説明

耐火性プラスチックから構成された光学要素

【課題】 耐火性プラスチックから構成された光学要素を提供する。
【解決手段】 本発明は、厳しい火災安全規制を有する分野に適用するための光学要素に関する。光学要素は、厚さ4mmにおける演色評価数Rが少なくとも97であり、DIN 60332に準拠した難燃性であり、かつスルホン類および/またはスルフィド類および/またはエーテル類および/またはエステル類および/またはケトン類および/またはイミド類の群から選択される構造要素を有するプラスチックから主に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックから構成され、厳しい耐火安全規制を伴う分野の用途に適した光学要素に関し、これら本発明の光学要素の使用に関する。厳しい耐火安全規制のあるこれら分野は、具体的には乗客が火災の場合に脱出するのが通常困難な航空機の室内か、さもなければ船舶である。したがってこのような輸送機関に使用される構成部品は、その該当する規格または仕様書中に詳しく述べられる特定の防火規制に従う。具体的には航空機についての関連規格は、JAR/FAR 25.853a、JAR/FAR 25.869、およびABD0031である。
【背景技術】
【0002】
高温に耐えるプラスチックは従来技術で知られており、実例はポリフェニレンサルファイドであり、これは200℃までの温度での長期使用において安定であり、かつ240℃までの温度での短時間曝露に持ちこたえると言われている。それはドイツ DIN 4102規格の難燃性であり、すなわちそれはいったんその発火源が除去された場合、自己消火性である。
【0003】
同様に(特許文献1)は、高温に耐え、ポリスルホンとポリイミドのコポリマーを基材とするプラスチックについて述べており、これらは150℃〜180℃の範囲で長期間の曝露に適している。
【0004】
しかし、これらすべてのプラスチックの固有の特徴は、それらはある程度は透明だが、裸眼によってはっきり識別できる黄色を有し、したがってスペクトルの可視域の光を通過させるための光学要素用材料としては使用することができないことである。こういう訳で例として航空機の窓の外側の窓ガラス板は、そのための例外的な認可が与えられているポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造され、この材料はまたその商用名プレキシグラス(Plexiglas)によっても知られている。これは、実質的に無色だが難燃性ではない透明な材料である。はっきり識別できる色を有する窓は多分乗客に不評であろうと思われるので、この妥協は受け入れられている。
【0005】
さらに、航空機の化粧室の鏡は、現在はプラスチックからは製造されず、磨いたアルミニウムから製造されており、それに伴う欠点は、その実際の研磨工程が高い生産コストを有することである。また磨いたアルミニウム表面は引っ掻きの影響を受けやすく、したがって航空機の化粧室の鏡は頻繁な交換を必要とする。この交換は、航空会社の操業コストの別の著しく不利な特徴である。
【0006】
ガラスは、ガラスの破片によって生じる負傷防止の必要条件を満たすためには合わせガラスを必要とすることになり、この型のガラスは重く、最大積載量を減らすかまたは望ましくないことに操業コストを増加させることになるので、旅客機のこれら用途の材料としては使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 39 00 674 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした背景の下で本発明の目的は、透明でありかつできるだけ少ない固有色を有するプラスチックから構成される光学要素を提供すること、および厳しい火災安全規制を有する分野での本発明の光学要素の使用法を提供することである。この用途の目的では固有色とは、特定の目的および意図で加えることができる着色添加剤を何も含まない場合のそのプラスチック材料の色である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項により達成される。好ましい実施形態は、その下位の請求項中に見出される。
【0010】
本発明の目的ではプラスチックは、少なくともある程度は合成的に生産される高分子量材料であり、またポリマーとも呼ばれ、これらは出発材料、特に低分子量モノマーの共有結合によって得られる。
【0011】
この表現は、本発明のプラスチックの生産方法とは無関係であり、したがって例としては連鎖重合(動力学的連鎖反応または連鎖重合反応)、あるいは例としては段階重合(逐次重合反応)によって、具体的にはこの場合は縮合重合によってまたは重付加によって生産されたプラスチックを包含する。この表現は、加えることができる添加剤のすべてを包含する。これは、具体的には可塑剤、安定剤、充填剤、および/または着色剤に当てはまる。
【0012】
本発明の光学要素は、厚さ4mmにおける演色評価数Rが少なくとも97である。それはDIN 60332による難燃性であり、スルホン類および/またはスルフィド類および/またはエーテル類および/またはエステル類および/またはケトン類および/またはイミド類の群から選択される構造要素を有するプラスチックから主に構成されている。
【0013】
演色評価数Rは演色特性の尺度である。最も自然な演色性を有する最善の値は100である。光が通過する光学要素は、ある特定の波長において光の吸収により色を生ずる。そのときスペクトルの吸収された部分は、その光学要素を通過する光を観察している誰の目にも見えない。すなわちそれは元のスペクトルまたは光源から取り除かれ、その結果、得られる知覚はその光学要素が色付きであることになる。この場合、演色評価数Rは100よりも小さい値を呈する。90よりも大きい値は、非常に優れているとみなされる。
【0014】
本明細書中で使用される演色評価数Rは、規格DIN EN 410に従ってその光学要素を通過する光の色変化を測定することによって求められる。このためには、まず確定されたテストカラーの8種類の異なる色見本を光源によって照らし、評価する。次いで、光がその光学要素を通過するように光学要素を光源の前に据え付け、テストカラーの8種類の色見本を再度評価する。各色見本に関して光学要素を挿入することによる知覚された色の変化の値を8分の1に重み付けし、それらの合計が演色評価数Rを与える。使用される光は標準光源D65から来る。DIN規格DIN EN 410は、演色評価数Rの測定方法および標準光源D65の限定の詳細な説明を与え、またこの規格は本願の中に参照により組み込まれる。本発明の光学要素のR値は、厚さ4mmを有する実質上平坦な窓ガラス板上で求められる。
【0015】
さらに本発明の光学要素は、DIN 60332の耐火性である。これは、その発火源の除去後短時間内に自己消火することを意味する。この燃焼試験は、適用および取付け状況に応じて垂直および/または水平試験を区別する。ここでその火炎曝露時間は12秒または60秒である。この規格は、発火源としてメタンガスで作動するバーナーを使用する。試験片の寸法は、305mm×75mmでなければならない。この試験は、周囲温度23±2℃および相対湿度50%で行わなければならない。行われる観察は、燃焼長さ、すなわちその材料が規定単位時間内に燃焼することができる許容距離、および、あるとすればそれら雫の燃焼時間を含む。前述の規格およびそれらの参考文献は、この方法の詳細な説明を与え、それらは参照により本明細書中に組み込まれる。
【0016】
本発明によれば光学要素は、スルホン類および/またはスルフィド類および/またはエーテル類および/またはエステル類および/またはケトン類および/またはイミド類の群から選択される構造要素を有する少なくとも1種類のプラスチックから構成される。本発明の目的では構造要素とは、モノマーの結合に顕著に関与した、または結合の間に生成したポリマーの成分を意味し、したがって適切な記述子である。本発明によればこれら構造要素の結合は好ましくは芳香族系を伴い、ここでそれら芳香族系は共役二重結合を有し、任意選択でさらに任意の望ましい置換基を含有する環式化合物である。知られている芳香族系の例は、ベンゼンおよびフェノールである。しかし構造要素を結合させる他の系もまた考えられ、本発明に包含される。
【0017】
以前から知られている高温に耐えるプラスチックは、加工前でさえもしばしば黄色または褐色の色合いを有する。すなわち、それらは黄色がかったまたは褐色がかった固有色を有する。これは、それらが通常90未満のR値を有することを意味する。本発明者等は、高純度の出発製品をこれらプラスチックの生産の間中使用すると、きわめて良好な演色評価数Rの値を達成することができることを発見した。したがって固有色は原料中の異物によって、または重合中の望ましくない反応、例えば酸化反応または他の副反応によって引き起こされるように見え、そこではそれら異物によって引き起こされるフリーラジカル機構もまたそれに加担する可能性がある。
【0018】
本発明の光学要素のプラスチックは、好ましくは縮合重合によって得られ、したがって好ましくは縮合重合物の群に属する。縮合重合は、安定であるが反応性を保持している中間体を経由して段階的に進行し、広範な低分子量物質(モノマー)から単分子を含まない巨大分子(ポリマーおよび/またはコポリマー)を形成する段階縮合反応である。本発明の目的では縮合重合によって得られるプラスチックは、縮合重合物または縮合重合体ポリマーと呼ばれる。
【0019】
本発明の目的ではこの本発明の光学要素は、主に前述の構造要素を有するプラスチックの混合物から生産することもまた可能である。混合は、光学要素の特性の適切な調整に有利な場合もある。これらの特性は、具体的には靭性および/または耐衝撃性などの機械的性質、さもなければ紫外線に対する抵抗性、あるいは酸および/またはアルカリによる、かつまた水による攻撃に対する抵抗性である。
【0020】
このプラスチックは、高度の設計自由度をもつ低コスト加工法を用いることができるために、好ましくは熱可塑性プラスチックである。
【0021】
同じく本発明の光学要素は、試験規格ABD0031ならびにJAR/FAR 25.853a(App. F Part IおよびII)およびJAR/FAR 25.869に対して耐火性である。
【0022】
前述のプラスチックの群の選択の目的では、本発明の光学要素のプラスチックは好ましくはポリスルホンを含む。その構造式の概念図は、
【化1】

