説明

耐凍害性ポーラスコンクリート

【課題】吸着性能に優れるとともに耐凍害性にも優れるポーラスコンクリートを提供する。
【解決手段】結合材と、最大粒子径が10mm以上のゼオライト骨材と、混和材としてのゼオライト粉末とを含み、ゼオライト粉末の容積混和率が5〜30%である、ポーラスコンクリートとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着性能に優れるとともに耐凍害性能に優れるポーラスコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の水制及び護岸のため、従来からコンクリートブロックが用いられている。特に、ポーラスコンクリートを水制用コンクリートとして用いた場合、ポーラスコンクリートの吸着性能によって、河川の水制だけでなく水質浄化を行うこともできる。
【0003】
或いは、道路脇の法面を保護する場合にも、コンクリートの構造体が用いられている。ポーラスコンクリートを法面用コンクリートとして用いれば、ポーラスコンクリートの吸着性能によって、自動車排ガスに含まれるNOx等の大気汚染物質を吸着・除去できると考えられる。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されているように、粒状ゼオライトを含む骨材と、混和材としてのゼオライト粉末とを用いてポーラスコンクリートを構成することによって、吸着性能に優れるポーラスコンクリートを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−037646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水制用コンクリートとして上記のポーラスコンクリートを用いた場合、ポーラスコンクリートの空隙を介してコンクリートの内部にまで水が浸透・吸着する結果、0℃以下の環境下においてはコンクリート内部の水が凍結し、コンクリート内部の水の凍結・融解が繰り返されることで、ポーラスコンクリートが崩れてしまうという問題があった。或いは、ポーラスコンクリートを法面用コンクリートとして適用する場合にあっても、雨や雪によってコンクリート内部にまで水が浸み込むこととなり、同様の問題が懸念された。すなわち、寒冷地においてポーラスコンクリートを用いる場合は、ポーラスコンクリートの耐凍害性能を向上させる必要があった。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、吸着性能に優れるとともに耐凍害性能にも優れるポーラスコンクリートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来常識においては、コンクリートに、ゼオライト骨材やゼオライト粉末を含有させると、コンクリートの吸水性能が増大する結果、コンクリートの耐凍害性が低下してしまうものと考えられていた。しかしながら、本発明者らが鋭意研究したところ、粒子径の大きなゼオライト骨材を用いるとともに、ゼオライト粉末の混和量を一定の範囲に限定することにより、吸着性能と耐凍害性能とを両立したポーラスコンクリートを得ることが可能となることを知見した。
【0009】
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
第1の本発明は、結合材と、最大粒子径が10mm以上のゼオライト骨材と、混和材としてのゼオライト粉末とを含み、ゼオライト粉末の容積混和率が5〜30%である、ポーラスコンクリートである。
【0010】
第1の本発明及び以下に示す本発明において、「結合材」とは、ポーラスコンクリートの結合材として利用可能な結合材をいい、例えばセメント、好ましくはポルトランドセメントが例示される。「ゼオライト粉末」とは、通常の細骨材よりも小さな粒子径を有する粉末状のゼオライトのことであり、好ましくは粒子径が0.5mm以下、より好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.08mm以下のものが例示される。尚、本技術分野において「結合材」とは、通常、セメント系結合材と混和材とを合わせたものをいうが、本願では、分かりやすさのため、結合材(セメント)と混和材(ゼオライト粉末)とを別のものとして説明する。「ゼオライト粉末の容積混和率」とは、結合材及び混和材の合計の容積(b)に対するゼオライト粉末の容積(zp)の比(zp/b)を意味する。
【0011】
第1の本発明において、さらに化学混和剤を含むことが好ましい。「化学混和剤」としては界面活性剤、減水剤等が例示される。
【0012】
第2の本発明は、第1の本発明に係るポーラスコンクリートを用いた、水制用コンクリートである。「水制用」とは、水流制御に用いられることを意味し、例えば、河川の水流を制御することで堤防や河岸等を防護する用途のほか、高潮や津波から堤防や海岸等を防護する用途をも含む概念である。
【0013】
第2の本発明に係る水制用コンクリートは、0℃以下の温度環境下においても好適に用いることができる。
【0014】
第3の本発明は、第2の本発明に係る水制用コンクリートを用いた、水制用ブロックである。
【0015】
第4の本発明は、第1の本発明に係るポーラスコンクリートを用いた、法面用コンクリートである。
【0016】
第4の本発明に係る法面用コンクリートは、0℃以下の温度環境下においても好適に用いることができる。
【0017】
第5の本発明は、第4の本発明に係る法面用コンクリートを用いた、法面構造体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子径の大きなゼオライト骨材を用いるとともに、ゼオライト粉末の混和量を一定の範囲に限定することにより、吸着性能に優れるとともに、耐凍害性能にも優れるポーラスコンクリートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るポーラスコンクリートの形態を説明するための概略図である。
【図2】凍結融解試験を説明するための図である。
【図3】凍結融解試験におけるポーラスコンクリートの水分吸収率の変化を示す図である。
【図4】凍結融解試験におけるポーラスコンクリートのスケーリング量の変化を示す図である。
【図5】凍結融解試験におけるポーラスコンクリートの内部歪みの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.ポーラスコンクリート
本発明に係るポーラスコンクリートは、結合材と、最大粒子径が10mm以上のゼオライト骨材と、混和材としてのゼオライト粉末とを含み、ゼオライト粉末の容積混和率が5〜20%である。
【0021】
1.1.結合材
本発明において用いられる結合材としては、ポーラスコンクリートの結合材として使用可能な結合材を特に限定されることなく用いることができる。結合材としては、セメント、特にポルトランドセメントが挙げられる。尚、ポーラスコンクリート製造の際は、必要に応じて、当該結合材と後述する混和材としてのゼオライト粉末とを混合してペーストを形成してもよい。
【0022】
1.2.ゼオライト骨材
本発明において用いられるゼオライト骨材は、その最大粒子径が10mm以上、好ましくは15mm以上である。最大粒子径の上限は特に限定されるものではなく、ポーラスコンクリートとして用いることが可能な限りいずれであってもよい。ゼオライト骨材の最小粒子径については、本発明の効果を損なわない限りいずれであってもよく、細骨材が含まれていてもよい。例えば、細骨材率(全骨材の絶対容積に対する細骨材の絶対容積の比)を0%以上60%以下とすることができる。ただし、耐凍害性能の観点のみから言えば、ゼオライト骨材の最小粒子径を5mm以上とすることが好ましい。ゼオライトの種類は特に限定されず、人工的に合成したもののほか、天然に産出されるゼオライトをそのまま用いることもできる。
【0023】
本発明に係るポーラスコンクリートは、ゼオライト骨材が含まれることで、例えば、水制用コンクリートとして用いた場合に、当該ゼオライト骨材に水質汚染物質等を吸着することができる。また、ゼオライト骨材の最大粒子径を10mm以上とすることにより、耐凍害性能に優れるポーラスコンクリートとすることが可能である。
【0024】
1.3.ゼオライト粉末
ゼオライト粉末は、ポーラスコンクリート製造時の混和材として機能する。ゼオライト粉末は、細骨材よりも小さな粒子径を有するものであって、例えば好ましくは粒子径0.5mm以下、より好ましくは粒径0.1mm以下、特に好ましくは粒径0.08mm以下のものを用いることができる。ゼオライトの種類は特に限定されず、人工的に合成したもののほか、天然に産出されるゼオライトをそのまま用いることもできる。
【0025】
本発明に係るポーラスコンクリートにおいて、ゼオライト粉末の容積混和率は5〜30%、好ましくは10〜20%、より好ましくは15%程度である。「ゼオライト粉末の容積混和率」とは、上記の結合材と混和材との合計容積(b)に対するゼオライト粉末(zp)の容積比(zp/b)を意味する。ゼオライト粉末の容積混和率が小さすぎると十分な吸着性能を有するポーラスコンクリートを得ることができない虞があり、逆に大きすぎるとポーラスコンクリートの耐凍害性能が低下する。
【0026】
本発明に係るポーラスコンクリートは、ゼオライト粉末が混和されることで、ポゾラン反応によって硬化後の強度を増加させることができ、また、ポーラスコンクリートにおけるペーストのチキソトロピーを向上させ、品質が安定し、ポーラスコンクリート製造時に結合材量を増加させても、ダレや目詰まり等を防ぐことができる。また、上記のゼオライト骨材と同様に、例えば水制コンクリートとして用いた場合、ゼオライト粉末によって水質汚染物質等を吸着することが可能である。
【0027】
1.4.その他成分
