説明

置換フェニレン芳香族ジエステルの製造

本開示は、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの製造、およびその精製に関する。5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの前駆物質ための合成経路が提供される。前駆物質は、5−tert−ブチル−3−メチルカテコールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2008年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/141,902号、および2008年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/141,959号の優先権を主張し、各出願の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、置換フェニレン芳香族ジエステルの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
置換フェニレン芳香族ジエステルは、オレフィン系ポリマーの製造のためのプロ触媒組成物の調製において、内部電子供与体として使用される。特に、内部電子供与体として5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートを含むチーグラー・ナッタ触媒は、重合の間に高い触媒活性および高い選択性を示す。さらに、かかる触媒は、高いアイソタクチシティおよび広い分子量分布を有する(プロピレン系ポリマーなどの)オレフィン系ポリマーを生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野は、改良された特性を有するオレフィン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーの必要性を認識する。望まれるのは、置換フェニレン芳香族ジエステルの対費用効果の高い、信頼のおける供給を確実にする、置換フェニレン芳香族ジエステルの製造のための複数のおよび/または代替の合成経路である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、置換フェニレン芳香族ジエステル、および特に5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの製造に関する。本明細書に開示されるのは、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの前駆物質、すなわち5−tert−ブチル−3−メチルカテコールの製造のための合成経路である。有利なことに、本開示において提示されるとおり、この前駆物質の提供は、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの製造を単純化し、一般的で、安価な出発物質による5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの大規模製造を可能にする。
【0006】
本開示は、方法を提供する。一実施形態において、反応条件下で、5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(BMC)を、芳香族カルボン酸または芳香族カルボン酸誘導体と反応させるステップ、および5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(BMPD)を形成するステップを含む方法が提供される。
【0007】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、3−メチルカテコールを、tert−ブタノールまたはイソブチレンによってアルキル化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む。
【0008】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを酸化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む。
【0009】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを酸化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む。
【0010】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールを加水分解するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む。
【0011】
本開示は、別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、5−tert−ブチル−3−アミノメチルカテコールを水素化分解するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む。
【0012】
本開示の利点は、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートなどの置換フェニレン芳香族ジエステルの製造のための改良された方法である。
【0013】
本開示の利点は、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの前駆物質、すなわち5−tert−ブチル−3−メチルカテコールの提供である。
【0014】
本開示の利点は、5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを製造するための多くの合成経路の提供である。
【0015】
本開示の利点は、安価な出発物質を使用する、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの製造である。
【0016】
本開示の利点は、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートなどの置換フェニレン芳香族ジエステルの製造のための多数の合成経路であり、それによって、プロピレン系ポリマーの製造のための置換フェニレン芳香族ジエステルの信頼のおける供給を確実にする。
【0017】
本開示の利点は、置換フェニレン芳香族ジエステルの大規模製造のための方法である。
【0018】
本開示の利点は、置換フェニレン芳香族ジエステルのための環境に安全で、非毒性の製造方法である。
【0019】
本開示の利点は、置換フェニレン芳香族ジエステルの大規模製造である。
【0020】
