説明

義歯のための角度付きアタッチメント・デバイス

本発明は、ボール要素をインプラントの中心軸からオフセットさせて配置する、角度付きボール・アタッチメント・デバイスに関する。ボール要素およびアバットメント基部エレメントは、デバイスの締結ネジが弛んでも安定な、単一の堅固なユニットを形成する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用アタッチメント・デバイスに関し、特に、本発明の教示によって構成されて使用可能な、第二の好適実施例としての角度付きボール・アタッチメント・デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
デンタル・インプラントの多くのケースでは、骨の構造に応じて、複数のインプラントを非平行に挿入している。非平行なインプラントに結合させた複数のボール・アタッチメントを覆って義歯を配置する場合、義歯の挿入および取り外しは困難であり、ボールに損傷を与える、また、損傷を与える力を、デンタル・インプラントおよび骨へと伝えてしまう恐れがある。いくつかのケースでは、インプラントは、ボールの所望の位置に対して頬側に、または舌側に位置する。誤配置されたインプラントを覆って通常のボール・アタッチメントを配置した場合、義歯の製造は困難である。
【0003】
固定修復のための通常のインプラントのケースにおいて、補綴エレメントに対して所望の角度以外の角度でインプラントを挿入する際、図1Aに示すような角度付きアバットメントが使用される。従来の技術による角度付きアバットメント1は、通常、六角コンフィギュレーション2の抗回転エレメントを持つ。この抗回転エレメントは、インプラント内に設けられた、互換性のある抗回転エレメントに係合する。さらに、従来の技術による角度付きアバットメント1は、締結ネジ5の挿入を可能にするための、傾斜壁4内の開口部3で開き、そして六角コンフィギュレーション2を通過する中空路を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1Aに示す従来のボール・アタッチメントは、抗回転エレメントを持たない。したがって、医師が正しい角度を決定できないので、角度付きボール・アタッチメントとして使用することはできない。
【0005】
図2に、角度付きボール・アタッチメント・デバイスを提供するための、一つの従来の技術による解決策を示す。このデバイスは、二つのパーツからなるアバットメント・デバイスであり、各パーツが抗回転エレメントを持つ。基部エレメント6は、インプラント内での底部エレメント6の回転を防止する第一の抗回転エレメント7を持つ。加えて、基部エレメント6内に設けられた複数の抗回転孔8の一つに抗回転ピン10が係合する第二の抗回転コンフィギュレーションによって、基部エレメント6とプレート9との間の回転が阻止される。プレート9の端部にボール11を取り付けることによって、デンタル・インプラントの長軸に対して、ボールに角度を設けることができる。両パーツは、締結ネジ12によってインプラントに取り付ける。二つのパーツを使用しているので、ネジの弛みのリスクが増すとともに、医師には、患者の口腔内での組み付けが、より困難である。さらに、ネジが弛んだ場合、基部6とプレート9との間の非回転結合が維持されず、一方のパーツの破損、あるいは口腔の周囲への損傷に至る可能性がある。
【0006】
したがって、ネジの弛みのリスクを増加させずに角度付きボール・アタッチメントを可能にする、歯科用アタッチメント・デバイスの必要性がある。
【0007】
本発明は、角度付きボール・アタッチメント・デバイスである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の開示によれば、以下のものからなる、義歯の着脱可能な離軸取り付けのためのデバイスが提供される。(a)骨への挿入軸を持ち、そして軸の周りにデバイスが回転することを阻止するために、骨に係合するよう形成された回転阻止コンフィギュレーションを含む骨アンカー・アレンジメント。そして(b)義歯の着脱可能な結合のために構成されたアタッチメント・コンフィギュレーション。この場合、アタッチメント・コンフィギュレーションは、挿入軸に対して離軸して位置し、アタッチメント・コンフィギュレーションおよび回転阻止コンフィギュレーションは、一体的に形成される、あるいは調節不可能な空間的関係で恒久的に取り付けられる。
【0009】
本発明のもう一つの特徴によれば、アタッチメント・コンフィギュレーションは、ボールを含む。
【0010】
