説明

繊維集合体の収納箱及びボックスティッシュ製品

【課題】カバーシートを取り外さずにリサイクル可能でありながら、コストが嵩まず、しかも防水性に優れる、収納箱を提供する。
【解決手段】箱1の上面1Bに形成される又は形成された窓1Aを有し、この窓1Aを覆うようにスリット3を有するカバーシート2が設けられており、スリット1Aを通して箱1内に収容されたティッシュペーパー4を取り出すように構成するとともに、カバーシート2として、パルプ繊維を含む繊維集合層2Aと厚さ6〜30μmの合成樹脂製防水フィルム層2Bとをラミネートしたラミネートシートを用い、カバーシート2の米坪を20〜55g/m2とし、カバーシートにおけるパルプ繊維の含有量を51〜94重量%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティッシュペーパー、コットンパフ等の繊維集合体の収納箱、及びこれを用いたボックスティッシュ製品に関する。
【背景技術】
【0002】
箱の上面に形成される窓を内側からスリットを有するカバーシートが覆っており、このカバーシートのスリットを通して箱内部に収容されたティッシュを順次取り出すようにした収納箱、いわゆるボックスティッシュは、今では生活必需品となっている。
箱状面の窓を覆うカバーシートとしては、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂フィルムを用いるのが一般的である。この場合、空となったボックスティッシュ箱をリサイクルする際、紙箱本体と再生工程に支障のあるポリエチレンフィルムとを分離する必要がある。
そこで、リサイクル性を向上させるために、カバーシートとして、グラシン紙(特許文献1参照)や和紙(特許文献2参照)を用いる他、合成繊維または化学繊維を混抄した合成紙あるいは不織布を用いること(特許文献3)が提案されている。
【特許文献1】特開平9−118377号公報
【特許文献2】実用新案登録第2543432号公報
【特許文献3】特開2000−211679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、後者の和紙ではコスト高となる根本的な問題点を有している。さらに、前者のグラシン紙ではこのコストの問題は小さいものの、ティッシュの取り出し(ポップアップ)時において耳障りなノイズ(特に高音)が生じるという問題点を有している。
一方、合成繊維または化学繊維を混抄した合成紙あるいは不織布は、これらの問題点を解決しうるものであるが、本発明者が鋭意研究した結果、防水性に劣る、破断強度の確保に難がある、繊維集合体に対する摩擦が強い、といった問題点があるとの知見を得た。
したがって、本発明の主たる課題は、カバーシートを取り外さずにリサイクル可能でありながら、コストが嵩まず、しかも防水性に優れる、収納箱を提供することにある。また他の課題は、カバーシートの破断強度にも優れる収納箱を提供すること、及びカバーシートの摩擦を軽減し、取り出しの円滑性にも優れる収納箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
箱上面に形成される又は形成された窓を有し、この窓を覆うようにスリットを有するカバーシートが設けられており、前記スリットを通して箱内に収容された繊維集合体を取り出すようにした収納箱であって、
前記カバーシートは、パルプ繊維を含む繊維集合層と厚さ6〜30μmの合成樹脂製防水フィルム層とをラミネートしたラミネートシートであり、
前記カバーシートの米坪は20〜70g/m2であり、且つ
前記カバーシートにおける前記パルプ繊維の含有量が51〜94重量%である、
ことを特徴とする繊維集合体の収納箱。
【0005】
(作用効果)
本発明によれば、カバーシートとして防水フィルム層をラミネートしたものを用いることにより、紙等の繊維集合層を用いることの利点(すなわち、カバーシートを取り外さずにリサイクル可能でありながら、コストが嵩まない)を損ねずに、防水性に優れるようになる、また、柔軟性を損ねずに強度を高めることができ、カバーシートの垂れ下がりも効果的に防止できる。しかも、これらの利点が防水フィルムをラミネートするだけで極めて容易に実現できる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
繊維集合層中に合成樹脂繊維を含み、その合成樹脂繊維と前記防水フィルム層とが同種の合成樹脂からなる、請求項1記載の繊維集合体の収納箱。
【0007】
(作用効果)
繊維集合層中に合成樹脂繊維と、防水フィルム層とに用いられる合成樹脂が同種であると両層の親和性が良好となり両層の接着性がよくなって強度が強いカバーシートとなる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記カバーシートの防水フィルム層側の面が、前記箱の上面の裏面側に位置している、請求項1又は2記載の繊維集合体の収納箱。