本開示の利点は、置換フェニレン芳香族ジエステルのための単純で、時間効率の良い、および/または対費用効果の高い精製方法である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本開示の一実施形態による置換フェニレン芳香族ジエステルの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本開示の一実施形態による置換フェニレン芳香族ジエステルの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、置換フェニレン芳香族ジエステルの製造に関する。5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(すなわち「BMC」)は、置換フェニレン芳香族ジエステル、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(すなわち「BMPD」)の製造に効果的な前駆物質であることがわかる。BMPDは、チーグラー・ナッタ触媒における効果的な内部電子供与体である。有利なことに、本明細書に開示される方法は、その商業的/工業的利用のために許容される収率を有する、経済的な(時間および金銭的経済性の両方)、単純化された、規模拡大が可能な、BMCへの合成経路を提供する。BMCの経済的な入手手段は、それに対応して5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートの経済的な製造に貢献する。
【0023】
5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(BMC)は、下記に示す構造(I)
【0024】
【化1】

を有する。
【0025】
一実施形態において、BMCを製造するための方法が提供される。該方法は、反応条件下で、3−メチルカテコールを、tert−ブタノールまたはイソブチレンによってアルキル化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(BMC)を形成するステップを含む(反応1またはRx1)。用語「アルキル化する」または「アルキル化」または「アルキル化反応」は、アルキル基の、有機化合物中への導入である。「有機化合物」は、炭素原子を含む化学的化合物である。本明細書において「反応条件」は、試薬間の反応および得られる生成物の形成を促進する、反応槽内の温度、圧力、反応物の濃度、溶媒の濃度、反応物の混合/添加のパラメータ、ならびに/またはその他の条件である。一実施形態において、アルキル化は、ヘプタン中での、(硫酸などの)無機酸の、3−メチルカテコールとtert−ブタノールとの混合物への添加によって起こる。
【0026】
一実施形態において、該方法は、3−メチルカテコールの調製を含む。該方法は、反応条件下で、2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドを酸化するステップ、および3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx2)。さらなる一実施形態において、酸化剤は、過酸化水素などの過酸化物であり、塩基性水溶液中で2−ヒドロキシ−3−メチルアルデヒドに添加される。
【0027】
一実施形態において、該方法は、2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドの調製を含む(Rx3)。該方法は、反応条件下で、o−クレゾールを、パラホルムアルデヒドによってホルミル化するステップ、および2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドを形成するステップを含む。用語「ホルミル化する」または「ホルミル化」または「ホルミル化反応」は、有機化合物にホルミル基(−CH=O)によって官能性をもたせる化学反応である。続いて、2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドは酸化されて、3−メチルカテコールを形成する。
【0028】
ホルミル化反応は、還流テトラヒドロフラン(THF)中で、o−クレゾールをパラホルムアルデヒド、塩化マグネシウム(MgCl)、およびトリエチルアミン(EtN)によって、ホルミル化することによって生じうる。この反応は、o−クレゾールのオルトホルミル化をもたらす。別の適切なホルミル化反応は、ライマー・チーマン(Reimer-Tiemann)反応(すなわち、クロロホルム/水酸化ナトリウム中でのo−クレゾールのオルトホルミル化)である。
【0029】
一実施形態において、3−メチルカテコールは、直接o−クレゾールから調製される。該方法は、反応条件下で、o−クレゾールを酸化するステップ、および3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx4)。さらなる一実施形態において、酸化剤は、過酸化水素などの過酸化物である。さらに、該方法は、前述したとおり、3−メチルカテコールをアルキル化するステップおよびBMCを形成するステップを含む。
【0030】
反応1、2、および3の限定されない反応式が、下記の経路(II)
【0031】
【化2】

に示される。
【0032】
反応4の限定されない反応式が、下記の経路(III)
【0033】
【化3】

に示される。
【0034】
一実施形態において、BMCを製造するための別の方法が提供される。該方法は、反応条件下で、5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを酸化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx5)。さらなる一実施形態において、酸化剤は、過酸化水素などの過酸化物である。
【0035】
一実施形態において、該方法は、5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドの合成を含む。該方法は、反応条件下で、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを、パラホルムアルデヒドによってホルミル化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを形成するステップを含む(Rx6)。ホルミル化は、本明細書に開示されるいずれかの適切なホルミル化反応によって生じうる。
【0036】
一実施形態において、該方法は、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールの合成を含む。該方法は、反応条件下で、o−クレゾールを、イソブチレンまたはt−ブタノールによってアルキル化して、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを形成するステップを含む(Rx7)。アルキル化は、本明細書に開示されるいずれかの適切なアルキル化反応によって生じうる。驚くべきことに、化合物、o−クレゾールは、BMCの製造のための有利な出発物質であることがわかった。化合物o−クレゾールは安価であり、芳香環の−OH基に直接隣接するメチル基を提供する。o−クレゾールの−OH基は、求電子置換反応のための強いパラ指示基(para-director)であり、o−クレゾールの4−tert−ブチル−2−メチルフェノールへの敏速なアルキル化を可能にする。続いて、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールは、反応条件下で、ホルミル化されて、5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを形成する。