本発明の教示によれば、また、前述のデバイスの二つからなる、義歯の着脱可能な離軸取り付けのためのキットが提供される。このキットにおける回転阻止コンフィギュレーションは、6倍の回転対称性を持つ。また、(a)デバイスの第一のものは、回転阻止コンフィギュレーションに対して第一の角度位置で離軸に位置するアタッチメント・コンフィギュレーションを持ち、そして(b)デバイスの第二のものは、回転阻止コンフィギュレーションに対して第二の角度位置で離軸に位置するアタッチメント・コンフィギュレーションを持つ。この場合、第二の角度位置は、実質的に30°の角度で軸の周りに回転させた位置である。
【0011】
本発明の教示によれば、また、アバットメント・エレメントおよびボールからなる骨インプラントへボールを結合するためのデバイスが提供される。この場合、アバットメント・エレメントは、骨インプラント内へ少なくとも部分的に挿入され、ボールは、アバットメント・エレメントに対して固定空間関係で、アバットメント・エレメントの骨インプラントへの結合が弛んでもそれらの結合を維持するために恒久的に結合され、そして骨ボールの中央長軸を骨インプラントの中央長軸から変位させるようにボールが位置する。
【0012】
本発明のもう一つの特徴によれば、骨インプラントの中央長軸とボールの中央長軸との間の角度は、0から90°である。
【0013】
本発明のもう一つの特徴によれば、その角度は、15から45°である。
【0014】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールの長軸が骨インプラントの長軸に平行であるため、ボールは骨インプラントの中心から変位している。
【0015】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールの少なくとも一部分は、インプラントの雌ネジの上方に位置する。
【0016】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントは、骨インプラントの抗回転エレメントに係合する抗回転エレメントを持つ。
【0017】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントの抗回転エレメントは、六角形状である。
【0018】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、六角形の一つの平面の上方に位置する。
【0019】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、六角形の一つの角の上方に位置する。
【0020】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントの高さは、0.5mmから6mmである。
【0021】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントには角度が付いている。
【0022】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、アバットメント・エレメントに比べ、インプラントの軸からより大きく変位して位置する。
【0023】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、アバットメント・エレメントに比べ、インプラントの軸からより小さく変位して位置する。
【0024】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、アバットメント・エレメントにハンダ付けされる。
【0025】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールおよびアバットメント・エレメントは、C.N.Cマシンでミリングされた一つのピースである。
【0026】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールおよびアバットメント・エレメントは、一緒に鋳造される。
【0027】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、アバットメント・エレメントにネジ止めされる。
【0028】
本発明のもう一つの特徴によれば、ボールは、アバットメント・エレメントに接着される。
【0029】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントは、骨インプラントにネジで固定される。
【0030】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメント・エレメントは、骨インプラントに回転式定着ナットで固定される。
【0031】
