説明

耐候性試験装置

【課題】線状光源から複数の試料に対してむらなく光を照射することが可能な耐候性試験装置を提供する。
【解決手段】耐候性試験装置1は、メタルハライドランプ21と、メタルハライドランプ21の長手方向に沿ってメタルハライドランプ21に対向して配置された長手形状の試料設置面41とを有し、メタルハライドランプ21により試料設置面41に配置された試料に光を照射する構成を有し、メタルハライドランプ21の試料設置面41側に、試料設置面41から外れた方向にメタルハライドランプ21から放射された光を試料設置面41に向けて反射する下部反射板32が配置され、下部反射板32は、メタルハライドランプ21の端部側に位置して試料設置面41の中心よりも長手方向端部側に寄った領域に反射光を照射する第1の反射面と、第1の反射面が光を照射する領域よりも端の領域に反射光を照射する第2の反射面とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に光を照射して耐候性試験を行う耐候性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源の下方に試料を置いて光を照射し、光による劣化を試験する試験装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。このような試験装置では、光源からの光が無駄なく試料に当たるように、光源の近傍に反射板を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−271405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された構成のように、複数の試料を配置するスペースに対して1つ或いは少数の光源により光を照射する場合、試料毎に照射される光量のむらを生じる可能性がある。このような光量のむらは試験条件のばらつきの一因となるため、むらを抑えることが望まれる。しかしながら、従来の反射板等は、例えば特許文献1に記載されたように半円形状とすることで、試料から外れた方向に放射された光を試料に導くことを目的としており、複数の試料に対する光量のむらを解消するものではなかった。また、光量のむらを低減させるための手法として、反射板にエンボス加工を施して光を拡散させる方法や、多数の反射板を配置する方法が考えられたが、光量のむらの発生状態は、光源の形状等によって異なるので、単に拡散させたり多数の反射板を配置したりする方法や、反射板の形状を曲面にする等の方法では容易に解消できない。さらに、多数の反射板を用いる方法やエンボス加工を施す方法はコスト増を招くという問題もあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、線状光源から複数の試料に対してむらなく光を照射することが可能な耐候性試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の耐候性試験装置は、線状光源と、前記線状光源の長手方向に沿って前記線状光源に対向して配置された長手形状の試料設置面とを有し、前記線状光源により前記試料設置面に配置された試料に光を照射する耐候性試験装置において、前記線状光源の前記試料設置面側に、前記試料設置面から外れた方向に前記線状光源から放射された光を前記試料設置面に向けて反射する反射部材が配置され、前記反射部材は、前記線状光源の端部側に位置して前記試料設置面の中心よりも長手方向端部側に寄った領域に反射光を照射する第1の反射面と、前記第1の反射面が光を照射する領域よりも端の領域に反射光を照射する第2の反射面とを有すること、を特徴とする。
【0006】
また、本発明は、上記耐候性試験装置において、前記線状光源を挟んで前記試料設置面の反対側に、前記線状光源の長さ方向に延びる曲面によって前記線状光源から放射された光を、前記試料設置面の側端部を含む領域に照射する曲面反射部材が配置されたこと、を特徴とする。
【0007】
さらに、本発明は、上記耐候性試験装置において、前記第1および第2の反射面と、前記曲面反射部材が有する反射面とは平滑な鏡面で構成されたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線状光源によって長手形状の試料設置面に配置された複数の試料に対して光を照射する場合に、試料設置面における光量むらを抑え、複数の試料に均等に光を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る耐候性試験装置の構成を示す一部破断正面図である。
