説明

美容装置

【課題】皮膚への通電の際に、通電波形の工夫により痛みとして感じる刺激を抑えて、肌の弱い人でも使用でき、優れた美容効果を得られる美容装置を提供する。
【解決手段】使用者の皮膚に当接させる電極部12が、把持された補助電極部11cとの間で通電状態とされ、制御部による通電状態の制御で、美容動作に係る主通電期間の前に、導入通電期間としてより周波数の高いパルスの波形で通電を実行することから、痛みを感じにくい高い周波数で通電を開始して、痛みとして感じることのある通電開始時のショック性の刺激を、主通電期間の通電をそのまま開始した場合よりも小さく抑えられ、また通電状態が導入通電期間から主通電期間へ滑らかに移行することで、全体的に通電に伴う刺激を抑制でき、肌が弱く通電に対する感受性の高い人でも、通電に係る刺激を痛みとして感じにくくなり、適切に美容効果を与えられる周波数での通電を抵抗感なく利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の皮膚に対し所定の美容効果を与える美容装置、特に、通電による美容効果を与える装置に関する。なお、本発明において用いる「低周波」及び「中周波」は、美容装置や筋刺激装置の分野で通常用いられる各周波数帯域として示しており、具体的には、「低周波」とは1kHzより小さい周波数帯域、「中周波」とは1kHzから10kHzまでの周波数帯域を示すものとする。また、本発明で美容効果を与える対象としての「皮膚」と共に用いる「肌」の語は、体表面のみでなく皮下脂肪等の皮下組織を含む体表層の「皮膚」と同義のものとして扱っている。
【背景技術】
【0002】
使用者の顔等の肌(皮膚)に対し所定の美容・美肌に係る各種動作を実行する美容機器は、家庭で用いられる簡易な単機能、低出力のものから、業務用として用いられる多機能、高出力のものまで、様々な種類のものが利用されている。こうした美容機器のうち、家庭等で用いられる簡易なものとしては、肌を冷したり加熱したりするもの、肌に対し吸引を行うもの、肌にスチームやミストを当てるもの、肌に光を照射するもの、肌に超音波による振動を伝えるもの、肌に微弱電流を流してイオン導入(イオントフォレーシス)を行うものなどが一般的に使用されている。
【0003】
この中で、肌にとっての各種有効成分を肌に深く浸透させるという優れた効果が得られるイオン導入法を用いた機器は近年注目を集めており、そうした従来の美容機器の一例として、特開2005−237545号公報や特開2005−245521号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−237545号公報
【特許文献2】特開2005−245521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の美容機器は前記各特許文献に示される構成となっており、こうしたイオン導入を行う機器をはじめとして、皮膚に蓄積している有害成分や老廃物を除去するクレンジング用の機器や、皮膚の血行促進を図りマッサージ効果を与える機器、皮膚の引上げ(リフティング)効果を与える機器などでは、肌に対し通電することとなる。この肌への通電は、目的に応じて電流の向きや周波数等を設定して行われており、特に、イオン導入の場合、通電を直流又は低周波で実行するのが有利である。
【0006】
しかしながら、肌への通電においては、低い周波数になるほど機器電極と肌との接触箇所でのインピーダンスが高く現れるため、両者が接触する瞬間、通電時の電圧降下が大きくなり、通電波形はスパイク状の突入波形を伴い、肌神経を刺激する。しかも、低周波では、刺激として神経に伝搬する電気信号を感じる時間的割合が長くなることもあり、例えば、肌に対しイオン導入で低周波の通電を実行すると、肌にピリピリした感触が加わるなど、肌への刺激が大きく、肌が過敏である人の場合、痛みとして感じやすいこともあり、こうした機器の使用を躊躇することにつながってしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、皮膚への通電の際に、通電波形の工夫により痛みとして感じる刺激を抑えて、肌が過敏である人でも使用でき、優れた美容
効果を得られる美容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る美容装置は、本体部と、使用者の肌に当接するよう前記本体部の一部に配設される電極部と、当該電極部と異なる部分に配設される補助電極部と、前記電極部と補助電極部間での使用者を介した通電状態を調整制御する制御部とを備え、使用者の皮膚に対し所定の通電動作を実行する美容装置において、前記制御部が、前記電極部と補助電極部間での美容に係る通電を実行する主通電期間を、低周波である第一の周波数に対応する周期で繰返すと共に、前記主通電期間の前に連続する導入通電期間として、中周波である第二の周波数のパルス波形となる通電を実行するものである。
【0009】
このように本発明によれば、本体部の一部に配設されて使用者の皮膚に当接させる電極部が、同じく使用者の皮膚に接する補助電極部との間で通電状態とされ、制御部による通電状態の制御で、美容動作に係る主通電期間の前に、導入通電期間としてより周波数の高いパルスの波形で通電を実行することにより、低周波より痛みを感じにくい中周波の周波数で通電を開始して、痛みとして感じることのある通電開始時のショック性の刺激を、主通電期間の通電をそのまま開始した場合よりも小さく抑えられ、また通電状態が導入通電期間から主通電期間へ滑らかに移行することで、低周波の通電の刺激を感じる余地を少なくして、全体的に通電に伴う刺激を抑制でき、肌が過敏で通電に対する感受性の高い人でも、通電に係る刺激を痛みとして感じにくくなり、適切に美容効果を与えられる周波数での通電を抵抗感なく利用できることとなり、どのような使用者に対しても優れた美容効果を無理なく与えられる。
【0010】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、前記主通電期間における通電を、前記第一の周波数より高い第三の周波数のパルス波形となる通電により実行すると共に、前記導入通電期間における第二の周波数を前記第三の周波数より高い周波数とするものである。
