説明

耐熱性ポリウレタン樹脂

【課題】ポリエステルポリオールを用いた耐熱性が改善されたポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、一次粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカ粒子を含むものであり、該多価アルコール(A)と多価カルボン酸(B)との重縮合反応により得られるポリエステルポリオール(C)をポリイソシアネート(D)と反応させることにより得られるポリウレタン樹脂を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートから得られる耐熱性ポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は高弾性、柔軟性、耐摩耗性等に優れ、フォーム、エラストマー、接着剤、塗料等多くの分野に使用されている。特にポリウレタン弾性繊維は、女性用ファウンデーション、水着等に多用され、近年その需要はますます増大している。ポリウレタン樹脂は主としてポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等の高分子ポリオールとポリイソシアネート及び必要により鎖伸長剤から製造されるが、このうちポリエステルポリオールを高分子ポリオールとして使用したものは、ポリエーテルポリオールを用いたものに比べ、力学的物性、耐摩耗性、耐油性、耐溶剤性等の面で優れる反面、耐加水分解性に劣るという問題があり用途が制限される場合も多い。
【0003】
特にポリウレタン弾性繊維の場合、繊維の細糸化が進みこの問題が大きな課題となっている。これらの問題点が改善されたポリエステルポリオール系ポリウレタンを得る試みが今までにも数多くなされてきた。例えば、特許文献1に記載されている様に、2−メチル−1,8−オクタンジオールまたは該ジオールを含有する混合グリコールとアジピン酸等のジカルボン酸から得られるポリエステルポリオールを用いたポリウレタンが提案されている。しかしながら、これらのポリウレタンも満足出来るような耐加水分解性を有していない。
【0004】
従来、ポリウレタン樹脂は、ゴム弾性を有することから、各種分野で商用されている。かかるポリウレタン樹脂のゴム弾性は、強靭性を有するハードセグメントが、柔軟性を有するソフトセグメントのマトリックスから不溶化してドメインを形成することから発現される。しかし、ポリウレタン樹脂は一般に耐熱性の弱い材料であり、通常、100〜160℃でハードセグメントの溶融により、ゴム弾性が消失して、液状化してしまう問題があった。特に近年、技術の多様化により、コーティング分野においても性能の向上が要求されるようになり、ポリウレタン樹脂については高温においてもゴム弾性を有するものが望まれている。ポリウレタン樹脂の耐熱性を向上させる方法としては、ハードセグメントの割合を増やす方法、ハードセグメントに多くのウレア結合を導入する方法等がある。
【0005】
しかし、こうした方法によると、ポリウレタン樹脂の溶剤不溶化または粘度上昇を招き、好ましくない。また、ポリウレタン樹脂に耐熱性を付与する方法として、ゾル−ゲル法を応用した、無機ガラスとのハイブリッド体を合成する方法がある。すなわち、テトラエトキシシラン等の加水分解性アルコキシシランの加水分解と重縮合を利用して、いわゆるフィラー効果によりポリウレタン樹脂に無機ガラスを分散させたハイブリッド体を製造するものである。かかるゾル−ゲル法によれば、生成するガラス粒子径は数nmと非常に小さいため、当該ガラス粒子がポリウレタン樹脂に分散されていても有機ポリマーの透明性が失われることはなく好ましい。
【0006】
しかし、ゾル−ゲル法によってポリウレタン樹脂の有機・無機ハイブリッド体を製造すると、フィラー効果によって耐熱性等の性能が向上する一方で、ガラス粒子がポリウレタン樹脂全体に分散されるためポリウレタン樹脂固有のソフトセグメントの柔軟性が失われて脆くなる。例えば、特許文献2には、親水性ソフトセグメントのポリウレタン樹脂、加水分解性アルコキシシラン、必要に応じて触媒とを低級アルコールに溶解したアルコールゾル溶液を用いた有機・無機ハイブリッド体の製造方法が記載されているが、得られる有機・無機ハイブリッド体には、柔軟性がなく、脆く、耐熱性が十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−22817号公報
【特許文献2】特開平6−136321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐熱性が改善されたポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリウレタン樹脂は、多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、一次粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカ粒子を含むものであり、該多価アルコール(A)と多価カルボン酸(B)との重縮合反応により得られるポリエステルポリオール(C)をポリイソシアネート(D)と反応させることにより得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性を有するポリウレタン樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、耐熱性を有するポリウレタン樹脂に関する。即ち、本発明は、
