説明

耐水性偏光膜の製造方法

【課題】耐水化処理液で偏光膜の耐水化処理を行った後においても、偏光膜中に存在する有機色素分子の配向に乱れを発生することなく、高い二色性を有する耐水性偏光膜を得ることが可能な耐水性偏光膜の製造方法を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む偏光膜の少なくとも一方の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させることを特徴とする耐水性偏光膜の製造方法。
【化1】


(式中、Qは置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水化処理液で偏光膜の耐水化処理を行った後においても、偏光膜中に存在する有機色素分子の配向に乱れを発生することなく、高い二色性を有する耐水性偏光膜を得ることが可能な耐水性偏光膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一部の偏光膜には、水溶性を付与するために、スルホン酸塩基を有する有機色素が用いられている。このような偏光膜は、有機色素のスルホン酸塩基がイオン化して水に溶解するため、耐水性に乏しい。
これに対して、特開平11−021538号公報には、偏光膜の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液(例:塩化バリウム水溶液)を接触させて、有機色素のスルホン酸塩基の1価陽イオンを、水に不溶な多価陽イオンに置換することで、水に対する耐水性を向上させた耐水性偏光膜を得ることができる有機薄膜の製法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−021538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の耐水性偏光膜の製造方法においては、偏光膜に耐水化処理液を接触させると、有機色素の配向の度合い(二色性)が低下するという問題があった。そのため、かかる問題を解決した耐水性偏光膜の製造方法が求められている。
【0004】
ここに、一般に、スルホン酸塩基を有する有機色素を含む偏光膜に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させると、スルホン酸塩基の1価陽イオンは、略完全に多価陽イオンに置換される。従って、耐水化処理前の偏光膜に含まれる1価陽イオンがどのような種類であっても、同じ多価陽イオンを含む耐水化処理液で、充分に耐水化処理を施した偏光膜(耐水性偏光膜)は、同一構造の有機色素で形成されることから、得られる偏光膜の二色性にも大差がないものと予想されていた。
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(ア)特定構造のアゾ化合物を含む偏光膜において、(イ)耐水化処理前のスルホン酸塩基の1価陽イオンをリチウムにすることによって、予想に反して、耐水化処理後の二色性を高く保持することができることを見出した。
【0006】
前記(ア)及び(イ)の条件を備えることにより、有機色素としてのアゾ化合物中のスルホン酸塩基に対して、水に溶解して1価陽イオンとなるリチウムを結合させた状態で作製された偏光膜には、外因を受け難いアゾ化合物の強固な配向構造が形成されているものと考えられ、従って、耐水化処理後に1価のリチウムイオンから多価陽イオンに置換された後においても、アゾ化合物の配向構造が偏光膜中で保持されることにより、二色性を高く保持することが可能になるものと考えられる。
【0007】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、耐水化処理液で偏光膜の耐水化処理を行った後においても、偏光膜中に存在する有機色素分子の配向に乱れを発生することなく、高い二色性を有する耐水性偏光膜を得ることが可能な耐水性偏光膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る耐水性偏光膜の製造方法は、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む偏光膜の、少なくとも一方の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させることを特徴とする。
【化1】

(式中、Qは置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す)
【0009】
好ましい実施形態においては、前記耐水化処理液を接触させる前の偏光膜に含まれるリチウム量が、偏光膜の総重量に対して、25,000重量ppm〜50,000重量ppmであることが望ましい。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記耐水化処理液を接触させる前の偏光膜が、偏光膜の総重量に対して、80重量%〜100重量%の前記アゾ化合物を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
アゾ化合物を含むとともにスルホン酸塩基に1価の陽イオンとなるリチウムが結合された偏光膜の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させて耐水化処理を行うことにより、偏光膜中に存在するアゾ化合物分子の配向に乱れを発生することなく、高い二色性を有する耐水性偏光膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)耐水性偏光膜の製造方法
本発明に係る耐水性偏光膜の製造方法は、特定のアゾ化合物を含む偏光膜の少なくとも一方の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させることを特徴とする。
【0013】
前記製造方法は、前記条件を満足する限りにおいて特に制限はなく、製造方法中に任意の工程を含有し得る。例えば、偏光膜の少なくとも一方の表面に多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させた後に、偏光膜に付着した耐水化処理液を水洗する工程や乾燥する工程等を含んでいてもよい。このような製造方法によれば、耐水化処理後における偏光膜の二色性を、好ましくは30以上、更に好ましくは35以上とすることができる。
【0014】
(2)耐水化処理前の偏光膜
本発明に係る耐水性偏光膜の製造方法において使用される耐水化処理前の偏光膜は、下記一般式(1)で表されるアゾ化合物を含むことを特徴とする。
【化1】

