説明

耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法

【課題】 −20℃〜−25℃という厳しい冷凍条件下で長期間保管された後、解凍しても分離せず、優れた耐冷凍性を有し、更に魚油単独で使用される場合に比べて、酸化安定性が改善された水中油型エマルジョン食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 油相と水相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用い、かつ、サフラワー油と魚油との使用割合を、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10としたことを特徴とする、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法と、前記方法により得られる、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関し、詳しくは、冷凍食品に使用し、長期間冷凍状態で保管されても分離せず、優れた耐冷凍性を有し、更に魚油を単独で使用する従来の方法に比べて、酸化安定性が改善された水中油型エマルジョン食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズやドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品は、寒冷地での流通や、更には冷蔵庫内等での低温に置かれた場合などに分離することがあるが、従来、この問題に関しては、−15℃以上の温度における耐冷凍性が問題となっていた。
しかしながら、近年では、冷凍サラダをはじめとして、冷凍食品にマヨネーズのような水中油型エマルジョン食品が使用されることが多くなり、従来よりも厳しい−20℃〜−25℃というより低温領域での耐冷凍性が、求められるようになった。
【0003】
このような要求に対応する方法として、例えば、変性ワキシーコーンスターチとポリグリセリン脂肪酸エステルを水相に併用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この方法では、耐冷凍性が不十分である上に、水中油型エマルジョン食品を水分の多い素材と合わせてサラダ等に用いた場合、該エマルジョン食品単独の時よりも、耐冷凍性が劣るという欠点があった。
【0004】
また、油相原料として、主に魚油及び/又は亜麻仁油を用い、かつ、乳化剤として少なくともホエー蛋白を用いることを特徴とする水中油型乳化食品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方法では、魚油を単独で用いた場合には、高い耐冷凍性が得られるものの、酸化安定性は低いという欠点があり、一方、亜麻仁油を単独で用いた場合には、耐冷凍性が比較的弱く、さらに魚油と同様に酸化され易いという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−313820号公報
【特許文献2】特開2001−78711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、−20℃〜−25℃という厳しい冷凍条件下で長期間保管された後、解凍しても分離せず、優れた耐冷凍性を有し、更に魚油単独で使用される場合に比べて、酸化安定性が改善された水中油型エマルジョン食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、油相原料としてサフラワー油を主体とする魚油との混合油を使用することにより、−20℃〜−25℃という温度領域で長期間保管した後、解凍しても分離することがなく、更に、魚油を単独で使用する場合に比べて、酸化安定性が改善された水中油型エマルジョン食品が得られることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、請求項1に係る本発明は、油相と水相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用い、かつ、サフラワー油と魚油との使用割合を、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10としたことを特徴とする、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法を提供するものである。
また、請求項2に係る本発明は、請求項1記載の製造方法により得られる、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍食品に使用し、長期間冷凍で保管された後解凍しても分離せず、優れた耐冷凍性を有し、更に魚油を単独で使用するよりも、酸化安定性がより改善された、水中油型エマルジョン食品とその製造方法とが提供される。
即ち、本発明の水中油型エマルジョン食品に使用される油相には、油相原料としてサフラワー油を主体とする魚油との混合油が使用されているため、優れた耐冷凍性を有し、更に、魚油を単独で使用するよりも酸化安定性が改善された水中油型エマルジョン食品が提供される。
従って、従来技術のように、変性ワキシーコーンスターチとポリグリセリン脂肪酸エステルを水相に併用する場合に見られる、耐冷凍性が不十分といった問題がなく、また、油相原料として、主に魚油及び/又は亜麻仁油を用い、かつ、乳化剤として少なくともホエー蛋白を用いる場合に見られる、酸化され易いといった問題点もなく、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
請求項1に係る本発明は、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法に関し、油相と水相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用い、かつ、サフラワー油と魚油との使用割合を、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10としたことを特徴とするものである。
