説明

耐食性、皮膜密着性および皮膜強度に優れた絶縁皮膜形成用クロムを含まない被覆液、並びにこれを用いて無方向性電気鋼板に絶縁皮膜を形成する方法

【課題】応力除去焼鈍(SRA)後の耐食性、皮膜密着性および皮膜強度に優れた絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物を提供する。
【解決手段】第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛とが1:1の比率で混合された固形分60重量%のリン酸塩溶液100gに対して、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが1:1の比率で混合された固体0.5〜5g、固形分20重量%のポリエステル樹脂エマルジョンまたはエポキシ樹脂エマルジョン100〜300g、固形分20重量%のケイ酸アルミニウム3〜10g、およびチタニウムキレート0.1〜6gを含んでなる被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電気鋼板の製造方法に係り、より詳しくは、絶縁皮膜形成の際、或は絶縁皮膜形成の後にクロムを使用することなく優れた耐食性および皮膜密着性を示すことができ、そして打抜き性、溶接性、密着性、ラミネーション係数(lamination factor)、及び外観などの皮膜特性も向上させることができ、応力除去焼鈍(SRA:Stress Relief Annealing)後にも優れた耐食性、優れた皮膜密着性、及び皮膜強度を有する絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物、並びにこれを用いた無方向性電気鋼板の絶縁皮膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無方向性電気鋼板は、電動機または発電機の鉄芯に用いられる。無方向性電気鋼板は、打抜き加工後の磁気的特性を向上させるために応力除去焼鈍(SRA)を行わなければならない電気鋼板と、SRAによる磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きい場合にSRAを行う必要がない電気鋼板と、に区分される。家庭用電気製品を含んだ電気機器の発展に伴い、無方向性電気鋼板の消費量が増加している。
【0003】
無方向性電気鋼板を製造する工程中では、鉄板間の層間絶縁皮膜を形成するコーティング過程を仕上げ段階で行っている。この際、形成される絶縁皮膜は、例えば渦電流の発生を抑制させる電気的特性、鋼板を所定の形状に打抜き加工した後、多数の鋼板を積層して鉄芯を作るときに金型の磨耗を抑制する連続打抜き加工性、及び鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させるSRA過程の後に鋼板同士が付着するのを防ぐ付着防止性、などの基本的特性が要求される。更に、被覆材は優れた塗布作業性と適用後の長期間の安定性が要求される
【0004】
ところが、小型電動機器の使用が拡大するにつれて、絶縁性よりも加工性、溶接性および耐食性がより重要な皮膜性能だと考えられるようになった。最近では、鋼板表面の品質も使用特性に影響を及ぼすため、鋼板表面の品質に優れた電気鋼板の要求が高まった。
【0005】
その結果、無方向性電気鋼板用絶縁皮膜の耐熱性、絶縁性などを向上させるために、例えばリン酸塩、クロム酸塩などの無機質系の欠点を補完した有機−無機複合被覆剤が開発された。韓国特許第25106号、同第31208号、同第31219号、および米国特許第4,316,751号、同第4,498,936号は、有機無機複合被覆剤を用いた絶縁皮膜形成方法を開示している。
【0006】
更に、日本特開昭50−15013号は、重クロム酸塩、酢酸ビニル、ブタジエン−スチレン共重合物、アクリル樹脂などから成る有機樹脂エマルジョン処理液を用いて絶縁皮膜を形成することにより、ラミネーション係数、密着性、及び打抜き加工性などの皮膜特性が改良され、SRA後にも良好な皮膜特性示す絶縁皮膜の形成方法を開示している。
【0007】
しかしながら、前述した既存の被覆剤の組成は、本質的に酸化クロムを含み、その使用は、環境規制が強化されている現実に鑑みて制限される。
このため、クロム−フリーな電気鋼板被覆剤の調整方法が活発に開発されている。電気鋼板被覆用の、クロム−フリーな被覆剤を調整する方法は、クロム酸塩を除いたことに基づく耐食性と密着性の低下を補償するためにリン酸塩を加える方法と、被覆剤にコロイド状シリカを導入することによるバリア効果を誘導する方法と、に区分できる。
