説明

耐擦傷性が改良されたハードコート用組成物

【課題】高い透明性を保持しながら耐擦傷性の優れたハードコート組成物を提供する。
【解決手段】体積平均粒子径0.01〜0.5μmのゴム粒子含有グラフト重合体(A)、ハードコート剤(B)、および有機溶剤(C)からなり、固形分濃度が0.5〜10重量%であり、(A)成分と(B)成分の合計100重量部あたり(A)成分が0.5〜50重量部、(B)成分が99.5〜50重量部であるハードコート用組成物。ゴム粒子含有グラフト重合体(A)を有機溶剤(C)に分散させた後、ハードコート剤(B)を混合することを特徴とする、前記ハードコート用組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐擦傷性に優れゴム粒子含有グラフト重合体とハードコート剤からなるハードコート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコートは一般に、基材表面の耐擦傷性を向上させるために、プラスチックやガラスの表面コート等に多用されている。ハードコート剤としては、多官能アクリレート系樹脂、アミノ系樹脂、ポリシロキサン系樹脂等が用いられている。これらのハードコート剤では、紫外線や熱によりアクリル基、アミノ基、イソシアネート基、シラノール基等の付加、縮合反応等を応用して硬化を行っている。しかしながら、従来のハードコートでは特に基材との密着性や硬度が不十分なことが問題となっていた。硬度を高めるために無機粒子を配合する技術も知られている(特許文献1、2)。しかしながら、無機粒子を配合すると脆くなったり透明性が低下する問題があった。
【特許文献1】特開2002−241700号公報
【特許文献2】特開2004−50810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、通常要求されることの多い高い透明性を保持しながら耐擦傷性の優れたハードコート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ゴム粒子含有グラフト重合体とハードコート剤を含有するハードコート用組成物を見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち本発明の第1は、体積平均粒子径0.01〜0.5μmのゴム粒子含有グラフト重合体(A)、ハードコート剤(B)、および有機溶剤(C)からなり、固形分濃度が0.5〜10重量%であり、(A)成分と(B)成分の合計100重量部あたり(A)成分が0.5〜50重量部、(B)成分が99.5〜50重量部であるハードコート用組成物に関する。
【0006】
本発明の第2は、ゴム粒子含有グラフト重合体(A)を有機溶剤(C)に分散させた後、ハードコート剤(B)を混合することを特徴とする、第1の発明のハードコート用組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム粒子含有グラフト重合体とハードコート剤からなるハードコート用組成物は、高い透明性を保持しながら優れた耐擦傷性を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、体積平均粒子径0.01〜0.5μmのゴム粒子含有グラフト重合体(A)とハードコート剤(B)を含有するハードコート用組成物である。ゴム粒子を用いることにより応力を緩和して優れた耐擦傷性を実現し、ゴム粒子にグラフト成分を共重合することにより該粒子を組成物中に微分散させ高い透明性を保持することができる。
【0009】
本発明のゴム粒子含有グラフト重合体(A)に使用するゴム粒子としては、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、ブタジエン系ゴム等が挙げられる。アクリル系ゴムとしては、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどの炭素数1〜5程度のアルキル基をもつアクリル酸アルキルエステルとグラフト交叉剤とからなるゴム等、シリコーン系ゴムとしては直鎖状、分岐状または環状構造を有するオルガノシロキサンとグラフト交叉剤とよりなるゴム等、ブタジエン系ゴムとしてはブタジエン60〜100重量%、これと共重合可能なビニル単量体40〜0重量%、および架橋性単量体0〜5重量%からなるゴム等が一般的に使用できる。より耐擦傷性の優れたハードコート膜が得られると言う観点からは、ゴム粒子のTgは0℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましい。
【0010】
アクリル系ゴムのグラフト交叉剤としてはメタクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等、シリコーン系ゴムのグラフト交叉剤としてはp−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等、ブタジエン系ゴムの架橋剤としてはメタクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等が使用できる。
【0011】
ゴム粒子の体積平均粒子径は、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.2μm、さらに好ましくは0.03〜0.1μmである。体積平均粒子径0.01μm未満のゴム粒子を合成することは難しく、体積平均粒子径0.5μmを越えるゴム粒子を使用した最終ハードコート付基材は透明性が悪くなることがある。
【0012】
ゴム粒子含有グラフト重合体中のゴム粒子の割合は30〜90重量%、好ましくは50〜80重量%である。30重量%未満の場合には最終ハードコート付基材の耐擦傷性改良効果が小さくなる。また、90重量%を越える場合にも最終ハードコート付基材の耐擦傷性改良効果が小さくなる。
【0013】
ゴム粒子含有グラフト重合体のグラフト単量体としてはスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体、アクリル酸エチルやアクリル酸ブチルなどの炭素数1〜5程度のアルキル基をもつアクリル酸アルキルエステルやp−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0014】
本発明のゴム粒子含有グラフト重合体(A)の製造法は、特に限定されず、乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法、水系分散重合法など公知の重合方法が使用できる。なかでも、粒子径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、乳化重合法により製造することが特に好ましい。
【0015】
グラフト重合には通常ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。上記重合を、例えば、硫酸第一鉄−ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ−エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩、硫酸第一鉄−グルコース−ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄−ピロリン酸ナトリウム−リン酸ナトリウムなどのレドックス系で行うと、低い重合温度でも効率的に重合を完了することができる。
【0016】
本発明で得たゴム粒子含有グラフト重合体は、通常の塩あるいは酸凝固による後処理を行い粉体にすることもできるが、溶剤凝固を行って乳化剤等の不純物を除き有機溶剤に分散させた分散液にする方がグラフト重合体をハードコート剤に均一分散できる。溶剤凝固に利用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。分散液に使用する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるハードコート剤(B)としては、アクリル系樹脂又はアミノ系樹脂、シリコーン系樹脂等が適用可能である。