【0037】
反応5、6、および7の限定されない反応式が、下記の経路(IV)
【0038】
【化4】

に示される。
【0039】
本開示は、BMCを製造するための別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを酸化するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx8)。酸化は、塩基性水溶液中での、過酸化物の、4−tert−ブチル−2−メチルクレゾールへの添加によって生じうる。
【0040】
一実施形態において、該方法は、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールの合成を含む。該方法は、反応条件下で、o−クレゾールを、tert−ブタノールまたはイソブチレンによってアルキル化するステップ、および4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを形成するステップを含む(Rx9)。アルキル化は、本明細書に開示されるいずれかの適切なアルキル化反応によって生じうる。続いて、4−tert−ブチル−2−メチルクレゾールは酸化されて、BMCを形成する。
【0041】
反応8および9の限定されない反応式が、下記の経路(V)
【0042】
【化5】

に示される。
【0043】
本開示は、BMCを製造するための別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールを加水分解するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx10)。本明細書において「加水分解する」または「加水分解」または「加水分解反応」は、水がH+およびOH−イオンに分裂し、OH−イオンが官能基と置換する化学反応である。用語「ハロ」は、ハロゲン原子−F、Cl、Br、Iである。一実施形態において、ハロゲン原子は、2−ブロモ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールをもたらす臭素である。別の一実施形態において、ハロゲン原子は、2−クロロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールをもたらす塩素である。一実施形態において、加水分解反応は、塩基および/または硫酸銅(II)などの塩によって触媒される。
【0044】
一実施形態において、該方法は、2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールの合成を含む。該方法は、反応条件下で、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールをハロゲン化するステップ、および2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールを形成するステップを含む(Rx11)。用語「ハロゲン化する」または「ハロゲン化」または「ハロゲン化反応」は、ハロゲン基の、有機化合物への導入である。ハロゲン化は、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを、臭素化剤または塩素化剤などのハロゲン化剤と反応させることによって起こる。適切なハロゲン化剤の限定されない例としては、N−ブロモスクシンアミン(N-bromosuccinamine)(NBS)、臭素化剤、および/またはN−クロロスクシンアミン(N-chlorosuccinamine)(NCS)、塩素化剤が挙げられる。ハロゲン化はまた、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを、元素ハロゲンと反応させることによって生じうる。下記の経路(VI)における用語「X」は、元素ハロゲンとの反応を意味する。元素ハロゲンは、ClまたはBrであってよい。
【0045】
一実施形態において、該方法は、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールの合成を含む。上に開示されたとおり、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールは、反応条件下で、o−クレゾールを、イソブチレンまたはt−ブタノールによってアルキル化することによって、形成される(Rx12)。続いて、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールは、ハロゲン化されて、2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールを形成する。
【0046】
反応10、11、および12の限定されない反応式が、下記の経路(VI)
【0047】
【化6】

に示される。
【0048】
本開示は、BMCを製造するための別の方法を提供する。一実施形態において、方法が提供され、その方法は、反応条件下で、5−tert−ブチル−3−アミノメチルカテコールを水素化分解するステップ、および5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップを含む(Rx13)。用語「水素化分解する」または「水素化分解」または「水素化分解反応」は、炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子の単結合が、水素によって開裂される化学反応である。適切な水素化分解剤の限定されない例としては、触媒水素化分解剤(パラジウム触媒など)、および水素化ホウ素(シアノ水素化ホウ素ナトリウムなど)が挙げられる。
【0049】
一実施形態において、該方法は、5−tert−ブチル−3−アミノメチルカテコールの合成を含む。該方法は、反応条件下で、4−tert−ブチルカテコールをアミノアルキル化するステップ、および5−tert−ブチル−3−アミノメチルカテコールを形成するステップを含む(Rx14)。続いて、5−tert−ブチル−3−アミノメチルカテコールは、水素化分解されて、5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成する。アミノアルキル化は、マンニッヒ反応によって起こる。「マンニッヒ反応」は、カルボニル官能基の隣に位置する酸性プロトンを、ホルムアルデヒドおよびアンモニアまたはいずれかの一級もしくは二級アミンによって、アミノアルキル化する有機反応である。
【0050】
反応13および14の限定されない反応式が、下記の経路(VII)
【0051】
【化7】

に示される。
【0052】
