耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法
【課題】耐雷性を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては機体の製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キャップ30に穴32を形成し、この穴32にネジ溝32aを形成しておくことで、ファスナ部材24にキャップ30を確実かつ容易に位置決めして取り付け、取付後においてもキャップ30の脱落を確実に防止する。そして、緩止め部60により、キャップ30がファスナ部材24から緩むのを防止する。これにより、耐雷性能を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質でキャップ30を取り付けることを可能とする。また、キャップ30は、樹脂で形成するのが量産性、軽量化等の面で好ましい。
【解決手段】キャップ30に穴32を形成し、この穴32にネジ溝32aを形成しておくことで、ファスナ部材24にキャップ30を確実かつ容易に位置決めして取り付け、取付後においてもキャップ30の脱落を確実に防止する。そして、緩止め部60により、キャップ30がファスナ部材24から緩むのを防止する。これにより、耐雷性能を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質でキャップ30を取り付けることを可能とする。また、キャップ30は、樹脂で形成するのが量産性、軽量化等の面で好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体、特に翼に用いられる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体を構成する翼や車輪を備えた脚等、各種部材においては、翼や脚の表面を形成する表面パネルや、各種機器等の構造材への取付に、ファスナ部材(留め具)を用いている。
ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、互いに固定すべき二つの部材の双方に形成された貫通孔に挿入し、その先端部を固定金具で固定することで、二つの部材を締結する。
【0003】
ところで、航空機においては、落雷対策を万全に期す必要がある。このため、ファスナ部材への雷の直撃を避ける必要がある。また、ファスナ部材で締結された二つの部材が異なる材料で形成されている場合、落雷時に、二つの部材間の電位差により、二つの部材の界面に沿った方向にアーク放電(スパーク)が発生する。そこで、この被雷時におけるアーク放電の発生を確実に抑える必要がある。
【0004】
そこで、従来、図13に示すように、翼1の内部側において、翼面パネルに相当する第一の部材2および翼の内部に取り付けられる第二の部材3を貫通するファスナ部材4のファスナ本体4aおよび固定金具4bから離間した状態にキャップ6が取り付けられ、ファスナ本体4aおよび固定金具4bとの間に空気で満たされた空隙7を形成する構造が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−7398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャップ6をファスナ部材4に対して位置決めできる構造とはなっておらず、キャップ6の取付位置は作業者に依存する。このため、キャップ6の中心とファスナ部材4の中心とが大きくずれる可能性もある。空隙7においてファスナ部材4とキャップ6との間隙が小さい場所が生じると、キャップ6の機能(絶縁性)が低下する。最悪の場合、キャップ6がファスナ部材4に接触してしまった状態で取り付けられれば、キャップ6の機能そのものが大きく損なわれることもある。
また、キャップ6は、図13(a)に示すように、接着剤9で第二の部材3に取り付けられたり、図13(b)に示すようにゴム(絶縁材料)10で外周をカバーしているため、取付現場において、接着作業、ゴム10の塗布作業が必要であり、作業の手間がかかる。航空機の翼1の内部は、言うまでもなく空間が狭く、奥まった位置において上記したような作業を行うのは作業性が非常に悪い。しかも、このようなファスナ部材4は、翼1の全体に数千〜数万箇所設けられるため、作業性の悪化はコスト上昇に直結する。
さらに、上記したような作業は、いわゆる手作業であり、作業者によって、施工品質にばらつきが出やすく、これは信頼性にも影響する。
【0007】
また、装着したキャップが脱落してしまうと耐雷性能が損なわれてしまうため、キャップの脱落を確実に防止できることが望まれている。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、耐雷性能を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては翼の製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明の耐雷ファスナは、航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、第一の部材および第二の部材を貫通するとともに、第一の部材および第二の部材側の少なくとも一方に突出する軸部を有するファスナ部材と、ファスナ部材の軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備える。そして、軸部の外周面にネジ部が形成され、キャップは、その内周面の中心部に、軸部のネジ部に螺合するネジ穴が形成され、ネジ穴にネジ部が螺合した状態で、ネジ穴以外の部分においてファスナ部材の軸部との間に間隙を隔てた状態で取り付けられ、キャップがファスナ部材から緩むのを防止する緩止め部が形成されていることを特徴とする。
このように、キャップに形成されたネジ穴にファスナ部材をねじ込んで螺合させることで、キャップをファスナ部材に対して容易かつ確実に中心に位置決めして取り付けることができる。そして、緩止め部により、キャップがファスナ部材から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持できる。
【0010】
緩止め部として、ネジ穴に、軸部の軸線方向に沿って延び、軸部を形成する材料よりも柔らかい材料またはキャップを形成する材料と同材質で形成されたセルフロック部材を設けることができる。ここで、ネジ穴に、軸部の軸線方向に沿って延びる溝を形成し、溝にセルフロック部材を嵌め込む構成とすることができる。
【0011】
また、緩止め部として、ネジ穴のネジ溝が、ネジ穴への軸部の挿入方向手前側はネジ部と等しいネジピッチで形成され、挿入方向奥側は、ネジ部よりも狭いネジピッチで形成された構成とすることもできる。
【0012】
緩止め部として、ネジ穴は、ネジ穴への軸部の挿入方向手前側から挿入方向奥側に向けて、その内径が漸次縮小する構成とすることもできる。
【0013】
緩止め部として、軸部のネジ部のネジ溝が、当該軸部の先端部は、ネジ穴と等しいネジピッチで形成され、軸部の基端部側は、ネジ穴よりも狭いネジピッチで形成されている構成とすることもできる。
【0014】
緩止め部として、キャップとファスナ部材を貫通するピンを備える構成とすることもできる。
【0015】
ファスナ部材とキャップとの間隙には絶縁性のシーラント剤を充填するのが好ましい。
この場合、ネジ部またはネジ穴に、軸部の軸線方向に沿ったシーラント排出溝を形成することもできる。これにより、ファスナ部材をキャップのネジ穴にねじ込んだときに、ネジ穴に充填されたシーラント剤の余剰分をネジ穴からシーラント排出溝を通して押し出すことができる。
さらに、キャップの開口端側において、キャップの径方向におけるシーラント剤の厚さが、予め定められた以上の寸法とするのが好ましい。これにより、キャップが脱落した際にも、シーラント剤のみによって耐雷性能を確保することができる。
なお、このような耐雷ファスナは、翼に限らず、航空機の機体においても適用可能である。
【0016】
キャップの頭部は、キャップをファスナ部材にねじ込むための工具を掛けることのできる形状としても良いし、キャップを作業者が手で回すのであれば、キャップの外周面に、滑り止め加工を施すのが好ましい。
また、キャップに、キャップを作業者が手で回すための摘まみ部を突出形成しても良い。このとき、摘まみ部は、キャップに対して連結部を介して連結され、連結部は、摘まみ部をつまんでキャップをファスナ部材の先端部にねじ込んでいき、その締付けトルクが予め定めたレベルに到達したときにねじ切れるようにすれば、キャップの締付けトルクを容易に管理できる。
