説明

置換アミノアリールアダマンタン誘導体とその製造法

【課題】 入手容易な化合物から簡単に製造でき、しかも高機能性材料の原料等として有用なアミノアリールアダマンタン誘導体に容易に誘導可能な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体を提供する。
【解決手段】 置換アミノアリールアダマンタン誘導体は、下記式(1)
【化1】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化2】


(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である]等で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高機能性ポリマー等の機能性材料の原料などとして有用な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタン誘導体は安定な炭素骨格構造を有していることから、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料の原料として用いられている。一方、アミノ基を有する化合物は容易にポリマーに誘導できることから、工業的に極めて重要性の高い化合物である。
【0003】
Macro. Chem. Phys. 199, 963(1998)には、1,3−ビス(4−ニトロフェニル)アダマンタンから1,3−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタンを製造する方法が開示されている。しかし、この方法は、入手容易な原料から目的物を得るまでの工程数が一般に多く、必ずしも工業的に有利な方法とは言えない。Zhurnal Organicheskoi Khimii (1991), 27(1), 108−12には、3−アシルアミノトルエンと臭化アダマンタンを反応させて、4−アダマンチル−3−アシルアミノトルエン、又は6−アダマンチル−3−アシルアミノトルエンを合成する方法が開示されている。また、Chem.Ber., 1964, 97, 3488−3492には、臭化アダマンタンとアセトアニリドを反応させて、4−アダマンチル−アセトアニリドを製造する方法が開示されている。しかし、これらの文献に開示されている化合物はポリマー原料等として用いた場合、機能性の点で充分な特性を有しているとはいえない。また、これまで以上に耐熱性等の特性に優れた高機能性材料の原料となるアダマンタン誘導体が求められている。
【0004】
【非特許文献1】Macro. Chem. Phys. 199, 963(1998)
【非特許文献2】Zhurnal Organicheskoi Khimii (1991), 27(1), 108−12
【非特許文献3】Chem.Ber., 1964, 97, 3488−3492
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、入手容易な化合物から簡単に製造でき、しかも高機能性材料の原料等として有用なアミノアリールアダマンタン誘導体に容易に誘導可能な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体とその効率の良い製造法を提供することにある。
本発明の他の目的は、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体とその効率の良い製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アダマンタン環に結合している芳香環に加水分解性保護基で保護されたアミノ基を有する新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体を見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化2】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、R1、R2、R3、R5のうち少なくとも2つは式(2)で表される基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体を提供する。
【0008】
本発明は、また、下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のX4、X6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、X1、X2、X3、X5のうち少なくとも2つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアダマンタン誘導体と、下記式(4)
【化4】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族化合物とを反応させて、下記式(1)
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化6】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、R1、R2、R3、R5のうち少なくとも2つは式(2)で表される基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体を得ることを特徴とする置換アミノアリールアダマンタン誘導体の製造法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入手容易な化合物から簡単に製造でき、しかも高機能性材料の原料等として有用なアミノアリールアダマンタン誘導体に容易に誘導可能な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体が提供される。また、電気特性、熱特性、機械特性、光学特性、物理特性などに優れた機能性材料の原料として有用な新規な置換アミノアリールアダマンタン誘導体が提供される。本発明の製造法によれば、このような有用性の高い置換アミノアリールアダマンタン誘導体を、アダマンタンハライド誘導体やアダマンタノール誘導体等の入手容易な原料からワンステップで効率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の置換アミノアリールアダマンタン誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、前記式(2)で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、R1、R2、R3、R5のうち少なくとも2つは式(2)で表される基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。式(2)において、環Zは芳香環を示す。R7、R8は窒素原子に結合している置換基であり、R7は加水分解性保護基(アミノ基の保護基)、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基(アミノ基の保護基)を示す。R7とR8は一体となって加水分解性保護基を構成していてもよい。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい。なお、k、pは、それぞれ括弧内の基の個数を意味する。