一実施形態において、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(BMPD)を製造するための方法が提供される。該方法は、反応条件下で、BMCを芳香族カルボン酸および/または芳香族カルボン酸誘導体から選択されるメンバーと反応させるステップ、および続いて、5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(BMPD)を形成するステップを含む。BMCは、本明細書において既に述べた合成経路のいずれかによって調製される。
【0053】
本明細書において「芳香族カルボン酸」は、ベンゼン環に直接結合した少なくとも1個のカルボキシル基を有する、少なくとも1個のベンゼン環を含む化合物である。芳香族カルボン酸は、単環式構造または多環式構造であってよいことが理解される。芳香族カルボン酸は、モノ−またはポリ−カルボン酸であってよい。適切な芳香族カルボン酸の限定されない例としては、安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、6H−フェナレン−2−カルボン酸、アントラセン−2−カルボン酸、フェナントレン−2−カルボン酸、およびフェナントレン−3−カルボン酸が挙げられる。
【0054】
本明細書において「芳香族カルボン酸の誘導体」または「芳香族カルボン酸誘導体」は、芳香族ハロゲン化アシル、芳香族無水物、芳香族カルボン酸塩、またはそれらのいずれかの組合せである。芳香族カルボン酸の誘導体は、単環式構造または多環式構造であってよいことが理解される。適切な芳香族ハロゲン化アシルの限定されない例は、上に開示された芳香族カルボン酸のいずれかのハロゲン化物(すなわち、安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、6H−フェナレン−2−カルボン酸、アントラセン−2−カルボン酸、フェナントレン−2−カルボン酸、および/もしくはフェナントレン−3−カルボン酸のうちの1つまたは複数のハロゲン化アシル)を含む。適切な芳香族ハロゲン化アシルのさらなる限定されない例としては、塩化ベンゾイル、フッ化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、およびヨウ化ベンゾイル、塩化ナフトイル、フッ化ナフトイル、臭化ナフトイル、ヨウ化ナフトイル、ならびに前述の芳香族ハロゲン化アシルのいずれかの組合せが挙げられる。
【0055】
適切な芳香族無水物の限定されない例としては、上に開示された芳香族カルボン酸の無水物(すなわち、安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、6H−フェナレン−2−カルボン酸、アントラセン−2−カルボン酸、フェナントレン−2−カルボン酸、および/もしくはフェナントレン−3−カルボン酸のうちの1つまたは複数の無水物)が挙げられる。適切な芳香族無水物のさらなる限定されない例としては、安息香酸無水物および前述の芳香族無水物のいずれかの組合せが挙げられる。
【0056】
適切な芳香族カルボン酸塩の限定されない例としては、上に開示された芳香族カルボン酸のカリウム、ナトリウム、またはリチウムの塩(すなわち、安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、6H−フェナレン−2−カルボン酸、アントラセン−2−カルボン酸、フェナントレン−2−カルボン酸、および/もしくはフェナントレン−3−カルボン酸のうちの1つまたは複数の塩)が挙げられる。適切な芳香族カルボン酸塩のさらなる限定されない例としては、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、2−ナフトエ酸カリウム、2−ナフトエ酸ナトリウム、および前述の芳香族カルボン酸塩のいずれかの組合せが挙げられる。
【0057】
芳香族カルボン酸またはその誘導体は、置換されていてもよい。本明細書において用語「置換芳香族カルボン酸またはその誘導体」は、芳香族カルボン酸またはその誘導体であり、それによって、(カルボキシル基以外の)ベンゼン環置換基の少なくとも1個は、1から20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、およびそれらの組合せである。したがって、用語「置換芳香族カルボン酸またはその誘導体」は、置換芳香族カルボン酸、置換芳香族ハロゲン化アシル、置換芳香族無水物、および/または置換芳香族カルボン酸塩を含む。
【0058】
本明細書において、用語「ヒドロカルビル」および「炭化水素」は、分枝または非分枝、飽和または不飽和、環式、多環式、縮合、または非環式の種、およびそれらの組合せを含む、水素ならびに炭素原子のみを含む置換基のことである。ヒドロカルビル基の限定されない例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0059】
本明細書において、用語「置換ヒドロカルビル」および「置換炭化水素」は、1個または複数の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基のことである。非ヒドロカルビル置換基の限定されない例は、ヘテロ原子である。本明細書において、「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の原子のことである。ヘテロ原子は、周期表の第IV、V、VI、およびVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の限定されない例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、およびSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基および/またはケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書において、用語「ハロヒドロカルビル基」は、1個または複数のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基のことである。本明細書において、用語「ケイ素含有ヒドロカルビル基」は、1個または複数のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。(1個または複数の)ケイ素原子は、炭素鎖中にあってよく、またはなくてもよい。
【0060】
一実施形態において、BMPDは、反応条件下で、BMCを芳香族カルボン酸誘導体、塩化ベンゾイルと反応させることによって、形成される。該方法は、反応条件下で、塩基の存在下、BMCを塩化ベンゾイルと反応させるステップ、およびBMPDを形成するステップを含む(Rx15)。塩基の限定されない例としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、および/またはモレキュラーシーブが挙げられる。反応15の限定されない反応式は、下記の経路(VIII)
【0061】
【化8】

