説明

織り機

【課題】織物を一時的に把持し、送風装置と連動する把持装置が設けられた織り機を提供する。
【解決手段】送風装置23は、把持装置18の一時的な調整解除を行う。好ましくは、把持装置18は、筬打ち手段11に機械的に接続されている。これにより、筬打ち手段11によって送風装置23が制御可能となる。前記接続は、例えば把持力を生成または解除する機械的変速(広い意味での機械的変速)により実現され得る。調整可能であり選択可能な織り機1の動作期間において織物の解除が制限的に行われるため、織り機1は様々な種類の織物に容易に適応可能である。また、織物の縦方向の引張りが少ない動作を提供することもできる。本発明に係る把持装置18は、少ない労力で様々な状況に適応可能な展延機として機能することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物を製造するための展延機を含む織り機に関する。
【0002】
織り機で製織された織物(ファブリック)の品質は、織り機の織物展延機によって決まるといっても過言ではない。展延機は、織物の横方向に収縮する性質に対抗する機能を有する。実用化されている既存の展延機としては二種類あり、正ロック式のピンによって回転可能に支持されたホイールによって、織物の端部を把持し、左右に伸展させるために使用される「円筒展延機」と、展延台において画定されるスリットの後方に配置された把持ロッドに誘導され巻き付けられる織物を保持するために使用される「ロッド展延機」が挙げられる。例えば、欧州特許第1308546B1号は、このようなロッド展延機を開示している。この文献は、ロッド展延機と摩擦面に押付けられる円筒把持具が交換可能であることも開示している。
【0003】
円筒展延機を使った場合でも、製織された織物に生じた歪みが常に無視できるほどではなく、調整を誤れば、織りキズが生じることもある。それでもなお、円筒展延機は奏功しているといえる。一方、ロッド展延機の使用は、数種類の織物に限定されているのが現状である。
【0004】
展延機の動作は、所望される織物の品質を確実とするために、製織される織物に対して極めて慎重に調整されなければならない。
【0005】
この点において、ロッド展延機は、織物を横方向に引っ張る力を付与しない。この結果、ロッド展延機は、リード(筬)によって予め指定された幅通りに織物の繊維(ウェブ)を保持するため、筬打ち部や織物拘束点のごく近傍に配置される必要があった。織物は、織物に付与される縦方向の引張り動作だけでロッド展延機の所定の位置で把持される。リードに打ち込まれている間、筬打ち部とロッド展延機の間の織物部分(織物前縁部)がロッド展延機へ押し当てられ、ロッド展延機の把持動作を短時間停止させる。このように、ロッド展延機は、織物に対して緩やかに自立自動式に動作する。しかしながら、このような解除(離す)動作を行うには、織物の縦方向の引張り加減と把持ロッドの適切な直径を注意深く調整する必要があった。この場合、展延機のプロファイルをそのまま変更せずに、把持ロッドの直径のみを変えることは、極めて大掛かりな手仕事を必要とし、長期的な作業停止につながる場合もある。従って、実際的な問題として、織物展延機の力の関係を変更するために、把持ロッドを頻繁に交換することは、論外であった。
【0006】
また、ロッド展延機は、逆戻り能力を持たない。経糸が切れた場合の一般的な問題解決方法は、織物を逆戻りさせて、問題の部分を取り除き、織物をその前の位置に戻すことであったが、この方法では、織物を前後方向に送ることが必要とされていた。従って、機能面に限定した場合、ロッド展延機は、緯糸(よこいと)の筬打ち時における織物の間欠送りが前方向のみに限定されているという問題があった。
【0007】
上述のように、適切な織物の引張り加減に応じた適切な把持力の調整に関する問題において、ロッド展延機が、基本的には、リードによって予め限定された幅に沿って、織物を破壊することなく保持することが可能であっても、即ち、織物の横方向の収縮を防止することが可能であっても、従来のロッド展延機は、汎用される類の展延機ではなかった。一方、円筒形展延機は、織物に横方向の引張り力を有効に付与し、これによって、織物に高い応力が掛かるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、簡単な構造によって確実に動作し、適用できる最も簡単な方法で調整可能な織物展延機を有する織り機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る織り機は、製織された織物の展延状態を保持するための把持装置を含む。