説明

織物製品及びその製造方法

【課題】柔らかな肌触りを維持したままでサイドヘムのほどけを防止した織物製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係るマフラー1は、経糸及び緯糸が平織りされた本体10と、長手方向の端部に経糸を30mm程度突出させた縦房20と、両側端の耳の部分に緯糸を5mm程度突出させた横房30とを有している。本体10の両側端には、二本一組の経糸を捩りながら緯糸と織り込んだ搦み織部11が設けられており、この搦み織部11により、サイドヘムがほつれるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸と緯糸とを組み合わせて製造されるタオル、ハンカチ、マフラー、ストール等の織物製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、織機を用いて、縦に張り渡した経糸に横方向の横糸を組み合わせて様々な織物が製造されており、例えば、タオル、マフラー、ストール、ハンカチ等、種々の織物製品が提供されている。
【0003】
ここで、従来の織物製品では、両側端部のヘム(耳)がほどけてしまわないように、側端部のヘム(サイドヘム)に織った糸がほどけないような処理が施されている。このようなサイドヘムのほつれは、織機で幅広く生地を織っておき、製品の幅に合わせて生地を切断して、複数の織物製品を製造する場合には特に顕著となる。
【0004】
サイドヘムのほつれを防止するための処理としては、織物の両側端を内側に折り返したうえで縫い合わせる処理(ヘム縫い)が幅広く行われており、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−49765号公報
【0005】
また、下記特許文献2には、切断後にタオルの耳となる部分を熱で溶融する経糸と熱で溶融しない経糸とで製織してから熱処理により固定しておくことで、切断後に耳がほつれることのない細幅の浴用タオルが開示されている。
【特許文献2】特開2001−245818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、最近のガーゼ織のタオルや、ストール、マフラー等、薄い織物製品の場合には、端部を折り返して縫製するのは困難である。また、端部を折り返して縫製したヘムは、厚くて固くなってしまい、肌触りが悪く、特に、ソフトな肌触りを売りとする織物製品では、硬いヘムが商品価値を下げてしまう。
【0007】
また、熱処理を施した場合にも、溶解後に凝固した部分が固くなるため、ソフトな織物製品にはとても適用することができないと共に、凝固部分は見た目にも好ましいものではない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、柔らかな肌触りを維持したままで両側端(サイドヘム)のほつれを防止した織物製品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る織物製品は、経糸と緯糸とを組み合わせて製造される織物製品であって、両側端に経糸を捩りながら織り込んだ搦み織部を設け、縫製することなく両側端のほつれを防止したことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る織物製品の製造方法は、両側端の経糸を用いて両側端に搦み織を形成しながら生地を織る製織工程と、前記生地を裁断して織物製品を形成する裁断工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る織物製品によれば、柔らかな肌触りを維持したままで両側端のほつれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る織物製品(マフラー)の片側半分の平面図である。図2は、図1のA部分の拡大図である。図3は、本実施形態に係る織物製品の製造に用いる織機の模式的な側面図である。
【0013】
本実施形態に係るマフラー1は、ガーゼ織りのマフラーであり、図1に示すように、経糸及び緯糸が平織りされた本体10と、長手方向の端部に経糸を30mm程度突出させた縦房20と、両側端の耳の部分に緯糸を5mm程度突出させた横房30とを有している。
【0014】
図2に拡大図を示すように、横房30につながる本体10の両側端には、二本一組の経糸を捩りながら緯糸と織り込んだ搦み織(からみ織、絡み織)が施されており、この搦み織部11の外側に横房30が位置している。
【0015】
この搦み織部11を設けることで、サイドヘムがほどけるのを防止することができ、従来のように、両側端部を折り返して縫製するといったヘム縫い処理が不要である。この搦み織部11は、本体10を構成する経糸のうち、幅方向において最も外側に位置する一組の経糸によって構成される。
【0016】
続いて、マフラー1の製造に用いる織機の構成について図3を参照しながら説明する。図3に示すように、本実施形態に係る織機50は、上経糸供給ビーム51、下経糸供給ビーム52、第一搦み経糸供給ボビン53、第二搦み経糸供給ボビン54、上下経糸用の通常の綜絖57、搦み糸用の捩り綜絖(振綜絖)58、緯糸を打ち込むための筬56、織られた布地を巻き取る巻き取りローラー59を備えている。
【0017】
