説明

耐火煉瓦の製造方法及び連続鋳込み成形装置

【課題】積層構造を有する耐火煉瓦の製造方法及びこの方法に使用する連続鋳込み成形装置において、耐火煉瓦の生産性を向上させるとともに、継ぎ足し面における亀裂や接合不良を抑制することにより製造歩留まりを向上させる。
【解決手段】気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を、異種の前記耐火物層を形成するための異種のスラリー状の耐火原料を順次型枠に供給して鋳込み成形することで製造する耐火煉瓦の製造方法において、型枠に供給する耐火原料の種類を、一の耐火原料から他の耐火原料に切り替える際に、一の耐火原料と他の耐火原料との混合スラリーを型枠に供給して緩衝層を形成した後に他の耐火原料の供給を開始するとともに、他の耐火原料の供給開始時に型枠に既に供給されている耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、緩衝層上に他の耐火原料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火煉瓦の製造方法及び連続鋳込み成形装置に関し、特に、2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を製造する方法及びこの製造に用いられる連続鋳込み成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐火物の耐食性等を向上させるために、気孔率や組成の異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を製造することが行われている。このような断熱煉瓦等の断熱傾斜材としては、例えば、特許文献1に記載されている取鍋用耐火材などがある。この特許文献1では、取鍋用耐火材の傾斜材料としての形態について開示されているが、この耐火材の製造方法については具体的に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−207872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層構造を有する耐火煉瓦の製造方法としては、従来から、気泡材の配合量や空気の混入量を変えた異種の耐火原料のスラリーを継ぎ足して鋳込み成形する方法がある。この方法では、一方の耐火原料のスラリーを型枠内で成形した後、この一方の耐火原料の層の上面側の流動性が低下するまで数分から数十分程度待った後、他方の耐火原料のスラリーを型枠に供給する。すなわち、従来の方法では、異種の耐火原料の供給が不連続となり、待ち時間も必要となるため、耐火煉瓦の生産性に劣る、という問題があった。
【0005】
また、従来の方法では、他方の原料の継ぎ足し後に焼成する際、一方の耐火原料と他方の耐火原料の熱膨張率の差により、一方の耐火原料の層と他方の耐火原料の層との境界面(継ぎ足し面)において亀裂(クラック)が発生したり、一方の耐火原料の層と他方の耐火原料の層との接合不良による欠陥が発生したりしやすく、製造歩留まりが低い、という問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦の製造方法及びこの方法に使用する連続鋳込み成形装置において、耐火煉瓦の生産性を向上させるとともに、継ぎ足し面における亀裂や接合不良を抑制することにより製造歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によれば、気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を、異種の前記耐火物層を形成するための異種のスラリー状の耐火原料を順次型枠に供給して鋳込み成形することで製造する耐火煉瓦の製造方法が提供される。この耐火煉瓦の製造方法においては、前記型枠に供給する前記耐火原料の種類を、一の前記耐火原料から他の前記耐火原料に切り替える際に、前記一の耐火原料と前記他の耐火原料との混合スラリーを前記型枠に供給して緩衝層を形成した後に、前記他の耐火原料の供給を開始するとともに、前記他の耐火原料の供給開始時に前記型枠に既に供給されている前記耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、前記緩衝層上に前記他の耐火原料を供給する。
【0008】
ここで、前記耐火煉瓦の製造方法において、前記緩衝層上への前記他の耐火原料の供給を、供給位置を連続的に移動させながら行うことが好適である。
【0009】
このような本発明に係る耐火煉瓦の製造方法によれば、既に型枠に供給されている耐火原料の流動性が低下する前に、異種の耐火原料の供給を開始する(継ぎ足す)ので、異種の耐火原料を連続的に型枠に供給することができる。また、異種の耐火原料を継ぎ足す際に、継ぎ足す前後の耐火原料の混合スラリーを用いて緩衝層を設けるので、異なる熱膨張率を有する異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明によれば、気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦の製造に使用される連続鋳込み成形装置が提供される。この連続鋳込み成形装置は、異種の前記耐火原料ごとに前記耐火原料を収容する2以上の原料タンクと、前記原料タンクから前記耐火原料が供給され、異種の前記耐火原料を必要に応じて混合可能な混合部と、前記混合部へ供給する前記耐火原料の種類を切り替える切替部と、前記原料タンクから前記混合部に供給された1種類の前記耐火原料、または、前記混合部で2種類の前記耐火原料が混合された混合スラリーを、前記混合部から前記耐火煉瓦を成形する型枠に供給する原料供給部と、を備える。そして、前記切替部は、一の前記耐火原料が前記混合部に残存している状態で、前記混合部に供給する前記耐火原料を他の前記耐火原料に切り替え、前記原料供給部は、前記型枠に既に供給されている前記耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、前記他の耐火原料を供給する。
【0011】