【0017】
ファスナ部材の外周面に、外周側に向けて突出する段部またはつば部を形成することで、キャップが脱落した際にも、ファスナ部材の外表面からシーラント剤が脱落するのを防止できる。
【0018】
キャップとシーラント剤との接着強度を、シーラント剤とファスナ部材との接着強度よりも小さく設定することもできる。これによっても、キャップに衝撃等が加わった際に、キャップのみが脱落し、シーラント剤がそのままファスナ部材の先端部に残るようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、緩止め部により、キャップがファスナ部材から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で、第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の先端にキャップを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態における耐雷ファスナを示す断面図である。
【図2】キャップの斜視図である。
【図3】キャップの断面図である。
【図4】キャップの外周面にスリット加工を施した例を示す図である。
【図5】キャップの頭部に突起を設けた例を示す図である。
【図6】キャップの頭部に摘まみ部を設けた例を示す図である。
【図7】キャップの他の例を示す図であり、穴をテーパ状とした断面図である。
【図8】キャップのさらに他の例を示す図であり、穴のネジ溝のピッチを異ならせた場合の断面図である。
【図9】キャップのさらに他の例を示す図であり、キャップとファスナ部材とに、ピンを径方向に貫通させた場合の断面図である。
【図10】キャップのさらに他の例を示す図であり、キャップとファスナ部材とに、ピンを軸方向に貫通させた場合の断面図である。
【図11】キャップの他の例を示す断面図である。
【図12】本実施の形態における耐雷ファスナの他の例を示す断面図である。
【図13】従来の耐雷ファスナの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を適用した航空機の機体を構成する翼の一部の断面図である。
この図1に示すように、翼20は、その外殻が、例えば炭素繊維と樹脂との複合材料であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や、アルミ合金等の金属材料からなる翼パネル(第一の部材)21になって形成されている。翼20の内部に設けられる、補強のための構造材や燃料タンク、各種の機器が、アルミ合金等の金属材料により形成されたステー等の部材(第二の部材)22を介して翼パネル21に固定されている。そして、ステー等の部材22は、ファスナ部材24によって翼パネル21に取り付けられている。
【0022】
ファスナ部材24は、ピン状のファスナ本体25と、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26と、ワッシャ28と、から構成される。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に金属材料により形成される。ピン状をなしたファスナ本体25は、先端部にネジ溝(ネジ部)25aが形成され、後端部は先端部側より拡径したテーパ状の拡径部25bとされている。このファスナ本体25は、翼パネル21および部材22を貫通して形成された孔21a、22aに翼20の外側から挿入され、後端部の拡径部25bを孔21aのテーパ面に突き当てた状態で、先端部を翼20の内方に突出させる。
カラー26は、筒状で、その内周面にはファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝26aが形成されている。このカラー26は、翼20の内方に突出したファスナ本体25のネジ溝25aにねじ込まれる。これによって、翼パネル21と部材22とは、ファスナ本体25の拡径部25bとカラー26とによって挟み込まれ、部材22が翼パネル21に固定されている。
なお、この状態で、ファスナ本体25の先端部25cは、カラー26よりも翼20の内周側に突出し、さらに、ネジ溝25aの一定長をカラー26から翼20の内周側に露出させている。
【0023】
上記ファスナ本体25の後端部は、そのままでは翼20の表面に露出することになるため、翼20が複合材からなる場合、翼20の表面全体がCu(銅)を含んだ塗料からなる塗膜27によってファスナ本体25の後端部が覆われ、これによって落雷時に電流がファスナ部材24に集中するのを防いでいる。
また、ファスナ本体25への雷の直撃を防ぐために、ファスナ本体25は、その表面を樹脂等の絶縁材料でコーティングするのが好ましい。
【0024】
ワッシャ28は、所定の厚さを有した環状で、例えばポリイミド等の絶縁材料により形成されている。ワッシャ28を絶縁材料で形成することで、部材22とワッシャ28との界面においてアーク放電が生じるのを防止する。
【0025】
さて、翼20の内部空間側において、ファスナ部材24には、キャップ30が装着され、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填されている。
図2、図3に示すように、キャップ30は、断面円形で、一端部30a側のみが開口し、他端部30b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する形状とされている。このキャップは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
【0026】
キャップ30の他端部30b側の内周面(以下、これを底面31と称する)には、断面円形の有底状の穴(ネジ穴)32が形成されており、この穴32の内周面には、ファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝32aが形成されている。このキャップ30は、一端部30aの端面を部材22に押し当てた状態で、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入されるようになっている。このとき、ファスナ本体25のネジ溝25aにキャップ30のネジ溝32aが噛み合うことで、キャップ30がファスナ部材24に対し、容易かつ確実に位置決め固定できるようになっている。
【0027】
このようなキャップ30は、キャップ30をファスナ部材24に装着したときに、ワッシャ28、ファスナ本体25およびカラー26との間に、予め定められた間隙が形成されるよう、内周面36の内径が設定されている。特に、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との間に、所定寸法t以上の間隙を確保できるよう、キャップ30が形成されている。
【0028】
また、キャップ30の内周面36は、一端部30a側が、その内径が一定とされたストレート部36aとされ、さらに、ストレート部36aから穴32に向けて、その内径が漸次縮小するテーパ部36bが形成されている。
そして、ストレート部36aとテーパ部36bが隣接する部分の角部36c、テーパ部36bと穴32とが隣接する部分の角部36dは、所定の曲率半径を有したR形状とされている。
このようにして、キャップ30の内周面36は、ストレート部36aから角部36c、テーパ部36b、角部36dへと、スムーズに連続する面とされている。これにより、キャップ30内にシーラント剤34を充填する際に、シーラント剤34に空気を巻き込んだり、内周面36(特に角部36c、36d等)においてシーラント剤34に空隙ができたりするのを防ぐようになっている。
【0029】
キャップ30をファスナ部材24に装着した状態では、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填される。このシーラント剤34が、キャップ30の内周面とファスナ本体25およびカラー26との間に介在することで、キャップ30とファスナ部材24との間の絶縁性がさらに高まる。そして、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との間のシーラント剤34が、所定寸法t以上の厚さを有しているので、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との界面における絶縁性能が確保される。
【0030】
翼パネル21および部材22を締結するファスナ部材24に、キャップ30を装着するときには、キャップ30の内部に、未硬化のシーラント剤34を充填しておく。そして、翼20の内部空間において、内方に向けて突出した各ファスナ部材24のファスナ本体25に、キャップ30を押し付ける。
このとき、キャップ30内に充填されたシーラント剤34が、キャップ30の一端部30aの開口部から溢れ出てくる。キャップ30内の全域にシーラント剤34が均等に行き渡るよう、シーラント剤34がキャップ30の全周から溢れ出るのが好ましい。このため、キャップ30の一端部30aの表面37は平滑面であるのが好ましく、また、一端部30aの内周縁部38は、バリやカエリ等が生じないように形成するのが好ましい。
ファスナ本体25に、キャップ30を押し付けていくと、キャップ30の内部には穴32が形成されているので、ファスナ部材24をキャップ30の中心に確実かつ容易に位置決めできる。これにより、キャップ30とファスナ部材24とがずれて、キャップ30とファスナ部材24との間の間隙が場所によって狭くなることもなく、ファスナ部材24がキャップ30に直接接触してしまうことも防止できる。
【0031】
キャップ30のファスナ部材24への位置決めを容易に行うため、穴32の周縁部を、その内径が穴32の奥側に向けて漸次縮小するテーパ面とすることも有効である。
【0032】
キャップ30の穴32をファスナ本体25に押し付けた後は、キャップ30を回転させてファスナ本体25にねじ込んでいく。
このとき、穴32内にシーラント剤34が充填されていると、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入される。さらにキャップ30のねじ込みにともなってファスナ本体25が穴32内に侵入してくると、穴32内のシーラント剤34の行き場がなく、シーラント剤34の圧力が高まってファスナ本体25の先端部を穴32の所定の深さまで挿入できないこともある。
そこで、キャップ30の穴32の内周面には、少なくとも一箇所、穴32の中心軸方向に沿って延びるシーラント排出溝33を形成するのが好ましい。図2、図3の例では、2本のシーラント排出溝33が穴32に形成されている。もちろん、シーラント排出溝33を3本以上形成することも可能である。
このように、穴32にシーラント排出溝33を形成しておくことで、穴32にファスナ本体25の先端部が挿入されてくると、これに伴い、穴32内の余剰のシーラント剤は、シーラント排出溝33を通して穴32から押し出されるようになっている。これにより、穴32内のシーラント剤34に空隙が残存するのを防ぐとともに、穴32へのファスナ本体25の挿入、つまりファスナ部材24へのキャップ30の取り付けを容易に行うことができる。
【0033】
また、図2(b)、図3に示すように、ファスナ本体25にねじ込んだキャップ30が緩むことも考えられる。そこで、穴32の内周面に、緩止め部60として、少なくとも一箇所、穴32の中心軸方向に延びるセルフロック部材61が設けられている。このセルフロック部材61は、キャップ30よりも柔らかい材料、例えばナイロン系樹脂からなる。また、セルフロック部材61は、キャップ30と同材料で形成することもできる。キャップ30の穴32の内周面に、穴32の中心軸方向に延びる溝62が形成され、セルフロック部材61は、この溝62に嵌め込まれている。ここで、溝62は、キャップ30の中心側に行くに従いその幅が漸次縮小する形状とされ、セルフロック部材61もこの溝62に対応した断面形状を有している。これにより、セルフロック部材61は、溝62に嵌め込まれた状態で、穴32の内側に脱落しないようになっている。また、セルフロック部材61は、溝62に嵌め込まれた状態で、その先端面61aが、穴32に形成されたネジ溝32aよりも穴32の内周側に突出するよう形成されている。
【0034】
キャップ30の穴32の内周面にこのようなセルフロック部材61を設けておくと、穴32にファスナ本体25がねじ込まれると、ネジ溝32aから穴32の内周側に先端面61aを突出させたセルフロック部材61に、ファスナ本体25のネジ溝25aが食い込む。これによって、ファスナ本体25とセルフロック部材61との摩擦が増大し、キャップ30の緩みが防止される。また、セルフロック部材61に、ファスナ本体25のネジ溝25aが食い込むことでセルフロック部材61が削り取られ、削り取られたセルフロック部材61の破片がファスナ本体25のネジ溝25aと穴32のネジ溝32aとの間に挟み込まれることでも、ファスナ本体25とキャップ30との摩擦が増大し、キャップ30の緩みが防止される。
【0035】
そして、キャップ30の一端部30aの端面が部材22に押し当てられるまでキャップ30をねじ込んだら、キャップ30のねじ込みを完了する。するとこの状態で、ファスナ本体25に形成されたネジ溝25aとキャップ30の穴32のネジ溝32aとが噛み合い、さらにセルフロック部材61とファスナ本体25のネジ溝25aとが噛み合い、これによって、キャップ30が緩むのを防いでファスナ部材24に確実に固定保持される。
また、充填したシーラント剤34が硬化すれば、このシーラント剤34も、キャップ30のファスナ部材24への固定効果を発揮する。
このようにしてキャップ30が装着されたファスナ部材24が耐雷ファスナである。
【0036】
ここで、キャップ30の外周面に何かがぶつかった場合の衝撃等によって、キャップ30が脱落してしまう可能性がある。このような場合においても、キャップ30とともに、硬化したシーラント剤34が脱落することなく、シーラント剤34がファスナ本体25の頭部を覆った状態を維持するようにするのが好ましい。
この目的のため、キャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱くなるよう、シーラント剤34の材料を選定するのが好ましい。このようにキャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱ければ、キャップ30に衝撃等が加わった場合にも、キャップ30がシーラント剤34から剥離してキャップ30のみが脱落し、ファスナ部材24はシーラント剤34によって覆われた状態を維持するので、耐雷性能を維持できる。
【0037】
また、ファスナ部材24からのシーラント剤34の剥離を防ぐため、例えば、カラー26の外周面に、外周側に向けて張り出す段部26cや、つば部26d等を形成するようにしてもよい。
【0038】
ところで、キャップ30は、作業者が工具を用いてねじ込んでもよいし、手でねじ込んでもよい。
例えば、キャップ30を作業者が工具でねじ込む場合、図2、図3に示すように、キャップ30の他端部30bの頭部30cを、工具形状に対応した六角形状、六角穴形状等とすることができる。
また、キャップ30を作業者が手でねじ込む場合、図4に示すように、キャップ30の外周面30dに、スリット加工、あるいはローレット加工、ダイヤカット加工等を施し、滑り止めとすることができる。もちろん、図4の例では、キャップ30の外周面30d全体にスリット加工が施されているが、その一部のみに施すようにしても良い。さらに、図5に示すように、キャップ30の他端部30bに、周方向に間隔を隔てて複数個所(2箇所以上)の突起35を形成しても良い。突起35の数や形状等は何ら問うものではない。
【0039】
加えて、図6に示すように、キャップ30の頭部30eに対し、所定の外径を有したロッド部30fを介し、適宜形状の摘まみ部30gを形成することもできる。このような構成においては、作業者は、摘まみ部30gを回すことでキャップ30をファスナ部材24に取り付ける。このとき、ロッド部30fの一部30hを細くする等して、キャップ30の予め規定された締付けトルクに到達したときにロッド部30fの一部30hがねじ切れるような強度に設定しておくことで、作業者は、キャップ30を規定トルクで確実に締め付けて取り付けることができる。
【0040】
上述したようにして、キャップ30に穴32を形成し、この穴32にネジ溝32aを形成しておくことで、ファスナ部材24にキャップ30を確実かつ容易に位置決めして取り付けることができ、取付後においてもキャップ30の脱落を確実に防止できる。
そして、緩止め部60により、キャップ30がファスナ部材24から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持できる。
また、キャップ30をファスナ部材24にねじ込んでしまえば、シーラント剤34の硬化を待つ必要はなく、キャップ30の取り付けを迅速に行うことができる。
これにより、絶縁性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で取り付けることができる。