把持装置は、少なくとも一つの織物縁部に作用する少なくとも一つの把持具を含む。把持具は、織物の幅全体に沿って伸展されて、織物の両縁部に作用するだけでなく、これら両縁部の間に位置する織物にも作用する。織物の裏側に配置された受け面において両方の織物縁部を把持することによって、把持具が、少なくとも一つ、好ましくは、少なくとも二つの織物縁部に作用するように、把持具を構成することも可能である。また、把持装置は、織物拘束点、即ち、リード又は筬打ち手段の織物側の端部のごく近傍に配置される。従って、極短の織物部分(織物前縁部)のみが織物拘束点と把持装置の間に形成され、その経糸方向の長さは数mm〜数cmに過ぎない。
【0010】
把持装置は、少なくとも織物縁部を把持することによって幅全体に沿って織物を把持し、これによって、リード又は他の筬打ち手段によって予め指定された幅を固定させる。この場合、把持装置は、織物の横方向の収縮を穏やかに防止する。
【0011】
把持装置は、機械的変速機(トランスミッシヨン)を介して筬打ち装置に接続された送風装置と連動する。送風装置は、限定された回数、又は、予め指定した回数だけ、把持装置を、短時間、解除するために配置されている。即ち、把持具は、少なくとも短時間だけ、その受け面から離間移動されるか、又は、少なくとも解除される。これにより、送風期間中、把持力が、略削減されるか又は完全に排除される。また、受け面が、把持具から離間されて移動することもできる。この場合、織物への把持作用も実行されない。送風装置の活動時間は、筬打ち手段又はリードの打ち込み時間と略同じであることが好ましい。筬打ち手段は、織物筬打ち縁部にある緯糸を織物前縁部へ打ち寄せるために使用される。好ましくは、この筬打ち動作中又はこの動作直後に、織物を経糸方向に一段寄せるために、送風装置が把持装置を短時間解除する。この場合、この段の幅は、経糸方向(織物の縦方向)の一回の緯糸の筬打ちによって生成される織物の長さに等しい。具体的には、リードに代わって、送風装置が織物を展延する作業を実行できるので、好ましくは、リードが緯糸を打ち詰める織物拘束点にリードが達した時に、送風装置を始動させる。
【0012】
送風装置と筬打ち装置の機械的接続によって、送風装置の動作は、筬打ち手段の動作と位相固定式に同期する。把持装置の送風は、ロッド展延機のように織物前縁部に掛かる押圧力によって自己制御式に行われるのではなく、送風装置によって遠隔的に制御され、製織された織物の機械的特性などとは全く無関係に、限定された方法において実行されるものである。したがって、把持具や他のいかなる要素も変更せずに、把持力、送風時間、送風の継続期間、送風ストロークなどの調整を達成することができる。これにより、総合的な設定手段が必要とされる場合には、設定手段は、従来のロッド展延機に比較して容易に実行できる。
【0013】
更に、本発明は、送風ストロークと筬打ち点の間の所望される時間的関係を前もって判断することを可能とする。従来のロッド展延機では、ロッド展延機の把持動作の解除は、筬打ち動作によって自動発生したので、時間的には後者(筬打ち動作)に一致しているが、本発明の織り機における送風ストロークは、例えば、緯糸の筬打ち後まもなく、明示的に特定された時間で、設定することができる。これにより、例えば、しっかり筬打ちされた(風合いの整った)織物、即ち、高密度の織物の製造が可能となる。ロッド展延機によって高把持力を生成するために、ロッド展延機の場合に必要とされる織物の非常に大きな縦方向への引張り力は、本発明の織り機では不要とされる。本発明の織り機を考慮した場合、把持装置が付与する把持力は、ロッド展延機におけるような織物の縦方向の引張り動作から導かれるものではない。一方、本発明の織り機によれば、把持具に作用する把持力は、例えば、織物に対して把持具を付勢させるバネ手段又は他の力生成手段などの独立した手段によって生成される。バネ手段は、例えば、引張りバネ、圧縮バネ、又は板バネなどの機械的バネであってよいし、又は、力生成手段は、水圧式、又は、空気圧式シリンダなどの流体シリンダであってよい。
【0014】
バネ手段は、バネ力が調整可能であってもよい。しかしながら、好ましくは、調整能力は省略され得る。殆どの種類の織物において、把持力の大きさは送風のための力の調整ほど重要ではない。
【0015】
また、本発明の概念は、例えば、掴み誤り(ミスピック)を修正するために、織物を逆戻りさせる際、メンテナンスの為に把持装置を意図的に解除することも可能である。
【0016】