であり、式中SOは上記構造要素を表す。本発明におけるRは任意の所望の部分であり、好ましくは上記と同様に芳香族系を含むことができる。しかしながら比較的少数の炭素原子を有するものを含めて非環式部分を用いることもまた可能である。添え字nは、原理構造式の配列がプラスチック内で反復されることを示す。nは、一般に20〜1000の値をとる。プラスチックの物理的状態は、本発明の光学要素として加工された場合、好ましくは固体である。
【0023】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、略示構造式
【化2】

を有するポリスルフィドを含むことが好ましい。
ここで構造要素は、元素Sによって具体化される。
【0024】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、略示構造式
【化3】

を有するポリエーテルを含むことが好ましい。
ここで構造要素は、元素Oによって表わされる。
【0025】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、略示構造式
【化4】

を有し、かつ/または略示構造式
【化5】

を有する、ポリアリレートを含むことが好ましい。
これらのポリアリレートは、エステル群の一員である。ここで構造要素は、−O−R−C=Oまたは−O−R−O−C=Oによって表わすことができる。本発明の目的ではRおよびR2は前述の部分Rを表し、ここでRおよびR2は同一または異なる部分であることができる。その考えられる異性体のすべてがまた包含される。
【0026】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、略示構造式
【化6】

を有するポリケトンを含むことが好ましい。
式中−C=Oが構造要素であることができる。
【0027】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、好ましくは略示構造式
【化7】

を有し、かつ/または略示構造式
【化8】

を有するポリイミドを含むことが好ましい。
ここで構造要素はR−C(O)−NR−C(O)−Rによって表わすことができ、式中C(O)はカルボニル官能基である。
【0028】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、とり得る構造要素O−R−SO−Rを有し、好ましくは略示構造式
【化9】

を有するポリエーテルスルホン、および/またはとり得る構造要素SO−R−O−R−C(CH−R−O(ただし、C(CHはジメチル基である)を有し、好ましくは略示構造式
【化10】

を有するポリスルホンを含むことが好ましい。
【0029】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、好ましくは略示構造式
【化11】

を有するポリアリールエーテルスルホンを含むことが好ましい。
ここで構造要素は、R−O−R−SOによって表すことができる。
【0030】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、とり得る構造要素O−R−C(O)−NR−C(O)−Rを有し、好ましくは略示構造式
【化12】

を有するポリエーテルイミドを含むことが好ましい。
【0031】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、好ましくは略示構造式
【化13】

を有し、かつ/または略示構造式
【化14】

を有するポリエーテルケトンを含むことが好ましい。
ここで、O−R−C=Oおよび/またはO−R−O−R−C=Oは構造要素であることができる。
【0032】
同じく本発明の光学要素のプラスチックは、好ましくはポリアリレートコポリマーの群の、好ましくは略示構造式
【化15】

を有するポリエステルカーボネートを含む。
【0033】
構造式の概念図が与えられているこれら化合物の誘導体および異性体のすべてが、同じく本発明に包含されることを強調したい。本発明者等はまた、それぞれの化合物の選択された群内の上記化合物の混合物を提供した。
【0034】
ポリスルフィドを本発明の光学要素の成分として使用する場合、部分Rは、特に好ましくはパラフェニレンを含み、したがってそのポリスルフィドの略示構造式は
【化16】

