説明

織物

【課題】文字、数字等のデータを、より安価に、埋め込むことができる織物を提供する。
【解決手段】織物10には、例えば黒色の下地12と、この下地12上に形成される色コード4とが含まれる。色コード4は、読み取り可能に配列された複数の色領域14−1〜14−nを有する。色領域14−1〜14−nのそれぞれには、例えば、赤、緑、青等の色糸が織り込まれている。織物10において、色糸16は、例えば緯糸として織物10に水平方向に織り込まれている。色糸16及び経糸18は、1本毎に互いに交差するように織り込まれている。経糸18は、色糸16より細い糸である。経糸18は、打ち込み間隔αで色糸16に織り込まれており、色糸16は、所定の間隔より大きい間隔で打ち込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服に付けられる布のタグ等の織物に関する。
【背景技術】
【0002】
服に情報を埋め込む手法として、バーコード又は2次元コードを例えばリネン用の布タグに付すことが考えられる。この場合、バーコード等は刺繍により形成され、布タグは、服等の対象物に接着され、又は縫い付けられている。しかしながら、刺繍が布タグに施されている場合、布タグは非常に高価になってしまう。また、布タグにしわが寄っている場合、バーコード等の読み取りの精度が低下することがある。また、バーコード等を織物で実現する場合に、バーコード等の線幅に応じて糸を細くする必要があるため、織物の生産性が低下することもある。
【0003】
服のクリーニングにおいては、クリーニング用タックが使用されている。一般に、クリーニング用タックには、耐洗紙が用いられている。このような耐洗紙は、非常に安価である。しかしながら、クリーニング店は、個別の客の例えば染み抜き等の特殊注文を受けつつ、多種多様の物品を扱うので、洗濯事故、誤配等のトラブルも多い。
【0004】
また、特許文献1では、少ない色数の緯糸(よこいと)で、原画像の色調をよりよく再現するカラー織物が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−281926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、文字、数字等のデータを、より安価に、埋め込むことができる織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る織物は、読み取り可能に配列された複数の色領域を有し、前記色領域のそれぞれには、色糸が織り込まれている。
【0008】
好適には、前記色糸は、この色糸より細い糸により打ち込まれている。
好適には、前記色糸は、所定の間隔より大きい間隔で打ち込まれている。
好適には、前記織り込まれている色糸の上に、この色糸と同色の色糸が載せられている。
【0009】
また、好適には、前記色領域には、この色領域と隣接する色領域とは異なる色の色糸が織り込まれている。
さらに、好適には、前記色領域には、複数の色の色糸のうち1色以上の色糸が織り込まれ、隣接する色領域においては、一方の色領域には、他方の色領域に織り込まれている色の色糸と、この色とは異なる色の1の色糸とが織り込まれている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の織物によれば、文字、数字等のデータを、より安価に、埋め込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る織物とこの織物に含まれる色コードを例示する図である。
図1(A)は、本発明の実施形態に係る織物10及びこの織物10が付けられた服2を例示する。図1(A)に例示するように、織物10は、例えば布のタグとして実現される。なお、織物10は、タオル、袋、かばん、靴等の製品に付けられてもよく、これらの製品は特に限定されない。
【0012】
図1(B)は、織物10に含まれている色コード4を例示する図である。図1(B)に例示するように、織物10には、例えば黒色の下地12と、この下地12上に形成される色コード4とが含まれる。色コード4は、複数の色糸が下地12に織り込まれて形成されている。本例では、赤、緑及び青の色糸が、下地12に織り込まれている。
【0013】
色コード4には、文字、数字等のデータが埋め込まれている。このようなデータには、例えば、製品情報、選択の際の注意、在庫管理情報、顧客へのサービス情報等が含まれている。したがって、色コード4が後述する読取装置により読み取られると、色コード4に埋め込まれたデータが解析される。なお、色コード4は、服、タオル等の製品に、直接、織り込まれてもよい。この場合、織物10は、服等の製品として実現される。
【0014】