また、キャップ30は、樹脂で形成することで、量産が容易となり、製造コストを抑えるとともに、量産により肉厚を管理しやすく、キャップ30の軽量化を図ることもできる。
【0041】
ところで、上記したようなキャップ30は、切削加工により形成することもできるが、量産性を考慮すると射出成形で形成するのが好ましい。射出成形の場合、穴32のネジ溝32aを形成するのが困難(形成した後に、キャップ30を回転させて外す必要がある)であるため、ネジ溝32aは、穴32にヘリサートをねじ込むことで取り付けても良い。
【0042】
なお、上記実施形態では、緩止め部60として、例えば、図7に示すように、キャップ30の穴32の内周面を、穴32の開口端側から底面32bにいくに従いその径を漸次縮小するテーパ面63としてもよい。これにより、ファスナ本体25を穴32にねじ込むに従い、ファスナ本体25と穴32との嵌めあいがきつくなり、摩擦も増大してキャップ30の緩みが防止される。
【0043】
また、図8に示すように、キャップ30の穴32の内周面に形成するネジ溝32aを、穴32の開口端側は、そのネジピッチP1が、ファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチと等しくなるよう形成され、底面32b側のネジピッチP2がファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチよりも小さくなるよう形成することもできる(P1>P2)。
このようにすると、ファスナ本体25を穴32にねじ込んでいき、ネジ溝25aが、ネジ溝32aのネジピッチがP1からP2に変わる部分に到達すると、その嵌め合いがきつくなる。
これにより、ファスナ本体25とキャップ30の摩擦を増大させてキャップ30の緩みを防止することができる。
【0044】
逆に、ファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチを、先端部のピッチはキャップ30のネジ溝32aのピッチと等しくし、基端部側のピッチを、ネジ溝32aのピッチよりも小さくなるよう形成することもできる。
この場合も、ファスナ本体25を穴32にねじ込んでいき、ネジ溝32aが、ネジ溝25aのネジピッチがからに変わる部分に到達すると、その嵌め合いがきつくなる。これにより、ファスナ本体25とキャップ30の摩擦を増大させてキャップ30の緩みを防止することができる。
【0045】
これ以外にも、図9、図10に示すように、キャップ30をファスナ本体25の先端部にねじ込んだ後、キャップ30およびファスナ本体25を、その径方向に貫通するピン65や、その軸方向に貫通するピン66により固定することも考えられる。
これによってもキャップ30の緩みを防止できる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、穴32にシーラント排出溝33を形成することで、穴32の内部に充填したシーラント剤34の余剰分を押し出すようにしたが、これに限るものではなく、例えば、図11に示すように、キャップ30の頭部30cに貫通孔40を形成し、この貫通孔40から余剰分のシーラント剤34をキャップ30の外部に押し出すようにすることもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込むようにしたが、ファスナ部材24において翼20の内方に突出した部分にキャップ30がねじ込まれるのであれば、他の異なる構成とすることが可能である。
例えば、図12に示すように、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26の外周面にネジ溝26bを形成し、このネジ溝26bに、キャップ30の内周面に形成されたネジ溝32cをねじ込むようにしても良い。
さらには、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込む構成に限らず、キャップ30をファスナ本体25の先端部に嵌め合う構成とすることも可能である。その場合、例えば、ファスナ本体25の先端部の外周面に、周方向に連続する溝または凸条を形成し、キャップ30の穴32に、ファスナ本体25の溝に係合する凸状や突起、またはファスナ本体25の凸状に係合する溝を形成し、キャップ30をファスナ本体25に嵌め合わせる構成とすることも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、翼パネル21と部材22とをファスナ部材24により締結する構成としたが、接合すべき二つの部材が、機体の外部に露出している場合、ファスナ部材24のファスナ本体25を、二つの部材の両面側に突出させ、その両面側にキャップ30を設けることも可能である。この場合、ファスナ本体25の先端部25cとは反対側の基端部25dに、部材の表面から突出するピン部を設け、そのピン部にキャップ30を設けることもできる。その場合も、ピン部の先端部に形成されたネジ溝とキャップ30の穴32のネジ溝32aに、図1〜図12に示した構成を適宜選択して適用することで、キャップ30が緩むのを防止することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
20…翼、21…翼パネル(第一の部材)、21a…孔、22…部材(第二の部材)、24…ファスナ部材、25…ファスナ本体、25a…ネジ溝(ネジ部)、25b…拡径部、25c…先端部、26…カラー、26a…ネジ溝、30…キャップ、30a…一端部、30b…他端部、30c…頭部、30d…外周面、30e…頭部、30f…ロッド部、30g…摘まみ部、31…底面、32…穴(ネジ穴)、32a…ネジ溝、33…シーラント排出溝、34…シーラント剤、35…突起、40…貫通孔、60…緩止め部、61…セルフロック部材、62…溝、63…テーパ面、65、66…ピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体、特に翼に用いられる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体を構成する翼や車輪を備えた脚等、各種部材においては、翼や脚の表面を形成する表面パネルや、各種機器等の構造材への取付に、ファスナ部材(留め具)を用いている。
ファスナ部材は、ピン状のファスナ本体を、互いに固定すべき二つの部材の双方に形成された貫通孔に挿入し、その先端部を固定金具で固定することで、二つの部材を締結する。
【0003】
ところで、航空機においては、落雷対策を万全に期す必要がある。このため、ファスナ部材への雷の直撃を避ける必要がある。また、ファスナ部材で締結された二つの部材が異なる材料で形成されている場合、落雷時に、二つの部材間の電位差により、二つの部材の界面に沿った方向にアーク放電(スパーク)が発生する。そこで、この被雷時におけるアーク放電の発生を確実に抑える必要がある。
【0004】
そこで、従来、図13に示すように、翼1の内部側において、翼面パネルに相当する第一の部材2および翼の内部に取り付けられる第二の部材3を貫通するファスナ部材4のファスナ本体4aおよび固定金具4bから離間した状態にキャップ6が取り付けられ、ファスナ本体4aおよび固定金具4bとの間に空気で満たされた空隙7を形成する構造が提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−7398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、キャップ6をファスナ部材4に対して位置決めできる構造とはなっておらず、キャップ6の取付位置は作業者に依存する。このため、キャップ6の中心とファスナ部材4の中心とが大きくずれる可能性もある。空隙7においてファスナ部材4とキャップ6との間隙が小さい場所が生じると、キャップ6の機能(絶縁性)が低下する。最悪の場合、キャップ6がファスナ部材4に接触してしまった状態で取り付けられれば、キャップ6の機能そのものが大きく損なわれることもある。
また、キャップ6は、図13(a)に示すように、接着剤9で第二の部材3に取り付けられたり、図13(b)に示すようにゴム(絶縁材料)10で外周をカバーしているため、取付現場において、接着作業、ゴム10の塗布作業が必要であり、作業の手間がかかる。航空機の翼1の内部は、言うまでもなく空間が狭く、奥まった位置において上記したような作業を行うのは作業性が非常に悪い。しかも、このようなファスナ部材4は、翼1の全体に数千〜数万箇所設けられるため、作業性の悪化はコスト上昇に直結する。
