説明

耐衝撃性改質成形組成物及び方法

アクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂を調製するための方法が開示され、該方法は、(a)少なくとも1つのアクリレートモノマー及び少なくとも1つの架橋剤を含む混合物を重合してゴム基材を形成する工程;次いで(b)前記ゴム基材の存在下で、複数のモノマー(ここで、モノマーの少なくとも1つは、ビニル芳香族モノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つは、モノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される)の混合物を重合する工程;及び場合によっては次いで(c)少なくとも1つの後続段階において、(b)で得られたゴム基材の存在下で、1つ又は複数のモノマー(ここで、1つ又は複数のモノマーは、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む)を重合する工程を含み、工程(b)の前のゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量は、ゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモル未満である。本発明はまた、少なくとも1つの架橋剤から誘導される構造単位を含むゴム基材(ここで、ゴム基材は、ゴム基材の乾燥重量を基準にしてゴム基材の1グラム当たり5.6マイクロモル未満の未反応架橋剤を含む)から誘導されるエラストマー相を含むASA樹脂を含む成形組成物に関する。前記ASA樹脂を含む及び/又は前記成形組成物から作製された物品も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は、ゴムで改質された熱可塑性樹脂を含む組成物及び前記組成物を調製する方法を対象とする。特定の一実施形態においては、本発明は、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される構造単位を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂を含む組成物を対象とする。
【0002】
衝撃強度、流動性及び耐薬品性の優れたバランスのために、多種多様の市販のゴム変性ブレンド品が、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーをベースとしている。このような製品の最も広い商業的有用性は、ゴム衝撃改質剤相がポリブタジエン(PBD)である場合に見出されており、ABSとして知られる樹脂のファミリーが生み出されている。衝撃強度及び屋外暴露に対する外観の保持性を改良するために、ポリ(ブチルアクリレート)(PBA)ゴムなどの少なくとも1つのアルキルアクリレートを含むスチレン−アクリロニトリル組成物が調製され、ASA(アクリル−スチレン−アクリロニトリル)樹脂として知られている。メチルメタクリレートから誘導される構造単位を更に含むASA樹脂は、実際又は模擬の屋外老化暴露での色彩安定性の改善、及び同様に同一条件下の表面光沢の優れた保持性を示す。
【0003】
しかしながら、ASA組成物は、成形条件に敏感であることが知られている。溶融温度や成形温度が高ければ高いほど、高い光沢、低いヘーズ、そして良好な表面色特性が得られる。残念ながら、高温でこのような組成物で成形すると、成形された組成物を排出前の冷却のため長時間成形空洞内に置いておかなければならないため、サイクル時間が増加することにもなる。従って、1時間当たり製造される部品の数量は低下し、1成形部品当たりの総費用は増加する。費用増加のために、成形業者は、より低い溶融温度及び成形温度でこのような組成物を加工しがちであり、このことが、ASAを含む成形部品における乏しい表面美観をもたらす。従って、解決すべき問題は、成形生産性の損失を最小にする低い成形温度で成形しながらも、ASAを含む成形部品における良好な表面美観を保持するための有効な方法を提供することである。
【0004】
〔発明の簡単な説明〕
本発明者らは、成形工程において高い生産性を維持したまま、良好な表面美観を有するASAを含む成形部品の調製方法を見出した。特定の一実施形態においては、本発明は、硬質熱可塑性樹脂相中に分散した不連続のエラストマー相を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂(ここで、硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部は、エラストマー相にグラフト化されている)の調製方法であって、
(a)少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及びポリエチレン性不飽和モノマーを含む少なくとも1つの架橋剤を含む混合物を重合してゴム基材を形成する工程;次いで
(b)前記ゴム基材の存在下で、複数のモノマー(ここで、モノマーの少なくとも1つは、ビニル芳香族モノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つは、モノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される)の混合物を重合する工程;及び場合によっては次いで
(c)少なくとも1つの後続段階において、(b)で得られたゴム基材の存在下で、1つ又は複数のモノマー(ここで、1つ又は複数のモノマーは、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む)を重合する工程;
を含み、前記工程(b)の前のゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量は、ゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモル未満である方法である。
【0005】
他の一実施形態においては、本発明は、硬質熱可塑性樹脂相に分散された不連続のエラストマー相を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂を含む成形組成物であって、前記硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部が、エラストマー相にグラフト化され;前記熱可塑性樹脂相が、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び場合によっては少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーから誘導される構造単位を含み;前記エラストマー相が、少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及びポリエチレン性不飽和モノマーを含む少なくとも1つの架橋剤から誘導される構造単位を含むゴム基材から誘導され;そして、前記ゴム基材が、グラフト化前のゴム基材の乾燥重量を基準にしてゴム基材の1グラム当たり5.6マイクロモル未満の未反応架橋剤を含む成形組成物である。本発明は、同様に、前記ASA樹脂を含む及び/又は前記成形組成物から作製された物品に関する。本発明の様々な他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照してより明らかになる。
【0006】
〔発明の詳細な説明〕
以下の明細書及び付随する特許請求の範囲においては、以下に示す意味を有することが定義される多数の用語を参照されたい。単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に規定しない限り複数の指示対象を含み得る。
【0007】
種々の実施形態においては、本発明の組成物は、不連続のエラストマー相及び硬質熱可塑性樹脂相を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂を含み、ここで硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部は、エラストマー相にグラフト化されている。ASA樹脂は、硬質熱可塑性樹脂相を形成するモノマーとグラフトするための少なくとも1つのゴム基材を用いる方法によって合成される。ゴム基材は、ASA樹脂の不連続なエラストマー相を含んでいる。アクリルモノマーから誘導される構造単位を含み、且つグラフト化可能なモノマーの少なくとも一部によるグラフト化をおこし得る限り、ゴム基材に特定の制限はない。ゴム基材は、一実施形態においては約0℃未満の、他の一実施形態においては約−20℃未満の、更に他の一実施形態においては約−30℃未満のガラス転移温度Tgを有する。
【0008】
