説明

耐弾道物品

本発明は、強化線形引張材を含むシートの積層体から成る耐弾道物品であって、前記積層体中の前記線形引張材の方向は一方向性ではなく、前記線形引張材のいくつかは高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、前記線形引張材のいくつかはアラミドを含む、耐弾道物品に関する。
ポリエチレン線形引張材は、テープであることが好ましい。一実施形態としては、積層体は、50重量%を超えるポリエチレン線形引張材を含む層、および50重量%を超えるアラミド線形引張材を含む層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐弾道物品、耐弾道物品の製造において使用に適したシート、圧密化シートパッケージ、および耐弾道物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐弾道物品は、当技術分野で既知であり、種々の耐弾道物品が存在している。一方では、例えば、防弾チョッキに用いられるような軟らかい耐弾道物品が存在する。他方、例えば、別の種類の防弾チョッキに用いられる遮蔽物として、またはヘルメットとして有用な成形品も存在する。さらに、人々や動物、もしくは物品を弾道衝撃から保護することを目的として、耐弾道物品は、自動車、建築物、およびその他のものに使用されている。
【0003】
ここで、耐弾道物品はしばしば、アラミドまたはポリエチレンなどの高強度繊維を含有するシートの積層体を含む。用途に応じて、シートを一緒に圧縮して成形品を形成してもよいし、縁を接着して軟らかい弾道抵抗性物品を形成してもよい。そして、耐弾道物品には、さらなる物性の向上が必要とされている。
【0004】
ここで、抗弾道パネルの分野においては、異なる材料の使用が提案されている。
WO2005098343には、硬化ストライクパネルおよび裏打ちパネルを有する装甲システムが記載されている。ストライクパネルに適していると言及されている材料としては、花崗岩、陶製タイル、煉瓦、ガラス、および硬化コンクリートが挙げられる。他方、裏打ちパネルに適していると言及されている材料としては、ガラス、アラミド、ポリエチレン、炭素、および金属材料が挙げられる。
【0005】
WO2008048301には、高靱性繊維のネットワークを含む少なくとも1つの繊維層を含む可撓性防弾ボディアーマーを形成するための複合材料が記載されている。そして高靱性繊維として、少なくとも8種類の繊維が記載された中に、PE繊維およびアラミド繊維が記載されている。本特許文献は、当該発明の糸および布地は同一の材料であることが好ましいが、1種または複数の異なる種類の繊維を含んでもよいことを言及している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らによれば、2種類の高性能材料を組み合わせることにより、すなわち、一方をアラミド材料とし他方を高分子量ポリエチレンとして組み合わせて使用した場合に、弾道抵抗性材料の性能に顕著な改善が得られることが見出された。本発明は、強化線形引張材を含むシートの積層体を含む耐弾道物品であって、前記積層体中の前記線形引張材の方向は一方向性ではなく、前記線形引張材のいくつかは高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、前記線形引張材のいくつかはアラミドを含む、耐弾道物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】5回の射撃後の比較例1パネルの正面および背面写真である。
【図2】5回の射撃後の実施例1パネルの正面および背面写真である。
【図3】5回の射撃後の実施例3パネルの正面および背面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
線形引張材
本明細書の文脈中、「線形引張材」とは、その最大寸法が長さであり、当該長さが、2番目に小さい寸法である幅および最小寸法である厚さよりも大きい物体を意味する。より具体的には、長さと幅との間の比が、一般的に、少なくとも10の物体である。最大比の値は、本発明において重要ではなく、加工パラメータに依存する。一般的な、長さ対幅の比の最大値としては、1000000を挙げることができる。
したがって、本発明で使用される線形引張材は、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、糸、テープ、ストリップ、短繊維糸、および規則的もしくは不規則的な横断面を有する他の細長い物体を含む。
【0009】
本発明の一実施形態においては、線形引張材は、繊維、すなわち、長さが幅および厚さよりも大きく、幅および厚さが同じ大きさの範囲内にある物体である。より具体的には、幅と厚さとの間の比が、一般的に10:1〜1:1の範囲であり、好ましくは5:1〜1:1、さらに好ましくは3:1〜1:1の範囲である。当業者が理解するように、繊維は、おおよそ円形の横断面を有する。この場合には、幅が横断面の最大寸法であり、厚さが横断面の最小寸法となる。
【0010】
繊維の場合、幅および厚さは、一般的に、少なくとも1ミクロン、より具体的には、少なくとも7ミクロンである。マルチフィラメント糸の場合には、幅および厚さは非常に大きくなり、例えば、2mmまでである。モノフィラメント糸の場合には、150ミクロンまでの幅および厚さであることが、より一般的である。具体的な例としては、7〜50ミクロンの範囲の幅および厚さを有する繊維を挙げることができる。
【0011】
本発明において「テープ」とは、長さ、すなわち物体の最大寸法が、幅、すなわち物体の2番目に小さい寸法、および厚さ、すなわち物体の最小寸法よりも大きく、さらに幅が厚さよりも大きい物体と定義する。より具体的には、長さと幅との間の比は、一般的に、少なくとも2であり、テープの幅および積層体の大きさに応じて、この比はより大きくてもよく、例えば、少なくとも4または少なくとも6になり得る。最大比の値は、本発明において重要ではなく、加工パラメータに依存する。一般的な、長さ対幅の比の最大値としては、200000を挙げることができる。幅と厚さとの間の比は、一般的に10:1より大きく、好ましくは50:1より大きく、さらに好ましくは100:1より大きい。幅と厚さとの間の比の最大値は、本発明においては重要ではない。この値は一般的に、大きくても2000:1である。
【0012】
テープの幅は、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも2mm、より好ましくは少なくとも5mm、さらに好ましくは少なくとも10mm、さらに好ましくは少なくとも20mm、特に好ましくは少なくとも40mmである。テープの幅は、一般的に、大きくても200mmまでである。テープの厚さは、一般的に、少なくとも8ミクロン、好ましくは少なくとも10ミクロンである。テープの厚さは、一般的に、厚くても150ミクロン、より好ましくは厚くても100ミクロンまでである。一実施形態としては、テープは、高い線密度で使用される。本明細書においては、「線密度」は、dtexで表し、これは、10,000メートルのフィルムのグラム重量を意味する。一実施形態としては、テープは、少なくとも3000dtex、好ましくは少なくとも5000dtex、より好ましくは少なくとも10000dtex、さらに好ましくは少なくとも15000dtexあるいは少なくとも20000dtexの線密度で使用される。
テープの使用により、非常に優れた耐弾道性能、優れた剥離強度を有し、低面積重量の耐弾道材料を製造することが可能となる。これは特にポリエチレンに当てはまる。
【0013】
本明細書において「線形引張材」の重量パーセントに言及する場合には、常に、部材における高強度成分、すなわちポリエチレン、アラミド、または他の高強度ポリマーを指す。また、線形引張材上に存在する任意のコーティングまたは仕上げ剤は、マトリクス材料に属するよう計算することとする。
【0014】
積層体の組成