であることができる。
【0035】
演色評価数と並んで、材料の外観を評価するための別の認められている数値尺度は、黄色度指数である。黄色度指数をできるだけ小さくすることが望ましい。DIN 6167はこの試験方法の詳細な説明を与え、参照により本明細書中に組み込まれる。本発明の光学要素の別の好ましい特徴は、厚さ4mmを有する前述のプラスチックの1つから構成される事実上平坦な窓ガラス板上で測定した場合、それぞれの事例において10未満の、好ましくは5未満の、特に好ましくは2未満の低い黄色度指数である。
【0036】
前述のプラスチックについて演色評価数Rに関して述べた主に黄色がかったまたは褐色がかった固有色はまた、透過スペクトルにおいてスペクトルの紫色域での低透過率により目に見えて分かる。したがって380nmの波長において本発明の光学要素は、その選択されたプラスチックから作製された厚さ2mmの本質的に平坦な窓ガラス板上で測定された、少なくとも85%の分光透過率Tを有する。測定中、対比試験片が使用されないので、供試試験片の境界における反射は透過減少効果を有する。しかしこの反射は、その光学要素の固有色にとって重要ではない。
【0037】
透過率Tは、物体を透過した放射線の割合を示す。材料を通過すると、一般には吸収、散乱、回折、および反射で構成され、波長依存性である減衰を常に引き起こす。透過率Tは、一般には分光光度計の助けを借りて求められる。本発明の目的ではTを求める場合、その基準光路中で対比試験片は使用されず、透過率は所望の波長で測定される。
【0038】
本発明の光学要素は、そのスペクトルの可視域、すなわち約380nm〜750nmの波長範囲内の領域でできるだけ一様な透過プロフィールを有するのが有利である。これは、これらの波長で分光透過率Tによって推測される値が、できる限り同一の大きさであることを意味する。しかし黄色がかった固有色はまた、特にスペクトルの青色域における低透過値を引き起こす可能性がある。したがって450nmの波長におけるスペクトルの青色域では本発明の光学要素は、これもまた上記のように測定される透過率Tが少なくとも88%であることが特に好ましい。
【0039】
さらに本発明の光学要素中に存在するプラスチックは、波長550nmにおいて基本的に1.65の屈折率nを有することが好ましい。屈折率の定義は、光学要素業界の技術者には周知であり、したがってこれに関しては更なる情報は示さない。屈折率が高いほど、その部材の屈折力は高い。これは、光の屈折が重要な用途ではあまり多くの材料を必要とせず、より低い屈折率を有する材料から構成される光学要素と比較した場合、その光学要素の取付け厚および/またはその重量をより小さくすることができることを意味する。例としてプレキシグラス(Plexiglass)(PMMA)は1.49の屈折率を有し、また環式オレフィンコポリマー(COC)は1.533の屈折率を有する。本発明の光学要素が、例えばレンズとしての形をとる場合、本発明の部材の高い屈折率によって所定の焦点距離を得るのに必要なレンズの曲率は、例えばPMMAから構成されるレンズよりも小さい。これはレンズをより小型にし、そのレンズを含む最終機材の構造をより小型にし、したがってまた重量を減らすことを可能にする。これは特に航空機の用途にとってはかなりの利点である。
【0040】
本発明の光学要素の熱膨張係数をできるだけ小さくすることもまた有利である。熱膨張係数は、寸法変化の割合、またより正確には長さの変化を温度の変化の関数として記述するパラメータである。熱膨張係数が大きいほど、生ずる長さの変化が大きい。これは、厳しい温度の変動にさらされる構成部品にとっては特に問題である。この種の特定の構成部品は航空機の窓である。フレームの構造には、その窓が必要な圧力抵抗を有するように材料の長さのあらゆる変化が考慮に入れられなければならない。したがって本発明の光学要素は、基本的に50×10−6−1の熱膨張係数を有する。ちなみにプレキシグラス(PMMA)の熱膨張係数は85×10−6−1である。これは本発明の光学要素が、温度に関係した著しく小さな長さ変化を受けることを意味し、これは、本発明の光学要素を航空機の窓として使用することを特に有利にする。
【0041】
特に航空機においては、使用される構成部品の振動安全性に関して特別な要求基準が存在する。これら要求基準はまた、航空機製造業者、ボーイング(Boeing)およびエアバス(Airbus)に適用される試験規則、具体的には世界中で有効な動作時衝撃および衝突安全性(Operational Shock and Crash Safety)の基準であるRTCA DO−160Eの第8項、また第7.2項および第7.3項に述べられている。これら試験規則は、これらの製造業者の航空機用に認可される材料および構成部品のすべてについて規定され、航空機の運航の安全をゆだねられている当局による監視を受けている。これらの規則の顕著な特徴は、使用される構成部品が、例えばタービンの翼の損傷またはタービンの翼の喪失の結果としてタービンの損傷から生ずる激しい振動にさらされた場合、それら構成部品の損傷が最少限であり、かつ構成部品がそれらの構造的完全性を失わないような方法でそれら構成部品を設計しなければならないことである。しかし、船舶のプロペラの損傷によって、または衝突によって、時には短時間に過ぎないとしてもかなりの振動が生ずる可能性があるので、また使用される構成部品はこれらの場合においてさえ安全でなければならないので、航空機に要求される振動安全性は造船についても有用な特性としてもさらに役立つ可能性がある。したがって本発明の光学要素が前述の試験規格に従うことは特に好ましい。
【0042】
この試験については適切な取付部品(applications)が、加振機として知られているものに取り付けられる。その最も有利でない場所が取付け位置に応じて選択され、その規格によって規定される回数曲線のそれぞれを用いてその装置の安定性を試験する。調べられる別の特定の要因は、それら回数曲線の移動中に装置またはその固定具の損傷を引き起こす共鳴振動が起こるかどうかである。
【0043】
望ましい特性を得るために充填剤、補強剤、または特殊な効果をもたらす物質を本発明の光学要素に混ぜ合わせることが有利なこともある。これらの30重量%までの量をこのプラスチックに混ぜ合わせることができる。それぞれTiOを含む充填剤および/または充填剤混合物を使用することが好ましい。充填剤および/または補強剤は、特にプラスチックの機械的性質を改良することができる。充填剤としてのエラストマーは、例えばプラスチックの、したがってその光学要素の振動強度を改良することができる。特殊な効果をもたらす、好ましくは母材の屈折率とは異なる屈折率を有する物質として透明な粒子の添加は、例としてはプラスチックの靭性に対する、かつ/またはその光学的伝導特性および光散乱特性に対する制御効果を有する可能性がある。特殊な効果をもたらす有色物質を用いて、例えば知覚される色のコントラストを増すように光学要素の全体的外観および/またはその透過率および/または後方散乱挙動を調整することができる。しかしこの光学要素について特許請求の範囲の中で述べる光学的性質は、そのプラスチックに加えられる任意の充填剤、補強剤、および/または特殊な効果を有する物質と常に関係がある。
【0044】
プラスチックは、約100nm〜400nmの波長範囲にわたるスペクトルの紫外域の光(UV)を照射することによって損傷を受ける恐れがある。特に、多くの場合に存在する芳香族系の共役二重結合は紫外線を吸収し、その結果生じるエネルギーの入力がプラスチックの構造の破断をもたらす可能性がある。これは、例としては材料の亀裂、または曇りおよび退色によって認識できる。光学要素を紫外線の作用に対してより抵抗性を示すものにするためにプラスチックにUV吸収充填剤を加えることができる。しかしUV抵抗層を有する本発明の光学要素が特に好ましい。UV抵抗層は、入射紫外線を反射するか、またはそれを層内で最大限度まで吸収し、こうしてプラスチックに達する有害な紫外線を防止するか、またはその量をできるだけ少なくする。
【0045】