本発明のもう一つの特徴によれば、アバットメントは、骨インプラントに摩擦によって固定される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【図1A】従来の技術による角度付きアバットメント・デバイスを示す斜視図である。
【図1B】従来の技術による、まっすぐなボール・アタッチメント・デバイスを示す斜視図である。
【図2】従来の技術による、二つのパーツからなる角度付きボール・アタッチメント・デバイスを示す斜視図である。このデバイスは、二つの抗回転エレメントを持つ。
【図3】本発明の教示によって構成されて使用可能な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの第一の好適実施例を示す斜視図である。デンタル・インプラントに結合した状態で図示している。
【図4】図3の角度付きボール・アタッチメントの、第一の変形例を示す斜視図である。ボールは、アバットメントの六角形状抗回転コンフィギュレーションの一つの平面の上方に位置する。
【図5】図3の角度付きボール・アタッチメントの第二の変形例を示す斜視図である。ボールは、アバットメントの六角形状抗回転コンフィギュレーションの一つの角の上方に位置する。
【図6】本発明の教示によって構成されて使用可能な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの第二の好適実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明の教示によって構成されて使用可能な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの第三の好適実施例を示す斜視図である。
【図8】代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、他の状況で本質的に既知であり、本発明のアタッチメント・デバイスに補綴を取り付けるために本発明の教えに従って用いてもよいものである。
【図9】代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、他の状況で本質的に既知であり、本発明のアタッチメント・デバイスに補綴を取り付けるために本発明の教えに従って用いてもよいものである。
【図10】さらに多くの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、本質的に新規なものであり、本発明の角度付きアタッチメント・デバイスへ、または、従来のまっすぐな、あるいは角度付きアタッチメント・デバイスへ補綴を取り付けるために、本発明の教えに従って用いてもよい。
【図11】さらに多くの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、本質的に新規なものであり、本発明の角度付きアタッチメント・デバイスへ、または、従来のまっすぐな、あるいは角度付きアタッチメント・デバイスへ補綴を取り付けるために、本発明の教えに従って用いてもよい。
【図12】さらに多くの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、本質的に新規なものであり、本発明の角度付きアタッチメント・デバイスへ、または、従来のまっすぐな、あるいは角度付きアタッチメント・デバイスへ補綴を取り付けるために、本発明の教えに従って用いてもよい。
【図13】さらに多くの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、本質的に新規なものであり、本発明の角度付きアタッチメント・デバイスへ、または、従来のまっすぐな、あるいは角度付きアタッチメント・デバイスへ補綴を取り付けるために、本発明の教えに従って用いてもよい。
【図14】さらに多くの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションを図解する説明図である。これは、本質的に新規なものであり、本発明の角度付きアタッチメント・デバイスへ、または、従来のまっすぐな、あるいは角度付きアタッチメント・デバイスへ補綴を取り付けるために、本発明の教えに従って用いてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、本発明の教示によって構成されて使用可能な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの第二の好適実施例である。
【0034】
本発明による本発明の教示によって構成されて使用可能な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの第二の好適実施例の原理および作用は、図面およびその説明を参照することによって、より良く理解することができる。