種々の実施形態においては、ゴム基材は、(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー及びこれらのモノマーの少なくとも1つを含む混合物から選択される少なくとも1つのモノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリレートモノマーについての周知の重合方法により誘導される。本明細書で使用される、「モノエチレン性不飽和」という用語は、1分子当たり1つのエチレン不飽和部位を有することを意味し、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、集合的にアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーを意味する。本明細書で使用される、例えば化合物又は化学置換基などの特定の単位に適用される「(Cx〜Cy)」という用語は、このような1単位当たり「x」個の炭素原子から「y」個の炭素原子の炭素原子含有量を有することを意味する。例えば、「(C1〜C12)アルキル」は、1つの基当たり1から12個の炭素原子を有する直鎖、分枝又は環式アルキル置換基を意味し、それだけには限らないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルを含む。適切な(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマーには、それだけには限らないが、(C1〜C12)アルキルアクリレートモノマー[ここで、(C1〜C12)アルキルアクリレートモノマーの具体例には、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが含まれる];及びそれらの(C1〜C12)アルキルメタクリレート類似体[ここで、(C1〜C12)アルキルメタクリレート類似体の具体例には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、及びデシルメタクリレートが含まれる]が含まれる。本発明の特定の一実施形態においては、ゴム基材は、n−ブチルアクリレートから誘導される構造単位を含む。
【0009】
種々の実施形態においては、ゴム基材は、少なくとも1つのポリエチレン性不飽和モノマー(以下「架橋剤」としばしば呼ばれる)から誘導される構造単位も含む。本明細書で使用される、「ポリエチレン性不飽和」という用語は、1分子当たり2つ以上のエチレン不飽和部位を有することを意味する。ポリエチレン性不飽和モノマーは、典型的には、ゴム粒子の架橋を提供するため、及びグラフトモノマーとの後続の反応のためにゴム基材中に「グラフト結合」部位を提供するために使用される。適切なポリエチレン性不飽和モノマーには、それだけには限らないが、ブチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリシクロデセニルアルコールのアクリレート及びこのようなモノマーの少なくとも1つを含む混合物が含まれる。特定の一実施形態においては、ゴム基材は、トリアリルシアヌレートから誘導される構造単位を含む。
【0010】
発明者らは、モノマーとグラフト化して硬質熱可塑性樹脂相を形成する前のゴム基材中の残存架橋剤の存在が、ASA樹脂を含む成形部品の許容できない美的外観をもたらすことを見出した。特に、調製後において、ゴム基材中の残存架橋剤の過剰量で存在すると、しばしば、ASA樹脂を含む成形部品における、増加したヘーズ、より低い光沢、及び顔料又は染料添加でのより不鮮明な着色をもたらす。この状況において、ゴム基材の調製直後であって硬質熱可塑性樹脂相を生成するための任意のグラフト化工程前に測定される残存架橋剤は、未反応であり、ゴム基材に結合していない。従って、成形部品における許容できない美的効果を軽減するために、その調製直後に測定されたゴム基材中の残存架橋剤の量は、ASA樹脂の調製に使用されるゴム基材の乾燥重量を基準にして、一実施形態においては1グラム当たり約5.6マイクロモル未満、他の一実施形態においては1グラム当たり約4.0マイクロモル未満、他の一実施形態においては1グラム当たり約3.2マイクロモル未満、他の一実施形態においては1グラム当たり約2.0マイクロモル未満、更に他の一実施形態においては1グラム当たり約1.2マイクロモル未満である。更に他の一実施形態においては、ゴム基材の調製直後に測定したとき、ASA樹脂の調製に使用されるゴム基材の乾燥重量を基準にしてゴム基材の1グラム当たり約4マイクロモル未満の残存架橋剤からの反応性エチレン官能基が存在する。
【0011】
幾つかの実施形態においては、ゴム基材は、例えばゴム基材を調製するのに使用されたアルキル(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能である他の不飽和モノマーの少量から誘導される構造単位を場合によっては含むことができる。適切な共重合可能なモノマーには、それだけには限らないが、C1〜C12アリール若しくはハロアリール置換アクリレート、C1〜C12アリール若しくはハロアリール置換メタクリレート、又はそれらの混合物;例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸などのモノエチレン性不飽和カルボン酸;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシ(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレート;例えばシクロヘキシルメタクリレートなどの(C4〜C12)シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー;例えばアクリルアミド、メタクリルアミド及びN−置換−アクリルアミド又は−メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドモノマー;例えばマレイミド、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド及びハロアリール置換マレイミドなどのマレイミドモノマー;無水マレイン酸;ビニルメチルエーテル、例えばビニルアセテート及びビニルプロピオネートなどのビニルエステルが含まれる。本明細書で使用される、「(メタ)アクリルアミド」という用語は、集合的にアクリルアミド及びメタクリルアミドを意味する。適切な共重合可能なモノマーには、同様に、それだけには限らないが、ビニル芳香族モノマーが含まれ、例えば、スチレン;芳香族環に結合した1つ又は複数のアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ又はハロ置換基を有する置換スチレン(それだけには限らないが、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルビニルトルエン、ビニルキシレン、トリメチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、α−クロロスチレン、ジクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、メトキシスチレンを含む);ビニル置換縮合芳香族環構造(例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど);並びに、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー(例えば、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル及びα−クロロアクリロニトリルなど)の混合物;が含まれる。芳香族環上の置換基の混合を有する置換スチレンも適切である。
【0012】
ゴム基材は、ASA樹脂の総重量に対して、一実施形態においては約10から約94重量%の濃度で;他の一実施形態においては約10から約80重量%の濃度で;他の一実施形態においては約15から約80重量%の濃度で;他の一実施形態においては約35から約80重量%の濃度で;他の一実施形態においては約40から約80重量%の濃度で;他の一実施形態においては約25から約60重量%の濃度で;更に他の一実施形態においては約40から約50重量%の濃度で、ASA樹脂中に存在することができる。他の幾つかの実施形態においては、ゴム基材は、ASA樹脂の総重量に対して、約5から約50重量%の濃度で;約8から約40重量%の濃度で;約10から約30重量%の濃度で、ASA樹脂中に存在することができる。
【0013】
ゴム基材の粒径分布(硬質熱可塑性樹脂相を生成するためのグラフト化工程の前に測定したもの;この状態を、グラフト化後のゴム基材と区別するために、以下しばしば初期ゴム基材と呼ぶ)には特定の制限はない。幾つかの実施形態においては、ゴム基材は、約50ナノメーター(nm)から約1000nmの粒径範囲の粒子を有する広い粒径分布を有することができる。他の幾つかの実施形態においては、ゴム基材の体積平均粒径は、比較的狭く、約150nm未満の平均値を有することができる。更に他の幾つかの実施形態においては、ゴム基材の体積平均粒径は、約80nmから約500nmの間の範囲であってよい。更に他の幾つかの実施形態においては、ゴム基材の体積平均粒径は、比較的狭く、約200nmから約750nmの間の範囲の平均値を有することができる。他の幾つかの実施形態においては、ゴム基材の体積平均粒径は、約400nmを超えてよい。
【0014】
ASA樹脂は、ゴム基材の存在下でモノマーを重合することで、少なくとも一部でゴム相に化学的にグラフト化しているグラフトコポリマーを形成する方法によって、調製することができる。ゴム基材に化学的にグラフト化していないグラフトコポリマーの任意の部分は、硬質熱可塑性樹脂相を含む。硬質熱可塑性樹脂相は、一実施形態においては約25℃を超える、他の一実施形態においては90℃を超える又は同じである、更に他の一実施形態においては100℃を超える又は同じであるガラス転移温度(Tg)を示す熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含む。