本発明による積層体は、線形引張材を含むシートを含む。本明細書においては、「シート」は、線形引張材から成る個々のシートを指し、このシートは他のシートと結合していてもよい。以下で明らかにするように、シートは、マトリクス材料を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0015】
本発明による積層体に使用される線形引張材を含むシートは、それぞれ異なる方法で構成されていてもよい。
一実施形態においては、シートは、線形引張材の製織によって得ることができる。一実施形態においては、テープが経糸および緯糸として使用される。別の実施形態では、テープが経糸または緯糸として使用され、繊維が緯糸または経糸として使用される。さらに別の実施形態では、繊維が経糸および緯糸の両方として使用される。
【0016】
製織により、ポリエチレンを含有しアラミドを含有しない、例えば、ポリエチレンのみを含有するシート、またはアラミドを含有しポリエチレンを含有しない、例えば、アラミドのみを含有するシートを製造することができる。また、アラミドを含む線形引張材およびポリエチレンを含む線形引張材の両方を含有するシートを製造することもできる。一実施形態においては、織られたシートは、ポリエチレンおよびアラミド線形引張材の一方を経糸または緯糸とし、ポリエチレンおよびアラミド線形引張材の他方を緯糸または経糸として含む。経糸として、または緯糸として、あるいは経糸および緯糸の両方として、アラミド線形引張材およびポリエチレン線形引張材の組み合わせを使用することも可能である。
アラミドおよびポリエチレンの両方を含む線形引張材を用いて、織られたシートを形成することも可能である。
【0017】
製織にあたっては、種々の従来公知の製織法を適用することができる。緯糸材は、1本、2本、またはそれ以上の経糸材と交差することができ、連続的な緯糸材を、交互または並列に適用することができる。この観点における一実施形態としては、経糸および緯糸を単純な十字交差パターンを形成するように配置する平織が挙げられる。これは、交互の各列が多数の交差点を作るように、各緯糸材を、各経糸材の上および下を通すことによって作られる。さらなる実施形態としては、朱子織が挙げられる。この実施形態では、2本以上の緯糸材が1本の経糸材の上に浮くか、あるいは逆に2本以上の経糸材が1本の緯糸材の上に浮く製織となる。さらなる実施形態として、綾織を挙げることができる。この実施形態では、1本または複数の経糸材が、2本以上の緯糸材の上および下に交互に規則的に繰り返して織られる。これは、織物に直線状または断続的な対角線状の「畝」を作り、視覚的効果をもたらす。さらなる実施形態としては、バスケット織が挙げられる。バスケット織は、2本以上の経糸繊維が2本以上の緯糸繊維と交互に交織りされることを除いては、平織と基本的に同じである。2本の経糸が2本の緯糸と交差する構成は2x2バスケットと呼ばれるが、繊維の構成は対称的である必要はない。そのため、8x2、5x4等の構成を有することが可能である。さらなる実施形態としては、模紗織が挙げられる。模紗織は平織の変形であり、規則的な間隔で、通常は数本離れた経糸材を、交互に下上させて交錯させるのではなく、2本以上の部材毎に交錯させる。緯糸方向でも同様の頻度で交錯させ、模紗織は、その全体的効果によって厚さが増加し、表面がより粗くなり、空隙率が増加した織物となる。
【0018】
各織り型は、織り方に関連した特徴を有する。例えば、緯糸が1本または少ない本数の経糸材と交差し、それぞれの緯糸材が交互にまたはほぼ交互に使用されている系の場合、シートは、比較的多数の交点を有する。ここで、「交点」とは、緯糸材がシートの片側であるA側からシートの反対側であるB側に向かい、隣接する緯糸材がシートのB側からA側に向かう点を意味する。緯糸が1本または限られた数の経糸材と交差するか、あるいは逆に経糸が1本または限られた数の緯糸材と交差する系の場合、多数の撓み線が存在する。撓み線は、1つの部材がシートの片側から反対側へ向かう場所に生じ、交差する部材の縁によって形成される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの撓み線は、シートのX−Y方向における衝撃エネルギーの散逸に寄与すると考えられている。平織は、比較的容易に製造することができ、さらに、90°回転させても材料の性質が変化せず均一であることが優れた耐弾道性能に結びつくため、本発明においては平織を使用することが好ましい。
適当な製織工程は、当技術分野で既知である。テープ製織工程についての代表的な1例としては、例えば、EP1354991が挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態においては、シート中の線形引張材は、一方向に配向しており、シート中の線形引張材の方向は、積層体中の他のシートにおける線形引張材の方向に対して、より具体的には、隣接するシート中における線形引張材の方向に対して回転している。積層体中の総回転が少なくとも45°に達すると、優れた結果を得ることができる。さらに好ましくは、積層体中の総回転は約90°である。本発明の一実施形態においては、積層体は、1枚のシートにおける線形引張材の方向は、隣接するシートにおける線形引張材の方向と垂直である。この実施形態では、線形引張材を平行に配列し、次いで、例えば、温度および圧力により、またはマトリクス材料を使用することにより、線形引張材を接着させることによってシートを供給することができる。
【0020】
線形引張材が繊維である一実施形態においては、繊維を平行に配列し、次いで、繊維を接着させるのに十分な量のマトリクス材料を繊維間に供給することによって、シートを製造することができる。
線形引張材がテープである場合には、テープを平行に配列することにより適当なシートを調製することができる。一実施形態では、上記の繊維の場合と同様に、1層の平行なテープを供給し、次いで、マトリクス材料を使用して互いに接着させる方法が挙げられる。
【0021】
別の実施形態では、上記同様に平行にテープを供給し、次いで、テープ同士を互いに接着させることによってシートを得ることができる。他の一実施形態では、テープの第1の長手方向の縁は片側の隣接するテープより下にあり、テープの第2の長手方向の縁は反対側の隣接するテープより上にあるように、テープを配列する(瓦ぶき構造)。別の実施形態としては、煉瓦積み様式が挙げられ、第1段階としてテープを平行に配列した第1層を供給し、第2段階として第1層のテープに平行となるようテープの第2層を供給し、このとき、第2層のテープは第1層のテープに対してオフセットするよう配列する。所望であれば、第3およびさらなるテープの層を供給することができる。次いで、温度および圧力を加えて、またはマトリクス材料を使用して、あるいはこれらの組み合わせによって、テープを統合してシートを形成する。
【0022】
最初に、第1方向に配列したテープまたは繊維の層を供給し、次いで、第1方向に対してある角度をなす第2方向に配列したテープまたは繊維の層を供給し、次いで、これらの層を一緒に接着してシートを形成することによって、シートを製造することも可能である。
【0023】
所望であれば、1枚のシートの中で、繊維およびテープを組み合わせて使用することができる。一実施形態においては、シートは、ポリエチレン線形引張材を含有するが、アラミド線形引張材を含有しない。別の実施形態では、シートは、アラミド線形引張材を含有するが、ポリエチレン線形引張材を含有しない。さらなる実施形態では、シートは、アラミド線形引張材およびポリエチレン線形引張材の両方を含む。線形引張材として、アラミドおよびポリエチレンの両方を含有するものもまた可能である。
【0024】
上記したように、線形引張材のいくつかは高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、線形引張材のいくつかはアラミドを含むことが本発明の耐弾道物品において重要である。ポリエチレン単独の線形引張材、またはアラミド単独の線形引張材に加えて、本発明においては、アラミドおよびポリエチレンの両方を含有する線形引張材についての使用も可能である。このような材としては、例えば、ハイブリッド繊維を挙げることができる。