【0011】
このように本発明によれば、主通電期間もパルス波形とした通電を実行する一方、導入通電期間はより高い周波数のパルスとして通電することにより、主通電期間の実通電時間を十分に確保しつつ、周波数の高いパルス波形とした分、通電の刺激を抑えられ、且つ消費電力を低減できると共に、導入通電期間のより高い周波数のパルス波形をなす通電により痛みを感じにくい状態で主通電期間の通電を開始することができ、通電に係る肌への刺激をより一層抑えて、痛みを感じる状況を大幅に低減できる。
【0012】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、前記導入通電期間におけるパルスのパルス幅を、時間の経過と共に前記主通電期間における最初のパルスのパルス幅に近付けるように、パルスのデューティー比を一又は複数回変化させるものである。
【0013】
このように本発明によれば、制御部で導入通電期間におけるパルスのデューティー比を期間途中で調整変更し、導入通電期間におけるパルスのパルス幅を長くして主通電期間の最初のパルスにおけるパルス幅に近付けていくことにより、導入通電期間から主通電期間にパルス幅を大きく変えることなく緩やかに移行でき、主通電期間の通電開始に伴う刺激の発生を抑えられ、通電の刺激を感じにくい状態のまま主通電期間の通電を実行して、高い美容効果と痛みの抑制とを両立できる。
【0014】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、前記導入通電期間における第二の周波数を、時間の経過と共に前記主通電期間における第三の周波数に近付けるように一又は複数回変化させるものである。
【0015】
このように本発明によれば、制御部で導入通電期間におけるパルスの周波数を期間途中で調整変更し、パルスの周波数を低くして主通電期間の最初のパルス周波数に近付けていくことにより、導入通電期間から主通電期間にパルス周波数を大きく変えることなく緩やかに移行でき、主通電期間の通電開始に伴う刺激の発生を抑えられ、通電の刺激を感じにくい状態のまま主通電期間の通電を実行して、高い美容効果と痛みの抑制とを両立できる。
【0016】
また、本発明に係る美容装置は必要に応じて、前記制御部が、前記導入通電期間におけるパルスの振幅を、導入通電期間開始時の初期振幅から、時間の経過と共に前記主通電期間における通電波形の振幅に徐々に近付けるように変化させるものである。
【0017】
このように本発明によれば、導入通電期間におけるパルスの振幅を導入通電期間開始時から徐々に大きくして主通電期間の通電波形の振幅に近付けていくことにより、導入通電期間でパルスの振幅が当初から大きくならず、肌が通電を感じにくくなる分、痛みとして感じにくい中周波の通電による刺激をさらに抑えて、違和感を感じさせず通電を開始させられ、使用感の面での品質を向上させると共に、通電をより抵抗感なく受容できることとなり、より肌が敏感な使用者の使用も促せる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る美容装置の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る美容装置の右側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る美容装置における保持部の傾動及び上下動状態説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る美容装置における保持部と電極部の多孔性被覆体挟持状態説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る美容装置における保持部の多孔質被覆体保持状態説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のクレンジング動作状態説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る美容装置におけるクレンジングモードの通電波形概略説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のクレンジングモードにおける主通電期間の通電波形説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る美容装置における電極部の上縁部を用いたクレンジング状態の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のイオン導入動作状態説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のイオン導入モードにおける主通電期間の通電波形説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のマッサージ及びリフティングの動作状態説明図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のマッサージモードにおける主通電期間の通電波形説明図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る美容装置のリフティングモードにおける主通電期間の通電波形説明図である。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る美容装置におけるクレンジングモードの通電波形概略説明図である。
【図17】本発明の第3の実施形態に係る美容装置におけるクレンジングモードの通電波形概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る美容装置を前記図1ないし図15に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る美容装置1は、使用者により保持される本体部11と、本体部11の端部寄りに配設されて肌(皮膚)50への美容に係る通電に用いられる電極部12と、本体部11における使用者による把持部分に配設される補助電極部11cと、電極部12に対して多孔質被覆体13を保持する保持部14と、本体部11内に配設されて電極部12と補助電極部11c間での使用者を介した通電状態を調整制御する制御部15とを備える構成である。