【0015】
特定の一実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相は、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーから誘導される構造単位を有するポリマーを含む。適切な(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーには、ゴム基材の説明において前述されたものが含まれる。このようなポリマーの例には、それだけには限らないが、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/メチルメタクリレートコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、又はα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリル−、スチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレート−、スチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸−、若しくはスチレン/アクリロニトリル/アクリル酸ターポリマー、又はα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルターポリマーが含まれる。これらのコポリマーは、硬質熱可塑性樹脂相に、単独で又は混合物として使用することができる。
【0016】
幾つかの実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相は、1つ又は複数のビニル芳香族ポリマーを含む。適切なビニル芳香族ポリマーは、1つ又は複数のビニル芳香族モノマーから誘導される構造単位を少なくとも約20重量%含む。特定の一実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相は、1つ又は複数のビニル芳香族モノマーから誘導される第1の構造単位を有し、且つ1つ又は複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される第2の構造単位を有するビニル芳香族ポリマーを含む。このようなビニル芳香族ポリマーの例には、それだけには限らないが、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリルコポリマー、又はα−メチルスチレン/スチレン/アクリロニトリルターポリマーが含まれる。他の特定の一実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相は、1つ又は複数のビニル芳香族モノマーから誘導される第1の構造単位;1つ又は複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される第2の構造単位;及び(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーから誘導される第3の構造単位を有するビニル芳香族ポリマーを含む。このようなビニル芳香族ポリマーの例には、それだけには限らないが、スチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレート及びα−メチルスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマーが含まれる。これらのコポリマーは、硬質熱可塑性樹脂相用に単独で又は混合物として使用することができる。
【0017】
コポリマー中の構造単位が、1つ又は複数のモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーから誘導される場合、グラフトコポリマー及び硬質熱可塑性樹脂相を含むコポリマー中のニトリルモノマー含有率は、グラフトコポリマー及び硬質熱可塑性樹脂相を含むコポリマーの重量に対して、一実施形態においては約5から約40重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約5から約30重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約10から約30重量%の間の範囲、更に他の一実施形態においては約15から約30重量%の間の範囲である。
【0018】
ゴム基材と硬質熱可塑性樹脂相を含むモノマーとの間に生じるグラフト化の量は、ゴム相の相対量及び組成によって変化する。一実施形態においては、ASA樹脂中の硬質熱可塑性樹脂相の総量に対して約10重量%を超える硬質熱可塑性樹脂相が、ゴムに化学的にグラフト化している。他の一実施形態においては、ASA樹脂中の硬質熱可塑性樹脂相の総量に対して約15重量%を超える硬質熱可塑性樹脂相が、ゴムに化学的にグラフト化している。更に他の一実施形態においては、ASA樹脂中の硬質熱可塑性樹脂相の総量に対して約20重量%を超える硬質熱可塑性樹脂相が、ゴムに化学的にグラフト化している。特定の幾つかの実施形態においては、ゴムに化学的にグラフトしている硬質熱可塑性樹脂相の量は、ASA樹脂中の硬質熱可塑性樹脂相の総量に対して約5%から約90重量%の間;約10%から約90重量%の間;約15%から約85重量%の間;約15%から約50重量%の間;又は約20%から約50重量%の間、の範囲であってよい。更に他の幾つかの実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相の約40%から90重量%は自由である、即ち、グラフト化されていない。
【0019】
硬質熱可塑性樹脂相は、ASA樹脂の総重量に対して、一実施形態においては約85から約6重量%の濃度で;他の一実施形態においては約65から約6重量%の濃度で;他の一実施形態においては約60から約20重量%の濃度で;他の一実施形態においては約75から約25重量%の濃度で;他の一実施形態においては約50から約30重量%の濃度で;更に他の一実施形態においては約45から約35重量%の濃度で、ASA樹脂中に存在することができる。他の幾つかの実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相は、ASA樹脂の総重量に対して約90%から約30重量%の間の範囲でASA樹脂中に存在することができる。
【0020】
硬質熱可塑性樹脂相は、単にゴム基材の存在下で実施される重合によって、或いは1つ又は複数の別々に重合した硬質熱可塑性ポリマーを、ゴム基材の存在下で重合した硬質熱可塑性ポリマーへ添加することによって形成することができる。別々に合成された硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部が添加される場合、添加されるその別々に合成された硬質熱可塑性樹脂相の量は、全ASA樹脂の重量に対して約30重量%から約80重量%の間の範囲である。それぞれ異なる平均粒径を有する2つ又はそれを超えるゴム基材は、このような重合反応において別々に使用し、次いでその生成物を一緒にブレンドすることができる。異なる平均粒径の初期ゴム基材をそれぞれ有するこのような生成物が、一緒にブレンドされる例示的な実施形態において、その基材の比は、約90:10から約10:90の範囲、又は約80:20から約20:80の範囲、又は約70:30から約30:70の範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、より小さな粒径を有する初期ゴム基材は、複数種の粒径の初期ゴム基材を含むこのようなブレンド品における主成分である。
【0021】
硬質熱可塑性樹脂相は、周知の方法、例えば、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法又はそれらの組合せに従って作製することができ、ここで、硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部は、ゴム相に存在する不飽和部位との反応によってゴム相に化学的に結合、即ち「グラフト化」している。グラフト化反応は、バッチ、連続又は半連続法で行うことができる。代表的な手順には、それだけには限らないが、米国特許第3,944,631号及び1997年10月31日出願の米国特許出願第08/962,458号に教示されたものが含まれる。ゴム相中の不飽和部位は、例えば、ポリエチレン性不飽和モノマーから誘導されたゴムの構造単位中の残存不飽和部位によって提供される。
【0022】
幾つかの実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相の同時形成を伴うモノマーのゴム基材へのグラフト化を場合によっては段階的に実施される方法(例えば、2004年5月5日出願の米国特許出願第10/748,394号に記載されたように、少なくとも1つの第1のモノマーがゴム基材にグラフト化され、次いでこの第1のモノマーと異なる少なくとも1つの第2のモノマーがゴム基材にグラフト化される方法)によって、ASA樹脂を調製することができる。この関連で、1つのグラフト段階からその次へ変化したことは、グラフト化のためにゴム基材に添加される少なくとも1つのモノマーの種類に変化があった時点として定義される。一実施形態においては、硬質熱可塑性樹脂相の形成及びゴム基材へのグラフト化は、少なくとも1つの第1のモノマーを長い時間をかけてゴム基材を含む反応混合物に供給することによって実施される。この関連で、異なるモノマーが、前記第1のモノマーの存在下又は不在下で供給物質(feed stream)に導入されるときに、第2のグラフト段階が生じる。