【0018】
アクリル系樹脂としては、例えば、イソシアネート基含有(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、オリゴエステル(メタ)アクリレートなどの2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAにアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)が付加した付加体のジ(メタ)アクリレート[例えば、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパンなど]などの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ホスファゾ基−P=N−と(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが含まれる。
【0019】
このアクリル樹脂系ハードコート剤は、生産性を向上させるため光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン又はその誘導体(ベンゾイン,ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなど)、ケトン類(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノンやその誘導体(アルコキシアセトフェノンなど)、プロピオフェノン又はその誘導体(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなど)、ベンゾフェノン又はその誘導体(4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、4,4´−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ケトンなど)、ベンジル又はその誘導体(ベンジルおよびベンジルメチルケタールなど)、チオキサントン又はその誘導体(2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)などの慣用の光重合開始剤が使用できる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。光重合開始剤の量は、ハードコート樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度の範囲から選択できる。なお、光重合開始剤は、光重合促進剤(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、p−ジメチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジエチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどの第3級アミン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類など)と組み合わせて使用してもよい。
【0020】
シリコーン系樹脂としては、オルガノアルコキシシラン及び/またはその加水分解物が挙げられる。具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルプロポキシシラングリシドキシメチルトリブトキシシランまたはその加水分解物が挙げられる。これらは単体または2種類以上併用して用いることが可能である。加水分解はアルコールの有機溶剤中、酸の存在下で加水分解して使用するのが好ましい。
【0021】
アミノ系樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
【0022】
本発明のハードコート用組成物を構成する一成分である有機溶剤(C)としては炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類などが使用できる。具体例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等が挙げられる。有機溶剤(C)の使用量は、ハードコート用組成物の固形分濃度が0.5〜10重量%となるように調整することが好ましい。
【0023】
(A)〜(C)成分の混合順序にはとくに限定は無いが、得られるハードコート膜の透明性が優れるという点からは、ゴム粒子含有グラフト重合体(A)を有機溶剤(C)の一部または全部に分散させた後、ハードコート剤(B)を混合することが好ましい。
【0024】
本発明のハードコート用組成物を基材上にコーティングし製膜することにより、ハードコート膜を得ることができる。コーティング方法はスプレー法、ディッピング法、スピンナー法などの方法から適宜選択すればよい。ハードコート膜は基材上に単独で形成しても良く、他の被膜とともに形成しても良い。他の被膜としては、例えば保護膜、平坦化膜、高屈折率膜、低屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、プライマー膜などが挙げられる。
【0025】
本発明のハードコート用組成物をコーティングする基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリル等のプラスチックやガラス等が挙げられる。基材の形状はとくに限定されず、フィルム状でも板状でもレンズ状でも良い。
【0026】
本発明のハードコート用組成物は、テレビ、パソコン等の電子機器などに使用できる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、以下の実施例および比較例における測定および試験はつぎのように行った。
【0028】
[体積平均粒子径]
有機高分子粒子、またはコアシェル粒子をラテックスの状態で測定した。測定装置として、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRAC UPAを用いて、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0029】
[Hazeの測定]
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH−300A)を用いてHazeの測定を行なった。
【0030】
[耐擦傷性の評価]
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0031】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に少数の傷が認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0032】
[密着性の評価]
PETフィルムの表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。
【0033】
残存升目の数90個以上 :○
残存升目の数89〜70個:△
残存升目の数69個以下 :×
【0034】
(実施例1〜3)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部(種々の希釈水も含む水の総量)およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(SDBS)6重量部(固形分)を混合した後50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行う。その後ブチルアクリレート9.75重量部、メタクリル酸アリル(AlMA)0.25重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合液を加える。30分後、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部を加えてさらに1時間重合させた。その後ブチルアクリレート87.75重量部、AlMA2.25重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.1重量部の混合液を3時間かけて連続追加する。2時間の後重合を行ってゴムラテックス(ゴム粒子−1)を得た。合成後の体積平均粒子径は0.04μmであった。