ここで、前記鋳込み成形装置において、前記原料供給部は、前記型枠内への前記耐火原料の供給位置を連続的に移動可能に設けられていてもよい。
【0012】
このような本発明に係る連続鋳込み成形装置によれば、既に型枠に供給されている耐火原料の流動性が低下するのを待つことなく、切替部が混合部に供給する耐火原料の種類を切り替えて、異種の耐火原料の供給を開始する(継ぎ足す)ので、異種の耐火原料を連続的に型枠に供給することができる。また、異種の耐火原料を継ぎ足す際に、混合部により、継ぎ足す前後の耐火原料の混合スラリーが形成され、これを用いて緩衝層を設けるので、異なる熱膨張率を有する異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦の製造方法及びこの方法に使用する連続鋳込み成形装置において、異種の耐火原料を連続的に型枠に供給することができるので、耐火煉瓦の生産性を向上させることが可能となる。また、本発明によれば、緩衝層により異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝することができるので、継ぎ足し面における亀裂や接合不良を抑制でき、これにより製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳込み成形装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】同実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法の全体の流れを示すフローチャートである。
【図3】同実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法の全体の流れを示す説明図である。
【図4】異種の耐火原料を連続して継ぎ足す際の問題点を示す説明図である。
【図5】同実施形態に係る異種の耐火原料の継ぎ足し方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
(本発明の一実施形態に係る連続鋳込み成形装置について)
まず、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る連続鋳込み成形装置の構成を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る連続鋳込み成形装置の構成の概略を示す説明図である。
【0017】
<連続鋳込み成形装置の構成>
本実施形態に係る連続鋳込み成形装置は、気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦の製造に使用される装置である。具体的には、図1に示すように、本実施形態に係る連続鋳込み成形装置100は、原料タンク110A、110Bと、原料供給用配管120A、120Bと、切替部130と、混合部140と、ミキサー駆動部150と、原料供給用配管160と、原料供給部(供給量調整部170及び原料供給ノズル180)と、を主に備える。
【0018】
原料タンク110A及び原料タンク110Bは、それぞれ、気孔率と組成のうちの少なくともいずれか一方が異なる異種の耐火原料を収容する。本実施形態では、原料タンク110Aには、耐火原料Aが収容され、原料タンク110Bには、耐火原料Bが収容されている。なお、本実施形態では原料タンクの数は、原料タンク110Aと原料タンク110Bの2個であるが、3個以上であってもよい。
【0019】
原料供給用配管120Aは、原料タンク110Aと切替部130とを接続する配管であり、原料タンク110A内の耐火原料Aの供給経路となる。また、原料供給用配管120Bは、原料タンク110Bと切替部130とを接続する配管であり、原料タンク110B内の耐火原料Bの供給経路となる。
【0020】
切替部130は、混合部140へ供給する耐火原料の種類を切り替える。この切替部130は、例えば、原料供給用配管120A及び原料供給用配管120Bの出口を開放又は閉塞状態とする弁などを備え、耐火原料Aの供給時には、原料供給用配管120Aの出口の弁を開放し、原料供給用配管120Bの出口の弁を閉塞するなどしてもよい。あるいは、切替部130は、耐火原料を供給する原料タンク(本実施形態では、原料タンク110Aと原料タンク110Bのうちのいずれか一方)を選択可能な制御部(図示せず。)を有し、この制御部により、混合部140へ供給する耐火原料の種類を自動的に切り替えるようにして制御してもよい。
【0021】
また、切替部130は、混合部140に供給する耐火原料の種類を、原料タンク110A内の耐火原料Aから原料タンク110B内の耐火原料Bに切り替える際は、耐火原料Aが全て型枠に供給されずに混合部140内に一部残存している状態で、混合部140に供給する耐火原料を耐火原料Bに切り替える。これにより、切替部130により、混合部140に供給する耐火原料の種類が耐火原料Bに切り替えられると、耐火原料Bが型枠に供給される前に、混合部130内で、残存している耐火原料Aと新たに供給する耐火原料Bとが混合されることになる。
【0022】
なお、切替部130は、耐火原料Bの供給開始を、必ずしも混合部140への耐火原料Aの供給を停止した後とする必要はなく、混合部140への耐火原料Aの供給を行っている途中で、混合部140への耐火原料Bの供給を開始し、耐火原料Aと耐火原料Bを同時に供給する状態を作ってもよい。
【0023】
混合部140は、原料タンク110A、110Bから耐火原料が供給される。この混合物140は、1種類の耐火原料(例えば、耐火原料A)のみを、そのまま原料供給ノズル180を介して型枠(図示せず。)に供給することもできるが、異種の耐火原料(例えば、耐火原料Aと耐火原料B)を必要に応じて混合可能な構造を有している。例えば、本実施形態に係る混合部140は、略円筒形の混合部140内の上端と下端に接続されたミキサー軸141と、ミキサー軸141に取り付けられたミキサー羽根143と、を有している。なお、混合部140は、上述した構成には限られず、異種の耐火原料を混合し、その混合物を原料供給用配管160に排出する機能を有するものであれば、いかなる構成であってもよい。
【0024】