【0035】
前置きとして、本発明は、インプラントの中心軸からボール要素をオフセットさせて配置する角度付きボール・アタッチメント・デバイスを説明する。ボール要素およびアバットメント基部エレメントは、デバイスの締結ネジが弛んでも安定な、単一の堅固なユニットを形成する。
【0036】
いくつかの好適実施例においては、アバットメント基部エレメントが、少なくとも部分的にデンタル・インプラント内に配置される。
【0037】
本発明の角度付きボール・アタッチメント・デバイスは、インプラントが平行でない場合でも、患者による義歯の簡単な挿入および除去を提供する、平行な複数のボールを提供する。
【0038】
本発明は、また、アバットメント基部エレメントに取り付けてボール要素を固定する、骨インプラントへボールを結合するための方法を提供する。この方法では、アバットメント基部エレメントの少なくとも一部が、少なくとも部分的に骨インプラント内へ挿入されてからそれに取り付けられ、そして骨インプラントの中心軸からボール要素の中心軸をオフセットさせてボール要素が位置決めされる。
【0039】
さて、図面を参照する。図3は、本発明の角度付きボール・アタッチメント・デバイス100の第一の好適実施例を表す。実施例100は、非限定的な例として、本技術において既知であるようにインプラント45へネジ15で結合させる六角コンフィギュレーション14の抗回転エレメントを持つ単一の基部エレメント13を含む。ボール要素16は、基部エレメント13のインプラント中心軸70からオフセットした点で、基部エレメント13へ堅固に結合されている。言うまでもなく、ボール要素16は、例えばミリングまたは鋳造によって、基部エレメント13と共に一体的に形成してもよい。択一的に、ボール要素16および基部エレメント13は、個別に形成し、その後、非限定的な例として、ハンダ付け、溶接、あるいは他の適当な工程によって結合してもよい。
【0040】
明らかであるが、基部エレメント13のインプラント中心軸70に関するボール要素16の位置は、六角コンフィギュレーション14として例示された抗回転エレメントによって制限されるため、ボール要素16の配置は、インプラント中心軸70の周りに60°間隔で6箇所に制限される。
【0041】
ボール要素16に対してインプラント中心軸70の周りに追加の位置オプションを設けるために、図4および図5の非限定的な例によって示すよう、抗回転エレメントに対するボール要素16の位置を変化させてもよい。
【0042】
図4に例示する第一の変形例100aでは、ボール要素16を、六角コンフィギュレーション14の一つの平面17に整列させている。図5に例示する第二の変形例100bでは、ボール要素16を、六角コンフィギュレーション14の一つの角18に整列させている。角度付きボール・アタッチメント・デバイス100のこれら二つの変形例を、一緒にキットとして提供すれば、医師は、インプラント中心軸70の周りに30°間隔で、12の異なる位置のいずれか一つにボール要素16を配置することができる。これら二つの変形例100aおよび100bは、大部分の治療状況に適当な解決策を提供するが、言うまでもなく、抗回転エレメントは、より少ない,あるいはより多い配置位置を提供するよう、実質的に多様な断面輪郭を持って構成できる。そのような断面輪郭の例としては、三角形、正方形、五角形、七角形、八角形、九角形、十角形等の、通常の多角形がある。
【0043】
非限定的な例として、基部エレメント13の高さ(長さ)を、0.5mmから6mmの範囲内で変化させることによって、角度付きボール・アタッチメント・デバイスの他の変形例が構成可能であることは容易に認識できる。さらに、インプラント中心軸70からのボール要素16の距離を変化させてもよい。
【0044】
インプラント中心軸70からのボール要素16の距離を変化させることによって、ボール要素16の中央長軸71との間の角度も変化させることができる。したがって、明らかであるが、本発明の一つの実施例においては、インプラント45のインプラント中心軸70と、ボール要素16の中心軸71との間には角度が設けられる。骨製インプラントの中心軸70と、ボール要素の中心軸71との間の角度は、0から90°の範囲内にあることが好ましい。そして、この角度は、15から45°であることが最も好ましい。本発明の目的は、また、ボール要素が完全な球ではなく、そして非球状のボール要素の中心軸がインプラント中心軸70に平行な、角度付きボール・アタッチメント・デバイスを提供することである。
【0045】
実質的にどんな状況においても適当なボール・アタッチメント・デバイスを医師に提供できるよう、ボール・アタッチメント・デバイスの複数の変形実施例を、キット形式で医師に供給することが好ましい。