【0011】
式(1)で表される化合物において、芳香環Zに結合している−NR78基は加水分解により容易にアミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基に変換できる。従って、式(1)で表される化合物のうち式(2)で表される芳香族環式基を1つ有する化合物は、−NR78基をアミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基に変換した後、該アミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基に重合性基を導入することにより、側鎖にアダマンタン環を有するポリマー(ペンダント型)のモノマー原料として利用できる。また、−NR78基をアミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基に変換した後、これらの基を利用して、これらの基と反応しうる基を有するポリマーの側鎖にアダマンタン環を導入することもできる。一方、式(2)で表される芳香族環式基を2つ有する化合物(特に、前記芳香族環式基を両端のアダマンタン環に1つずつ有する化合物)は、−NR78基から変換されるアミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基を利用した縮合反応によりポリマー(主鎖型)に誘導できるため重要性が極めて高い。さらに、式(2)で表される芳香族環式基を3つ以上有する化合物は、3次元網目構造を有する高次重合体の原料等として利用できる。また、kが特に1以上の場合には、アダマンタン環が複数個直接結合する構造をとるため、ポリマーに誘導した際、耐熱性等の特性が著しく向上する。
【0012】
式(2)で表される芳香族環式基における芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環等の芳香族炭素環;ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環などの芳香族複素環などが挙げられる。芳香環には非芳香環(シクロヘキサン環等の脂環;ピペリジン環、オキソラン環、オキサン環等の非芳香族性複素環)が縮合していてもよい。
【0013】
7における加水分解性保護基としては、加水分解により脱離可能なアミノ基の保護基であればよく、例えば、アシル基、スルホニル基(ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル基等)、隣接する窒素原子とアミノアセタールを形成する基(メトキシメチル、2−クロロエトキシメチル、2−テトラヒドロピラニル基等)、隣接する窒素原子とウレアを形成する基(ピペリジニルカルボニル、p−トルエンスルホニルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニル基等)、ホスフィニル基(ジフェニルホスフィニル基等)、ホスホリル基(ジエチルホスホリル、ジフェニルホスホリル基等)、シリル基(トリメチルシリル基等)などが挙げられる。また、R7とR8が一体となって構成される加水分解性保護基として、例えば、隣接する窒素原子とイミンを形成する基(ジメチルアミノメチレン、イソプロピリデン、ベンジリデン、ジフェニルメチレン基等)が挙げられる。前記アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル基などの脂肪族アシル基(例えば、C1-20脂肪族アシル基など);アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基(例えば、C7-20芳香族アシル基);シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などの脂環式カルボン酸アシル基(例えば、C4-20脂環式カルボン酸アシル基)などが挙げられる。アシル基としては、アセチル基などのC1-6脂肪族アシル基が特に好ましい。アシル基は保護基で保護されていてもよい。該アシル基の保護基としては有機合成分野で慣用の保護基を使用できる。アシル基の保護された形態として、例えば、アセタール(ヘミアセタールを含む)などが挙げられる。R7における加水分解性保護基としてはアシル基が特に好ましい。
【0014】
8における炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル基等のアルキル基(特に、C1-4アルキル基);アリル基等のアルケニル基(特に、C2-4アルケニル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基(特に、3〜6員シクロアルキル基);フェニル基、ナフチル基等のアリール基;これらが複数個結合した基(ベンジル基等)などが挙げられる。前記炭化水素基は置換基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基など)を有していてもよい。R8における加水分解性保護基としては、上記R7における加水分解性保護基と同様である。R8としては、水素原子、C1-4アルキル基、フェニル基などがより好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0015】
また、前記芳香環(環Z)には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、式中に示される−NR78基以外の置換基を有していてもよい。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、加水分解性保護基以外の保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、アリール基などが挙げられる。該置換基の数は0〜4程度である。
【0016】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1〜15程度のアルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基);トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜15程度のハロアルキル基(好ましくはC1-10ハロアルキル基、さらに好ましくはC1-6ハロアルキル基)などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基として、特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜15程度のアルコキシ基(好ましくはC1-10アルコキシ基、さらに好ましくはC1-6アルコキシ基);トリフルオロメトキシ基などの炭素数1〜15程度のハロアルコキシ基(好ましくはC1-10ハロアルコキシ基、さらに好ましくはC1-6ハロアルコキシ基)などが挙げられる。ヒドロキシ(ハロ)アルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−ヒドロキシエチル基など(好ましくは、ヒドロキシ−C1-4アルキル基、ヒドロキシ−C1-4ハロアルキル基等)が挙げられる。
【0017】