【図2】試料設置面とメタルハライドランプとの位置関係を示す概略平面図である。
【図3】反射板の構成を示す図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のP−P’断面図である。
【図4】反射光の概略分布を示す図であり、(A)は反射光の進路を示し、(B)は試料台における照射位置を示す。
【図5】反射光の概略分布を示す図であり、(A)は反射光の進路を示し、(B)は試料台における照射位置を示す。
【図6】反射光の概略分布を示す図であり、(A)は反射光の進路を示し、(B)は試料台における照射位置を示す。
【図7】反射光の概略分布を示す図であり、(A)は反射光の進路を示し、(B)は試料台における照射位置を示す。
【図8】試料設置面の幅方向における照度分布を示す図表である。
【図9】試料設置面の長さ方向における照度分布を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る耐候性試験装置1の構成を示す正面図であり、筐体10の一部を破断して内部を示している。
耐候性試験装置1の上部には光源収容室11が設けられ、この光源収容室11に、線状光源としてのメタルハライドランプ21を有する光源部2が配置されている。また、光源収容室11の下方には試験槽12が設けられ、試験槽12内には、試料4を載置する試料台40が設置されている。耐候性試験装置1は、光源部2によって試料台40に載置された試料4に紫外線を照射することにより、試料4の耐候性を試験する装置である。
【0011】
光源部2が備える試験用の紫外線放射光源としてのメタルハライドランプ21は、図示しない安定器から電力の供給を受けて、試験用の所定波長の紫外線を発する。メタルハライドランプ21には、冷却水が流れる水冷ジャケット22が設けられ、水冷ジャケット22とともに光源収容室11の天井に固定されている。水冷ジャケット22は、図1に一部破断面として示すように、外管22Aと内管22Bとの間に冷却水が流れる二重管構造を有し、この外管22Aと内管22Bとの間の空間には、耐候性試験用の波長の光を透過させるフィルター23が配設されている。なお、メタルハライドランプ21が発する光の波長域およびフィルター23により透過される光の波長域は、要求される試験の目的や内容等に応じて適宜変更可能である。
また、図1に示すように、光源部2は、メタルハライドランプ21の光を下方に導く反射板30を備えている。反射板30は、メタルハライドランプ21の上方に位置する上部反射板31(曲面反射部材)と、メタルハライドランプ21の下側に位置する下部反射板32(反射部材)とを有し、これらの反射板30によって、メタルハライドランプ21が放射した光が効率よく試料設置面41に照射される。
【0012】
試料台40は、試験槽12の底面に設置された台座に平板状の試料設置面41を載せた構成となっており、この試料設置面41に試料4が載置される。試料設置面41は、メタルハライドランプ21に対して平行な平面である。試料台40の台座には、試料設置面41を昇降させる図示しない昇降機構が設けられ、この昇降機構によって、試料設置面41の高さを自在に調整し、例えば試験の内容や試料4の大きさに応じて、メタルハライドランプ21から試料4までの距離を調整できる。
【0013】
また、筐体10において試験槽12の下方には冷却水回路13が配設されている。冷却水回路13は、水冷ジャケット22に冷却水を送出するポンプ、冷却水の温度を所定温度以下に保持する冷却装置、循環される冷却水の水量を十分な量に保つための冷却水タンク等を備えている。
さらに、耐候性試験装置1の前面には、液晶表示パネル等の表示パネルにタッチパネルが重畳されたコントロールパネル15が配置され、このコントロールパネル15により、耐候性試験装置1の動作状態等を表示するとともに、耐候性試験装置1の試験条件等の入力操作を行うことができる。
また、図示はしないが、耐候性試験装置1は、試験槽12内部の気温を検出する温度センサーと、ヒーター、冷却装置、及び、ヒーターと冷却装置とによって温度調整された空気を試験槽12へ吹き込む送風ファンとを備え、温度センサーの検出値に基づいて試験槽12内の気温を所定温度に保持する機能を有している。