さらに、上記したような作業は、いわゆる手作業であり、作業者によって、施工品質にばらつきが出やすく、これは信頼性にも影響する。
【0007】
また、装着したキャップが脱落してしまうと耐雷性能が損なわれてしまうため、キャップの脱落を確実に防止できることが望まれている。
【0008】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、耐雷性能を確実に確保したうえで、作業性および品質安定性を向上し、ひいては翼の製造コストを低減することのできる耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明の耐雷ファスナは、航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、第一の部材および第二の部材を貫通するとともに、第一の部材および第二の部材側の少なくとも一方に突出する軸部を有するファスナ部材と、ファスナ部材の軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備える。そして、軸部の外周面にネジ部が形成され、キャップは、その内周面の中心部に、軸部のネジ部に螺合するネジ穴が形成され、ネジ穴にネジ部が螺合した状態で、ネジ穴以外の部分においてファスナ部材の軸部との間に間隙を隔てた状態で取り付けられ、キャップがファスナ部材から緩むのを防止する緩止め部が形成されていることを特徴とする。
このように、キャップに形成されたネジ穴にファスナ部材をねじ込んで螺合させることで、キャップをファスナ部材に対して容易かつ確実に中心に位置決めして取り付けることができる。そして、緩止め部により、キャップがファスナ部材から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持できる。
【0010】
緩止め部として、ネジ穴に、軸部の軸線方向に沿って延び、軸部を形成する材料よりも柔らかい材料またはキャップを形成する材料と同材質で形成されたセルフロック部材を設けることができる。ここで、ネジ穴に、軸部の軸線方向に沿って延びる溝を形成し、溝にセルフロック部材を嵌め込む構成とすることができる。
【0011】
また、緩止め部として、ネジ穴のネジ溝が、ネジ穴への軸部の挿入方向手前側はネジ部と等しいネジピッチで形成され、挿入方向奥側は、ネジ部よりも狭いネジピッチで形成された構成とすることもできる。
【0012】
緩止め部として、ネジ穴は、ネジ穴への軸部の挿入方向手前側から挿入方向奥側に向けて、その内径が漸次縮小する構成とすることもできる。
【0013】
緩止め部として、軸部のネジ部のネジ溝が、当該軸部の先端部は、ネジ穴と等しいネジピッチで形成され、軸部の基端部側は、ネジ穴よりも狭いネジピッチで形成されている構成とすることもできる。
【0014】
緩止め部として、キャップとファスナ部材を貫通するピンを備える構成とすることもできる。
【0015】
ファスナ部材とキャップとの間隙には絶縁性のシーラント剤を充填するのが好ましい。
この場合、ネジ部またはネジ穴に、軸部の軸線方向に沿ったシーラント排出溝を形成することもできる。これにより、ファスナ部材をキャップのネジ穴にねじ込んだときに、ネジ穴に充填されたシーラント剤の余剰分をネジ穴からシーラント排出溝を通して押し出すことができる。
さらに、キャップの開口端側において、キャップの径方向におけるシーラント剤の厚さが、予め定められた以上の寸法とするのが好ましい。これにより、キャップが脱落した際にも、シーラント剤のみによって耐雷性能を確保することができる。
なお、このような耐雷ファスナは、翼に限らず、航空機の機体においても適用可能である。
【0016】
キャップの頭部は、キャップをファスナ部材にねじ込むための工具を掛けることのできる形状としても良いし、キャップを作業者が手で回すのであれば、キャップの外周面に、滑り止め加工を施すのが好ましい。
また、キャップに、キャップを作業者が手で回すための摘まみ部を突出形成しても良い。このとき、摘まみ部は、キャップに対して連結部を介して連結され、連結部は、摘まみ部をつまんでキャップをファスナ部材の先端部にねじ込んでいき、その締付けトルクが予め定めたレベルに到達したときにねじ切れるようにすれば、キャップの締付けトルクを容易に管理できる。
【0017】
ファスナ部材の外周面に、外周側に向けて突出する段部またはつば部を形成することで、キャップが脱落した際にも、ファスナ部材の外表面からシーラント剤が脱落するのを防止できる。
【0018】
キャップとシーラント剤との接着強度を、シーラント剤とファスナ部材との接着強度よりも小さく設定することもできる。これによっても、キャップに衝撃等が加わった際に、キャップのみが脱落し、シーラント剤がそのままファスナ部材の先端部に残るようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、緩止め部により、キャップがファスナ部材から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で、第一の部材と第二の部材とを締結するファスナ部材の先端にキャップを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態における耐雷ファスナを示す断面図である。
【図2】キャップの斜視図である。
【図3】キャップの断面図である。
【図4】キャップの外周面にスリット加工を施した例を示す図である。
【図5】キャップの頭部に突起を設けた例を示す図である。
【図6】キャップの頭部に摘まみ部を設けた例を示す図である。
【図7】キャップの他の例を示す図であり、穴をテーパ状とした断面図である。
【図8】キャップのさらに他の例を示す図であり、穴のネジ溝のピッチを異ならせた場合の断面図である。
【図9】キャップのさらに他の例を示す図であり、キャップとファスナ部材とに、ピンを径方向に貫通させた場合の断面図である。
【図10】キャップのさらに他の例を示す図であり、キャップとファスナ部材とに、ピンを軸方向に貫通させた場合の断面図である。
【図11】キャップの他の例を示す断面図である。
【図12】本実施の形態における耐雷ファスナの他の例を示す断面図である。
【図13】従来の耐雷ファスナの例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における耐雷ファスナ、キャップ、耐雷ファスナの取り付け方法を適用した航空機の機体を構成する翼の一部の断面図である。
この図1に示すように、翼20は、その外殻が、例えば炭素繊維と樹脂との複合材料であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や、アルミ合金等の金属材料からなる翼パネル(第一の部材)21になって形成されている。翼20の内部に設けられる、補強のための構造材や燃料タンク、各種の機器が、アルミ合金等の金属材料により形成されたステー等の部材(第二の部材)22を介して翼パネル21に固定されている。そして、ステー等の部材22は、ファスナ部材24によって翼パネル21に取り付けられている。
【0022】
ファスナ部材24は、ピン状のファスナ本体25と、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26と、ワッシャ28と、から構成される。
ファスナ本体25およびカラー26は、強度の面から一般に金属材料により形成される。ピン状をなしたファスナ本体25は、先端部にネジ溝(ネジ部)25aが形成され、後端部は先端部側より拡径したテーパ状の拡径部25bとされている。このファスナ本体25は、翼パネル21および部材22を貫通して形成された孔21a、22aに翼20の外側から挿入され、後端部の拡径部25bを孔21aのテーパ面に突き当てた状態で、先端部を翼20の内方に突出させる。
カラー26は、筒状で、その内周面にはファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝26aが形成されている。このカラー26は、翼20の内方に突出したファスナ本体25のネジ溝25aにねじ込まれる。これによって、翼パネル21と部材22とは、ファスナ本体25の拡径部25bとカラー26とによって挟み込まれ、部材22が翼パネル21に固定されている。
なお、この状態で、ファスナ本体25の先端部25cは、カラー26よりも翼20の内周側に突出し、さらに、ネジ溝25aの一定長をカラー26から翼20の内周側に露出させている。
【0023】