前記ヒドロキシル基や、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル基など)等の、ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基など)など、及び、分子内にヒドロキシル基(ヒドロキシメチル基を含む)が2以上存在するときには、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(例えば、メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基など)などが例示できる。
【0018】
前記アミノ基の保護基としては、例えば、前記ヒドロキシル基の保護基として例示したアルキル基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。前記アシル基の保護基としては、該アシル基とアセタールを形成可能な基などが挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0019】
式(2)において、−NR78基の置換位置は特に限定されず、例えば芳香環がベンゼン環の場合、オルト位、メタ位及びパラ位の何れであってもよく、用途やポリマー設計に応じて適宜選択できる。なお、芳香環がベンゼン環の場合には、オルト位及びパラ位が配向性上合成しやすく、特にパラ位が重合用モノマーとして有用な場合が多い。また、芳香環が多環の場合には、ベンゼン環の場合に準じてその置換位置を選択できる。
【0020】
式(1)に示されるアダマンタン環には、溶剤溶解性、耐熱性、その他の機能を付与または向上させるため、式(2)で表される基以外の置換基を有していてもよい。また、置換基はアダマンタン環の橋頭位、非橋頭位の何れに結合していてもよい。
【0021】
アダマンタン環が有していてもよい置換基として、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシ(ハロ)アルキル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、保護基で保護されていてもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、オキソ基(=O)などが挙げられる。
【0022】
ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ(ハロ)アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基やヒドロキシ(ハロ)アルキル基におけるヒドロキシル基の保護基、アミノ基の保護基、アシル基の保護基は、前記環Zの置換基の場合と同様である。また、保護基で保護されたカルボキシル基としては、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシカルボニル基など)、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、置換又は無置換カルバモイル基などが挙げられる。保護基で保護されたスルホ基としては、アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、ブトキシスルホニル基等のC1-6アルコキシスルホニル基など)、シクロアルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アラルキルオキシスルホニル基、トリアルキルシリルオキシスルホニル基、置換又は無置換スルファモイル基などが挙げられる。
【0023】
上記のアダマンタン環が有していてもよい置換基のなかでも、溶剤溶解性を著しく高める機能を有することから、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基が好ましく、特に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基が好ましい。また、機能性を向上させるため、アダマンタン環が有していてもよい置換基として、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基なども好ましい。
【0024】
前記置換基(例えば、ハロゲン原子を有していてもよいアルキル基等)がアダマンタン環の橋頭位に結合する場合、アダマンタン環の橋頭位の1つに結合していてもよいが、アダマンタン環の2つの橋頭位に結合しているのが特に好ましい。また、複数のアダマンタン環の各2箇所の橋頭位すべてに該置換基を有するのも好ましい。
【0025】
式(1)で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体は、分子中に酸性基又は塩基性基を有する時は塩を形成しうる。本発明の化合物にはこのような塩も含まれる。分子中にカルボキシル基やスルホ基(スルホン酸基)等の酸性基を有する場合の塩としては、例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが例示される。分子中にアミノ基等の塩基性基を有する場合の塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;p−トルエンスルホン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩が挙げられる。塩は通常の塩形成反応により製造できる。
【0026】
式(1)で表される化合物の代表的な例として、1,3−ビス(4−アセチルアミノフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−プロピオニルアミノフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ジエチルアダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ジブチルアダマンタン、1,3−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ビス(トリフルオロメチル)アダマンタンなどのビス(アシルアミノフェニル)アダマンタン誘導体;3−(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−プロピオニルアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのアシルアミノフェニルビアダマンタン誘導体;3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−プロピオニルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5′,7′−ジメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,7,7′−テトラアミノ−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス[3,4−ビス(アセチルアミノ)フェニル]−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ビス[3,4−ビス(アセチルアミノ)フェニル]−5,7−ジメチル−1,1′−ビアダマンタンなどのビス(アシルアミノ)フェニルビアダマンタン誘導体;3−(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−プロピオニルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのアシルアミノフェニルトリアダマンタン誘導体;3,3″−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−プロピオニルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのビス(アシルアミノフェニル)トリアダマンタン誘導体;3−(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−プロピオニルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのアシルアミノフェニルテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノ−3−メチルフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノ−3−メトキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(3−アセチルアミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−プロピオニルアミノフェニル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのビス(アシルアミノフェニル)テトラアダマンタン誘導体;3,3′−ビス(4−アセチルアミノナフタレン−1−イル)−1,1′−ビアダマンタンなどの上記各アシルアミノフェニル基を有するアダマンタン誘導体に対応するアシルアミノナフチル基を有するアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0027】
本発明の置換アミノアリールアダマンタン誘導体及びその塩は、非常に安定で対称性に優れた炭素骨格であるアダマンタン骨格を有しており、且つ加水分解により反応性官能基として利用できるアミノ基又はモノ炭化水素基置換アミノ基に容易に変換可能な基を有している。そのため、耐熱性、耐水性、光学特性、光透過性、低誘電率性、吸水性、密着性などの電気特性、熱特性、機械特性及び物理特性などに優れた各種高機能性ポリマー等の機能性材料、例えば、フレキシブル配線板(ベース材、カバー材)材料、CCL(銅張り積層板)材料、半導体デバイスや多層配線基板の層間絶縁膜材料、接着剤材料、液晶配向膜材料、塗料材料、光学材料等の原料、航空宇宙用材料、車両用材料、又はこれらの原料、添加剤などとして有用である。
【0028】
本発明の式(1)で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体は、例えば、前記式(3)で表されるアダマンタン誘導体と、前記式(4)で表される芳香族化合物とを反応させることにより製造できる。
【0029】
式(3)中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のX4、X6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、X1、X2、X3、X5のうち少なくとも2つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい。
【0030】
脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基として、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2、ヒドリド(H)などが挙げられる。特に、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、−ONO2が好ましい。
【0031】
1、X2、X3、X4、X5、X6におけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は、式(1)のR1、R2、R3、R4、R5、R6におけるその他の置換基、式(1)におけるアダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基と同様である。また、X1、X2、X3、X4、X5、X6におけるその他の置換基、アダマンタン環の橋頭位以外の部位に有していてもよい置換基は、前記式(2)で表される基であってもよい。式(3)で表される好ましい化合物には、X1、X2、X3、X4、X5、X6の少なくとも1つ(より好ましくは2以上)がハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)である化合物が含まれる。また、アダマンタン環の橋頭位以外の部位にハロゲン原子を有していてもよいアルキル基(特に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のハロアルキル基)を少なくとも1つ有している化合物も好ましい。
【0032】
式(3)で表される化合物の代表的な例として、例えば、1,3−ジブロモアダマンタン、1,3−ジブロモ−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ジブロモ−5,7−ジエチルアダマンタン、1,3−ジブロモ−5,7−ジブチルアダマンタン、1,3−ジブロモ−5,7−ビス(トリフルオロメチル)アダマンタンなどのジブロモアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのブロモビアダマンタン誘導体;3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラメチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラエチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラブチル−1,1′−ビアダマンタン、3,3′−ジブロモ−5,5′,7,7′−テトラキス(トリフルオロメチル)−1,1′−ビアダマンタンなどのジブロモビアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、5,5′,5′′,7,7′,7″−ヘキサメチル−3−フェニル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのブロモトリアダマンタン誘導体;3,3″−ジブロモ−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサメチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサエチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサブチル−1,1′:3′,1″−トリアダマンタン、3,3″−ジブロモ−5,5′,5″,7,7′,7″−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″−トリアダマンタンなどのジブロモトリアダマンタン誘導体;3−ブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3−ブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのブロモテトラアダマンタン誘導体;3,3′′′−ジブロモ−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタメチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタエチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタブチル−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタン、3,3′′′−ジブロモ−5,5′,5″,5′′′,7,7′,7″,7′′′−オクタキス(トリフルオロメチル)−1,1′:3′,1″:3″,1′′′−テトラアダマンタンなどのジブロモテトラアダマンタン誘導体;及び3−ヒドロキシ−1,1′−ビアダマンタン、3−ニトロオキシ−1,1′−ビアダマンタン等の前記各ブロモアダマンタン誘導体に対応するヒドロキシアダマンタン誘導体、ニトロオキシアダマンタン誘導体などが挙げられる。
【0033】
前記式(4)において、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい。R7における加水分解性保護基、R8における炭化水素基、加水分解性保護基、式中に示されている置換基以外の芳香環の置換基としては、前記式(1)と同様である。式(4)で表される芳香族化合物の代表的な例として、アセチルアミノベンゼン(=アセトアニリド)、1−アセチルアミノ−2−メチルベンゼン、1−アセチルアミノ−2−メトキシベンゼン、1−アセチルアミノ−2−ヒドロキシベンゼン、プロピオニルアミノベンゼン、o−ビス(アセチルアミノ)ベンゼン、m−ビス(アセチルアミノ)ベンゼン、p−ビス(アセチルアミノ)ベンゼン、1−アセチルアミノナフタレン、2−アセチルアミノナフタレン、1,2−ビス(アセチルアミノ)ナフタレンなどが挙げられる。
【0034】
式(3)で表されるアダマンタン誘導体と式(4)で表される芳香族化合物との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は溶媒非存在下で行われる。前記溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの鎖状又は環状エーテル;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル;酢酸などのカルボン酸;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;これらの混合物などが挙げられる。
【0035】
式(4)で表される芳香族化合物の使用量は、一般に、式(3)で表されるアダマンタン誘導体1モルに対して、0.8〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1.5〜10モル程度である。式(4)で表される芳香族化合物を大過剰量用いてもよい。
【0036】
この方法では、反応を促進させるため、系内にプロトン酸やルイス酸、塩基を添加するのが好ましい。例えば、式(3)で表されるアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基又は−ONO2基である化合物を用いる場合には、反応速度を速くするため、酸(特にプロトン酸)の存在下で反応を行うのが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、臭化水素、硝酸、リン酸等の無機酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸;ヘテロポリ酸;陽イオン交換樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、強酸、例えば、塩化水素、硫酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、ヘテロポリ酸、強酸性陽イオン交換樹脂などが好ましい。酸の使用量は、例えば、式(3)で表されるアダマンタン誘導体1モルに対して、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モル程度である。
【0037】
また、式(3)で表されるアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物(アダマンタンハライド誘導体)を用いる場合には、通常加熱下で反応を行う。この際、副生するハロゲン化水素を捕捉するため、反応を適宜な塩基の存在下で行ってもよい。また、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合には、ルイス酸の存在下で反応(フリーデルクラフト反応)を行ってもよい。ルイス酸としては、例えば、FeBr3、FeCl3、AlBr3、AlCl3、PF5、PF3、SBCl5などが挙げられる。これらのなかでも、AlBr3、AlCl3等のアルミニウム系のルイス酸が好ましい。ルイス酸の使用量は、例えば、式(3)で表されるアダマンタン誘導体1モルに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.05〜5モル程度である。
【0038】
式(3)で表されるアダマンタン誘導体と式(4)で表される芳香族化合物との反応における反応温度は、反応成分の種類等に応じて適宜選択できる。例えば、式(3)で表されるアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がヒドロキシル基である化合物(アダマンタノール誘導体)等を用いる場合には、反応温度は、例えば10〜200℃、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは60〜130℃程度である。また、式(3)で表されるアダマンタン誘導体として、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物等を用いる場合には、反応温度は、例えば100〜250℃、好ましくは130〜220℃程度である。なお、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基がハロゲン原子である化合物を用いる場合において、ルイス酸を使用する時には、反応温度は、例えば−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、さらに好ましくは−10℃〜100℃程度である。
【0039】