に示される。
【0062】
5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(BMPD)は、上の構造(IX)として示される。BMC、上の構造(I)は、前述の方法/経路のいずれかによって調製される。換言すれば、BMPDを製造する方法はまた、BMCを製造するための前述の方法のいずれかを含んでもよい。
【0063】
一実施形態において、反応は、塩化ベンゾイルを、BMC、ピリジン、およびジクロロメタンの混合物に添加するステップを含む。ピリジンは、HCl、反応の副製造物を吸収する。
【0064】
一実施形態において、該方法は、塩化ベンゾイルを、BMC、アセトニトリル、およびトリエチルアミンからなる反応混合物に添加することによって、BMPDを形成するステップを含む。トリエチルアミンは、HCl、反応の副製造物を吸収する。有利なことに、アセトニトリルおよびトリエチルアミンの使用は、BMPD製造のための環境に安全で、健康リスクが低い(非毒性の)方法、および特に、大規模な(すなわち、10gを超える、または1kgを超える)BMPDの製造を提供する。
【0065】
一実施形態において、該方法は、水を(BMPD、アセトニトリルトリエチルアミン、塩化ベンゾイル、およびBMCを含む)反応混合物に添加するステップ、およびBMPDを沈殿させるステップを含む。溶媒、アセトニトリルは、水に可溶性である。特定の理論に制限されることなく、水の添加は反応を停止させ、溶媒の溶解度を変化させて、溶液からBMPDを沈殿させる(「BMPD−沈殿物」)。有利なことに、アセトニトリル溶媒系の提供は、商業的または工業的規模に適切な、BMPD製造のための、単純で、対費用効果が高く、効果的な手順を提供する。図1は、BMPD製造のための限定されないフローチャートを示す。
【0066】
一実施形態において、該方法は、BMPDを精製するステップ、および98重量%を超える、または99重量%を超えるBMPDを含むBMPD組成物を形成するステップを含む。BMPDの精製は、BMPD−沈殿物に1つまたは複数の手順:再結晶化、抽出、濃縮、洗浄、蒸留、および前述のいずれかの組合せを実施するステップを含む。
【0067】
一実施形態において、精製は、BMPD−沈殿物を(酢酸エチルなどの)非水性溶媒中に溶解するステップ、および水によって抽出するステップを含む。特定の理論に限定されることなく、水抽出は、イオン性不純物および/またはイオン性副生成物を、非水相から除去し、それによってBMPDを精製すると考えられる。非水相を(MgSO上で)乾燥し、炭化水素洗浄(ヘプタン)と併せた回転蒸発によって濃縮して(「濃縮物」)、有機副生成物/不純物を除去する。再結晶化により、98重量%を超える、または99重量%を超えるBMPDからなる精製されたBMPD組成物が得られる。
【0068】
一実施形態において、精製は、炭化水素洗浄(ヘプタン)と併せて濃縮物を蒸留するステップを含む。濾過および乾燥により、98重量%を超える、または99重量%を超えるBMPDで構成される精製されたBMPD組成物が得られる。図2は、BMPD−沈殿物の精製のための限定されないフローチャートを示す。
【0069】
2008年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/141,902号、および2008年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/141,959号(各出願の全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。)に開示されているとおり、有利なことに、BMPDは、オレフィン系ポリマー(特にプロピレン系ポリマー)の製造のためのプロ触媒/触媒組成物における内部電子供与体として適用される。
【0070】
定義
本明細書における元素周期表への全ての参照は、2003年にCRC Press,Inc.によって出版され、同社に著作権がある元素周期表への参照である。また、1つまたは複数の族へのいずれの参照も、族に番号をふるためIUPACシステムを使用する、この元素周期表に示される1つまたは複数の族に対する参照である。反対のことが述べられない、文脈から暗黙のことでない、または当技術分野において慣例でない限り、全ての部およびパーセントは、重量に基づく。米国特許実務の目的のために、本明細書に参照される、いずれの特許、特許出願、または出版物の内容も、特に、当技術分野における合成技術、(本明細書に与えられるいずれの定義にも矛盾しない程度の)定義、および一般的な知識の開示に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる(または、その均等物の米国版は、参照により、そのように組み込まれる)。
【0071】
用語「含む」およびその派生語は、それらが本明細書に開示されていようが、開示されていまいが、いずれの追加的な成分、ステップ、または手順の存在も除外することを意図されない。いずれの疑念も避けるために、用語「含む」の使用によって本明細書に特許請求される全ての組成物は、反対のことが述べられない限り、いずれの追加的な添加剤、補助剤、または(高分子化合物であってもなくても)化合物も含んでよい。対照的に、用語「から本質的になる」は、実施可能性にとって本質的でないものを除いて、いずれの続く列挙の範囲からも、その他のいずれの成分、ステップ、または手順も除外する。用語「からなる」は、特に説明または挙げられていない、いずれの成分、ステップ、または手順も除外する。用語「または」は、別様に述べられない限り、いずれかの組合せでばかりでなく、個々に挙げられた要素のことである。
【0072】
本明細書に記載されるいずれの数的範囲も、1単位ずつで(但し、いずれかの下限値といずれかの上限値との間に、少なくとも2単位の分離がある)、下限値から上限値までの全ての値を含む。例として、成分の量、または、例えば、ブレンド成分の量、軟化温度、メルトインデックス等などの組成上のもしくは物理的特性の値が、1から100の間であると述べられる場合、1、2、3等などの全ての個々の値、および、1から20、55から70、197から100等などの全ての部分的な範囲が、本明細書において明確に列挙されることが意図される。1未満である値に対して、1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01、または0.1であると考えられる。これらは特に意図されたものの例に過ぎなく、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組合せは、本出願に明確に述べられていると考えられるべきである。換言すれば、本明細書に記載されるいずれの数的範囲も、述べられる範囲内のいずれの値または部分的範囲も含む。参照メルトインデックス、メルトフローレート、およびその他の特性についての数的範囲は、本明細書で挙げたとおりである。
【0073】