【0025】
本発明の耐弾道物品は、その他、各種の高性能線形引張材、例えば、液晶ポリマーの線形引張材、ならびにポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンケトン(POK)、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリベンゾ(ビス)イミダゾール、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(PIPDまたはM5)、およびポリアクリロニトリルなどの高配向ポリマーの線形引張材を含むことができる。しかしながら、系を可能な限り単純に維持するために、耐弾道物品中の線形引張材は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%を、アラミドおよびポリエチレンの合計で構成することが好ましい。一実施形態としては、耐弾道物品中の線形引張材は、実質的にアラミド材料およびポリエチレンとする。
【0026】
一般に、使用する線形引張材の総重量のうち、アラミドの重量パーセントは、少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも20%とする。また、アラミド線形引張材の重量パーセントは、一般的に、多くても60%、より好ましくは多くても50%、さらに好ましくは多くても40%とする。一実施形態としては、アラミドの重量パーセントを、積層体に使用される線形引張材の総重量の1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%とし、その他を好ましくはUHMWPEとする。別の実施形態としては、アラミドの重量パーセントを15〜40重量%、具体的には15〜30重量%とし、その他を好ましくはUHMWPEとする。一般に、使用する線形引張材の総重量のうち、UHMWPEの重量パーセントは、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、さらに好ましくは少なくとも20%とする。一実施形態としては、UHMWPE材の重量パーセントを、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%とする。一般に、ポリエチレンの重量パーセントは、多くても99%とする。積層体中のアラミドおよびポリエチレン線形引張材の分布は、種々の方法で実施することができる。一実施形態としては、ポリエチレン線形引張材およびアラミド線形引張材の両方を含有するシートを含む積層体とする方法が挙げられる。別の実施形態としては、ポリエチレン線形引張材を含むがアラミド線形引張材を含まないシート、および/またはアラミド線形引張材を含むがポリエチレン線形引張材を含まないシートを含む積層体とする方法が挙げられる。
【0027】
一実施形態では、ポリエチレン線形引張材およびアラミド線形引張材は、積層体の厚さにわたって均一に分布している。すなわち、積層体を積層体の面に平行な面に沿って分割すると、得られる2つまたはそれ以上の部分の組成は同じとなる。
【0028】
別の実施形態では、ポリエチレン線形引張材およびアラミド線形引張材は、積層体の厚さにわたって不均一に分布している。すなわち、積層体を積層体の面に平行な面に沿って分割すると、得られる2つまたはそれ以上の部分の組成は異なる。
【0029】
一実施形態では、積層体、または積層体のシートを一緒に圧縮することによって得られた成形パネルは、異なる組成を有する層を含み、ここでは各層が1枚または複数のシートからなる。例えば、積層体は、隣接する層とは異なる組成を有する2層、3層またはそれ以上の層で構成することができる。各層は、ポリエチレンベースのシートおよびアラミドベースのシートの組み合わせとすることができるが、ポリエチレンのみの層またはアラミドのみの層であってもよい。
【0030】
一実施形態では、物品は、50重量%を超えるポリエチレン線形引張材を含む層、および50重量%を超えるアラミド線形引張材を含む層を含む。例えば、ポリエチレンに富む層は、一般的に、50重量%を超えるポリエチレンベースのシートおよび50重量%未満のアラミドベースのシートを含む。
【0031】
一実施形態では、50重量%を超えるポリエチレン線形引張材を含む層は、さらにポリエチレンに富む層であってもよく、60%を超える層、さらには70%を超える層、さらには80%を超える層、さらには90%を超える層、さらには95%を超える層であってもよい。一実施形態としては、ポリエチレン線形引張材に富む層としては、実質的にポリエチレン線形引張材からなる。
【0032】
ポリエチレンに富む層は、好ましくは物品の打撃面またはその付近、好ましくは成形パネルの打撃面に存在させることにより、弾丸を粉砕するのに貢献する。一実施形態としては、50重量%を超えるアラミド線形引張材を含む層は、さらにアラミドに富む層であってもよく、60%を超える層、さらには70%を超える層、さらには80%を超える層、さらには90%を超える層であってもよい。一実施形態としては、アラミド線形引張材に富む層は、実質的にアラミド線形引張材からなる。一実施形態では、アラミド線形引張材に富む層は、ポリエチレンに富む層の(打撃側から)下に存在させる。この実施形態では、アラミドに富む層は、弾丸の破片を捕らえる、および/または外傷を減少させるのに貢献することができる。アラミド層はさらに、弾丸の衝撃時にパネルを状態維持するのに貢献する。
【0033】
特に指示しない限り、本段落および明細書の残りにおいては、ある種類の線形引張材の重量パーセントは、マトリクス材料を除外した、層中の線形引張材の合計に基づいて計算した重量パーセントとする。したがって、実質的にポリエチレン線形引張材またはアラミド線形引張材からなる層は、マトリクス材料を含むことができる。
【0034】
一実施形態においては、上記したアラミドに富む層は、シールド、特にヘルメットなどの成形品の場合、物品の最上部に存在させる。アラミドに富む層は、物品の硬度を向上させ、また、耐火性を向上させるのに貢献することができる。この実施形態としては、最上層をアラミドに富む層とし、第2層をポリエチレンに富む層とし、第3層を再びアラミドに富む層とする、少なくとも3つの層の積層体とすることが好ましい。
【0035】
さらなる実施形態としては、打撃面から下面に向けて、ポリエチレンに富む層、および等量のポリエチレンおよびアラミドを含む層を含む積層体を挙げることができる。この積層体は、異なる量のアラミドを含有する1つまたは複数のアラミドに富む層と結合されていてもよい。
【0036】
さらなる実施形態としては、少なくとも2層のポリエチレンに富む層を含み、第1のポリエチレンに富む層は第2の層よりもポリエチレン含量を高くする積層体が挙げられる。第1のポリエチレンに富む層は、第2の層よりも積層体の打撃面に近い層としてもよい。あるいは、第2の層(すなわち、ポリエチレン含量が低い層)を、積層体の打撃面により近い層としてもよい。この積層体は、異なる量のポリエチレンまたはアラミドをそれぞれ含有する1つまたは複数のポリエチレンに富む層および/またはアラミドに富む層と結合されていてもよい。
【0037】
一般に、積層体は、積層体全体に基づいて10〜99重量%、好ましくは10〜90重量%のポリエチレンに富む層を含み、積層体全体に基づいて1〜90重量%、好ましくは10〜90重量%のアラミドに富む層を含む。
【0038】
一実施形態では、積層体は、ポリエチレンに富む層(1つまたは複数の個々の層であり得る)を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらに好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%含む。別の実施形態では、積層体は、アラミドに富む層を少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、さらに好ましくは20重量%含む。
【0039】
