説明

義歯アイテムを設計および製造するためのシステム、方法、装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】デンタルCAD/CAMシステムにより、オペレータを補助して、優れた機械的特性を有する義歯アイテムを作成する。
【解決手段】デンタルCAD/CAMシステムは、義歯アイテムを表わす設計データを用いて作成される候補義歯アイテムの構造解析を行い、設計データS302と、義歯アイテムの所望の美的特性を表わすデータとに基づいて、ミリングブロックの体積内に義歯アイテムの表面の位置決めを推奨することができるS306。設計データ、義歯アイテムの表面を表わすデータ、ミリングブロックの体積を表わすデータ、およびミリングブロックの美的特性を表わすデータを用いて、義歯アイテムの美的特性のシミュレーション画像を生成し、表示することができるS314、S318。デンタルCAD/CAMシステムを用いて、半透明領域、空間的に変わる色合いなどの複雑な美的特性を有する義歯アイテムを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ支援の設計および製造に関し、より詳細には、歯またはその1つ以上の部分などの義歯アイテムを設計および製造するためのシステム、方法、装置、およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義歯アイテムを作成することを含む歯の修復手順は、手間がかかり、かつ、時間がかかる「試行錯誤」プロセスであった。歯科医は、患者の歯および歯肉の輪郭の作成に備えて、患者の歯からプラークを除去することによって歯の修復手順を開始する。歯科医は、成形材を用いて患者の歯および歯肉の物理的歯型を捕らえることによって、患者の歯および歯肉の歯型を作成することができる。歯型は、歯科技工所に送られ、そこで、患者の歯および歯肉の物理的な三次元モデルが作成される。
【0003】
歯科技工所では、技師が型にプラスターを注ぎ入れる。プラスターが乾燥し、型から外されると、成型されたプラスターを患者の歯および歯肉の物理的な三次元モデルとして用いる。歯の修復手順が、抜けた歯を人工歯に置き換えることを含む場合、技師は、患者の歯および歯肉のプラスター型を用いて抜けた歯のろう型を構築することができる。ろう型は、ポーセレンが取り付けられるメタルフレームの鋳造に用いることができる。技師は、ポーセレンの着色を調整し、ポーセレンおよびメタルフレームを窯で焼き、メタルフレームの上にポーセレンを焼成し、人工歯を作成する。技師は、ポーセレンのいくつかの追加層を人工歯に加え、患者の抜けた歯の自然の色彩特性(例、色相、彩度、およびクロミナンス)をシミュレーションすることができる。人工歯が完成すると、技師は人工歯を歯科医に戻し、歯科医はそれを調べ、人工歯の色彩特性または寸法に問題が発見された場合には、歯科技工所に再加工のためにときとして戻される。
【0004】
より最近では、コンピュータ支援設計(CAD)およびコンピュータ支援製造(CAM)技術を用いて義歯アイテムが作成されている。CAD/CAM技術を用いることで、従来技術を用いて作られた義歯アイテムと比べてより正確に患者の口に適合する義歯アイテムを作成することができる。さらに、CAD/CAM技術を用いて作られた義歯アイテムは、従来技術よりもより速やかに作成することができる。例えば、Sirona Dental Systemsは、一度の外来診療中に歯の修復手順を行うために歯科専門医院で用いることができるCerec(登録商標)システムを製造している。
【0005】
現在のCAD/CAM技術を用いる場合、患者の歯および歯肉のデジタル表現は、通常、歯の修復手順の最初に作成される。すなわち、患者の歯および歯肉の三次元表面を表わすデータを取得し、デジタルデータ形式で記憶する。患者の歯および歯肉のかかるデジタル表現を用いることにはいくつかの利点がある。例えば、患者の歯および歯肉のデジタル表現を作成した直後に、歯科技師および人工歯の設計者で共用することができ、これにより歯の修復プロセスを迅速化することができる。さらに、患者の歯および歯肉のデジタル表現は、非常に正確である。
【0006】
義歯アイテムの美的特性は、非常に重要である。例えば、人工歯を患者の口内で本物のように見せたり、あるいは自然に見せるために、人工歯の色彩特性は、人工歯が患者の口内に取り付けられる領域を囲んでいる歯の色彩特性に合わすことができる。従来の製造プロセスでは、職人に近い歯科技師は、技師の訓練、経験、および想像力を用いて人工歯を着色し、陰影をつけることができる。デンタルCAD/CAMシステムのオペレータは、従来の歯科技師と同等の訓練および経験を有していても、有していなくてもよい。従って、デンタルCAD/CAMシステムが、オペレータを補助し、従来技術を用いて熟練歯科技師によって作成された歯アイテムの美的特性に匹敵する、あるいはそれよりも優れた美的特性を有する義歯アイテムを作成することは有用であり得る。
【0007】
現在のデンタルCAD/CAMシステムは、義歯アイテムを作成するためにフライス盤によってフライス加工されるセラミックブロックを用いることができる。歯科医は、作成する義歯アイテムの所望の美的特性(例、色むら)に基づいて、単色ブロックを選択することができる。所望の色彩特性を判断するために、例えば、歯科医は、テンプレート、もしくは、Vident製のVITA linear guide 3D−Master(登録商標)などのコンピュータ化されたシェードシステムを用いることができる。一般に、かかるコンピュータ化されたシェードシステムは、半透明性などの一定の美的特性を考慮しない。さらに、単一の単色ブロックは、例えば、歯が歯肉面から咬合面へと移行する領域において、自然歯のある美的特性(歯の色相、彩度、およびクロミナンスなどの複雑な組み合わせ)を必ずしも表わすことはできない。すなわち、単一の単色ブロックもしくは多色ブロックは、自然歯には存在する漸次的な移行の色合いを表わすことができない場合が多い。
【0008】
例えば、図2は、複数の義歯202〜212のシミュレーション画像またはレンダリングを示す。複数の義歯202〜212の各々は、自然歯に存在し得る1つ以上の漸次的な移行の色合いを含む。
【0009】
色合いなどの自然の美的特性を有するのみならず、義歯アイテムは、理想的には、患者によって使用される場合に早期に壊れないように機械的に安定であるべきである。義歯アイテムの従来の製造においては、熟練の歯科技師は、自らの訓練および経験を適用することによって、高度の機械的安定性を有する義歯アイテムを作ることができる。上述のように、現在のデンタルCAD/CAMシステムのオペレータは、従来の歯科技師と同等の訓練を必ずしも受けない場合がある。さらに、現在のデンタルCAD/CAMシステムのオペレータは、非常に高度の機械的安定性を有する義歯アイテムを作るための十分な経験を持っていない場合がある。従って、デンタルCAD/CAMシステムが、オペレータを補助して、従来技術を用いて熟練歯科技師によって作成された歯アイテムの機械的特性に匹敵する、あるいはそれよりも優れた機械的特性を有する義歯アイテムを作成することは有用であり得る。
