示するものであり、繊維製品に柔軟効果、親水性、防汚性を付与できることが記載されているが、処理剤を比較的低濃度で用いる使用態様、例えば一般家庭での日常的な処理のような使用態様においても優れた柔軟性、吸水性が得られる処理剤について開示しているとは言い難い。
【0006】
従って本発明が解決しようとする課題は、シリコーン化合物を主基剤とする繊維製品処理剤で処理した場合の吸水性を悪化させる問題を解決し、優れた柔軟性と吸水性を両立でき、更に、シリコーン化合物由来の風合いを向上させる繊維製品処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する繊維製品処理剤、並びにこの繊維製品処理剤を洗濯の濯ぎ工程の段階で濯ぎ水に添加して繊維製品を処理する繊維製品処理方法に関する。
(a)成分:一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及びポリグリセリルモノエーテルから選ばれる少なくとも1種
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基である。−(C362)−はグリセリン骨格であり、nはグリセリンの縮合度を示す1〜7の数である。グリセリンの縮合位置は、グリセリンが有するいずれの水酸基でも良く、直鎖型、分岐型、及び直鎖型と分岐型とのランダムな混合物を含む。)
(b)成分:シリコーン化合物
(c)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む重量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物
(d)成分:窒素原子に結合する3つもしくは4つの基のうち、1〜3個が炭素数10〜24の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物(d1)、及びカチオン性水溶性高分子化合物(d2)から選ばれる少なくとも1種の化合物
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコーン化合物の繊維製品への吸着性を向上させ、柔軟性と吸水性に優れた、シリコーン化合物を主基剤とする繊維製品処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、前記一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及びポリグリセリルモノエーテル(以下、これらを総称して「(ポリ)グリセリルモノエーテル」という)から選ばれる少なくとも1種である。
【0010】
一般式(I)中のRは、炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基を示し、これらは直鎖でも分岐鎖でも、飽和でも不飽和でも良く、炭素数6〜22のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数6〜22、更に12〜14、特に12のアルキル基が好ましい。
【0011】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12〜14、特に炭素数12及び14のアルキル基である(ポリ)グリセリルモノエーテルの比率が、合計で40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。
【0012】
(a)成分は、一般式(I)中の縮合するグリセリン部分を(C362)、縮合度をnと標記している。しかし、これはグリセリンの縮合形態として直鎖型のみを表すものではなく、分岐型、及び直鎖型と分岐型とのランダムな混合を含むものである。表現の便宜上この様に表現したものである。
【0013】
(a)成分は、一般式(I)中のnが3〜5であるものが好ましい。なお、(a)成分が、一般式(I)中のnが単一のもののみからなる場合は結晶化しやすいため、特に低温で水への溶解性が劣り、その結果、シリコーン化合物の繊維製品への吸着性能は低下する傾向を示す。一方、(a)成分が、一般式(I)中のnが異なる複数の(ポリ)グリセリルモノエーテルを含む場合、結晶化が抑制されるため低温でも高い溶解性を示し、その結果良好なシリコーン化合物の繊維製品への吸着性能が得られる。従って、(a)成分は、一般式(I)中のnが異なる複数の(ポリ)グリセリルモノエーテルからなるものが好ましく、特にnが3〜5で、且つn=3及び4、n=3及び5、n=4及び5、又はn=3、4及び5のポリグリセリルモノエーテルを含むものがより好ましく、特にn=3、4及び5のポリグリセリルモノエーテルを含むものが好ましい。
【0014】
一般式(I)中のnは、貯蔵安定性の観点から、n=4が最も好ましく、(a)成分中、n=4であるポリグリセリルモノエーテルの比率が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。
【0015】
また、一般式(I)中のnが1又は2である(ポリ)グリセリルモノエーテルの比率は合計で50質量%未満、更に35質量%以下であることが好ましい。更に、(a)成分中、nが1であるグリセリルモノエーテルの含有量が30質量%未満、更に20質量%以下であることが好ましい。
【0016】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルを含有することが好ましく、その比率が40質量%以上であることが低温溶解性の観点から好ましい。前記比率は、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。また、低温での良好なシリコーン化合物の繊維製品への吸着性能の観点から上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