ポリエチレンについては、線形引張材は、好ましくはポリエチレンテープである。テープの好ましい幅および厚さの仕様については、テープについて上記した通りである。なお、テープが、耐弾道用途への使用に適していることは必要不可欠であり、具体的には、高い破断エネルギーを有するように、テープには、高い引張強度、高い引張弾性率、および高いエネルギー吸収性が求められる。テープは、少なくとも1.0GPaの引張強度、少なくとも40GPaの引張弾性率、および少なくとも15J/gの引張破断エネルギーを有することが好ましい。
【0040】
一実施形態では、テープの引張強度は、少なくとも1.2GPa、好ましくは少なくとも1.5GPa、より好ましくは少なくとも1.8GPa、さらに好ましくは少なくとも2.0GPaである。特に好ましい実施形態では、引張強度は、少なくとも2.5GPa、より好ましくは少なくとも3.0GPa、さらに好ましくは少なくとも4GPaである。別の実施形態では、テープは、少なくとも50GPaの引張弾性率を有する。引張弾性率は、ASTM D882−00に従って測定する。より具体的には、テープは、少なくとも80GPa、好ましくは少なくとも100GPaの引張弾性率を有する。好ましい実施形態では、テープは、少なくとも120GPa、好ましくは少なくとも140GPa、または少なくとも150GPaの引張弾性率を有する。引張弾性率は、ASTM D882−00に従って測定する。
【0041】
別の実施形態では、テープは、少なくとも20J/g、好ましくは少なくとも25J/gの引張破断エネルギーを有する。好ましい実施形態では、ポリエチレンテープは、少なくとも30J/g、好ましくは少なくとも35J/g、より好ましくは少なくとも40J/g、さらに好ましくは少なくとも50J/gの引張破断エネルギー有する。引張破断エネルギーは、ASTM D882−00に従って50%/分のひずみ速度で測定し、応力−ひずみ曲線下の単位質量当たりのエネルギーを積分することによって計算する。以下に、好ましく用いうるポリエチレンテープおよび繊維、ならびにその製造方法について、詳細に説明する。
【0042】
アラミド線形引張材は、繊維またはテープである。繊維としては、モノフィラメント糸またはマルチフィラメント糸である。好ましいアラミド繊維としては、少なくとも2.6GPa、好ましくは少なくとも3.1GPa、最も好ましくは少なくとも3.6GPaの引張強度、および少なくとも60GPa、好ましくは少なくとも75GPa、最も好ましくは少なくとも90GPaの引張弾性率を有するアラミドフィラメントが挙げられる。フィラメントの数および適用される撚りに応じて、得られる撚り繊維または糸の特性は変わる。通常、撚り糸は、少なくとも2.1GPa、好ましくは少なくとも2.6GPa、さらに好ましくは少なくとも3.1GPa、最も好ましくは少なくとも3.6GPaの引張強度、および少なくとも60GPa、好ましくは少なくとも80GPa、最も好ましくは少なくとも100GPaの引張弾性率を有する。
【0043】
一実施形態においては、アラミドテープが使用できる。一実施形態では、アラミドテープは、アラミド繊維を平行に配置し、マトリクス材料を介してこれらを接着させることによって得られる。また、代わりに、あるいは追加的に緯糸を供給することによって接着させ、繊維をまとめてもよい。このようなテープの製造工程は、EP193478、US2004/081815、およびWO2009/068541に記載されている。
【0044】
具体的な実施形態
本発明の耐弾道材料は、強化線形引張材を含むシートの積層体を含む。以下、本発明のいくつかの具体的な実施形態を説明する。
一実施形態としては、積層体は、個々のシートが互いに接着した圧縮積層体であり、例えば、防弾チョッキに使用するための耐弾道パネルが挙げられる。
【0045】
別の実施形態としては、積層体は、例えば2〜10枚のシートの部分積層体を含む。前記部分積層体は、圧縮部分積層体および/または可撓性部分積層体である。可撓性部分積層体は、例えば、シートの縁を縫い合わせることによって得ることができる。圧縮部分積層体は、数枚のシート、例えば、2〜8枚のシート、あるいは、一般に2、4、または8枚のシートの圧密化パッケージである。ここで、「圧密化」とは、シートが互いにしっかりと接着されていることを意味する。当技術分野で既知のように、熱および/または圧力の適用によって、シートを圧密化することができる。
別の実施形態としては、積層体は、例えば2〜10枚のシートによる部分積層体を含み、部分積層体は、縁で結合されて可撓性耐弾道積層体を形成する。
【0046】
一実施形態では、積層体は、少なくとも2つの部分積層体から成り、ここでは第1部分積層体は圧密化積層体であり、第2部分積層体は可撓性部分積層体であり、第1部分積層体の(パネルの打撃側から)下に存在させる。この実施形態では、第1部分積層体は、好ましくはポリエチレンに富む層であり、第2部分積層体は、好ましくはアラミドに富む層である。
【0047】
一実施形態としては、積層体は、ポリエチレンおよび/またはアラミド線形引張材を含むシートの圧縮部分積層体、およびポリエチレンおよび/またはアラミド線形引張材を含む可撓性部分積層体を含む。可撓性部分積層体は、例えば、圧縮部分積層体の上に縫い付けるか、圧縮部分積層体の上に接着することができ、部分積層体は、縁で結合させるか、または袋もしくはカバーに入れて結合させることができる。
【0048】
積層体中の線形引張材の総量に関しては、一実施形態としては、積層体は、1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%のアラミド線形引張材を含み、好ましくは80〜99重量%、さらに好ましくは90〜99重量%のポリエチレン線形引張材を含む(割合は全て、線形引張材の総重量に基づいて計算する)。
【0049】
別の実施形態としては、積層体は、15〜40重量%、好ましくは15〜30重量%のアラミド線形引張材を含み、好ましくは85〜60重量%、さらに好ましくは85〜70重量%のポリエチレン線形引張材を含む(割合は全て、線形引張材の総重量に基づいて計算する)。
【0050】
本発明の一実施形態では、耐弾道物品は、積層体、好ましくは成形積層体であり、具体的には、上面(すなわち、打撃面)から下面に向けて第1層および第2層とした場合に、第1層はポリエチレン線形引張材、好ましくはポリエチレンテープをベースとするシートを含む積層体である。この実施形態では、第1層中の線形引張材は、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%がポリエチレンからなる。一実施形態では、第1層中の線形引張材は、実質的にポリエチレンである。ポリエチレンの性質に関しては、本文書以外で示される好適な性質が参照される。ポリエチレンテープが使用される場合には、第1層は0〜12重量%のマトリクス材料を含有することが好ましい。テープを一緒に接着させるためにはいくらかのマトリクス材料が必要とされるが、12重量%を超えるマトリクス材料の供給は、パネルの耐弾道特性に不利となるため必要とされない。
【0051】
積層体の第1層は、好ましくは、積層体の20〜99重量%を構成する。一実施形態としては、第1層は、積層体の30〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは積層体の30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。別の実施形態としては、第1層は、積層体の50〜99重量%、好ましくは60〜99重量%、より好ましくは70〜99重量%である。さらなる実施形態では、第1層は、80〜99重量%、より好ましくは90〜99重量%、または95〜99重量%である。
【0052】
この実施形態の耐弾道材料の第2層は、アラミド線形引張材、好ましくはアラミド繊維を含有するシートを含む。この実施形態では、第2層中の線形引張材は、アラミド材料を、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%含む。一実施形態では、第2層中の線形引張材は、実質的にアラミド材料である。アラミド線形引張材は、好ましくは繊維である。