上記ファスナ本体25の後端部は、そのままでは翼20の表面に露出することになるため、翼20が複合材からなる場合、翼20の表面全体がCu(銅)を含んだ塗料からなる塗膜27によってファスナ本体25の後端部が覆われ、これによって落雷時に電流がファスナ部材24に集中するのを防いでいる。
また、ファスナ本体25への雷の直撃を防ぐために、ファスナ本体25は、その表面を樹脂等の絶縁材料でコーティングするのが好ましい。
【0024】
ワッシャ28は、所定の厚さを有した環状で、例えばポリイミド等の絶縁材料により形成されている。ワッシャ28を絶縁材料で形成することで、部材22とワッシャ28との界面においてアーク放電が生じるのを防止する。
【0025】
さて、翼20の内部空間側において、ファスナ部材24には、キャップ30が装着され、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填されている。
図2、図3に示すように、キャップ30は、断面円形で、一端部30a側のみが開口し、他端部30b側に向けてその内径および外径が漸次縮小する形状とされている。このキャップは、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、ナイロン樹脂等の絶縁性を有した樹脂により形成するのが好ましい。
【0026】
キャップ30の他端部30b側の内周面(以下、これを底面31と称する)には、断面円形の有底状の穴(ネジ穴)32が形成されており、この穴32の内周面には、ファスナ本体25のネジ溝25aに噛み合うネジ溝32aが形成されている。このキャップ30は、一端部30aの端面を部材22に押し当てた状態で、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入されるようになっている。このとき、ファスナ本体25のネジ溝25aにキャップ30のネジ溝32aが噛み合うことで、キャップ30がファスナ部材24に対し、容易かつ確実に位置決め固定できるようになっている。
【0027】
このようなキャップ30は、キャップ30をファスナ部材24に装着したときに、ワッシャ28、ファスナ本体25およびカラー26との間に、予め定められた間隙が形成されるよう、内周面36の内径が設定されている。特に、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との間に、所定寸法t以上の間隙を確保できるよう、キャップ30が形成されている。
【0028】
また、キャップ30の内周面36は、一端部30a側が、その内径が一定とされたストレート部36aとされ、さらに、ストレート部36aから穴32に向けて、その内径が漸次縮小するテーパ部36bが形成されている。
そして、ストレート部36aとテーパ部36bが隣接する部分の角部36c、テーパ部36bと穴32とが隣接する部分の角部36dは、所定の曲率半径を有したR形状とされている。
このようにして、キャップ30の内周面36は、ストレート部36aから角部36c、テーパ部36b、角部36dへと、スムーズに連続する面とされている。これにより、キャップ30内にシーラント剤34を充填する際に、シーラント剤34に空気を巻き込んだり、内周面36(特に角部36c、36d等)においてシーラント剤34に空隙ができたりするのを防ぐようになっている。
【0029】
キャップ30をファスナ部材24に装着した状態では、キャップ30の内部に、絶縁性を有したシーラント剤34が充填される。このシーラント剤34が、キャップ30の内周面とファスナ本体25およびカラー26との間に介在することで、キャップ30とファスナ部材24との間の絶縁性がさらに高まる。そして、キャップ30の開口側である一端部30aにおいては、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との間のシーラント剤34が、所定寸法t以上の厚さを有しているので、キャップ30の内周面とワッシャ28およびファスナ本体25との界面における絶縁性能が確保される。
【0030】
翼パネル21および部材22を締結するファスナ部材24に、キャップ30を装着するときには、キャップ30の内部に、未硬化のシーラント剤34を充填しておく。そして、翼20の内部空間において、内方に向けて突出した各ファスナ部材24のファスナ本体25に、キャップ30を押し付ける。
このとき、キャップ30内に充填されたシーラント剤34が、キャップ30の一端部30aの開口部から溢れ出てくる。キャップ30内の全域にシーラント剤34が均等に行き渡るよう、シーラント剤34がキャップ30の全周から溢れ出るのが好ましい。このため、キャップ30の一端部30aの表面37は平滑面であるのが好ましく、また、一端部30aの内周縁部38は、バリやカエリ等が生じないように形成するのが好ましい。
ファスナ本体25に、キャップ30を押し付けていくと、キャップ30の内部には穴32が形成されているので、ファスナ部材24をキャップ30の中心に確実かつ容易に位置決めできる。これにより、キャップ30とファスナ部材24とがずれて、キャップ30とファスナ部材24との間の間隙が場所によって狭くなることもなく、ファスナ部材24がキャップ30に直接接触してしまうことも防止できる。
【0031】
キャップ30のファスナ部材24への位置決めを容易に行うため、穴32の周縁部を、その内径が穴32の奥側に向けて漸次縮小するテーパ面とすることも有効である。
【0032】
キャップ30の穴32をファスナ本体25に押し付けた後は、キャップ30を回転させてファスナ本体25にねじ込んでいく。
このとき、穴32内にシーラント剤34が充填されていると、穴32にファスナ本体25の先端部25cが挿入される。さらにキャップ30のねじ込みにともなってファスナ本体25が穴32内に侵入してくると、穴32内のシーラント剤34の行き場がなく、シーラント剤34の圧力が高まってファスナ本体25の先端部を穴32の所定の深さまで挿入できないこともある。
そこで、キャップ30の穴32の内周面には、少なくとも一箇所、穴32の中心軸方向に沿って延びるシーラント排出溝33を形成するのが好ましい。図2、図3の例では、2本のシーラント排出溝33が穴32に形成されている。もちろん、シーラント排出溝33を3本以上形成することも可能である。
このように、穴32にシーラント排出溝33を形成しておくことで、穴32にファスナ本体25の先端部が挿入されてくると、これに伴い、穴32内の余剰のシーラント剤は、シーラント排出溝33を通して穴32から押し出されるようになっている。これにより、穴32内のシーラント剤34に空隙が残存するのを防ぐとともに、穴32へのファスナ本体25の挿入、つまりファスナ部材24へのキャップ30の取り付けを容易に行うことができる。
【0033】
また、図2(b)、図3に示すように、ファスナ本体25にねじ込んだキャップ30が緩むことも考えられる。そこで、穴32の内周面に、緩止め部60として、少なくとも一箇所、穴32の中心軸方向に延びるセルフロック部材61が設けられている。このセルフロック部材61は、キャップ30よりも柔らかい材料、例えばナイロン系樹脂からなる。また、セルフロック部材61は、キャップ30と同材料で形成することもできる。キャップ30の穴32の内周面に、穴32の中心軸方向に延びる溝62が形成され、セルフロック部材61は、この溝62に嵌め込まれている。ここで、溝62は、キャップ30の中心側に行くに従いその幅が漸次縮小する形状とされ、セルフロック部材61もこの溝62に対応した断面形状を有している。これにより、セルフロック部材61は、溝62に嵌め込まれた状態で、穴32の内側に脱落しないようになっている。また、セルフロック部材61は、溝62に嵌め込まれた状態で、その先端面61aが、穴32に形成されたネジ溝32aよりも穴32の内周側に突出するよう形成されている。
【0034】
キャップ30の穴32の内周面にこのようなセルフロック部材61を設けておくと、穴32にファスナ本体25がねじ込まれると、ネジ溝32aから穴32の内周側に先端面61aを突出させたセルフロック部材61に、ファスナ本体25のネジ溝25aが食い込む。これによって、ファスナ本体25とセルフロック部材61との摩擦が増大し、キャップ30の緩みが防止される。また、セルフロック部材61に、ファスナ本体25のネジ溝25aが食い込むことでセルフロック部材61が削り取られ、削り取られたセルフロック部材61の破片がファスナ本体25のネジ溝25aと穴32のネジ溝32aとの間に挟み込まれることでも、ファスナ本体25とキャップ30との摩擦が増大し、キャップ30の緩みが防止される。
【0035】