図1(C)は、図1(B)に示される領域Aを示す図であり、色コード4における符号化手法を説明する図である。図1(C)に示すように、色コード4は、読み取り可能に配列された複数の色領域14−1〜14−nを有する。色領域14−1〜14−nのそれぞれには、例えば、赤、緑、青等の色糸が織り込まれている。なお、これらの色糸が織り込まれていない領域においては、下地12の色(黒)が表面に現れている。また、色領域14−1〜14−nなど、複数ある構成部分のいずれかを特定せずに示すときには、単に色領域14などと略記することがある。
【0015】
色領域14には、複数の色(例えば、赤、緑、青)の色糸のうち1色以上の色糸が織り込まれ、隣接する色領域14においては、一方の色領域14には、他方の色領域14に織り込まれている色の色糸と、この色とは異なる色の1の色糸とが織り込まれている。例えば、色領域14−1には、青色の色糸が織り込まれ、この色領域14−1に隣接する色領域14−2には、色領域14−1に織り込まれている青色の色糸と、この色とは異なる緑色の色糸が織り込まれている。また、例えば、色領域14−3には、色領域14−2に織り込まれている青色及び緑色の色糸と、この色とは異なる赤色の色糸が織り込まれている。
【0016】
色領域14において、赤、緑、青等の領域は、例えば1mm×1mmの矩形である。したがって、色領域14の数が例えば30である場合、色コード4の長手方向の長さは、およそ30mm程度である。また、色コード4において、例えば、赤、緑及び青それぞれのラインの幅は1mmであり、それぞれのラインの間の間隔は0.5mmである。この場合、色コード4の短手方向の長さは、およそ6〜7mm程度である。
【0017】
このように、隣接する色領域14は、織り込まれた色糸について、いずれか1つの色糸が異なる関係にある。したがって、色コード4が読取装置により例えば左端から右端に向けて読み取られる場合、読取装置は、色領域14を移動する毎に、いずれか1つの色糸の色の変化を検知する。後述する解析装置は、読取装置により読み取られた色の変化の順番を認識することにより、色コード4に埋め込まれたデータを取得する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る織物10において、色領域14に織り込まれている色糸16−1〜16−mと打ち込み糸とを示す図である。
図2に示すように、色糸16は、例えば緯糸として織物10に水平方向に織り込まれている。色糸16は、経糸(たていと)18−1〜18−nにより略直角に打ち込まれている。このため、色糸16及び経糸18は、1本毎に互いに交差するように織り込まれている。
【0019】
なお、色糸16は、例えば3本毎など複数本毎に経糸18により打ち込まれてもよい。また、色糸16及び経糸18は、複数本毎に互いに交差するように織り込まれてもよい。さらに、打ち込みは、色糸16に対して所定の角度をつけて行われてもよい。
【0020】
経糸18は、色糸16より細い糸である。本例では、色糸16の表にでている面積が、経糸18の表にでている面積に対して5倍以上となるように、色糸16及び経糸18の太さ、あるいは、打ち込み間隔が採用されている。ここで、経糸18は、色糸16より柔らかい糸であることが好ましい。経糸18(打ち込み糸)は、打ち込み間隔αで色糸16に織り込まれており、色糸16は、所定の間隔より大きい間隔で経糸18により打ち込まれている。したがって、色糸16−1〜16−mの間隔βは、打ち込みが行われていない場合と比較して、小さい値となる。なお、打ち込み間隔αは、織物10において一定でなくてもよく、場所に応じて変化されてもよい。また、経糸18(打ち込み糸)は、透明な糸又は半透明な糸であってもよい。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る織物10において、色領域14に織り込まれている色糸16の上に載せられた載せ糸20を示す図である。
図3に示すように、載せ糸20は、織物10に織り込まれている色糸16と同色の糸であり、色糸16−1〜16−mの間の隙間に配置されている。したがって、載せ糸20は、色糸16及び経糸18の上面に載せられている。この載せ糸20は、経糸18により打ち込まれてもよく、この場合、載せ糸20は、例えば、色糸16とは異なる打ち込み間隔で打ち込まれる。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る解析装置30を説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る解析装置30のハードウェア構成を、制御装置32を中心に示す図である。
図4に示すように、解析装置30は、CPU34及びメモリ36などを含む制御装置32と、ネットワークを介して外部のコンピュータなどとデータの送信及び受信を行う通信装置44と、ハードディスクドライブ等の記憶装置38と、液晶ディスプレイなどの表示装置並びにキーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含むユーザインタフェース装置42と、織物10の色コード4を読み取る読取装置46とを有する。