上記一般式(1)中、Qは置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。上記一般式(1)中、ヒドロキシル基(−OH)及びアミノ基(−NHR)の置換位置については、特に制限はなく、ナフタレン骨格の任意の位置に置換していてもよい。
【0015】
このようなアゾ化合物は、相互に隣接するスルホン酸塩基の位置が適度に離れているため、イオン半径が比較的小さいリチウムを、イオン半径の大きな多価陽イオンにイオン交換した後においても、アゾ化合物の直線性が保持される。これにより、耐水性偏光膜の配向の度合い(二色性)は、耐水化処理の前後で高く維持されるものである。
【0016】
上記耐水化処理前の偏光膜は、スルホン酸リチウム基を有するアゾ化合物を含むため、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)により、リチウムが検出される。偏光膜のリチウム量は、偏光膜の総重量に対して、好ましくは25.000重量ppm以上であり、更に好ましくは25,000重量ppm〜50,000重量ppmである。リチウム量がこの範囲に存在していれば、二色性が高く、且つ、機械的強度に優れた耐水性偏光膜を得ることができる。
【0017】
尚、リチウム量が少な過ぎると、アゾ化合物のスルホン酸基に対するリチウムのモル比が100%未満となり、アゾ化合物相互の分子間距離が不均一になるため、分子間相互作用が弱まり、結果として、配向性が低くなる場合や耐水化処理液を接触させた際に偏光膜に亀裂が生じ易くなる場合がある。
【0018】
アゾ化合物は、アニリン誘導体とナフタレンスルホン酸誘導体とを、常法(細田豊著 「理論製造 染料化学(5版)」 昭和43年7月15日、技法堂発行 135頁〜152ページ)に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得、さらに、このモノアゾ化合物を、同様に常法によりジアゾ化し、ナフタレンジスルホン酸誘導体とカップリング反応させたものを、塩化リチウムで塩析することによりリチウム塩として得ることができる。
【0019】
上記アニリン誘導体としては、例えば、4−ニトロアニリン、4−シアノアニリン、4−メトキシアニリン等が挙げられる。上記ナフタレンスルホン酸誘導体としては、例えば、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記ナフタレンジスルホン酸誘導体としては、例えば、1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸−ナトリウム一水和物等が挙げられる。
【0020】
上記アゾ化合物は、好ましくは、下記一般式(2)で表されるアゾ化合物であり、さらに好ましくは、下記一般式(3)で表されるアゾ化合物である。一般式(2)において、−OH基、−NHR基、及び、−X基は、結合する芳香環のいずれの位置に置換していてもよい。一般式(2)及び(3)中、Rは式(1)と同様であり、Xは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【化2】