【0046】
図6は、本発明による角度付きボール・アタッチメント・デバイス200の第二の好適実施例を示す。このデバイスにおけるアバットメント・エレメント20は、取り付け時にインプラント(図示せず)の中心軸に整列することになる締結ネジ15に対して傾斜している。この実施例はまた、インプラントの中心軸の周りの、複数の異なる位置にボール要素を配置できる能力を提供する。言うまでもなく、アバットメント基部エレメント20は、アバットメント基部エレメント20の、ボール要素16の反対側に位置する側の領域21における物質が少ない。このことは、共に使用されることになる取り外し可能な義歯(図示せず)との、アバットメント基部エレメント20の干渉を低減する。この実施例においても、六角コンフィギュレーション14に対する、またはアバットメント基部エレメント20に対するボール要素16の位置の変更は、実施例100に関して先に述べたようにして達成できる。
【0047】
図7は、本発明による角度付きボール・アタッチメント・デバイス300の第三の好適実施例を図解する。このデバイスにおけるボール要素は、アバットメント基部エレメント26に固定されて取り付けられているものではない。この実施例300は、非限定的な例としての六角コンフィギュレーション14等の抗回転エレメントを含む、そして受容アバットメント基部エレメント26が、ネジ15でデンタル・インプラント(図示せず)へ取り付けられる、という点で、先の実施例100および200に同様である。ここに図解するように、分離ボール要素は、ネジ延長部を持って構成されている。同様に、受容アバットメント基部エレメント26は、ボール要素25のネジ延長部を受容するための内ネジ孔27を持って構成されている。この場合も、六角コンフィギュレーション14に対する、またはアバットメント基部エレメント20に対するボール要素25の位置の変更は、実施例100に関して先に述べたようにして達成できる。
【0048】
注目すべき点として、ここで論じる本発明による実施例のすべてに共通する特徴は、インプラントの中心軸からオフセットさせてボール要素を配置し、ボール要素をインプラントの中心軸の周りに回転できることである。
【0049】
本文での説明は、角度付きボール・アタッチメント・デバイスに関するが、これは限定を意図したわけではなく、インプラントに対する他タイプのデンタル・アバットメントや角度付き整形アタッチメント・デバイスに対しても、同じ原理が適用できることに注意すべきである。さらに、本文で説明する実施例は、ボール要素を持って構成されているが、これは限定を意図したわけではなく、実質的に他のタイプの補綴コネクタにも適用可能である。さて、図8から図14を参照して、代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションの例を手短に説明する。
【0050】
一般的に、これらの代替的なアタッチメント・コンフィギュレーションは、一つ以上の内側あるいは外側アンダーカットを持つ、アタッチメント・デバイスのパーツを形成する下側部分52、そして弾性のあるポリマー材料から典型的に形成される柔軟な係合エレメント50を含み、係合エレメントが下側部分へスナップ・フィットしてアンダーカットに係合し、取り付けた補綴を適所に維持する。図8の形式は、名称ロケーター(商標)の下で市販されているコンフィギュレーションに対応し、図9のものは、(米国マサチューセッツ州の)スターンゴールド・デンタルLLCから、名称イーラ(商標)の下で市販されているコンフィギュレーションに対応する。各々のケースにおける補綴の保持は、下側部分52への、ポリマー・キャップの形態にある係合エレメント50の係合によって達成される。これらのコンフィギュレーションは、ある程度の角度的自由度を許容することを意図している。および/または、ある程度の角度的自由度を、ポリマー・キャップと、その上に横たわる金属製ケーシング(図示せず)との間の、カップのような接合面で提供してもよい。
【0051】
これらの従来のアタッチメント・コンフィギュレーションに加えて、追加的にそれ自体において特許性がある、本発明のもう一つの局面は、従来のまっすぐな、あるいは角度をつけたアタッチメント・デバイスと共に使用したとしても、上記で論じたアタッチメントの従来の形式が提供するものよりも優れた維持管理および可動角度範囲を提供するアタッチメント・コンフィギュレーションおよび/またはアタッチメント・キットを提供することである。 さて、図10から図14を参照して、改良アタッチメント・コンフィギュレーションの多数の非限定的な例を説明する。
【0052】