【0008】
リン酸塩を被覆剤に加える方法は、日本特開2004−322079に開示されているように、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛を所定の比率で混合したリン酸塩を用いることによって密着性と耐食性を向上させたものである。しかしながら、金属リン酸塩を使用する場合、金属リン酸塩に含まれる遊離のリン酸が皮膜の粘着(Sticky)性を誘発するおそれがある。
【0009】
よって、日本特開平11−131250および韓国特許公開第1999−26912号は、このような遊離のリン酸によって生じる粘着性を防止するために有機酸およびシランカップリング剤を被覆材に添加する技術を開示している。
【0010】
一方、被覆材にコロイド状シリカを加えてバリア効果を誘導する方法の代表的な例として、韓国特許公開第1999−26911号、日本特許第3370235号は、絶縁膜を鋼板上に形成する方法を開示している。この方法は、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化ジルコニウムおよびこれらの組み合わせからなる無機物を用いて絶縁膜の耐食性、密着性および平滑性をSRA後も確保し、シランカップリング剤などを添加して密着性と耐溶剤性を向上させる。
【0011】
更に、日本特許第3320983号は、所定の表面積比を有するシリカと樹脂との薄い分散被覆(dispersion coating)を形成することによって密着性と耐食性が改良された絶縁皮膜を形成した電磁鋼板を開示している。
【0012】
しかし、前述したリン酸塩またはコロイド状シリカを主成分とするクロム−フリー被覆剤のいずれも、リン酸塩による粘着性、およびコロイド状シリカによる耐食性の向上限界を有する。よって、酸化クロムをこれらのクロム−フリー被覆剤によって置換する技術を広範囲に適用するのは依然として困難である。
一方、無方向性電気鋼板をモータまたはトランスの鉄芯として使用する場合には、無方向性電気鋼板を規格に基づいて打抜きした後、一定の枚数を重ねて積み上げ、溶接または接着によって鉄芯にする。
【0013】
このような作業において、必要に応じてSRAが行われる。SRA工程を行う場合は、特に焼鈍後の密着性、絶縁性、耐食性などが重要になる。
一般的に、無方向性電気鋼板の.絶縁皮膜はクロムを含有している。クロムは、SRA後の絶縁膜の物性を向上させることに役に立つ。
【0014】
しかし、クロム−フリーの被覆剤の場合には、クロムの代替物質としてリン酸塩が加えられる。この際、皮膜中に残存する微量の遊離リン酸による吸湿性、及び吸湿性よる焼鈍時の接着性の問題が発生するおそれがある。このような問題は逆説的にクロムの導入によって解決が可能である(式1を参照)。
CrO+2HPO→Cr(PO+6HO ・・・・・・(1)
【0015】
更に、クロム−フリー被覆剤の場合、クロム−フリーの被覆材を用いて形成した皮膜はクロム化合物による特有の皮膜充填効果による皮膜の緻密性などの効果を示すことができないため、皮膜物性の低下を防ぐのには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、従来の技術の問題点を克服するためになされたもので、酸化金属とリン酸塩の適当なモル比で混合して製造された金属リン酸塩が被覆組成物の物性低下現象、特にSRA前の密着性の劣化を引き起こすという事実と、皮膜中に存在するリン酸塩が皮膜乾燥の後に遊離リン酸として存在しており、この遊離リン酸が皮膜形成後に湿気を吸湿して応力除去焼鈍(SRA)後に皮膜の耐食性と皮膜の密着性を低下させるという事実と、応力除去焼鈍(SRA)後の被覆組成物の耐食性の減少原因と皮膜密着性の低下原因が被覆組成物の主成分であるエマルジョン有機樹脂とリン酸塩との適合性(compativility)にあるという事実と、に基づいてなされたものである。
【0017】