1.ポリウレタン樹脂において、多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、一次粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカ粒子を含むものであり、該多価アルコール(A)と多価カルボン酸(B)との重縮合反応により得られるポリエステルポリオール(C)をポリイソシアネート(D)と反応させることにより得られるポリウレタン樹脂、
2.多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、更に鎖伸長剤を含む前記ポリウレタン樹脂、
3.多価アルコール(A)が、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールである1.又は2.に記載のポリウレタン樹脂、
4.多価カルボン酸(B)が、アジピン酸、シュウ酸、コハク酸、又はテレフタル酸である1.〜3.の何れかに記載のポリウレタン樹脂、
5.電位差法で測定したコロイダルシリカ粒子の酸価が1〜50(KOHmg/g)である1.〜4.の何れかに記載のポリウレタン樹脂、
に関する。
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂は、その製造工程において、多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、一次粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカ粒子を含むことに特徴を有する。
【0013】
多価アルコール(A)としては、2価以上の価数を有するアルコールであれば特に制限はないが、重縮合により得られるポリエステルポリオール(C)の好ましさから勘案して、特にエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが好ましい。これらの多価アルコールは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。さらに数平均分子量が500〜2000のポリオール化合物を用いても差し支えない。ポリオール系化合物としてはポリテトラメチレングリコール、ポリネオペンチルグルコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられ、またこれらポリオールの2種以上を用いた共重合体あるいは混合物であっても差し支えない。
【0014】
多価カルボン酸(B)としては、2価以上の価数を有するカルボン酸であれば特に制限はないが、重縮合により得られるポリエステルポリオール(C)の好ましさから勘案して、特にアジピン酸、シュウ酸、コハク酸、又はテレフタル酸が好ましい。これらの多価カルボン酸は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明に用いられるコロイダルシリカ粒子は、ポリウレタンの製造に用いられる多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)中に含まれていることに特徴を有する。
多価アルコール(A)及び多価カルボン酸(B)は前記のものが好ましく、コロイダルシリカ粒子の一次粒子径は、1〜100nmであるものが特に好ましい。
【0016】
本発明で用いるコロイダルシリカ粒子は、例えば、種々の方法で製造され、市販されているものを用いることができる。具体的には、例えば、無水ケイ酸の超微粒子を、各種多価アルコール又は多価カルボン酸中に分散させたもの等が挙げられる。コロイダルシリカ粒子は、その表面が重合性単量体や重合性単量体の重合物と化学結合する反応性基で有機変性されているものを用いてもよいし、有機変性されていないものを用いてもよい。
【0017】
従来のコロイダルシリカ粒子は、通常、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒等の各種分散媒中に分散させて用いられており、樹脂組成物中に分散させる際或いは分散させた後に分散媒を除去する操作を行っていた。しかし、当該操作を行う際のシリカ粒子の凝集により、一次粒子径が増大し、微小であるシリカ粒子の機能を十分に発揮できない問題点があった。
しかしながら、本発明の多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)中に含まれるコロイダルシリカ粒子は、当該分散媒を除去する操作を行わないことにより、微小である一次粒子径を大きな変化を伴うことなく、一次粒子径を1〜100nmの範囲内で保持した状態で目的とするポリウレタン中に分散させることが可能となり、結果として、耐熱性に優れたポリウレタン樹脂を提供することが可能となる。
【0018】
本発明のコロイダルシリカ粒子は1種類だけを用いても、2種類以上のものを同時に用いてもよい。
また、コロイダルシリカ粒子の物理的形状にも特に制限はなく、例えば、真球状、不定形或いは粒子中に空隙を持っているもの、単分散のもの、2個以上の粒子の如何なるものであっても良く、適宜選択することが好ましい。