上経糸供給ビーム51からは上経糸61が供給され、下経糸供給ビーム52からは下経糸62が供給され、綜絖57によって開けられた開口に杼(シャトル)によって緯糸が通され、生地が織られていく。また、本体10の両側端部に対応する位置では、第一搦み経糸供給ボビン53からは第一搦み経糸63が供給され、第二搦み経糸供給ボビン54からは第二搦み経糸64が供給され、捩り綜絖58によって第一搦み経糸63と第二搦み経糸64が交互に捩られながら開けられた開口に上記緯糸が通され、搦み織部11が施される。
【0018】
図3では、この搦み織部11を形成するための搦み糸供給ボビン53,54及び捩り綜絖58をそれぞれ一つだけ記載しているが、これら搦み織を行うための部材は、搦み織部11を形成する場所に対応してそれぞれ設置される。例えば、一枚のマフラーであれば、少なくとも両側端に二箇所の搦み織部11が形成されるので、上記搦み織用のセット(搦み糸供給ボビン53,54、捩り綜絖58)をそれぞれ一つずつの計二組設置する必要がある。
【0019】
このように、本実施形態では、搦み織を行うための経糸を送り出すためのボビン53,54を、他の平織部分を織るための経糸を供給するビーム51,52とは別途独立して用意することで、連続した製織が可能となる。これは、搦み織の部分11は、他の平織の部分と比べて、生地の単位長さあたりに必要となる糸が長くなるため、平織部分の糸を供給するビームに搦み用の糸を巻いておくと、織り進むにつれてテンションが異なってしまい、連続して製織することが出来なくなってしまうからである。
【0020】
なお、本実施形態における織物製品の長さ方向については、生地を織る際に、後に経糸が突出した縦房20となる経糸のみの部分を所望の長さ単位に形成しておき、巻き取りローラー59に巻き取られた後に、この経糸のみの部分を裁断すれば、織物製品が完成する。本実施形態では、長さ方向の端部には搦み織を形成していないが、端部の緯糸が密に織られており、ほつれが予防されている。
【0021】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態によれば、織物製品のサイドヘムの部分に搦み織を施しているので、折り返して縫製することなく、無縫製でサイドヘムの部分がほつれるのを防止することができる。これにより、薄い織物製品であっても、サイドヘムの部分が硬くなるとことなく、柔らかな肌触りを維持することができる。
【0022】
また、本実施形態に係る織物製品の製造方法によれば、サイドヘムがほつれ防止の処理のための縫製工程が必要なく、織機による製織工程だけでサイドヘム処理を完成させることができるので、従来の製造方法と比較して、格段に低コストで織物製品を製造することができる。また、本実施形態では、上記搦み織部11を形成するための経糸を平織の部分を形成するための経糸とは別の独立した部材から供給するようにしているので、連続した製織が可能である。
【0023】
(変形例1)
続いて、本実施形態の変形例1について説明する。本変形例では、複数の織物製品分の幅広の生地を織った後に、所定の幅にカットすることで、複数の織物製品を同時に製造する場合について説明する。
【0024】
図4は、本変形例1に係るダブルカッターの構成を示す斜視図である。この裁断装置であるダブルカッター70は、可動ハサミ71、カム76、固定棒80,81を備えており、可動ハサミ71は、所定の間隔で並行に設置された一対の可動ハサミ71a及び71bからなる。ダブルカッター70は、織機によって織られて搬送されてくる織物を所定の幅に裁断するために、織機の出口付近に設置されるものであり、本変形例1では、図3のBの位置に設置される。
【0025】
図4に示すように、可動ハサミ71は、相対的に回動可能なように蝶番によって接続された上刃72及び下刃73を備えている。上刃72は、固定棒81に固定されており、さらに固定棒80を介して、織機本体に固定されている。
【0026】
下刃73の図中後端にはカム棒74が接続されており、カム棒74は、カム77と下端が接触している。カムシャフト76の回転によってカム77が回転すると、カム棒74が上下動を繰り返し、カム棒74に接続された下刃73が蝶番を支点として上刃72に対して往復回動する。
【0027】
カムシャフト76は図示しない駆動モータに接続されており、例えば、250回転/分でカムシャフト76を駆動させることで、可動ハサミ71が自動で作動し、上刃72及び下刃73が交わった部分で、間に挟まれた生地が切られる。
【0028】
図5は、本変形例1においてダブルカッターによって裁断される前の幅広の生地の裁断部分を拡大して示す図であり、図5(a)は、裁断前の状態を示す図、図5(b)は、裁断後の状態を示す図である。
【0029】
図5(a)に示すように、裁断前の生地は、図中左側の織物製品100aと右側の織物製品100bとが、境界部150によって接続された状態に織機によって同時に織られている。すなわち、織物製品100a、境界部150及び織物製品100bは、同じ緯糸で一緒に織られている。
【0030】
図5(a)の点線C,Dは、上記ダブルカッター70によって裁断される場所を示しており、可動ハサミ71aによって点線Cの箇所が、可動ハサミ71bによって点線Dの箇所が切断される。
【0031】
図5(b)に示すように、裁断後には、所定の幅の境界部150が除かれて、側端に搦み織部111aが施された本体110aと、横房130aとを有する織物製品と、側端に搦み織部111bが施された本体110bと、横房130bとを有する織物製品との2つの織物製品が製造される。
【0032】