【発明の概要】
【0010】
本明細書に記載の例示実施形態によれば、提案された義歯アイテムは、ミリングブロック内にボリュームレンダリングすることができ、予測された美的および機械的特性を表示することができる。
【0011】
例示実施形態によれば、非単色デンタルブロックの陰影グラデーションは、提案された義歯アイテムの設計パラメータを表わす構造特性データに適用することができ、得られた義歯アイテムのシミュレーション画像を表示することができる。
【0012】
例示実施形態によれば、提案された義歯アイテムの形状および材料特性を含むモデルを用いて、提案された義歯アイテムを作製した場合にどれくらい物理的に強固になるかを推定することができる。
【0013】
例示実施形態によれば、線形、非線形、あるいは曲線グラデーションの美的特性を有するミリングブロックを用いて、提案された義歯アイテムを作製することができる。
【0014】
例示実施形態によれば、ミリングブロックおよび/または歯アイテムと関連する空間的に変化する物理的および美的特性を表わすデータを用いて、提案された義歯アイテムを作製することができる。
【0015】
例示実施形態によれば、提案された義歯アイテムの頑健性および推定寿命は、提案された義歯アイテムおよび歯列の形状および材料特性モデルを用いて算出することができる。
【0016】
実施形態によれば、提案された義歯アイテムの変更物を提案することができる。
【0017】
実施形態によれば、歯科材料の機械的特性のライブラリを表わす記憶データを用いて、提案された義歯アイテムの構造特性を算出することができる。
【0018】
実施形態によれば、ミリングブロック、歯の残根、義歯アイテム(義歯アイテムと歯の残根の間の移行領域を含む)、および義歯アイテムを囲んでいる歯の美的および/または機械的特性を表わす記憶データを用いて、義歯アイテムを作成することができる。
【0019】
実施形態によれば、デンタルCAD/CAM修復デバイスのサブシステムが、オペレータを補助し、自然な美的特性と高度の機械的安定性を有する義歯アイテムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本明細書に記載の例示実施形態による義歯アイテムを作成するためのプロセスのフローチャートを示す。
【0021】
【図1B】本明細書に記載の例示実施形態による義歯アイテムを作成するためのプロセスのフローチャートを示す。
【0022】
【図2】例示実施形態による漸次的な移行の色むら特性を有する義歯アイテムのシミュレーション画像を示す。
【0023】
【図3】例示実施形態による反復プロセスを示す。
【0024】
【図4】例示実施形態によるミリングブロックの三次元体積内の義歯アイテムの三次元体積のシミュレーション画像を示す。
【0025】
【図5】例示実施形態による患者の口内に取り付けた人工歯のシミュレーション画像を示す。
【0026】
【図6】例示実施形態による人工歯および周囲の歯構造のシミュレーション画像を示す。
【0027】
【図7】図1A、図1B、および図3に示すプロセスを行うことができ、かつ、図2および図4乃至図6に示すシミュレーション画像を表わすデータを生成することができる例示実施形態によるシステムのシステムアーキテクチャのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載の例示実施形態による義歯アイテムを作成するためのプロセスを図1Aおよび図1Bに示す。プロセスは、ステップS100で開始される。ステップS102で、歯科医または歯科衛生士は、例えば、患者の歯(例えば、義歯アイテムが取り付けられる歯の残根を含み得る)の歯表面からプラークを除去することによって患者の口内で歯表面を準備する。
【0029】
ステップS104で、患者の歯および歯肉の複数の二次元投影画像を表わすデータを生成する。例えば、カメラ(例、デジタルカメラユニット732)が、患者の歯および歯肉の複数画像を取り込み、周知の方法で取り込み画像に対応する画像データを生成する。ステップS106で、二次元投影画像を表わすデータを三次元デジタル歯型を表わすデータ、すなわち、患者の歯および歯肉に対応する三次元表面を表わすデジタル歯型データに変換する。二次元投影画像を表わすデータは、従来技術を用いて、生成し、デジタル歯型データに変換することができる。例えば、米国特許第6,885,464号には、ステップS104およびS106を行うのに適当な方法が開示されている。米国特許第6,885,464号の内容は全体として参照して本明細書に組み込まれる。
【0030】
ステップS108で、候補義歯アイテムが推奨される。例えば、複数の義歯アイテムを表わす三次元体積データと関連する記憶された構造特性データを検索して、デジタル歯型データに基づいて、少なくとも1つの歯(またはその1つ以上の部分)がかつて存在した空間に適合する候補義歯アイテムを表わすデータを見つけることができる。候補義歯アイテムを表わす構造特性データは、例えば、先に設計されている義歯アイテムを表わすデジタルデータのライブラリから検索することができる。米国特許出願公開第2006/0063135号には、候補義歯アイテムを表わす構造特性データを推奨することが可能な画像処理システムの一例が開示されている。この特許公開の内容は全体として参照して本明細書に組み込まれる。
【0031】
ステップS110で、推奨された義歯アイテムの設計パラメータを表わす構造特性データを確認し、および/または、必要に応じて編集する。例えば、オペレータは、義歯アイテムが配置される歯の残根の亀裂高をチェックし、義歯アイテムと関連する寸法を表わすデータを必要に応じて変えることができる。同様に、オペレータは、咬み合わせを確認したり、接触点を調整したりして、義歯アイテムの設計パラメータを表わす対応する構造特性データを必要に応じて変えることができる。設計パラメータを表わす構造特性データは、例えば、コンピュータモニター上に表示することができる。設計パラメータのいずれかを変更する場合、オペレータは、例えば、キーボードまたはマウスなどの入力装置を用いて変更し、変更された設計パラメータを表わす構造特性データを記憶することができる。候補義歯アイテムを表わすデータを変更して、候補義歯アイテムを表わすデータとデジタル歯型データとを用いて患者の歯および歯肉に対する義歯アイテムをサイズ調整し、および/または、配向することができる。
