説明

織物壁紙

【課題】 壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開きを目立たないように抑える。
【解決手段】経糸および緯糸からなる織物の裏面に接着剤を介して裏紙を貼着して形成された織物壁紙において、前記織物の少なくとも緯糸に、ポリ乳酸繊維を重量混合率で少なくとも30%以上用いる。ポリ乳酸繊維は、生分解性を有するとともに、水分の吸収による膨潤や放散による収縮がないため、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開きを目立たないように抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、織物壁紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、経糸および緯糸からなる織物の裏面に接着剤を介して裏紙を貼着して形成された織物壁紙が知られている。
【0003】
このような織物壁紙の織物を構成する経糸および緯糸の素材には、廃棄の問題や、火災時の燃焼有毒ガスの問題から、綿、麻、ジュートなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、精製セルロース繊維、一部の合成繊維が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−229219号公報(第6頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した天然繊維や再生繊維は、水分を吸収した場合には、繊維の長さ方向および断面方向に膨潤し、水分を放散し乾燥した場合には、繊維の長さ方向および断面方向に収縮する性質がある。このため、織物を構成する経糸および緯糸の素材として、主に天然繊維や再生繊維を使用すると、織物壁紙を貼着する際の施工糊の水分の影響でしわが発生したり、施工糊の乾燥時に壁紙と壁紙との突き合わせ部に隙間(目開き)が発生するという問題があった。また、施工後においても、空気中の水分の吸収あるいは放散を繰り返し、年数が経るほど目開きが目立つ傾向がある。
【0005】
このような問題に対応して、織物繊維に撥水性を付与したり、接着力の大きな施工糊を使用しているが、目開き防止対策としては十分な効果が得られていない。
【0006】
また、織物を構成する経糸および緯糸を裏紙に完全に接着するすることはできないため、施工時に壁紙を切断した際、あるいは、糊付け施工時にブラシで擦った際、繊維のバラケや糸抜けが発生する。
【0007】
このため、織物の表面から樹脂を付与して繊維同士を接着し、繊維のバラケを抑えるようにしているが、織物表面が粗硬になるという問題がある。
【0008】
また、使用によって織物組織に汚れが入り込んだ場合、汚れを除去し難いものである。
【0009】
織物組織の汚れ対策としては、織物繊維に撥水剤や撥油剤を付与する方法が採用されているが、完全に汚れを防ぐことはできていない。
【0010】
なお、ポリエステルやポリアミド、アクリルなどの合成繊維を使用する場合は、貼り替えた場合に廃棄物として埋め立て処理すると、半永久的に分解されずに地中の残存し、地球環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開きを目立たないように抑えることのできる織物壁紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、経糸および緯糸からなる織物の裏面に接着剤を介して裏紙を貼着して形成された織物壁紙において、前記織物の少なくとも緯糸に、ポリ乳酸繊維を重量混合率で少なくとも30%以上用いることを特徴とするものである。
【0013】
織物を構成する緯糸に用いられるポリ乳酸繊維としては、ポリ乳酸ポリマーを原料とする繊維の他、ポリ乳酸ポリマーと共重合可能なポリマーとの共重合体、または、ポリ乳酸ポリマーと他の熱可塑性ポリマーとのブレンドポリマーなどを原料とする繊維であってもよいが、生分解性の観点からは、生分解性ポリマーとの共重合体、または、生分解性ポリマーとのブレンドポリマーを原料とする繊維であることが好ましい。
【0014】
また、壁紙としての必要な強度を確保するためには、ポリ乳酸の平均分子量は大きいほどよく、好ましくは10万以上、より好ましくは15万〜30万である。
【0015】
ポリ乳酸ポリマーには、艶消し剤、酸化防止剤、難燃剤、消臭剤、紫外線吸収剤、無機系着色剤、有機系着色剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤などを必要に応じて添加することができる。
【0016】
ポリ乳酸ポリマーを繊維として得るには、溶融紡糸法により直接繊維に押し出して冷却固化させ、そのまま巻き取ってもよいし、インフレーション法あるいはTダイ法により一度フィルムに押し出した後、フィルムをスリットして巻き取ってもよい。
【0017】
ポリ乳酸繊維としては、モノフィラメント、マルチフィラメント、あるいは、ステープルのいずれでもよい。また、ポリ乳酸繊維の断面形状は、通常の円形断面以外に、偏平断面、三角断面、その他の異型断面でもよいが、織物のカバーファクターを大きくし、使用する繊維重量を小さくするためには、偏平断面が好ましい。
【0018】
また、繊維の繊度は、特に限定されないが、大きい方が特徴のある織物が得られる。偏平度および繊度を自由に変える場合は、フィルムをスリットする方法が適する。
【0019】
繊維の強度、破断伸度、熱収縮率は、壁紙を製造する上で重要であり、強度が小さすぎると、製織工程で毛羽立ち、糸切れが発生するおそれがある。また、破断伸度が大きすぎると、製織工程で不均一に引き延ばされて、織物の外観が悪くなるおそれがある。さらに、繊維の熱収縮率は特に重要で、大きすぎると、織物と裏紙を接着し、その後の乾燥工程でしわが入るため、満足できる外観が得られない可能性が高い。