最初に図10を参照する。これは、下側部分52が、全体的に概して円錐輪郭「C」に位置する、少なくとも二つの外側アンダーカット凹部を持って形成されるケースを図解する。アタッチメント・キットは、少なくとも2タイプの対応キャップを含むことが好ましい。ここでは、各々を部分的にのみ示し、それぞれ「A」および「B」と符号を付与している。キャップ「A」は、上記少なくとも二つのアンダーカット凹部の一方にのみ係合するように構成されているが、キャップ「B」は、二つのアンダーカット凹部に係合するように構成されている。三つ以上のアンダーカット凹部のケースに対しても、外側、内側または両方に関わらず、また、より多くの対応キャップに関わらず、同じ原理が適用できる。係合凹部の数、係合凹部の位置、そして係合形状の適合または非適合を適当に選択することによって、広範囲に渡る異なる度合いの保持、そして、保持の程度からは大きく独立させて、動きの選択または可動角度範囲を得ることが可能である。
【0053】
図11は、同じ概念のもう一つの例を図解する。この場合、(部分的にのみ図示した)キャップ「A」は、下側部分52の、二つの内側凹部、そして一つの外側凹部に係合するが、キャップ「B」は、下側部分52の、二つの内側凹部、そして三つの外側凹部に係合する。このケースでは、内側および外側凹部の両方の概観輪郭が、直線によって示すように円錐形状である。
【0054】
図12もまた、同じ根底概念を図解するが、このケースでは、複数の内側保持部が、キャップ内の内側突起部、そして下側部分52の上面にある相補的形状の凹部の形態を採る。異なるキャップ間の把持力の調整は、係合する外側凹部の数を変化させること、そしてキャップ内の内側突起部の数および形状を変化させることの、種々の組み合わせによって達成できる。
【0055】
さて、図13を参照する。これは、把持を促進するために異なる領域に孔を持つアンダーカットとしてそれ自体が機能する、球面あるいは楕円形の構造を示す。この構造は、異なるアンダーカットを持つ雌型係合エレメントと共に択一的に使用でき、把持位置を変化させて、オス・エレメント上をメス・エレメントが角移動可能である。図13の下側に示す変形例には、内側中空に対して追加の把持を提供する追加の大きな凹部「D」が示されている。
【0056】
最後に、図14は、把持位置を提供するために同一であっても、あるいは同一でなくてもよい、三つ以上の大きなキャビティを持つ円形あるいは卵形のドームとして形成された下側部分52を表す二つの図である。
【0057】
上記の新規なアタッチメント・コンフィギュレーションの各々において、(「メス」と呼ぶ)上側エレメントは、限定せずに、ナイロン、いずれのタイプのプラスチック、種々のタイプのバネを含む金属または合金など、適当な材料から、また、そのような材料の組み合わせから形成してもよい。例えば、ニッケル・チタン(「ニチノール」)合金等の、特定な材料のケースでは、デバイスを、温度変化(例えば、体熱)によって、電流によって、または他の物理的メカニズムによって作用させ、所定の最終コンフィギュレーションを得るようにしてもよい。
【0058】
説明した構造は、まっすぐでも、あるいは角度があってもよく、また、補綴に対して、所望の方向への可動域を提供することが可能である。必要な箇所には、必要な機能を提供するために、補助的な内側あるいは外側把持エレメントを組み入れてもよい。
【0059】
上記に説明した上側エレメントの各々には、被覆金属ケーシングを収容してもよい。これらの構造は、全方向への可動域を可能にするために、インプラントからの応力を減少させるために、そして組織上に補綴を定着させることが可能なように、下側エレメントの外側形体の完全な、あるいは部分的な把持と、下側エレメントの内側形体の完全な、あるいは部分的な把持との組み合わせで実施できる。
【0060】
言うまでもなく、上記の説明は、例としてのみ機能することを意図しており、本発明の範囲内において、多くの他の実施例が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯の着脱可能な離軸取り付けのためのデバイスであって、
(a)骨への挿入軸を持ち、そして、前記軸の周りにデバイスが回転することを防止するよう骨に係合するように形成された回転阻止コンフィギュレーションを含む骨アンカー・アレンジメント、そして
(b)義歯の着脱可能な結合のために構成されたアタッチメント・コンフィギュレーションからなり、前記アタッチメント・コンフィギュレーションが前記挿入軸に対して離軸に位置し、
前記アタッチメント・コンフィギュレーションおよび前記回転阻止コンフィギュレーションが、一体的に形成される、あるいは調節不可能な空間的関係で恒久的に取り付けられる、デバイス。
【請求項2】
前記アタッチメント・コンフィギュレーションがボールを含む、請求項1のデバイス。