混合部140へ供給される耐火原料の種類が、切替部130により耐火原料Aから耐火原料Bに切り替えられると、混合部140内に残存している耐火原料Aと新たに供給された耐火原料Bとを混合して混合スラリーを生成する。この混合スラリーにおける2種類の耐火原料の混合比は、混合スラリーが両者の中間的性質を有するようにするという観点から、1:1程度であることが好ましい。また、混合スラリーは型枠内の表面全体を厚み数mm程度で覆うことができる程度の量があればよい。そして、混合部140は、生成した混合スラリーを原料供給用配管160に排出する。
【0025】
ミキサー駆動部150は、例えば、モータ等により構成されており、ミキサー軸141の下端に取り付けられ、ミキサー軸141に回転駆動力を与える。混合部140内に耐火原料Aが残存している状態で、混合部140に供給される耐火原料の種類が耐火原料Bに切り替えられ、混合部140への耐火原料Bの供給が開始されると、ミキサー駆動部150が駆動を開始する。これにより、混合部140は、混合部140内に残存している耐火原料Aと新たに供給された耐火原料Bとを混合することができる。
【0026】
原料供給用配管160は、混合部140と原料供給ノズル180とを接続する配管であり、原料タンク110A内の耐火原料A、原料タンク110B内の耐火原料B、または、耐火原料Aと耐火原料Bとが混合された混合スラリーの供給経路となる。
【0027】
本実施形態に係る原料供給部は、原料供給ノズル180と、原料供給ノズル180の上部に設けられた供給量調整部170とを有し、原料タンク110A、110Bから混合部140に供給された1種類の耐火原料(耐火原料Aもしくは耐火原料B)、または、混合部140で2種類の耐火原料が混合された混合スラリーを、混合部140から耐火煉瓦を成形する型枠(図示せず。)に供給する。
【0028】
供給量調整部170は、原料供給ノズル180から供給される耐火原料の供給量を調整する。また、原料供給ノズル180は、例えば、型枠内への耐火原料の供給位置を連続的に移動可能に設けられている。
【0029】
<緩衝層の形成について>
ここで、本実施形態に係る原料供給部は、供給される耐火原料の種類が、切替部130により、例えば耐火原料Aから耐火原料Bに切り替えられると、まず、型枠に既に供給されている耐火原料Aの層上に、混合部140で生成された混合スラリーを供給して緩衝層を形成させる。この緩衝層は、混合スラリーを構成する2種の耐火原料の中間的性質を有する層であり、異なる熱膨張率を有する異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝する機能を有する。すなわち、例えば、耐火原料Aを型枠に供給した後に、熱膨張率の異なる耐火原料Bを継ぎ足して供給した後に、鋳込み成形した耐火原料を焼成するのであるが、この際、耐火原料Aの熱膨張と耐火原料Bの熱膨張に差があるため、一方の層(例えば、耐火原料Aの層)から他方の層(例えば、耐火原料Bの層)間に応力が生じる。そのため、耐火原料Aの層と耐火原料Bの層との境界面(継ぎ足し面)にクラックが発生したり、耐火原料Aの層と耐火原料Bの層との接合不良が発生したりしやすい。このとき、耐火原料Aの層と耐火原料Bの層との間に、これらの中間的性質を有する緩衝層があることにより、耐火原料Aの熱膨張と耐火原料Bの熱膨張の差が緩和され、境界面におけるクラックや接合不良を抑制することができる。
【0030】
<異種の耐火原料の供給方法について>
また、本実施形態に係る連続鋳込み成形装置100を使用した耐火煉瓦の製造においては、異種の耐火原料(例えば、耐火原料B)を継ぎ足す際、既に型枠に供給されている耐火原料(例えば、耐火原料A)の流動性が低下するのを待つことなく、流動性を有している状態で異種の耐火原料を連続的に継ぎ足すため、異種の耐火原料の供給の仕方によっては、異種の耐火原料の質量によって、既に型枠に供給されている耐火原料が流動して、層の厚みが大きく変動してしまう場合がある。この場合、継ぎ足し面(異種の耐火原料の境界面)が波打って平坦では無くなり、得られる耐火煉瓦が目的の寸法とはならなくなってしまう。そこで、本実施形態に係る原料供給部は、供給される耐火原料の種類が、切替部130により、例えば耐火原料Aから耐火原料Bに切り替えられた場合、型枠に既に供給されている耐火原料(すなわち、耐火原料A及び混合スラリー)の層の厚みが大きく変動しないように(厚みの変動が所定範囲内となるように)、緩衝層上に耐火原料Bを供給する。そのために、本実施形態では、供給量調整部170により、継ぎ足す異種の耐火原料の供給量を、既に型枠に供給されている耐火原料の層の厚みが大きく変動しない程度の量(厚みの変動が所定範囲内となる量)に調整するとともに、原料供給ノズル180を人力で移動させるか、あるいは、原料供給ノズル180を移動させる機構を設けて、型枠内への異種の耐火原料の供給位置を連続的に移動させている。
【0031】
ここで、原料供給ノズル180の先端部の位置は、作業性の観点から、ほぼ一定の位置(例えば、型枠の底面から50mm程度の高さ)とすることが好ましい。従って、継ぎ足す異種の耐火原料の供給量を、既に型枠に供給されている耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となる量とするためには、異種の耐火原料の供給速度の調整が必要であり、例えば、通常、用いられているノズル径の範囲では、2kg/分〜5kg/分の範囲が好適である。この異種の耐火原料の供給速度は、例えば、原料供給ノズル180の「ノズル径」を変更させることで制御することができる。なお、同じ材料供給速度で比較した場合、「ノズル径」を小さくするほど耐火原料の吐出速度は増加し、「ノズル径」を大きくするほど耐火原料の吐出速度は減少することになる。
【0032】
また、「ノズル径」を変更させる以外に、異種の耐火原料の供給速度を制御する方法としては、例えば、原料供給ノズル180の先端部の形状を末広がり形状(先端に行くに従いノズル径が大きくなる扁平形状)とすることで、既に型枠に供給されている耐火原料の単位面積当たりの供給速度を減少させることができる。さらに、耐火原料の供給方向を水平面に対して0〜30°程度の範囲とすることで、型枠に供給される耐火原料を分散させて、上記と同様に単位面積当たりの耐火原料の供給量を減少させることもできる。