本発明に用いられるコロイダルシリカ粒子としては、例えばシリカゾル スノーテックスST−0(日産化学製)を挙げることができるが、これに限らない。
【0019】
本発明のポリエステルポリオールは、前記コロイダルシリカ粒子が含まれる多価アルコール(A)と多価カルボン酸(B)とのエステル化反応により得られる。
本発明におけるエステル化反応においては、通常公知のエステル化触媒が用いられる。触媒としては、一般に酸触媒が用いられることが多い。ルイス酸としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のオルトチタン酸エステルや、ジエチル錫オキシド、ジブチル錫オキシド等の錫系化合物や、酸化亜鉛等の金属化合物が用いられる。また、ルイス酸の他には、パラトルエンスルホン酸等のブレンステッド酸を用いてもよい。
【0020】
反応温度は、用いられる触媒、多価アルコール及び多価カルボン酸によって異なるが、通常50〜250℃の温度の範囲を挙げることができる。反応時間は、用いられる触媒、多価アルコール及び多価カルボン酸によって異なるが、0.5〜24時間の時間を挙げることができる。反応は、生成する水を除去しながら行うことが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールと多価カルボン酸の好ましい組合せは特に制限はないが、例えば、エチレングリコール−アジピン酸、1.4ブタンジオール−アジピン酸、1,3−プロピレングリコールーアジピン酸、エチレングリコールーテレフタル酸、1,4ブタンジオールーテレフタル酸、エチレングリコールーナフタレンジカルボン酸、1,4ブタンジオールーナフタレンジカルボン酸等の組合せを挙げることができる。
【0021】
本発明に用いられるポリイソシアネート(D)は、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等のポリウレタン樹脂の製造において用いられる種々の有機ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1−エチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−イソプロピル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−ジメチル−4,6−フェニレンジイソシアネート、1,4−ジメチル−2,5−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)−ベンゼン、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、パラ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1−メチル−3,5−ジエチルベンゼンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ジエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3,5−トリエチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メチル−ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、ナフタレン−2,7−ジイソシアネート、1,1’−ジナフチル−2,2’−ジイソシアネート、ビフェニル−2,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート等を使用することができる。
【0023】
また、脂環式ポリイソシアネート及び脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等及びこれらの3量体等を使用することができる。
【0024】
比較的安価なこと、原料を入手しやすいことから、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)−ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナートメチル)−ベンゼン、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。
【0025】
本発明の多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)は、更に、鎖伸長剤を含んでもよい。本発明に用いられる鎖伸長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの如き低分子グリコール及びエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチエンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの如き脂肪族ジアミン及びイソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンの如き脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0026】