更に、本発明の織り機は、設定された回転数とは殆ど無関係に、少なくとも緯糸の筬打ち及び把持装置と協働して動作する。展延機における織物の把持や解除は、織物自体によっては実行されず、送風機によって強制的に実行される。従って、織り機の製織速度が徐々に高くなっても、展延機における織物の把持や解除は、その影響をまったく受けずに、実行される。
【0017】
連続的に配置され得るいくつかの把持装置を用いることによって織物の収縮が防止又は削減され得る。言い換えれば、いくつかの受け面及び対応ロッド又は把持具の配置によって、送風装置が把持力を低下又は削除した場合でも、織物の展延が最適または確実に行われる。
【0018】
数本のロッドを互いに平行に又は経糸方向に一列に配置することも可能であり、これによって、第1のロッドは時計方向、第2のロッドは反時計方向といった様々な方向で、織物がロッドに巻付けられる。この結果、送風装置が把持力を除去した場合でも、織物の逆戻りする性質が阻止される。一列に並んだロッドの配置を考慮すると、送風装置を一つ、および織物拘束点に最も近接しているロッドに把持具を一つ、設けることで十分である。
【0019】
本発明の実施の形態の更なる詳細は、図面、明細書、又は請求項の要旨である。この説明は、本発明の基本的な態様及び様々な状況に限定されているが、図面は更なる詳細を開示しており、補足的な知識として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基本的な織り機の細部を概略的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による筬打ち装置、把持装置、及び送風装置を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による筬打ち装置、把持装置、及び送風装置を概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態による筬打ち装置、把持装置、及び送風装置を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態による筬打ち装置、把持装置、及び送風装置を概略的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態による筬打ち装置、把持装置、及び送風装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、織物2を製造するために使用される織り機1を示している。このため、経糸束3が、(具体的には図示されていない)経糸ビームによって綜絖枠4へ案内される。綜絖枠は、緯糸を通すために用いられる杼口(隙間)5を形成するように配置される。ここで、経糸束の経糸6の一本一本と経糸束の他の経糸7の一本一本が互い離間されて上下方向に展延される。綜絖枠4の動作は、図1において矢印で示されている。
【0022】
綜絖枠を駆動するために使用される手段は、具体的には示されていない。同様に、緯糸通しに用いられる手段の図示も省略されている。しかしながら、原則として、例えば、ロッド又はウェブ(繊維)把持具等の緯糸把持具、エアジェット、織りシャトル(杼)などの織り機に共通している全ての緯糸通し手段が、使用され得る。同様に、杼口を形成するには、綜絖枠4、様々な端部アイレットを有する綜絖(ヘルド)、ジャガード綜絖などの杼口を形成するために好適な任意の手段を使用することも可能である。従って、本発明の例示的な実施の形態において、綜絖枠4は、杼口5の形成手段8を設計するために様々な技術的選択肢があることを前提に例示されているにすぎない。
【0023】
織物拘束点又は筬打ち縁部10において杼口5に通された緯糸9を筬打ちするために、例えば、筬(リード)12などの筬打ち手段11が設けられている。リード12は、筬歯又はリードロッドと称されて筬柄(バトン)14上で保持されている、多数の個々のブレード13を含む。ブレード13は、経糸6間の隙間と筬打ち縁部10に向かって収束する経糸7間の隙間へ移動する。ここで、経糸は、緯糸9を筬打ち縁部10に押し込み、この緯糸9を打ち込む。筬打ち動作は、一本だけの緯糸が通った後、又は、数本の緯糸が通った後に、行われる。
【0024】
好ましくは、バトン14は、回転軸15を中心に回転可能に支持される。バトン14を回転軸15に接続させる、対応する揺子6は、「筬通し」と呼ばれる。
【0025】