【0023】
解析装置30は、例えば、色コード4を解析するためのプログラムがインストールされた汎用コンピュータであり、読取装置46を介して読み取られた色コード4のデータ又は読み取られて通信装置44等を介して入力された色コード4のデータを取得し、この色コード4により表される情報の解析を行う。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の織物10は、読み取り可能に配列された複数の色領域14を有し、前記色領域14のそれぞれには、色糸16が織り込まれている。そして、色糸16のコストは、カラーインクのコストと比較して安価であるので、本実施形態によれば、色コードがカラーインクを用いて印刷される場合と比較して、文字、数字等のデータを、より安価に、埋め込むことができる。
【0025】
本実施形態の織物10においては、色領域14に織り込まれている色糸16の色の変化の順番が解析されるので、服2に、部分的な伸縮、曲がり、色コード4の寸法誤差、があった場合においても、部分的な伸縮等が色コード4の読み取りに与える影響を低減することができる。このため、織物10が、部分的に伸縮していたり、例えばアイロン前のしわが寄った状態である場合においても、良好な読取精度が維持されることができる。
【0026】
本実施形態の織物10において、色糸16は、この色糸16より細い糸により打ち込まれている。したがって、色糸16と色糸16との間の隙間が小さくなるので、織物10において、下地12の色が表面に現れる面積は小さくなる。よって、色領域14の色が明確になるので、色コード4が読み取られる場合、読取精度が向上されることができる。また、色糸16を太くすることにより、生産性を向上させることができる。
【0027】
また、色糸16は、所定の間隔より大きい間隔で打ち込まれている。したがって、経糸18の色が色コード4の読み取りに与える影響が低減されるので、読取精度が向上されることができる。さらに、織り込まれている色糸16の上に、この色糸16と同色の載せ糸20が載せられている。したがって、色糸16と色糸16との間の隙間が埋められるので、色領域14の色が明確になり、読取精度がさらに向上されることができる。
【0028】
織物10は布地であるので、バーコード又は2次元コードの取り付けが困難であった場所又は素材に対しても取り付けられることができる。特に、本実施形態の織物10がクリーニングタックとして用いられた場合、織物10は、服に対して結ぶ、溶着する、縫いつける等の方法で、服に取り付けられる。このため、織物10が付けられた状態でも服は洗濯可能であり、引っかかり事故の発生頻度、あるいはタグの取り付けのためのステープルのさび等の発生を低減させることができる。
【0029】
本実施形態の織物10は、服に恒久的に取り付けられてもよい。この場合、クリーニング毎にクリーニングタックの取り付けを行う手間を省くことができる。さらに、洗濯回数等、対象となる服の追跡を行うことができるので、事故を未然に防止することができ、ユーザに対して新たなサービスを提供することができるようになる。
【0030】
本実施形態の織物10がアパレル用途に用いられる場合、販売後の動向の調査、製造履歴あるいはクリーニングにおける品質の向上、偽ブランドの対策等が可能となる。色コード4は、比較的小さなスペースに形成されることができるので、織物10は、通常のタグと併存されることが可能であり、例えば襟元等、目立たない箇所に取り付けられることができる。
【0031】
次に、上記実施形態に係る織物10に含まれる色コード4の変形例を説明する。
図5は、上記実施形態に係る織物10に含まれる色コード4の変形例を示す図である。
図5(A)に示すように、色コード4は、複数の色領域14−1〜14−nを有し、これらの色領域14−1〜14−nのそれぞれには、当該色領域14と隣接する色領域14とは異なる色の色糸16が織り込まれている。例えば、色領域14には、青、赤及び黄のいずれかの色糸が織り込まれている。したがって、色領域14は、青、赤及び黄のいずれかの色で形成されている。
【0032】
本実施例においては、色コード4が読取装置により例えば左端から右端に向けて読み取られる場合、読取装置46は、色領域14を移動する毎に、色糸の色の変化を検知する。解析装置30は、読取装置46により読み取られた色の並びを認識することにより、色コード4に埋め込まれたデータを取得する。したがって、織物10が伸縮したり、歪んだりした場合においても、色コード4は、適切に読み取られて解析されることができる。
【0033】
また、図中の矢印Bで示されるように、色領域14は、より小さい領域にされてもよい。この場合、色領域14の幅は、少なくとも色糸16の太さまで小さくされることができる。したがって、本発明によれば、バーコード、2次元コード等と比較して、より小さな領域に情報を埋め込むことができる。