【0017】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルの合計の比率を99質量%以下とした場合には、低温での溶解性が著しく向上し、その結果シリコーン化合物の繊維製品への吸着性能が大きく向上する効果が得られる。一般にこの含有量が低いほど低温での溶解性は向上するが、同時に常温でのシリコーン化合物の繊維製品への吸着性能が低下する傾向にあるため、上記した下限値と上限値の範囲が好ましい。
【0018】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基で、nが3〜5であるポリグリセリルモノエーテル(a−1)と、一般式(I)中のRが炭素数14のアルキル基で、nが3〜5であるポリグリセリルモノエーテル(a−2)の両方を含んでいることが好ましい。更に(a−1)成分及び(a−2)成分は、いずれもnの異なる複数の(ポリ)グリセリルモノエーテル、特にn=3、4、5の3種のポリグリセリルモノエーテルを含有することが好ましい。(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の比率は40質量%以上であることが好ましい。
【0019】
(a)成分を構成するグリセリンの縮合度nの質量割合〔(a)成分中の質量割合〕は、ガスクロマトグラフィー(GC)法のエリア%から求めることができる。
【0020】
本発明の(a)成分は、例えば、炭素数6〜22のアルコールに所定量の2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)をアルカリ触媒の存在下で反応させることで得られる。また、特開2000−160190号公報の段落0007〜0011に記載されたような方法で製造することもできる。
【0021】
なお、一般式(I)中のn=3〜5のポリグリセリルモノエーテルが所定比率にあるものを用いるためには、必要に応じて反応物を蒸留等により精製することで、所定範囲の縮合度の化合物を得ることができる。
【0022】
例えば、一般式(I)中のn=1、2のものは、減圧下で蒸留することにより留去することができる。n=1、2の成分を減らすことで、n=3〜5の成分の割合を増やすことができる。蒸留装置に限定は無いが、薄膜蒸留を行うことにより、これら成分を効率的に分離することができる。至適蒸留温度は、真空度によって大きく変化するが、真空度が0.13kPaの場合、150℃以上300℃以下が好ましく、170℃以上300℃以下がより好ましく、200℃以上300℃以下が更に好ましい。300℃以下の温度で蒸留することにより、着色等の品質の劣化を防止することができる。
【0023】
また例えば、一般式(I)中のn=6以上のものを取り除く場合は、カラムによる分離を行うことができる。カラムによる分離は、条件を工夫することにより、n=1、2の成分の除去に利用することもできる。
【0024】
[(b)成分]
本発明の(b)成分のシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。これらのシリコーン化合物の中では、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(例えばポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種が好適であり、特にアミノ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン(例えばポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンが柔軟効果の点から好ましい。
【0025】
ジメチルポリシロキサンとしては重量平均分子量千〜100万、好ましくは3千〜50万、特に好ましくは5千〜25万、25℃における粘度が10〜10万mm2/s、好ましくは500〜5万mm2/s、特に好ましくは1千〜4万mm2/sの化合物を挙げることができる。
【0026】
アミノ変性ジメチルポリシロキサンとしては、アミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)が、1,500〜40,000g/mol、好ましくは2,500〜20,000g/mol、更に好ましくは、3,000〜10,000g/molの化合物を挙げることができる。また、25℃における粘度が100〜20000mm2/s、好ましくは200〜10000mm2/s、特に好ましくは500〜5000mm2/sの化合物を挙げることができる。
【0027】
ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンとしては、1%水溶液の曇点が80℃以下、更に70℃以下の化合物が好ましい。曇点がこのような範囲にある化合物は疎水性が高く繊維製品に吸着しやすいと考えられる。また、25℃における粘度が100〜6500mm2/s、好ましくは200〜6000mm2/s、特に好ましくは500〜5500mm2/sの化合物を挙げることができる。
【0028】
本発明では特に繰り返し使用における吸水性の改善効果の点からアミノ変性ジメチルポリシロキサンとポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンを併用することが好ましく、アミノ変性ジメチルポリシロキサン/ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンの質量比は、好ましくは100/0〜10/90、より好ましくは95/5〜20/80、特に好ましくは90/10〜30/70が好適である。
【0029】
市販されているシリコーン化合物を用いることも可能であり、好ましいものとしては信越化学工業(株)のPolonMF−14、PolonMF−14D、PolonMF−14EC、PolonMF−29、PolonMF−39、PolonMF−44、PolonMF−52、KF−615A、KF−618、KF−864、KF−945A、KF−6008、東レ・ダウコーニング(株)のY−7006、FZ−2203、FZ−2207、FZ−2120、FZ−2161、FZ−2163、FZ−2165、SM8702、SM8704、SM8702C、SM8704C、BY22−812、BY22−816、BY22−819、BY22−823、BY16−850、BY16−906、SF8471、BY22−019、SH−3746、SH−3771、SH3775M、SH−8400、SF−8410、SF8457C、SH−8700等を挙げることができる。