【0020】
これらのことから、好ましい条件としては、強度1.0cN/dtex(センチニュートン/デシテックス)以上、特に、1.4cN/dtex以上、破断伸度40%以下、熱収縮率5%以下(120℃で10分乾燥処理した場合)である。
【0021】
緯糸のポリ乳酸繊維の重量混合率としては、目開きを目立たない程度に抑えるためには、少なくとも30%以上用いることが好ましい。ポリ乳酸繊維の重量混合率が30%未満であると、肉眼で観察できる程度に目開きが大きくなる。
【0022】
ポリ乳酸繊維と混合される繊維としては特に限定されないが、生分解性の観点からは、綿や麻などの天然繊維や、レーヨンなどの再生繊維、精製セルロース繊維、生分解性繊維を採用することが好ましい。
【0023】
織物を構成する経糸には、あらゆる繊維を使用することができるが、生分解性の観点からは、綿や麻などの天然繊維や、レーヨンなどの再生繊維、精製セルロース繊維、ポリ乳酸をはじめとする生分解性繊維、あるいは、ポリ乳酸繊維と、天然繊維、再生繊維、精製セルロース繊維、生分解性繊維とを混合した繊維を使用することが好ましい。
【0024】
織物壁紙の製造方法としては特に限定されないが、一般的には、織物の裏面に裏紙を接着して乾燥させた後、スクリーン捺染機、ロータリー捺染機、ローラー捺染機、グラビア印刷機などで着色する。また、織物にする前に、糸を染色して先染め糸とし、この糸を用いて織物に仕上げた後、裏紙を接着してもよい。
【0025】
本発明によれば、織物を構成する緯糸に、水分の吸収による膨潤や放散による収縮がなく、しかも、大量生産によるコストメリットや取り扱い性に優れた生分解性を有するポリ乳酸繊維を重量混合率で30%以上用いることにより、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開きを目立たないように抑えることができる。
【0026】
本発明において、前記織物の表面にポリ乳酸フィルムがラミネートされると、織物の表面がポリ乳酸フィルムによって覆われることにより、織物の汚れや繊維のバラケを防止することができるとともに、折れジワの発生を防止することができる。
【0027】
ポリ乳酸フィルムのラミネートとしては、インフレーション法やTダイ法により製膜したポリ乳酸フィルムを織物に接触させながら熱圧着することによって得られる。
【0028】
この場合、ポリ乳酸フィルムの厚みとしては、8〜16μm、特に、10〜12μmが好ましい。ポリ乳酸フィルムの厚みが8μm未満であると、フィルムのラミネート時に膜切れを起こしたり、部分的な破れが発生しやすく、また、16μmを超えると、ラミネート後の織物が硬くなる傾向があり、織物壁壁を貼る際に壁下地との接着が困難となり、特に、コーナー部の接着不良の原因となる。
【0029】
本発明において、前記緯糸のポリ乳酸繊維が、高融点のポリ乳酸樹脂を芯部分に有するとともに、芯部分よりも相対的に融点の低いポリ乳酸樹脂を鞘部分に有する芯鞘構造、あるいは、高融点のポリ乳酸樹脂を内層部分に有するとともに、内層部分よりも相対的に融点の低いポリ乳酸樹脂を外層部分に有するサンドイッチ構造であると、ポリ乳酸フィルムを熱圧着してラミネートする際、比較的低温で経糸および同一素材のポリ乳酸フィルムと簡単に融着することができ、好ましい。
【0030】
鞘部分あるいは外層部分を構成するポリ乳酸の融点は、130〜160℃であり、融点が130℃未満では強度不足となる場合があり、好ましくは140〜160℃である。また、芯部分あるいは内層部分を構成するポリ乳酸の融点は、160〜190℃である。強度を確保するためには、融点が高い方が好ましいが、あまり高すぎると、織物が硬くなる傾向があり、使用上の問題のない強度と適度の柔らかさを保持するためには、160〜180℃が好ましい。
【0031】
この場合、ポリ乳酸フィルムをラミネートするには、金属ロール温度100〜120℃でゴムロールとの間で一定圧力を作用させて織物壁紙を加工速度10〜20m/分で走行させることにより、融着することが可能である。
【0032】
芯鞘構造のポリ乳酸繊維は、前述した溶融紡糸法を用いて得ることができ、その断面構造は図1に示す通りである。また、サンドイッチ構造のポリ乳酸繊維は、前述したインフレーション法またはTダイ法を用いて得ることができ、その断面構造は図2に示す通りである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開きを目立たないように抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の織物壁紙の実施例1乃至実施例9および比較例1,比較例2について説明する。
【0035】
(実施例1)
ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、経糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度13本/インチ、緯糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度12本/インチの平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色した。
【0036】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、後述する評価基準に基づいて、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