【0034】
図5(B)は、図5(A)に示される色コード4と同一のデータを表す色コード4を示す。色コード4において、色領域14の形状は、矩形に限定されず、どのような形状であってもよい。したがって、本発明によれば、色コード4のデザイン化を可能とすることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、先染めの糸を織ることにより、色領域14が形成された織物10を制作しているが、これに限定されるものではなく、例えば、染色特性の異なる複数の糸で織物10を織り、この織物10を複数の染色剤で染色することにより、色領域14が形成された織物10を制作してもよい。すなわち、製品染め(後染め)により、色領域14が形成された織物10を制作してもよく、本発明に係る色糸とは、後染めにより後に特定の色に染められる糸を含み、本発明に係る色領域とは、染色特性が他の領域と異なる領域、すなわち、後染めにより特定の色に染められる領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る織物とこの織物に含まれる色コードを例示する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る織物10において、色領域14に織り込まれている色糸16−1〜16−mと打ち込みを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る織物10において、色領域14に織り込まれている色糸16の上に載せられた載せ糸20を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る解析装置30のハードウェア構成を、制御装置32を中心に示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る織物10に含まれる色コード4の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
4 色コード
10 織物
12 下地
14 色領域
16 色糸
18 経糸
20 載せ糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り可能に配列された複数の色領域を有し、
前記色領域のそれぞれには、色糸が織り込まれている
織物。
【請求項2】
前記色糸は、この色糸より細い糸により打ち込まれている
請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記色糸は、所定の間隔より大きい間隔で他の糸により打ち込まれている
請求項2に記載の織物。
【請求項4】
前記織り込まれている色糸の上に、この色糸と同色の色糸が載せられている
請求項1乃至3のいずれかに記載の織物。
【請求項5】
前記色領域には、この色領域と隣接する色領域とは異なる色の色糸が織り込まれている
請求項1乃至4のいずれかに記載の織物。
【請求項6】
前記色領域には、複数の色の色糸のうち1色以上の色糸が織り込まれ、
隣接する色領域においては、一方の色領域には、他方の色領域に織り込まれている色の色糸と、この色とは異なる色の1の色糸とが織り込まれている
請求項1乃至4のいずれかに記載の織物。
【請求項7】
前記色糸は、透明又は半透明な糸により打ち込まれている
請求項1に記載の織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−121129(P2008−121129A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303842(P2006−303842)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月15日 「夕刊フジ」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2006年9月13日 社団法人 日本自動認識システム協会主催の「第8回自動認識総合展」に出品
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年9月1日 インターネットアドレス「http://www.b−core.co.jp/」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年9月13日 社団法人 日本自動認識システム協会発行の「第8回自動認識総合展 AUTO−IDセキュリティEXPO Guidebook」に発表
【出願人】(306034103)株式会社 出口織ネーム (3)
【出願人】(506226175)ビーコア株式会社 (39)
【Fターム(参考)】