ここで、水中油型エマルジョン食品とは、油相と水相とが乳化されてなるものであり、換言すれば油相原料と水相原料とを混合し乳化した食品である。代表的なものとして、マヨネーズやドレッシング類等が挙げられる。
【0011】
請求項1に係る本発明では、このような水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用いている。
ここで、サフラワー油とは、ベニ花の種子の搾油を食用に精製したものであって、リノール酸を70質量%以上含有する植物油脂である。
また、魚油とは、マグロの眼窩細胞等より抽出して得られる油脂のことであり、ドコサヘキサエン酸(DHA)を約27%含有する動物油脂である。
請求項1に係る本発明では、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用いることが必要であり、いずれか一方のみを用いたとしても、本発明の目的を達成することはできない。
【0012】
しかも請求項1に係る本発明では、サフラワー油と魚油との使用割合を、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10とすることが必要である。好ましくはサフラワー油:魚油=60:40〜70:30の割合で用いることが望ましい。
ここでサフラワー油の割合が、90質量%を超えると耐冷凍性が低下し、一方、サフラワー油の割合が60質量%未満であると、耐冷凍性は低下しないものの、酸化安定性が極度に低下するため、いずれも好ましくない。
請求項1に係る本発明では、油相原料として、このようにサフラワー油と魚油との混合油を特定割合で用いているために、耐冷凍性に優れ、更に、魚油を単独で使用する場合に比べ、酸化安定性が改善されたものとなっている。
【0013】
なお、請求項1に係る本発明においては、耐冷凍性や酸化安定性を損なわない限り、油相原料として使用するサフラワー油及び魚油以外の油脂を少量含んでも差し支えない。
例えば、菜種油、コーン油、大豆油、ヒマワリ油などの油脂は、耐冷凍性や酸化安定性を損なわない限り、少量添加することができる。
また、油相原料としては、必要に応じて、親油性の着香料、香辛料、風味原料等を適宜用いることもできる。
【0014】
一方、請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品の水相を構成する原料(水相原料)は、マヨネーズやドレッシング類の製造に際して使用される原料や、その配合割合に準じて決定すればよく、特に制限されない。
通常用いられる水相原料の例としては、水の他に、食塩、食酢、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料、乳化剤、糖類、澱粉、ガム類、香辛料、着香料などがある。
乳化剤としては、卵黄が一般的であるが、卵白、乳蛋白、大豆蛋白等を使用することができ、これらは単独で、若しくは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
請求項1に係る本発明の水中油型エマルジョン食品における油相と水相の割合については、特に制限はないが、通常は油相10〜90質量%に対して、水相90〜10質量%、好ましくは油相30〜85質量%に対して、水相70〜15質量%とする。
ここで、油相の比率が10質量%未満であると、調製された水中油型エマルジョン食品の味が損なわれ、美味しくない。一方、油相の比率が85質量%を超えると、転相を起こし易くなるので、いずれも好ましくない。
【0016】
請求項1に係る本発明による水中油型エマルジョン食品の製造は、既知の手法により行なえばよく、特に制限されない。
例えば、水以外の水相原料を水等に分散・溶解し、これらに油相原料であるサフラワー油と魚油との混合油を加えて、一般的な攪拌機、例えば市販の万能混合攪拌機を用いて予備乳化を行う。
次いで、コロイドミル等の乳化機により仕上げ乳化を行なうことによって、目的とする水中油型エマルジョン食品を製造することが出来る。
このようにして得られた耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品が、請求項2に係る本発明の水中油型エマルジョン食品である。
【0017】
このようにして製造された水中油型エマルジョン食品は、油相原料としてサフラワー油と魚油との特定割合の混合物(混合油)が使用されているために、優れた耐冷凍性を有し、更に、酸化安定性が改善されたものとなっている。
【0018】
なお、本発明の水中油型エマルジョン食品の耐冷凍性が優れている理由についての詳細は不明であるが、一般に、油脂中の脂肪酸の不飽和度が高くなるほど、更にその脂肪酸組成が複雑になるほど、油脂が結晶化し難いことが知られている。
即ち、サフラワー油と魚油との混合油では、DHAやリノール酸等の多価不飽和脂肪酸を多く含有されており、更にこの混合油中に含有される脂肪酸の組成が複雑化したことが、優れた耐冷凍性の付与に関与していると推測される。
また、本発明の水中油型エマルジョン食品の酸化安定性が改善されている理由については、次のように推測される。
即ち、本発明の水中油型エマルジョン食品の油相は、サフラワー油を主体としているためリノール酸を主成分としており、一方、魚油や亜麻仁油は、DHAやリノレン酸を主成分としているため、前者の酸化安定性は比較的改善されているものと推測される。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例等により詳しく説明するが、本発明はこれらによって、何ら制限されるものではない。
【0020】
実施例1〜4
(1)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)の調製
水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)の油相原料として、表1に示される脂肪酸組成のサフラワー油(市販品)及び魚油(市販品)を用い、表2に示す配合にて水中油型に乳化し、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)を調製した。
【0021】
【表1】