本明細書において、用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーのブレンドである。かかるブレンドは、(分子レベルで相分離していない)混和性であってよく、またはなくてもよい。かかるブレンドは、相分離していてよく、またはしていなくてもよい。かかるブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野で既知のその他の方法から決定されるとおり、1つまたは複数のドメイン立体構造を含んでよく、または含まなくてもよい。
【0074】
本明細書において、用語「組成物」は、組成物を含む物質の混合物だけでなく、組成物の物質から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0075】
用語「ポリマー」は、同一または異なる種類のモノマーを重合することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマー等を含む。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種類のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。用語「インターポリマー」は、コポリマー(一般に、2つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーのことである、ターポリマー(一般に、3つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーのことである)、テトラポリマー(一般に、4つの異なる種類のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーのことである)等を含むが、これに限定されない。
【0076】
用語「オレフィン系ポリマー」は、ポリマーの全重量に対して、大部分の重量パーセントのオレフィン、例えばエチレンまたはプロピレンを、重合形態で含むポリマーである。オレフィン系ポリマーの限定されない例としては、エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0077】
本明細書において、用語「プロピレン系ポリマー」は、(重合可能なモノマーの全量に対して)過半の重量パーセントの重合されたプロピレンモノマーを含み、場合によって、少なくとも1の重合されたコモノマーを含んでよいポリマーのことである。
【0078】
本明細書において、用語「アルキル」は、分枝または非分枝、飽和または不飽和の非環式炭化水素基のことである。適切なアルキル基の限定されない例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、2−プロペニル(またはアリル)、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル(または2−メチルプロピル)等が挙げられる。アルキルは1個および20個の炭素原子を有する。
【0079】
本明細書において、用語「置換アルキル」は、アルキルのいずれかの炭素に結合した1個または複数の水素原子が、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロ、およびそれらの組合せなどの別の基によって置換されている、前記したとおりのアルキルのことである。適切な置換アルキルは、例えば、ベンジル、トリフルオロメチル等を含む。
【0080】
本明細書において、用語「アリール」は、単一の芳香環、または、一緒に縮合された、共有結合的に結合された、またはメチレン部分もしくはエチレン部分などの共通の基に結合された複数の芳香環であってよい芳香族置換基のことである。(1個または複数の)芳香環は、とりわけ、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルを含んでよい。アリールは1個および20個の炭素原子を有する。
【0081】
用語「置換フェニレン芳香族ジエステル」は、置換1,2−フェニレン芳香族ジエステル、置換1,3−フェニレン芳香族ジエステル、および置換1,4−フェニレン芳香族ジエステルを含む。一実施形態において、置換フェニレンジエステルは、下記の構造(A)
【0082】
【化9】

を有する1,2−フェニレン芳香族ジエステルである
【0083】
(式中、R〜R14は、同一または異なる。R〜R14の各々は、水素、1から20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカルビル基、1から20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子およびそれらの組合せから選択される。R〜R14の少なくとも1個は、水素ではない。)。
【0084】
試験方法
H核磁気共鳴(NMR)データは、(ppmで)CDCl中でBruker400MHz分光器で得られる。
【0085】
例によって、限定なく、本開示の実施例が提供される。
【実施例】
【0086】
[実施例1]
3−メチルカテコールの5−tert−ブチル−3−メチルカテコールへの変換(反応1)
撹拌器、冷却器、および温度計を備えた1000mLの三つ口フラスコに、3−メチルカテコール(25.0g、0.20モル)、tert−ブタノール(38.0mL、0.40モル)、およびヘプタン500mLを充填し、続いて硫酸(98%、20g)をゆっくりと添加する。ガスクロマトグラフィー(GC)が反応の完了を示すまで、混合物を6時間、80℃まで加熱する。溶媒を真空中で除去し、残留物をCHClに溶解し、水、NaHCO(水溶液)、かん水によって洗浄し、乾燥する(NaSO)。濾過および濃縮により、5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(36g、84%)を得る。1H NMR: 6.79 (s, 1H), 6.75 (s, 1H), 5.01 (br, 1H), 2.29 (s, 3H), 1.29 (s, 9H).
【0087】
[実施例2]
2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドの3−メチルカテコールへの変換(反応2)
撹拌器、還流冷却器、温度計、滴下漏斗を備えた100mLの三つ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシ−3−メチルアルデヒド6.8gおよび2N NaOH水溶液25mLを充填する。撹拌しながら、希釈したHを10mLの部分に分けて添加して、内部の温度を40℃から50℃の間に維持する。過酸化水素の1回目分の添加の後で、温度は45℃まで上昇し、暗色の溶液が得られる。過酸化水素の2回目分を添加する前に、温度を40℃まで降下させる。全ての過酸化物を添加した後で、反応混合物を室温まで冷却させ、塩化ナトリウムによって飽和し、エーテル(3×50mL)によって抽出する。合わせた抽出物を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、エーテルを除去し、蒸留して製造物を得る。1H NMR: 6.73 (m, 3H), 2.89 (s, 3H).