【0032】
一例において、これらの手順は、米国特許出願公開第2006/0008776号に開示された方法で行うことができ、その内容は全体として参照して本明細書に組み込まれる。ステップS110を実行するために、他の技術を用いて行うこともできる。材料特性(例、安定性、咀嚼中に生じる力、力の方向、ねじりモーメント)をシミュレートするソフトウェアを用いて、推奨された義歯アイテムの構造特性データを確認することができる。一例において、推奨された義歯アイテムの各点における材料強度を評価して、各点が所定の最小厚さ値(minimal thickness number)を満たすかどうか判断することができる。別の例において、データベースに記憶することができる所定の材料特性、および、デンタルCAD/CAMシステムによって得ることができる、患者の口内で互いに接触する歯表面を表わすデータとを用いて、有限要素解析に基づいた物理的シミュレーションを行うことができる。
【0033】
各々が異なる美的および/または構造特性を有する種々のミリングブロックを表わすデータを予め記憶し、選択用に利用することができる。例えば、ミリングブロックの美的特性を表わすデータは、線形、非線形、および/または曲線グラデーションの色合いおよび/または半透明領域を表わすデータを含み得る。ステップS112で、特定のミリングブロックを表わすデータは、複数のミリングブロックの美的および機械的特性を表わすデータから選択される。特定のミリングブロックに対応する識別子は、例えば、入力装置を用いてオペレータによって選択できる。あるいは、特定のミリングブロックに対応する識別子は、特定のミリングブロックの美的特性を表わす予め記憶されたデータと、歯の残根または周囲の歯の美的特性を表わすデータとに基づいて、コンピュータプロセッサ(例、プロセッサ704)によって選択できる。例えば、ステップS104で生成された患者の歯および歯肉を表わすデータは、患者の歯および歯肉の1つ以上の色彩を表わす色彩データを含み得、特定のミリングブロックを表わすデータは、ミリングブロックの1つ以上の色彩を表わす色彩データを含み得る。特定のミリングブロックの色彩データが、他のミリングブロックの色彩データよりも患者の歯および歯肉の色彩データとの相関がより高いことを判断することによって、プロセッサは特定のミリングブロックを選択することができる。
【0034】
ステップS114について詳細に説明する前に、候補義歯アイテムと、選択されたミリングブロックとを表わすデータを用いて、候補義歯アイテムの設計パラメータを表わす構造特性データに基づいて選択されたミリングブロックから形成され得られた義歯アイテムの美的および構造的(機械的)特性(それぞれ、以下のステップS114およびS124を参照されたい)を予測することができる点に留意されたい。例えば、候補義歯アイテムを表わす予め記憶されたデータは、ステップS108でデータベースから検索することができ、このデータはステップS110で必要に応じて変更することができる。上述のように、得られた義歯アイテムの美的および機械的特性は空間的に変化し得る。例えば、半透明部分と、空間的に変わる漸次的な移行の色合いとを有するように、得られた義歯アイテムを設計することができる。
【0035】
候補義歯アイテムの設計パラメータを表わす構造特性データがいったん確認され(必要に応じて編集される)(ステップS110)、ミリングブロックが選択されると(ステップS112)、ステップS114で、得られた義歯アイテム、歯の残根、および/または周囲の歯の構造的(機械的)解析が、義歯アイテム、歯の残根、および/または周囲の歯の構造特性を表わす予め記憶されたデータに基づいて行われる。例えば、義歯アイテムが取り付けられる少なくとも1つの歯の残根の応力分布を算出することができる。同様に、義歯アイテムの応力分布、および義歯アイテムを囲んでいる歯の応力分布は、咀嚼中に生じた力、これらの力の方向、およびねじりモーメントをシミュレートすることによって算出することができる。偏微分方程式を解くことを含み得る、応力分布の算出技術は、当該技術分野では周知である。例えば、有限要素解析、数値流体解析、および剛性はり(rigid beam)解析技術を用いることができる。1つ以上のこれら技術を用いることで、構造的な脆弱性があれば、その1つ以上の位置をコンピュータシステムによって識別することができる。患者の咬合および対応する咬合力をシミュレートすることができる。義歯アイテムの表面の反対に少なくとも1つの表面を有する材料の物理的特性も構造解析に含むことができる。かかる材料としては、自然歯エナメル、アマルガム、金、および/または、セラミック材料から形成されたものなどの他の義歯アイテムが挙げられる。
【0036】
ステップS116で、候補義歯アイテムが特定の合格基準を満たすかどうかについて判断がなされる。例えば、ステップS114で算出された応力分布は、ステップS116で基準応力分布と比較することができる。一例において、算出された応力分布が基準応力分布未満である場合、候補義歯アイテムは、合格基準を満たすと判断することができる。1つ以上の合格基準が満たされない場合(例、応力分布が基準応力分布以上である場合)、候補義歯アイテムおよびミリングブロックの特定の組み合わせが合格基準を満たすと判断されるまで、ステップS110〜ステップS116を繰り返すことができる。
【0037】
合格基準(例、構造設計要件)が満たされると、ステップS118で、ミリングブロックの三次元体積内の義歯アイテムの三次元体積を表わす位置データが生成され、オペレータに推奨される。例えば、コンピュータシステムは、形状相関アルゴリズムおよび形状誤差最小化アルゴリズムを用いて、ミリングブロックの三次元体積内の義歯アイテムの三次元体積の好ましい位置、回転度、および/または配向を算出する。好ましい位置、回転度、および/または配向は、これらのパラメータを受け入れるかまたは変更するオペレータに推奨することができる。合格基準を満たすかどうか判断するため、ある所定の条件を満たすブロックの色彩グラデーション領域(color gradient field)に構築された修復物の形状を一致させる最小化アルゴリズムを用いることができる。例えば、所定の条件とは、咬み合わせが、材料のより明るい側に向かって位置することを要する場合がある。最小化アルゴリズムは、メッシュポイントの頂点座標およびブロックの色視野に対するマトリックス式を用いて実現することができる。
【0038】