【化3】

【0021】
このようなアゾ化合物は、溶媒に溶解した状態で液晶性(即ち、リオトロピック液晶性)を示し、配向性に優れる。
【0022】
また、耐水化処理前の偏光膜は、上記一般式(1)〜(3)のいずれかのアゾ化合物を、偏光膜の総重量に対して、好ましくは80重量%〜100重量%含み、さらに好ましくは90重量%〜100重量%含む。
【0023】
上記耐水化処理前の偏光膜は、上記のいずれかのアゾ化合物を含むものであれば特に制限はなく、他の化合物や添加剤を含有していてもよい。他の化合物としては、例えば、ペリレン系化合物、アントラキノン化合物、ペリレン化合物、キノフタロン化合物、ナフトキノン化合物、メロシアニン化合物等が挙げられる。添加剤としては、界面活性剤、酸化防止剤、抗菌剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0024】
耐水化処理前の偏光膜は、代表的には、上記一般式(1)〜(3)で表されるアゾ化合物と、溶媒とを含むコーティング液を流延し、乾燥して得られるものである。アゾ化合物は、液晶状態で剪断応力を加えると、流動により配向させることができる。また、アゾ化合物は、液晶性コーティング液中で、超分子会合体を形成しており、これを含むコーティング液に剪断応力を加えて流動させると、超分子会合体の長軸方向が流動方向に配向する。配向手段は、剪断応力に加えて、ラビング処理や光配向等の配向処理、磁場や電場による配向等を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記溶媒としては、特に制限はないが、好ましくは親水性溶媒が用いられ得る。親水性溶媒は、好ましくは、水、アルコール類、セロソルブ類である。
【0026】
(3)耐水化処理液
本発明の耐水性偏光膜の製造方法に使用される耐水化処理は、上記アゾ化合物を含む偏光膜の少なくとも一方の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させる処理である。多価陽イオンを含む耐水化処理液は、代表的には、それらの多価陽イオンを供する塩化物の水溶液(例:塩化バリウム水溶液、塩化鉛水溶液等)用いることができる。
【0027】
上記多価陽イオンとしては、特に制限はなく、例えば、アルカリ土類金属イオンや金属イオン、カチオン性ポリマー等が挙げられる。金属イオンとしては、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Pd2+等が挙げられる。これらの多価陽イオンは、2種類以上混合して用いてもよい。
【0028】
多価陽イオンを含む耐水化処理液の濃度は、好ましくは1%〜40%であり、さらに好ましくは5%〜40%である。濃度が高すぎると、取扱が難しくなる場合があり、濃度が低すぎると耐水化の効果が小さくなる場合がある。
【0029】
多価陽イオンを含む耐水化処理液の液温は、好ましくは5℃〜60℃であり、さらに好ましくは10℃〜40℃である。液温が高すぎたり、低すぎたりすると、耐水化処理後の耐水性偏光膜にクラックが生じたり、耐水性偏光膜が白く濁ったりする場合がある。
【0030】
多価陽イオンを含む耐水化処理液は、好ましくは、塩化バリウム水溶液である。塩化バリウム水溶液は、中性であるため塗布コータを腐食する心配がなく、また、工業的に入手し易いことに基づく。
【0031】
多価陽イオンを含む耐水化処理液を偏光膜の少なくとも一方の表面に接触させる手段(接触手段)としては、特に制限はなく、例えば、偏光膜を多価陽イオンを含む耐水化処理液中に浸漬してもよいし、多価陽イオンを含む耐水化処理液を偏光膜の表面に塗布してもよい。
【0032】
(4)耐水性偏光膜
耐水性偏光膜は、上記一般式(1)〜(3)で表されるアゾ化合物を含む偏光膜を、上述したように耐水化処理することによって得られる。耐水性偏光膜は、上記一般式(1)〜(3)中、リチウム原子が多価陽イオンで置換されたものを含む。耐水性偏光膜は、可視光領域(波長380nm〜780nm)の少なくとも一波長で、吸収二色性を示す。耐水性偏光膜の視感度補正したY値の二色性は、好ましくは30以上である。耐水性偏光膜の厚みは、好ましくは0.1μm〜5μmである。
【0033】
(5)耐水性偏光膜の用途
前記耐水性偏光膜は、液晶ディスプレイ等に付設される偏光膜として使用されて好適である。
【0034】
(6)実施例
[実施例1]
4−ニトロアニリンと8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸とを、常法(細田豊著 「理論製造 染料化学(5版)」 昭和43年7月15日、技法堂発行 135頁〜152ページ)に従って、ジアゾ化及びカップリング反応させて、モノアゾ化合物を得た。このモノアゾ化合物を、同様に常法によりジアゾ化し、さらに1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸−ナトリウム水和物とカップリング反応させて粗生成物を得、これを塩化リチウムで塩析することにより、下記構造式(4)で表され、且つMがLiであるアゾ化合物を得た。
【化4】