【0020】
前記本体部11は、前記電極部12が一端寄りに配設される一方、他端側所定長さ範囲は使用者が使用時に手で把持して装置全体を保持するのに適した太さの把持部11aとされてなり、この把持部11aの長手方向と電極部12の正面方向とが所定角度分傾いた形状として形成され、内部には前記制御部15等の電気回路や電源としての電池(図示を省略)を配設される構成である。
【0021】
また、本体部11の他端側に近い側面部分には、使用者の入力操作を受けて美容動作のON、OFFや動作の種類、強弱等を切換える操作部11bが配設される。そして、本体部11における電極部12の無い背面側には、導電性部材からなり制御部15と接続された補助電極部11cが配設され、使用者が把持部11aを把持するとその手指と補助電極部11cとが接触することとなる。この本体部11には、バイブレータ等の振動源を内蔵して、通電と共に肌50に振動を付加し、美容効果を高められるようにすることもできる。
【0022】
さらに、本体部11における電極部12のある正面側の、把持部11aと電極部12との間には、前記保持部14が本体部11に対し傾動可能で且つ傾動中心軸を上下動可能として取付けられる構成である。この本体部11における保持部14の取付部分は、本体部11の内部とは完全に遮断されており、イオン導入用の液剤等が内部に浸入することを防止できる。
【0023】
なお、前記補助電極部11cは、電極部12と異なる部分であれば、本体部11とは別体となっていてもよく、本体部11に直接設ける構成に限られない。この場合、別体の補助電極部に対し、例えば、制御部15に接続されたリード線を本体部11から導出し、こ
のリード線の先端を取付けておくことで、補助電極部を手で握ったり、素足で踏むことにより、導通する状態が得られる。
【0024】
前記電極部12は、金属等の導電性を有する材質からなり、肌50に面接触可能な略平面状部分を有すると共に、本体部11上部から突出する湾曲した上縁部12aを有する構成であり、肌50に直接、又はコットン・パフのような多孔質被覆体13を介して当接し、肌50に対しイオン導入をはじめとする通電に係る美容動作を実行するものである。この電極部12は本体部11内で制御部15と電気的に接続されており、把持部11aにある補助電極部11cとの間で使用者の体を介して通電可能とされる構成である。
【0025】
通電については、制御部15により電極部12と補助電極部11c間に電圧が加えられて通電が起こり得る状態とされた上で、電解質成分を含む化粧水等の液剤が含浸した多孔質被覆体13を介して、又は直接、電極部12が顔等の肌50に接触し、また補助電極部11cが把持部11aを持つ掌や手の指等と接触すると、電極部12と補助電極部11cとが使用者の体を介して通電状態となる仕組みである。この場合、人体が導体をなすこととなる。電極部12と補助電極部11cは十分離れており、補助電極部11cに触れた手等が電極部12に誤って接して、通電が生じるようなことはない。
【0026】
この電極部12の接する肌50への通電に伴って、あらかじめ肌表面に塗布したか、多孔質被覆体13に染込ませたかした化粧水等の液剤中に含まれるイオン性の有効成分を、制御部15からの電流に基づくイオン移動によって肌内部に導入するイオン導入(イオントフォレーシス)を実行できる仕組みである。このイオン導入の手法自体は公知のものであり、詳細な説明を省略する。
【0027】
また、洗顔時のクレンジングとして、帯電した老廃物等の汚れ成分を通電により肌側から電極部12側に移行させ、多孔質被覆体13に取込む状態を得ることもできる。
【0028】
多孔質被覆体13は、カット綿やコットンパフ等と同様の脱脂等加工した綿繊維を電極部12より大きい不織シート状に成形して電極部12を覆うカバーとして用いるものであり、化粧水等を十分吸収してそのまま保持できる性質を備える。なお、この多孔質被覆体13は、化粧水等を含浸可能で可撓性を有する多孔質の軟質シート状のものであれば、コットン以外のものも利用できる。
【0029】
この電極部12は、イオン導入等を行う関係上、チタン等の通電に対し安定した材質を用いるのが望ましい。すなわち、仮に電極部12をクロム等のメッキ表面とした場合、イオン導入の際、電気分解により電極部12の表面に金属イオンが溶出し、この溶出金属イオンが皮膚に対して悪影響を与えるという問題を生じるが、安定性の高いチタンを電極表面に用いれば、通電を経ても電極部12での電気分解によりチタンの金属イオンが溶出することはなく、安全に使用できる。この電極表面材料は、純チタンが望ましいものの、チタン化合物であってもよい。また、チタン以外に金などの金属を用いる他、導電性樹脂や導電性ゴム、あるいはゴム等の弾性体表面に金属等の導体を貼付けたり導体の薄膜を配置して形成した構造とすることもできる。
【0030】
前記保持部14は、容易に変形しない材質製の略環状体として形成され、端部を傾動中心軸として本体部11に傾動可能且つ上下動可能として支持され、本体部11における電極部12近傍部分を取囲む位置から、電極部12の正面側に突出状態となる位置まで可動とされる構成である。また、保持部14は、本体部11に対し傾動中心軸部分を把持部11a側すなわち下向きに付勢され、本体部11の電極部12近傍部分周囲に位置した状態を維持できる構成である。
【0031】
この保持部14の開口部分は、電極部12及び本体部11の電極部12近傍部分の形状よりも一回り大きな形状とされ、保持部14を傾動させると電極部12が相対的に保持部14の開口部分を出入りする状態となる。保持部14を本体部11の電極部近傍部分周囲に位置させると、電極部12は保持部14の開口部分から前方へ突出することとなり、電極部12を肌50に当てる際に、より後方の保持部14は肌50に触れにくい状態となる。
【0032】