その皮膜は、通常の工程、例えば浸漬塗工、吹付け塗工、ラミネーション、電気めっき、スパッタ、物理蒸着、または当業者に知られているその他の工程のいずれかによって生成しておくことができる。本発明の光学要素を航空機の窓として使用する場合、その外側の窓の外面にこの種のUV抵抗層を備えることが特に好ましい。
【0046】
本発明の光学要素の特殊な特性は、様々な用途にそれらを使用することを可能にする。しかし、それらは好ましくは航空機のキャビン内、あるいは船舶の室内、例えばロビー、食堂、および乗客のキャビンと船員のキャビン、さもなければ構造的用途に使用される。後者では、それらは具体的に厳しい耐火性の要求基準がある所ならどこでも使用される。これらの分野の例は、実験室および作業室、あるいはホテル、事務所、およびショッピングセンター、また個人の住居であることができる。
【0047】
1つの好ましい使用は、任意の種類の乗り物の窓、しかし特に航空機または船舶の窓として使用することである。しかし、別の有利な使用は、その乗り物の重量を低減することができる場合、自動車産業における側窓として、または屋根部材として、したがってサンルーフとして使用することである。多くの製造業者によって生産されている高性能スポーツカーは、その重量の節減を利用して性能係数を向上させるためにプラスチックから構成される側窓または屋根をすでに有する。しかし乗り物の重量は軽い方が燃料の節約の理由で多くの自動車両にとってもまた有利である。燃料の節約は、経済的見地に基づいて、また環境的見地に基づいて望ましい。したがって本発明の光学要素はまた、これらの用途にとってもきわめて有利である。
【0048】
本発明の光学要素はまた、仕切りとしても使用することができる。それらの高い耐火性によってこれら仕切りは、好ましくは乗り物、具体的には航空機の室内、船舶の室内、および列車に使用することができるが、もちろん建築物、例えば屋内建築物に使用することもまたできる。これらの応用分野ではこの光学要素が着色していること、および/またはその仕切りを半透明に見えるようにする粒子を混ぜ合わせることが特に有利である場合もある。もちろん非透明の仕切りもまた、本発明の概念に含まれる。
【0049】
本発明の光学要素を投影面として使用することは特に好ましい。この場合、動態および/または静止画像、あるいは様々な色彩のただ光だけを、かつ/または色彩の非動態または動態の変化を、例えば映写機によってこの光学要素上に投影する。また任意の所望の照明源をこのために使用することができ、それらの例はLEDおよび/またはスポットライトである。様々な色彩および/または色彩の変化が投影されるこの種の投影面は、特に有利には航空機の室内で様々な色に関連した雰囲気を生みだすために用いることができる。これらは、様々な時間帯間の乗客の移行を容易にし、かつ/または睡眠リズムを促進するのに役立つ可能性がある。本発明の光学要素の材料は高い屈折率を有するので、その材料中に光散乱および/または反射手段を導入する、あるいはその材料上に皮膜を塗布する必要性は全くない。これは、その光学要素が、光または画像を照射されない条件下では透明であることができるが、照射して光および/または画像を与えた場合はその透明性を失うように見えることを意味する。同様にこの特性は、仕切りとしての使用する場合、その仕切りが簡単に別の効果を生み出すことができるので興味がある。この用途は、離着陸の間の乗客の個室全体の見通しのよいようにすることがその一般手順である航空機の室内では特に有利である。しかし仕切りは、例えばエコノミークラスを視覚的にビジネスクラスから分離するために飛行中は望ましい。本発明の光学要素の使用はまた、エレクトロクロミック材料の場合とは異なり、透明性を生ずるのに電流を必要としないので、この用途とも関連がある。離着陸の間はできるだけ多くの電気機器のスイッチを切るのが通常の手順である。一方、飛行中の映写機および/または光源への電流の供給は問題ない。しかし本発明にはまた、この用途のために適切な物質および/または物質の混合物を混ぜ合わせることも含まれる。
【0050】
本発明の光学要素の別の好ましい用途は光分配器である。一般に光分配器は、光線が入力される光分配器内の1つの場所から、その光分配器中の少なくとも1つの別の場所へ光を伝導するための手段である。光分配器は、例としては剛性または可撓性のいずれかであることができる線形光導体、あるいは光ファイバーバンドルおよび/または光混合器であることができる。
【0051】
線形光導体では光は一般に光入力端に入力され、光出力端から放射される。この方法は、例としては1つの光源から複数の構成部品に供給するために使用することができ、線形光導体はそれら構成部品を結合するために使用される。光は、線形光導体と大気の境界で全反射することによって伝導される。全反射にとって唯一必要な条件は、その線形光導体の境界がより低い屈折率の媒体との境界でなければならないことであることが知られているというのは一般に正しい。したがってまた、特に線形光導体は、あるいは一般に光分配器は、その屈折率が好ましくはその光分配器自体の材料の屈折率よりも小さい少なくとも1枚の更なる被覆層を有する。
【0052】
光ファイバーバンドルは、例としては上記プラスチックを用いて繊維を押出すことによって得られる。上記プラスチックから予備成形物を作製し、次いで延伸して繊維を得ることも同様に可能である。これらの繊維の太さは、通常は数マイクロメートルから数ミリメートルである。複数本のこれら繊維を1つにまとめる場合、その使用される用語がファイバーバンドルである。ファイバーバンドルのそれぞれ個々の繊維は、屈折率がその個々の繊維の材料の屈折率よりも小さい周囲の繊維鞘を有する。この結果、ファイバーバンドルの1本の個別繊維から隣接する個別繊維への光の交錯を比較的少なくすることができ、そのためファイバーバンドル内で行われる光の減衰は小さいままであり、個々の繊維は互いに無関係に光を伝導することができる。光ファイバーバンドルは、個々の繊維の保護のために多くの場合、周囲に外側プラスチック鞘を有する。
【0053】
しかし別の可能性のある意図は、様々な光源の光が光分配器中で混合された状態になることである。そういうわけでこの光分配器は光混合器である。光混合器は、例としては異なる色彩の光源からの光を混合するのに役立つことができ、その結果、それらの色彩の混合によりその混合色の均質な光を生ずる。光混合器自体は更なる光分配器と次々に関係をもつことができ、したがって本発明の光学要素の助けを借りて機能的な光のネットワークを実現することができる。
【0054】
光混合器の場合、その光分配器は、屈折率がその光分配器の材料の屈折率よりも小さい更なる周囲層を少なくともある程度までは有することもまた可能である。しかしこれらすべての光分配器はまた、それらを幾つかの用途にとって一層優れた光導体にするために少なくともある程度までは外面の鏡面仕上げを有することもできる。
【0055】
光分配器は、一般に照明の目的またはデータ伝送の目的で光を伝導することができる。データ伝送の場合、光は通常はパルスの形で伝導され、この場合、そのパルスシーケンスはコード化されたデータセットを意味する。しかしまた他の可能なコーディング方法もあり、実例は振幅変調である。
【0056】
本発明の光学要素の別の好ましい使用は、それを発光体として使用することである。本発明の目的では発光体からの光は、本発明の光学要素から他の構成部品中へ放射されるか、あるいは単に環境中へ放射される。単純な例では発光体は、光ファイバーバンドルに取り付けることで終わる要素、例としては航空機の室内を照らすために使用される要素であることができる。発光体は、放射光のビームプロフィールを形づくるように、例えばそれを拡げるように、またはそれを集めるように適切なやり方で形成しておくことができる。
【0057】
しかし本発明の目的のための別の発光体は、その外面の少なくとも幾つかの領域で内部からの光を出力する手段を有する線形光導体である。これらの手段は、サンドブラストまたはエッチングによって作り出すことができるような粗面であることができる。この粗面は、散乱の中心として働く多くの領域を含む。観察者にとってこの種の線形光導体の表面は輝いているように見える。この方法は、航空機の内装設計または安全情報の提示(例は避難経路の印である)にとって、あるいは一般的な設計目的にとって有利な場合がある装飾的照明効果を得るために用いることができる。