ステップS120で、得られた義歯アイテム(即ち、ステップS118で生成された位置決めデータに基づいて選択されたミリングブロックから形成された義歯アイテム)のシミュレーション画像または三次元レンダリングを表わすデータを生成し、コンピュータモニター上に表示することができる。ステップS122で、オペレータは、表示画像またはレンダリングに基づいて、義歯アイテムの美的特性を変えるために、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータを変更することができる。例えば、オペレータは、マウス(二次元もしくは六次元)またはカーソルキーを用いて、ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置、回転度、および/または配向を表わすデータを変えることができる。例示実施形態において、該手順により、オペレータが義歯アイテムの体積をミリングブロックの体積の外側に位置決めすることを防止することができる。
【0039】
ステップS124で、患者の口内に取り付けた場合の義歯アイテムの美的特性を示すシミュレーション画像を表わすデータを生成し、デンタルCAD/CAMシステムの表示装置上に表示、および/または、レンダリングすることができる。ボリュームレンダリング技術を用いて、義歯アイテムの美的特性を示すシミュレーション画像を生成することができる。ボリュームレンダリング技術の例は、「Volume Rendering」と題された文書に記載されており、これは、http://en.wikipedia.org/wiki/Volume_rendering(最終アクセスは、2009年10月14日)で入手可能である。一例において、グレー濃度の可視化を用いることができ、ここで、義歯アイテムの三次元体積を表わすデータの各点ごとに一次元情報(例、グレースケール値)が提供される。一例において、色濃度の可視化を用いることができ、ここで、義歯アイテムの三次元体積を表わすデータの各点ごとに三次元情報(例、赤成分値、緑成分値、青成分値)が提供される。
【0040】
義歯アイテムの三次元体積を表わすデータを用いて、患者の口内に取り付けた義歯アイテムのシミュレーション画像を生成することができる。先に設計されている義歯アイテムを表わすデジタルデータのライブラリを記憶するデータベースは、例えばステップS108で、義歯アイテムの三次元体積を表わすデータを提供することができる。例えば、義歯アイテムの美的特性を表わすデータは、患者の口内における義歯アイテムの位置決めを表わすデータ、デモグラフィックデータ、義歯アイテムが取り付けられる歯の残根の美的特性を表わすデータ、および/または、周囲の歯の美的特性を表わすデータに基づいて生成することができる。一例として、周囲の歯の美的特性は、欧州特許第0837659号に開示された技術を用いて取得することができ、その内容は全体として参照して本明細書に組み込まれる。
【0041】
ステップS124におけるシミュレーション画像を表わすデータは、義歯アイテムの美的特性を表わすデータを含み、義歯アイテムの体積を表わすデータ、ミリングブロックの体積を表わすデータ、およびミリングブロックの美的特性を表わす関連データに基づいて生成することができる。一例において、美的特性を表わすデータは、レイトレーシング技術およびレイキャスティング技術などの公知技術を用いて、シミュレートされた照明条件および視野角に基づいて生成することができる。レイキャスティング技術を用いる場合、コンピュータ画面上に表示されるピクセルごとに、義歯アイテムの体積を通じてシミュレート光を投影し、反射、吸収、屈折、および陰影の効果を算出する。別の技術を用いて、義歯アイテムの体積を所定の厚さのスライスに分割することができ、これは互いに重ねてレンダリングされる。図2は、例えば、人工歯210の表示またはレンダリングに用いることができるミリングブロックの長方形スライス214〜222を示す。かかる技術は、比較的基本的なビデオグラフィックカードを用いて使用することができる。ボリュームレンダリングアルゴリズムを使用することもできる。例えば、「Image−Based Volume Rendering with Opacity Light Fields」(http://www.sci.utah.edu/〜miriah/research/ibvrで入手可能、最終アクセスは、2009年9月25日)と題されたMeyerらによる刊行物、および、IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics,vol.6,no.3,pp.196−207,July−Sept.2000の「Spectral Volume Rendering」と題されたNoordmansらによる刊行物は、用いることができる適当なボリュームレンダリングアルゴリズムの例について記載しており、これらは両方とも全体として参照して本明細書に組み込まれる。ボリュームレンダリングアルゴリズムは、演算量が多い場合がある。
【0042】
ステップS126で、1つ以上の合格基準(例、義歯アイテムの美的特性)が満たされるかどうかの指示を受信する。例えば、義歯アイテムのシミュレートされた美的特性をコンピュータモニター上に表示することができ、オペレータは、キーボードまたはマウスなどの入力装置を用いて、シミュレートされた美的特性が許容可能であるかどうかを示すことができる。あるいは、許容性は、所定の合格基準に基づいて自動的に判断することができる。一例として、患者の歯および歯肉の美的特性を表わすデータと、義歯アイテムの美的特性を表わすデータとを相関させて、合格基準が満たされたかどうか判断することができる。
【0043】
義歯アイテムの1つ以上の合格基準を満たさないと判断された場合、ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の特定の位置決めが合格基準を満たすと判断されるまで、ステップS122〜ステップS126を繰り返すことができる。例えば、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータをステップS122で変更するため、オペレータは、入力装置を用いて、選択されたミリングブロックの表示体積内の義歯アイテムの表示体積を回転、および/または、変換することができる。デンタルCAD/CAMシステムによって歯の修復プロセスを行う場合、マルチプルビューを支援することができ、オペレータは、例えば、ラジオボタンを用いて、デンタルCAD/CAMシステムの表示装置上に表示させる種々の特徴(例、歯の残根または周囲の歯)を選択あるいは非選択することができる。
【0044】