【0033】
以上、説明した異種の耐火原料の供給速度の制御方法は単なる一例であり、これ以外の方法であっても差し支えない。
【0034】
上記原料供給ノズル180の移動機構としては、例えば、以下のような装置が考えられる。すなわち、型枠の上部にノズル移動装置(図示せず)が配置され、このノズル移動装置は、原料供給ノズル180を、図5に示すように蛇行させながら移動させることが可能な機能を有していればよい。原料供給ノズル180を蛇行させながら移動させる機能は、例えば、原料供給ノズル180を一の方向(X方向)とこれに直交する他の方向(Y方向)にそれぞれ移動させる移動機構をノズル移動装置に別々に設け、これらの移動機構の動作を独立して制御することで実現できる。また、X方向及びY方向の移動機構の動作を独立して制御することで、原料供給ノズル180を蛇行させるピッチ(間隔)などを制御することもできる。また、原料供給ノズル180の移動パターンは、予め、耐火物の物性などに応じて決定されたデータに基づきプログラムしておけば、自動的に原料供給ノズル180を移動させることができる。
【0035】
なお、以上説明した連続鋳込み成形装置には、先に施工された(型枠内に供給された)下層の耐火物層の表面を水平に調整するために型枠に振動を付与することが可能なハンマリング装置を設けていてもよい。
【0036】
<効果について>
以上のように、異種の耐火原料(耐火原料Aと耐火原料B)を連続的に型枠に供給することができるので、耐火煉瓦の生産性を向上させることが可能となる。また、緩衝層を形成することにより、異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝することができるので、継ぎ足し面における亀裂や接合不良を抑制でき、これにより製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0037】
(本発明の一実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法について)
以上、本実施形態に係る連続鋳込み成形装置100について詳細に説明したが、続いて、この連続鋳込み成形装置100を用いた本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法は、気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を、異種の前記耐火物層を形成するための異種のスラリー状の耐火原料を順次型枠に供給して鋳込み成形することで製造する方法である。ここで、本実施形態でいう「積層構造」とは、気孔率や組成などが連続的または段階的に変化している構造ではなく、気孔率や組成などが不連続に変化している、すなわち、異種の耐火原料からなる複数の層を有し、異種の層間に境界面を有する構造をいう。
【0039】
また、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法は、以下の(1)かつ(2)の条件を有している。
(1)耐火煉瓦を成形する型枠に供給する耐火原料の種類を、一の耐火原料から他の耐火原料に切り替える際に、一の耐火原料と他の耐火原料との混合スラリーを型枠に供給して緩衝層を形成した後に、他の耐火原料の供給を開始する。
(2)他の耐火原料の供給開始時に型枠に既に供給されている耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、緩衝層上に他の耐火原料を供給する。
【0040】
以下、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法の全体の流れについて詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法の全体の流れを示すフローチャートである。図3は、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法の全体の流れを示す説明図である。
【0041】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法では、まず、原料タンク110Aに収容されている耐火原料Aの供給を開始し、この耐火原料Aを原料供給ノズル180から耐火煉瓦成形用の型枠50に供給し、耐火物層131を形成する(S101、図3(a))。次いで、耐火原料Aの型枠50への供給量が予定量に達すると、供給量調整部170が原料供給ノズル180からの耐火原料Aの供給を停止する(S103)。この時点で、混合部140には、耐火原料Aが一部残存した状態となっている。さらに、型枠50に振動を付与し、型枠50内の耐火原料Aからなる耐火物層131の表面が略水平となるように調整する(S105、図3(b))。なお、この際、耐火原料Aが緻密質設計で流動性が低い場合には、強振動を与えて、充填率を向上させても良い。
【0042】
次に、混合部140内に耐火原料Aの一部が残存している状態で、切替部130が、混合部140に供給する耐火原料の種類を原料タンク110Bに収容されている耐火原料Bに切り替え、混合部140への耐火原料Bの供給を開始する(S107)。すると、混合部140は、内部に残存している耐火原料Aの一部と新たに供給された耐火原料Bとを混合し、混合スラリーを生成する(S109)。さらに、混合部140は、原料供給用配管160及び原料供給ノズル180を介して、混合スラリーを型枠50内の耐火物層131上に供給し、緩衝層133を形成する(S111、図3(c))。
【0043】
なお、混合スラリーを生成する際に、耐火原料Bの供給開始時点は、必ずしも混合部140への耐火原料Aの供給を停止した後である必要はなく、混合部140への耐火原料Aの供給が行われている途中で、混合部140への耐火原料Bの供給が開始され、耐火原料Aと耐火原料Bが同時に供給される状態を作ってもよい。
【0044】