【0030】
[(c)成分]
本発明の(c)成分は、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む高分子化合物であり、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位と、ポリオキシアルキレン単位を基本単位として、ランダム又はブロックで重合した高分子化合物である。なお、水への溶解分散性を向上させるために、一部スルホ基を導入した高分子化合物を用いることもできる。
【0031】
アルキレンテレフタレート単位としては、エチレンテレフタレート単位、プロピレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位等から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これらの中でもエチレンテレフタレート単位が好ましい。
【0032】
アルキレンイソフタレート単位としては、エチレンイソフタレート単位、プロピレンイソフタレート単位、ブチレンイソフタレート単位等から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これらの中でもエチレンイソフタレート単位が好ましい。
【0033】
ポリオキシアルキレン単位としては、ポリオキシエチレン単位、ポリオキシプロピレン単位、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン単位等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位とポリオキシアルキレン単位のモル比は、90/10〜40/60が好ましく、80/20〜45/55がより好ましく、70/30〜50/50が更に好ましい。また、(c)成分の重量平均分子量は、1,000〜100,000であり、6000〜85000が好ましい。
【0035】
なお、(c)成分の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。
【0036】
また、(c)成分中、アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位と、ポリオキシアルキレン単位の割合は、全構成単位中90モル%以上、更に95モル%以上であることが好ましい。
【0037】
本発明の(c)成分としては、特に下記一般式(II−1)で表されるモノマー構成単位と下記一般式(II−2)で表されるモノマー構成単位とを、(II−1):(II−2)=10:90〜90:10のモル比で含む、重量平均分子量が1,000〜100,000の高分子化合物が好適である。モノマー構成単位(II−1)とモノマー構成単位(II−2)の配列はランダムでもブロックでも何れでも良い。
【0038】
【化2】

【0039】
〔式中、R1及びR2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、これらは同一又は異なっていてもよい。mは数平均で1〜150、好ましくは10〜100の数である。〕
本発明の(c)成分である高分子化合物の製法については、特に限定されないが、例えば、不活性ガス中、触媒存在下、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを160〜270℃に加熱してエステル化反応あるいはエステル交換反応させて、グリコールエステルを調整し、その後、適宜の時期にポリアルキレングリコールを添加混合して常圧あるいは減圧下にて重合させる。触媒としては、酸化バリウムあるいは酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、コハク酸亜鉛、テトラブチルチタネート、マグネシウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等の金属酸化物、有機金属化合物を用いることができる。
【0040】
[(d)成分]
本発明の(d)成分は、窒素原子に結合する3つもしくは4つの基のうち、1〜3個が炭素数10〜24の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物(以下(d1)成分という)、及びカチオン性水溶性高分子化合物(以下(d2)成分という)から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0041】
本発明の(d)成分は、(b)成分の吸着性を向上させることにより、柔軟性の付与効果を向上させることができる。
【0042】
(d1)成分は、具体的には、ジアルキル(炭素数10〜16)ジメチルアンモニウム塩、N,N−ジアルキロイル(又はアルケノイル)(炭素数12〜20)オキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチル(又はエチル)アンモニウム塩が好適である。
【0043】
(d2)成分のカチオン性水溶性高分子化合物において、水溶性とは、20℃の水に該高分子化合物を溶解及び/又は分散させ、pHを5.0に調整した場合に、該高分子化合物が1質量%以上溶解することと定義する。また、カチオン性とは分子中に4級アンモニウム基、又は3級アミノ基の酸塩を含有するものであり、好ましくは分子中に4級アンモニウム基、又は3級アミノ基の酸塩を有する単量体ユニットを5〜100モル%、好ましくは10〜95モル%、より好ましくは15〜90モル%含有する高分子化合物である。また、該高分子化合物にカルボン酸基及びスルホン酸基から選ばれる陰イオン基(X)が存在する場合には、〔分子中の4級アンモニウム基及び3級アミノ基の酸塩の合計モル数〕/〔分子中の陰イオン基(X)のモル数〕が1.1以上、更に2以上であることが好ましい。