そして、耐候性試験装置1は、メタルハライドランプ21を点灯させる安定器(図示略)、冷却水回路13、上述した温度センサー、ヒーター、冷却装置、及び、送風ファンに接続された制御部16を有し、制御部16によって耐候性試験装置1の各部を制御して、コントロールパネル15の操作によって設定された条件下での試料4の試験を行う。
【0014】
図2は、試料設置面41とメタルハライドランプ21との相対的な位置関係を示す平面図である。
この図2に示すように、試料4が並べて配置される試料設置面41は長方形に構成されており、試料設置面41の長さ方向が、線状光源であるメタルハライドランプ21の長手方向に沿うように配置される。この方向(試料設置面41の長さ方向、メタルハライドランプ21の長手方向)を、長さ方向Lとする。また、試料設置面41の短手方向を、幅方向Wとする。幅方向Wは、長さ方向Lと直交する方向である。
試料設置面41上の試料4は、試験される表面をメタルハライドランプ21に向けて配置され、必要に応じて試料設置面41に固定される。
【0015】
図3は、反射板30の構成を示す図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のP−P’断面図である。
図3(A)及び(B)に示すように、上部反射板31は、メタルハライドランプ21の長手方向に延びる2つの曲面を、メタルハライドランプ21の軸中心を通り試料設置面41に垂直な面で接合した形状を有し、メタルハライドランプ21を上方から覆うように配設されている。上部反射板31の内側、すなわちメタルハライドランプ21側は、2つの反射面3A、3Aとなっている。これら2つの反射面3A、3Aは平滑面であり、好ましくは鏡面となっている。反射面3A、3Aは、メタルハライドランプ21が上方及び側方へ向けて放射した光を、下方に向けて反射する。反射面3A及び後述する各反射面の立体的形状は、例えば、配光分布についてのシミュレーション計算により、最適分布が得られるような形状を適宜選定すればよい。
【0016】
一方、下部反射板32は、メタルハライドランプ21の下方、かつ、試料設置面41の上方に位置している。なお、本実施形態では、上部反射板31と下部反射板32との間は離隔しているが、互いに接していてもよい。
下部反射板32は、上部が小さく下部が大きいテーパーを有する四角錐台形状である。この四角錐台の上下の2面は開口していて、下部反射板32は角錐台の側面に相当する4つの平面を有する。これら4つの平面は、試料設置面41に垂直な方向に対して、試料設置面41側を向くよう傾いている。
【0017】
下部反射板32を構成する4つの平面のうち、試料設置面41の長さ方向Lにおける両端に位置する2つの平面を反射面3B、3B(第1の反射面)とし、幅方向Wの両端に位置する2つの平面を反射面3C、3Cとする。これら4つの反射面3B、3B、3C、3Cは平滑な鏡面で構成され、メタルハライドランプ21が放射した光を試料設置面41へ向けて反射する。
【0018】
さらに、2つの反射面3B、3Bには、それぞれ、補助反射板34、34が取り付けられている。補助反射板34、34の各々は、反射面3B、3Bの上部に固定され、その表面は試料設置面41を向く反射面3D、3D(第2の反射面)となる。反射面3D、3Dは、試料設置面41に垂直な方向に対して、反射面3B、3Bよりも大きく傾斜しており、反射面3B、3Bとは異なる方向に向けてメタルハライドランプ21の放射光を反射する。
【0019】
図4〜図7の各図は、反射板30が有する各反射面3A、3B、3C、3Dによる反射方向と、試料設置面41における反射光の概略分布を対比させて示す図である。
図4は、反射面3A、3Aによる反射光の概略分布を示す図であり、(A)は側面方向から見たメタルハライドランプ21、上部反射板31及び試料設置面41の位置関係を示し、(B)には試料設置面41上における反射光の分布を示す。