この緩衝層133は、混合スラリーを構成する2種の耐火原料Aと耐火原料Bの中間的性質を有する層であり、異なる熱膨張率を有する耐火原料Aと耐火原料Bによる熱膨張の差を緩衝する機能を有する。すなわち、耐火原料Aを型枠50に供給した後に、耐火原料Bを継ぎ足して型枠50に供給した後に、鋳込み成形した耐火物層を焼成するのであるが、この際、耐火原料Aの熱膨張と耐火原料Bの熱膨張に差があるため、一方の層(例えば、耐火原料Aからなる耐火物層131)から他方の層(例えば、耐火原料Bからなる耐火物層135)に力が加えられる。そのため、耐火物層131と耐火物層135との境界面(継ぎ足し面)にクラックが発生したり、耐火物層131と耐火物層135との接合不良が発生したりしやすい。このとき、耐火物層131と耐火物層135との間に、これらの中間的性質を有する緩衝層133があることにより、耐火原料Aの熱膨張と耐火原料Bの熱膨張の差が緩和され、境界面におけるクラックや接合不良を抑制することができる。
【0045】
混合部140内の混合スラリーの全量が型枠50内に供給されると、その時点で、切替部130は、混合部140への耐火原料Bの供給を停止することなく、そのまま耐火原料Bの供給を続ける。混合部140内には既に耐火原料Aは存在しないので(残存していた耐火原料Aは混合スラリーとして既に型枠50内に供給されている。)、混合部140は、そのまま、原料供給用配管160及び原料供給ノズル180を介して、耐火原料Bを型枠50内の緩衝層133上に供給し、耐火物層135を形成する(S113、図3(d))。なお、耐火原料Bの供給方法の詳細については後述する。
【0046】
次に、耐火原料Bの型枠50への供給量が予定量に達すると、供給量調整部170が原料供給ノズル180からの耐火原料Bの供給を停止した後に、型枠50に振動を付与し、型枠50内の耐火原料Bからなる耐火物層135の表面が略水平となるように調整する(S115、図3(e))。
【0047】
さらに、型枠50内の耐火物層131、緩衝層133及び耐火物層135からなる成形体を養生させた後に、乾燥・硬化させて脱型し、さらに、所定温度で所定時間乾燥させた後に、電気炉等で焼成することにより、積層構造を有する耐火煉瓦を得ることができる。
【0048】
(異種の耐火原料の継ぎ足し方法について)
続いて、図4及び図5を参照しながら、異種の耐火原料を型枠50内に継ぎ足す場合の継ぎ足し方法について説明する。図4は、異種の耐火原料を連続して継ぎ足す際の問題点を示す説明図である。図5は、本実施形態に係る異種の耐火原料の継ぎ足し方法を示す説明図である。なお、ここでは、型枠50内に耐火原料A(及び混合スラリー)が既に供給されている場合に、耐火原料Bを型枠50内に継ぎ足す場合を例に挙げて説明する。
【0049】
<異種の耐火原料を連続して継ぎ足す際の問題点について>
本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法においては、耐火原料Aが既に供給されている型枠50内に耐火原料Bを継ぎ足す際、耐火原料Aが硬化して流動性が低下するのを待つことなく、流動性を有している状態で耐火原料Bを連続的に継ぎ足す。このため、図4(a)に示すように、耐火原料Bの供給量(単位時間当たりの供給質量)が多すぎる場合、スラリー状の耐火原料Bの耐火物層131への衝突や耐火原料Bの質量などにより、型枠50内に供給された耐火原料Bの継ぎ足し部135aの下方の耐火物層131の表面に偏荷重が掛かり、継ぎ足し部135aの下方に位置する耐火原料Aが下方に流動するとともに、その周囲の耐火原料Aが上方に流動するなどして(図4の(a)の矢印を参照)、耐火物層131が流動変形する。そうすると、耐火物層131の表面(耐火原料Bからなる耐火物層135との境界面137)が水平面に対して鉛直方向に不均一で波打った状態となってしまう。このような状態となった後に、さらに耐火原料Bを型枠50内に供給し、継ぎ足し部135bの質量によって、境界面137を水平面に対して鉛直方向に均一な状態(言い換えると、水平方向で耐火物層131の厚みが均一な状態)に戻すことは困難である。従って、耐火原料Bの供給が完了した後は、図4の(b)に示すように、耐火物層131と耐火物層135との境界面137が、水平面に対して鉛直方向に不均一で波打った状態となってしまい、得られる耐火煉瓦が目的の寸法とはならなくなってしまう場合がある。
【0050】
<本実施形態に係る異種の耐火原料の供給方法について>
そこで、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法においては、型枠50に既に供給されている耐火原料A及び混合スラリーにより形成された耐火物層131及び緩衝層133が流動変形しないように、緩衝層133上に耐火原料Bを供給する。具体的には、本実施形態では、供給量調整部170により、型枠50内に継ぎ足す耐火原料Bの供給量を、既に型枠50に供給されている耐火原料A及び混合スラリーの層の厚みが大きく変動しない程度の量(厚みの変動が所定範囲となる量)に調整するとともに、原料供給ノズル180を移動させる機構を設けて、図5(a)に示すように、型枠50内への耐火原料Bの供給位置を連続的に移動させ、耐火原料Bが緩衝層133上に均等に供給されるようにしている。図5に示す例では、既に型枠50に供給されている耐火原料A及び混合スラリーの層、すなわち、耐火物層131及び緩衝層133の厚みが大きく変動しない程度の量(厚みの変動が所定範囲となる量)の耐火原料Bを供給しながら、原料供給ノズル180を、供給位置を図5(a)の矢印に示すように連続的に移動させて、耐火原料Bからなる薄い耐火物層135−1を形成する。これを繰り返し行うことにより、さらに、耐火原料Bからなる耐火物層135−2、耐火物層135−3を順次形成することで、最終的に、図3(e)に示したような耐火物層135を形成している。
【0051】
ここで、本実施形態において、「厚みの変動が所定範囲内となるように」とは、例えば、鋳込み成形して焼成した後における緩衝層133と耐火原料Bで形成された耐火物層135との境界面の粗さ(中心線平均粗さとして算出される粗さ)が5mm以下である(言い換えると、耐火物層135の厚みのバラツキが±2.5mmである)ことが好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。この境界面の粗さの値は、製造された積層構造を有する耐火煉瓦を垂直に切断し、その切断面における境界面の粗さを観察及び測定することで得ることができる。ただし、本発明に係る耐火煉瓦のような所定の気孔率を有する耐火煉瓦には、直径1〜2mm程度の気泡が存在するため、境界面が通常の緻密質の耐火煉瓦に比べて明瞭でないため、緻密質の耐火煉瓦と同様の精度で境界面の位置を判定するのは困難であり、1〜2mm単位の精度となる。
