説明

耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法

【課題】脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドより成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させて成るポリアミド樹脂組成物の耐候性を向上させる。
【解決手段】カーボンブラックを予め半芳香族ポリアミドとマスターバッチ化し、それと脂肪族ポリアミドとを混練することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。好ましい脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂との配合割合は、脂肪族ポリアミド樹脂100重量部に対し半芳香族ポリアミド樹脂が2〜20重量部であり、カーボンブラックの好ましい配合量は、脂肪族ポリアミド樹脂と半芳香族ポリアミド樹脂の合計100重量部に対し0.05〜10重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観が良くかつ耐候性に優れた成形品を与えるポリアミド樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は成形性、機械的特性、耐薬品性などに優れているので、成形品として種々の分野で広く用いられている。成形用のポリアミド樹脂には、脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、ラクタムなどを原料とする脂肪族ポリアミドと、ジアミン又はジカルボン酸に芳香族化合物を用いた半芳香族ポリアミドとがあるが、最も一般に用いられているのは脂肪族ポリアミドである。然しながら、脂肪族ポリアミドは結晶化速度が速いので、外観を重視する用途には脂肪族ポリアミドに半芳香族ポリアミドを併用することが多い。これにより結晶化速度が遅くなり、成形品の外観が良好となる(特許文献1〜4)。然しながら、半芳香族ポリアミドの併用は、成形品の耐候性を低下させ、使用中に成形品の外観が悪化するという問題がある。
【0003】
ポリアミド樹脂はカーボンブラックで黒色に着色して用いられることが多い。そして、脂肪族ポリアミドに半芳香族ポリアミドを併用したものにカーボンブラックを含有させると、半芳香族ポリアミドの併用による耐候性の低下が緩和される。しかし、その程度は十分ではなく、使用中における外観の悪化は依然として大きな問題である。この問題を解決する方法としては、例えば、脂肪族ポリアミドの粘度を低くしたり減粘剤を配合したりして流動性を向上させ、初期外観を良くすることが知られている。また、これに加えて、耐候性改良剤を配合して耐候性を向上させることも知られている(特許文献5)。しかしながらこの方法はポリアミド樹脂の耐衝撃性を低下させ、成形品にポリアミド樹脂本来の靭性を発現させることができないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平2−140265号公報
【特許文献2】特開平3−9952号公報
【特許文献3】特開平3−269056号公報
【特許文献4】特開平4−202358号公報
【特許文献5】特開2001−98149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドより成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有して成り、外観が良好でかつ耐候性に優れた成形品を与えるポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドより成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させて成るポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドに含有させた樹脂組成物として脂肪族ポリアミドと混練することにより、外観が良好でかつ耐候性に優れた成形品を与えるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドとのマスターバッチとしておき、これを脂肪族ポリアミドに配合して混練するという簡単な手段で、耐候性の向上した成形品を与えるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<脂肪族ポリアミド>
脂肪族ポリアミドは、周知のように、ω−アミノ酸若しくはそのラクタム、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミンなどを原料とし、これらを重(縮)合させることにより得られる。ω−アミノ酸としては、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などが挙げられる。ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドンなどが挙げられる。
【0009】
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸などが挙げられる。
ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチル)シクロヘキシルメタンなどが挙げられる。