(実施例2)
綿繊維1000dtex(5.9番手)を用い、経糸綿繊維1000dtex、密度13本/インチ、ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、緯糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度12本/インチの平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色した。
【0038】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0039】
(実施例3)
ビスコースレーヨンモノフィラメント1000dtexを用い、経糸ビスコースレーヨン繊維1000dtex、密度13本/インチ、ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、緯糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度12本/インチの平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色した。
【0040】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0041】
(実施例4)
実施例1の織物壁紙における織物表面にさらにポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0042】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
(実施例5)
実施例2の織物壁紙における織物表面にさらにポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0044】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0045】
(実施例6)
実施例3の織物壁紙における織物表面にさらにポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0046】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
(実施例7)
ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、経糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度13本/インチ、緯糸ポリ乳酸繊維1000dtexとビスコースレーヨン繊維2000dtexとを交互に密度12本/インチで打ち込み(ポリ乳酸繊維1000dtex、密度6本/インチ、ビスコースレーヨン繊維2000dtex、密度6本/インチ、すなわち、緯糸の重量混合率は、ポリ乳酸繊維33.3%、ビスコースレーヨン繊維66.7%)の平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色し、さらに、織物表面にポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0048】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0049】
(実施例8)
実施例1の織物壁紙における織物表面にさらにポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み8μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0050】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0051】
(実施例9)
実施例1の織物壁紙における織物表面にさらにポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み18μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0052】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、経糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度13本/インチ、ビスコースレーヨンモノフィラメント1000dtexを用い、緯糸ビスコースレーヨン繊維1000dtex、密度12本/インチの平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色し、さらに、織物表面にポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0054】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ポリ乳酸(重量平均分子量16万、融点170℃)を原料として、インフレーション法により製膜されたサンドイッチ構造のフィルムをスリットしたモノフィラメント1000dtexを用い、経糸ポリ乳酸繊維1000dtex、密度13本/インチ、緯糸ポリ乳酸繊維1000dtexとビスコースレーヨン繊維2000dtexとビスコースレーヨン繊維600dtexとを交互に密度12本/インチで打ち込み(ポリ乳酸繊維1000dtex、密度4本/インチ、ビスコースレーヨン繊維2000dtex、密度4本/インチ、ビスコースレーヨン繊維600dtex、密度4本/インチ、すなわち、緯糸の重量混合率は、ポリ乳酸繊維27.8%、ビスコースレーヨン繊維72.2%)の平組織をレピア織機で製織した。この織物に70g/m2 の裏紙を酢酸ビニル系接着剤で接着し、乾燥させた後、ローラー捺染機で着色し、さらに、織物表面にポリ乳酸フィルム(重量平均分子量16万、融点170℃、厚み10μm)を熱エンボスロールを通して壁紙に融着し、仕上げた。