ステップS126で、義歯アイテムと関連する合格基準を満たすと判断された場合、選択されたミリングブロックと、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータ(例、選択されたミリングブロックの表示体積内の義歯アイテムの表示体積をオペレータが位置決めした結果、ステップS122で自動的に生成されたもの)とを、ステップS128で、コンピュータメモリ装置に記憶し、および/または、転送先に送る。例えば、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータと、選択されたミリングブロックとを含むファイルは、ネットワークを通じて別のコンピュータ(例、フライス盤のコンピュータ、または他のものなど)に送信することができ、および/または、選択されたミリングブロックを表わすデータをフライス盤が配置されている所の電子メールアドレスに送信することができる。あるいは、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータと、選択されたミリングブロックとを、通信バスを通じて、フライス機能を行うサブシステム(例、コンピュータ化されたフライス装置734)に送信することができ、1つ以上のコンベヤベルトおよびロボットアームなどの機械化サブシステムを用いて、フライス機能を行うサブシステムに選択されたミリングブロックを送達することができる。
【0045】
ステップS130で、フライス盤は、ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータを用いて、ミリングブロックをフライス加工する切断アームを制御し、ステップS110で特定された構造特性(例、寸法など)と、ステップS120および/またはステップS124でシミュレートした美的特性(例、漸次的な移行の色合い)とを有する義歯アイテムを形成する。プロセスは、ステップS132で終了する。
【0046】
図3は、例示実施形態による、義歯アイテムを設計する反復プロセスを示す。プロセスは、ステップS300で開始する。ステップS302で、設計パラメータを表わす構造特性データを受信する。例えば、本実施形態に従って構築され、動作するデンタルCAD/CAMシステムのオペレータが入力装置を用いて、作成する義歯アイテムのサイズ、および/または、寸法を入力する。さらに、入力装置を用いて、オペレータは、義歯アイテムの咬み合わせ、および/または、接触点を特定することができる。ステップS304で、デモグラフィックデータを受信する。例えば、オペレータは、作成される義歯アイテム(例、キャップ、クラウン、またはブリッジ)が取り付けられる歯に対応する歯数を入力することができる。
【0047】
ステップS306で、特定のミリングブロックが、ステップS302およびS304で受信したデータに基づいて推奨される。オペレータが、推奨されたミリングブロックに納得すると、オペレータは、ステップS308で、推奨されたミリングブロックを確認することができる。オペレータは、例えば、ステップS308で、利用可能なミリングブロックのリストから別のミリングブロックを選択することもできる。
【0048】
ステップS310で、選択されたミリングブロックの1つ以上のパラメータを表わすデータを受信する。例えば、選択されたミリングブロックが形成されるセラミック材料の引張り強度の1つ以上の値、および/または、ミリングブロックの構造的および/または美的特性に関する他の種類の値を表わすデータは、データベースから検索することができる。ステップS312で、ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータが生成され、少なくとも部分的に、ステップS302で受信した設計パラメータデータと、ステップS304で受信したデモグラフィックデータと、およびステップS310で受信したミリングブロックパラメータデータとに基づいてオペレータに推奨される。ステップS314で、デンタルCAD/CAMシステムは、ステップS312で生成された位置決めデータを用いて、ミリングブロック内の義歯アイテムのシミュレーション画像を表わすデータを生成し、表示する。例えば、ステップS314で、デンタルCAD/CAMシステムは、図4に示すように、ミリングブロック404の体積内の義歯アイテム402の体積を表示することができる。
【0049】
ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積を表わす現在の位置決めデータを用いて義歯アイテムをミリングブロックからフライス加工すると、得られた義歯アイテムは特定の美的特性を有する。これらの美的特性が許容可能であるかどうか判断するため、ステップS314で、得られた義歯アイテムの三次元オーバーレイのシミュレーション画像を表わすデータを生成し、表示することができる。三次元オーバーレイのシミュレーション画像を表わすデータは、ミリングブロック、得られた義歯アイテム、義歯アイテムが取り付けられる歯の残根、および/または、周囲の歯を表わすデータを含み得る。
【0050】
さらに、デンタルCAD/CAMシステムは、例えば、図5に示すように、患者の口内の周囲の歯504と506の間に取り付けた人工歯502を表わすデータを含む三次元オーバーレイのシミュレーション画像を表わすデータを生成し、表示することができる。デンタルCAD/CAMシステムは、シミュレーション画像606〜612を表わすデータを(オペレータ入力有りまたは無し)で生成し、(オペレータ入力有りまたは無し)で表示することもでき、それぞれは、例えば、図6に示すように、異なる照明条件のシミュレーションに対応することができる。一例において、照明条件は、シーンのボリュームレンダリング中にシミュレーションした光の境界条件によって決定することができる。例えば、照明条件は、(歯の後側から、あるいは、歯の前側から)歯を照明する光源を用いて決定することができる。当然のことながら、これらの手順は、オペレータ入力有りまたは無しで自動的に行うこともできる。
【0051】
ステップS314で、得られた義歯アイテムのシミュレーション画像または三次元レンダリングを表わす表示データを生成し、コンピュータモニター上に表示することができる。ステップS316で、オペレータは、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積を表わす位置決めデータを変更し、ステップS122を参照しながら上述したものと同様の方法で義歯アイテムの美的特性を変えることができる。
【0052】
ステップS318で、義歯アイテムの美的特性を表わすデータを含む、1つ以上のシミュレーション画像を表わすデータを生成し、デンタルCAD/CAMシステムの表示装置上に表示またはレンダリングすることができる。ステップS320で、異なるミリングブロックを選択するかどうかの指示を受信する。例えば、デンタルCAD/CAMシステムのオペレータは、キーボードまたはマウスなどの入力装置を用いて、異なるミリングブロックが必要であるかどうか示すことができる。異なるミリングブロックを選択するという指示をステップS320で受信した場合、異なるミリングブロックをもはや必要としなくなるまでステップS308〜ステップS318を繰り返すことができる。