バトン14は、回転軸15を中心とする旋回動作をしながら、前後に揺動するように駆動される。関連する駆動装置17が、図1に概略的に示されており、揺子16及び/又は回転軸15と実質的に機械的連通している。図1は、駆動接続を二重破線で示している。駆動装置17は、筬打ち手段11のための駆動として設けられているサーボモータなどであってよい。この駆動装置は、綜絖枠4又は任意の杼口形成手段8の駆動とは独立していてもよい。例えば、互いに異なるが共通している制御によって同期的に駆動されるサーボモータが、杼口形成手段8と筬打ち手段11を駆動するために使用され得る。他の実施の形態によれば、駆動装置17は、杼口形成手段8のみならず筬打ち手段11も駆動する中央駆動装置であってよい。
【0026】
更に、織り機1は、筬打ち縁部10の近傍の所定位置において筬打ち縁部10から送り出される製織された織物2を把持する把持装置18を含む。把持装置18は、織物2を縦方向に引っ張る力に抗して、織物2を保持し、これによって、把持装置18と筬打ち縁部10の間にある織物前縁部19は、筬打ち動作に対して、即ち、緯糸9に対して、十分に安定した受け面を提供する。
【0027】
把持装置18は、少なくとも一つの把持具20と、台22の、例えば、平坦又は湾曲した把持面の形態の受け面21と、を含む。好ましくは、受け面21の表面は、把持具20と相補的に形成されている。好ましくは、受け面21は静止しているように配置される。或いは、受け面は移動可能に、例えば、調節可能に配置されてよい。
【0028】
把持措置18を把持位置及び解除位置へ移動させるための送風装置23が設けられている。把持装置は、把持具20が受け面21を押す力を削減するか、又は、回避するように一時的に制御され、所望があれば、把持具20を受け面21から離間させるように配置される。送風装置23は、筬打ち手段11又はその駆動装置17と直接的に駆動連通している。従って、筬打ち手段11と送風装置23は、同一の駆動装置17によって駆動される。
【0029】
図2は、例えば、本発明の例示的な実施の形態による把持装置28と送風装置23を示している。
【0030】
把持具20は、例えば、円筒のローラ又は円筒形のロッド24として形成されている。ロッド24は、経糸の縦方向と交差した方向に配向され、製織された織物2の幅に沿って延在している。従って、上述のロッドの長さは、織物の幅よりも大きい。
【0031】
好ましくは、ロッド24は、減速せずに回転するように適切な担体上で支持される。担体は、例えば、展延台22の両側にアームを有する枠25であり、アームの長さは、ロッド24の直径より大きい。また、アームは、ロッド24から遠隔位置にある端部26を有している。端部26は、台22に対して静止している支持体上で枢軸的に支持されている。或いは、ロッド24は、枠25や他の適切な支持体から回転開始し、減速式又は非回転式に調整できる。
【0032】
把持具24、受け面21、所望があれば、フレーム25以外に、把持装置18は、例えば、受け面21に対して把持具24を付勢するように配置される一つ以上のバネ手段27を含む。この場合、バネ手段27の力は、把持具20と受け面21の間に把持された織物が、織物に作用する縦方向の引張り力と筬打ち手段11から印加される筬打ち力によって前方移動することがないように、大きさが決定される。
【0033】
把持具20の制動効果を高めるために、枠25上の把持具20の回転を永久に又は一時的に回避又は防止することも可能である。それには、例えば、把持具20が枠25上で非回転式に支持される摩擦軸受又は固定装置の形態の非制御の制動装置を使用することができる。この場合、円筒形とは異なる表面形状の把持具20、それに対応する受け面21の提供も可能である。また、制動装置の一時的な解除も可能である。例えば、吸引型の電磁石の形態などの電動装置によって、制動装置を高い制動力の能動状態又は低い又は極少の制動力の受動状態に切り替えることができる。
【0034】
把持装置18と協働する送風装置23は、バネ手段27から発生し把持具20を受け面21へ付勢する力を、最小限に抑えるか、又は、必要に応じて、回避するように、設定される。後者の場合、送風装置23は、把持具20を、受け面21から離間させた状態で、最低限、例えば、1mm又は数mm単位で、移動させるように作用し、これによって、把持具20が「送風ストローク」を実行する。しかしながら、送風装置23が、必ずしも、このような送風ストロークを強制しないことに注意されたい。把持具20が回転可能に支持されるロッド24である場合は特に、織物を縦方向に移動可能にするために、把持装置18の把持力を十分に削減することができる。
【0035】