【0058】
本発明の光学要素の発光体としての1つの特に好ましい使用は受照パネルである。受照パネルにおいて本発明の光学要素は本質的にパネルの形態をとるが、全平面で変形させておくことができる。光はそのパネルの縁の部分に入力することができる。この場合、パネルは光導体としてだけでなく光混合器としても働く。光は、1本の、または複数本のファイバーバンドルによって、あるいは少なくとも縁の部分のすぐ近くに取り付けられたLEDを介して入力することができる。入力光は、散乱中心を利用することによりパネルの表面の任意の所望の場所で出力することができる。散乱中心は、好ましくは上記ラフニングの方法によって作り出される。この場合、例えばマスキング技術による散乱中心の構造化適用(structured application)もまた可能であり、こうして受照パネル上に背景画像情報を施すことが可能である。その例は、ロゴおよび/または英数字記号、例えば通知および/または説明である。
【0059】
本発明の目的ではラフニング法だけでなく、光学要素からの光の出力を達成するための他の方法のいずれも使用することができる。例としてはそれら構造を光学要素の表面に導入しておくこともできる。それらは、表面から内部へ突出させておくこともでき、かつ/または表面から突出させることもできる。これらの構造は、好ましくはプリズムの形状である。これらの構造はエンボス加工技術により、またはエッチングまたはその他の方法のいずれかなどの他の製造方法により簡単に作り出すことができる。
【0060】
受照パネルの利点は、その縁部に入力するためにそれらがきわめて浅い取付け厚さを有することができることである。したがって航空機キャビンの室内クラッディングの要素として受照パネルを使用することは格別好ましい。これらを色とりどりの光源からの入力と一緒に使用して雰囲気光を簡単に得ることができる。この場合、色彩効果は単に審美的効用を有するだけでなく、適切なやり方で調整される色彩の変化によって乗客の睡眠と目覚めのリズムを助長することにより快適さの感覚を増す。
【0061】
導光板は、受照パネルの1つの特殊な利用様式であり、平面型ディスプレイ画面の中に取り付けられる。これらディスプレイ画面システムが背景照明を必要とする場合、導光板はそれらディスプレイ画面システムの重要な構成部品である。この場合、LCDディスプレイ画面およびTFTディスプレイ画面がそれらの例である。少なくとも1つの光源からの光が導光板中に入力され、広い面積に散布される。導光板の表面は通常、光の出力手段を有し、例は散乱中心またはマイクロプリズムの形態の構造体である。航空機、例えば乗客席の背もたれに取り付けられる平面型ディスプレイ画面の導光板は、これまでは比較的可燃性のPMMAから成っていた。これは、乗客にかってない広範囲の娯楽を与えるために、これまで航空機製造業者および航空会社によって受け入れられてきた。しかし本発明によるこれら光学要素の平面型ディスプレイ画面用の導光板としての使用は、これらの構成部品さえも一層厳しい火災安全規制を満たすように設計することができることを意味する。本発明は、具体的には絶えず大型化しているディスプレイ画面に関して乗客の安全に寄与することができ、またかなりの量のPMMAが今まで取り付けられてきた旅客機にかなり寄与することができる。
【0062】
発光体として働くディスプレイ画面用の保護カバーとして本発明の光学要素を使用する場合、同様の考察が当てはまる。
【0063】
この光学要素の別の好ましい使用は光源、例えば、具体的にはLEDを除く照明器具の保護カバーである。この場合もまた光学要素はおおむね発光体である。この場合、光学要素は、ビーム整形の目的の要望どおりに、例えばレンズの形状に成形しておくことができる。これはプラスチックから成っているため、このような形状の生産は著しく容易に、かつ著しく低コストで達成することができる。特殊効果を与える適切な物質の選択により要望どおりに放射光のスペクトルを制御することもまた可能である。例としては特殊効果を与える蛍光および/またはリン光体を利用して光学要素を白色光LED用コンバーターとしての働きをさせることができる。
【0064】
本発明の光学要素の別の好ましい使用は、照明性織物としてである。このためには前述のプラスチックから構成される繊維を織って織物にする。この場合、特殊な製織方法を用いることができる。この織布の繊維中へ光を入力した場合、繊維は光導体として働く。光は繊維端で出力することができる。繊維端が織布の表面に存在する場合、光の個々の点はその織布表面の上および/または中で認識できる。しかし、例えば繊維のラフニングおよび/または研磨によって光の出力位置を織布表面の上および/または中に要望どおりに創り出すこともまた可能である。この方法は、表面全体が輝いて見えるようにするために用いることができる。これらの織布は、例としては座席張りとして、あるいは本質的に輝くカーテンおよび/または壁紙として役立つ可能性がある。
【0065】
上記の可能な使用から適切な選択が与えられた場合、別の有利な可能性は、機能し得る光のネットワークを実現するために、具体的には照明の目的のために本発明の光学要素を使用することができることであり、これらは美的、心理的、および生理的機能を果たすことができる。
【0066】
本発明の光学要素を鏡の担体として使用する場合、それらは航空機で使用されている磨いたアルミニウムシートに取って代わることができる。このためには反射面が使用者から見て外方に向いた光学要素の面に施され、その結果、反射面による使用者からの反射光はその光学要素を通過する。反射面は、任意の適切な方法によって施すことができる。最もありふれた方法は、蒸着、液体塗布、または反射性の箔を用いた接着である。
【0067】
図面および発明の実施例により本発明の更なる説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】航空機の室内を示す。
【図2】発光パネル(10)の構造の概略図である。
【図3】投影面(20)としての光学要素の使用を示す。
【図4】平面型LCDディスプレイ画面の構造の概念図である。
【図5】主にポリエーテルスルホンから構成されるプラスチックでできた実質上平面のシートの透過率を波長の関数として示している。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は航空機の室内を示す。窓(1)は、本発明の光学要素の1つの好ましい使用を表す。それは、適切な枠によって互いに結合した内側と外側の窓ガラス板を含むことができる。仕切り(2)は、室内空間を分けるために設計上の目的で使用することができる。しかし具体的には様々な座席クラスを互いに分離するのに役立つ場合がある。仕切り(2)は、好ましくは透明である。航空機の室内の天井には通路を照らす発光体(3)が設けられる。これらは、乗客を眩しくすることなく通路の床の調節された照明を可能にするためにレンズの形態に設計しておくことができる。視覚的効果をもつ座席張り(4)の設計は、座席の輪郭か、あるいは着座部分、肘掛部分、および/または座席の背もたれ部分のいずれかを照らすようなものであることができる。このためには織物を使用することが好ましく、それは個々の光伝導性繊維から構成され、また保護箔を備えることも、さもなければその織物中に他の物質を含めることもできる。天井要素(5)内には光ファイバーから光を出力するための端面の形態をとる多数の発光体を取り付けることができる。この種の照明はまた、建築上の用途では星のきらめく夜空の効果の形態が知られている。審美的に魅力的な星のきらめく夜空の効果を達成するためにはその発光体の直径は一般に約1mmであり、表面1平方メートル当たり約100個の発光体が取り付けられる。発光パネル(6)は壁の中に取り付けられている。光の入力定格(light input power rating)が十分な場合、この発光パネル(6)はキャビンの照明に役立つことがあるが、光源の定格が低い場合、それはまた装飾的機能を有することもある。また発光パネル(6)に組み込まれたディスプレイ画面(66)が存在してもよく、そこでは光学要素は保護カバーとして、かつ/または導光板として働く。ディスプレイ画面(66)はまた航空機の室内の任意の所望の場所に取り付けておくこともできる。この例で情報パネル(7)は非常口を指し、これもまた発光パネルによって形成される。この設計は、発光パネルの表面が文字の形状に構造化された発光文字を有することもでき、あるいはそれは発光パネルの表面全体が光を発し、文字が印刷によりまたは箔を用いて施されている非発光文字を有することもできる。発光ストリップ(8)は、床に取り付けられ、非常口への通路を指している。これらの避難経路のマークは、航空機の室内においては義務的であり、濃い煙の中でさえそれらが見える状態を保たなければならない。天井要素(9)は、湾曲した発光パネルとして設計されている。それは、好ましくは航空機室内において背景光を与え、色彩の変化を生むために使用することができる。