図4(A)中に矢印で示すように、メタルハライドランプ21から上向き及び横向きに放射された光は反射面3A、3Aに反射して下方に向かい、主に図4(B)に符号41B、41Bで示す幅方向Wの両端部に位置する領域を中心として照射される。領域41Aは、試料設置面41において、長さ方向Lの中央を中心とした細長い領域である。上述のように上部反射板31は幅方向Wに並ぶ2つの反射面3A、3Aを有し、一方の反射面3Aで反射した光が試料設置面41の一端側の領域41Bに照射され、他方の反射面3Aで反射した光が試料設置面41の他方側の領域41Bに照射される。
【0020】
試料設置面41においては、メタルハライドランプ21の直下に相当する位置に、メタルハライドランプ21からの直射光が多く照射される。メタルハライドランプ21は細長い管内で放電することにより発光する光源であるため、その長手方向中央部が最も多くの光を発する。このため、図4(B)に符号41Aで示す領域は、メタルハライドランプ21の直射光の光量が特に多い。上部反射板31は、メタルハライドランプ21の直射光が多く当たる領域41Aの両脇に位置する領域41B、41Bに向けて光を照射することにより、幅方向Wにおける光量(照度)の偏り(むら)を軽減する。
【0021】
図5は、反射面3B、3Bによる反射光の概略分布を示す図であり、(A)は正面からみた反射面3B、3B、メタルハライドランプ21及び試料設置面41の位置関係を示し、(B)には試料設置面41上における反射光の分布を示す。
図5(A)中に矢印で示すように、メタルハライドランプ21から斜め下方に放射される放射光のうち、長さ方向Lにおいて試料設置面41から外れた方向へ向かう放射光は、反射面3B、3Bによって試料設置面41に向けて反射される。この光は、主に、図5(B)に符号41D、41Dで示す領域に集中して放射される。領域41D、41Dは、それぞれ、試料設置面41の長さ方向Lにおける中央から端部側にずれた位置にある。領域41D、41Dはメタルハライドランプ21による直射光が多く照射される領域でもあるが、長さ方向Lの中心ではないため、光量は領域41A(図4(B))に劣る。また、反射面3A、3Aで反射した反射光が幅方向Wの両端側の領域41B、41Bに照射されるのに対し、この領域41B、41Bよりも長さ方向Lの両端側に、反射面3B、3Bの反射光が照射される。従って、反射面3B、3Bにより領域41D、41Dに反射光が照射されることで、長さ方向Lにおける光量のむらが軽減される。
【0022】
図6は、反射面3C、3Cによる反射光の概略分布を示す図であり、(A)は側面方向から見たメタルハライドランプ21、上部反射板31、反射面3C、3C及び試料設置面41の位置関係を示し、(B)には試料設置面41上における反射光の分布を示す。
図6(A)中に矢印で示すように、メタルハライドランプ21から、試料設置面41より幅方向Wに外れた位置に放射された光は、反射面3C、3Cによって試料設置面41に向けて反射される。また、反射面3A、3Aで反射された反射光の一部は試料設置面41から幅方向Wに外れた位置に向かってしまうが、この光は反射面3C、3Cに当たって再び反射され、試料設置面41に照射される。さらに、反射面3Aの反射光のうち、試料設置面41に対する傾きが小さい光、すなわち試料設置面41に平行な向きに近い光は、いずれか一方の反射面3Aで反射して反対側の反射面3Cに達して反射され、さらに反対側の反射面3Cで反射する。この光は反射を繰り返して試料設置面41に照射される。
【0023】
反射面3C、3Cで反射した反射光は、図6(B)に符号41Eで示すように、試料設置面41の長さ方向Lの中央部から両端部にかけて広い範囲で、幅方向Wの全体にわたって照射される。2つの反射面3C、3Cの反射光は試料設置面41の中央まで達するため、この反射光が当たる領域は一つの領域41Eとなる。反射面3C、3Cは、反射面3A、3Aと同様に、メタルハライドランプ21の長手方向に沿って延びる形状であるため、領域41Eは長さ方向Lに広い。また、反射面3Cは上下方向の幅が広いため、反射面3Cから試料設置面41に照射される光は試料設置面41上で広く分布し、大きな光量の偏りを生じにくい。
このように、反射面3C、3Cの反射光は、試料設置面41のほぼ全体に相当する領域41Eに対し、むらなく照射されるので、試料設置面41の側方に外れてしまう光を反射面3C、3Cで反射して、試料設置面41にむらなく多くの光を照射できる。
【0024】
図7は、反射面3D、3Dによる反射光の概略分布を示す図であり、(A)は正面からみた反射面3D、3D、メタルハライドランプ21及び試料設置面41の位置関係を示し、(B)には試料設置面41上における反射光の分布を示す。