本発明の例示的な実施の形態によれば、送風装置23は、回転軸15やこの回転軸15に固定的に連結された揺子16やバトン14など任意の他の構成部品と、把持具20と、の間に動力伝達接続を設立する変速機28を含む。変速機28は、連係機構であり、この連係機構は、例えば、指定された方向で静止している受け面31上で摺動するくさび32を移動するためにバネ30の力に抗して、バトン14又は揺子16によって枢転する枢転可能支持梃子29を含む。(枠25が移動中の場合)バネ27力に抗して枠25を枢転させるように枠25の対応する要素33に当接し、次に、把持具20が受け面21から離間移動するように、くさび32を配置してもよい。
【0036】
図6は、本発明の例示的な実施の形態による把持装置18を示している。把持装置18は、展延機ローラの形態を取っている把持具20の他に、第2の展延機ローラ20’を含む。織物2は、展延機ローラ20,20’に巻回され、これによって、ループ方向が変化する。例えば、織物2は、反時計方向において展延機ローラ20に巻回され、時計方向において展延機ローラ20’に巻回される。これによって、織物はいくらか抑制を受けるため、受け面21が展延機ローラ20と相互に作用しない場合、即ち、送風装置23が、受け面21と展延機ローラ20の間に作用する力を排除したか又は殆ど排除した場合、織物が逆戻りする可能性が削減される。受け面21と展延機ローラ20の動作は、展延機ローラ20の受け面21又は受け面台22に対する部分的移動によって(逆の可能性もある)発生し得る。示されているように、把持装置18は、いくつかの(この場合、二つ)の展延機ローラ20、20’と、展延機ローラ20と協働する受け面21のみを含む。展延機ローラ20と受け面21の他の組み合わせも可能である。把持具又は展延機ローラの表面を、展延機ローラ20、20’の回転中に織物2の展延状態を保持する力を受け易いように形成することもできる。例えば、展延機ローラ20、20’は、スチール製であり、端部に向かって延出する表面隆起部を有しており、展延機ローラ20、20’の回転中の織物の展延状態が保たれる。隆起部の回転方向、即ち、隆起部によって形成される溝が、展延機ローラ20、20’の途中において変化する。これによって、織物2の展延状態を保つ力が、織物縁部の方向に作用する。
【0037】
以上に記載された織り機は、以下のように作用する。
【0038】
図1による織り機1の動作中、綜絖枠4は、上下の経糸6、7によって、杼口5を開閉するために、個々に、又は、いくつかに分かれて、上下移動する。杼口5が開かれると、緯糸9は、経糸に直交する方向の杼口5へ通される。通った緯糸9は、リード12によって、織物2の筬打ち縁部10へ筬打ちされる。駆動装置17によって旋回動作が(図1の時計方向)生じ、筬歯13が、経糸6と経糸7の間を通り、(図1の右手側の)織物拘束位置に届くまで、一本以上の緯糸9を押し寄せる。この動作時間の一部にすぎないが、この間も、把持装置18は、織物をしっかりと保持している。
【0039】
例えば、所与の時点において、経糸の打ち込みの直後、又は、打ち込み動作中、送風装置23が起動される。送風装置23は、把持具20と受け面21の間に作用するとともに織物2をしっかりと保持する把持力が、少なくとも部分的に、補正され、好ましくは、削減又は除去されることを可能にする。図2に示されている実施の形態によれば、これは、ロッド24が、10分の1mm程度、持ち上がるようにくさび32を右側へ移動することで、達成される。次に、織物は一旦解除され、リード12によって一段だけ前方へ押し詰められる。この段の長さは、例えば、経糸の縦方向において測定される織物部分の長さに等しく、織物部分は、筬打ちされる緯糸によって生成される。好ましくは、筬打ち手段11が筬打ち縁部10に接触している間、送風装置23は織物2の把持を停止するが、送風装置23に代わって、打ち込み手段11が、織物2を展延する作業を行う。
【0040】
送風装置23については、いろいろな設計方法がある。例えば、図3によれば、送風装置23は、カムプレートの形態の回転軸15に接続されているカム34と、例えば、カム34の外周にバネ36の力によって押圧されるカム従動子35と、を含む。カム従動子35の動作は、梃子37と引張り手段38を介して、把持具20へ伝達される。上記同様、把持具20は、円筒形のロッド24である。それ以外は上記説明と略同じである。
【0041】