【0053】
一方、異なるミリングブロックを選択しないという指示をステップS320で受信した場合、義歯アイテムの美的特性のシミュレーションが許容可能であるかどうかの指示をステップS322で受信する。例えば、義歯アイテムの美的特性は、表示装置上に表示することができ、オペレータは、キーボードまたはマウスなどの入力装置を用いて、美的特性のシミュレーションが許容可能であるかどうか示すことができる。あるいは、許容性は、所定の合格基準に基づいて自動的に判断することができる。
【0054】
ステップS322で、義歯アイテムの美的特性のシミュレーションが許容可能ではないと判断された場合、特定のミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の特定の位置決めが、許容可能な美的特性のシミュレーションを生成すると判断されるまでステップS316〜ステップS320を繰り返すことができる。ステップS322で、義歯アイテムの美的特性のシミュレーションが許容可能であると判断された場合、ステップS324で、選択されたミリングブロックと、選択されたミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積の位置決めを表わすデータをステップS128およびS130に対して上述したように出力し、および/または、フライス加工することができる。
【0055】
プロセスはステップS326で終了する。例示実施形態において、フライス盤は、ミリングブロックの体積内の義歯アイテムの体積を表わすデータを用いて、フライス盤の切断アームを制御し、ミリングブロックをフライス加工して、ステップS302で特定された構造特性(例、寸法など)と、ステップS318および/またはS314でシミュレーションした美的特性(例、漸次的な移行の色合い)とを有する義歯アイテムをステップS326で生成することができる。
【0056】
本明細書に記載の例示態様は、ハードウェア、ソフトウェア、またはその組み合わせで実施することができ、かつ、1つ以上のコンピュータシステムまたは他の処理システムで実施することができる。本明細書に記載の作業の一部または全部を行うのに有用な機械としては、汎用デジタルコンピュータまたは同様装置が挙げられる。
【0057】
実際には、1つの例示実施形態は、本明細書に記載の機能を実行するように装備されている1つ以上のコンピュータシステムを用いる。かかるコンピュータシステム700の一例を図7に示す。
【0058】
コンピュータシステム700は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ704を備える。プロセッサ704は、通信インフラ706(例、通信バス、クロスオーバーバーデバイス、またはネットワーク)に接続される。例示のコンピュータシステム700について種々のソフトウェア実施形態を本明細書で説明しているが、この説明を閲読することによって、当該技術分野(単数または複数)の当業者には、他のコンピュータシステムおよび/またはアーキテクチャを用いて本発明を実施する方法が明らかになるであろう。
【0059】
コンピュータシステム700は、ビデオグラフィック、テキスト、および他のデータを通信インフラ706から(またはフレームバッファ(図示せず)から)転送し、表示装置(または他の出力装置)730上に表示させる表示インタフェース(または他の出力インタフェース)702も備える。
【0060】
さらに、コンピュータシステム700は、メインメモリ708(ランダムアクセスメモリ(「RAM」)が好ましい)を備え、さらに、二次メモリ710を備えてもよい。二次メモリ710は、例えば、ハードディスクドライブ712、および/または、リムーバブル記憶ドライブ714(例、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなど)を含んでもよい。リムーバブル記憶ドライブ714は、周知の方法で、リムーバブル記憶ユニット718に読み書きする。リムーバブル記憶ユニット718は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、光ディスクなどであってもよく、これは、リムーバブル記憶ドライブ714によって読み書きされる。リムーバブル記憶ユニット718は、コンピュータソフトウェア命令、および/または、データを内部に記憶したコンピュータ使用可能な記憶媒体を備えてもよい。
【0061】
別の実施形態では、二次メモリ710は、コンピュータシステム700にロードされるコンピュータ実行可能なプログラムまたは他の命令を記憶する他のコンピュータ読取可能なメディアを備えてもよい。かかるデバイスは、リムーバブル記憶ユニット722およびインタフェース720(例、ビデオゲームシステムで用いるものと同様のプログラムカートリッジおよびカートリッジインタフェース)と;リムーバブルメモリチップ(例、消去プログラム可能読取り専用メモリ(「EPROM」)またはプログラム可能読取り専用メモリ(「PROM」))および関連メモリソケットと;リムーバブル記憶ユニット722からコンピュータシステム700にソフトウェアおよびデータを転送可能な他のリムーバブル記憶ユニット722およびインタフェース720とを備えてもよい。
【0062】
コンピュータシステム700は、コンピュータシステム700および外部デバイス(図示せず)間でソフトウェアおよびデータを転送可能な通信インタフェース724を備えてもよい。通信インタフェース724の例としては、モデム、ネットワークインタフェース(例、イーサネット(登録商標)カード)、通信ポート(例、ユニバーサル・シリアル・バス(「USB」)ポートまたはFireWire(登録商標)ポート)、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(「PCMCIA」)インタフェースなどが挙げられる。通信インタフェース724を介して転送されるソフトウェアおよびデータは、信号形式であり、これは、通信インタフェース724によって送信および/または受信が可能な電気信号、電磁信号、光信号、または他のタイプの信号であり得る。信号は、通信パス726(例、チャネル)を介して通信インタフェース724に提供される。通信パス726は、信号を運び、ワイヤもしくはケーブル、ファイバーオプティクス、電話回線、セルリンク、無線周波数(「RF」)リンクなどを用いて実施することができる。
【0063】