そして、キャップ30の一端部30aの端面が部材22に押し当てられるまでキャップ30をねじ込んだら、キャップ30のねじ込みを完了する。するとこの状態で、ファスナ本体25に形成されたネジ溝25aとキャップ30の穴32のネジ溝32aとが噛み合い、さらにセルフロック部材61とファスナ本体25のネジ溝25aとが噛み合い、これによって、キャップ30が緩むのを防いでファスナ部材24に確実に固定保持される。
また、充填したシーラント剤34が硬化すれば、このシーラント剤34も、キャップ30のファスナ部材24への固定効果を発揮する。
このようにしてキャップ30が装着されたファスナ部材24が耐雷ファスナである。
【0036】
ここで、キャップ30の外周面に何かがぶつかった場合の衝撃等によって、キャップ30が脱落してしまう可能性がある。このような場合においても、キャップ30とともに、硬化したシーラント剤34が脱落することなく、シーラント剤34がファスナ本体25の頭部を覆った状態を維持するようにするのが好ましい。
この目的のため、キャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱くなるよう、シーラント剤34の材料を選定するのが好ましい。このようにキャップ30とシーラント剤34との接着力が、シーラント剤34とファスナ部材24との接着力より弱ければ、キャップ30に衝撃等が加わった場合にも、キャップ30がシーラント剤34から剥離してキャップ30のみが脱落し、ファスナ部材24はシーラント剤34によって覆われた状態を維持するので、耐雷性能を維持できる。
【0037】
また、ファスナ部材24からのシーラント剤34の剥離を防ぐため、例えば、カラー26の外周面に、外周側に向けて張り出す段部26cや、つば部26d等を形成するようにしてもよい。
【0038】
ところで、キャップ30は、作業者が工具を用いてねじ込んでもよいし、手でねじ込んでもよい。
例えば、キャップ30を作業者が工具でねじ込む場合、図2、図3に示すように、キャップ30の他端部30bの頭部30cを、工具形状に対応した六角形状、六角穴形状等とすることができる。
また、キャップ30を作業者が手でねじ込む場合、図4に示すように、キャップ30の外周面30dに、スリット加工、あるいはローレット加工、ダイヤカット加工等を施し、滑り止めとすることができる。もちろん、図4の例では、キャップ30の外周面30d全体にスリット加工が施されているが、その一部のみに施すようにしても良い。さらに、図5に示すように、キャップ30の他端部30bに、周方向に間隔を隔てて複数個所(2箇所以上)の突起35を形成しても良い。突起35の数や形状等は何ら問うものではない。
【0039】
加えて、図6に示すように、キャップ30の頭部30eに対し、所定の外径を有したロッド部30fを介し、適宜形状の摘まみ部30gを形成することもできる。このような構成においては、作業者は、摘まみ部30gを回すことでキャップ30をファスナ部材24に取り付ける。このとき、ロッド部30fの一部30hを細くする等して、キャップ30の予め規定された締付けトルクに到達したときにロッド部30fの一部30hがねじ切れるような強度に設定しておくことで、作業者は、キャップ30を規定トルクで確実に締め付けて取り付けることができる。
【0040】
上述したようにして、キャップ30に穴32を形成し、この穴32にネジ溝32aを形成しておくことで、ファスナ部材24にキャップ30を確実かつ容易に位置決めして取り付けることができ、取付後においてもキャップ30の脱落を確実に防止できる。
そして、緩止め部60により、キャップ30がファスナ部材24から緩むのを防止することで、耐雷性能を確実に維持できる。
また、キャップ30をファスナ部材24にねじ込んでしまえば、シーラント剤34の硬化を待つ必要はなく、キャップ30の取り付けを迅速に行うことができる。
これにより、絶縁性を確実に確保したうえで、作業性を向上させて製造コストを抑えるとともに、作業者によらず安定した品質で取り付けることができる。
また、キャップ30は、樹脂で形成することで、量産が容易となり、製造コストを抑えるとともに、量産により肉厚を管理しやすく、キャップ30の軽量化を図ることもできる。
【0041】
ところで、上記したようなキャップ30は、切削加工により形成することもできるが、量産性を考慮すると射出成形で形成するのが好ましい。射出成形の場合、穴32のネジ溝32aを形成するのが困難(形成した後に、キャップ30を回転させて外す必要がある)であるため、ネジ溝32aは、穴32にヘリサートをねじ込むことで取り付けても良い。
【0042】
なお、上記実施形態では、緩止め部60として、例えば、図7に示すように、キャップ30の穴32の内周面を、穴32の開口端側から底面32bにいくに従いその径を漸次縮小するテーパ面63としてもよい。これにより、ファスナ本体25を穴32にねじ込むに従い、ファスナ本体25と穴32との嵌めあいがきつくなり、摩擦も増大してキャップ30の緩みが防止される。
【0043】
また、図8に示すように、キャップ30の穴32の内周面に形成するネジ溝32aを、穴32の開口端側は、そのネジピッチP1が、ファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチと等しくなるよう形成され、底面32b側のネジピッチP2がファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチよりも小さくなるよう形成することもできる(P1>P2)。
このようにすると、ファスナ本体25を穴32にねじ込んでいき、ネジ溝25aが、ネジ溝32aのネジピッチがP1からP2に変わる部分に到達すると、その嵌め合いがきつくなる。
これにより、ファスナ本体25とキャップ30の摩擦を増大させてキャップ30の緩みを防止することができる。
【0044】
逆に、ファスナ本体25のネジ溝25aのネジピッチを、先端部のピッチはキャップ30のネジ溝32aのピッチと等しくし、基端部側のピッチを、ネジ溝32aのピッチよりも小さくなるよう形成することもできる。
この場合も、ファスナ本体25を穴32にねじ込んでいき、ネジ溝32aが、ネジ溝25aのネジピッチがからに変わる部分に到達すると、その嵌め合いがきつくなる。これにより、ファスナ本体25とキャップ30の摩擦を増大させてキャップ30の緩みを防止することができる。
【0045】
これ以外にも、図9、図10に示すように、キャップ30をファスナ本体25の先端部にねじ込んだ後、キャップ30およびファスナ本体25を、その径方向に貫通するピン65や、その軸方向に貫通するピン66により固定することも考えられる。
これによってもキャップ30の緩みを防止できる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、穴32にシーラント排出溝33を形成することで、穴32の内部に充填したシーラント剤34の余剰分を押し出すようにしたが、これに限るものではなく、例えば、図11に示すように、キャップ30の頭部30cに貫通孔40を形成し、この貫通孔40から余剰分のシーラント剤34をキャップ30の外部に押し出すようにすることもできる。
【0047】
また、上記実施形態においては、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込むようにしたが、ファスナ部材24において翼20の内方に突出した部分にキャップ30がねじ込まれるのであれば、他の異なる構成とすることが可能である。
例えば、図12に示すように、翼20の内部側でファスナ本体25に装着されるカラー26の外周面にネジ溝26bを形成し、このネジ溝26bに、キャップ30の内周面に形成されたネジ溝32cをねじ込むようにしても良い。
さらには、ファスナ部材24のファスナ本体25の先端部に形成されたネジ溝25aにキャップ30をねじ込む構成に限らず、キャップ30をファスナ本体25の先端部に嵌め合う構成とすることも可能である。その場合、例えば、ファスナ本体25の先端部の外周面に、周方向に連続する溝または凸条を形成し、キャップ30の穴32に、ファスナ本体25の溝に係合する凸状や突起、またはファスナ本体25の凸状に係合する溝を形成し、キャップ30をファスナ本体25に嵌め合わせる構成とすることも可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、翼パネル21と部材22とをファスナ部材24により締結する構成としたが、接合すべき二つの部材が、機体の外部に露出している場合、ファスナ部材24のファスナ本体25を、二つの部材の両面側に突出させ、その両面側にキャップ30を設けることも可能である。この場合、ファスナ本体25の先端部25cとは反対側の基端部25dに、部材の表面から突出するピン部を設け、そのピン部にキャップ30を設けることもできる。その場合も、ピン部の先端部に形成されたネジ溝とキャップ30の穴32のネジ溝32aに、図1〜図12に示した構成を適宜選択して適用することで、キャップ30が緩むのを防止することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