本発明に係るポーラスコンクリートには、化学混和剤が含まれることが好ましい。化学混和剤としては、コンクリートの化学混和剤として用いられているものと適用することができ、界面活性剤や減水剤等を例示することができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、ゼオライト粉末以外の混和材が含まれていてもよい。ただし、吸着性能を最も優れたものとする観点からは、混和材としてゼオライト粉末のみを含ませることが好ましい。
【0028】
ポーラスコンクリートの形態としては、例えば、図1に概略的に示すような形態が挙げられる。すなわち、ゼオライト骨材1の表面に結合材とゼオライト粉末とを含む層2が形成され、結合材を介してゼオライト骨材1、1、…が多数凝集してポーラスコンクリート10が構成される。
【0029】
ポーラスコンクリートにおけるゼオライト粉末の容積混和率については上述した通りであるが、結合材やゼオライト骨材の絶対容積率については、ポーラスコンクリートを適切に構成可能であれば特に限定されるものではない。具体的形態については後述する。
【0030】
このように、本発明に係るポーラスコンクリートには、砕石等の通常の骨材ではなく、ゼオライト骨材が含まれており、且つ、混和材としてもゼオライト粉末が含まれている。従来常識では、コンクリートにゼオライトを含ませた場合、コンクリートの吸水率が増大するため、例えば、寒冷地における水制コンクリートとして用いると、コンクリート内部に浸透した水が凍結してしまい、コンクリートが崩れてしまうと考えられていた。本発明は当該従来常識を覆すものであり、ポーラスコンクリートにおけるゼオライト骨材の粒子径と、ゼオライト粉末の混和量とを限定することによって、コンクリートの吸着性能を向上させるとともに耐凍害性能をも確保できたことに特徴を有する。
【0031】
2.ポーラスコンクリートの製造方法
本発明に係るポーラスコンクリートは、例えば、上記結合材やゼオライト骨材等を混合する混合工程(工程S1)と、その後の硬化工程(工程S2)とにより製造され、現場の態様に応じた形状にされて現場に施工される。以下、各工程について説明する。
【0032】
2.1.混合工程(工程S1)
工程S1は、少なくとも結合材を含むペーストと、ゼオライト骨材と、ゼオライト粉末と、を混合して混合物とする工程である。
【0033】
結合材は、水等と混合してペーストとした後でゼオライト骨材やゼオライト粉末と混合してもよいが、結合材にゼオライト粉末を混和したものをペーストとして用いてもよく、この場合は、ペーストとゼオライト骨材とに加えて、別途ゼオライト粉末を混合する必要はない。
【0034】
ゼオライト粉末は、分散媒等に分散させてスラリーとして用いることが好ましい。分散媒は、ゼオライト粉末を分散可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば水を用いることができる。ゼオライト粉末を含むスラリー中には、さらに化学混和剤を含ませることが好ましい。具体的には、ポリカルボン酸系やスルホン酸系等の減水剤、高性能減水剤や高性能AE減水剤等の高分子界面活性剤を用いる。これにより、ポーラスコンクリートの結合材に混和できる粉末量を増加させることができ、ポーラスコンクリートにおけるペーストのコンシステンシーの改善やポゾラン反応のさらなる向上に結びつき、ポーラスコンクリートの強度向上に繋がる。
【0035】
スラリーにおけるゼオライト粉末濃度は、質量%濃度で好ましくは30%以上90%以下、特に好ましくは50%以上70%以下となるように調整される。また、スラリーにおける界面活性剤の濃度は、質量%濃度で好ましくは3%以上10%以下、特に好ましくは7%となるように調整される。
【0036】
混合工程においては、必要に応じて上記以外のその他化学混和剤等を混合してもよい。その他化学混和剤としては、コンクリートの製造において用いられている公知の化学混和剤(上記以外の減水剤等)を用いることができる。
【0037】
工程S1では、上記のペーストと、ゼオライト骨材と、ゼオライト粉末とを(或いは、ゼオライト粉末と結合材とを含むペーストと、ゼオライト骨材とを)所定の比率で混合して混合物とする。混合物中において、練り混ぜ水の質量(W)と結合材及びゼオライト粉末の合計の質量(B)との質量比(W/B)は、20%〜40%とすることが好ましい。また、混合物中における、ペースト(p)とゼオライト骨材(a)との絶対容積比(p/a)は26%以上とし、36%以上とすることが好ましく、44%以上とすることが最も好ましい。ペーストとゼオライト骨材との絶対容積比(p/a)の上限は、50%程度とし、48%以下とすることが好ましい。ゼオライト粉末(zp)の容積混和率(zp/b)については、上述した通りである。工程S1においてこのような比率で結合材等を混合することで、硬化後のポーラスコンクリートの強度をより一層向上させることができ、且つ、吸着性能に優れるとともに耐凍害性能にも優れるポーラスコンクリートを得ることができる。
【0038】