【0010】
脂肪族ポリアミドとして一般に用いられているのは、ε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸を主原料とするポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩を主原料とするポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩とε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸とを主原料とするポリアミド6/66共重合体であるが、本発明でもこれらを用いるのが好ましい。
【0011】
<半芳香族ポリアミド>
半芳香族ポリアミドは、上記の脂肪族ポリアミドにおいて、原料のジアミン又はジカルボン酸を芳香族ジアミン又は芳香族ジカルボン酸で置換したものである。置換は原料のジアミン又はジカルボン酸の全てであっても、一部であってもよい。通常は芳香族成分が全成分(ジアミン成分、ジカルボン酸成分及びアミノカルボン酸成分)の30〜50モル%、好ましくは30〜45モル%となるように置換する。芳香族成分が30モル%未満のものは、結晶化速度を遅くする作用に乏しい。
【0012】
芳香族ジアミンとしては、通常はメタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミンが用いられる。また芳香族ジカルボン酸としては、通常はテレフタル酸、イソフタル酸が用いられる。芳香族ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の塩を主原料とするポリアミドMXD6、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンとアジピン酸を主原料とするポリアミドMP6、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の塩を主原料とするポリアミド6I、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩の共重合体(ポリアミド66/6I)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との塩の共重合体(ポリアミド66/6T)、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸との塩/ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との塩の共重合体(ポリアミド6I/6T)、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、イソフタル酸、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン及びラウロラクタムの共重合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の塩を主原料とするポリアミド等が挙げられる。
本発明においては、半芳香族ポリアミドが非晶性であることが好ましい。非晶性ポリアミドとしては、ポリアミド6I/6T、イソフタル酸、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ラウロラクタムの共重合体等が挙げられる。非晶性ポリアミドのガラス転移温度は100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。流動性の点から190℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。なお、本発明において非晶性とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融解熱量が1cal/gポリマー未満のものをいう。
【0013】
半芳香族ポリアミドは、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH/COOH])が0.6以下であるものが好ましく、0.48以下であるものがより好ましい。この比が0.6よりも大きいものは耐候性が劣り、使用中に変色し易い傾向がある。末端アミノ基濃度は、ポリアミド1gをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.02Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド1gをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
また、脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドは、一般に成形に用いられているものであればよい。通常は、96%硫酸中、濃度1重量%、温度23℃で測定した相対粘度で、1.9〜4、好ましくは2.0〜3.8のものを用いる。
【0014】
脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドの併用比率は、脂肪族ポリアミド100重量部に対して半芳香族ポリアミド2〜20重量部である。半芳香族ポリアミドが2重量部未満では、成形に際し樹脂組成物の結晶化を遅くして成形品の外観を向上させる効果が乏しい。逆に20重量部を超えると、成形に際し金型内での冷却時間を十分に取らなければ優れた外観を有する成形品を得るのが困難となったり、成形品の金型からの離型性が悪くなったりして、生産性が低下する傾向がある。脂肪族ポリアミド100重量部に対する半芳香族ポリアミドの併用比率は3〜15重量部、特に4〜10重量部が好ましい。