【0070】
図2は発光パネル(10)の構造の概略図である。LEDからの光(12)は縁部(11)に入力され、またLED(13)が好ましくはプリント基板(14)上に固定される。プリント基板(14)は、LEDに電流を供給する簡単な方法を可能にする。具体的にはこれは、所望の混合色を生成するために着色LEDの制御が必要な複雑な回路の高い費用効果の実現を可能にする。プリント基板(14)は、通常のケーブル接続または結線(15)によって電流源に接続することができる。発光パネル(10)は、背景画像情報をその上で可視化できる領域(12)を有することができ、それらの例はロゴおよび/または英数字記号である。これらの効果は領域(12)の構造化により生じ、そのあとで発光効果が生み出されるか、あるいは均一な発光面(16)の場合には、少なくとも1層の非半透明または少なくともあまり透明でない材料により生み出され、この場合はもたらされる情報自体が非発光性である。
【0071】
図3は投影面(20)としての光学要素の使用を示す。映写機(23)は投影面(20)の少なくとも1つの領域(22)を照らす。領域(22)はまた、投射光の反射または散乱を向上させることによってその鮮明度を改善するように光散乱粒子を有するか、またはでこぼこにしておくことができる。構造物が投影面(20)中に導入されてもよく、例としてこれらはマイクロプリズムの形態を取ることができる。背景もしくは動画像および/または英数字記号が存在してもよい。利用可能な従来技術はコンピュータによって制御される映写機(23)を提供することができるので、その提示される情報は、ほとんど無限の可変性および範囲のものであることができる。しかし光および/または色彩変化を投射することもまた容易に可能であり、したがって投影面(20)はまた背景照明の用途にも役立つ場合がある。LEDからの光を投影面(20)の少なくとも1つの縁部(21)にもまた入力することによって、投影面(20)を図2からの発光パネル(10)と組み合わせることもまた可能である。
【0072】
図4は平面型LCDディスプレイ画面の構造の概念図である。光源(31)からの光は、導光板(30)の少なくとも1つの側縁部に入力される。光源(31)は、例としてはガス放電ランプおよび/または1個もしくは複数個のLEDによって、あるいは任意の他の適切な光源によって実現することができる。導光板(30)は、その裏面に反射要素(32)を有する。これは別個の鏡か、あるいは被膜および/または箔であることができる。入力光は前面、すなわちその平面型ディスプレイ画面の使用者(37)に面している導光板(30)の側で出力される。このためには導光板(30)は、図面に示すような、例えばマイクロプリズムの形態の構造を有することができる。これらの構造を作り出す実行可能な方法については上記で述べた。表面から光の出力を得るためのその他の手段のいずれかを用いることもまた可能である。表面が均一な明るさの印象を与えるために導光板(30)の前方に拡散板(33)が存在してもよい。しかし導光板(30)の設計および/または光入力の方法が、その発光面の均質性を保証するようなものであることもまた可能であり、その場合には拡散板(33)を省略するができる。要素(34)から(36)は、平面型ディスプレイ画面のLCDユニットである。LCDが液晶ディスプレイの略であることは知られている。要素(34)および(36)は偏光フィルターであり、この場合、それらの間に液晶ディスプレイ要素(35)を有するプレートの形態をとる。平面型ディスプレイ画面の構造は、従来技術からそれ自体分かっており、本発明によって提供されない。本発明は、導光板(30)として、かつ/または平面型ディスプレイ画面の保護カバーとして使用することができる光学要素を提供する。平面型ディスプレイ画面に本発明の光学要素を使用することは、それら画面をこれまでよりもかなり耐火性にすることができ、したがって乗り物の中の、あるいはオフィス、工場、実験室の中の、または家庭における使用者の安全に貢献することができるという利点を有する。
【0073】
図5は主にポリエーテルスルホンから構成されるプラスチックでできた実質上平面のシートの透過率を波長の関数として示している。分光光度計を使用し、基準として空気を用いて測定を行った。曲線(50)は厚さ2mmのシートの透過率を示し、また曲線(51)は厚さ4mmのシートの透過率を示し、これらは両方とも高純度ポリエーテルスルホンから構成される。両シートを用いて本発明の光学要素を製造することができる。曲線(52)は従来技術を表す。すなわち市販のポリエーテルスルホンから構成される厚さ4mmのプラスチックシートの透過率曲線である。従来技術のシートの透過率が、本発明の光学要素を製造することができるシートの透過率よりも著しく劣ることに注目されたい。曲線(50)および(51)によって達せられる最大透過率が約0.90にとどまるという事実は、プラスチックシート内での分析用光線(analytical light)の反射損失に由来し、またプラスチック内での真性吸収に由来する。しかし、2mmと4mmの試験片間の透過率の差が小さいことから分かるように純粋なプラスチックの真性吸収は小さいように思われる。真性吸収が大きいならば、曲線(50)および(51)における最大透過率の差は、もっと大きいはずである。
【0074】
しかし曲線(52)として描かれた従来技術由来の試験片は、ずっと大きな真性吸収を示す。この透過率が劣るのは、恐らくプラスチック中の不純物に大きく起因する。これらすべての試験片の透過率曲線は、350nmの波長において示される初期値からスペクトルの赤色域中の比較的遠隔点における最大透過率の値まで上昇する。曲線(50)および(51)が得られる試験片の場合、約450nmの波長で始まるほとんど一定の透過率を有する平坦域が広がる。曲線(52)の初期値は、その他の曲線の初期値よりも著しく低く、平坦域を定透過率とみなすことはできない。この従来技術による比較試験片(曲線(52))の特徴はまた、特にその試験片の青色域における透過率が劣ることによって引き起こされることが明らかなこの試験片の黄色がかった褐色から識別できる。そのR値は96.2であり、一方より純粋なプラスチックから構成される厚さ2mmおよび4mmの試験片(曲線(50)および(51))の両方のR値は99.6である。存在するプラスチックとは関係なく良好なR値は97から始まり、特に好ましくは98から始まり、きわめて好ましくは99から始まる。比較試験片(曲線(52))の黄色度指数は、著しい黄変を示す13.0であり、純粋なプラスチックから構成される厚さ2mmの試験片(曲線(50))の黄色度指数は0.8に過ぎず、また厚さ4mm(曲線(51))でもなお1.1に過ぎない。純粋なプラスチックから構成される試験片のこれらの低い黄色度指数は驚くべきことであり、これらの材料が本発明の光学要素の製造にとって適性を有することを強調するのに役立つ。
【0075】
表1は10nmの波長間隔で上記試験片について測定された透過率の値を列挙している。試験片1は、図5で曲線(50)として示した、主にポリエーテルスルホンから構成される厚さ2mmの試験片を示し、試験片2は、図5で曲線(51)として示した、同じ材料から構成される厚さ4mmの試験片を示し、また比較試験片は、図5で曲線(52)として示した、厚さ4mmの試験片を示す。これは、前述のように従来技術のはっきり着色したプラスチックから構成される。
【表1】