工程S1における、混合方法や混合手段については、特に限定されるものではないが、例えば、オムニミキサー等により練り混ぜることで上記ペースト等が混合され、ポーラスコンクリート(混合物)とされる。
【0039】
2.2.硬化工程(工程S2)
工程S2は、得られた混合物を硬化させる工程である。硬化工程については、従来公知の手段、方法を用いることができ、例えば外部振動機等を用いて混合物を締固め、水中や蒸気等で養生を行う等により、混合物を硬化させることができる。
【0040】
本発明にかかるポーラスコンクリートは、上記工程S1により製造され、工程S2により種々の形態に硬化されて使用される。硬化後のポーラスコンクリートは、優れた強度を有し、且つ、構造中のゼオライトによって吸水性、保水性、吸着性が期待できる。さらには、ゼオライト骨材の粒子径やゼオライト粉末の容積混和率が所定範囲内とされることで、耐凍害性能にも優れたものとなる。従って、吸音材、断熱材、微生物の住処の材料として使用できることはもちろんではあるが、特に、水制用コンクリート、法面用コンクリート等の水が存在し得る環境下において好適に使用できる。そして、耐凍害性能を有することにより、0℃以下の温度環境となるような寒冷地における水制用コンクリート、法面用コンクリートとしても好適に使用できる。
【0041】
3.水制用コンクリート
本発明に係る水制用コンクリートは、上記のポーラスコンクリートを用いたものであればよい。実使用時においては、水制用コンクリートブロックとして成形して用いることが好ましい。ブロックの形状や大きさについては、水制の規模に応じて適宜決定することができる。本発明に係るポーラスコンクリートは優れた耐凍害性能を有しているので、0℃環境下となるような寒冷地における水制用コンクリートとして用いた場合でも、コンクリートの崩れ等が起こり難い。また、本発明に係るポーラスコンクリートは優れた吸着性能を有しているので、水制と同時に水質汚染物質等の吸着除去をも行うことができる。
【0042】
4.法面用コンクリート
本発明に係る法面用コンクリートは、上記のポーラスコンクリートを用いたものであればよい。実使用時においては、法面を覆う構造体として用いることが好ましい。構造体の規模や形態については、法面の形態に応じて適宜決定することができる。本発明に係るポーラスコンクリートは優れた耐凍害性能を有しているので、0℃環境下となるような寒冷地における法面用コンクリートとして用いた場合でも、コンクリートの崩れ等が起こり難い。また、本発明に係るポーラスコンクリートは優れた吸着性能を有しているので、法面の防護と同時に、自動車排ガス等に含まれる大気汚染物質の吸着除去をも行うことができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明にかかるポーラスコンクリートについて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではない。
【0044】
1.ポーラスコンクリートの作製
以下の手順で150×150×70mmのポーラスコンクリート供試体を作製した。
(1)結合材の一部として早強ポルトランドセメントを用い、これと、表1に示されるいずれかの骨材とを混合し、オムニミキサー(チヨダマシナリー社製OM−10A又はOM30E)で1分間練り混ぜた。
(2)ゼオライト粉末を添加する場合は、高性能減水剤(花王社製マイティ150)及び表1に示されるゼオライト粉末をさらに混合し、オムニミキサーで3分間練り混ぜた。
(3)練り混ぜた混合物を、外部振動機(エクセン社製インバータ付きテーブルバイブレータTV500x500・KM250−2Px2)を用いて締固めた。
(4)水中にて14日間養生させ、評価用のポーラスコンクリート供試体(150mm×150mm×70mm)を複数作製した。尚、下記の凍結融解試験のため、供試体の内部には歪みゲージ(5mm)を設置するものとした。
尚、各供試体にかかる結合材、骨材、及びゼオライト粉末の種類及び比率については、表2で示されるものとした。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
2.供試体の評価
各供試体を用いて、凍結融解試験を行った。凍結融解試験は、RILEM TC 176−IDCのCIF試験を参考にした。具体的には、図2に示すように、供試体下方に5mmの隙間を設けつつ、供試体を容器内に設置し、さらに、供試体の半分が水に浸漬されるように、容器内に水を導入した(水深40mm)。これを−20℃で6時間放置することにより水を凍結させ、その後、20℃で6時間放置することにより水を融解させた。凍結・融解の計12時間を1サイクルとし、合計50サイクル凍結・融解を繰り返した。各サイクルにおける供試体の水分吸収率、スケーリング量、内部歪みを測定した。
【0048】
2.1.供試体の水分吸収率
10サイクル毎に供試体の水分吸収率を測定した。結果を図3に示す。図3に示すように、ゼオライト骨材を用いた供試体1〜5が高い水分吸収率を示す一方、砕石骨材を用いた供試体6〜8については、水分吸収率が低いものであった。また、サイクルを繰り返しても、水分吸収率はさほど変化しなかった。