この保持部14を、電極部12の正面側に突出状態となる位置とした上で、多孔質被覆体13を保持部14と電極部12との間に挟み、さらに保持部14を本体部11に対し傾動させ且つ電極部12の上縁部12aを乗越えさせるように上下動させて、本体部11の電極部12近傍部分周囲に位置させると、多孔質被覆体13の周縁部分が保持部14と本体部11との間に挟まれて多孔質被覆体13が容易に離脱しない状態となり、多孔質被覆体13を電極部12表面に位置させた状態で保持できる仕組みである。そして、保持部14は、本体部11に対し上下動可能とされることで、多孔質被覆体13の大きさや厚みに左右されにくく、保持部14を本体部11の電極部12近傍部分周囲に位置させるのみで、多孔質被覆体13を電極部12表面に確実に保持できる。
【0033】
前記制御部15は、本体部11に内蔵され、使用者の操作部11bへの入力操作を受けて、電極部12と補助電極部11c間の通電を、それぞれ制御するものである。この制御部15は美容用途ごとに通電動作のモードを設定しており、本実施形態においては、皮膚に蓄積している有害成分や老廃物を除去するクレンジングモード、皮膚の深部に化粧水等の有効成分を浸透させるイオン導入モード、及び、通電時の電極極性を切替えて皮膚の血行を促進する血行促進モードの三つがある。
【0034】
これらクレンジングモードとイオン導入モード、血行促進モードでは、電極部12と補助電極部11c間を通電状態とする点は共通するものの、通電の際の電流の向きや波形が異なることとなる。また、血行促進モードには、同様の通電波形ながら通電時間が異なるマッサージとリフティングの二つのモードがあり、マッサージモードは主にクレンジングモードの後で通電により皮膚の血行促進やその弾力性の維持を図るものであり、一方、リフティングモードは、主にイオン導入モードの後で通電により皮膚の血行促進や有効成分の定着、浸透を図りつつ、皮膚の引上げ効果を生じさせるものである。
【0035】
これら通電動作のモードの切替えは、操作部11bのモード切替スイッチ11dに対する使用者の入力操作に基づいて行われる。電源投入直後、使用者が最初にモード切替スイッチ11dを操作すると、制御部15はクレンジングモード、イオン導入モード、血行促進モードのいずれかを実行可能な状態となる。この他、各モードを所定の順序(例えば、クレンジング、マッサージ、イオン導入、リフティングの順)で連続して実行するようにしてもよい。その場合、制御部15が表示ランプ等の点灯により各モードの終了を通知しつつ、各モードの通電動作を一旦停止させ、所定時間経過の後、次のモードに移行するのが好ましい。
【0036】
また、制御部15は、各動作モードに対応して電極部12と補助電極部11c間を通電状態とする場合に、この通電により使用者の皮膚を流れる電流の強さの調整を行うようにしてもよい。この場合、調整は操作部11bに別途設けられる強弱切替スイッチに対する使用者の入力操作に基づいて行われることとなる。
【0037】
この制御部15は、そのハードウェア構成として、CPUやメモリ、入出力インターフェース等を備えるコンピュータとなっており、メモリ等に格納されるプログラムにより、コンピュータを制御手段として動作させる仕組みである。この制御部15をなすコンピュータは、通常は、CPUやメモリ、ROM等を一体的に形成されたマイクロコンピュータ
とされて実装される。
【0038】
さらに、制御部15は、電極部12と補助電極部11cとの間の通電実行にあたっては、美容に係る通電を実行する主通電期間P1と、この主通電期間P1の前に連続する導入通電期間P0とをそれぞれ設定している(図8参照)。主通電期間P1は、通電動作の各モードに応じた通電波形による通電が、低周波(1kHz未満)である第一の周波数に対応する周期(例えば、約12ないし1000ms)で繰返され、美容に係る各モードに対応した通電による効果を得るものである。通電動作の各モードのうち、クレンジングモードとイオン導入モードでは、この主通電期間P1における通電は、前記第一の周波数より高い第三の周波数(例えば、約950ないし1850Hz)のパルス波形となる通電により実行される。
【0039】
また、血行促進モードのうち、マッサージモードの主通電期間P1における通電は、100msの間に正極性と負極性の各パルスが所定の休止時間を挟んで同じパルス幅で現れる波形(図14参照)となるように行われる。さらに、リフティングモードの主通電期間P1における通電は、1000msの間に正極性と負極性の各パルスが所定の休止時間を挟んで同じパルス幅で現れる波形(図15参照)となるように行われる。
【0040】
一方、導入通電期間P0は、主通電期間P1より短い所定時間の間、例えば、主通電期間P1の1/3ないし1/2の時間だけ、中周波(1ないし10kHz)である第二の周波数、例えば、約2ないし4kHzのパルス波形となる通電を実行するものである。通電動作の各モードのうち、主通電期間P1で第三の周波数のパルス波形となる通電により実行されるクレンジングモードとイオン導入モードでは、この導入通電期間P0における第二の周波数を、少なくとも主通電期間P1における第三の周波数より高い周波数として、通電により生じる刺激そのものが導入通電期間P0で主通電期間P1よりも小さくあらわれるようにする。
【0041】
制御部15は、この導入通電期間P0におけるパルスのパルス幅を、期間の途中で、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に近付けるように、パルスのデューティー比を一回変化させて大きくし、パルス幅を長くしている(図8参照)。より具体的に例示すると、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅が0.18ms(パルス周波数約1.85kHz)、導入通電期間P0のパルス周波数が4kHzで、当初のデューティー比が1:1の場合、当初のパルス幅は0.125msとなっているが、導入通電期間P0の1/3経過時点でデューティー比を2:1に変えることで、パルス幅は0.167msとなり、主通電期間P1のパルス幅に近づく。これにより、導入通電期間P0と主通電期間P1のパルス幅の差異が小さくなり、導入通電期間P0の通電状態から主通電期間P1の通電状態へより滑らかに移行でき、導入通電期間P0から主通電期間P1への移行時点での通電刺激の発生可能性を小さくして、通電の刺激を感じにくい状態のまま、美容に係る通電を効率的に実行できることとなり、高い美容効果と痛みの抑制を両立できる。
【0042】