アラミドに富む層には、マトリクス材料も存在し得る。繊維の場合には、マトリクス材料は、例えば、5〜30重量%の範囲、より好ましくは15重量%の範囲である。
【0053】
この実施形態の弾道パネルは、例えば、NIJ規格−0101.04 P−BFS性能試験のクラスIIの要件を満たす。好ましい実施形態では、前記規格のクラスIIIaの要件を満たし、さらに好ましい実施形態では、クラスIIIの要件、またはさらに高いクラスの要件を満たす。
【0054】
耐弾道性能は、好ましくは、低面積重量を伴わせ、具体的には大きくても19kg/m、好ましくは大きくても16kg/mの面積重量とすることができる。いくつかの実施形態では、積層体の面積重量は、15kg/mと低くなる。積層体の最小面積重量は、必要とされる最小耐弾道特性によって決まる。
【0055】
具体的な実施形態としては、積層体は、第1層が本質的にポリエチレン線形引張材からなり、第2層が本質的にアラミド線形引張材からなる、シートまたは圧密化シートパッケージの圧縮積層体が挙げられる。積層体は、少なくとも80重量%のポリエチレン、好ましくは少なくとも90重量%のポリエチレン、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリエチレンを含む。
【0056】
別の具体的な実施形態としては、第1のポリエチレンに富む層を圧縮部分積層体とし、第2のアラミドに富む層を可撓性部分積層体とする。積層体は、少なくとも80重量%のポリエチレン、好ましくは少なくとも90重量%のポリエチレン、さらに好ましくは少なくとも95重量%のポリエチレンを含む。この実施形態においては、圧縮部分積層体は、実質的にポリエチレン線形引張材からなるシートを含むことができ、任意に、実質的にアラミド線形引張材からなるシートをさらに含んでいてもよい。例えば、圧縮部分積層体は、実質的にポリエチレンからなるものとし、一般的に少なくとも1重量%、さらには少なくとも5重量%、さらには少なくとも10重量%、さらには20重量%のアラミドを含むものとする。
【0057】
この実施形態における可撓性部分積層体は、実質的にアラミド線形引張材からなるシートを含み、任意に、実質的にポリエチレン線形引張材からなるシートをさらに含んでいてもよい。可撓性部分積層体は、好ましくは、実質的にアラミド線形引張材からなる。
【0058】
本発明の別の実施形態では、耐弾道物品は、積層体、好ましくは成形積層体であり、具体的には、上から下に第1層および第2層とした場合に、各層を圧縮部分積層体とした積層体である。具体的な一実施形態においては、両層は、ポリエチレンに富む層であり、各ポリエチレンに富む層の組成は、同じであっても異なっていてもよい。さらにより具体的な実施形態では、打撃面のまたは打撃面に近い圧縮部分積層体を、実質的にポリエチレン線形引張材からなるシートおよび実質的にアラミド線形引張材からなるシートを共に圧縮したシートを含むものとし、第2層を、実質的にポリエチレン線形引張材からなるシートを含むものとする。
【0059】
さらなる実施形態では、耐弾道物品は、上から下に圧縮層および可撓性層を含み、圧縮層は上から下に第1のポリエチレンに富む層および第2のアラミドに富む層を含み、可撓性層はアラミドに富む層である、積層体である。積層体全体としては、好ましくは、60〜99重量%のポリエチレン、さらに好ましくは75〜90重量%のポリエチレン、および40〜1重量%のアラミド、さらに好ましくは25〜10重量%のアラミドを含む。アラミドに富む層は、好ましくは圧縮積層体の1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%を構成する。
【0060】
本発明の別の実施形態では、上から下にアラミドに富む層、好ましくは全てアラミドの層、ポリエチレンに富む層、好ましくは全てポリエチレンの層、およびさらなるアラミドに富む層を含む、湾曲した耐弾道物品、具体的にはヘルメットが挙げられる。
全実施形態について、ポリエチレン線形引張材は、好ましくは上記のようなテープである。アラミド線形引張材は、好ましくは上記のような繊維である。
【0061】
マトリクス材料
上記したように、本発明による弾道抵抗性材料中には、マトリクス材料が存在していてもよい。耐弾道物品が成形品である場合には、マトリクス材料が個々のシートを互いに接着させるために使用され得るため、マトリクス材料が特に注目される。ここで「マトリクス材料」とは、線形引張材および/またはシートを結合させる材料を意味する。線形引張材が繊維である場合には、マトリクス材料は、繊維同士を接着して一方向性シートを形成するために必要とされる。製織された線形引張材の場合には、製織構造を通して材が結合されるため、マトリクス材料の使用の必要性はなくなる。このため、製織された線形引張材を含むシートを用いると、マトリクス材料の使用を減らしたり、マトリクス材料の使用を完全になくすことができる。
【0062】
本発明の一実施形態では、耐弾道成形品は、マトリクス材料を含有しない。テープと比較してマトリクス材料は、系への耐弾道性への貢献が低いと考えられており、マトリクス材料を含まない実施形態は、その重量比当たりの弾道効率の高い物品を作ることができる。
【0063】
本発明の別の実施形態においては、耐弾道物品は、マトリクス材料を含む。この実施形態では、マトリクス材料は、材料の層間剥離特性を向上させるために用いる。マトリクス材料はまた、耐弾道性能にも貢献することができる。
【0064】
本発明の一実施形態では、マトリクス材料は、シート自体の内部に供給され、そこで線形引張材を互いに接着させる、例えば、一方向性繊維のシートを供給する、または製織後の布地を安定化させるために有用である。
【0065】
本発明の別の実施形態では、シートを積層体中のさらなるシートに接着させるために、マトリクス材料がシート上に供給される。
マトリクス材料をシート上に供給する1つの方法としては、シートの上側、下側、または両側に、マトリクス材料の1枚または複数のフィルムを供給する方法が挙げられる。所望であれば、例えば、フィルムをシートと共に加熱した加圧ロールまたはプレス機を通過させて、フィルムとシートを接着させることができる。
【0066】
マトリクス材料をシート上に供給する別の方法としては、有機マトリクス材料を含有する一定量の液体物質を、シート上に塗布する方法が挙げられる。この実施形態では、マトリクス材料の単純な塗布を可能にするという利点を有する。液体物質としては、例えば、有機マトリクス材料の溶液、分散体、または溶融物が挙げられる。マトリクス材料の溶液または分散体が使用される場合には、そのプロセスとしては、溶媒または分散媒を蒸発させる方法が挙げられる。さらに、マトリクス材料を真空中で塗布することも可能である。場合によっては、液体材料をシートの表面全体に均一に塗布することもできる。一方で、場合によっては、液体材料となっているマトリクス材料を、シートの表面上に不均一に塗布することも可能である。例えば、液体材料を、ドットもしくはストライプの形状、または他の任意の適当なパターン形状に塗布することができる。
【0067】
本発明の一実施形態では、マトリクス材料は、不連続なポリマーフィルム、すなわち、穴が存在するポリマーフィルムである、ウェブの形態で適用される。ウェブでの適用により、低重量のマトリクス材料の供給を可能とする。
【0068】
本発明の別の実施形態では、マトリクス材料は、ポリマー材料のストリップ、糸、または繊維の形状で適用され、後者としては、例えば、織布、不織布、その他ポリマー繊維ウェブの形状が挙げられる。これもまた、低重量のマトリクス材料の供給を可能とする。
【0069】
上記の種々の実施形態では、マトリクス材料は、シート上に不均一に分布する。このため、本発明の一実施形態では、マトリクス材料は、圧縮積層体中で不均一に分布する。このような実施形態においては、外部からの影響によって圧縮積層体の特性が不利となる場所に、より多くのマトリクス材料を供給することができる。
【0070】