【0022】
即ち、上記油相原料は、表2に示す配合に従って、サフラワー油:魚油=60:40(実施例1)、70:30(実施例2)、80:20(実施例3)、及び90:10(実施例4)の混合油として使用した。
【0023】
また、水相原料としては、表2に示す配合に従って、リゾ化率75%リゾ化卵黄(乾燥品、市販品)、食塩、食酢(10%酸度)、水飴(DE75)及び水を混合・溶解し、水相を調製した。
この水相に、上記のサフラワー油と魚油との混合油を加え、ホバルト・ミキサー(ホバルト社製)を用いて予備乳化した。
次いで、コロイドミル(クリアランス:4/1,000インチ、回転数:3,000rpm)を用いて仕上げ乳化を行ない、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)を調製した。
【0024】
日本農林規格によると、「マヨネーズ」の油相原料には、食用植物油脂を使用することが規定されており、魚油を使用したものは該規格に適合しない。従って、実施例1〜4で調製した水中油型エマルジョン食品を「マヨネーズ様」と称した。
なお、本実施例1〜4で調製した水中油型エマルジョン食品は、油分量と魚油以外の原料は、日本農林規格に適合したものとなっている。
【0025】
(2)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)の耐冷凍性の評価
上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品について、耐冷凍性を以下のようにして評価した。
まず、上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)約20gを、約25g容のプラスチック容器に充填し、シールした。
次に、−20℃及び−25℃にて、それぞれ10日間、30日間及び60日間保管し、更に室温に戻した後の水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)の乳化状態を以下の3段階で観察し、耐冷凍性の評価を行った。
【0026】
耐冷凍性の評価は、経験豊かな5名のパネラーの視覚観察による3段階評価の平均値で示した。結果を表2に示す。
なお、この評価において、「安定」又は「やや安定」という判定であれば、耐冷凍性に優れていると言うことができる。
【0027】
[耐冷凍性の評価]
・安定 : 油分離していない。
・やや安定 : 僅かな油分離が見られる。
・不安定 : かなりの油分離が見られる。
【0028】
(3)水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)の酸化安定性の評価
次に、上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)について、酸化安定性を以下のようにして評価した。
約200g容のガラス瓶に、上記(1)で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)約100gを充填し、1重のサランラップで瓶の口を密封した。
次に、34℃暗所の条件で、2週間及び4週間保管した後、水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)表層の分離状態により、酸化安定性を以下の4段階で評価した。
【0029】
酸化安定性の評価は、経験豊かな5名のパネラーの視覚観察による4段階評価の平均値で示した。結果を表2に示す。
なお、この評価において、「安定」又は「やや安定」という判定であれば、酸化安定性に優れていると言うことができる。
【0030】
[酸化安定性の評価]
・安定 : 表層はやや褐変しているが、油分離していない。
・やや安定 : 表層は強く褐変しているが、油分離していない。
・やや不安定 : 表層がやや油分離している。
・不安定 : 表層がひどく油分離している。
【0031】
【表2】

【0032】
表2の結果から、以下のようなことが分かる。
油相原料として、サフラワー油と魚油との割合が、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10の範囲の混合油を使用した、実施例1〜4で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)は、−20℃及び−25℃で60日間の保存後でも、優れた耐冷凍性を示した。更に、実施例1〜4で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)は、34℃で4週間保存後でも、優れた酸化安定性を示した。
これらの結果から、実施例1〜4で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)は、優れた耐冷凍性と酸化安定性とを合わせ持つことが理解される。
【0033】
比較例1
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、サフラワー油のみを使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
【0034】
比較例2
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、魚油のみを使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0035】
比較例3
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、亜麻仁油のみを使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
なお、亜麻仁油は市販品を使用し、その脂肪酸組成は表1に示した。
【0036】
比較例4
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油:魚油=50:50の混合油を使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
【0037】
比較例5