【0023】
段階的なグラフト化が実施される場合、少なくとも2段階がグラフト化のために用いられるが、追加の段階を用いることができる。第1のグラフト化段階は、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーを用いて実施される。特定の一実施形態においては、グラフト化は、モノマーの混合物を用いた第1の段階で実施され、ここで、モノマーの少なくとも1つはビニル芳香族モノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つはモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される。少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーを第1のグラフト化段階に用いる場合、ビニル芳香族モノマーのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーに対する重量/重量比は、一実施形態においては約1:1から約6:1の間の範囲、他の一実施形態においては約1.5:1から約4:1の間の範囲、更に他の一実施形態においては約2:1から約3:1の間の範囲、更に他の一実施形態においては約2.5:1から約3:1の間の範囲である。好ましい一実施形態においては、第1のグラフト化段階に用いられるビニル芳香族モノマーのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーに対する重量/重量比は、約2.6:1である。
【0024】
段階的なグラフト化が実施される場合、グラフト化は、第1の段階後の少なくとも1つの後続の段階において、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーを用いて実施される。特定の一実施形態においては、グラフト化は、少なくとも1つの後続段階において、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される1つ又は複数のモノマーを用いて実施される。他の特定の一実施形態においては、グラフト化は、少なくとも1つの後続段階において、モノマーの少なくとも1つは(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つはビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択されるモノマーの混合物を用いて実施される。他の特定の一実施形態においては、グラフト化は、少なくとも1つの後続段階において、モノマーの少なくとも1つは(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つはビニル芳香族モノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つはモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択されるモノマーの混合物を用いて実施される。前記(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマー、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーには、本明細書で上記に記載されたものが含まれる。
【0025】
段階的なグラフト化が実施される場合、第1のグラフト化段階においては、ゴム基材へのグラフト化のために用いられるモノマーの量は、全ての段階においてグラフト化のために用いられるモノマーの合計重量に対して、一実施形態においては約5重量%から約98重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約5重量%から約95重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約10重量%から約90重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約15重量%から約85重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約20重量%から約80重量%の間の範囲、更に他の一実施形態においては約30重量%から約70重量%の間の範囲である。特定の一実施形態においては、第1の段階においてゴム基材へのグラフト化のために用いられるモノマーの量は、全ての段階においてグラフト化のために用いられるモノマーの合計重量に対して、約30重量%から約95重量%の間の範囲である。次いで、更なるモノマーが、前記第1の段階後の1つ又は複数の段階において、ゴム基材にグラフト化される。特定の一実施形態においては、全ての更なるモノマーは、前記第1段階後の1つの第2段階において、ゴム基材にグラフト化される。
【0026】
少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーを、第1の段階後のある段階においてゴム基材へのグラフト化のために用いる場合、その(メタ)アクリレートモノマーの量は、全段階におけるグラフト化のために用いられるモノマーの合計重量に対して、一実施形態においては約95重量%から約2重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約80重量%から約2重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約70重量%から約2重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約50重量%から約2重量%の間の範囲、他の一実施形態においては約45重量%から約2重量%の間の範囲、更に他の一実施形態においては約40重量%から約5重量%の間の範囲である。
【0027】
少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマーの混合物を、第1段階後の一段階においてゴム基材へのグラフト化のために用いる場合、その(メタ)アクリレートモノマーの他のモノマーの総計に対する重量/重量比は、一実施形態においては約10:1から約1:10の範囲、他の一実施形態においては約8:1から約1:8の間の範囲、他の一実施形態においては約5:1から約1:5の間の範囲、他の一実施形態においては約3:1から約1:3の間の範囲、他の一実施形態においては約2:1から約1:2の間の範囲、更に他の一実施形態においては約1.5:1から約1:1.5の間の範囲である。
【0028】
特定の幾つかの実施形態においては、ASA樹脂は、スチレン/アクリロニトリルコポリマー又はスチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマーのいずれかを含む硬質熱可塑性樹脂相を含む。スチレン/アクリロニトリル/メチルメタクリレートコポリマーを硬質熱可塑性樹脂相として含むASA樹脂は、メチルメタクリレート変性ASA(しばしばMMA−ASAと略される)としばしば呼ばれる。他の特定の一実施形態においては、ゴム変性熱可塑性樹脂は、実質的にMMAで変性されていないASA樹脂からなる。他の特定の一実施形態においては、ゴム変性熱可塑性樹脂は、実質的にMMA−ASA樹脂からなる。
【0029】
本発明の組成物は、更に場合によっては少なくとも1つの他の樹脂を含み、ここで、他の樹脂の具体例には、それだけには限らないが、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリ(α−メチルスチレン)、SAN、ABS、ポリ(メタ)アクリレートポリマー及びコポリマー;ポリ(メチルメタクリレート);少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマー;MMASANコポリマー;少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つのマレイミドモノマーから誘導されるコポリマー;スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドコポリマー;少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つの無水マレイン酸モノマーから誘導されるコポリマー;又はスチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸コポリマーが含まれる。
【0030】
本発明の組成物は、それだけには限らないが、発色安定剤、熱安定剤、光安定剤、抗酸化剤、UV遮断剤、及びUV吸収剤などの安定剤;難燃剤、滴下防止剤、潤滑剤、流動促進剤及び他の加工助剤;可塑剤、帯電防止剤、離型剤、衝撃改質剤、充填剤、及び有機、無機又は有機金属性であってよい染料及び顔料などの着色剤などを含む、当技術分野で周知の添加剤を場合によっては含むことができる。例示的な添加剤には、それだけには限らないが、シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラス繊維又は球、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、石英粉末、クレイ、焼成クレイ、タルク、カオリン、アスベスト、セルロース、木粉、コルク、綿及び人造織物繊維が含まれ、特にガラス繊維、カーボンファイバー、及び金属繊維などの補強材が含まれる。しばしば複数の添加剤が本発明の組成物に含まれ、幾つかの実施形態においては1つのタイプで複数の添加剤が含まれる。特定の一実施形態においては、組成物は、着色剤、染料、顔料、潤滑剤、安定剤、充填剤及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む。