この導入通電期間P0において、デューティー比の変更は一回に限られるものではなく、時間の経過と共に、パルスのパルス幅が主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に徐々に近付く、すなわち徐々に大きくなるように、パルスのデューティー比を複数回変化させるようにしてもよく、パルス幅の変化が滑らかになる分、通電の刺激を感じにくくすることができる。
【0043】
なお、制御部15は、クレンジングモードやイオン導入モードの場合の主通電期間P1においては、図9や図12に示すように、各パルス生成時にパルスの立ち上がり時間を十分与え、且つパルスの立ち上がりを緩やかにして、パルス波形の形状を若干湾曲したものとするのが、パルスの電圧レベルが緩やかに上昇して生体の電気を感じるコヒーレ電圧に
急激に到達するのを防げることで、生体に対する電気の刺激感を抑えられ、好ましい。特に、美容装置の場合、敏感な顔部の肌を対象として使用する点から、通電による不快感を抑えられ、有効である。
【0044】
また、制御部15は、図9や図12に示すように、クレンジングモードやイオン導入モードにおける主通電期間P1で、一周期の通電波形における複数の同極性(例えば、正)のパルスの後に、休止時間を経て逆極性(例えば、負)のパルスを出力することにより、体内における帯電状態を解放することができ、体内における通電の波形が電極から出力されるパルス波形に近いもの、すなわちパルスの後に確実に0電位に近接するパルス波形となり、帯電の影響でパルスの後に電圧が十分に下がりきれない乱れた波形となるのを防止して、使用者の肌に対し美容に係る通電の効果をより適切に与えることができ、好ましい。
【0045】
この他、制御部15は、電極部12が肌50に接して電極部12と補助電極部11c間で体等を介して通電可能となった状態をパルスを用いて検出して、美容に係る通電を開始する機能を備える構成である。通電可能状態を判別するためには、一方の電極から何らかのパルスが出力可能な状態であれば、このパルスが他方の電極にて検出されていることで肌に各電極部が当接されていると判断できるので、このパルスが他方の電極で検出されなくなった場合を通電不可能として判別できる。そして、通電不可能の場合に美容に係る通電を停止し、さらに、再び通電可能となった場合に通電を再開することとする。
【0046】
検出のためのパルスを、電極部12から出力するのか、補助電極部11cから出力するのかは、前記各モードにより異なるが、一方の電極から出力されたパルスが人体を介して他方の電極に通るように、パルスが出力されない側の電極の電位をGNDレベルに落とす必要がある。例えば、電極部12からパルスを出力する場合には、補助電極部11cの電位をGNDレベルに落としておく。一方、補助電極部11cからパルスを出力する場合には、電極部12の電位をGNDレベルに落としておく。この検出のためのパルスの周波数は、肌に対する刺激の面から、中周波以上とするのが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態に係る美容装置の通電動作状態について説明する。前提として、美容装置1が使用者による操作部11bの電源スイッチ11e操作により起動し、使用者が把持部11aを持って電極部12を使用したい肌部位に向けられる状態にあるものとする。使用者により動作モードが選択入力されれば、制御部15が各動作モードの実行を開始可能な状態とする。
【0048】
クレンジングを行う場合には、まず使用者は保持部14を傾動させて電極部12の正面側に突出した状態とし(図4(A)参照)、電解質成分を含んだふき取り用化粧水を染みこませた多孔質被覆体13を電極部12正面に位置させて保持部14と電極部12とに挟まれる配置とする(図5(A)参照)。さらに保持部14を本体部11に対し傾動させながら、保持部14を上に動かし(図5(B)参照)、保持部14上部が電極部12の上縁部12aを乗越えるようにし、次いで保持部14を電極部12より背面側で付勢力により下げて(図6(A)参照)、本体部11の電極部近傍部分周囲に位置させると、保持部14と本体部11との間に多孔質被覆体13の周縁部分が挟まれて、多孔質被覆体13が電極部12表面に保持、固定されると共に、多孔質被覆体13で覆われた電極部12が保持部14の開口部分より突出した状態となる(図6(B)参照)。
【0049】
多孔質被覆体13が電極部12を被覆しつつ保持部14で保持された状態では、多孔質被覆体13の端部は本体部11の側面に沿うこととなり、本体部11から外側方に多孔質被覆体13端部が突出して、例えば、使用者が目の近傍の肌に電極部12を向けている場合に、多孔質被覆体13の端部が目に入ったり、美容に係る動作の障害になったりするの
を防止できる。
【0050】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してクレンジングモードを選択すると、制御部15はまず検出用の信号を出力する。電極部12を肌から離している状態では、電極部12と補助電極部11c間が体を介して閉じた回路となっていないため、通電はないが、電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させると、体及び多孔質被覆体13中の化粧水を介した通電が可能となり、出力された検出用の信号の受信によりこの状態を検出すると、制御部15はクレンジングに係る通電状態に移行し、まず導入通電期間P0として中周波の繰返しパルスの波形として通電が実行される。導入通電期間P0では、制御部15による期間途中でのデューティー比変更により、パルスのパルス幅が長くなり、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に当初よりも近づいた状態となる。
【0051】