【0044】
(d2)成分としては、具体的には下記一般式(III)で表される化合物、又はその酸塩、もしくはその4級化物〔以下(d2・m1)という〕を重合して得られる高分子化合物が好ましい。
【0045】
【化3】

【0046】
〔式中、R3は水素原子又はメチル基であり、Yは−COOR6−、−CON(R7)R8−、−OCOR9−、−CH2−から選ばれ、Yが−CH2−の場合にはR4はCH2=C(R3)−CH2−であり、Yがそれ以外の場合はR4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R5は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、R6、R8及びR9はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、R7は水素原子又はメチル基である。〕
(d2・m1)の具体例としては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジアルキルアミン又はその酸塩、もしくはその4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜3)、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジアルキルアミン又はその酸塩、もしくはその4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜3)、N−ビニルオキシカルボニルエチル−N,N−ジアルキルアミン又はその酸塩、もしくはその4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜3)、N,N−ジアリル−N−アルキルアミン又はその酸塩、もしくはその4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜3)から選ばれる少なくとも1種が好適であり、特にN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジアルキルアミン、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジアルキルアミン又はそれらの酸塩、もしくはそれらの4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜3)が好ましい。
【0047】
(d2・m1)が酸塩の形態の場合には、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩から選ばれる無機酸塩、炭素数1〜12の脂肪酸塩、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいアリールスルホン酸塩から選ばれる無機酸塩又は有機酸塩以外に、アルキル基の炭素数10〜24のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数10〜24のアルキル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が10〜24でオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜4のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から選ばれる陰イオン界面活性剤の塩を用いることもできる。
【0048】
また、(d2・m1)が4級アンモニウム塩の形態の場合には、一般式(III)で表される化合物をメチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドから選ばれるアルキル化剤で4級化したものを用いることができる。
【0049】
また、(d2・m1)がアミンの形態の場合は、(d2・m1)を重合後、通常の酸によって中和するか、もしくは通常のアルキル化剤で4級化してカチオン性にすることもできる。中和剤としては塩酸、硫酸、リン酸から選ばれる無機酸、炭素数1〜12の脂肪酸、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換していてもよいアリールスルホン酸から選ばれる一般に知られている無機又は有機酸、アルキル基の炭素数10〜24のアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル基の炭素数10〜24のアルキル硫酸モノエステル、アルキル基の炭素数が10〜24でオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜4のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸モノエステルから選ばれる陰イオン界面活性剤等の酸型の化合物を用いることもできる。また、アルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを挙げることができる。
【0050】
本発明の(d2)成分は、(d2・m1)と共重合可能な化合物〔以下(d2・m2)という〕との共重合体であってもよい。(d2・m2)中にカルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基を有する化合物〔以下(d2・m2a)という〕を共重合させる場合には、(d2・m1)/(d2・m2a)を1.1以上、好ましくは2以上のモル比で共重合させた化合物が好適である。(d2・m2a)の具体例としては(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)等を挙げることができる。