【0015】
カーボンブラックとしては、一般にポリアミドの着色、導電性付与に用いられているものを用いればよい。カーボンブラックは平均一次粒子径の小さいほうが耐候性の良い樹脂組成物を与えるので、平均一次粒子径の小さいもの、特に平均一次粒子径が20μm以下のものを用いるのが好ましい。カーボンブラックの平均一次粒子径は、以下に示す方法で測定することができる。カーボンブラックをクロロホルムに投入し200KHzの超音波を20分間照射し分散させた後、分散試料を支持膜に固定する。これを透過型電子顕微鏡で写真撮影し、写真上のカーボンブラックの直径と写真の拡大倍率により粒子径を計算する。この操作を約1500回にわたって実施し、それらの値の算術平均により求めることができる。
樹脂組成物に占めるカーボンブラックの量は任意であるが、ポリアミド樹脂(本樹脂組成物の脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドの合計量)100重量部に対し少なくとも0.05重量部は含有させないと、所望の効果を発現させることは困難である。通常はポリアミド樹脂100重量部に対して0.1重量部以上、特に0.5重量部以上含有させる。逆に含有量を多くしすぎると、樹脂組成物から得られる成形品の剛性その他の機械的強度が低下するので、通常は10重量部までとすべきである。カーボンブラックの含有量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し8重量部以下、特に5重量部以下が好ましい。
【0016】
本発明では、カーボンブラックは半芳香族ポリアミドとの組成物として脂肪族ポリアミドと混練する。即ち予めカーボンブラックと半芳香族ポリアミドとをよく溶融混練しておくことにより、得られるポリアミド樹脂組成物の耐候性を向上させることができる。
この脂肪族ポリアミドと半芳香族ポリアミドから成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させると耐候性が向上するのは、カーボンブラックが半芳香族ポリアミドを光線から遮蔽するためと考えられる。そして本発明によれば、このカーボンブラックによる光線遮蔽効果がより有効に機能するため耐光性が更に向上すると考えられる。この効果の発現は、カーボンブラックも半芳香族ポリアミドも、共に炭素6員環構造を有しているためであると考えられる。炭素6員環構造を有する両者を溶融混練すると、この環構造相互の親和性によりカーボンブラックは半芳香族ポリアミドに強く配位する。このような組成物をマスターバッチとして得、次いで、この樹脂組成物(マスターバッチ)を脂肪族ポリアミドと混練する。このような手法でカーボンブラックと半芳香族ポリアミドとの樹脂組成物(マスターバッチ)を脂肪族ポリアミドに溶融混練すると、カーボンブラックは脂肪族ポリアミド中にあっても半芳香族ポリアミドの近くに多く存在することになり、半芳香族ポリアミドを光線から保護し、耐候性を向上させるものと考えられる。
【0017】
カーボンブラックと半芳香族ポリアミドとの混練に際しては、通常は樹脂組成物の製造に用いるカーボンブラックの全量を半芳香族ポリアミドと混練する。半芳香族ポリアミドも樹脂組成物の製造に用いる全量を用いるのが好ましいが、半芳香族ポリアミドの量が多い場合などには必ずしも全量でなくてもよい。通常、樹脂組成物中のカーボンブラックの含有量が15〜40重量%、好ましくは20〜30重量%となるように調整し、混練することが好ましい。なお、半芳香族ポリアミドとカーボンブラックとを均一に混練するのが困難な場合には、樹脂組成物の製造に用いる脂肪族ポリアミドの一部を混合、併用すればよい。例えば、半芳香族ポリアミドが結晶性の場合には、溶融張力が低くストランドが引き難く混練が困難となる場合があるため、このような場合は脂肪族ポリアミドを少量併用することにより、混練を容易とすることができる。
【0018】
カーボンブラックと半芳香族ポリアミドとの混練物は、通常の方法で得られる。即ち、所定量のカーボンブラックと半芳香族ポリアミドを混合装置でよく混合し、次いで混練装置を用いて溶融混練する。混練後は、ストランド状に押出して、冷却、切断工程を経てペレット化する。このようにして、カーボンブラックを高濃度に含有するマスターバッチ(マスターバッチペレット)を得ればよい。また、このマスターバッチと脂肪族ポリアミドとの混練も、マスターバッチの製造と同様の混練方法で行えばよい。
混合装置及び混練装置としては、樹脂組成物の製造で常用されているものを用いればよい。例えば、混合装置としてはヘンシュルミキサー、リボンブレンダー、タンブラーなどを用いる。混練装置としては通常は単軸又は2軸の押出機を用いる
【0019】