【0052】
また、耐火原料Bの供給量については、事前試験を行うことにより、予め、既に型枠50内に供給されている耐火原料Aからなる耐火物層131及び混合スラリーからなる緩衝層133の厚みが大きく変動しない量(厚みの変動が所定範囲となる量)を確認しておけばよい。この事前試験では、例えば、型枠のサイズ、成形する各耐火物層の厚み、耐火原料の気孔率や組成等の条件を実機で行う場合と合わせ、各耐火原料ごとに、継ぎ足す耐火原料の流量を変えて型枠内に供給し、異種の耐火物層間の境界面(継ぎ足し面)の流動状態や厚みの変動を確認しておく。
【0053】
例えば、耐火原料Bの供給量としては、通常使用される型枠のサイズや成形する各耐火物層の厚み等を考慮すると、耐火原料Bの供給速度が2kg/分〜5kg/分程度が好適であるが、新たに供給される耐火原料Bの材料の特性を考慮して耐火物Bの供給速度を決定することがより好適である。
【0054】
ここで、耐火原料Bの供給速度の決定の際に考慮すべき材料の特性としては、耐火物の流動性の指標である「フリーフロー値」を使用することができる。例えば、「フリーフロー値」が小さな耐火原料は、流動性があまり良くないことから、型枠に供給する際には、原料供給ノズル180から供給された耐火物原料が分散せずに落下する。従って、既に型枠に供給されている耐火物原料の層の厚みの変動を小さくするために、より小さな供給量(例えば、2kg/分〜3kg/分)で供給することが好ましい。一方、「フリーフロー値」が大きな耐火原料は、流動性が良いことから、型枠に供給する際には、原料供給ノズル180から供給された耐火物原料が分散しながら落下する。従って、既に型枠に供給されている耐火物原料の層の厚みの変動に与える影響が小さいことから、より大きな供給量(例えば、3kg/分〜5kg/分)で供給して生産性を上げるようにすることが好ましい。
【0055】
また、原料供給ノズル180の移動のさせ方は、既に型枠50に供給されている耐火原料の層の厚みの変動にほとんど影響しないため、原料供給ノズル180の移動のさせ方としては特に限定はされず、上述した図5に示す例以外でもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、型枠50内に耐火原料A(及び混合スラリー)が既に供給されている場合に、耐火原料Bを型枠50内に継ぎ足す場合の耐火原料の供給方法について説明したが、既に型枠50に供給されている耐火原料とは異種の耐火原料を継ぎ足す場合だけでなく、異種の耐火原料を混合した混合スラリーの供給の場合にも同様の方法で行うことが好ましい。ただし、緩衝層133は、異種の耐火原料の熱膨張の差を緩衝することができる範囲で薄く形成するものであるため、緩衝層133形成のための混合スラリーの供給の際は、既に型枠50に供給されている耐火原料からなる耐火物層の厚みが大きく変動する程の量の混合スラリーが供給されることは、通常あまり無い。
【0057】
<効果について>
以上のように、異種の耐火原料(耐火原料Aと耐火原料B)を連続的に型枠50に供給することができるので、耐火煉瓦の生産性を向上させることが可能となる。また、緩衝層133を形成することにより、異種の耐火原料による熱膨張の差を緩衝することができるので、継ぎ足し面137における亀裂や接合不良を抑制でき、これにより製造歩留まりを向上させることが可能となる。
【0058】
なお、異種の耐火原料(例えば、耐火原料B)を継ぎ足す前に、型枠に振動を付与して既に供給されている耐火原料(例えば、耐火原料A)の表面を水平に調整することが行われており、このときは耐火原料の型枠への供給は中断されている。しかし、型枠への振動の付与の方法は、通常は、ハンマー等を用いて型枠に2,3回振動を与える程度のものであるので、型枠への振動の付与に要する時間は、耐火煉瓦全体の時間から考えると、ほとんど無視できる程度(高々5秒程度)のものである。従って、本実施形態に係る耐火煉瓦の製造方法においては、異種の耐火原料(例えば、耐火原料Aと耐火原料B)が連続的に型枠に供給されていると考えて問題はない。
【実施例】
【0059】
以上、本発明に係る連続鋳込み成形装置及びこれを用いた耐火煉瓦の製造方法について詳細に説明したが、続いて、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。以下に説明する実施例及び比較例では、初めに2種類の耐火原料を生成した後に、これらの耐火原料を用いて鋳込み成形を行った。以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
【0060】
(実施例1)
<耐火原料A1の製造>
純度95質量%最大粒径100μm(全通)のマグネシアクリンカー粉末13質量部、純度99質量%で最大粒径310μm(全通)の焼結アルミナ22質量部、平均粒径50μmの仮焼アルミナの粗粉を20質量部、及び平均粒径4μmの仮焼アルミナの微粉を30質量部に、水硬性結合剤としてアルミナセメント15質量部を添加した後、製泡剤としてステアリン酸アルミニウム0.3質量部を加えた混合原料に対し、添加水分26質量部を加え、ミキサーで混練して均一なスラリー状の耐火原料A1とした。なお、本実施例、並びに、以下の実施例及び比較例において、原料の最大粒径及び平均粒径としては、篩い分け法により測定した値を用いている。
【0061】
<耐火原料B1の製造>
次に、耐火原料A1と同様の組成において、気孔形成材として、前記混合原料100kgに対して発泡ポリスチレンを5リットル添加混合し、添加水分26質量部を加え、ミキサーで混練して均一なスラリー状の耐火原料B1とした。
【0062】
<耐火煉瓦の製造>