【0051】
(d2・m2a)以外の(d2・m2)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜22のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜100)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの重合度が1〜50)、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(ブチレングリコールの重合度が1〜50)等のポリアルキレン(アルキレン基の炭素数1〜8;直鎖もしくは分岐鎖)オキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;グリセリン(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;N−(メタ)アクロイルモルホリン;塩化ビニル;アクリロニトリル等が例示される。
【0052】
本発明では(d2・m2)として下記一般式(IV)で表される化合物〔以下(d2・m2e)という〕を共重合させた(d)成分が、シリコーン化合物の効果を向上させる点から好適である。
【0053】
【化4】

【0054】
〔式中、R10は水素原子又はメチル基であり、R11は炭素数3〜22の1価炭化水素基であり、ZはCH2=C(R10)−とR11との連結基(但し3級アミノ基又はその酸塩、もしくはその4級化物を除く)である。〕
一般式(IV)において、R11は好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数4〜20、更に好ましくは10〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、Zは−COO−、−CONH−、−OCO−から選ばれる2価の基が好ましく、特に−COO−が好適である。
【0055】
(d2・m2e)のより具体的な例としては、(メタ)アクリル酸アルキル〔アルキル基の炭素数は4〜22、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜18である〕、(メタ)アクリロイルアミノアルキル〔アルキル基の炭素数は4〜22、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜18である〕、カルボン酸ビニル〔カルボン酸の炭素数は4〜22、好ましくは4〜20、より好ましくは10〜18である〕が好適である。
【0056】
本発明の(d2)成分の好適な化合物は下記構成のモノマーを重合して得られる高分子化合物である。構成モノマー中の(d2・m1)の割合は50〜100モル%、好ましくは60〜95モル%である。(d2・m2e)の割合は0〜50モル%、好ましくは5〜40モル%である。(d2・m2a)の割合は45モル%以下、好ましくは25モル%以下である。(d2・m2e)、(d2・m2a)以外の(d2・m2)の割合は45モル%以下、好ましくは25モル%以下である。又、各構成モノマーの比率は、(d2・m1)/(d2・m2a)のモル比が好ましくは1/0.9以上、より好ましくは1/0.5以上である。
【0057】
本発明の(d2)成分は、上述のモノマー(d2・m1)、(d2・m2)を通常の方法により重合することで得られ、特に限定されるものではないが、ラジカル重合法が特に好ましく、塊状、溶液、又は乳化系にてこれを行うことができる。
【0058】
本発明の(d2)成分の重量平均分子量は3,000〜100,000が好ましく、4,000〜80,000がより好ましく、5,000〜60,000が更に好ましい。なお重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、アセトニトリルと水の混合溶液(リン酸緩衝液)、或いは、エタノールと水の混合溶液(LiBr/酢酸添加)を溶離液とし、ポリエチレングリコールを標準物質として測定することができる。
【0059】
[繊維製品処理剤]
本発明の繊維製品処理剤は、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する。本発明の繊維製品処理剤中の(a)成分の含有量は、溶解性、シリコーン化合物の繊維製品への吸着性能の観点より、0.1〜12質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜8質量%が更に好ましく、1〜6質量%が特に好ましい。また、(a)成分/(b)成分の質量比は、1/100〜1/1が好ましく、1/20〜3/4がより好ましく、1/10〜1/2が更に好ましい。
【0060】
本発明の繊維製品処理剤中の(b)成分の含有量は、1〜30質量%が好ましく、1.5〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましい。また、(c)成分の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましく、0.05〜2質量%が更に好ましい。また、(b)成分と(c)成分の質量比は、(b)成分/(c)成分=80/20〜99.9/0.1が好ましく、90/10〜99/1がより好ましい。
【0061】
本発明の繊維製品処理剤中の(d)成分の含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。また、(b)成分と(d)成分の質量比は、(b)成分/(d)成分=5/95〜99/1が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。また、(c)成分と(d)成分の質量比は、(c)成分/(d)成分=1/999〜90/10が好ましく、1/99〜80/20がより好ましい。
【0062】