20…翼、21…翼パネル(第一の部材)、21a…孔、22…部材(第二の部材)、24…ファスナ部材、25…ファスナ本体、25a…ネジ溝(ネジ部)、25b…拡径部、25c…先端部、26…カラー、26a…ネジ溝、30…キャップ、30a…一端部、30b…他端部、30c…頭部、30d…外周面、30e…頭部、30f…ロッド部、30g…摘まみ部、31…底面、32…穴(ネジ穴)、32a…ネジ溝、33…シーラント排出溝、34…シーラント剤、35…突起、40…貫通孔、60…緩止め部、61…セルフロック部材、62…溝、63…テーパ面、65、66…ピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、前記第一の部材および前記第二の部材を貫通するとともに、前記第一の部材および前記第二の部材側の少なくとも一方に突出する軸部を有するファスナ部材と、
前記ファスナ部材の前記軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備え、
前記軸部の外周面にネジ部が形成され、
前記キャップは、その内周面の中心部に、前記軸部の前記ネジ部に螺合するネジ穴が形成され、前記ネジ穴に前記ネジ部が螺合した状態で、前記ネジ穴以外の部分において前記ファスナ部材の前記軸部との間に間隙を隔てた状態で取り付けられ、
前記キャップが前記ファスナ部材から緩むのを防止する緩止め部が形成されていることを特徴とする耐雷ファスナ。
【請求項2】
前記緩止め部として、前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿って延び、前記軸部を形成する材料よりも柔らかい材料または前記キャップを形成する材料と同材質で形成されたセルフロック部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項3】
前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿って延びる溝が形成され、前記溝に前記セルフロック部材が嵌め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の耐雷ファスナ。
【請求項4】
前記緩止め部として、前記ネジ穴のネジ溝が、前記ネジ穴への前記軸部の挿入方向手前側は前記ネジ部と等しいネジピッチで形成され、挿入方向奥側は、前記ネジ部よりも狭いネジピッチで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項5】
前記緩止め部として、前記ネジ穴は、前記ネジ穴への前記軸部の挿入方向手前側から挿入方向奥側に向けて、その内径が漸次縮小することを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項6】
前記緩止め部として、前記軸部の前記ネジ部のネジ溝が、当該軸部の先端部は前記ネジ穴と等しいネジピッチで形成され、前記軸部の基端部側は前記ネジ穴よりも狭いネジピッチで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項7】
前記緩止め部として、前記キャップと前記ファスナ部材を貫通するピンを備えることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項8】
前記間隙に絶縁性のシーラント剤が充填されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
【請求項9】
前記ネジ部または前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿ったシーラント排出溝が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の耐雷ファスナ。
【請求項10】
前記キャップの前記開口端側において、前記キャップの径方向における前記シーラント剤の厚さが、予め定められた以上の寸法とされていることを特徴とする請求項8に記載の耐雷ファスナ。
【請求項1】
航空機の機体を構成する第一の部材に第二の部材を締結するため、前記第一の部材および前記第二の部材を貫通するとともに、前記第一の部材および前記第二の部材側の少なくとも一方に突出する軸部を有するファスナ部材と、
前記ファスナ部材の前記軸部を覆うように取り付けられる絶縁性材料からなるキャップと、を備え、
前記軸部の外周面にネジ部が形成され、
前記キャップは、その内周面の中心部に、前記軸部の前記ネジ部に螺合するネジ穴が形成され、前記ネジ穴に前記ネジ部が螺合した状態で、前記ネジ穴以外の部分において前記ファスナ部材の前記軸部との間に間隙を隔てた状態で取り付けられ、
前記キャップが前記ファスナ部材から緩むのを防止する緩止め部が形成されていることを特徴とする耐雷ファスナ。
【請求項2】
前記緩止め部として、前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿って延び、前記軸部を形成する材料よりも柔らかい材料または前記キャップを形成する材料と同材質で形成されたセルフロック部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項3】
前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿って延びる溝が形成され、前記溝に前記セルフロック部材が嵌め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の耐雷ファスナ。
【請求項4】
前記緩止め部として、前記ネジ穴のネジ溝が、前記ネジ穴への前記軸部の挿入方向手前側は前記ネジ部と等しいネジピッチで形成され、挿入方向奥側は、前記ネジ部よりも狭いネジピッチで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項5】
前記緩止め部として、前記ネジ穴は、前記ネジ穴への前記軸部の挿入方向手前側から挿入方向奥側に向けて、その内径が漸次縮小することを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項6】
前記緩止め部として、前記軸部の前記ネジ部のネジ溝が、当該軸部の先端部は前記ネジ穴と等しいネジピッチで形成され、前記軸部の基端部側は前記ネジ穴よりも狭いネジピッチで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項7】
前記緩止め部として、前記キャップと前記ファスナ部材を貫通するピンを備えることを特徴とする請求項1に記載の耐雷ファスナ。
【請求項8】
前記間隙に絶縁性のシーラント剤が充填されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の耐雷ファスナ。
【請求項9】
前記ネジ部または前記ネジ穴に、前記軸部の軸線方向に沿ったシーラント排出溝が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の耐雷ファスナ。
【請求項10】
前記キャップの前記開口端側において、前記キャップの径方向における前記シーラント剤の厚さが、予め定められた以上の寸法とされていることを特徴とする請求項8に記載の耐雷ファスナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−61873(P2012−61873A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205341(P2010−205341)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(508208007)三菱航空機株式会社 (32)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(508208007)三菱航空機株式会社 (32)
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