本発明で用いられるコロイダルシリカ粒子の酸価は、電位差法で測定した値が1〜50(KOHmg/g)であるものが好ましい。酸価1(KOHmg/g)未満の場合、シリカ粒子の凝集が発生しやすく、また50(KOHmg/g)を超えると加熱時の変色が大きい。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂の製造は、得られたポリエステルポリオールとポリイソシアネートを通常公知の方法で反応することにより行うことができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例及び比較例をもって本発明をより詳しく説明する。
【0029】
(評価法)
本実施例における評価法は下記に従った。
1.耐熱性:動的粘弾性測定による溶融温度測定
ポリウレタンフィルムを幅6mm、長さ40mmの短冊状に切り出し、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、RSAIII)にて周波数1Hzで繰り返し引張荷重を加え、ガラス転移温度以上の温度範囲で発現する溶融による
tanδのピーク温度をメルトダウン温度として測定した。
2.加熱による自重変形評価
上記短冊状試験片を熱風乾燥機内に吊るし、温度昇温過程で溶融により原型より長く伸び始める温度を自重変形温度とした。
3.引張特性評価
該短冊状試験片を用い、引張速度100mm/(min.)、グリップ間隔10mm、標線間隔10mmで引張試験機にて測定し、引張強さ、伸びを求めた。
4.酸価
JIS K0070記載の化学製品の酸価、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法の電位差法により酸価を求めた。
1)試料を約1.0g量りとり、100mL三角フラスコに投入。
2)以下に示す滴定溶剤を60mLを添加。
ポリエステルポリオール:トルエン/メタノール=7/3の中性溶剤
シリカ:メタノールの中性溶剤
3)常温にて0.1mol/L 水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定を行い、酸価を求める。
5.水酸基価
JIS K0070記載の化学製品の酸価、けん化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法の電位差法により酸価を求めた。
1)試料約3.0gを量りとり、100mL三角フラスコに投入。
2)アセチル化剤(ピリジン/無水酢酸=20/1)15mLを添加。
3)115(℃)/1hrsアセチル化した後、イオン交換水を加え、未反応の無水酢酸をアセチル化する。
4)滴定溶剤(アセトン/ブタノール=5/1)を60mL加える。
5)常温にて0.5mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定を行い、同時に試料を加えないアセチル化剤についても滴定を行い、水酸基価を求める。
6.シリカ粒子径の測定
(1)ナノシリカ含有エチレングリコールのシリカ粒子径測定
マイクロピペットにてナノシリカ含有エチレングリコール50μLを採取し、アセトン10mLに分散させる。このシリカーアセトン分散液を粒径測定装置(大塚電子株式会社製 ELS−Z)にて測定する。粒子径は平均粒子径とする。
【0030】
(2)ポリウレタンフィルムのシリカ粒子径測定
フィルム断面を−90(℃)で厚み約80(nm)の薄膜切片をミクロトームにて作成し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、品名JEM−2200FS)にて観察し、粒径を測定する。
【0031】
(製造例1)ナノシリカ含有グリコールの製造
エチレングリコールナノシリカ分散体を定法により調整した。すなわち光散乱法による粒子系が44(nm)、pH=2.6の酸性水性シリカゾル スノーテックス ST−0(日産化学製)3Lを、陽イオン交換樹脂(三菱化学製)を用いて陽イオンを除去した。ついで得られたゾル3Lをテフロン(登録商標)製容器に仕込み、撹拌しながら、純粋及び水酸化カルシウムを加え、水酸化カルシウム含有水性シリカゾルを作製し、ついで、シリカ成分が20質量%になるように、エチレングリコールを添加後、エバポレータにて水分を除去し、シリカ分散エチレングリコール分散体X1を得た。この分散体はシリカ含有量20質量%、粘度42mPa・s、水分1.1%、粒子径44nm、酸価7.5(KOHmg/g)であった。
【0032】
(製造例2)ポリエステルポリオールの製造
反応容器に製造例1で製造した直径約20(nm)のシリカ粒子を20質量%均一に分散させたエチレングリコール1267部、アジピン酸1985部を一括して仕込み(エチレングリコール/アジピン酸モル比=1.2/1.0)、窒素気流中で、攪拌下に2℃/分の昇温速度で140(℃)まで昇温し、140(℃)で1時間反応した。次いで、生成する水を除去しながら、0.6℃/分の昇温速度で225(℃)まで昇温し、該温度で1hr反応させた後、イソプロピルチタネート0.09部仕込み、12kpaまで減圧し、225(℃)で生成する水を除去しながら、8時間反応を行い、次の性状を有するポリエステルポリオールY1を得た。
【0033】
シリカ含有量:9.5質量%
数平均分子量:6408(検量線:PMMA)
酸価;0.99(KOHmg/g)
水酸基価;45(KOHmg/g)
融点:47(℃)(DSC法)