【0031】
本発明の組成物は、有用な物品に成形することができる。幾つかの実施形態においては、物品は、本発明の組成物を含む単一物品である。他の幾つかの実施形態においては、物品は、本発明の組成物を含む層を含む多層物品である。このような多層及び単一物品の具体例には、それだけには限らないが、屋外用車両及び機器(OVAD)用物品;パネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、垂直パネル、水平パネル、トリム、ピラー、センターポスト、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、フェイシア、グリル、ミラーハウジング、ピラーアップリケ、クラッディング、ボディサイドモールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウインドウフレーム、ヘッドランプベゼル、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ナンバープレートエンクロージャ、ルーフラック、及びランニングボードを含む、航空機、自動車、トラック、軍用車両(自動車、航空機、及び海上車両を含めた)、スクーター、及びオートバイ用の外装及び内装部品;屋外車両及び機器用の、エンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品;電気及び通信装置用のエンクロージャ;屋外家具;航空機部品;トリム、エンクロージャ、及びハウジングを含む、ボート及び舶用機器;船外モーターハウジング;水深測定器ハウジング、水上バイク;ジェットスキー;プール;温泉;温水浴槽;階段;階段カバー;ガラスの取り付け工事、外柵工事、デッキ板、屋根などの建築及び建設用途;サイディング、特にビニルサイディング用途;窓、床、装飾用窓の取り付け又は処理;壁板、及びドア;屋外及び屋内看板;現金自動預払機(ATM)用の、エンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品;芝生及びガーデントラクター用のエンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品、並びに芝刈り機、及び芝生及びガーデン用具を含めた用具;窓及びドアのトリム;スポーツ用品及び玩具;スノーモービル用の、エンクロージャ、ハウジング、パネル、及び部品;レクリエーショナルビークルパネル及び部品;遊び場の設備;プラスチック−木材の組合せで作製された物品;ゴルフコースマーカー;マンホールカバー;携帯電話ハウジング;ラジオ送信機ハウジング;ラジオ受信機ハウジング;照明設備;照明器具;反射器;ネットワークインターフェース装置ハウジング;変圧器ハウジング;エアコンハウジング;公共交通用のクラッディング又はシート;列車、地下鉄、又はバス用のクラッディング又はシート;計器ハウジング;アンテナハウジング;衛星放送受信アンテナ用クラッディング;及び類似用途が含まれる。
【0032】
前記物品は、種々の周知のプロセス、例えば、異形押し出し、シート押し出し、共押し出し、押し出しブロー成形及び熱成形、又は射出成形の1つ又は複数の工程によって調製することができる。本発明は、それだけには限らないが、成形、加飾成形、塗装オーブンでの焼き付け、めっき、又はラミネーションなどの、前記物品への追加の製造作業を更に包含する。本発明の特定の一つの且つ驚くべき利点は、低い型温度で成形しながらASAを含む成形部品における良好な表面美観を保持するための有効な方法を提供することである。本発明の他の一つの利点は、より低い成形温度を利用したASAを含む成形部品の生産性の改善方法である。典型的には、成形温度が低くなる場合その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモル未満であるゴム基材を含むASAを含む、本発明の実施例に係る成形試験部品は、その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモルを超えるゴム基材を含むASAを含む比較例の成形試験部品と比較して、高い光沢の値若しくは低いヘーズの値のいずれか一方、又は高い光沢の値及びより低いヘーズの値の両方を示す。これらの効果が見られる、例示的な非制限の成形温度の範囲は、一実施形態においては約55℃から約75℃の間の範囲、他の一実施形態においては約60℃から約70℃の間の範囲である。
【0033】
更なる詳細がなくても、当業者は、本明細書の記述を使用して、本発明をその最大限度まで利用することができると考えられる。以下の実施例は、本発明の実施において、当業者に追加の指針を提供するものである。実施例は、単に、本願の教示に役立つ研究の代表にすぎない。従って、これらの例は、添付の特許請求の範囲において定義された本発明をいかなる方法によっても制限するものではない。以下の実施例及び比較例においては、ポリ(ブチルアクリレート)中の未反応の残存トリアリルシアヌレート(TAC)架橋剤は、内部標準と一緒に水性ポリ(ブチルアクリレート)ラテックスをジメチルスルホキシド中に室温で分散し、サンプルをガスクロマトグラフィー(ここで、ガスクロマトグラフィー法では、1グラム当たり約0.08マイクロモルを検知閾値とした)によって分析することによって測定された。
【0034】
〔実施例1〕
実施例1では、乳化重合プロセスによる小粒径MMA−ASA樹脂の調製を例示する。
【0035】
(手順1A:小粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ラテックスの調製)
ブレード付きタービン撹拌機を備えたステンレス鋼反応器に、70重量部(pbw)の脱塩水及び0.15pbwのピロリン酸四ナトリウムを装入した。撹拌を開始し、反応器の内容物を60℃に加熱し、1時間反応器の内容物に窒素をパージした。パージの完了後、0.33pbwのラウリル硫酸ナトリウムを添加し、5分間撹拌し、窒素の供給をパージからブランケットに変えた。
【0036】
以下の供給物質を、反応器に装入するために調製した:83pbw及び9.22pbwのブチルアクリレート(「BAモノマー」)の2つのポーション;6.30pbwのブチルアクリレート中に0.70pbwのトリアリルシアヌレートを含む架橋剤溶液(「TAC溶液#1」)及び0.70pbwのブチルアクリレート中に0.078pbwのトリアリルシアヌレートを含む架橋剤溶液(「TAC溶液#2」)の2つ;0.132pbwのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、0.025pbwのエチレンジアミン四酢酸のモノナトリウム塩(NaHEDTA)、0.005pbwの硫酸第一鉄七水和物及び15pbwの水を含む活性剤溶液(「活性剤溶液」);0.120pbwのクメンヒドロペルオキシド(CHP);40.7pbwの脱塩水(DMW);並びに24.3pbwの脱塩水中に2.70pbwのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む界面活性剤溶液(「石鹸溶液」)。
【0037】
反応を開始するために、撹拌を維持したまま、第1のBAモノマーポーションの7.25%及びTAC溶液#1を反応器に一括装入し、続いて全活性剤溶液の20%を一括装入した。次いで、全CHP装入の6%を添加して重合を開始したところ、典型的には、発熱反応が、CHP添加の1分以内に観察された。
【0038】
最初の発熱の観察後10分を時間0(T=0)と見なした。その後、反応を60℃に維持しながら、石鹸溶液及び他の供給物質の残りを、T=0から表1のポンプスケジュール(pump schedule)に従って供給した。得られたポリ(ブチルアクリレート)の単分散ラテックスを、Coulter LS230粒径分析機を用いて多角度光散乱法により分析したところ、109nmの体積平均粒径を有することが確認された。反応の最後におけるゴムラテックス中の未反応TACモノマーの量は、GC分析によって、水性ラテックスを基準にして1グラム当たり1.52マイクロモル、又はPBA乾燥ポリマー固体中に未反応TACの1グラム当たり3.73マイクロモルであることが確認された。
【0039】
【表1】

【0040】
(手順1B:小粒径MMA−ASAグラフトコポリマーの調製)
手順1Aで調製されたポリ(ブチルアクリレート)ゴムラテックス粒子の存在下、スチレン、アクリロニトリル及びMMAモノマーの水性乳化重合によって、グラフトコポリマーを作製した。タービンブレードを取り付けた撹拌機を備えたステンレス鋼反応器に、185pbwの水、及び45.0pbwのポリ(ブチルアクリレート)ゴム粒子[約39重量%の固体を含む水性ポリ(ブチルアクリレート)ゴムラテックスの形態]を装入し、反応器の内容物を60℃に加熱した。以下の供給物質を調製した:21.96及び9.8pbwのスチレンの2つのポーション;8.54及び6.13pbwのアクリロニトリルの2つのポーション;8.58pbwのメチルメタクリレート(MMA);0.200pbwのクメンヒドロペルオキシド;0.0026pbwの硫酸第一鉄七水和物、0.0128pbwのエチレンジアミン四酢酸のジナトリウム塩(Na2EDTA)、0.23pbwのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)及び5pbwの水を含む活性剤溶液;及び1.8pbwの脱塩水中に0.2pbwのSLSを含む石鹸溶液。これらは、表2中のスケジュールに従い、実質的にそれぞれ一定の速度で、それぞれ反応器中に供給された。