この実施の形態によれば、変速機28は、カム34、カム従動子35、例えば、揺子として設計されたニ腕梃子27、引張り手段38、及びバネ36を含む。ニ腕梃子27は、回転の定常中心39を回転可能に支持されている。この場合、送風装置23は、受け面21に把持具20を当てる力のみならず送風力も供給する。把持力は、カム34がカム従動子35を回転軸15から径方向に離間変位させることによって能動的に生成される。送風ストロークは、カム34の円周上の凹部40によって生成される。この場合、送風ストロークは、バネ36によって実行される。
【0042】
図4は、他の実施の形態の送風装置23を示す。把持具20は、引張り手段38と引張りバネ41を介して、受け面21に対して付勢される。細い帯板又はロッドとしての引張り手段38は、上述の実施の形態と同様に、把持具20の端面と接触している。上記同様、把持具20は円筒ロッド24として形成される。把持力は引張りバネ41から生成される。
【0043】
この実施の形態によれば、変速機23は、ここでも、カム34と、例えば、カム34の円周上で回転可能に支持されると共に移動するローラの形態をしており、ローラがニ腕梃子37の一端で支持されているカム従動子35と、梃子37に送風ストロークを引張り手段38まで延長させるクラッチ42と、を含む。図示されているように、クラッチ42は、梃子37に形成された細長い開口であってもよく、引張り手段38に連結されている連係ブロック43が、細長い開口に配置するか、又は、他の適切な方法で連結される。
【0044】
この実施の形態によれば、把持力が引張りバネ41から付与されるが、カム34の径方向の隆起部44によって、把持具24の送風ストロークが形成される。
【0045】
把持装置18と送風装置23の他の実施の形態は、図5に示されている。駆動装置17は、サーボメータなどの回転駆動装置を含む。回転駆動装置は、例えば、出力部に偏心部45を含む。偏心部45は、揺子16、バトン14、及びリード12に、図5に矢印で示した振り子動作を伝える。更に、駆動装置17は、カム従動子35に当接しているカム34に直接接続されても良いし、又は、図示されているように、引張り手段ギア46や任意の他のギアを介して接続されてもよい。カム従動子35は、この実施の形態においては、把持具20がフレーム25に配置された平坦な又はわずかに膨張した面を含み得る、枠25に直接接続されてもよい。この実施の形態において、受け面21は、台22の上側の好ましくは平坦な表面部分である。
【0046】
以上説明した各例示的な実施の形態によれば、把持具20は、織物2を上から押圧し、受け面21は、織物2の下側に配置されているが、把持具が織物21の下側に配置されてもよい。この場合、受け面は、織物の上で、固定的又は移動可能に配置される。
【0047】
作動中、駆動装置17は、リード12の前後への振り子動作を実行し、この振り子動作をカム従動子35の時折の引き上げ動作と把持具20と受け面21の間に位置している織物から把持具を引き上げ動作に同期させる。このため、カム34は、隆起部44を含む。具体的に図示してはいないバネ手段などの好適な手段によって、枠25が下方へ付勢されて、織物が把持具20と受け面21の間の所定位置に把持される。これは、例えば、カム34と相補形をなすように設計された把持カムによっても達成される。
【0048】
様々な実施の形態の設計の細部を互いに組み合わせることもできる。例えば、図5に示されている実施の形態によれば、把持具20と受け面21は、他の実施の形態の一つによれば、別の方法で構成されてもよい。
以下の点は、全ての本発明の例示的な実施の形態に共通している:
位相の関係、即ち、把持力(送風ストローク)の除去の動作から筬打ち縁部10に至るリード12の打寄せ動作までの周期が調整可能に構成されており、例えば、カム34を駆動する軸を中心にカム34を回転させることによって達成される点。
把持装置18がバトン12に機械的に連結されている点。
織り機1の動作の特定の位相を周期的に反復するために、把持装置18の把持動作を少なくとも部分的に除去するために、送風装置23が設けられている点。この場合、例えば、送風装置23は、各筬打ち動作中又は各筬打ち動作後に起動されるか、または、次の筬打ち動作中又は筬打ち動作後に起動される。
【0049】
織物2を所定位置に一時的に把持するための把持装置18は、本発明の織り機1上に設けられ、これによって、把持装置は、送風装置23と相互動作する。送風装置23は、把持動作の一時的な除去を実行する。送風装置23の動作は、筬打ち手段11の動作によって調整される。このため、好ましくは、筬打ち手段11と把持装置18には機械的接続が介在している。この接続は、いくつかの実施の形態において、把持力が除去又は付与される機械的変速機28によって実行される(この場合の変速機は非常に広い意味で用いられている)。織り機1の動作回数又は動作位相が調整又は選択可能であり、織り機1の動作回数又は動作位相に応じて織物の解除が調整できるので、織り機1は、様々な種類の織物に簡単に適用することができる。織り機1においては、織物を縦方向に引っ張らずに、製織動作を実行できる。本発明による把持装置18は、展延装置として好適であり、時間や手間を掛けずに、あらゆる状況に対応可能である。