マトリクス材料は、完全にまたはポリマーの一部に、ポリマーに使用される通常の充填剤を含有していてもよい。ポリマーは、熱硬化性物質もしくは熱可塑性物質、または両者の混合物である。好ましくは、軟質プラスチックが使用され、具体的には(25℃で)大きくても41MPaの引張弾性率を有するエラストマーである有機マトリクス材料が好ましい。非高分子有機マトリクス材料の使用も想定される。このマトリクス材料には、所望の箇所で、テープおよび/またはシートを一緒に接着するのを助ける機能が求められ、この目的を果たすマトリクス材料であれば、特に限定されるものではない。有機マトリクス材料の破断伸びは、強化テープの破断伸びよりも大きいことが好ましい。マトリクスの破断伸びは、好ましくは3〜500%である。これらの値は、最終的な耐弾道物品中のマトリクス材料そのものに適用される。
【0071】
シートに適した熱硬化性物質または熱可塑性物質としては、例えば、EP833742およびWO−A−91/12136中に列挙されている。熱硬化性ポリマー群からのマトリクス材材料としては、好ましくは、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、エポキシドまたはフェノール樹脂が選択される。これらの熱硬化性物質は、通常、耐弾道成形品の圧縮によってシートの積層体が硬化される前に、部分的硬化状態(いわゆる、Bステージ)でシート状となっている。熱可塑性ポリマーの群からのマトリクス材料としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリオレフィン、またはポリイソプレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレン、もしくはポリスチレン−ポリイソプレンポリスチレンブロック共重合体などの熱可塑性エラストマーブロック共重合体が選択される。
【0072】
マトリクス材料を使用する場合には、マトリクス材料は、一般的に少なくとも0.2重量%の量で適用する。マトリクス材料は、好ましくは少なくとも1重量%の量で、より好ましくは少なくとも2重量%の量で、また、いくつかの例では少なくとも2.5重量%の量で存在することが好ましい。マトリクス材料は、一般的に多くても30重量%の量で適用する。30重量%を超えてマトリクス材料を使用しても、一般的に、成形品の特性は向上させない。
【0073】
マトリクス材料の量はまた、線形引張材がテープであるか繊維であるかにも依存する。繊維の場合には、繊維を平行に一緒に接着したなシートを供給するために、マトリクス材料を使用することができる。この場合のシートにおけるマトリクス含量は、10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。
【0074】
線形引張材がテープである場合には、マトリクス材料の使用は、より少量とすることが好ましい。いくつかの実施形態では、マトリクス材料の使用量は、多くても12重量%、好ましくは多くても8重量%、より好ましくは多くても7重量%、場合によっては多くても6.5重量%とすることが好ましい。
【0075】
アラミド、化学組成
本明細書において、「アラミド」とは、芳香族基の少なくとも60%が、アミド、イミド、イミダゾール、オキサゾール、またはチアゾール結合によって連結されており、アミド、イミド、イミダゾール、オキサゾール、またはチアゾール結合の少なくとも85%は2個の芳香環に直接結合しており、当該2個の芳香環に直接結合しているイミド、イミダゾール、オキサゾール、またはチアゾール結合の数は、2個の芳香環に直接結合しているアミド結合の数を超えない状態の、芳香族基から構成される直鎖状高分子を意味する。好ましい実施形態としては、芳香族基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%が、アミド結合によって連結されている。
【0076】
一実施形態では、アミド結合の少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%は、芳香環のパラ位に存在する。好ましくは、アラミドは、パラ−アラミド、すなわち、実質的に全てのアミド結合が芳香環のパラ位に付いているアラミドである。
【0077】
本発明の一実施形態としては、アラミドは、実質的に100モル%からなる芳香族ポリアミドであり、例えば以下が挙げられる。
【0078】
A. ポリアミドの全単位に基づいて、少なくとも5モル%であるが35モル%未満の式(1)の単位を含有し、
【化1】

(式中、Arは、その鎖延長結合が同軸性または平行であり、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、またはシアノ基で置換されていてもよい、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンまたはピリジレンから選ばれる二価の芳香族基であり、Xは、O、S、およびNHからなる群から選択され、上記ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、またはベンズイミダゾール環のベンゼン環に結合したNH基は、前記ベンゼン環のXが結合した炭素原子に対してメタまたはパラである)、
【0079】
B. ポリアミドの全単位に基づいて、0〜45モル%の式(2)の単位を含有し
【化2】

(式中、Arは、Arの定義と同じであり、Arと同一もしくは異なる、または式(3)の化合物である)、
【化3】

【0080】
C. 上記式(1)および式(2)の単位の総モルに基づいて、等モル量の式(4)の構造単位を含有し、そして
【化4】

(式中、Arは、以下のいずれかの環構造を有し、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、およびシアノからなる群から選択される置換基を含有していてもよい)、
【化5】

【0081】
D.ポリアミドの全単位に基づいて、0〜90モル%の以下の式(5)の構造単位を含有する。
【化6】

(式中、Arは、Arの定義と同じであり、Arと同一もしくは異なる)
【0082】
好ましいアラミドとしては、PPTAとして知られているポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)が挙げられる。PPTAは、p−フェニレンジアミンおよび塩化テレフタロイルのモル対モル重合によって得られるホモポリマーである。別の好ましいアラミドとしては、それぞれp−フェニレンジアミンおよび塩化テレフタロイルの代わりに、他のジアミンまたは二酸塩化物を組み込みんで得られる共重合体である。
【0083】
ポリエチレン、化学組成および製造
本発明で使用するポリエチレンは、ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、または超高分子量ポリエチレンのいずれで示されていてもよいが、少なくとも300000g/モルの重量平均分子量を有する。ここで「直鎖状ポリエチレン」とは、100個の炭素原子当たり1本未満の側鎖、好ましくは300個の炭素原子当たり1本未満の側鎖を有するポリエチレンを意味する。ポリエチレンはまた、5モル%までのプロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、およびオクテンなどの共重合可能な他のアルケンを、1種または複数種含有していてもよい。ポリエチレンは、少なくとも500000g/モルの重量平均分子量を有することが特に好ましい。テープ、特に繊維またはテープに用いる場合には、少なくとも1´10g/モルの分子量を有するものが特に好ましい。本発明においては、使用するのに適したポリエチレンの最大分子量は重要ではない。一般的な値としては、1´10g/モルの最大値を挙げることができる。分子量分布は、WO2009/109632に記載されている方法で測定することができる。
【0084】