よって、本発明の目的は、無方向性電気鋼板の絶縁被覆組成物の主要成分であるクロム酸化物の代わりに、リン酸塩、水溶性スチレン−アクリル樹脂またはポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および金属酸化物を主要成分とする有機−無機混合組成物を適用することにより、絶縁膜形成時も、或は絶縁膜を形成後も、クロムを使わないで優れた耐食性と接着性を示すことができ、環境の面で有利であり、SRA後でも優れた耐食性、優れた皮膜密着性、及び皮膜強度を有する無方向性電気鋼板上に絶縁皮膜を形成するためのクロム−フリー被覆組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、クロム−フリー被覆組成物を用いた無方向性電気鋼板の絶縁皮膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、第1リン酸アルミニウム(monoaluminum phosphate)と第1リン酸亜鉛(monozinc phosphate)とが1:1の比率で混合された固形分含有量60重量%のリン酸塩溶液100gに対して、水酸化コバルト(cobalt hyddroxyde)と水酸化ストロンチウム(strontium hydroxide)とが1:1の比率で混合された固体0.5〜5gと、固形分含有量20重量%のポリエステル樹脂エマルジョンまたはエポキシ樹脂エマルジョン100〜300gと、固形分20重量%のケイ酸アルミニウム(aluminum silicate)3〜10gと、チタニウムキレート(titanium chelate)0.1〜6gと、を含んでなり、応力除去焼鈍(SRA)後も優れた耐食性、優れた皮膜密着性、および皮膜強度を有する絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物を提供する。
【0019】
この際、第1リン酸亜鉛は2.75Mまたは52.5%の固形分を有し、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛との混合液は60重量%の固形分を含有し、及び30〜70cpの粘度を有し、ポリエステル樹脂エマルジョンは40000〜50000の分子量を有し、40〜50℃のガラス転移温度(Tg)および20重量%の固形分を含有する。
【0020】
また、第1リン酸亜鉛は2.75Mまたは52.5%の固形分を含有し、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛との混合液は60重量%の固形分を含有し、30〜70cpの粘度を有し、エポキシ樹脂エマルジョンは10000〜20000の分子量を有し、50〜60℃のガラス転移温度(Tg)を有し20重量%の固形分を含有する。
【0021】
また、チタニウムキレートは、トリエタノールアミンチタネート(triethanolamine titanate)、チタニウム2,2,2−ニトリロトリセタノレート(titaniumu 2,2,2−nitrilotrisethanolate)、及び有機−無機チタネート−多孔質複合物(organic−inorganic porous titanate compound)の中から選ばれた何れか一つである。
【0022】
また、エポキ樹脂シエマルジョンは、ビスフェノールがエポキシドとの結合する構造を有し、その構造の一部分がアクリル基で置換され、エマルジョン状態を維持する。
【0023】
また、本発明は、クロム−フリーの被覆組成物を用いて、塗布量が片面当たり0.5〜6.0g/mの範囲となるように塗布した後、350〜700℃の温度範囲で10〜50秒間加熱処理して、無方向性電気鋼板の表面に絶縁皮膜を形成する方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが添加された、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛とが混合されたリン酸塩を、ポリエステル樹脂エマルジョンと混合した後、ケイ酸アルミニウムおよびチタニウムキレートを添加して製造された被覆組成物を用いて、応力除去焼鈍(SRA後)に耐食性、皮膜密着性、及び皮膜強度に優れた絶縁皮膜を無方向性電気鋼板上に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る好適な実施例をより詳細に説明する。
皮膜中に存在するリン酸塩が皮膜を乾燥した後に遊離リン酸として残存しており、この遊離リン酸が皮膜形成の後に湿気などを吸湿して応力除去焼鈍(SRA)後の被覆組成物の耐食性および密着性を低下させるという事実と、応力除去焼鈍(SRA)後の被覆組成物の耐食性および密着性の低下の原因が有機樹脂エマルジョンとリン酸塩との適合性にあるという事実と、に基づき、本発明は、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛とを混合したリン酸溶液に水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを添加することにより、被覆組成物がクロムを排除した場合に生じる耐食性および密着性を克服し、SRA後の皮膜密着性を向上させるようにした被覆組成物を提供するものである。