Transmittance:透過率、
Wavelength in nm:波長(単位nm)、
Specimen 1:試験片1、
Comparative Specimen:比較試験片
【0076】
優れた透過率特性および優れた演色性を有するこれまで入手可能な光学要素、例えばガラスから構成される光学要素と比べて本発明の光学要素の利点は、これらがプラスチックから構成され、したがって固有重量が小さいこと、およびこれらが成形しやすく、したがって低コストで製造できることである。これらは、ガラスから構成される光学部品とは対照的にガラスの破片によって引き起こされる傷害の防止に関して本質的に安全であり、かつ旅客機の主要製造業者の仕様に対して耐振動性を示す。プラスチックから構成される既知の光学要素とは異なり、これらは飛行機旅行に適用される耐火認可規定を満たすことができ、かつ優れた演色評価数および黄色度指数の値を有する。これらは、それらが光学要素として適しているための本質的特徴である。したがって、それらはガラスの利点と在来のプラスチックの利点を兼ね備える。これは、本発明の光学要素がそれらの使用者の安全に貢献する広範な応用分野に利用される権利を与える。
【符号の説明】
【0077】
1 航空機の窓
2 航空機室内の仕切り
3 通路を照らす発光体
4 視覚的効果をもつ座席張り
5 航空機の天井要素
6 発光パネル
7 情報パネル
8 発光ストリップ
9 湾曲した発光パネルとしての天井要素
10 発光パネル
11 発光パネルの縁部
12 LEDからの光、または背景画像情報をその上で可視化できる領域
13 LED
14 プリント基板
15 ケーブル接続または結線
16 均一な発光面
20 投影面
21 投影面の縁部
22 投影面の領域
23 映写機
30 導光板
31 光源
32 反射要素
33 拡散板
34 要素
35 液晶ディスプレイ要素
36 偏光フィルター
37 使用者
50 厚さ2mmのシートの高純度ポリエーテルスルホンの透過率曲線
51 厚さ4mmのシートの高純度ポリエーテルスルホンの透過率曲線
52 厚さ4mmのシートの市販のポリエーテルスルホンの透過率曲線
66 航空機室内のディスプレイ画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厳しい火災安全規制を有する分野の用途用の光学要素であって、厚さ4mmの前記光学要素において演色評価数Rが標準光源D65を基準として少なくとも97であり、前記光学要素がDIN 60332に準拠した難燃性であり、かつスルホン類および/またはスルフィド類および/またはエーテル類および/またはエステル類および/またはケトン類および/またはイミド類の群から選択される構造要素を有するプラスチックから主に構成されている、光学要素。
【請求項2】
その一方で前記プラスチックが、好ましくは縮合重合物の群のポリマーである、請求項1に記載の光学要素。
【請求項3】
その一方で前記プラスチックが、請求項1に記載の構造要素を有するプラスチックの混合物から構成される、請求項1または2に記載の光学要素。
【請求項4】
その一方で前記プラスチックが構造式
【化1】