【0088】
[実施例3]
o−クレゾールの2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒドへの変換(反応3)
撹拌器、還流冷却器、温度計、窒素入口およびバブラーを備えた1Lの四つ口丸底フラスコに、o−クレゾール20.64mLおよびパラホルムアルデヒド14.0gを充填する。THFを、シリンジで充填し、続いてトリエチルアミンを、滴下漏斗で添加する。さらに10分間撹拌後、o−クレゾールを、シリンジでゆっくりと添加して不透明で明るいピンク色の混合物を製造し、それを4時間還流させる。反応を冷却し、エーテル200mLで希釈し、1N HCl、水によって洗浄し、NaSOで乾燥する。真空下での溶媒の除去の後で、残留物を蒸留によって精製して、生成物15.6グラム(57%)を得る。1H NMR: 11.3 (s, 1H), 9.89 (s, 1H), 7.41 (d, J = 7.44 Hz, 2H), 6.95 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 2.30 (s, 3H).
【0089】
[実施例4]
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールの5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの変換(反応15)
250mlの丸底フラスコに、5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(BMC)(0.025モル)、ピリジン(0.05モル、1.0当量)、およびジクロロメタン(50ml)を充填する。フラスコを氷水浴中で冷却し、塩化ベンゾイル(0.1モル、1.0当量)を液滴で添加する。添加の完了時に、反応混合物を室温まで温め、一晩中撹拌する。混合物を、追加のジクロロメタンで希釈し、飽和NHCl/1N HCl、水、飽和重炭酸ナトリウム、およびかん水によって洗浄する。有機層を収集して、硫酸マグネシウムで乾燥する。濾過の後で、濾過物を濃縮し、残留物を真空中で乾燥する。ほとんどの粗生成物は十分純粋であり、この粗生成物はまた(固体のための)エタノールからの再結晶化によって、または真空中での蒸留によってさらに精製して、白色から黄色の固体/液体として生成物を得ることができる。粗収率98%。1H NMR (500 MHz, CDCl3, ppm): 8.08 (dd, 2H), 8.03 (dd, 2H), 7.53 (tt, 1H), 7.50 (tt, 1H), 7.38 (t, 2H), 7.34 (t, 2H), 7.21 (d, 1H), 7.19 (d, 1H), 2.28 (s, 3H), 1.34 (s, 9H).
【0090】
[実施例5]
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールの5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの変換(反応15)
サーモウェル付きの500mLの三つ口丸底フラスコに、追加の漏斗/N入口、機械式撹拌器、および栓を装着する。系をNによって一掃した後で、槽に5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(20.0g、0.11モル)およびCHCN(100mL)を入れる。全ての固体が溶解するまで、混合物を周囲温度で撹拌する。槽にトリエチルアミン(26.8g、0.27モル)を添加し、ドライアイス/水浴を使用して、反応の内部の温度を10℃にする。温度を10〜20℃に維持しながら、塩化ベンゾイル(34.4g、0.24モル)を液滴で添加する。添加には約30分間かかる。氷浴をはずし、濃いスラリーを1時間、周囲温度で撹拌させる。
【0091】
サーモウェル付きの1リットルの三つ口丸底フラスコに、N入口、機械式撹拌器、および栓を装着する。フラスコへ水(400mL)を添加する。上記のスラリーを約20分間かけて、8つの部分に分けて添加する。得られたスラリーを、30分間、周囲温度で撹拌し、次に固体を、濾集する。
【0092】
粗固体をEtOAc(150mL)に溶解し、水(75mL)によって抽出する。水相を廃棄し、EtOAc相をMgSOで乾燥する。MgSOを濾過によって除去して、淡褐色の溶液175gを得る。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して(150〜200mmHgで、45〜50℃浴)、頂部で溶媒96gを取り出す。ヘプタン(150mL)を添加し、濃縮を継続して、頂部で溶媒をさらに55g取り出す。フラスコをロータリーエバポレーターからはずし、撹拌子を付ける。少量の種晶を添加し、混合物を室温で撹拌する。結晶化がほとんど即座に始まる。スラリーを約1時間室温で撹拌し、次に、生成物を濾集する。ケーキをヘプタン(40mL)によって洗浄し、次に、一定重量まで乾燥して(5mmHg/40℃)、オフホワイトの結晶(35g、81%)として生成物を得る。
【0093】
[実施例6]
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールの5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエートへの変換(反応15)
サーモウェル付きの5Lの三つ口丸底フラスコに、追加の漏斗/N入口、機械式撹拌器、および栓を装着する。系をNによって一掃した後で、前記容器に、出発の5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(314.3g、1.75モル)およびCHCN(1570mL)を入れる。全ての固体が溶解するまで、混合物を周囲温度で撹拌する。容器へ、トリエチルアミン(423g、4.17モル)を添加し、ドライアイス/水浴を使用して、反応の内部の温度を10℃にする。温度を10〜20℃に維持しながら、塩化ベンゾイル(543g、3.84モル)を液滴で添加する。最初に、塩化ベンゾイルの半分だけを追加の漏斗中に添加して、全ての物質が一度に添加されることを妨げる。全ての添加に約2時間を要する。氷浴をはずし、濃いスラリーを、一晩中、周囲温度で撹拌させる。