【0026】
例えば、固形分の含有量が60重量%である混合リン酸塩溶液100gに対して、固形分の含有量が20重量%であるポリエステル樹脂エマルジョンあるいはエポキシ樹脂エマルジョン100〜300g、固形分の含有量が20重量%であるケイ酸アルミニウム3〜10g、およびチタニウムキレート0.1〜6gを含んでなる被服組成物を製造し、このように製造された被覆組成物を無方向性電気鋼板の表面に塗布量が片面当り0.5〜6.0g/mの範囲となるように塗布した後、温度350〜700℃の範囲で10〜30秒間加熱処理して絶縁皮膜を形成することにより、絶縁皮膜の耐食性および皮膜密着性を向上させることができる。
【0027】
ここで、エマルジョン化されたポリエステル樹脂は、分子量40000〜50000であって、ガラス転移温度(Tg)は40〜50℃であって、固形分の含有量が20重量%である。エマルジョン化されたポリエステル樹脂の量が固体の含有量の中で100g未満になると、相対的にリン酸塩の分率が高くなって、被覆組成物の耐食性は増加するが、被覆組成物の粘着性(stickiness)が減少し、粉末が沈殿しするという問題がある。一方、マルジョン化されたポリエステル樹脂の量が含有量の中で300g以上になると、被覆組成物の耐食性と適合性が著しく減少する。従って、エマルジョン化されたポリエステル樹脂は、上記の範囲で添加されることが好ましい。
【0028】
更に、エマルジョン化されたエポキシ樹脂は、分子量10000〜20000であって、ガラス転移温度(Tg)は50〜60℃であって、固形分含有量が20重量%である。
エマルジョン化されたエポキシ樹脂は、ビスフェノールがエポキシドと結合する構造を有し、構造の一部がアクリルグループで置換され、これによってエマルジョン状態を保っている。エマルジョン化されたエポキシ樹脂の量が固体の含有量の中で100g未満になると、相対的にリン酸塩の分率が高くなって、被覆組成物の耐食性は増加するが、被覆組成物の粘着性(stickiness)が減少し、粉末が沈殿しするという問題がある。一方、マルジョン化されたエポキシ樹脂の量が含有量の中で300g以上になると、被覆組成物の耐食性と適合性が著しく減少する。従って、エマルジョン化されたエポキシ樹脂は、上記の範囲で添加されることが好ましい。
【0029】
また、ケイ酸アルミニウムは、固形分20%の水性アルミナコロイダルシリカを使用することが好ましい。ケイ酸アルミニウムの量が固形分で3g未満になると、被覆組成物のの被膜形成性及び耐食性が低下する。一方、ケイ酸アルミニウムの量が固形分で10gを超すと、SRA前後の密着性の低下をもたらす。従って、ケイ酸アルミニウムは上記の範囲で添加されることが好ましい。
また、チタニウムキレートは、被覆組成物内に存在しながら架橋剤の役割を担当するもので、被覆組成物が乾燥された際に金属リン酸塩とポリエステル樹脂とを連結する。チタニウムキレートの量が0.1g未満であると、チタニウムキレートは架橋剤の役割を行うことができない。一方、チタニウムキレートの量が6gを超過しても、チタニウムキレートは同一の反応特性を示す。
従ってチタニウムキレートの量は上記の範囲で添加されることが好ましい。
【0030】
まとめると、本発明は、被覆組成物が酸化クロムでない場合に、SRA後の被覆組成物の耐食性と密着性が低下するという課題を、次の方法によって向上させることができる。
第一は、本発明に於いてリン酸第1アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)は1:1の混合形態が好ましい。このような混合形態のリン酸塩に水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとを添加して皮膜の耐熱性および緻密性を確保し、これにより被覆組成物の耐食性が向上するようにした。
【0031】
この際、金属リン酸塩は、よく知られているように、被覆組成物の成分として導入される場合、有機−無機複合成分からなる被覆組成物及び母材としての鋼板の間のバインダーの役割を果たすことにより被覆組成物の密着性を向上させると共に、耐熱性に優れた皮膜形成剤としての役割を果たす。
【0032】
また、本発明の被覆組成物に使用されるリン酸塩は、正確にはリン酸水素塩であり、化合物内に解離性の水素原子を含有し、2価または3価の原子価を持つ金属を含む。
リン酸水素塩の形態としては、リン酸の解離状態によって第1リン酸金属塩、第2リン酸金属塩および第3リン酸金属塩の3形態が存在する。本発明では、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)との混合形態のリン酸水素塩が使用されることが好ましい。