【0035】
上記構造式(4)のアゾ化合物をイオン交換水に溶解させ、0.5重量%の水溶液を作製し、限外濾過膜を用いて脱塩した後、陽イオン交換樹脂(オルガノ製 商品名「IR 120B HAG」)に通液して、上記構造式(4)で表され且つMがLiである化合物を含む水溶液を得た。
【0036】
この水溶液に、pHが7になるように水酸化リチウムを加えた後、ロータリーエバポレータで濃縮して、上記アゾ化合物の濃度が5重量%のコーティング液を調製した。
【0037】
このコーティング液をスポイトで少量採取し、2枚のスライドガラスの間に挟み込んで、室温(23℃)にて溶媒を蒸発させながら、偏光顕微鏡で観察したところ、コーティング液のアゾ化合物の濃度が20重量%でネマチック相が観察された。
【0038】
上記アゾ化合物の濃度が5重量%のコーティング液を、ラビング処理及びコロナ処理が施されたノルボルネン系ポリマーフィルム(日本ゼオン社製 商品名「ゼオノア」)上に、2番手のワイヤバーを用いて塗布し、23℃、70%RHの恒温恒湿環境下で自然乾燥させて、厚み0.3μmの偏光膜とノルボルネン系ポリマーフィルムとを有する積層体を作製した。
【0039】
上記偏光膜中のリチウムの量を、誘導結合プラズマ質量分析(iCP−MS)により分析したところ、偏光膜の総重量に対して、26,000ppmであった。
【0040】
前記積層体を、20%の塩化バリウム水溶液(キシダ化学社製「特級」)に液温15度で5秒間浸漬し、その後イオン交換水で水洗して、積層体における偏光膜の表面を耐水化処理した。このようにして得られた耐水性偏光膜は、水洗しても溶解することがなかった。かかる耐水性偏光膜の二色性は表1に示す通りであった。
【0041】
[比較例1]
水酸化リチウムに代えて、水酸化ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、耐水性偏光膜を作製した。得られた耐水性偏光膜の二色性は表1の通りであった。
【0042】
[比較例2]
水酸化リチウムに代えて、水酸化セシウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、耐水性偏光膜を作製した。得られた耐水性偏光膜の二色性は表1の通りであった。
【0043】
[比較例3]
水酸化リチウムに代えて、水酸化アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、耐水性偏光膜を作製した。得られた耐水性偏光膜の二色性は表1の通りであった。
【0044】
[比較例4]
水酸化リチウムに代えて、水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、耐水性偏光膜を作製した。得られた耐水性偏光膜の二色性は表1の通りであった。
【0045】
[比較例5]
前記構造式(4)のアゾ化合物に代えて、下記構造式(5)のアゾ化合物を濃度10重量%にして用いた以外は、実施例1と同様の方法で、耐水性偏光膜を作製した。得られた耐水性偏光膜の二色性は表1の通りであった。
【化5】

【0046】
上記構造式(5)のアゾ化合物は、1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸−ナトリウム水和物に代えて、7−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸−ナトリウム塩を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
【0047】
【表1】

【0048】
(7)実施例・比較例で用いた測定方法
(a)偏光膜厚みの測定方法
偏光膜をウルトラミクロトームで切断した後、Pt−Pdスパッタリングを10秒間実施し、FE−SEM(日立社製 商品名「S−4800」)で断面を観察して求めた。
(b)液晶相の観察
2枚のスライドガラスに、コーティング液を少量挟み込み、顕微鏡用大型試料加熱冷却ステージ(ジャパンハイテック社製 商品名「100113L」)を備える偏光顕微鏡(オリンパス社製 商品名「OPTIPHOT−POL」)を用いて観察した。
(c)二色性の測定方法
グラムトムソン偏光子を備える分光光度計(日本分光社製 商品名「U−4100」)を用いて、直接偏光の測定光を入射させ、視感度補正したY値のk1及びk2を求め、下式より算出した。

式:二色比 = log(1/k2)/log(1/k1)

ここに、上記k1は最大透過率方向の直線偏光の透過率を表し、k2は最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を表す。
【0049】
(8)リチウム量の測定
偏光膜100mgを加圧酸分解し、分解物に超純水を加えて25mlに定容して作製した試料溶液を用い、誘導結合プラズマ質量分析装置(パーキンエルマー社製 製品名「ELAN DRC2」)にて、元濃度を算出した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る耐水性偏光膜の製造方法では、耐水化処理液で偏光膜の耐水化処理を行った後においても、偏光膜中に存在する有機色素分子の配向に乱れを発生することなく、高い二色性を有する耐水性偏光膜を得ることが可能となり、これにより取扱性が良好で且つ高い二色性を有する耐水性偏光膜を製造することができ、各種表示装置に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアゾ化合物を含む偏光膜の少なくとも一方の表面に、多価陽イオンを含む耐水化処理液を接触させることを特徴とする耐水性偏光膜の製造方法。
【化1】

(式中、Qは置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す)
【請求項2】
前記耐水化処理液を接触させる前の偏光膜に含まれるリチウム量が、偏光膜の総重量に対して、25,000重量ppm〜50,000重量ppmであることを特徴とする請求項1に記載の耐水性偏光膜の製造方法。
【請求項3】
前記耐水化処理液を接触させる前の偏光膜が、偏光膜の総重量に対して、80重量%〜100重量%の前記アゾ化合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐水性偏光膜の製造方法。

【公開番号】特開2010−54869(P2010−54869A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220605(P2008−220605)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】