その後、導入通電期間P0から主通電期間P1に移行し、主通電期間P1では、制御部15は周期が少しずつ長く変化していくパルス波形(図8、図9参照)をなす通電を電極部12と補助電極部11c間で実行し、皮膚表面や内部の帯電した微細な汚れ成分(落ちきれなかった化粧品の成分、タバコの煙の成分、老化角質等)が電極部12に引寄せられて肌側から多孔質被覆体13側に移行し、多孔質被覆体13に汚れ成分が取込まれる状態となることで、肌の汚れを吸引除去できる(図7参照)。クレンジング対象の肌50のうち、鼻と頬の境界部分など凹部となっている箇所については、電極部12における本体部11上部から突出した配置で且つ湾曲した正面形状の上縁部12aを使用することで、多孔質被覆体13を介して確実に電極部12を肌50の凹部へ当接させることができ、偏りなくクレンジングを行うことができる(図10参照)。
【0052】
このクレンジングモードの導入通電期間P0と主通電期間P1からなる通電が、電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させている間、低周波である第一の周波数に対応する周期で繰返されることとなり、全体の通電波形は、低周波の波形にこれより高い周波数のパルス波形が重畳されたものとなる。
【0053】
多孔質被覆体13を肌50に当接させたまま電極部12を肌上で少しずつ移動させると、通電状態のまま汚れ除去の対象位置を変えられるが、この除去動作を中断したり除去位置を変えるために、電極部12を肌50から離すと、通電に伴うパルスが他方の電極で検出できなくなることで、制御部15は肌から電極部12が離されたと判別し、クレンジングに係る通電を停止させる。このように通電を停止している場合には、検出用の信号を再び出力する。そして、再び、電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させると、検出用の信号の受信により通電可能状態を検出することができ、制御部15はクレンジングに係る通電状態に移行し、通電を再開する。クレンジングを完全に終える場合は、使用者が操作部11bで動作モードを他に切替えるか電源をOFF状態とすればよい。
【0054】
このクレンジングモードの終了後は、保持部14を本体部11の電極部近傍部分周囲位置から電極部12の正面側へ傾動させて本体部11から突出した状態とし、保持状態を解除された多孔質被覆体13を取外して電極部12を清浄化する。また、使用者は洗顔等を行って肌上に浮いた状態で残った汚れを取除くこととなる。
【0055】
イオン導入を行う場合には、使用者は前記同様、保持部14を電極部12の正面側に突出した状態とし、電解質成分を含んだ保護化粧水を染みこませた多孔質被覆体13を電極部12正面に位置させて保持部14と電極部12とに挟まれる配置とする。さらに保持部14を本体部11に対し傾動させながら、保持部14を上に動かし、保持部14上部が電極部12の上縁部12aを乗越えるようにして、保持部14を本体部11の電極部近傍部分周囲に位置させ、保持部14と本体部11との間に多孔質被覆体13を挟持し、多孔質
被覆体13を電極部12表面に保持、固定する。この場合、多孔質被覆体13を電極部12表面に保持、固定した後、多孔質被覆体13に化粧水を染みこませてもよい。
【0056】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してイオン導入モードを選択すると、制御部15はまず検出用の信号を出力する。電極部12を肌50から離している状態では、電極部12と補助電極部11c間が体を介して閉じた回路となっていないため、通電はない。
【0057】
電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させると、体及び多孔質被覆体13中の化粧水を介した通電が可能となり、出力された検出用の信号の受信によりこの状態を検出すると、制御部15は前記クレンジングの場合とは逆極性となる、イオン導入に係る通電状態に移行し、まず導入通電期間P0として中周波の繰返しパルスの波形として通電が実行される。導入通電期間P0では、制御部15による期間途中でのデューティー比変更により、パルスのパルス幅が長くなり、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に当初よりも近づいた状態となる。
【0058】
その後、導入通電期間P0から主通電期間P1に移行し、主通電期間P1では、制御部15は周期が少しずつ長く変化していくパルス波形(図12参照)をなす通電を電極部12と補助電極部11c間で実行し、多孔質被覆体13を流れる電流で化粧水中のイオン性の有効成分(プロビタミンCなど)を肌側へ移行させ、電流によりイオンが浸透しやすい状態となっている肌内に、有効成分が速やかに浸透する(図11参照)。クレンジングの場合と同様、肌50のうち鼻と頬の境界部分など凹部となっている箇所についても、電極部12の上縁部12aをその表面の多孔質被覆体13を介して確実に当接させることができ、偏りなくイオン導入を行うことができる。
【0059】
このイオン導入モードにおいても、導入通電期間P0と主通電期間P1からなる通電が、電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させている間、低周波である第一の周波数に対応する周期で繰返されることとなり、全体の通電波形は、低周波の波形にこれより高い周波数のパルス波形が重畳されたものとなる。
【0060】
多孔質被覆体13を肌50に当接させたまま電極部12を肌上で少しずつ移動させると、通電状態のままイオン導入の対象位置を変えられるが、イオン導入を中断したり導入位置を大きく変えるために、電極部12を肌50から離すと、通電に伴うパルスが他方の電極で検出できなくなることで、制御部15は肌から電極部12が離されたと判別し、イオン導入に係る通電を停止させる。このように通電を停止している場合には、検出用の信号を再び出力する。そして、再び、電極部12を多孔質被覆体13を介し肌50に密着させると、検出用の信号の受信により通電可能状態を検出することができ、制御部15はイオン導入に係る通電状態に移行し、通電を再開する。イオン導入を完全に終える場合は、使用者が操作部11bで動作モードを他に切替えるか電源をOFF状態とすればよい。
【0061】
このイオン導入モードの終了後は、保持部14を本体部11の電極部近傍部分周囲位置から電極部12の正面側へ傾動させて本体部11から突出した状態とし、保持状態を解除された多孔質被覆体13を取外し、必要に応じて電極部12を清浄化すればよい。