【0009】
(作用効果)
本項記載のように構成されていると、繊維集合体を取り出す際、繊維集合体がカバーシートの防水フィルム層側の面に接触して擦れるため、繊維集合層と合成樹脂製防水フィルム層との位置関係が逆の場合における繊維集合層に擦れる場合と比べて摩擦を軽減することができ、箱内に収容された繊維集合体を円滑に取り出すことができるようになる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
前記繊維集合層が紙であり、前記カバーシートは、前記紙の表面に前記防水フィルム層をラミネートしてなるものである、請求項2記載の繊維集合体の収納箱。
【0011】
(作用効果)
紙は裏面側に反る傾向がある。ここで、紙の裏面とはワイヤー面を意味し、紙の表面とはワイヤー面に対して反対側の面を意味する。また、本発明のように防水フィルム層をラミネートする場合、防水フィルムの収縮によりカバーシートの反りが発生する。したがって、前述のように、カバーシートの防水フィルム層側の面を箱内に収容された繊維集合体に対向させる構造において、繊維集合層として紙を用い、紙の裏面に防水フィルム層をラミネートすると、紙固有の性質に基づく反りに防水フィルムの収縮による反りが加わって、カバーシートにおけるスリットの両側が箱下面側に反り易くなる。このような反りが発生してしまうと、箱内の繊維集合体を取り出す際、取り出し開始時に、カバーシートのスリットの両端縁が、相対的に繊維集合体の繊維を掻き落すようになり、繊維粉の発生量が増加するといった問題点や、繊維集合体の取り出し抵抗が高くなり、円滑な取り出しが困難になるといった問題点、さらには後述するように複数枚のティッシュペーパーを収納して一枚ずつポップアップさせる場合、ティッシュペーパーが箱内に落ち込み易くなる(ポップアップ性の低下)といった問題点が発生するため好ましくない。
これに対して、本項記載のように紙の表面に防水フィルム層をラミネートすると、紙固有の性質に基づく反りと防水フィルムの収縮による反りとが打ち消しあうように反対向きに作用するため、カバーシートにおけるスリットの両側が箱下面側に反り難くなる。
【0012】
<請求項5記載の発明>
前記カバーシートにおけるスリットの両側が、箱上面に対して平行な面内に延在するか、又は上側に反り返っている、請求項1〜4の何れか1項に記載の繊維集合体の収納箱。
【0013】
(作用効果)
このようにカバーシートのスリットの両側が箱下面側に反っていないものであると、箱内の繊維集合体を取り出す際、常に、カバーシートのスリットの両側が繊維集合体の取り出し方向に沿って反るようになり、(イ)カバーシートのスリットの端縁が繊維集合体の繊維を掻き落とし難くなり、繊維粉の発生量が増加し難くなる、(ロ)繊維集合体の取り出し抵抗が増加せず、円滑な取り出しが可能になる、(ハ)後述するように複数枚のティッシュペーパーを収納して一枚ずつポップアップさせる場合、ティッシュペーパーが箱内に落ち込み難くなる(ポップアップ性の向上)といった作用効果が奏せられる。
【0014】
<請求項6記載の発明>
請求項1〜5のいずれか1項に記載の収納箱内に、複数枚のティッシュペーパーが積層状態で収容されてなるものであり、各ティッシュペーパーは複数の層をなすように折り畳まれており、上下に隣接するティッシュペーパーのうち下側のティッシュペーパーの最上層が上側のティッシュペーパーの最下層とその一つ上の層との間に挟まれている、ボックスティッシュ製品。
【0015】
(作用効果)
本項記載のようなボックスティッシュ製品では、ティッシュペーパーを一枚ずつ取り出す際、次のティッシュペーパーが引き出されて、その先端部がカバーシートのスリットに挟まれて保持される(所謂ポップアップ取り出し)ようになる。このような製品においては、カバーシートの防水性も重要であるが、取り出しの容易性の観点からは摩擦や強度が非常に需要になる。よって、本発明は特にこのような製品に好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、カバーシートを取り外さずにリサイクル可能でありながら、コスト的にポリエチレンフィルムの場合に釣り合い、しかも防水性に優れるようになるなどの利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態についてボックスティッシュ製品を例にとり説明するが、本発明は、他のシート状繊維集合体、あるいはコットンパフのような非シート状繊維集合体にも適用できるものである。
【0018】
(基本構造)