【符号の説明】
【0050】
1: 織り機
2: 織物
3: 経糸束
4: 綜絖枠
5: 杼口
6、7: 経糸
8: 杼口形成手段
9: 緯糸
10: 筬打ち縁部
11: 筬打ち手段
12: 筬(リード)
13: バトン(筬歯又は筬ロッド)
14: バトン
15: 回転軸
16: 揺子
17: 駆動装置
18: 把持装置
19: 織物前縁部
20、20’: 把持具、展延機ローラ
21: 受け面
22: 台
23: 送風装置
24: ロッド
25: 枠
26: 端部
27: バネ手段
28: 変速機
29: 梃子
30: バネ
31: 受け面
32: くさび
33: 要素
34: カム
35: カム従動子
36: バネ
37: 梃子
38: 引張り手段
39: 回転の中心
40: 凹部
41: 引張りバネ
42: クラッチ
43: 連係ブロック
44: 隆起部
45: 偏心部
46: 引張り手段ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸(6、7)と緯糸(9)を含む織物(2)を製織するための織り機(1)であって、前記織り機が、
杼口(5)を形成する手段(8)と、
前記杼口(5)内に誘導された緯糸(9)を筬打ちするための筬打ち手段(11)と、
少なくとも前記織物縁部に作用する少なくとも一つの把持具(20)を含む把持装置(18)と、
前記把持装置(18)の解除を制御するために設定され
た送風装置(23)と、
前記送風装置(23)が機械、水圧、又は空気圧によって前記筬打ち手段(11)に接続される機械的変速機(28)と、
を含む織り機(1)。
【請求項2】
前記筬打ち手段(11)が前記送風装置(23)に駆動接続されている、請求項1に記載の織り機。
【請求項3】
前記織り機が、前記筬打ち手段(11)に駆動接続されている主要駆動装置(17)を含む、請求項1に記載の織り機。
【請求項4】
前記把持具(20)を前記織物(2)へ付勢させるために、前記把持装置(18)がバネ手段(27、36)と協働する、請求項1に記載の織り機。
【請求項5】
前記変速機(28)がカム従動子変速機(34、35)である、請求項1に記載の織り機。
【請求項6】
前記変速機(28)が、前記把持具(20)を前記織物(2)から離間移動させるための開口カム(34)を含む、請求項5に記載の織り機。
【請求項7】
前記変速機(28)が、前記織物(2)へ前記把持具(20)を押し付けるための閉止カム(34、図3)を含む、請求項5に記載の織り機。
【請求項8】
受け面(21)が前記把持具(20)の反対側に配置されている、請求項1に記載の織り機。
【請求項9】
前記受け面(21)が前記展延機台(22)で静止するように構成される、請求項8に記載の織り機。
【請求項10】
前記把持具(20)が円形把持面を有している、請求項1に記載の織り機。
【請求項11】
前記把持具(20)が円筒形である、請求項1に記載の織り機。
【請求項12】
前記把持具(20)が枠(25)に回転可能に支持されている、請求項1に記載の織り機。
【請求項13】
前記把持具(20)が前記受け面(21)に接離可能に移動可能に支持されている、請求項1に記載の織り機。
【請求項14】
前記筬打ち手段(11)が、バトン(14)に保持されたリード(12)である、請求項1に記載の織り機。
【請求項15】
前記把持装置(18)が、二つの展延機ローラ(20、20’)を含み、これによって、前記織物(2)が、前記二つの展延機ローラ(20、20’)に交互に巻回されるため、一つの展延機ローラ(20)のみが受け面(21)と協働する、請求項1に記載の織り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106424(P2010−106424A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−237310(P2009−237310)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(304012943)グローツ−ベッカート コマンディトゲゼルシャフト (46)
【Fターム(参考)】