を有するポリスルホンを含み、かつ/または前記プラスチックが構造式
【化2】

を有するポリスルフィドを含み、かつ/または前記プラスチックが構造式
【化3】

を有するポリエーテルを含み、かつ/または前記プラスチックが構造式
【化4】

を有し、かつ/または構造式
【化5】

を有するポリアリレートを含み、かつ/または前記プラスチックが構造式
【化6】

を有するポリケトンを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化7】

を有するか、または構造式
【化8】

を有するポリイミドを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化9】

を有するポリエーテルスルホンを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化10】

を有するポリスルホンを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化11】

を有するポリアリールエーテルスルホンを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化12】

を有するポリエーテルイミドを含み、かつ/または前記プラスチックが好ましくは構造式
【化13】

を有するポリエーテルケトンを含み、かつ/または前記プラスチックが構造式
【化14】

を有するポリエーテルエーテルケトンを含み、かつ/または前記プラスチックが、好ましくは構造式
【化15】

を有する、好ましくはポリアリレートコポリマーの群のポリエステルカーボネートを含み、
式中、R、R、およびRがいずれの場合にも芳香族系を含み、nが20から1000の値をとることができる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項5】
その一方で前記ポリスルフィドの部分Rがパラフェニレンを含み、そのため前記ポリスルフィドが好ましくは構造式
【化16】

に対応する、請求項4に記載の光学要素。
【請求項6】
その一方で厚さ4mmでの前記光学要素のDIN 6167の黄色度指数が10未満、好ましくは5未満、特に好ましくは2未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項7】
その一方で波長380nmにおいて厚さ2mmでの分光透過率Tが、少なくとも85%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項8】
その一方で波長450nmにおいて厚さ2mmでの分光透過率Tが、少なくとも88%である、請求項7に記載の光学要素。
【請求項9】
その一方で前記プラスチックの波長550nmにおける屈折率nが、本質的に1.65である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項10】
その一方で前記光学要素の熱膨張係数が、本質的に50×10−6−1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項11】
その一方で、試験基準RTCA DO−160 Eに対して耐振動性を示す、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項12】
30重量パーセントまでの量の充填剤および/または補強剤および/または特殊な効果を与える物質が前記プラスチックと混ぜ合わされており、前記充填剤が好ましくはTiOを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項13】
その一方でUV抵抗層で被覆されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学要素。
【請求項14】
乗り物、具体的には航空機キャビンまたは船舶、あるいは建築物における光学要素としての請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学要素の使用。
【請求項15】
乗り物、具体的には航空機または船舶における窓としての請求項14に記載の使用。
【請求項16】
仕切りとしての請求項14に記載の使用。
【請求項17】
投影面としての請求項14に記載の使用。
【請求項18】
光分配器としての請求項14に記載の使用。
【請求項19】
発光体としての請求項14に記載の使用。
【請求項20】
発光パネルとしての請求項14に記載の使用。
【請求項21】
平面型ディスプレイ画面における導光板としての請求項20に記載の使用。
【請求項22】
光源および/またはディスプレイ画面の保護カバーとしての請求項19に記載の使用。
【請求項23】
照明性織物としての請求項14に記載の使用。
【請求項24】
反射による放射線が前記プラスチックを通過するように、反射面が、使用者から見て外方に向いた前記光学要素の側に施されている、鏡の担体としての請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−134296(P2009−134296A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−304860(P2008−304860)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】