【0062】
マッサージやリフティングといった肌への通電を実行する場合には、多孔質被覆体13を用いず、保持部14を電極部12より背面側の、本体部11の電極部近傍部分周囲に位置させ、電極部12を肌に当接させる際に保持部14が障害物とならない状態とする。同時に、肌には必要に応じ乳液やクリーム等を付けてなじませた状態とする。
【0063】
使用者が操作部11bのモード切替スイッチ11dを操作してマッサージモードまたは
リフティングモードを選択すると、制御部15はまず検出用の信号を出力する。電極部12を肌から離している状態では、電極部12と補助電極部11c間が体を介して閉じた回路となっていないため、通電はない。
【0064】
電極部12を肌50に密着させると、体を介した通電が可能となり、出力された検出用の信号の受信によりこの状態を検出すると、制御部15はマッサージやリフティングに係る通電状態に移行し、まず導入通電期間P0として中周波の繰返しパルスの波形として通電が実行される。導入通電期間P0では、制御部15による期間途中でのデューティー比変更により、パルスのパルス幅が長くなり、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に当初よりも近づいた状態となる。
【0065】
その後、導入通電期間P0から主通電期間P1に移行し、この主通電期間P1では、マッサージモードの場合、制御部15は100msの間に正極性と負極性の各パルスが所定の休止時間を挟んで同じパルス幅で現れる低周波の波形(図14参照)となる通電を電極部12と補助電極部11c間で実行し、電極部12と補助電極部11c間において体を介した通電状態となり、肌50に低周波の通電がなされ(図13参照)、肌50を活性化してマッサージ効果を与え、血行を促進することとなる。また、リフティングモードの場合、制御部15は、1000msの間に正極性と負極性の各パルスが所定の休止時間を挟んで同じパルス幅で現れる低周波の波形(図15参照)となる通電を実行し、電極部12と補助電極部11c間で体を介した通電状態となり、肌50に低周波の通電がなされ(図13参照)、肌50への有効成分の浸透を促すと共に、肌に張りを与えて引上げるリフティングの効果を与えることとなる。
【0066】
これらマッサージモードやリフティングモードにおいても、導入通電期間P0と主通電期間P1からなる通電が、電極部12を肌50に密着させている間、低周波である第一の周波数に対応する周期で繰返されることとなる。
【0067】
電極部12を肌50に当接させたまま肌上で少しずつ移動させると、通電の対象位置を変えられるが、通電を中断したり通電位置を変えるために、電極部12を肌50から離すと、通電に伴うパルスが他方の電極で検出できなくなることで、制御部15は肌から電極部12が離されたと判別し、マッサージやリフティングに係る通電を停止させる。このように通電を停止している場合には、検出用の信号を再び出力する。そして、再び、電極部12を肌50に密着させると、検出用の信号の受信により通電可能状態を検出することができ、制御部15はマッサージやリフティングに係る通電状態に移行し、通電を再開する。さらに使用者が操作部11bで機能を他に切替えるか電源をOFF状態とすれば、通電は完全に終了となる。
【0068】
このように、本実施形態に係る美容装置は、本体部11の一端部に配設されて使用者の皮膚に当接させる電極部12が、把持された補助電極部11cとの間で通電状態とされ、制御部15による通電状態の制御で、美容動作に係る主通電期間P1の前に、導入通電期間P0としてより周波数の高いパルスの波形で通電を実行することから、低周波より痛みを感じにくい中周波の周波数で通電を開始して、痛みとして感じることのある通電開始時のショック性の刺激を、主通電期間P1の通電をそのまま開始した場合よりも小さく抑えられ、また通電状態が導入通電期間P0から主通電期間P1へ滑らかに移行することで、低周波の通電の刺激を感じる余地を少なくして、全体的に通電に伴う刺激を抑制でき、肌が弱く通電に対する感受性の高い人でも、通電に係る刺激を痛みとして感じにくくなり、適切に美容効果を与えられる周波数での通電を抵抗感なく利用できることとなり、どのような使用者に対しても優れた美容効果を与えられる。
【0069】
なお、前記実施形態に係る美容装置において、保持部14は本体部11に対し傾動可能
且つ上下動可能に取付けられ一体で取扱われる構成としているが、これに限らず、多孔質被覆体を電極部に沿って押えるなどして保持できるものであれば、保持部を本体部と当初から一体となっていない別体となった構造とし、クレンジングやイオン導入など、多孔質被覆体を用いる場合のみ本体部に取付けて多孔質被覆体を保持可能にする構成とすることもできる。この場合、保持部は弾性変形可能な材質製として、若干の変形を伴いつつ本体部に係合して取付けられるようにするのが、構造を簡略にできる点で好ましい。
【0070】
また、前記実施形態に係る美容装置においては、イオン導入を行う場合に、保護化粧水を染みこませた多孔質被覆体13を電極部12に被せるように保持し、多孔質被覆体13中の化粧水に含まれる有効成分を肌側へ移行させ、肌内に有効成分を浸透させる構成としているが、この他、保護用化粧水を付けてなじませた状態とした肌に直接電極部を密着させ、体を介した通電状態として、電極部から肌へ流れる電流で肌表面の化粧水に含まれる有効成分を肌内に浸透させるようにすることもでき、前記同様、通電状態では、まず導入通電期間P0として中周波の繰返しパルスの波形として通電が実行され、その後、主通電期間P1に移行することとなり、通電に伴う痛みを感じにくくした上で、主通電期間P1では、電極部から肌へ流れる電流で肌表面のイオン性の有効成分を肌側へ移行させ、電流によりイオンが浸透しやすい状態となっている肌に、有効成分が深く浸透して確実に美容効果を与えられる。
【0071】
また、前記実施形態に係る美容装置において、制御部15は導入通電期間におけるパルスについて、この期間の途中で、パルスのデューティー比を一回変化させることでパルス幅を長くして、主通電期間における最初のパルスのパルス幅に近付けるように制御する構成としているが、これに限らず、使用者が通電の刺激に対して強く、痛みを感じにくい場合などは、制御部15は導入通電期間P0のパルスのパルス幅を期間途中で変えずに当初のままとし、主通電期間P1に移行するまで同じパルス幅での通電を継続させる構成とすることもでき、制御の簡略化が図れる。