図7(A)中に矢印で示すように、メタルハライドランプ21から斜め下方に放射される放射光のうち、長さ方向Lにおいて試料設置面41から外れた方向へ向かう放射光の一部は、反射面3D、3Dによって試料設置面41に向けて反射される。上述のように、反射面3D、3Dは反射面3B、3Bよりも、試料設置面41に対する傾斜が大きく、また、反射面3D、3Dは反射面3B、3Bの上部に配設されている。このため、反射面3B、3Bによる反射に比べて、メタルハライドランプ21の放射光のうち、試料設置面41に対する傾きが小さい光、すなわち試料設置面41に平行な向きに近い光が、反射面3D、3Dによって、鉛直に近い角度で試料設置面41に照射される。
【0025】
従って、図7(B)に示すように、反射面3D、3Dによる反射光は、各々の反射面3D、3Dの直下に近い位置に照射される。反射面3D、3Dによる反射光が照射される領域41F、41Fは、試料設置面41の長さ方向Lの両端部に位置し、反射面3Bの反射光が当たる領域41D、41Dよりも、さらに試料設置面41の先端側にある。
上述のように、線状光源であるメタルハライドランプ21は長さ方向Lの中央部で最も多くの光を発するので、試料設置面41の長さ方向Lの先端部(末端部)である領域41Fでは、特に光量が低くなりやすい。また、平板状の反射板を用いて、メタルハライドランプ21が放射した光を領域41F、41Fに集めるためには、反射面3B、3Bのようにメタルハライドランプ21に近い位置で試料設置面41に対して垂直に近い反射板を設ける必要がある。しかしながら、反射面3B、3Bのような位置及び角度の反射板では、メタルハライドランプ21から試料設置面41の外へ放射される光の一部しか反射させることができず、例えば、試料設置面41に近い位置で外れてしまう光を反射させることができない。さらに、領域41F、41Fにのみ光を集めてしまっては、かえって光量の偏りを生じることになりかねない。
【0026】
そこで、耐候性試験装置1では、メタルハライドランプ21の長さ方向Lにおける端部側に位置する反射面3B、3Bと、この反射面3B、3Bとは別体の反射面3D、3Dとを設け、反射面3B、3Bによって、試料設置面41の中心よりも端部側に位置する領域41D、41Dに光を反射し、反射面3D、3Dにより、領域41D、41Dよりもさらに端に位置する領域41F、41Fに光を反射する構成とした。この構成によれば、メタルハライドランプ21から、試料設置面41に垂直に近い角度で放射された光を、試料設置面41の長さ方向Lにおける中心から全体的に反射させ、水平に近い角度で放射された光を先端の領域41F、41Fに反射させるので、試料設置面41における光量の偏りを抑え、試料設置面41の全体にむらなくメタルハライドランプ21の光を照射できる。
【0027】
図8は、試料設置面41の幅方向における照度分布を示す図表であり、図9は、試料設置面41の長さ方向における照度分布を示す図表である。図8の図表では横軸が試料設置面41の幅方向Wにおける位置を示し、位置W1は試料設置面の一端に相当し、位置W2は他端に相当する。また、図9の図表の横軸は試料設置面41の長さ方向Lにおける位置を示し、位置L1は試料設置面の一端に相当し、位置L2は他端に相当する。
なお、図8及び図9の縦軸は相対的な照度の大小を示しており、縦軸方向のスケールが絶対的な照度の値に対応するものではない。つまり、図8中の縦軸方向の大きさが測定される照度値自体を示すわけではない。従って、図8中に(A)〜(C)で示す各グラフの照度を、図8の縦軸のスケールを基準として(A)〜(C)間で比較することはできない。図8は、あくまで、(A)〜(C)のそれぞれについて、幅方向Wにおける位置間の照度の大小を示している。図9も同様に、図9中の縦軸方向の大きさが照度値そのものを指すわけではないから、図9の縦軸のスケールを基準として(A)〜(C)間で比較することはできない。図9は、あくまで(A)〜(C)のそれぞれについて、長さ方向Lにおける位置間の照度の大小を示す図表である。
【0028】
図8における(A)はメタルハライドランプ21の直射光による照度を示し、(B)は反射面3Aで反射して試料設置面41に照射された反射光による照度を示し、(C)は反射面3Cの反射光による照度を示す。
【0029】