図1は、ティッシュの収納箱例1を示している。直方体状の紙箱1の上面1Bには、ミシン目などの切りこみ目が予め形成されており、使用開始時にその切りこみ目で囲まれる部分を剥ぎ取ることにより窓1Aが形成されるようになっている。窓1Aは予め開口されていても良いものである。
【0019】
窓1Aはカバーシート2で覆われている。より詳細には、カバーシート2のサイズは、その周縁部が窓1Aの周縁部と重なる程度に窓1Aのサイズより大きく形成されており、カバーシート2の周縁部が、箱1の内面(外面でも良い)における窓1Aの縁部に対して接着剤により接合されている。カバーシート2の形状は適宜定めることができるが、たとえば図示のように方形とすることができる。カバーシート2における窓1Aにより取り囲まれる部分には、箱1の長手方向に沿うスリット3が形成されている。スリット3は図示例のように窓1Aの全長より短くすることができる(スリット3の両端が窓1Aの端縁から離間している)ほか、全長と同一あるいは窓1Aの両端より長く形成する(スリット3の両端が窓1Aの端縁まで達している)ことができる。
【0020】
箱1の内部には、図2に示すように、複数枚のティッシュペーパー4が積層状態で収容されている。各ティッシュペーパー4は上下2層構造をなすように2つ折りで折り畳まれており、上下に隣接するティッシュペーパー4のうち下側のティッシュペーパー4の上層4uが上側のティッシュペーパー4における上下層間4u,4b間に挟まれている。図示しないが、各ティッシュペーパーを上層・中層・下層の三層構造をなすようにZ字状に折り畳み、上下に隣接するティッシュペーパーのうち下側のティッシュペーパーの上層を上側のティッシュペーパーの中層と下層との間に挟むこともできる。この場合、カバーシート2のスリット3を通してティッシュペーパー4を一枚ずつ取り出す際、次のティッシュペーパー4が引き出されて、その先端部がカバーシート2のスリット3に挟まれて保持される(所謂ポップアップ取り出し)ようになる。
【0021】
(カバーシートについて)
本発明は、上述のカバーシート2として、図2に示すような、パルプ繊維を含む繊維集合層2Aの片面にのみ、合成樹脂製防水フィルム層2Bをラミネートしたラミネートシートを用いるものである。両面に防水フィルム層2Bをラミネートすることもできなくはないが、本発明のようにパルプ繊維含有量を51重量%以上にする場合、防水フィルム層2Bが薄くなり過ぎ、十分な防水性を得られなくなるおそれがある。
【0022】
本発明では、特に図示形態のように、カバーシート2の防水フィルム層2B側の面が、箱1の下面側に位置するように構成されていると好ましいが、逆でも良い。なお、図2は概略図であり、見易さのために、箱1・カバーシート2・ティッシュペーパー4の厚さ、ティッシュペーパー4間の間隔、ティッシュペーパー4と箱1内面との間隔等を誇張して示してある。
【0023】
カバーシート2における繊維集合層2Aは紙からなる層であるのが好ましい。特に図示形態のように、カバーシート2の防水フィルム層2B側の面が、箱1の下面側(内部に収容されたティッシュペーパー4側)に位置するように構成されている場合、紙2Aの表面に防水フィルム層2Bをラミネートすると、紙固有の性質に基づく反りと防水フィルムの収縮による反りとが打ち消しあうように反対向きに作用するため、カバーシート2におけるスリット3の両側が箱下面側に反り難くなる。特に、この作用を利用して、カバーシート2におけるスリット3の両側が、箱上面1Bに対して平行に延在するか、又は上側に反り返るように構成されているのは好ましい。
【0024】
図3(a)は、カバーシート2におけるスリット3の両側が箱上面1Bに対して上側に反り返っている場合を示している。このような非取り出し時形状を有していると、箱1内のティッシュペーパー4を取り出す際、常に、図中に二点鎖線で示すように、カバーシート2のスリット3の両側がティッシュペーパー4の取り出し方向に沿って反るようになる。図示しないが、カバーシート2におけるスリット3の両側が、箱上面1Bに対して平行に延在している場合も同様である。この結果、カバーシート2のスリット3の端縁がティッシュペーパー4の繊維を掻き落とし難くなり、繊維粉の発生量が増加し難くなる。また、ティッシュペーパー4の取り出し抵抗が増加せず、円滑な取り出しが可能になる。さらに、ポップアップに際して、ティッシュペーパー4が箱1内に落ち込み難くなる。
【0025】
図3(b)は、カバーシート2におけるスリット3の両側が箱上面1Bに対して下側に反り返っている場合を示している。このような非取り出し時形状を有していると、箱1内のティッシュペーパー4を取り出す際、取り出し開始時に、図中に二点鎖線で示すように、カバーシート2のスリット3の両端縁がティッシュペーパー4の表面を掻き下げるようになる。この結果、カバーシート2のスリット3の端縁がティッシュペーパー4の繊維を掻き落とし、紙粉の発生量が増加するといった問題点や、ティッシュペーパー4の取り出し抵抗が高くなり、円滑な取り出しが困難になるといった問題点、ポップアップに際して、ティッシュペーパー4が箱1内に落ち込み易くなるといった問題点が発生する。