この結果から、ゼオライト骨材を用いることで、コンクリート内部にまで水が浸透するものとなり、例えば水制用コンクリートとして用いた場合、ゼオライトによって水質汚染物質を吸着除去可能であることが分かった。
【0049】
2.2.供試体のスケーリング量
10サイクル毎に、供試体のスケーリング量を測定した。結果を図4に示す。図4に示すように、ゼオライト粉末の容積混和率を15%とした供試体2及び7は、供試体6(砕石骨材のみ)と同等のスケーリング量となる一方、ゼオライト粉末の容積混和率を30%とした供試体3、5及び8は、スケーリング量が極めて大きかった。
この結果から、ゼオライト粉末を添加し過ぎると、凍結・融解の繰り返しによって、供試体が崩れやすくなることが分かった。
【0050】
2.3.供試体の内部歪み
各サイクル終了時の供試体の内部歪みを測定した。結果を図5に示す。図5に示すように、ゼオライト粉末の容積混和率を15%とした供試体2及び7は、供試体6(砕石骨材のみ)と同等の内部歪みとなる一方、ゼオライト粉末の容積混和率を30%とした供試体5及び8は、サイクルの経過とともに内部歪みが増大した。また、粒子径が3〜5mmのゼオライト細骨材を用いた供試体4は、サイクルの終盤において内部歪みの増大が確認された。
この結果から、ゼオライト粉末を添加し過ぎた場合、或いは、ゼオライト骨材として細骨材を用いた場合は、凍結・融解を繰り返すことによって、供試体の内部歪みが増大することが分かった。
【0051】
以上の結果をまとめると、下記の要件(1)、(2)を満たすことにより、吸着性能に優れる(水分吸収率が大きい)とともに、耐凍害性能に優れる(内部水の凍結・融解を繰り返した場合のスケーリング量が小さい、内部歪みが小さい)ポーラスコンクリートとすることが可能であることが分かった。
(1)ゼオライト骨材として粗骨材を用いる。例えば、最大粒子径が10mm以上のゼオライト骨材を用いる。
(2)ゼオライト粉末の混和量を抑える。例えば、ゼオライト粉末の容積混和率を5〜30%とする。
【0052】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、ポーラスコンクリート、水制用コンクリート及び水制用ブロック、並びに、法面用コンクリート及び法面構造体もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、吸着性能に優れるとともに耐凍害性能にも優れるポーラスコンクリートが提供される。本発明にかかるポーラスコンクリートは、例えば、寒冷地において用いられる水制用コンクリートや法面用コンクリートとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ゼオライト骨材
2 結合材とゼオライト粉末とを含む層
10 ポーラスコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材と、最大粒子径が10mm以上のゼオライト骨材と、混和材としてのゼオライト粉末とを含み、
前記ゼオライト粉末の容積混和率が5〜30%である、ポーラスコンクリート。
【請求項2】
さらに化学混和剤を含む、請求項1に記載のポーラスコンクリート。
【請求項3】
前記ゼオライト粉末の粒子径が0.5mm以下である、請求項1又は2に記載のポーラスコンクリート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポーラスコンクリートを用いた、水制用コンクリート。
【請求項5】
0℃以下の温度環境下にて用いられる、請求項4に記載の水制用コンクリート。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の水制用コンクリートを用いた、水制用ブロック。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポーラスコンクリートを用いた、法面用コンクリート。
【請求項8】
0℃以下の温度環境下にて用いられる、請求項7に記載の法面用コンクリート。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の法面用コンクリートを用いた、法面構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−87006(P2013−87006A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227810(P2011−227810)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年4月30日 社団法人セメント協会発行の「第65回 セメント技術大会 講演要旨 2011」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】