【0033】
このようなリン酸塩溶液は、第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)の場合に2.75Mまたは52.5%の固形分を有し、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)の製造方法は限定しない。しかしながら、第1リン酸亜鉛と第1リン酸アルミニウムとの間の配合比はリン酸塩溶液の粘度と密接な関係があり、リン酸塩溶液の粘度は密着性と関係する。リン酸溶液の粘度は下表に示すそれらの配合比に関わる。
【0034】
また、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)との混合リン酸水素塩の製造に使用するリン酸は、双方とも特に限定しないし、通常用いられる濃度範囲のものを使用することができる。しかし、混合液の最終固形分は60重量%程度が好ましい。
【0035】
第2は、リン酸塩を含んだ被覆組成物の使用の際に発生しうる表面吸湿性およびSRA後の粘着性を、リン酸塩と樹脂との混合比の適正化および水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムの導入によって克服した。
【0036】
すなわち、リン酸塩を多量含んだ被覆組成物を用いて鋼板の表面をコートした後、時間が経つと、遊離リン酸による吸湿性または発粉性が現れる可能性がある。
したがって、遊離リン酸による表面欠陥を減らすためには、純粋なリン酸塩と金属酸化物が適当なモル比で製造されなければならない。被覆組成物内のリン酸塩の成分比が非常に重要である。
【0037】
本発明では、前述したように、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛が1:1の比率で混合された混合溶液(固形分60重量%)100gに対して、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを2重量%程度を添加することを基本とする。
【0038】
リン酸溶液に水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを添加する理由は、式1に示すように、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが酸化クロムとリン酸との反応による遊離リン酸の抑制機能を代替する役割を果たし、また、皮膜の緻密性を良好にして耐食性の向上にも大きく寄与するためである。
【0039】
第3は、SRA後の皮膜密着性を向上させるために、チタニウムキレートを被覆組成物に導入した。
一般に、SRA後の皮膜強度は、有機樹脂と金属リン酸塩との適合性に関係がある。すなわち、被覆組成物の製造直後に、有機樹脂と金属リン酸塩との適合性が良くなければ、肉眼で観察されない微細な相分離現象または2成分間の凝固現象などが発生する。
【0040】
このように製造された被覆組成物を用いて皮膜を形成した後、約750℃で2時間程度のSRA過程を行うと、試片の表面に異物、例えば黒い灰などが残る現象を観察することがある。このような現象が観察される最終製品を用いてモータまたはコンプレッサーを製作すると、冷却オイル供給管を詰まらせるのは勿論、製品の寿命が大きく短縮される。従って、本発明では、チタニウムキレートを用いて、コーティング剤の主要成分である有機樹脂と金属リン酸塩との適合性および被覆組成物と素材間の密着性を向上させることによって、このような問題点を解決できる。
【0041】
通常、電気鋼板の表面処理法は、素材の影響を多く受ける。特に珪素含量が減少すると、密着性が低くなるという傾向がある。この傾向は、SRA後の皮膜剥離性によって更に明確に示される。
【0042】
一方、例えば耐食性などの皮膜特性を付与するための絶縁皮膜処理の薬剤として通常酸化クロムを用いる。この場合に、クロムを使用して絶縁被覆液を製造し、製造された絶縁被覆液を製造ラインにおいて基質に塗布し、排水を廃棄した際に環境問題が発生しクロムが人体に深刻な影響を与えるという問題、また打抜き加工の際に皮膜内に残留残留する6価クロムにより金型が異常磨耗し、金型の寿命が短縮するなどの問題がある。従って、絶縁被覆液の製造初期から酸化クロムの使用を排除することが好ましい。
【0043】
また、酸化クロムの排除による耐食性および皮膜緻密性の低下を防ぐために、本発明では金属リン酸塩の導入を必須とする。第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)との混合形態のリン酸水素塩がその例である。