【0026】
カバーシート2における繊維集合層2Aは不織布層であっても良い。不織布層としては、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布などの公知の不織布を用いることができる。
【0027】
繊維集合層2Aで用いるパルプ繊維としては、グランドウッドパルプ(GP)・プレッシャーライズドグランドウッドパルプ(PGW)・サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、セミケミカルパルプ(CP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)・針葉樹高歩留り未晒クラフトパルプ(HNKP)・針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)・広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)・広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の化学パルプ、ならびにデインキングパルプ(DIP)・ウェイストパルプ(WP)等の古紙パルプのうち、一種または二種以上を選択して用いることができる。特に、リサイクル性及び強度の観点から針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)が好適である。
【0028】
パルプ繊維の含有量は、カバーシート2全体における割合で51〜94重量%とされるが、70〜80重量%であると特に好ましい。カバーシート2におけるパルプ繊維の含有量が50重量%以下では、リサイクル時にカバーシート2を分離除去する必要がある。また、カバーシート2におけるパルプ繊維の含有量が過度に多くなると、防水フィルム層2Bが薄く、弱くなり、防水性能の確保が困難になるとともに、カバーシート2の強度向上が乏しくなる。
【0029】
また、このパルプ繊維含有量を満たす限り、繊維集合層2Aに他の繊維や添加物を含有させることができる。他の繊維としては、パルプ以外の天然繊維、合成繊維、半合成繊維(アセテート)、再生繊維(レーヨン)、無機繊維などの化学繊維を用いることができる。合成繊維としては、ナイロン等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ビニロン等のポリビニルアルコール系、ロービル、デビロン等のポリ塩化ビニル系、サラン、クレハロン等のポリ塩化ビニリデン系、オーロン、アクリラン、クレスラン、ボンネル、カシミロン、ダイネル、カネカロン、エクスラン等のアクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、テフロン等のフルオロカーボン系、スパンデックス等のポリウレタン系の単成分繊維、あるいはこれらの複数の物質を用いた多成分繊維を用いることができる。
【0030】
多成分繊維としては、複合繊維及び混合繊維のいずれも用いることができる。複合繊維としては、2層型(並列型、芯鞘型)、及び多層型(多重並列、多芯、放射状)のいずれも用いることができ、混合繊維としては、粒状混合型及び針状混合型のいずれも用いることができる。芯鞘構造の複合繊維の例としては、芯/鞘=PP(ポリプロピレン)/PP(ポリプロピレン)、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)/低融点PET等を挙げることができる。
【0031】
他の繊維の太さは、0.5〜10dtex、特に1〜8dtexであるのが好ましく、繊維長は2〜30mm、特に3〜20mmであるのが好ましい。配合量は、パルプ繊維に対する重量比(他の繊維の重量/パルプ重量×100)で50〜75%、特に50〜65%とするのが好ましい。この範囲内であれば、パルプ繊維に対して良好に混合することができ、一体性の高い繊維集合層2Aを形成することができる。
【0032】
また、繊維集合層2Aにおける添加物としては、乾燥又は湿潤紙力増強剤や、サイズ剤等を用いることができる。サイズ剤としては、ロジン系に代表される酸性サイズ剤と中性サイズ剤であるアルキルケテンダイマーなどを使用できる。サイズ剤の添加量としては、パルプ繊維に対し0.01〜0.2重量%添加するのが望ましい。
【0033】