本発明の一実施形態としては、比較的狭い分子量分布を有するポリエチレン線形引張材が使用される。これは、大きくても6のMn(数平均分子量)に対するMw(重量平均分子量)の比によって表される。好ましくは、Mw/Mn比は大きくても5であり、より好ましくは大きくても4、さらに好ましくは大きくても3である。大きくても2.5または大きくても2のMw/Mn比を有する材料の使用が、特に好ましい。
【0085】
本発明の好ましい実施形態としては、高分子量かつ狭い分子量分布を有するポリエチレンテープであり、このようなポリエチレンテープは分子配向性が高いことは、そのXRD回折パターンによって確認できる。
【0086】
本発明の一実施形態におけるポリエチレン線形引張材は、200/110一面配向パラメータΦが、少なくとも3であるテープである。200/110一面配向パラメータΦは、反射配置で測定される、テープ試料のX線回折(XRD)パターンにおける200面ピーク面積と110面ピーク面積との間の比として定義される。広角X線散乱(WAXS)は、物質の結晶構造についての情報を提供する技術であり、特に、広角で散乱したブラッグピークの分析に関する。ブラッグピークは、長距離構造秩序から生じる。WAXS測定は、回折パターン、すなわち、回折角2θ(これは、回折ビームと一次ビームとの間の角度である)の関数としての強度を与える。200/110一面配向パラメータは、テープ表面についての200および110結晶面の配向の程度についての情報を与え、200/110一面配向が高いテープ試料とは、200結晶面がテープ表面に対して高度に平行配向していることを表す。引張強度が大きく、引張破断エネルギーが大きい場合には、一般的に、一面配向が高いことが知られている。結晶がランダムに配向した標本の場合には、200面ピーク面積と100面ピーク面積との間の比はおよそ0.4である。しかしながら、本発明の一実施形態で好ましく使用されるテープでは、指数200の結晶がフィルム表面に平行に好ましく配向しており、200/110ピーク面積比の値が大きく、したがって一面配向パラメータの値が大きくなる。本発明による弾道抵抗性材料の一実施形態で使用される狭い分子量分布のUHMWPEテープは、少なくとも3の200/110一面配向パラメータを有する。この値は、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、または少なくとも7であることが好ましい。少なくとも10、または少なくとも15の値などのより大きい値が、特に好ましい。110面ピーク面積がゼロに等しい場合には、このパラメータの理論的最大値は無限大となる。強度および破断エネルギーの値が大きいと、通常、200/110一面配向パラメータの値が大きい。このパラメータの測定方法については、WO2009/109632が参照できる。
【0087】
本発明の一実施形態では、UHMWPEテープ、特に大きくても6のMw/Mn比を有するUHMWPEテープは、少なくとも74%、好ましくは少なくとも80%のDSC結晶化度を有する。DSC結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)、例えば、Perkin Elmer DSC7を使用して、以下のように測定することができる。すなわち、既知重量(2mg)の試料を30℃から180℃まで1分当たり10℃で加熱し、180℃で5分間保持し、次いで1分当たり10℃で冷却する。DSC走査の結果は、温度(x軸)に対する熱流量(mWまたはmJ/s;y軸)のグラフとしてプロットすることができる。結晶化度は、走査の加熱部分からのデータを使用して求める。主融解転移(吸熱)開始の真下と決定された温度から融解の完了が観察された真上の温度までのグラフ下部の面積を決定することによって、結晶の融解転移についての融解エンタルピーΔH(J/g)を計算する。次いで、得られたΔHを、100%結晶性PEについて約140℃の融解温度で測定した融解エンタルピーの理論値(293J/gのΔHc)と比較する。DSC結晶化度指数は、百分率(ΔH/ΔHc)で表される。一実施形態としては、本発明で使用するテープは、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%のDSC結晶化度を有する。
一般に、ポリエチレン線形引張材は、0.05重量%未満、好ましくは0.025重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満のポリマー溶媒含量を有する。
【0088】
一実施形態においては、本発明で使用するポリエチレンテープは、大きい線密度と共に大きい強度を有する。本出願では、線密度をdtexで表す。これは、10,000メートルのフィルムのグラム重量を意味する。一実施形態では、本発明に用いるフィルムは、少なくとも2.0GPa、好ましくは少なくとも2.5GPa、より好ましくは少なくとも3.0GPa、さらに好ましくは少なくとも3.5GPa、なおさらに好ましくは少なくとも4の、上記した強度と共に、少なくとも3000dtex、好ましくは少なくとも5000dtex、より好ましくは少なくとも10000dtex、さらに好ましくは少なくとも15000dtex、特に好ましくは少なくとも20000dtexの線密度を有する。
本発明で使用するのに適したテープとしては、例えば、WO2009/109632に記載されており、関連部分を参照することができる。
【0089】
一実施形態においては、本発明は、線形引張材を含むシートを供給する工程と、積層体における線形引張材の方向が一方向性とならないようにシートを積層する工程と、シートの少なくともいくつかを互いに接着させる工程とを含み、線形引張材のいくつかは超高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、また、線形引張材のいくつかはアラミドを含むプロセスによる、本発明の耐弾道物品の製造に関する。シートの接着は、当技術分野で既知の方法にて行うことができる。軟らかい弾道抵抗性物品の製造の場合には、例えば、シートの縁を縫い合わせて、シートパッケージを形成することができる。一実施形態では、線形引張材を含むシートを供給する工程と、積層体における線形引張材の方向が一方向性とならないようにシートを積層する工程と、少なくとも0.5MPaの圧力下で積層体を圧縮する工程とを含むプロセスによって、成形弾道パネルが製造される。印加される圧力としては、十分な特性を有する耐弾道成形品の形成を保証できる大きさとする。圧力は、少なくとも0.5MPaである。最大圧力としては、例えば、大きくても50MPaを挙げることができる。マトリクス材料と線形引張材および/またはシートとを互いに接着させるためには、必要に応じて、圧縮中の温度を、マトリクス材料の軟化点または融点を超えるように選択する。高温での圧縮とは、例えば、有機マトリクス材料の軟化点または融点よりも高く、線形引張材の軟化点または融点よりも低い圧縮温度で、特定の圧縮時間、特定の圧力に供されることを意味する。必要とされる圧縮時間および圧縮温度は、線形引張材およびマトリクス材料の性質ならびに成形品の厚さに依存し、当業者によって適宜決定され得る。圧縮が高温で行われる場合には、圧縮された材料の冷却も加圧下で行われることが好ましい。加圧下での冷却とは、例えば、少なくとも、成形品の構造が大気圧下で緩和できないような低い温度に達するまで成形品が冷却される間、特定の最小圧力を維持することを意味する。ケースバイケースでこの温度を決定することは、当業者の能力の範囲内である。可能であれば、有機マトリクス材料が大部分もしくは完全に硬化し、または結晶化する温度、かつ、線形引張材の緩和温度未満まで、特定の最小圧力を維持して冷却することが好ましい。冷却中の圧力は、高温での圧力に等しい必要はない。冷却中、成形品およびプレス機の収縮によって引き起こされる圧力の低下を埋め合わせるために、適当な圧力値が維持されるよう圧力を監視することが好ましい。
【0090】
マトリクス材料の性質に応じて異なるが、例えば、シート中の線形引張材が高分子量ポリエチレンの高延伸テープを含む耐弾道成形品を製造する場合には、圧縮温度は好ましくは115〜135℃とし、70℃未満まで一定圧力にて冷却を行う。本明細書中、材料の温度、例えば、圧縮温度とは、成形品の半分の厚さにおける温度を指す。