本発明の(b)成分及び(c)成分は基本的に水には不溶又は微溶の化合物であるため、自己分散等により安定な分散物が得られる場合は特に必要ないが、均一な組成物、例えば水溶液に調製する目的から、(a)成分以外の非イオン界面活性剤〔以下(e)成分という〕を併用することが好ましい。(e)成分としては下記一般式(V)で表される化合物が好適である。
【0063】
12−E−[(R13O)p−H]q (V)
〔式中、R12は、炭素数7〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、R13は炭素数2又は3のアルキレン基である。pは2〜150の数を示す。Eは−O−、−CON−又は−N−であり、Eが−O−の場合はqは1であり、Eが−CON−又は−N−の場合はqは2である。〕
一般式(V)で表される化合物の具体例として以下の一般式(VI)〜(IX)で表される化合物を挙げることができる。
【0064】
12−O−(C24O)r−H (VI)
〔式中、R12は前記の意味を示す。rは2〜150の数である。〕
12−O−[(C24O)s/(C36O)t]−H (VII)
〔式中、R12は前記の意味を示す。s及びtはそれぞれ独立に2〜70の数であり、エチレンオキシド(C24O)とプロピレンオキシド(C36O)はランダムあるいはブロック付加体であってもよい。〕
【0065】
【化5】

【0066】
〔式中、R12は前記の意味を示す。u及びvはそれぞれ独立に2〜70の数である。〕
本発明の繊維製品処理剤中の(e)成分の含有量は、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%が更に好ましい。また(b)成分と(e)成分の質量比は、(b)成分/(e)成分=95/5〜5/95が好ましく、90/10〜10/90がより好ましく、85/15〜15/85が更に好ましい。
【0067】
本発明の繊維製品処理剤は、更に貯蔵安定性や製品の外観を好適にする目的から、水溶性溶剤を含有することができる。好適な水溶性溶剤としては、炭素数1〜3の1価アルコール、炭素数2〜4の2価アルコール、グリセリン、及び下記一般式(X)で表されるグリコールエーテル化合物が好適である。
【0068】
14−O−(R15−O)w−R16 (X)
〔式中、R14は炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はベンジル基から選ばれ、R15はエチレン基、プロピレン基、−CH2−CH(OH)−CH2−から選ばれ、R16は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。wは1〜5の数を示す。〕
本発明の繊維製品処理剤中の水溶性溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、引火点や匂いの問題があるため、0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。
【0069】
本発明の繊維製品処理剤には、更に通常繊維処理剤に用いられる成分を任意に使用することができ、例えば香料、染料、顔料、防腐剤、キレート剤などを挙げることができる。
【0070】
本発明の繊維製品処理剤は、上記成分を水に溶解、分散、乳化させた液体組成物、特に水溶液の形態が好ましく、水の含有量は処理剤中に好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%、特に好ましくは40〜70質量%である。また、本発明の処理剤の20℃におけるpHは2〜8が好ましく、3〜7がより好ましい。このようなpHの調整には通常用いられる酸や塩基、例えば酸としては塩酸、硫酸、燐酸、クエン酸、乳酸、酢酸等、塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルカノールアミン等を用いることができる。
【0071】
[繊維製品処理方法]
本発明の繊維製品処理剤は、洗濯の濯ぎ工程の段階で濯ぎ水に添加して繊維製品の処理を行うことが好ましく、濯ぎ水30Lに対して、好ましくは1.5〜75g、より好ましくは3〜60g、更に好ましくは4.5〜45gの割合で添加される。また、繊維製品1kgに対して、本発明の処理剤を、好ましくは1〜50g、より好ましくは2〜40g、更に好ましくは3〜30g用いることが好適である。処理後は、脱水、乾燥など通常行う工程を行うことができる。一例として、繊維製品1kgに対して、本発明の繊維製品処理剤が1〜50gとなるように用いられるのが好ましい。
【実施例】
【0072】
実施例に用いた配合成分を以下にまとめて示す。なお、以下の成分中、EOはエチレンオキシドの略、POはプロピレンオキシドの略、DMAEMAはN−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアミンの略、LMAはラウリルメタクリレートの略である。
【0073】
<(a)成分>
(a)−1:一般式(I)中のRが12と14の混合アルキル基であり、nが3〜5のものが83質量%の(ポリ)グリセリルモノエーテル
(a)−2:一般式(I)中のRが12と14の混合アルキル基であり、nが3〜5のものが55質量%、nが1〜2のものが22質量%の(ポリ)グリセリルモノエーテル
(a)−3:一般式(I)中のRが12と14の混合アルキル基であり、nが3〜5のものが42質量%、nが1〜2のものが38質量%の(ポリ)グリセリルモノエーテル
<(b)成分>
(b)−1:KF−864(信越化学工業(株):アミノ変性ジメチルポリシロキサン)
(b)−2:SF8457C(東レ・ダウコーニング(株):アミノ変性ジメチルポリシロキサン)
(b)−3:SH3775M(東レ・ダウコーニング(株):ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン)
(b)−4:FZ−2203(東レ・ダウコーニング(株):ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン)