【請求項3】
各々請求項1に記載の二つのデバイスからなる、義歯の着脱可能な離軸取り付けのためのキットであって、前記回転阻止コンフィギュレーションが6倍の回転対称性を持ち、そして
(a)前記デバイスの第一のものが、前記回転阻止コンフィギュレーションに対して第一の角度位置で離軸に位置する前記アタッチメント・コンフィギュレーションを持ち、そして
(b)前記デバイスの第二のものが、前記回転阻止コンフィギュレーションに対して第二の角度位置で離軸に位置する前記アタッチメント・コンフィギュレーションを持ち、前記第二の角度位置は、実質的に30°の角度だけ前記軸の周りに回転された位置である、キット。
【請求項4】
前記アタッチメント・コンフィギュレーションがボールを含む、請求項3のキット。
【請求項5】
骨インプラントへボールを結合するためのデバイスであって、
アバットメント・エレメントおよびボールからなり、前記アバットメント・エレメントが、少なくとも部分的に前記骨インプラント内へ挿入され、前記骨インプラントへの前記アバットメント・エレメントの結合が弛んだ場合でも結合を維持するよう、前記ボールが前記アバットメント・エレメントに対して固定空間関係で恒久的に結合され、そして前記骨ボールの中央長軸が前記骨インプラントの中央長軸から変位して前記ボールが位置する、デバイス。
【請求項6】
前記骨インプラントの中央長軸と前記ボールの前記中央長軸との間の角度が、0から90°である、請求項5のデバイス。
【請求項7】
前記角度が15から45°である、請求項6のデバイス。
【請求項8】
前記ボールの前記長軸が骨インプラントの前記長軸に平行であるため、前記ボールが前記骨インプラントの中心から変位している、請求項5のデバイス。
【請求項9】
前記ボールの少なくとも一部が、インプラントの雌ネジの上方に位置する、請求項5のデバイス。
【請求項10】
前記アバットメント・エレメントが、前記骨インプラントの抗回転エレメントに係合する抗回転エレメントを持つ、請求項5のデバイス。
【請求項11】
前記アバットメント・エレメントの前記抗回転エレメントが、六角形状である、請求項10のデバイス。
【請求項12】
前記ボールが、前記六角形の一つの平面の上方に位置する、請求項11のデバイス。
【請求項13】
前記ボールが、前記六角形の一つの角の上方に位置する、請求項11のデバイス。
【請求項14】
前記アバットメント・エレメントの高さが、0.5mmから6mmである、請求項5のデバイス。
【請求項15】
前記アバットメント・エレメントには角度が付いている、請求項5のデバイス。
【請求項16】
前記ボールが、前記アバットメント・エレメントに比べ、インプラントの軸からより大きく変位して位置する、請求項15のデバイス。
【請求項17】
前記ボールが、前記アバットメント・エレメントに比べ、インプラントの軸からより小さく変位して位置する、請求項15のデバイス。
【請求項18】
前記ボールが、前記アバットメント・エレメントにハンダ付けされる、請求項5のデバイス。
【請求項19】
前記ボールおよび前記アバットメント・エレメントが、C.N.Cマシンでミリングされた一つのピースである、請求項5のデバイス。
【請求項20】
前記ボールおよび前記アバットメント・エレメントが、一緒に鋳造される、請求項5のデバイス。
【請求項21】
前記ボールが、前記アバットメント・エレメントにネジ止めされる、請求項5のデバイス。
【請求項22】
前記ボールが、前記アバットメント・エレメントに接着される、請求項5のデバイス。
【請求項23】
前記アバットメント・エレメントが、前記骨インプラントにネジで固定される、請求項5のデバイス。
【請求項24】
前記アバットメント・エレメントが、前記骨インプラントに回転式定着ナットで固定される、請求項5のデバイス。
【請求項25】
前記アバットメントが、前記骨インプラントへ摩擦によって固定される、請求項5のデバイス。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−521269(P2010−521269A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554124(P2009−554124)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000375
【国際公開番号】WO2008/114253
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509252140)アルファ バイオ テック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】