上記のようにして製造した耐火原料A1及び耐火原料B1について、それぞれ別の原料タンクに充填し、上述した図1に示すような連続鋳込み成形装置を用いて、積層構造を有する耐火煉瓦の製造を行った。すなわち、まず、原料タンクから、原料供給用配管、混合部を介して、内寸250mm×140mm×100mmの型枠に、耐火原料A1を15kg/minの速度になるよう流量を調整しながら、底面から高さ20mmまで流し込み、耐火原料の供給を一時中断した後、型枠に振動を5秒程度付与して、耐火原料A1からなる耐火物層の表面が平坦になり、その厚みが均一となるように調整した。
【0063】
続いて、切替部により、混合部に供給する耐火原料の種類を耐火原料B1に切り替え、混合部内に残存する耐火原料A1に耐火原料B1を供給しながら混合した。ここで、耐火原料A1と耐火原料B1の混合スラリーの体積としては、型枠内に供給した混合スラリーからなる緩衝層の厚みが5mmとなる体積を計算により求めた。次いで、上記の混合スラリーを耐火原料A1からなる耐火物層の表面に均等になるよう流し込み、連続して、耐火原料B1のみを、混合スラリーからなる緩衝層の表面に流し込んだ。この場合の継ぎ足す耐火原料の供給方法としては、緩衝層用原料(耐火原料A1と耐火原料B1の混合スラリー)及び上層用原料(耐火原料B1)の型枠内への供給は、下層(耐火物A1からなる層)の表面に偏荷重が掛かり、既に型枠に供給されている下層の厚みが大きく変動して継ぎ足し面が波立たないように、原料の供給流量を調整するとともに、原料供給ノズルを連続的に移動させて型枠内に均等に供給した。なお、本実施例では、原料の供給流量については、10kg/minで行い、既に型枠に供給されている下層の厚みが大きく変動して継ぎ足し面が波立たないように目視で確認して原料の供給流量を調整しながら、継ぎ足す耐火原料の供給を行った。
【0064】
次に、耐火原料B1を型枠の所定位置(型枠上面位置、型枠の設置面からの高さ100mm)まで供給して鋳込み成形したものを、45℃に調整したドライヤー内で12時間乾燥・硬化(養生)させた後に脱型し、さらに、200℃に設定した熱風ドライヤー内で24時間乾燥後、電気炉にて1500℃で10時間焼成した。その結果、製造された耐火煉瓦の継ぎ足し面における亀裂の発生は無く、製造歩留りは95%以上であった。なお、本実施例(実施例2、比較例1〜3も同様)における製造歩留りとは、製造した耐火煉瓦全ての個数を100%としたときの、良品(継ぎ足し面に亀裂が発生していない製品)の個数の割合を百分率で示したものである。
【0065】
(実施例2)
<耐火原料A2の製造>
基本的には、実施例1と組成及び配合方法と同様であるが、一部の粒度構成を次のように変更した。すなわち、純度95質量%で最大粒径100μm(全通)のマグネシアクリンカー粉末13質量部、純度99質量%で最大粒径310μm(全通)の焼結アルミナ22質量部、平均粒径50μmの仮焼アルミナの粗粉を10質量部、及び平均粒径4μmの仮焼アルミナの微粉を40質量部に、水硬性結合剤としてアルミナセメント15質量部を添加した後、製泡剤としてステアリン酸アルミニウム0.3質量部を加えた混合原料に対し、添加水分24質量部を加えて、ミキサーで混練して均一なスラリー状の耐火原料A2とした。
【0066】
<耐火原料B2の製造>
次に、実施例1の場合と同様に、耐火原料A1と同様の組成において、気孔形成材として、前記混合原料100kgに対して発泡ポリスチレンを5リットル添加混合し、添加水分26質量部を加え、ミキサーで混練して均一なスラリー状の耐火原料B2とした。
【0067】
<耐火煉瓦の製造>
上記のようにして製造した耐火原料A2及び耐火原料B2について、それぞれ別の原料タンクに充填し、上述した図1に示すような連続鋳込み成形装置を用いて、積層構造を有する耐火煉瓦の製造を行った。これ以降、耐火原料A2の型枠への供給から焼成までの工程は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、実施例1と同様に、製造された耐火煉瓦の継ぎ足し面における亀裂の発生は無く、製造歩留りは95%以上であった。
【0068】
(比較例1)
耐火原料としては、実施例2と同様の耐火原料A2及び耐火原料B2を使用し、型枠としては、実施例1,2と同じものを使用した。まず、耐火原料A2を20リットル程度の容器に入れ、スコップを用いて人力で耐火原料A2を型枠に供給し成形した。耐火原料A2を型枠の底面から高さ20mmまで流し込んだ後、直ちに型枠に振動を5秒程度付与して、耐火原料A1からなる耐火物層の表面が平坦になり、その厚みが均一となるように調整した。その後約20分間静置して、耐火原料A1の流動性が低下するのを待った(待ち時間20分)。次に、耐火原料B2を20リットル程度の容器に入れて、スコップを用いて人力で耐火原料B2を型枠の所定位置(型枠上面位置、型枠の設置面からの高さ100mm)まで供給し成形した。これ以降の養生、乾燥及び焼成の各工程は、実施例2と同様の方法で行った。その結果、製造された耐火煉瓦の継ぎ足し面(耐火原料A2と耐火原料B2との接合面)には亀裂が発生し、製造歩留りは30〜60%と低かった。また、途中で20分の待ち時間も必要となるので、生産性が実施例1,2よりも著しく劣る。
【0069】
(比較例2)
耐火原料A2を型枠の底面から高さ20mmまで流し込み、振動を5秒程度付与した後の静置時間を10分とした以外は、比較例1と同様の方法で耐火煉瓦の製造を行った。その結果、製造された耐火煉瓦の継ぎ足し面(耐火原料A2と耐火原料B2との接合面)には亀裂が発生したが、静置時間を比較例1よりも短くすることで、製造歩留りは80%と比較的高かった。しかし、依然として途中で待ち時間が10分必要となるので、生産性は、実施例1,2よりも劣る。
【0070】
(比較例3)
耐火原料A2を型枠の底面から高さ20mmまで流し込み、振動を5秒程度付与した後の静置時間を設けずに、連続して耐火原料B2を型枠の所定位置(型枠上面位置、型枠の設置面からの高さ100mm)まで供給し成形した以外は、比較例1と同様の方法で耐火煉瓦の製造を行った。その結果、製造された耐火煉瓦の継ぎ足し面(耐火原料A2と耐火原料B2との接合面)には亀裂の発生は無かったが、継ぎ足し面が波打ち、目的とする寸法とはならなかった(寸法不良)。
【0071】
以上、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2及び比較例の3の製造条件及び結果を下記表1にまとめた。