【0035】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部およびゴムラテックス(ゴム粒子−1)70重量部(固形分)を混合した後60℃に昇温し、液温が60℃に達した後、窒素置換を行う。その後、メタクリル酸メチル(MMA)30重量部およびパラメンタンハイドロパーオキサイド0.03重量部の混合液を3時間かけて連続添加した。2時間の後重合を行ってラテックス状のゴム粒子含有グラフト重合体を得た。
【0036】
つづいて、ラテックス状のゴム粒子含有グラフト重合体100重量部に対し、アセトンをまず50重量部を加えて5分間撹拌し、その後アセトン150重量部を加えて25分間撹拌した。3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。上澄液を除いた後、濾紙を用いて凝固粒子層を単離した。それをメタノール70重量%、n−ヘキサン30重量%の混合溶剤300重量部に分散させた。この分散液を3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。濾紙を用いて凝固粒子層を単離し、ゴム粒子含有グラフト重合体の凝固物を得た。
【0037】
単離されたゴム粒子含有グラフト重合体の凝固物をメチルイソブチルケトン(MIBK)に分散させ、濃度6重量%の分散液を得た。この分散液とハードコート剤ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、新中村化学製)を混合し、さらにMIBKを追加して表1に示したDPHA/ゴム粒子含有グラフト重合体割合で固形分が6重量%の塗布液を調整した。この塗布液のDPHA100重量部に対して、イルガキュア184(チバスペシャリティケミカル製)を5重量部加えた。
【0038】
この塗膜液をPETフィルムにバーコーター法で塗布し、70℃で10分間乾燥し、その後紫外線照射を行った。このようにして得た被膜の厚さは2μmであった。ハードコート膜付基材の特性を測定して結果を表1に示した。
【0039】
(実施例4)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部(種々の希釈水も含む水の総量)およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(SDBS)6重量部(固形分)を混合した後50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行う。その後ブチルアクリレート9.5重量部、メタクリル酸アリル(AlMA)0.5重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合液を加える。30分後、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部を加えてさらに1時間重合させた。その後ブチルアクリレート85.5重量部、AlMA4.5重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.1重量部の混合液を3時間かけて連続追加する。2時間の後重合を行ってゴムラテックス(ゴム粒子−2)を得た。合成後の体積平均粒子径は0.04μmであった。
【0040】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部およびゴムラテックス(ゴム粒子−2)70重量部(固形分)を混合した後60℃に昇温し、液温が60℃に達した後、窒素置換を行う。その後、アクリル酸メチル(MMA)30重量部およびパラメンタンハイドロパーオキサイド0.03重量部の混合液を3時間かけて連続添加した。2時間の後重合を行ってラテックス状のゴム粒子含有グラフト重合体を得た。
【0041】
つづいて、ラテックス状のゴム粒子含有グラフト重合体100重量部に対し、アセトンをまず50重量部を加えて5分間撹拌し、その後アセトン150重量部を加えて25分間撹拌した。3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。上澄液を除いた後、濾紙を用いて凝固粒子層を単離した。それをメタノール70重量%、n−ヘキサン30重量%の混合溶剤300重量部に分散させた。この分散液を3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。濾紙を用いて凝固粒子層を単離し、ゴム粒子含有グラフト重合体の凝固物を得た。
このゴム粒子含有グラフト重合体を用い実施例1と同様の方法で塗布液を調整しハードコート膜付基材を得た。ハードコート膜付基材の特性を測定して結果を表1に示した。
【0042】
(比較例1)
なにも塗布しないPETフィルムの評価結果を表1に示した。
【0043】
(比較例2)
ゴム粒子含有グラフト重合体を配合しない塗布液の膜付基材の特性を測定して結果を表1に示した。
【0044】
(比較例3)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.002重量部およびエチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部を混合した後60℃に昇温し、液温が60℃に達した後、窒素置換を行う。その後、アクリル酸メチル(MMA)100重量部およびパラメンタンハイドロパーオキサイド0.1重量部の混合液を6時間かけて連続添加した。2時間の後重合を行ってラテックス状の重合体を得た。
【0045】
つづいて、このラテックス状の重合体100重量部に対し、アセトンをまず50重量部を加えて5分間撹拌し、その後アセトン150重量部を加えて25分間撹拌した。3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。上澄液を除いた後、濾紙を用いて凝固粒子層を単離した。それをメタノール70重量%、n−ヘキサン30重量%の混合溶剤300重量部に分散させた。この分散液を3時間静置すると凝固粒子層と透明な上澄層に分離する。濾紙を用いて凝固粒子層を単離し、重合体の凝固物を得た。この重合体はゴム粒子を含有していない。
この重合体を用い実施例1と同様の方法で塗布液を調整しハードコート膜付基材を得た。ハードコート膜付基材の特性を測定して結果を表1に示した。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径0.01〜0.5μmのゴム粒子含有グラフト重合体(A)、ハードコート剤(B)、および有機溶剤(C)からなり、固形分濃度が0.5〜10重量%であり、(A)成分と(B)成分の合計100重量部あたり(A)成分が0.5〜50重量部、(B)成分が99.5〜50重量部であるハードコート用組成物。
【請求項2】
ゴム粒子含有グラフト重合体(A)を有機溶剤(C)に分散させた後、ハードコート剤(B)を混合することを特徴とする、請求項1記載のハードコート用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−70696(P2010−70696A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241932(P2008−241932)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】