コンピュータシステム700は、デジタルカメラユニット732によって捕捉される画像を表わすデータを生成するデジタルカメラユニット732を備えてもよい(例、上述のステップS104を参照されたい)。デジタルカメラユニット732によって生成されたデータは、プロセッサ704によって処理され、および/または、二次メモリ710に記憶することができ、例えば、本明細書に記載の1つ以上の方法で用いることができる。さらに、コンピュータシステム700は、切断アームを制御し、受信命令に基づいてミリングブロックをフライス加工するフライス装置734(コンピュータ化されていてもいなくてもよい)を備えてもよい。
【0064】
本明細書で使用する「コンピュータプログラム媒体」および「コンピュータ使用可能な媒体」という字句は、一般に、リムーバブル記憶ドライブ714と一緒に使用されるリムーバブル記憶ユニット718のことを言うのに用いることができ、例えば、ハードディスクドライブ712に取り付けられたハードディスクである。これらのコンピュータプログラム製品は、ソフトウェアをコンピュータシステム700に提供する。本発明は、1つ以上のかかるコンピュータプログラム製品として実施もしくは具現化することができる。
【0065】
コンピュータプログラム(「コンピュータ制御ロジック」とも呼ばれる)は、メインメモリ708および/または二次メモリ710に記憶される。コンピュータプログラムは、通信インタフェース724を介しても受信することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータプロセッサ704によって実行された場合に、本明細書に記載され、かつ、例えば、図1A、図1B、および図3に示す手順をコンピュータシステム700が行うことが可能な命令を含む。従って、かかるコンピュータプログラムは、コンピュータシステム700全体を制御することができる。
【0066】
ソフトウェアを用いて実施される本明細書に記載の例示実施形態において、ソフトウェアは、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記憶することができ、リムーバブル記憶ドライブ714、ハードドライブ712、または通信インタフェース724を用いてコンピュータシステム700にロードすることができる。プロセッサ704によって実行された場合、制御ロジック(ソフトウェア)によりプロセッサ704に本明細書に記載の手順を行わせる。
【0067】
ハードウェアを用いて主に実施される本明細書に記載の例示実施形態において、ハードウェアは、例えば、特定用途向け集積回路(「ASIC」)などのハードウェアコンポーネントである。本明細書に記載の機能を行うようにかかるハードウェア構成を実施することは、本明細書に鑑みて当該技術分野(単数または複数)の当業者には明らかであろう。
【0068】
あるいは、本明細書に記載の例示実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェア両方の組み合わせを用いて実施することができる。
【0069】
本明細書に鑑みて当該技術分野(単数または複数)の当業者が理解するように、本明細書に記載の例示態様は、単一のコンピュータを用いて、もしくは、各々が上述した種々の機能を行うための制御ロジックでプログラムされた複数のコンピュータを備えるコンピュータシステムを用いて実施することができる。
【0070】
上述の種々の実施形態は、単なる例として説明しており、限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱せずに形態および細部に対して種々の変形(例、異なるハードウェア、通信プロトコルなど)を施すことが可能であることが、当該技術分野(単数または複数)の当業者には明らかであろう。従って、本発明は、上述の例示実施形態のいずれにも限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物のみに従って定義されるべきである。
【0071】
前述の説明は、候補義歯アイテムを表わすデータを分析し、このデータを用いて形成されて得られた義歯アイテムが許容可能な美的および構造特性を有しているかどうか判断する例示実施形態に関連させて説明した。しかしながら、本開示および本発明は、その機能にのみ限定するものではない。実際、ミリングブロックから義歯アイテムを直接形成することも本発明の範囲内である。当業者であれば、本発明を鑑みて、仮にあったとしても、歯をもつ動物に対する義歯アイテムを設計し、評価し、形成するために上述の方法(単数または複数)の種々のステップをどのように適用するか分かるであろう。
【0072】
さらに、本明細書に記載の機能を強調する添付図面は、例示実施例として示されていることを理解すべきである。本発明のアーキテクチャは十分に柔軟性をもって設定可能であるため、図面に示す以外の方法で利用(かつ、ナビゲート)することができる。
【0073】
さらに、本明細書に記載の例示実施形態は、義歯アイテムの分析、および/または、シミュレーションに限定されない。本明細書に記載の例示実施形態は、材料のブロックから形成することができる実質的に任意のアイテムの分析、および/または、シミュレーションに使用することができる。さらに、オペレータが本明細書の手順のある機能を行うことに関連させて本明細書で説明しているが、他の例において、手順はオペレータ入力無しで完全に自動的に行うことができることを理解すべきである。
【0074】
さらに、添付された要約書の目的は、米国特許商標庁、および、特許あるいは法律の用語および/または言い回しに精通していない一般人、特に、科学者、技師、および当該技術分野(単数または複数)の医師が、本明細書に開示の技術的主題の性質および本質について大雑把な調査から迅速に判断できるためのものである。要約書は、決して本発明の範囲を限定しようとするものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯アイテムを表わす義歯アイテムデータを評価するための方法であって、
前記義歯アイテムの三次元表面を表わす表面データを含む義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)を取得する工程と;
対応するミリングブロックの三次元体積を表わす体積データを含むミリングブロックデータ(404)を取得する工程と;
前記義歯アイテムと関連する1つ以上の所定の特性が前記義歯アイテムデータおよび前記ミリングブロックデータに基づいた所定の合格基準を満たすかどうか判断する工程(S126)と、
を含み、
前記判断工程が、コンピュータプロセッサ(704)によって少なくとも部分的に行われる方法。
【請求項2】
1つ以上の歯表面に対応する三次元表面を表わす表面データを含む歯型データ(504、506)を取得する工程(S106)と;