図8に示すように、メタルハライドランプ21の直射光は幅方向Wの中心をピークとしており、反射面3A、3Aによる反射光のピークは幅方向Wの両端部にある。これに対し、反射面3Cによる反射光は、幅方向Wの最も端の領域、すなわち位置W1、W2近傍を除いて均一に照射される。さらに、反射面3Aによる反射光は、メタルハライドランプ21から側方及び上方に照射された光であり、図3(B)に示したように、上部反射板31がメタルハライドランプ21に被さるように配置されていることから、この反射面3A、3Aの反射光の光量は非常に大きい。このため、メタルハライドランプ21の直射光及び反射面3C、3Cによる反射光の偏りを解消するに足る光量が、幅方向Wの端部に照射される。この結果、反射面3A、3Aによる反射光と、反射面3C、3Cによる反射光と、メタルハライドランプ21の直射光とを合わせた光量は、幅方向Wにおいてほぼ均一となり、照度のむらはほとんど生じない。
【0030】
図9における(A)はメタルハライドランプ21の直射光による照度を示し、(B)は反射面3B、3Bで反射して試料設置面41に照射された反射光による照度を示し、(C)は反射面3D、3Dの反射光による照度を示す。
図9に示すように、メタルハライドランプ21の直射光は長さ方向Lの中心をピークとしており、反射面3B、3Bによる反射光のピークは長さ方向Lの中心よりも端部側に寄った位置にある。そして、反射面3D、3Dによる反射光のピークは、長さ方向Lの最も端の領域、すなわち位置L1、L2に極めて近い位置にある。このため、上述したように、メタルハライドランプ21の直射光による反射光の偏りが、反射面3B、3Bによる反射光と、反射面3D、3Dによる反射光によって解消される。この結果、反射面3B、3Bによる反射光と、反射面3D、3Dによる反射光と、メタルハライドランプ21の直射光とを合わせた光量は、長さ方向Lにおいてほぼ均一となり、長さ方向Lにおける照度のむらはほとんど生じない。
【0031】
以上のように、本発明を適用した実施の形態に係る耐候性試験装置1は、メタルハライドランプ21と、メタルハライドランプ21の長手方向に沿ってメタルハライドランプ21に対向して配置された長手形状の試料設置面41とを有し、メタルハライドランプ21により試料設置面41に配置された試料に光を照射する構成を有し、メタルハライドランプ21の試料設置面41側に、試料設置面41から長さ方向Lまたは幅方向Wに外れた方向にメタルハライドランプ21から放射された光を試料設置面41に向けて反射する下部反射板32が配置され、下部反射板32は、メタルハライドランプ21の端部側に位置して試料設置面41の中心よりも長手方向端部側に寄った領域に反射光を照射する反射面3B、3Bと、反射面3B、3Bが光を照射する領域よりも端の領域に反射光を照射する反射面3D、3Dと、を有するので、試料設置面41の中央より端に寄った領域41D、41Dには、反射面3B、3Bで反射された反射光が当たり、この領域41D、41Dより先端側の領域41F、41Fには反射面3D、3Dの反射光が当たる。このため、試料設置面41の中央を含む領域41Aにはメタルハライドランプ21からの直射光が強く当たることと合わせて、試料設置面41に照射される光量の偏りが反射面3B、3B、3D、3Dによって補正されることで、試料設置面41における光量むらを抑え、試料設置面41の全体にむらなくメタルハライドランプ21の光を照射させることができ、試料設置面41に配置された複数の試料4に均等に光を照射できる。
【0032】
このように、メタルハライドランプ21の下側に位置する4面からなる下部反射板32に、補助反射板34を設けて6面の反射面を設けた構成により、試料設置面41における光のむらを解消できるので、例えば10枚を超える反射板を用いたり、反射板をエンボス加工して光を拡散させたりする場合に比べ、シンプルな構成で効率よく光量のむらを軽減できる。また、線状光源であるメタルハライドランプ21の形状に最適な反射面3B、3B及び3D、3D等を配置し、光を試料設置面41の外に拡散させないので、光量のロスを低減し、効率よく複数の試料4に均等に光を照射できる。
【0033】