一方、防水性フィルム層2Bとしては、厚さ6〜30μmの合成樹脂からなるものであれば特に限定されない。より好ましい厚さは10〜20μmである。防水フィルム層2Bが薄すぎると防水性及び強度の向上が不十分となり、厚過ぎても効果が飽和するだけで、コストが嵩む、パルプ含有量を50重量%以上に確保し難くなる。カバーシート2全体の厚みは適宜定めることができるが、15〜100μmであると好ましい。
【0034】
防水性フィルム層2Bとしては、ナイロン等のポリアミド系、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系、ビニロン等のポリビニルアルコール系、ロービル、デビロン等のポリ塩化ビニル系、サラン、クレハロン等のポリ塩化ビニリデン系、オーロン、アクリラン、クレスラン、ボンネル、カシミロン、ダイネル、カネカロン、エクスラン等のアクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、テフロン等のフルオロカーボン系、スパンデックス等のポリウレタン系の合成樹脂フィルムを用いることができる。特に、汎用の熱融着性樹脂である点で、ポリオレフィン系合成樹脂フィルムが好適である。
【0035】
また、繊維集合層中に合成樹脂からなる繊維を含有させるのであれば、防水性フィルム層については、前記繊維を構成する合成樹脂と同種の合成樹脂により形成するのがよい。繊維集合層との防水フィルム層との親和性が高まり、両層の接着性がよく強度の面及び防水性の面で好ましい形態となる。
【0036】
防水性フィルム層2Bの米坪は、カバーシート2の全米坪及びパルプ等の他の原料の配合を考慮しながら適宜定めることができるが、6〜30g/m2、特に10〜20g/m2であるのが好ましい。
【0037】
他方、カバーシート2の米坪は20〜70g/m2とされる。より好ましい範囲は30〜70g/m2である。カバーシート2の米坪が低過ぎると、カバーシート2の強度向上が乏しくなるとともに、防水性能の確保も困難になり、高過ぎると、自重によりカバーシート2が垂れ下がる、あるいはカバーシート2が硬くなり過ぎて取り出し時にティッシュペーパー4が破けるおそれがある。
【0038】
かくして構成された収納箱1では、後述の実施例からも明らかなとおり、カバーシート2のパルプ含有量が51重量%以上であり、カバーシート2を取り外さずにリサイクル可能でありながら、コストが嵩まずに、防水性に優れるようになる。また、防水性フィルム層2Bをラミネートしたことにより、柔軟性を損ねずに強度を高めることができ、カバーシート2の垂れ下がりも効果的に防止できる。特に図示形態では、ティッシュペーパー4を取り出す際、ティッシュペーパー4がカバーシート2の防水フィルム層2B側の面に擦れるため、繊維集合層2Aに擦れる場合と比べて摩擦を軽減することができ、箱1内に収容されたティッシュペーパー4を円滑に取り出すことができるようになる。
【実施例1】
【0039】
表1に示す各種カバーシート(実施例及び比較例)を用い、図1に示すものと同じボックスティッシュ製品をそれぞれ製造し、ポップアップ性、防水性、強度、及び摩擦軽減性能をそれぞれ評価した。
なお、ポップアップ性については、2プライのティッシュペーパー200ウェブ(枚)を箱上面に対して垂直方向に連続して取り出すテストを10回行い、最後まで落ち込むことなく取り出すことができた場合を「良」として、10回全て「良」であるものを◎とし、8〜9回「良」であるものを○とし、5〜7回「良」であるものを△とし、「良」が4回以下であるものを×として評価した。
また、防水性については、水平面に静置した箱のカバーシート表面に水5mlを滴下し、1時間放置した後の裏抜けを確認し、裏抜け無しであるものを○とし、裏抜けは無いが紙の収縮があるもの(ピンホールのおそれがある)を△とし、裏抜けがあるものを×として評価した。
さらに、カバーシートの強度については、2プライのティッシュペーパー200ウェブ(枚)を箱上面に対して垂直方向に連続して取り出したとき、破れ・伸びが発生しなかったものを◎とし、破れは発生しなかったが伸びが認められたものを○とし、破れが発生したがポップアップ可能であったものを△とし、破れが発生し、ポップアップが不可能になったものを×として評価した。
さらに、摩擦軽減性能については、2プライのティッシュペーパー20ウェブ(枚)を箱内に収納し、そのうち10ウェブを箱上面に対して垂直方向に連続して取り出すテストを5回行い、箱内に発生した紙粉量を目視で確認した。PEフィルムからなるカバーシートを備えた標準品を製造し、同様に紙粉量を確認した。その結果、紙粉量が標準品よりも少ないものを○とし、紙粉量が標準品と同等であるものを△とし、紙粉量が標準品以下であるものを×として評価した。
評価結果を表1に併記した。同表からも明らかなとおり、本発明に係る実施例においては、高い防水性が発揮された。また、一部の実施例においては、ポップアップ性、強度、摩擦軽減性においても優れていた。