また、カーボンブラックと半芳香族ポリアミドとの組成物を脂肪族ポリアミドと混練するに際しては、ポリアミド樹脂組成物に所望の物性に応じて、種々の添加剤やその他の熱可塑性樹脂を加えてもよい。代表的な添加剤としては、難燃剤(例えば、有機ハロゲン系化合物、アミノトリアジン系化合物、ホスフィン酸系化合物など)、安定剤(例えば銅塩、アルカリ(土類)金属ハロゲン化物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物など)、離型剤(例えば、長鎖カルボン酸金属塩、カルボン酸アミド系ワックスなど)、強化材(例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、マイカ、タルク、カオリン、炭素繊維など)が挙げられる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、主たるポリアミド樹脂の耐薬品性および摺動性改良の観点から、変性ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、PPS樹脂などが挙げられる。また、衝撃性改良の観点から、PPE樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などが挙げられる。なお、これらの添加剤やその他の熱可塑性樹脂のあるものは、カーボンブラックと半芳香族ポリアミドとの混練の際に添加してもよい。
【実施例】
【0020】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお用いた原料及び評価方法を下記に示す。
<原料>
脂肪族ポリアミド−1;ポリアミド6、商品名「ノバミッド 1010J」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、相対粘度 2.5
脂肪族ポリアミド−2;ポリアミド66、商品名「Zytel FE3218」、Dupont社製、相対粘度 2.8
脂肪族ポリアミド−3;ポリアミド6/66、商品名「ノバミッド 2010J」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、相対粘度 2.5
【0021】
半芳香族ポリアミド−1;イソフタル酸、テレフタル酸(イソフタル酸:テレフタル酸(モル比)=2:1)とヘキサメチレンジアミンとの重縮合物で末端カルボキシル基濃度160μeq/g、末端アミノ基濃度22μeq/g、[NH]/[COOH]=22/160=0.14、ガラス転移温度140℃の非晶性半芳香族ポリアミドである。
半芳香族ポリアミド−2;メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合物で末端カルボキシル基濃度80μeq/g、末端アミノ基濃度40μeq/、[NH]/[COOH]=40/80=0.50、相対粘度2.2の結晶性半芳香族ポリアミドである。
【0022】
マスターバッチ−1;ポリアミド6(末端カルボキシル基濃度71μeq/g、末端アミノ基濃度40μeq/g、[NH]/[COOH]=40/71=0.56、相対粘度 2.5)とカーボンブラックとの80:20(重量比)の組成物
マスターバッチ−2;半芳香族ポリアミドとカーボンブラックとの80:20(重量比)の組成物。この半芳香族ポリアミドは、イソフタル酸、テレフタル酸(イソフタル酸:テレフタル酸(モル比)=2:1)とヘキサメチレンジアミンとの重縮合物で、末端カルボキシル基濃度160μeq/g、末端アミノ基濃度22μeq/g、[NH]/[COOH]=22/160=0.14、ガラス転移温度140℃の非晶性半芳香族ポリアミドである。
【0023】
マスターバッチ−3;半芳香族ポリアミドとカーボンブラックとの80:20(重量比)の組成物。この半芳香族ポリアミドは、メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合物で、末端カルボキシル基濃度80μeq/g、末端アミノ基濃度40μeq/g、[NH]/[COOH]=40/80=0.50、相対粘度 2.14の結晶性半芳香族ポリアミドである。
マスターバッチ−4;半芳香族ポリアミドとカーボンブラックとの80:20(重量比)組成物。この半芳香族ポリアミドは、メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合物で、末端カルボキシル基濃度64μeq/g、末端アミノ基濃度16μeq/g、[NH]/[COOH]=16/64=0.25、相対粘度2.65の結晶性半芳香族ポリアミドである。
マスターバッチ−5;TR−55とカーボンブラックとの80:20(重量比)組成物。TR−55はEMS社の製品で、イソフタル酸、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ラウロラクタムの共重合体で、ガラス転移温度160℃、相対粘度2.65の非晶性半芳香族ポリアミドである。
【0024】
ガラス繊維;商品名「CS03T249H」、日本電気硝子(株)製、平均繊維径10.5μm、平均繊維長3.5mm
カーボンブラック;商品名「#960」、三菱化学(株)製、平均一次粒子径16nm、DBP吸油量69cm/100g、pH7.5。なおマスターバッチ−1〜マスターバッチ−5の製造にもこのカーボンブラックを用いた。
塩化銅;試薬特級、和光純薬工業(株)製
ヨウ化カリウム;試薬特級、和光純薬工業(株)製
【0025】
<評価方法>
表面外観の評価:
大きさ100mm×150mm、高さ50mmで厚さ2mmの箱形成形品を、樹脂温度275℃、金型温度90℃、射出速度50mm/sec、射出保圧時間12秒、冷却時間20秒で射出成形し、成形時の離型性及び成形品外観を下記の4段階で評価した。なお表面荒れは肉眼観察により評価した。
◎;離型性が良好で、表面荒れが殆ど見られない
○;離型性が良好であるが、表面荒れがやや認められる
△;離型性がやや悪く、表面荒れが認められる