【0056】
この壁紙を澱粉系接着剤を用いて厚み12.5mmの石膏ボードに貼り付け、十分乾燥させた後に、壁紙と壁紙との突き合わせ部の目開き、折れジワ、繊維のバラケ、防汚性を評価した。また、この壁紙をコンポスト土中に埋設し、生分解の程度を観察した。得られた結果を表1に示す。
【0057】
目開きについては、壁紙を貼り付けた後、目盛り付きの拡大鏡で目開きの大きさを測定した。通常、壁紙の目開きは、40μm以下であれば、壁紙の種類に関係なく目立たない範囲として許容される。
【0058】
折れジワは、壁紙を貼り付けた後、外観を目視観察し、折れジワを3段階で評価した(○:折れジワなし、△:軽微な折れジワ有り、×:折れジワ有り)。
【0059】
繊維のバラケは、壁紙を貼り付けた後、ブラシで経方向および緯方向に一定圧力で5回こすり、繊維のバラケ具合を3段階で評価した(○:バラケなし、△:軽微なバラケ有り、×:バラケ有り)。
【0060】
織物の防汚性は、日本ビニル工業会で定められている、コーヒー、醤油、クレヨン、水性サインペンによる拭き取り性能を5段階で評価した(1級:汚れが汚染用グレースケールの1号、またはその程度を越えるもの、2級:汚れが汚染用グレースケールの2号程度のもの、3級:汚れが汚染用グレースケールの3号程度のもの、4級:汚れが汚染用グレースケールの4号程度のもの、5級:汚れが汚染用グレースケールの5号程度のもの)。
【0061】
壁紙の柔らかさは、触感により3段階で評価した(○:柔らかい、△:普通(使用可能)、×:硬い(使用不可))。
【0062】
生分解性については、壁紙をコンポスト土中に埋設し、30日後の分解の程度を観察した。
【0063】
表1から、実施例1乃至実施例6および実施例8、実施例9に示すように、緯糸にポリ乳酸繊維を用いた場合、壁紙の突き合わせ部の目開きは、小さくなり、許容範囲40μm以内に納まる。特に、実施例4、実施例5、実施例6、実施例8、実施例9に示すように、ポリ乳酸フィルムをラミネートした場合は、ポリ乳酸繊維同士およびポリ乳酸繊維とポリ乳酸フィルムとの接着力が大きくなり、目開きが小さくなる傾向がなる。これに対し、比較例1に示すように、緯糸にポリ乳酸繊維を用いない場合、目開きは、大きくなり、許容範囲40μmを越えるものとなる。また、実施例7および比較例2に示すように、緯糸のポリ乳酸繊維の重量混合率が小さくなると、目開きが大きくなり、重量混合率が30%未満で許容範囲40μmを越えるものとなる。
【0064】
実施例1乃至実施例9に示すように、経糸および緯糸にポリ乳酸繊維を使用した場合、折れジワは観察されないが、経糸にポリ乳酸繊維を用いない場合には、軽微な折れジワが発生するものとなる。
【0065】
実施例1乃至実施例3に示すように、ポリ乳酸フィルムをラミネートしない場合は、繊維のバラケが発生し、また、防汚性が極端に低下する。
【0066】
実施例8および実施例9に示すように、厚みが8μmのポリ乳酸フィルムをラミネートした場合は、フィルムが部分的に破れ、防汚性が低下するとともに、フィルムが破れた部分で繊維のバラケが発生し、一方、厚みが18μmのポリ乳酸フィルムをラミネートした場合は、壁紙の風合いは硬くなり、下地に密着した施工が困難となった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の織物を構成する芯鞘構造のポリ乳酸繊維を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の織物を構成するサンドイッチ構造のポリ乳酸繊維を模式的に示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸からなる織物の裏面に接着剤を介して裏紙を貼着して形成された織物壁紙において、前記織物の少なくとも緯糸に、ポリ乳酸繊維を重量混合率で少なくとも30%以上用いることを特徴とする織物壁紙。
【請求項2】
前記ポリ乳酸繊維と混合される繊維が天然繊維、再生繊維、精製セルロース繊維、生分解性繊維のうちの1つ以上であることを特徴とする請求項1記載の織物壁紙。
【請求項3】
前記経糸が、ポリ乳酸繊維、天然繊維、再生繊維、精製セルロース繊維のうちのいずれかの繊維、もしくは、ポリ乳酸繊維に、天然繊維、再生繊維、精製セルロース繊維、生分解性繊維のうちの1つ以上の繊維を混合した繊維であることを特徴とする請求項1記載の織物壁紙。
【請求項4】
前記織物の表面にポリ乳酸フィルムがラミネートされることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の織物壁紙。
【請求項5】
前記緯糸のポリ乳酸繊維が、高融点のポリ乳酸を芯部分に有するとともに、芯部分よりも相対的に融点の低いポリ乳酸を鞘部分に有する芯鞘構造、あるいは、高融点のポリ乳酸を内層部分に有するとともに、内層部分よりも相対的に融点の低いポリ乳酸を外層部分に有するサンドイッチ構造であることを特徴とする請求項1記載の織物壁紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−174882(P2008−174882A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11786(P2007−11786)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(593082036)旭興株式会社 (2)
【Fターム(参考)】