(b)−5:BY16−906(東レ・ダウコーニング(株):アミド変性ジメチルポリシロキサン)
<(c)成分>
(c)−1:SOREZ 100(ISP社:重量平均分子量7100、平均EO付加モル数88.9)
(c)−2:Texcare SRN−170(Clariant社:重量平均分子量2700、平均EO付加モル数33.7)
(c)−3:Texcare SRN−240(Clariant社:重量平均分子量6200、平均EO付加モル数80.5)
(c)−4:Texcare SRN−325(Clariant社:重量平均分子量12000、平均EO付加モル数35.6)
尚、(c)−1〜(c)−4は、何れも、一般式(II−1)のモノマー構成単位と一般式(II−2)のモノマー構成単位とを(II−1):(II−2)=10:90〜90:10の範囲のモル比で含む高分子化合物に該当する。
【0074】
<(d)成分>
(d1)−1:ジアルキル(炭素数12〜14)ジメチルアンモニウムクロライド
(d1)−2:アルキル(炭素数16〜18)トリメチルアンモニウムクロライド
(d2)−1:DMAEMA/LMA共重合体(DMAEMA/LMA=80/20原料モル比、重量平均分子量(PEG換算)11,000)
(d2)−2:MERQUAT 280(NALCO COMPANY製:塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリル酸=65/35原料モル比、平均分子量45万(カタログ値))
<(e)成分>
(e)−1:炭素数12〜14の直鎖第1級アルコールにEOを平均40モル付加させた非イオン界面活性剤
(e)−2:ステアリルアルコールにEOを平均20モル付加させた非イオン界面活性剤
(e)−3:ステアリルアルコールにEOを平均50モル付加させた非イオン界面活性剤
(e)−4:ステアリルアルコールにEOを平均140モル付加させた非イオン界面活性剤
<その他の成分>
PhG−30:フェノールにEOを平均3モル付加させたグリコールエーテル化合物
抗菌剤:プロキセルIB
キレート剤:エチレンジアミン4酢酸。
【0075】
合成例1:(a)−1の合成例
C12/C14混合アルコール93.2g(0.50mol)、ランタントリフラート2.94g(0.0050mol)を300mL四つ口フラスコに入れ、窒素気流下、撹拌しながら90℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール148.16g(2.0mol)を24時間で滴下し、そのまま2時間撹拌を続け、反応生成物251.5gを得た。得られた反応生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、グリシドール転化率99.9%以上、C12/C14アルコール6.0質量%、ポリグリセリンの含有量は2.2質量%であった。また得られた(ポリ)グリセリルモノC12/C14アルキルエーテルのうち、グリセリンの縮合度nが3〜5のものの割合は、nが1〜7のものの合計に対して45質量%であった。この反応終了品を蒸留する事により、(a)−1を得た。グリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が83質量%であった。
【0076】
合成例2及び3:(a)−2及び(a)−3の合成例
合成例1と同様の反応終了品を用い、蒸留の条件を変え、(a)−2及び(a)−3を得た。(a)−2はグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が55質量%で、nが1〜2の化合物の比率が22質量%であり、(a)−3はグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が42質量%で、nが1〜2の化合物の比率が38質量%であった。
【0077】
実施例1〜5、比較例1〜5
表1に示す組成の繊維製品処理剤を調製し、下記方法でシリコーン化合物の吸着性、繊維製品の吸水性及び柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
<シリコーン化合物の吸着性評価方法>
綿メリヤス布(谷頭商店製)を2槽式洗濯機(VH−360S1)で市販洗剤(花王(株)製アタック)を用いて5回累積洗浄し(洗剤濃度0.067質量%、水道水使用、水温20℃、10分洗浄後、15分流水濯ぎした後、5分間脱水)、自然乾燥させた。この綿メリヤス布を15cm×25cmに裁断し、試験布を調製した。この試験布10枚(60g)をTerg−O−Tometer(上島製作所製)を使用して、85r/min、20℃の水道水に各繊維製品処理剤0.060質量%を添加して得られた処理剤水溶液1000mlを用いて5分間溜め濯ぎを行った。さらに、2分間脱水した後、平干しにて標準試験室(20℃、65%RH)で調湿させた。処理布1gを坩堝で灰化させた灰分にアルカリ1g(炭酸ナトリウム/硼酸=5/2)を加えて溶融させた。6N塩酸4mLで中和した後、純水でメスアップさせた試料をICP発光分析装置(原子吸収)で測定することによりシリコーン化合物の吸着量を定量した。本発明の各実施例について、(a)成分を含有しない以外は同じ組成の比較例と吸着量を比較して、下記基準で評価した。
【0079】
・評価基準
○:比較例に比べて、シリコーン吸着量が多く、シリコーン化合物由来の風合い感が発現している。
×:比較例に比べて、シリコーン吸着量が同等もしくは少なく、シリコーン化合物由来の風合い感が確認できない。
【0080】
<吸水性評価方法>
1m×1mの金巾2003布(木綿100%)1.5kgを市販の衣料用洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝(株)銀河VH−360S1)で洗濯した〔洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)30L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.)〕。すすぎが始まってから5分経過した時点で流水を止め、排水した後3分間脱水した。次に、水道水(20℃)を30L注水し、表1の各処理剤を15mL投入して3分間撹拌処理した。撹拌を止めた後、3分間脱水し、金巾2003布を取り出し、室温で自然乾燥させた。これら一連の洗濯操作を20回繰り返し処理した後、室温で4時間自然乾燥させた後、標準試験室(25℃−65%RH)で24時間静置して調湿処理した。