前記歯型データに基づいて、前記義歯アイテムデータに含まれる前記表面データ(502)を生成する工程(S108)と、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の合格基準(S116)が、前記義歯アイテム(402、502、602)の物理的構造の要件を含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記義歯アイテムデータおよび前記ミリングブロックデータ(404)に基づいて前記義歯アイテム(402、502、602)の構造解析を行う工程(S114)をさらに含み、
前記ミリングブロックデータ(404)が、前記ミリングブロックの1つ以上の構造特性を表わす構造特性データを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記義歯アイテム(402、502、602)と関連する前記1つ以上の所定の特性が、応力分布を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記義歯アイテムデータ(402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)を出力する工程をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記義歯アイテムデータ(402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)に基づいて物理的義歯アイテムをミリングする工程(S130)をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ミリングブロック(404)の体積内に前記義歯アイテム(402、502、602)の体積の位置決めを表わす位置決めデータを生成する工程(S118)と;
前記義歯アイテムデータ(402、502、602)、前記ミリングブロックデータ(404)、および前記位置決めデータに基づいて、前記義歯アイテム(202〜212、402、502)の1つ以上の美的特性を表わす美的特性データを生成する工程(S120)と、
をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の美的特性が、前記義歯アイテム(202〜212)の少なくとも一部の色相、彩度、クロミナンス、および半透明性を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記位置決めデータが、形状相関アルゴリズムまたは形状誤差最小化アルゴリズムに基づいて生成される請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
義歯アイテム(202〜212)を表わす義歯アイテムデータを評価するためのシステムであって、
前記義歯アイテムの三次元表面を表わす表面データを含む義歯アイテムデータ(402、502、602、202〜212)と、ミリングブロックの三次元体積を表わす体積データを含むミリングブロックデータ(404)とを記憶するための少なくとも1つの記憶ユニット(708、710、712、714、718)と;
前記義歯アイテム(202〜212、402、502、602)と関連する1つ以上の所定の特性が、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)に基づいて所定の合格基準(S322)を満たすかどうかを判断するプロセッサ(704)と、
を備えるシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの記憶ユニット(708、710、712、714、718)が、1つ以上の歯表面に対応する三次元体積を表わす表面データを含む歯型データ(504、506)を記憶し、
前記プロセッサ(704)が、前記歯型データ(504、506)を用いて、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)に含まれる前記表面データを生成する請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記所定の合格基準が、前記義歯アイテムの物理的構造の要件を含み、
前記プロセッサ(704)が、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)に基づいて、前記義歯アイテムの構造解析(S114)を行い、
前記ミリングブロックデータ(404)が、前記ミリングブロックの1つ以上の構造特性を表わす構造特性データを含み、
前記義歯アイテムと関連する前記1つ以上の所定の特性が、応力分布を含み、
前記プロセッサ(704)が、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)を出力する請求項11または請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサ(704)が、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)および前記ミリングブロックデータ(404)に基づいて、物理的義歯アイテムをフライス加工させ、
前記プロセッサが、前記ミリングブロック(404)の体積内に前記義歯アイテム(202〜212、402、502、602)の体積の位置決めを表わす位置決めデータ(S122、S312)を生成し;
前記プロセッサ(704)が、前記義歯アイテムデータ(202〜212、402、502、602)、前記ミリングブロックデータ(404)、および前記位置決めデータに基づいて、前記義歯アイテムの1つ以上の美的特性を表わす美的特性データを生成する請求項11〜16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の美的特性が、前記義歯アイテムの少なくとも一部の色相、彩度、クロミナンス、および半透明性を含み、前記位置決めデータが、形状相関アルゴリズムまたは形状誤差最小化アルゴリズムに基づいて生成(S122、S312、S316)される請求項14に記載のシステム。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−110420(P2011−110420A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244984(P2010−244984)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(500058187)シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (32)