【0044】
このようなリン酸塩溶液のうち、第1リン酸亜鉛は2.75Mまたは52.5%の固形分を有し、第1リン酸アルミニウムの製造方法は限定されない。しかしながら、第1リン酸亜鉛と第1リン酸アルミニウム間の配合比は、耐食性および密着性に関係のある粘度と密接な関連を持つので、リン酸溶液を製造した後に適当な粘度を得るために、最終の固形分の含量は約60重量%程度とすることが好ましい。
【0045】
この際、本発明では、多様な金属リン酸塩、すなわち第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)、第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)、および第1リン酸マグネシウム(Mg(HPO)などを対象として様々な組み合わせを作り、混合物をポリエステル樹脂と混合した後耐食性試験を行い、それによって第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)の比率をを50/50、すなわち1:1の比率で混合した混合溶液であって、30〜70cpの粘度を持つものを使用するようにした。このリン酸混合物溶液を用いる理由は、が耐食性に最も良い特性を示すからである。
【0046】
上述したように、リン酸溶液の粘度を限定する理由は、リン酸混合溶液において、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)の比率が高い場合には適正の粘度を維持することができず、第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)の比率が高い場合には乾燥の後に粘着性のある性質を示し耐食性の減少をもたらすので、初期の目的を達成することができない。よって、30〜70cpの粘度の範囲が好ましく、特に50cpが最も好ましい。
【0047】
ところが、上述したように被覆組成物にリン酸塩を使用する場合、遊離リン酸が原因となる被覆組成物の表面粘着性や粉末状の沈殿が問題になる。
従って、本発明では、このような問題を解決し、式1に示すような酸化クロムと遊離リン酸との反応に代える物質を探すために、広範囲な金属酸化物または水酸化物を適用してその効果を検証した。
【0048】
実施例に使用した物質としては、リン酸コバルト水和物(cobalt phosphate hydrate)、酸化ニッケル(nickel oxide)、過酸化ストロンチウム(strontium peroxide)、酸化鉄(iron oxide)、酸化銅(copper oxide、酸化マンガン(manganese oxide)、水酸化コバルト(cobalt hydroxide)、水酸化ストロンチウム(strontium hydroxide)、クエン酸鉄の水和物(iron citrate hydrate)、水酸化ニッケル(nickel hydroxide)、クエン酸塩アンモニウム鉄(ammonium ferric citrate)、二酸化ゲルマニウム(germanium dioxide)、酸化ニオビウム(niobium oxide)、酸化モリブデン(molybdenum oxide)、酸化バリウム(barium oxide)、酸化ランタン(lanthanum oxide)、酸化タンタル(tantalum oxide)、および酸化イットリウム(Yttrium oxide)などがある。以下に述べる実施例において、これらの中でも、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが遊離リン酸の析出および皮膜の緻密性を改良するのが見出された。
【0049】
特に、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとを適切に混合したとき、被覆組成物の表面の粘着および粉末析出を防止し、耐食性を向上させることができる。
【0050】
すなわち、本発明では、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛とを1:1で混合(100gに対して50g/50g)された状態のリン酸塩であって、固形分が60重量%、粘度が30〜70cp、より好ましくは50cpのリン酸溶液100gに対して、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとが1:1で混合された固体を0.5g〜5g、より好ましくは2gをリン酸塩に溶かして添加した場合にに最も良い効効果を示す。