【0072】
【表1】

【0073】
以上の結果からわかるように、耐火煉瓦の製造において、下記の(1)〜(4)の条件を有することにより、異種の原料の継ぎ足し面における亀裂や接合不良の発生を防止でき、これにより製造歩留りを向上させることができる。また、下層用原料の静置時間を設けることなく、上層用原料(継ぎ足す原料)を連続的に型枠に供給することができるので、生産性を向上させることができる。
(1)発泡剤や気泡材の含有率など、配合条件が異なる混練物(スラリー状の耐火原料A及び耐火原料B)をそれぞれ専用の原料タンクに準備する。
(2)原料タンクから原料供給用配管及び混合部を介して、耐火原料A、耐火原料Aと耐火原料Bの混合スラリー、耐火原料Bを、順次型枠に連続的に供給する。
(3)鋳込み成形装置は、流し込み条件に応じて耐火原料Aと耐火原料Bを混合する機能を有する混合部と、混合部に供給する耐火原料の種類を切り替える機能を有する切替部と、を備える。
(4)型枠の上方から原料供給ノズルにより型枠の下方側に配置される耐火原料Aを流し込む。耐火原料Aの表面が水平になるよう必要最小限の振動を付与した後、すぐに、連続して、耐火原料Aの上方側に配置される耐火原料Bを流し込む。その際、耐火原料Aと耐火原料Bの間に、これらの混合スラリーを供給し緩衝層を形成するとともに、継ぎ足す原料の供給は、既に型枠に供給されている層の厚みが大きく変動しないように行う。耐火原料Bの流し込み完了後にも型枠に必要最小限の振動を付与し、耐火原料Bの表面が水平になるようにする。最後に、所定条件で養生、乾燥及び焼成を行う。
【0074】
なお、比較例1〜3は、実施例2と同じ耐火原料を用いている。ここで、実施例1で用いた耐火原料A1は、実施例2で用いた耐火原料A2よりも粒度分布が粗いため、耐火原料の継ぎ足し時の耐火原料A1の層の厚み変動への影響は、耐火原料A2の場合よりも大きくなる。従って、比較例1〜3において実施例1と同じ耐火原料を用いると、さらに悪い結果となることは明らかである。すなわち、厚みの変動の影響が少ない耐火原料A2を用いた場合でも、継ぎ足し面における亀裂が発生しやすく、歩留りも低くなることがわかる。
【0075】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
例えば、上述した実施形態においては、使用する耐火原料が2種類である場合について説明したが、本発明に係る耐火煉瓦の製造方法及び連続鋳込み成形装置で使用される耐火物は、3種類以上であってもよい。この場合、異種の耐火原料を継ぎ足す際には、その異種の耐火原料の混合スラリーを用いて緩衝層を形成する。従って、3種類の耐火原料を使用して、気孔率や組成の異なる3層構造の耐火煉瓦を製造する場合には、緩衝層が2層形成されることとなる。また、2種類の耐火原料A及び耐火原料Bを用いて、例えば、最下層が耐火物Aの層、中間層が耐火物Bの層、最上層が耐火物Aの層といった3層構造の耐火煉瓦を製造してもよい。この場合も、緩衝層は2層形成される。
【符号の説明】
【0077】
50 型枠
100 連続鋳込み成形装置
110A 原料タンクA
110B 原料タンクB
120A,120B 原料供給用配管
130 切替部
131 耐火物層
133 緩衝層
135 耐火物層
137 境界面
140 混合部
141 ミキサー軸
143 ミキサー羽根
150 ミキサー駆動部
160 原料供給用配管
170 供給量調整部
180 原料供給ノズル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦を、異種の前記耐火物層を形成するための異種のスラリー状の耐火原料を順次型枠に供給して鋳込み成形することで製造する耐火煉瓦の製造方法において、
前記型枠に供給する前記耐火原料の種類を、一の前記耐火原料から他の前記耐火原料に切り替える際に、前記一の耐火原料と前記他の耐火原料との混合スラリーを前記型枠に供給して緩衝層を形成した後に、前記他の耐火原料の供給を開始するとともに、
前記他の耐火原料の供給開始時に前記型枠に既に供給されている前記耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、前記緩衝層上に前記他の耐火原料を供給することを特徴とする、耐火煉瓦の製造方法。
【請求項2】
前記緩衝層上への前記他の耐火原料の供給を、供給位置を連続的に移動させながら行うことを特徴とする、請求項1に記載の耐火煉瓦の製造方法。
【請求項3】
気孔率と組成のうちの少なくとも一方が異なる2種類以上の耐火物層が積層された積層構造を有する耐火煉瓦の製造に使用される連続鋳込み成形装置であって、
異種の前記耐火原料ごとに前記耐火原料を収容する2以上の原料タンクと、
前記原料タンクから前記耐火原料が供給され、異種の前記耐火原料を必要に応じて混合可能な混合部と、
前記混合部へ供給する前記耐火原料の種類を切り替える切替部と、
前記原料タンクから前記混合部に供給された1種類の前記耐火原料、または、前記混合部で2種類の前記耐火原料が混合された混合スラリーを、前記混合部から前記耐火煉瓦を成形する型枠に供給する原料供給部と、
を備え、
前記切替部は、一の前記耐火原料が前記混合部に残存している状態で、前記混合部に供給する前記耐火原料を他の前記耐火原料に切り替え、
前記原料供給部は、前記型枠に既に供給されている前記耐火原料の層の厚みの変動が所定範囲内となるように、前記他の耐火原料を供給することを特徴とする、連続鋳込み成形装置。
【請求項4】
前記原料供給部は、前記型枠内への前記耐火原料の供給位置を連続的に移動可能に設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の連続鋳込み成形装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−240890(P2010−240890A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89494(P2009−89494)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】