【0091】
本発明の一実施形態においては、積層体は、2〜8枚、一般に2、4、または8枚を含有する圧密化シートパッケージから組み立てられる。シートパッケージ中のシートの配向については、積層体中のシートの配向について上述した通りである。「圧密化」とは、シートが互いにしっかり接着されていることを意味する。シートパッケージをも圧縮した場合には、非常に良い結果が得られる。当技術分野で既知のように、熱および/または圧力の印加によって、シートを圧密化することができる。
【実施例】
【0092】
いくつかの耐弾道材料を、以下のように製造した。
圧縮積層体または部分圧縮積層体は、積層体を形成するのに適当な材料および量のシートをクロスプライ積層し、この積層体を132℃の温度、60バールの圧力で圧縮した。次いで、材料を冷却し、プレス機から取り出して、圧縮積層体または部分圧縮積層体を得た。
可撓性部分積層体は、個々のシートの縁を縫い合わせることによって製造した。
1つの積層体を形成するために部分積層体を同時に成形しない場合には、部分積層体を射出前に結合させた。
パネルの総面積重量は、15.5kg/mとなるようにした。
【0093】
PEシートは、テープを平行に配列させて第1層を形成し、第1層中のテープに平行かつオフセットするよう第1層上に少なくとも1層のさらなるテープの層を配列させ、その後にシートを形成するようにテープ層を熱プレスして製造した。このとき、80mm幅で55μmの厚さを有するUHMWポリエチレンテープを使用した。このテープは、2.3GPaの引張強度、および165GPaの引張弾性率を有していた。また、単一の種類のPEシートを使用した。A型シートは、約220μmの厚さの0〜90°クロスプライとした(マトリクス含量:3重量%)。
【0094】
積層アラミドシートとしては、2種類のアラミドシートを使用した。まず、低分子量PEの外側コーティングを含むスチレン−イソプレン−スチレンマトリクス中に(マトリクス含量約20重量%)、PPTAアラミド繊維を一方向に配列させることによって、積層アラミドシートを製造した。この系は、アラミドUDと呼ぶ。また、アラミド織物をベースとするシートを、Teijin製Twaron CT 736織物として商業的に知られているアラミド織物と、マトリクスとしてポリフェノール樹脂を用いて製造した(マトリクス含量11重量%)。この系は、アラミド織物と呼ぶ。
種々の構成となるパネルは、PEをベースとするシートおよび/またはアラミドをベースとするシートを、表1に示す量となるよう積層することによって製造した。
【0095】
【表1】

【0096】
NIJ III 01.04.04にしたがって、パネルの外傷評価試験を行った。このときの速度は、838〜856m/sの範囲とした。試験の結果、弾丸はパネル中で停止することが分かった。全てが同じ組成である比較例パネルの結果は、比較例1〜3の結果を平均したものである。
【0097】
【表2】

【0098】
表2の結果は、ハイブリッドパネル、すなわち、ポリエチレンおよびアラミドの両方を含むパネル(実施例1〜5)の性能が、ポリエチレンからなるパネルの性能に匹敵しており、さらには外傷について減少さえしている(実施例2および4)ことを示している。一般的に許容される外傷の最大量は、44mmである。
【0099】
図1〜3に、5回の射撃後に撮影した、比較例1ならびに実施例1および3のパネルの正面および背面の写真を示す。
写真から判るように、アラミドによって、弾丸破片が耐弾道パネル内にとどまり、全てポリエチレン(比較例1)の背面に対してパネルの背面が改善され、弾道パネルの背面は、アラミドから成る材料(実施例1および3)で著しく改善されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化線形引張材を含むシートの積層体を含む耐弾道物品であって、
前記積層体中の前記線形引張材の方向は一方向性ではなく、
前記線形引張材のいくつかは高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、前記線形引張材のいくつかはアラミドを含む、耐弾道物品。
【請求項2】
前記高分子量ポリエチレンを含む線形引張材は、少なくとも5mmの幅を有するポリエチレンテープである、請求項1に記載の耐弾道物品。
【請求項3】
前記アラミドを含む線形引張材は、PPTA繊維である、請求項1または2に記載の耐弾道物品。
【請求項4】
前記積層体は、ポリエチレン線形引張材、およびアラミド線形引張材の両方を含有するシートを含む、請求項1から3いずれか記載の耐弾道物品。
【請求項5】
前記積層体は、ポリエチレン線形引張材を含みアラミド型線形引張材を含まないシート、および/またはアラミド型線形引張材を含みポリエチレン線形引張材を含まないシートを含む、請求項1から4いずれか記載の耐弾道物品。
【請求項6】
前記シート中の線形引張材は一方向に配向しており、シートにおける前記線形引張材の方向が、シート中にて隣接するテープの方向に対して回転している、請求項1から5いずれか記載の耐弾道物品。
【請求項7】
シートは、織られた線形引張材を含む、請求項1から5いずれか記載の耐弾道物品。
【請求項8】
前記シートは、ポリエチレンおよびアラミド線形引張材の一方を経糸または緯糸として含み、かつポリエチレンおよびアラミド線形引張材の他方を緯糸または経糸として含む、請求項7に記載の耐弾道物品。
【請求項9】
前記ポリエチレン線形引張材およびアラミド線形引張材は、パネルの厚さにわたって不均一に分布している、請求項1から8いずれか記載の耐弾道物品。
【請求項10】
前記積層体は、50重量%を超えるポリエチレン線形引張材を含む層、および50重量%を超えるアラミド線形引張材を含む層を含む、請求項9に記載の耐弾道物品。
【請求項11】
線形引張材を含むシートであって、線形引張材のいくつかは高分子量ポリエチレンを含み、線形引張材のいくつかはアラミドを含む、線形引張材を含むシート。
【請求項12】
前記シートは、ポリエチレンおよびアラミド型線形引張材の一方を経糸または緯糸として含み、かつポリエチレンおよびアラミド型線形引張材の他方を緯糸または経糸として含む織られたシートである、請求項11に記載のシート。
【請求項13】
請求項1から10いずれか記載の耐弾道成形品の製造に使用するのに適した圧密化シートパッケージであって、
前記シートパッケージ中の線形引張材の方向は一方向性ではなく、
前記線形引張材のいくつかは超高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、また、前記線形引張材のいくつかはアラミドを含む、圧密化シートパッケージ。
【請求項14】
請求項1から10いずれか記載の耐弾道物品を製造する方法であって、
線形引張材を含むシートを供給する工程と、
積層体における前記線形引張材の方向が一方向性とならないように前記シートを積層する工程と、
前記シートの少なくともいくつかを互いに接着させる工程を含み、
前記線形引張材のいくつかは超高分子量ポリエチレンを含む線形引張材であり、また、前記線形引張材のいくつかはアラミドを含む、耐弾道物品を製造する方法。
【請求項15】
線形引張材を含むシートを供給する工程と、
積層体における前記線形引張材の方向が一方向性とならないように前記シートを積層する工程と、
少なくとも0.5MPaの圧力下で前記積層体を圧縮する工程と、を含むプロセスによって成形品を製造する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515941(P2013−515941A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545343(P2012−545343)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070633
【国際公開番号】WO2011/076914
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】