従来の裁断工程は、裁断する箇所にカッターの刃を織物に押しつけて裁断していたため、薄い織物をカットしたり、織物を真っ直ぐにカットしたりするのが困難であったが、自動で作動する可動ハサミによって生地を積極的に切断する本変形例1によれば、薄い生地を正確にカットしたり、生地を真っ直ぐにカットすることが実現できる。
【0033】
また、本変形例1では、幅広の生地を切断することで複数の織物製品を製造する場合に、可動ハサミを所定の間隔をあけて二つ並べて設置したダブルカッターによって隣接する織物製品の境界部を裁断し、二つの可動ハサミの間に位置する生地を切り取るように構成されている。これにより、裁断時に二つの可動ハサミの間にテンションがかかり、単一のカッターで境界部をカットする場合と比較して、より正確に真っ直ぐに生地を裁断することができる。
【0034】
なお、本変形例1において、ダブルカッター70によって切り取られる境界部150のテンションをより強くするために、境界部150を緯糸だけでなく経糸も使って織るようにしても良い。この場合、境界部150は切り取られて廃棄される部分であるので、不要な糸を使用すれば良い。
【0035】
以上、変形例も含めて本実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態では上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、織物製品として平織りのマフラーを例に挙げて説明したが、綾織り、しゅす織り等、他の織物組織であっても良いのは言うまでもなく、パイル織りのタオルや、二重織りの織物等にも適用できる。もちろん、二重織りの場合には、上下両方の生地の両側端部に搦み織部を形成する必要がある。
【0036】
また、本実施形態では、搦み織部を構成する経糸を幅方向において最も外側に位置する二本の経糸を使って形成しているが、三本以上の経糸を用いても良いし、一方の側端部において、複数の搦み織を施しても良い。また、搦み用の一組の経糸は、一方の経糸を幅方向において最も外側の経糸とすれば、もう一方の経糸は外側から三番目、四番目の内側の経糸であっても良い。もちろん、両側端以外の本体内部にもさらに搦み織が施されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本実施形態に係る織物製品の片側半分の平面図である。
【図2】図2は、図1のA部分の拡大図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る織物製品の製造に用いる織機の模式的な側面図である。
【図4】図4は、本実施形態の変形例1に係るダブルカッターの構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態の変形例1においてダブルカッターによって裁断される幅広の生地の裁断部分を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 マフラー
10 本体
11 搦み織部
20 縦房
30 横房
50 織機
51,52 経糸供給ビーム
53,54 搦み経糸供給ボビン
56 筬
57 綜絖
58 捩り綜絖
59 巻き取りローラー
61,62 経糸
63,64 搦み経糸
70 ダブルカッター
71 可動ハサミ
76 カム
80,81 固定棒
110 本体
111 搦み織部
130 横房
150 境界部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とを組み合わせて製造される織物製品であって、
両側端に経糸を捩りながら織り込んだ搦み織部を設け、縫製することなく両側端のほつれを防止したことを特徴とする織物製品。
【請求項2】
両側端の経糸を用いて両側端に搦み織を形成しながら生地を織る製織工程と、
前記生地を裁断して織物製品を形成する裁断工程と、
を備えることを特徴とする織物製品の製造方法。
【請求項3】
前記製織工程は、各織物製品の両側端に対応する位置に搦み織を形成しながら複数の織物製品分の幅広の生地を織る製織工程であり、
前記裁断工程は、隣接する織物製品の境界を裁断する境界裁断工程を含むことを特徴とする請求項2記載の織物製品の製造方法。
【請求項4】
前記境界裁断工程は、織機に設置された可動ハサミにより裁断する工程であることを特徴とする請求項3記載の織物製品の製造方法。
【請求項5】
前記製織工程は、隣接する織物製品の境界に前記裁断工程において切り取られる所定の幅の境界部を形成する工程であって、
前記裁断工程は、前記所定の幅の間隔で配置された一対の可動ハサミによりこの境界部を切り取る工程であることを特徴とする請求項4記載の織物製品の製造方法。
【請求項6】
前記製織工程は、前記所定の幅の境界部を経糸と緯糸を組み合わせて織る工程であることを特徴とする請求項5記載の織物製品の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−111980(P2010−111980A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287658(P2008−287658)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(505272892)アベデザインプロ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】