【0081】
調湿処理した金巾2003布について、2.5cm×25cmの長さに切り取り、その短辺を下にして、20℃のイオン交換水に1cmの深さまで浸漬した。浸漬から10分後に毛細管現象により吸水した水の水面からの吸水高さを測定し(JIS L1907(繊維製品の吸水性試験法))、下記基準で評価した。なお、柔軟処理をしない金巾2003布の吸水高さは10cmであった。
【0082】
・評価基準
◎:吸水高さが8cm以上
○:吸水高さが6cm以上8cm未満
△:吸水高さが4cm以上6cm未満
×:吸水高さが4cm未満
<柔軟性評価方法>
市販の木綿タオル(白色、綿100%)を5枚用意し、これに質量調整布として肌着(綿100%)0.8kg、ワイシャツ(白、綿/ポリエステル=60/40%)0.4kgを加え、市販の衣料用洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝(株)銀河VH−360S1)で10回繰り返し洗濯した〔洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)30L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.)〕。最後の処理回(10回目)のすすぎが始まってから5分経過した時点で流水を止め、排水した後3分間脱水した。次に、水道水(20℃)を30L注水し、表1の各処理剤を15mL投入して3分間撹拌処理した。撹拌を止めた後、3分間脱水し、評価用繊維製品としてタオルを取り出し、室温で4時間自然乾燥させた。
【0083】
その後、標準試験室(25℃−65%RH)で24時間静置して調湿処理したタオルについて、表1に示す比較例1の処理剤で処理し同様に標準試験室(25℃−65%RH)で調湿処理したタオルを対照品として、柔軟性について、10名の判定員(30代男性5名、30代女性5名)により下記の基準で得点をつけ、平均点を求めた。平均点が0.5を超え1.0以下を○、0以上0.5以下を△、0未満を×として判定した。
・得点基準
対照品より柔らかい:+1点
対照品と同等:0点
対照品の方が柔らかい:−1点
【0084】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分を含有する繊維製品処理剤。
(a)成分:一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及びポリグリセリルモノエーテルから選ばれる少なくとも1種
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基である。−(C362)−はグリセリン骨格であり、nはグリセリンの縮合度を示す1〜7の数である。グリセリンの縮合位置は、グリセリンが有するいずれの水酸基でも良く、直鎖型、分岐型、及び直鎖型と分岐型とのランダムな混合物を含む。)
(b)成分:シリコーン化合物
(c)成分:アルキレンテレフタレート単位及びアルキレンイソフタレート単位から選ばれる少なくとも1種の単位と、ポリオキシアルキレン単位とを含む重量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物
(d)成分:窒素原子に結合する3つもしくは4つの基のうち、1〜3個が炭素数10〜24の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である3級アミン又はその酸塩もしくはその4級化物(d1)、及びカチオン性水溶性高分子化合物(d2)から選ばれる少なくとも1種の化合物
【請求項2】
(a)成分が、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基で、且つグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が40質量%以上のものである請求項1記載の繊維製品処理剤。
【請求項3】
(b)成分が、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン及びポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の繊維製品処理剤。
【請求項4】
(c)成分が、下記一般式(II−1)で表されるモノマー構成単位と下記一般式(II−2)で表されるモノマー構成単位とを、(II−1):(II−2)=10:90〜90:10のモル比で含む、重量平均分子量が1,000〜100,000の高分子化合物である請求項1〜3何れかに記載の繊維製品処理剤。
【化1】

〔式中、R1及びR2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、これらは同一又は異なっていてもよい。mは数平均で1〜150の数である。〕
【請求項5】
更に(e)成分として、(a)成分以外の非イオン界面活性剤を含有する請求項1〜4何れかに記載の繊維製品処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載の繊維製品処理剤を洗濯の濯ぎ工程の段階で濯ぎ水に添加して繊維製品を処理する繊維製品処理方法。

【公開番号】特開2009−155751(P2009−155751A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334639(P2007−334639)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】