【0051】
この例では、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとを1:1の比率で混合する理由は、1:1の比率で混合した水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとを固体で0.5g〜5g、より好ましくは2gを、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛とを1:1で混合(100gに対して50g/50g)された状態のリン酸塩であって、固形分が60重量%、粘度が好ましくは30〜70cp、より好ましくは50cpのリン酸溶液100gに加えることによって、被覆組成物の表面の粘着性と粉末の沈殿を阻止でき、そして耐食性を改良できるからである。
この例では、水酸化コバルトの含有量が水酸化ストロンチウムの含有量に比べて高くなると被覆組成物の耐食性は増加するが、金属リン酸塩の粘度が増加し、被覆組成物の別の主要成分であるエステル樹脂との適合性を減少させる。一方、水酸化ストロンチウムの含有量が水酸化コバルトの含有量に比べて高くなっても耐食性の向上に限界がある。

【0052】
他方、被覆組成物の主成分がリン酸塩とポリエステル樹脂、又はリン酸塩とエポキシ樹脂の場合、2成分間の適合性が問題になる。2成分の適合性が良くない場合、被覆組成物の製造直後に、肉眼で観察できない微細な相分離現象と、2成分間の凝固現象が発生するおそれがある。更に、このような被覆組成物を用いて形成された皮膜の場合、750℃で2時間程度のSRAを経ると、試片の表面に異物、例えば黒い灰などが残る現象が発生する可能性がある。
【0053】
したがって、かかる問題点を克服するために、本発明では、SRA後の皮膜密着性を向上させるようにチタニウムキレートを導入した。ここで、チタニウムキレートの例としては、トリエタノールアミンチタネート(triethanolamine titanate)、チタニウム2,2,2−ニトリロトリセタノレート(titanium 2,2,2−nitrorotrisethanoate)、有無機チタネート−多孔質複合物(organic−inorganic porous titanium compound)などを含むことができる。
したがって、金属リン酸塩とポリエステル樹脂とを含む被覆組成物を乾燥した際に、チタニウムキレートが金属リン酸塩とポリエステル樹脂間に特別な反応を起してより堅固な皮膜を形成する。
【0054】
このようなチタニウムキレートは、下記式2の(A)の構造式を有しており、被覆組成物中に、式2の(B)で表されるポリエステル樹脂が存在する場合、式2に示す特別な化学的反応を引き起こす。
また、チタニウムキレートは、チタニウムキレートと被覆組成物内の主要成分の一つである金属リン酸塩との反応によって、式3と式4とに示した化学反応を引き起こす。
【0055】
【化1】

【0056】
式1、式2、式3に示した一連の反応から、チタニウムキレートは、被覆組成物を乾燥する際に被覆組成物内に存在して、リン酸金属塩とポリエステル樹脂とを連結する架橋剤のとなる。
更に、チタニウムキレートは、式2の(A)のような構造式を有しており、式5の(B)に示すようなエポキシ樹脂が被覆組成物中に存在する場合、式5に示す特別な化学的反応を引き起こす。
【0057】
【化2】

【0058】
このように製造された被覆組成物を用いて皮膜を形成した場合、皮膜は均一かつ堅固に形成され、そしてSRA後にも、例えば黒い灰などの不純物がサンプルの表面に残る現象を防止することができるため、SRA後の皮膜密着性を向上させることができる。
【0059】
一方、本発明に係る絶縁皮膜を形成する方法は、被覆組成物、すなわち処理液を無方向性電気鋼板の表面に乾燥皮膜の厚さ、すなわち塗布量が片面当り0.5〜6.0g/mの範囲となるように塗布した後、温度350〜700℃の範囲で10〜50秒間加熱する段階を含む。
【0060】
ここで、塗布量が0.5g/m未満の場合、絶縁性が低いため、絶縁コーティング剤としての機能が不十分である。一方、塗布量が6.0g/mを超える場合、皮膜組成物の過剰な塗布により皮膜の乾燥が問題となり、又皮膜の自重により皮膜の表面に亀裂が入り、堅固な皮膜を形成して用いることが難しい。
【0061】
また、皮膜組成物の乾燥温度が350℃未満では、皮膜組成物内のリン酸塩が乾燥されないことがある。一方、乾燥が温度700℃を超える場合は、皮膜組成物内の有機エマルジョンの劣化により皮膜の色相が変化することがある。よって、皮膜組成物は上記の温度の範囲で乾燥させることが要求される。