【0034】
(製造例3)コロイダルシリカ粒子を含有しないポリエステルポリオールの製造
コロイダルシリカ粒子を含有しないエチレングリコール及びアジピン酸をモル比で、1.12/1.0になるように仕込み、同条件で反応させ、次の性状のポリエステルポリオールYA1を得た。
数平均分子量:4377(検量線:PMMA)
酸価;0.53(KOHmg/g)
水酸基価;57(KOHmg/g)
融点:47(℃)(DSC法)
【0035】
また、コロイダルシリカ粒子を含有したエチレングリコールを使用しない例として、前述したYA1をメチルエチルケトン(MEK)へ濃度16.7質量%になるように溶解し、ポリエステルポリオールMEK質量%溶液(YB1)を作製した。次に日本アエロジル製親水性シリカ200をYB1に20質量%になるように仕込み、ビーズミルで撹拌し、シリカ対樹脂成分重量比20質量%、固形成分20質量%のシリカ/YA1/MEK分散液(YC1)を得た。この分散液の粒子径を光散乱法で測定したところ、434(nm)であった。YB1:573部とYC1:460部をホモジナイザーで混合し、固形成分18.2質量%、対樹脂比のシリカ含有量9.8質量%のシリカ含有ポリエステルポリオールMEK溶液YS1を得た。
【0036】
(実施例)ポリウレタンフィルムの製造
ポリエステルポリオールY1を80(℃)に加温し、MDI(日本ポリウレタン製、商品名ミリオネートMTL、NCO当量146)を用い、NCO当量/水酸基当量=1.0になるように配合した。また触媒としてジオクチル錫ジラウリレートを50ppm配合し、撹拌後、減圧脱泡を行い、離型フィルムの上に厚み0.4mmになるように塗工した。該塗工樹脂を120(℃)/2hrs、ついで80(℃)/16hrsの条件で硬化させ、ポリエステルポリオールウレタンフィルムZ1を得た。またY1及びYA1を用いてシリカ含有量が0.8〜8%になるように調整し、同様にポリエステルポリオールウレタンフィルムを得た。
【0037】
本発明のポリウレタンフィルムはメルトダウン温度、自重変形温度が高く、かつ従来の柔軟性を損なわずに、引張強さも優れている。
【0038】
(比較例1)
YA1を使用し、実施例1と同様に、MDIを用いて、シリカ未含有のポリウレタンフィルムを作製し、メルトダウン温度、自重変形温度、引張特性を測定した。
【0039】
(比較例2)
ナノシリカ含有エチレングリコールを用いずに作製したシリカ9.5質量%含有ポリエステルポリオールMEK溶液YS1に、NCO当量/水酸基当量=1.0になるようにMDIを配合し、MEKを揮発させながら、60(℃)/4hrs放置し、ついで120(℃)/2hrs硬化させた後、80(℃)/16hrs真空乾燥機にて硬化させ、ポリウレタンフィルムを得た。このフィルムを実施例1と同様にメルトダウン温度、自重変形温度、引張特性を測定した。
【0040】
(試験例)ポリウレタンフィルムの物性評価
ポリウレタンフィルムを幅6mm、長さ40mmの短冊状に切り出し、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、RSAIII)にてメルトダウン温度を測定した。また自重変形温度、引張特性を測定した。
表1に記載の組成でポリウレタンフィルムを作製し、実施例及び比較例の評価を行った。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、優れた耐熱性を有するポリウレタン樹脂を提供することができ、当該樹脂は、耐熱性フィルム等への利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂において、
多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、一次粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカ粒子を含むものであり、該多価アルコール(A)と多価カルボン酸(B)との重縮合反応により得られるポリエステルポリオール(C)をポリイソシアネート(D)と反応させることにより得られるポリウレタン樹脂。
【請求項2】
多価アルコール(A)又は多価カルボン酸(B)が、更に鎖伸長剤を含む前記ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
多価アルコール(A)が、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールである請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
多価カルボン酸(B)が、アジピン酸、シュウ酸、コハク酸、又はテレフタル酸である請求項1〜3の何れかに記載のポリウレタン樹脂。
【請求項5】
電位差法で測定したコロイダルシリカ粒子の酸価が1〜50(KOHmg/g)である請求項1〜4の何れかに記載のポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2011−105907(P2011−105907A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264930(P2009−264930)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】