【0041】
【表2】

【0042】
バッチを冷却した後、脂肪酸石鹸で乳化したヒンダードフェノール及びチオエステルの1:1混合物の0.35pbwを、撹拌しながら添加した。その後、85℃から91℃の温度における100pbwのグラフトコポリマー粒子(乾燥ベース)当たり3pbwの塩化カルシウムを添加することで、反応器の内容物を凝固させ、次いで74℃の排気口空気温度において流動床乾燥機中で乾燥した。
【0043】
〔実施例2〕
実施例2では、乳化重合プロセスに続いてシード半バッチ式重合プロセスによる大粒径MMA−ASA樹脂の調製を例示する。
【0044】
(手順2A:ポリ(ブチルアクリレート)シードラテックスの調製)
0.47pbwのTAC及び99.53pbwのブチルアクリレートのモノマー供給組成を用いた欧州特許第0913408B1号の実施例1に記載された方法による連続乳化重合反応によって、シードラテックス粒子を製造した。得られたラテックスポリマーは、上記参考文献に開示されたSpectronic 20光散乱法を用いて測定したところ、270nmの体積平均粒径を有する広い粒径分布を有していた。
【0045】
(手順2B:大粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ラテックスの調製)
ブレード付きタービン撹拌機を備えたステンレス鋼反応器に、90pbwの脱塩水及び0.15pbwのピロリン酸四ナトリウムを装入した。撹拌を開始し、反応器の内容物を60℃に加熱し、1時間反応器の内容物に窒素をパージした。パージ完了後、手順2Aからのポリ(ブチルアクリレート)シードラテックスの1.25pbwを添加し5分間撹拌し、窒素供給をパージからブランケットに変えた。
【0046】
以下の供給物質を反応器への装入のために調製した:85.75及び9.4pbwのブチルアクリレート(「BAモノマー」)の2つのポーション;2.70pbwブチルアクリレート中に0.30pbwのトリアリルシアヌレートを含む架橋剤の溶液(「TAC溶液#1」)及び0.54pbwのブチルアクリレート中に0.06pbwのトリアリルシアヌレートを含む架橋剤の溶液(「TAC溶液#2」)の2つ;0.132pbwのナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、0.025pbwのエチレンジアミン四酢酸のモノナトリウム塩(NaHEDTA)、0.005pbwの硫酸第一鉄七水和物及び15pbwの水を含む活性剤溶液(「活性剤溶液」);0.120pbwのクメンヒドロペルオキシド(CHP);58pbwの脱塩水(DMW);2.7pbwの脱塩水中に0.30pbwのラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む界面活性剤溶液(「石鹸溶液#1」)及び4.5pbwの脱塩水中にラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む界面活性剤溶液(「石鹸溶液#2」)の2つ。
【0047】
2Aで調製されたシードラテックス装入後に反応温度を60℃に戻した後、活性剤溶液の20%を反応器に一括装入した。次いで、残りのモノマー、石鹸及び活性剤の全ての反応器への供給を開始し、表3に示された供給スケジュールに従って供給した。全ての供給物を装入した後、反応物を撹拌しながら60℃で30分間保ち、次いで49℃に冷却した後、反応器からバッチを取り出した。
【0048】
得られたポリ(ブチルアクリレート)の単分散ラテックスを、Coulter LS230粒径分析機を用いて多角度光散乱法により分析したところ、507nmの体積平均粒径を有することが確認された。ラテックス中の未反応TACモノマーの量は、GC分析によって、水性ラテックスを基準にして1グラム当たり1.24マイクロモル、又はPBA乾燥ポリマー固体中のTACの1グラム当たり3.41マイクロモルであることが確認された。
【0049】
【表3】

【0050】
(手順2C:大粒径MMA−ASAグラフト樹脂の調製)
手順2Bによって作製されたポリ(ブチルアクリレート)ゴムラテックス粒子の存在下、実施例1に記載された配合及び方法に従った、スチレン、アクリロニトリル及びMMAモノマーの水性乳化重合を行い、5.4pbwの脱塩水中の0.6pbwのSLSを石鹸溶液として使用したこと以外は実施例1に記載された方法により単離することによって、グラフトコポリマーを作製した。
【0051】
〔比較例1〕
まず、4.0pbwの第2のBAポーション及び5.4pbwのBA中における0.6pbwのTACのTAC#2溶液を用いて手順1Aに記載された乳化重合条件で実施することで、小粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ポリマーを調製し、次いで45pbwの基材ポリマーを用いて手順1Bに記載されたグラフト乳化重合条件で実施することで、小粒径MMA−ASAグラフトコポリマーを調製した。小粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ポリマーの単分散ラテックスを、Coulter LS230粒径分析機を用いて多角度光散乱法により分析したところ、111nmの体積平均粒径を有することが確認された。反応の最後におけるゴムラテックス中の未反応TACモノマーの量は、GC分析によって、水性ラテックスを基準にして1グラム当たり5.98マイクロモル、又はPBA乾燥ポリマー固体中の未反応TACの1グラム当たり14.8マイクロモルであることが測定された。
【0052】
〔比較例2〕
まず、4.0pbwの第2のBAポーション及び5.4pbwのBA中における0.6pbwのTACのTAC#2溶液を用いて手順2Bに記載された乳化重合条件で実施することで、大粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ポリマーを調製し、次いで45pbwのポリ(ブチルアクリレート)基材ポリマーを用いて手順2Cに記載されたグラフト乳化重合条件で実施するで、大粒径MMA−ASAグラフトコポリマーを調製した。大粒径ポリ(ブチルアクリレート)基材ポリマーの単分散ラテックスを、Coulter LS230粒径分析機を用いて多角度光散乱法により分析したところ、520nmの体積平均粒径を有することが確認された。反応の最後におけるゴムラテックス中の未反応TACモノマーの量は、GC分析によって、水性ラテックスに基づいて1グラム当たり6.83マイクロモル、又はPBA乾燥ポリマー固体中の未反応TACの1グラム当たり18.5マイクロモルであることが確認された。
【0053】
以下の実施例及び比較例においては、配合の成分は次のとおりである:(i)70重量%のα−メチルスチレン及び30重量%のアクリロニトリルから誘導される構造単位を含み、ISO1133に従って230℃において3.8キログラム錘を用いて測定した場合に、10分当たり約10立方センチメートルのメルトボリュームレートの値を有するコポリマーであるAMSAN;(ii)40重量%のスチレン、25重量%のアクリロニトリル、及び35重量%のメチルメタクリレートから誘導される構造単位を含み、ISO1133に従って220℃において10キログラム錘を用いて測定して場合に、10分当たり約40立方センチメートルのメルトボリュームレートの値を有するコポリマーであるMMASAN;及び(iii)約100nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導された1つのコポリマー及び約500nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導されたもう1つのコポリマー(ここで、それぞれが、約32重量%のスチレン、約15重量%のアクリロニトリル、約9重量%のメチルメタクリレート、及び45重量%のブチルアクリレートから誘導された構造単位を含む)の混合物であるMMA−ASA。ヘーズ及び光沢の値は、ASTM D2457−03に従って測定角20度においてBYK Gardnerヘーズ−光沢メーターにより測定した。成形された試験試料は、測色用のMacBeth 7000装置を用いてCIE L***空間における測色を行った。L*の値は、MacBeth装置の測定モード「DREOL」を用いて反射成分を除外して測定した。
【0054】
〔実施例3〜4及び比較例3〜4〕