×;離型性が悪く、表面荒れが著しい
【0026】
耐候性試験:
鏡面砥ぎ#3000番仕上げの金型を用いて、70mm×70mm×3mmの鏡面角板を、樹脂温度275℃、金型温度90℃、射出速度30mm/sec、射出保圧時間12秒、冷却時間20秒で射出成形した。
[カーボンアーク試験]
この鏡面角板を用いて、ISO4898−2規格に従って、下記の条件でカーボンアーク試験を行った。
槽内温度;65±5℃
槽内湿度;50±5RH%
水噴霧時間;18分
水噴霧停止時間;102分
試験時間;1200時間
【0027】
[色差ΔEの測定]
上記カーボンアーク試験前後の鏡面角板について、JIS Z8722規格の方法に準じて反射法によりカーボンアーク試験前後の色相差(ΔE)を測定した。測定にはスガ試験機(株)製の多光源分光測色計(MSC−5N−GV5)を用いた。光源系はd/8条件、光束はΦ15mmの条件で行った。ΔEの値が小さいほど耐候性に優れている。
[L値の測定]
上記カーボンアーク試験後の鏡面角板について、スガ試験機(株)製の多光源分光測色計(MSC−5N−GV5)を用いて測定した。光源系はd/8条件、光束はΦ15mmの条件で行った。数値が小さいほど黒色度が高い。
【0028】
マスターバッチ−1〜マスターバッチ−5:
各種ポリアミドとカーボンブラックとを重量比で80:20となるように秤量し、タンブラーでよく混合した後、ベント付き2軸押出機(東芝機械(株)製、「TEM35B」、設定シリンダー温度275℃、スクリュー回転数300rpm)にメインホッパーより供給し溶融混練した。混練物はストランド状に押出して冷却し、切断してペレットとした。
【0029】
実施例1〜6及び比較例1〜6:
表−1に示す配合比(重量比)で原料を配合した。ガラス繊維以外はタンブラーでよく混合した後、ベント付き2軸押出機(東芝機械(株)製、「TEM35B」、設定シリンダー温度275℃、スクリュー回転数300rpm)にメインホッパーより供給し、ガラス繊維はサイドフイード口から供給して、溶融混練した。混練物はストランド状に押出して冷却し、切断してペレットとした。このペレットを用いて上記の試験を行った。結果を表−1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果より、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドとのマスターバッチとしておき、これを脂肪族ポリアミドに配合して混練することにより、外観が良好でかつ耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド及び半芳香族ポリアミドより成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させて成るポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドに含有させた樹脂組成物として脂肪族ポリアミドと混練することを特徴とする、耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
脂肪族ポリアミド100重量部と半芳香族ポリアミド2〜20重量部より成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させて成るポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドに含有させた樹脂組成物として脂肪族ポリアミドと混練することを特徴とする、耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
脂肪族ポリアミド100重量部と半芳香族ポリアミド3〜15重量部より成るポリアミド樹脂にカーボンブラックを含有させて成るポリアミド樹脂組成物を製造するに際し、カーボンブラックを半芳香族ポリアミドに含有させた樹脂組成物として脂肪族ポリアミドと混練することを特徴とする、耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
半芳香族ポリアミドが、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比([NH]/[COOH])が0.6以下のものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
半芳香族ポリアミドが非晶性であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ポリアミド樹脂100重量部に対し、カーボンブラック0.05〜10重量部を含有させてなることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
カーボンブラックが、平均一次粒子径が20nm以下のものであることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
更に、無機強化材を含有することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−59366(P2010−59366A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228884(P2008−228884)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】