なお、式(4)で表される芳香族化合物の使用量[式(3)で表されるアダマンタン誘導体との当量比]やその他の反応条件を調整することにより、式(3)で表されるアダマンタン誘導体中の脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基としてのハロゲン原子やヒドロキシル基等の一部を未反応のまま残して、分子内に加水分解性保護基で保護されたアミノ基含有芳香環と共にハロゲン原子やヒドロキシ基等を有する式(1)で表される化合物を製造することができる。反応は、回分式、半回分式、連続式等の何れの方式で行ってもよい。上記の触媒や反応促進剤は、反応の初期に一括添加してもよく、反応の進行と共に逐次添加してもよい。また、式(3)で表されるアダマンタン誘導体と式(4)で表される芳香族化合物との反応をルイス酸存在下で行う場合、式(3)で表されるアダマンタン誘導体と式(4)で表される芳香族化合物とルイス酸の添加順序は特に限定されないが、式(3)で表されるアダマンタン誘導体とルイス酸との混合物(通常、溶媒を含む)中に、所定の温度で、式(4)で表される芳香族化合物を連続的又は間欠的に逐次添加すると、目的物の収率が大幅に向上する。
【0040】
上記反応(脱ハロゲン化水素反応、脱水縮合反応等)により、式(3)で表される化合物における脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基の結合部位に、式(2)で表される基が結合した対応する式(1)で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体が生成する。反応終了後、反応生成物は、例えば、液性調整、濾過、濃縮、晶析、洗浄、再結晶、抽出、蒸留、昇華精製、カラムクロマトグラフィー等の一般的な分離精製手段により分離精製できる。
【0041】
なお、本発明の式(1)で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体において、アダマンタン環上の各置換基、式(2)で表される芳香族環式基の芳香環上の各置換基の導入は、該置換アミノアリールアダマンタン誘導体を製造するどの段階で行ってもよい。例えば、上記に示した脱ハロゲン化水素反応又は脱水縮合反応の前工程(又はその原料の製造工程)として前記置換基の導入を行ってもよく、後工程として前記置換基の導入を行ってもよい。また、アダマンタンを複数個有する化合物は、アダマンタンのカップリング反応を利用することにより合成できる。例えば、ビアダマンタン誘導体は、ブロモアダマンタン誘導体をナトリウムの存在下で反応させることにより得ることができ、トリアダマンタン誘導体は、ブロモアダマンタン誘導体とブロモビアダマンタン誘導体とをナトリウムの存在下で反応させることにより得ることができ、テトラアダマンタン誘導体は、ブロモビアダマンタン誘導体をナトリウムの存在下で反応させることにより得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
実施例1
窒素雰囲気下、3,3′−ジブロモ−1,1′−ビアダマンタン10gと無水塩化アルミニウム13.3g、及びクロロホルム50gを100mlの3つ口フラスコに入れ、マグネティックスターラーで撹拌しながら40℃まで水バスで昇温した。その後、アセトアニリド60gを粉黛の状態で、30分ほどかけてフラスコ内の混合物に添加した。1時間熟成した後に、クロロホルム50gを加え、その後、水50mlを加えて分液させた。下層を濃縮し溶媒を取り除くと褐色固体が得られた。これに、酢酸エチル30mlとヘキサン30mlとを加え、50℃で3時間撹拌した後、室温まで冷却すると白色固体が得られた。この白色固体を濾過し乾燥すると、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタンが50%の収率(6.3g)で得られた。
GC/MS:m/z=536
FAB+/MS:m/z=537, 403, 135
【0044】
参考例1
窒素雰囲気下、3,3′−ビス(4−アセチルアミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタン6.3g、及び濃塩酸30mlを100mlの3つ口フラスコに投入し、マグネティックスターラーで撹拌しながら、還流するまでオイルバスで昇温した。15時間熟成した後に、5N−水酸化ナトリウム水溶液をpH7になるまで注ぎ、濾過し、乾燥すると、3,3′−ビス(4−アミノフェニル)−1,1′−ビアダマンタンが95%の収率(5.0g)で得られた。
GC/MS:m/z=452
1H-NMR(DMSO-d6, 500MHz) δ:1.3-2.2(m, 28H), 7.33(d, 4H), 7.48(d,4H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化2】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、R1、R2、R3、R5のうち少なくとも2つは式(2)で表される基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体。
【請求項2】
下記式(3)
【化3】

[式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6は、同一又は異なって、水素原子、脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基、又はその他の置換基を示す。但し、X1、X2、X3、X4、X5、X6のうち少なくとも1つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のX4、X6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、X1、X2、X3、X5のうち少なくとも2つは脱離してアダマンタン骨格にカルボカチオンを生成可能な基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表されるアダマンタン誘導体と、下記式(4)
【化4】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族化合物とを反応させて、下記式(1)
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子、下記式(2)
【化6】

(式中、環Zは芳香環を示し、R7は加水分解性保護基を示し、R8は、水素原子、炭化水素基又は加水分解性保護基を示す。pは1以上の整数を示す。pが2以上の場合、複数個のR7、R8は同一であっても異なっていてもよい。芳香環は式中に示されている置換基以外の置換基を有していてもよい)
で表される芳香族環式基、又はその他の置換基を示す。但し、R1、R2、R3、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは式(2)で表される基である。kは0〜3の整数を示す。kが2又は3の場合、複数個のR4、R6はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。但し、k=0の場合には、R1、R2、R3、R5のうち少なくとも2つは式(2)で表される基である。アダマンタン環は橋頭位以外の部位に置換基を有していてもよい]
で表される置換アミノアリールアダマンタン誘導体を得ることを特徴とする置換アミノアリールアダマンタン誘導体の製造法。

【公開番号】特開2006−232730(P2006−232730A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49747(P2005−49747)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】