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油:魚油=95:5の混合油を使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
【0038】
比較例6
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、サフラワー油:大豆油=60:40の混合油を使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
なお、大豆油は市販品を使用し、その脂肪酸組成は表1に示した。
【0039】
比較例7
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、サフラワー油:コーン油=60:40の混合油を使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
なお、コーン油は市販品を使用し、その脂肪酸組成は表1に示した。
【0040】
比較例8
実施例1〜4において、油相原料として、サフラワー油と魚油との混合油の代わりに、サフラワー油:菜種油=60:40の混合油を使用したこと以外は、実施例1〜4と同様にして水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)を調製し、更に実施例1〜4と同様にして耐冷凍性と酸化安定性を評価した。配合組成、並びに耐冷凍性と酸化安定性の評価結果を表3に示す。
なお、菜種油は市販品を使用し、その脂肪酸組成は表1に示した。
【0041】
【表3】

【0042】
表3の結果から、以下のようなことが分かる。
実施例1〜4で使用したサフラワー油と魚油の比率の範囲外の混合油、及びその他の植物油脂を用いた、比較例1〜8で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ及びマヨネーズ様)では、何れも耐冷凍性と酸化安定性のうちのどちらかが劣っているか、或いは耐冷凍性と酸化安定性の両方共に劣っているものであり、耐冷凍性と酸化安定性を合わせ持つものでないことが理解される。
【0043】
即ち、サフラワー油のみを使用した比較例1で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)、サフラワ―油:魚油=95:5の混合油を使用した比較例5で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)、サフラワー油:大豆油=60:40の混合油を使用した比較例6で得られた水中型エマルジョン食品(マヨネーズ)、サフラワー油:コーン油=60:40の混合油を使用した比較例7で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)、及びサフラワー油:菜種油=60:40の混合油を使用した比較例8で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)では、耐冷凍性は劣っているものの、酸化安定性は優れていた。
【0044】
一方、魚油のみを使用した比較例2で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)、及びサフラワー油:魚油=50:50の混合油を使用した比較例4で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ様)では、耐冷凍性は優れているものの、酸化安定性は劣っていた。
【0045】
更に、亜麻仁油のみを使用した比較例3で得られた水中油型エマルジョン食品(マヨネーズ)では、耐冷凍性及び酸化安定性の両方が劣っていた。
【0046】
以上のことから、サフラワー油と魚油との割合が、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10の混合油のみを使用することによってはじめて、水中油型エマルジョン食品の耐冷凍性及び酸化安定性の両方が向上することが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
請求項1に係る本発明によれば、油相原料としてのサフラワー油と魚油との割合が、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10の範囲の混合油を使用することにより、−20〜−25℃で長期間保存可能な優れた耐冷凍性と共に、優れた酸化安定性をもつ水中油型エマルジョン食品の製造方法が提供される。
更に、請求項1に係る本発明によれば、該製造方法により、−20〜−25℃で長期間保存可能な優れた耐冷凍性と共に、優れた酸化安定性をもつ水中油型エマルジョン食品が提供される。
このように油相原料としてサフラワー油と魚油との特定割合の混合油を用いて製造された、マヨネーズ様調味料やドレッシング類等の水中油型エマルジョン食品は、変性ワキシーコーンスターチとポリグリセリン脂肪酸エステルを水相に併用して得られた水中油型エマルジョン食品よりも耐冷凍性に優れ、また、魚油及び/又は亜麻仁油を用いた水中油型エマルジョン食品よりも酸化安定性に優れたものである。
従って、本発明は食品産業分野において有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相と水相とが乳化されてなる水中油型エマルジョン食品を製造するにあたり、油相原料としてサフラワー油と魚油との混合物を用い、かつ、サフラワー油と魚油との使用割合を、サフラワー油:魚油=60:40〜90:10としたことを特徴とする、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法により得られる、耐冷凍性に優れた水中油型エマルジョン食品。

【公開番号】特開2008−29232(P2008−29232A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204747(P2006−204747)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(591101504)クノール食品株式会社 (29)
【Fターム(参考)】