表4に示された重量部の成分を用いて、組成物を調製した。更に、各組成物には、樹脂100部当たり2部(phr)のカーボンブラックを更に含んでいる。同様に、各組成物は、1.5phrの安定剤及び1phrの潤滑剤を更に含んでいるが、これらは成形部品の美観に影響を及ぼさないと考えられる。実施例3及び比較例3は、約100nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導された33部のMMA−ASA及び約500nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導された12部のMMA−ASAを含んでいる(合計45部)。実施例4及び比較例4は、約100nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導された28.5部のMMA−ASA及び約500nmの体積平均粒径を有するゴム基材から誘導された10部のMMA−ASAを含んでいる(合計38.5部)。高い残存濃度のTACを有するMMA−ASAは、比較例1及び2の各生成物の75/25のブレンドを含み、ゴム基材の調製直後の測定でポリ(ブチルアクリレート)の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモルを超えるTACを有した。低い残存濃度のTACを有するMMA−ASAは、実施例1及び2の各生成物の75/25のブレンドを含み、ゴム基材の調製直後の測定でポリ(ブチルアクリレート)の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモル未満のTACを有した。省略形「C.Ex.」及び「Ex.」は、それぞれ比較例及び実施例を意味する。
【0055】
【表4】

【0056】
成形試験部品の特性は、特に両組成物について成形温度が下げられた際に、本発明の実施例の組成物が、比較例の組成物に比べて高い光沢の値及び低いヘーズの値を実現することを示している。成形部品の一般的に望ましい性質には、最小のヘーズが含まれ、約26以下の値が特に望ましい。データは、特に両組成物について成形温度が下げられた際に、本発明の実施例が、比較例に比べて低いL*値、すなわち良好な色特性を実現することも示している。成形部品の一般的に望ましい性質には、最小のL*値が含まれ、カーボンブラックで着色された部品を含む場合など、ある実施形態においては約6以下の値が特に望ましい。
【0057】
〔実施例5及び比較例5〕
ASA樹脂がMMAで変性されていなく、その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモル未満であるゴム基材を含むこと以外は、実施例3と同様にして組成物を調製する。ASA樹脂がMMAで変性されていなく、その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモルを超えるゴム基材を含むこと以外は、比較例3と同様にして比較組成物を調製する。成形試験部品は、本発明の実施例の組成物が、比較例の組成物に比べて高い光沢の値若しくは低いヘーズの値のいずれか一方、又は高い光沢の値及び低いヘーズの値の両方を実現し、特定の実施形態においては、前記効果が両組成物について成形温度が下げられたときに見られることを示している。
【0058】
〔実施例6及び比較例6〕
ASA樹脂がMMAで変性されていなく、その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモル未満であるゴム基材を含むこと以外は、実施例4と同様にして組成物を調製する。ASA樹脂がMMAで変性されていなく、その調製直後のゴム基材中の残存架橋剤の量が1グラム当たり5.6マイクロモルを超えるゴム基材を含むこと以外は、比較例4と同様にして比較組成物を調製する。成形試験部品は、本発明の実施例の組成物が、比較例の組成物に比べて高い光沢の値若しくは低いヘーズの値のいずれか一方、又は高い光沢の値及び低いヘーズの値の両方を実現し、特定の実施形態においては、前記効果が両組成物について成形温度が下げられたときに見られることを示している。
【0059】
本発明は、典型的な実施形態を示して説明されたが、本発明の思想を何ら逸脱することなく種々の変更形態及び代替を行うことができるので、示された詳細な形態に限定されるものではない。即ち、本明細書に開示された本発明の更なる変更形態及び等価物を、通常の実験を超えることなく当業者は思いつくことができ、このような変更形態及び等価物は、次の特許請求の範囲で定義された本発明の思想及び範囲に含まれると考えられる。本明細書に引用された全ての特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質熱可塑性樹脂相中に分散した不連続なエラストマー相を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂(ここで、硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部は、エラストマー相にグラフト化されている)の調製方法であって、
(a)少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及びポリエチレン性不飽和モノマーを含む少なくとも1つの架橋剤を含む混合物を重合してゴム基材を形成する工程;次いで
(b)前記ゴム基材の存在下で、複数のモノマー(ここで、モノマーの少なくとも1つは、ビニル芳香族モノマーからなる群から選択され、モノマーの少なくとも1つは、モノエチレン性不飽和ニトリルモノマーからなる群から選択される)の混合物を重合する工程;及び場合によっては次いで
(c)少なくとも1つの後続段階において、(b)で得られたゴム基材の存在下で、1つ又は複数のモノマー(ここで、1つ又は複数のモノマーは、(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む)を重合する工程;
を含み、前記工程(b)の前のゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量は、ゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモル未満である方法。
【請求項2】
前記ゴム基材が、ブチルアクリレートから誘導される構造単位を有するポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエチレン性不飽和モノマーが、ブチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリシクロデセニルアルコールのアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エラストマー相が、最初に、少なくとも2つの平均粒径分布を有する粒径の混合、及びサイズが約50nmから約1000nmの範囲の粒子を有する広い粒径分布からなる群から選択される粒子を有するゴム基材を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エラストマー相が、最初に、それぞれ約80nmから約500nmの間の範囲の2つの体積平均粒径分布を有するゴム基材を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記硬質熱可塑性樹脂相が、ASA樹脂の総重量を基準にして約50から約30重量%を構成する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)におけるモノマーの混合物が、スチレン及びアクリロニトリル、又はα−メチルスチレン及びアクリロニトリル、又はスチレン、α−メチルスチレン及びアクリロニトリルの混合物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
スチレン、α−メチルスチレン又はそれらの混合物のアクリロニトリルに対する重量/重量比が、約1.5:1から約4:1の間の範囲である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーが、メチルメタクリレートを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーが、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを更に含む混合物である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記モノマーが、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー及び少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーを更に含む混合物である請求項9に記載の方法。
【請求項13】
メチルメタクリレートの、ビニル芳香族モノマー及びモノエチレン性不飽和ニトリルモノマーの合計に対する重量/重量比が、約3:1から約1:3の間の範囲である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記モノマーが、スチレン及びアクリロニトリルを更に含む混合物である請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ASA樹脂を、別の重合工程で調製された硬質熱可塑性樹脂相と組み合わせる工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記硬質熱可塑性樹脂相が、スチレン−アクリロニトリルコポリマーである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記硬質熱可塑性樹脂相が、スチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレートコポリマーである請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記別に調製された硬質熱可塑性樹脂相が、前記ASA樹脂の重量を基準にして約30重量%から約80重量%の間の濃度で組み合わされる請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量が、1グラム当たり4.0マイクロモル未満である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量が、ゴム基材の1グラム当たり反応性エチレン性官能基が約4マイクロモル未満に相当する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法によって作製されたアクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂。