【0094】
入口、機械式撹拌器、および栓を装着された、底排水、サーモウェルを装備した12リットルの三つ口丸底フラスコ。フラスコへ水(6.3L)を添加する。上記のスラリーを約15分間かけて、部分に分けて添加し、反応器を水(100mL)およびCHCN(50mL)によってすすぐ。得られたスラリーを、2時間、周囲温度で撹拌し、次に、固体を、濾集する。次に、固体を収納容器に入れて、第2のバッチを完了させる。2つのバッチを一緒に後処理する。
【0095】
第2のバッチを同様に実行する。
【0096】
後処理
実施例6の反応の2つのバッチからの粗固体(合計1968g、水湿潤)を、EtOAc(4.8L)に溶解し、水(2400mL)によって抽出し、一晩中、周囲温度で撹拌させる。水相を廃棄し、EtOAc(5529g)の淡褐色の溶液を2つの部分に分けて、蒸留する。
【0097】
蒸留#1
溶液(2824.9g)を頂部の短行程蒸留(40〜45℃頂部温度、250〜300mmHg)によって濃縮して、頂部で溶媒1718gを取り出す。ヘプタン(2.4L)を添加し、濃縮を継続して、頂部で溶媒をさらに926gを取り出す。混合物を室温まで冷却させ、一晩中、撹拌する。生成物を、濾集し、ケーキをヘプタン(620mL)によって洗浄し、次に、一定重量まで乾燥して(5mmHg/25℃)、オフホワイトの結晶(636.6g)として生成物を得る。
【0098】
蒸留#2
溶液(2692.4g)を頂部の短行程蒸留(40〜45℃頂部温度、250〜300mmHg)によって濃縮して、頂部で溶媒1545gを取り出す。ヘプタン(2.4L)を添加し、濃縮を継続して、頂部で溶媒をさらに864gを取り出す。混合物を室温まで冷却させ、一晩中、撹拌する。生成物を、濾集し、ケーキをヘプタン(620mL)によって洗浄し、次に、一定重量まで乾燥して(5mmHg/25℃)、オフホワイトの結晶(606.8g)として生成物を得る。
【0099】
融点110〜112℃での収率92%で、合計1243.4gを生成する。物質は、99重量%を超える純度を有する。
【0100】
本開示は、本明細書に含まれる一実施形態および説明図に限定されず、以下の特許請求の範囲内にあるような、一実施形態の部分、および様々な一実施形態の要素の組合せを含む、それらの一実施形態の変更形態を含むことが、特に意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応条件下で、5−tert−ブチル−3−メチルカテコール(BMC)を、芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸誘導体からなる群から選択される一つと反応させるステップ、および
5−tert−ブチル−3−メチル−1,2−フェニレンジベンゾエート(BMPD)を形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
請求項7から10のいずれかに記載の方法によるBMCを調製するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩化ベンゾイルを、BMC、アセトニトリル、およびトリエチルアミンを含む反応混合物に加えるステップ、およびBMPDを形成するステップを含む、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
水を反応混合物に加えるステップ、およびBMPDを沈殿させるステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
沈殿したBMPDを溶解するステップ、および水によって抽出するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
98重量%を超えるBMPDを含むBMPD組成物を形成するステップを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
反応条件下で、3−メチルカテコールを、tert−ブタノールおよびイソブチレンからなる群から選択される一つによってアルキル化するステップ、および
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップ
を含む方法。
【請求項8】
反応条件下で、5−tert−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドを酸化するステップ、および
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップ
を含む方法。
【請求項9】
反応条件下で、4−tert−ブチル−2−メチルフェノールを酸化するステップ、および
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップ
を含む方法。
【請求項10】
反応条件下で、2−ハロ−4−tert−ブチル−6−メチルフェノールを加水分解するステップ、および
5−tert−ブチル−3−メチルカテコールを形成するステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514599(P2012−514599A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544626(P2011−544626)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/069942
【国際公開番号】WO2010/078512
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】