【0040】
【表1】

【実施例2】
【0041】
次いで、防水フィルム層を有することの優位性を示すべく、カバーシートとして防水フィルムを用いた本願発明の実施例(構造は図1に示すものと同様)とそのカバーシートを紙のみからなるものとした比較例とについて、ポップアップ性、防水性、強度、及び摩擦軽減性能をそれぞれ評価し比較した。実施例及び比較例の物性は、評価試験結果とともに表2に示す。なお、各評価方法及び各試験方法は上記実施例1と同様である。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から明らかなとおり、防水フィルム層を有するカバーシートとした本発明の実施例は、紙のみのカバーシートとした比較例と比べて、ポップアップ性、防水性、強度、摩擦低減性のすべての項目で優位となる結果が得られた。
【実施例3】
【0044】
次いで、防水フィルム層が箱内面側に位置されていることの優位性を示すべく、防水フィルム層を箱内面側にした実施例(構造は図1に示すものと同様)とそのカバーシートの表裏を反対にして防水フィルム層が箱外面側とした比較例について、ポップアップ性、防水性、強度、及び摩擦軽減性能をそれぞれ評価し比較した。実施例及び比較例の物性は、評価試験結果とともに表2に示す。なお、各評価方法及び各試験方法は上記実施例1と同様である。
【0045】
【表3】

【0046】
表3から明らかなとり、実施例については各試験において良好な結果が得られたが、比較例については摩擦軽減性について劣る結果となった。従って、防水フィルム層に関しては箱内面側に位置させるのが望ましい態様である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ティッシュペーパーのようなシート状繊維集合体、又はコットンパフのような非シート状繊維集合体の収納箱に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ボックスティッシュ製品の概要斜視図である。
【図2】ボックスティッシュ製品の要部を示す縦断面図である。
【図3】ボックスティッシュ製品の要部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…箱本体止、1A…窓、2…シート、2A…繊維集合層、2B…防水フィルム層、3…スリット、4…ティッシュ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱上面に形成される又は形成された窓を有し、この窓を覆うようにスリットを有するカバーシートが設けられており、前記スリットを通して箱内に収容された繊維集合体を取り出すようにした収納箱であって、
前記カバーシートは、パルプ繊維を含む繊維集合層と厚さ6〜30μmの合成樹脂製防水フィルム層とをラミネートしたラミネートシートであり、
前記カバーシートの米坪は20〜70g/m2であり、且つ
前記カバーシートにおける前記パルプ繊維の含有量が51〜94重量%である、
ことを特徴とする繊維集合体の収納箱。
【請求項2】
繊維集合層中に合成樹脂繊維を含み、その合成樹脂繊維と前記防水フィルム層とが同種の合成樹脂からなる、請求項1記載の繊維集合体の収納箱。
【請求項3】
前記カバーシートの防水フィルム層側の面が、前記箱の上面の裏面側に位置している、請求項1又は2記載の繊維集合体の収納箱。
【請求項4】
前記繊維集合層が紙であり、前記カバーシートは、前記紙の表面に前記防水フィルム層をラミネートしてなるものである、請求項1〜3の何れか1項に記載の繊維集合体の収納箱。
【請求項5】
前記カバーシートにおけるスリットの両側が、箱上面に対して平行な面内に延在するか、又は上側に反り返っている、請求項1〜4の何れか1項に記載の繊維集合体の収納箱。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の収納箱内に、複数枚のティッシュペーパーが積層状態で収容されてなるものであり、各ティッシュペーパーは複数の層をなすように折り畳まれており、上下に隣接するティッシュペーパーのうち下側のティッシュペーパーの最上層が上側のティッシュペーパーの最下層とその一つ上の層との間に挟まれている、ボックスティッシュ製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−1334(P2009−1334A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284244(P2007−284244)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】