【請求項22】
請求項21に記載のアクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂を含む物品。
【請求項23】
請求項9に記載の方法によって作製されたアクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂。
【請求項24】
請求項23に記載のアクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂を含む物品。
【請求項25】
硬質熱可塑性樹脂相中に分散された不連続のエラストマー相を、樹脂の総重量を基準にして約35から約80重量%含むメチルメタクリレート変性アクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂(ここで、硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部は、エラストマー相にグラフト化されている)の調製方法であって、
(a)ブチルアクリレート、及びポリエチレン性不飽和モノマーを含む少なくとも1つの架橋剤を含む混合物を重合してゴム基材を形成する工程;次いで
(b)前記ゴム基材の存在下で、約2:1から約3:1の間の範囲の重量/重量比でのスチレン及びアクリロニトリルのモノマー混合物を重合する工程
を含み、前記工程(b)の前のゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量が、ゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモル未満である方法。
【請求項26】
第2の段階において、(b)で得られたゴム基材の存在下で、スチレン、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートの混合物を重合する工程を更に含み、スチレン及びアクリロニトリルが、約1.5:1から約4:1の間の範囲の重量/重量比で使用され、スチレン及びアクリロニトリルの合計に対するメチルメタクリレートの重量/重量比が、約3:1から約1:3の間の範囲である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリエチレン性不飽和モノマーが、ブチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリシクロデセニルアルコールのアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ASA樹脂を、別の重合工程で調製された硬質熱可塑性樹脂相と組み合わせる工程を更に含む請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記別に調製された硬質熱可塑性樹脂相が、前記ASA樹脂の重量を基準にして約30重量%から約80重量%の間の濃度で組み合わされる請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記硬質熱可塑性樹脂相が、スチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
硬質熱可塑性樹脂相に分散された不連続のエラストマー相を含むアクリル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)樹脂を含む成形組成物であって、前記硬質熱可塑性樹脂相の少なくとも一部が、エラストマー相にグラフト化され;前記熱可塑性樹脂相が、少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び場合によっては少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル−及びアリール−(メタ)アクリレートモノマーから誘導される構造単位を含み;前記エラストマー相が、少なくとも1つの(C1〜C12)アルキル(メタ)アクリレートモノマー、及びポリエチレン性不飽和モノマーを含む少なくとも1つの架橋剤から誘導される構造単位を含むゴム基材から誘導され;そして、前記ゴム基材が、グラフト化前のゴム基材の乾燥重量を基準にしてゴム基材の1グラム当たり5.6マイクロモル未満の未反応架橋剤を含む成形組成物。
【請求項32】
前記ゴム基材が、ブチルアクリレートから誘導される構造単位を有するポリマーを含む請求項31に記載の成形組成物。
【請求項33】
前記ポリエチレン性不飽和モノマーが、ブチレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、トリアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリシクロデセニルアルコールのアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項31に記載の成形組成物。
【請求項34】
前記硬質熱可塑性樹脂相が、スチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−アクリロニトリル−メチルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む請求項31に記載の成形組成物。
【請求項35】
前記ゴム基材中に残存する未反応架橋剤の量が、グラフト化前のゴム基材の乾燥重量を基準にしてゴム基材の1グラム当たり反応性エチレン性官能基が約4マイクロモル未満に相当する請求項31に記載の成形組成物。
【請求項36】
ポリカーボネート、ポリエステル、スチレンポリマー及びコポリマー、ポリ(α−メチルスチレン)、SAN、ABS、ポリ(メタ)アクリレートポリマー及びコポリマー;ポリ(メチルメタクリレート);少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーから誘導されるコポリマー;MMASANコポリマー;少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つのマレイミドモノマーから誘導されるコポリマー;スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドコポリマー;少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ニトリルモノマー、及び少なくとも1つの無水マレイン酸モノマーから誘導されるコポリマー;並びにスチレン/アクリロニトリル/無水マレイン酸コポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの樹脂を更に含む請求項31に記載の成形組成物。
【請求項37】
着色剤、染料、顔料、潤滑剤、安定剤、充填剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される添加剤を更に含む請求項31に記載の成形組成物。
【請求項38】
請求項31に記載の組成物から調製される成形物品であって、ASTM D2457−03に従って測定した、グラフト化前のゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモルを超える未反応架橋剤を含むゴム基材から誘導されたこと以外は同じ組成物を含む成形物品について得られるヘーズの値又は光沢の値に対して、低いヘーズの値又はより高い光沢の値のいずれかを有する成形物品。
【請求項39】
請求項34に記載の組成物から調製される成形物品であって、ASTM D2457−03に従って測定した、グラフト化前のゴム基材の乾燥重量を基準にして1グラム当たり5.6マイクロモルを超える未反応架橋剤を含むゴム基材から誘導されたこと以外は同じ組成物を含む成形物品について得られるヘーズの値又は光沢の値に対して、低いヘーズの値又はより高い光沢の値のいずれかを有する成形物品。

【公表番号】特表2008−540801(P2008−540801A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512321(P2008−512321)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/016988
【国際公開番号】WO2006/127223
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
【復代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
【復代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
【Fターム(参考)】