また、耐候性試験装置1には、メタルハライドランプ21を挟んで試料設置面41の反対側に、メタルハライドランプ21の長さ方向に延びる曲面によってメタルハライドランプ21から放射された光を、試料設置面41の側端部を含む領域41B、41Bに照射する上部反射板31が配置されているので、この上部反射板31の反射面3A、3Aの反射光が試料設置面41に照射されることで、反射面3B、3B、3D、3Dの反射光が当たることと合わせて、試料設置面41における光量むらをより低減できる。
さらに、反射面3A、3B、3C、3Dはいずれも平滑な鏡面で構成されているので、より効率よく光を反射し、光量のロスを減らすことができる。
また、上記実施の形態の耐候性試験装置1は、下部反射板32の反射面3C、3Cによってもメタルハライドランプ21の放射光のうち試料設置面41の外へ放射される光を、試料設置面41に集めることで、光量のロスをより低減できる。反射面3C、3Cは、反射面3D、3D等よりも高さ方向のサイズが大きいため、メタルハライドランプ21の放射光をむらなく、試料設置面41のほぼ全体に照射することができる。これにより、試験に必要なメタルハライドランプ21の出力が低くて済み、メタルハライドランプ21の長寿命化や消費電力量の低減を図ることができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、下部反射板32の反射面3B、3Bに、補助反射板34が固定され、この補助反射板34の表面が反射面3D、3Dとなる構成としたが、反射面3B、3Bの一部を突出させて、この突出部の表面が反射面3D、3Dと同様の反射面として作用する構成としてもよい。また、線状光源はメタルハライドランプ21に限らず、キセノンランプ、カーボンアークランプ、水銀ランプ等の他種の紫外線光源を用いることが可能である。さらに、上述した実施の形態では、水平に設置された試料設置面41の上方にメタルハライドランプ21を配置して、上方から試料4に紫外光を照射する構成としたが、試料設置面41を垂直に立てて配置し、この試料設置面41に対して横からメタルハライドランプ21により紫外光を照射してもよい。また、上部反射板31の反射面3Aがメタルハライドランプ21の上方から側方にかけて位置する構成としたが、より小さいものであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 耐候性試験装置
3A 反射面(曲面)
3B 反射面(第1の反射面)
3C 反射面
3D 反射面(第2の反射面)
4 試料
21 メタルハライドランプ(線状光源)
30 反射板
31 上部反射板(曲面反射部材)
32 下部反射板(反射部材)
40 試料台
41 試料設置面
L 長さ方向
W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状光源と、前記線状光源の長手方向に沿って前記線状光源に対向して配置された長手形状の試料設置面とを有し、前記線状光源により前記試料設置面に配置された試料に光を照射する耐候性試験装置において、
前記線状光源の前記試料設置面側に、前記試料設置面から外れた方向に前記線状光源から放射された光を前記試料設置面に向けて反射する反射部材が配置され、
前記反射部材は、前記線状光源の端部側に位置して前記試料設置面の中心よりも長手方向端部側に寄った領域に反射光を照射する第1の反射面と、前記第1の反射面が光を照射する領域よりも端の領域に反射光を照射する第2の反射面とを有すること、
を特徴とする耐候性試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の耐候性試験装置において、
前記線状光源を挟んで前記試料設置面の反対側に、前記線状光源の長さ方向に延びる曲面によって前記線状光源から放射された光を、前記試料設置面の側端部を含む領域に照射する曲面反射部材が配置されたこと、
を特徴とする耐候性試験装置。
【請求項3】
請求項2記載の耐候性試験装置において、
前記第1および第2の反射面と、前記曲面反射部材が有する反射面とは平滑な鏡面で構成されたこと、
を特徴とする耐候性試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−237055(P2010−237055A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85748(P2009−85748)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】