【0072】
(本発明の第2の実施形態)
前記第1の実施形態においては、通電動作の各モードで、導入通電期間P0におけるパルスのパルス幅を、この期間の途中で、主通電期間P1における最初のパルスのパルス幅に近付けるように、制御部15がパルスのデューティー比を変化させ、パルス幅を長くする制御を行っているが、これに限らず、第2の実施形態として、図16に示すように、導入通電期間P0におけるパルス幅はそのままで、導入通電期間P0におけるパルスの周波数、すなわち前記第二の周波数を、主通電期間P1における第三の周波数に近付けるように一又は複数回変化させることもできる。
【0073】
より具体的に例示すると、主通電期間P1における最初のパルスのパルス周波数約1.85kHz(パルス幅0.18ms)に対し、導入通電期間P0の当初のパルス周波数は4kHzとなっているが、導入通電期間P0の2/5経過時点でパルス周波数を2.67kHzに変えて、主通電期間P1のパルス周波数に近付ける。なお、導入通電期間P0の当初のデューティー比は1:1で、当初のパルス幅は0.125msとなっているが、導入通電期間の2/5経過時点でパルス周波数の変更と共にデューティー比を1:2に変えることで、パルス周波数の変更前後でパルス幅の変化は生じないようにしている。
【0074】
こうして、導入通電期間P0と主通電期間P1のパルス周波数の差異を小さくすることで、前記第1の実施形態でのパルス幅を変える場合と同様、導入通電期間P0の通電状態から主通電期間P1の通電状態へより滑らかに移行でき、導入通電期間P0から主通電期間P1への移行時点での通電刺激の発生可能性を小さくして、通電の刺激を感じにくい状態のまま、美容に係る通電を効率的に実行できることとなり、高い美容効果と痛みの抑制を両立できる。
【0075】
(本発明の第3の実施形態)
前記第1の実施形態においては、通電動作の各モードで、導入通電期間P0におけるパルスのパルス幅を途中で変更するものの、パルスの振幅については特に変化させないようにしているが、この他、第3の実施形態として、制御部15が、図17に示すように、導入通電期間P0におけるパルスの振幅を、導入通電期間P0の開始時の振幅最小値から徐々に大きくして、最終的に主通電期間におけるパルスの振幅に近似させるように変化させることもできる。
【0076】
こうして、導入通電期間P0で通電に係る刺激の小さい中周波のパルスにより通電を行うことに加え、導入通電期間開始からパルスの振幅を徐々に大きくしていき、導入通電期間当初からパルスの振幅が生体の電気を感じるレベルに到達するのを防いで、導入通電期間P0での通電を刺激として感じる度合を小さくすることで、通電開始時の通電に係る刺激をさらに抑えて、美容に係る通電を効率的に実行できる状態を確保しつつ、使用者の通電による痛みや違和感を小さくして、使用感の面で品質の向上が図れる。
【0077】
なお、制御部15は、クレンジングモードやイオン導入モードの場合の主通電期間P1においても、パルスの振幅を期間開始時から一定の振幅とするのではなく、期間開始時は低めの振幅とし、それから徐々に大きくして振幅最大値に到達させるようにすることもでき、導入通電期間P0における振幅制御と合せて、通電に係る刺激感をより確実に抑えられる。この場合、導入通電期間P0におけるパルスの振幅の最終値は、主通電期間P1における最初のパルスの振幅に合せたものとする。
【符号の説明】
【0078】
1 美容装置
11 本体部
11a 把持部
11b 操作部
11c 補助電極部
11d モード切替スイッチ
11e 電源スイッチ
12 電極部
12a 上縁部
13 多孔質被覆体
14 保持部
15 制御部
50 肌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、使用者の肌に当接するよう前記本体部の一部に配設される電極部と、当該電極部と異なる部分に配設される補助電極部と、前記電極部と補助電極部間での使用者を介した通電状態を調整制御する制御部とを備え、使用者の皮膚に対し所定の通電動作を実行する美容装置において、
前記制御部が、前記電極部と補助電極部間での美容に係る通電を実行する主通電期間を、低周波である第一の周波数に対応する周期で繰返すと共に、前記主通電期間の前に連続する導入通電期間として、中周波である第二の周波数のパルス波形となる通電を実行することを
特徴とする美容装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の美容装置において、
前記制御部が、前記主通電期間における通電を、前記第一の周波数より高い第三の周波数のパルス波形となる通電により実行すると共に、前記導入通電期間における第二の周波数を前記第三の周波数より高い周波数とすることを
特徴とする美容装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の美容装置において、
前記制御部が、前記導入通電期間におけるパルスのパルス幅を、時間の経過と共に前記主通電期間における最初のパルスのパルス幅に近付けるように、パルスのデューティー比を一又は複数回変化させることを
特徴とする美容装置。
【請求項4】
前記請求項2に記載の美容装置において、
前記制御部が、前記導入通電期間における第二の周波数を、時間の経過と共に前記主通電期間における第三の周波数に近付けるように一又は複数回変化させることを
特徴とする美容装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の美容装置において、
前記制御部が、前記導入通電期間におけるパルスの振幅を、導入通電期間開始時の初期振幅から、時間の経過と共に前記主通電期間における通電波形の振幅に徐々に近付けるように変化させることを
特徴とする美容装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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