このようにして、無方向性電気鋼板上に、密着性と耐食性に優れた絶縁皮膜が形成される。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0062】
ケイ素を0.1重量%含有し、厚さ0.50mmで面積が120×60mmの無方向性電気鋼板を試験材として用い、その試験材に0.5〜6.0g/mの範囲で各種処理液をコーティングバーを用いてで塗布した。
続いて、このように処理した試験材を650℃で数秒間乾燥させた後、空冷した。
その後、試験材の特性を評価するために、試験材を100%Nガス雰囲気の下、750℃で2時間熱処理して、応力除去焼鈍(SRA)を行った。試験材の絶縁性は、300PSI圧力の下で0.5Vの電圧および1.0Aの電流を印加したときの電流値を測定することにより評価し、その密着性は、SRA前後の試験材を10、20、30〜100mmの直径を有する円弧を形成させて180°曲げたときの皮膜剥離のない最小円弧直径を測定することにより評価し、皮膜の外観は、縞模様、光沢有無などを肉眼で観察することにより評価した。
【0063】
試験材の耐食性は、試験材を5%NaCl溶液に35℃で8時間浸漬して試片の錆発生有無を検査することにより評価した。実施例1では、試験材の耐食性を、錆発生面積が5%未満の場合には「優秀」、錆発生面積が20%未満の場合には「良好」、錆発生面積が20〜50%の場合には「やや不良」、錆発生面積が50%を超える場合は「不良」と表示した。
また、SRA後の皮膜強度は、SRA後の皮膜上に所定のサイズの粘着テープを被膜に貼着してから剥がしたときに、粘着テープに引き剥がされた皮膜の度合、及びテープの汚染の度合いをイメージプロセッシング技法を用いて定量化しパーセント表示にした。
【0064】
例えば、試験材の被膜強度が0と表示されれば、皮膜表面に皮膜剥離粉がないことを意味し、試験材の被膜強度が100と表示されれば、テープ面積の全体が皮膜剥離粉で汚染していることを意味する。したがって、被膜強度の数字が高いほど、皮膜強度が良くないことを示す。
【0065】
表1は金属リン酸塩と金属酸化物の種類による被覆組成物の耐食性を示す。クロム−フリー被覆組成物を製造するためには、金属リン酸塩とクロムの代わりに添加する金属酸化物の効果的な組み合わせによって耐食性と密着性を確保し、また、リン酸塩の粘着性および発粉現象を抑制しなければない。したって、表1は、これに適した成分組成を探すための試験結果を示している。
この際、リン酸塩溶液とポリエステル樹脂エマルジョンの重量比は、相互安定性が最良である1:2の比率に調整した。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)を混合して試験材の耐食性を評価した結果、第1リン酸アルミニウムと第1リン酸亜鉛を50:50の比率で混合し、固形分含有量60重量%、粘度30〜70cp、より好ましくは50cpであるリン酸溶液100gに、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムとを50:50の比率で混合した固体を約2g添加した試験材11が、リン酸塩による表面の粘着性及び粉末の沈殿の防止並びに耐食性の向上に適したものであることが分かった。
【0068】
また、表1から更に、SRA後の皮膜密着性および皮膜強度の進歩の度合いを調べるために、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを50:50の比率で混合した固体を約2gを、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)とを混合し、固形分含有量60重量%、粘度30〜70cp、より好ましくは50cpであるリン酸塩100gに添加して得た物質に、チタニウムキレートの量を変化させた物質を製造した。その上に、また、リン酸塩による粘着性を防止するためにコロイド状シリカの量も変化させた。
【0069】
表2は、チタニウムキレートとコロイダルシリカの量を変えて製造した被覆組成物を示す。次の表3は、このように製造された被覆組成物を2.5g/mの塗布量で塗布し、乾燥させた後の皮膜の特性を示している。
【0070】
【表2】

【0071】
特に、表3は、本発明で製造された被覆組成物、すなわち固形分20重量%のポリエステル樹脂エマルジョン200gを混合し、水酸化コバルト水酸化とストロンチウムが添加された、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)とを混合した固形分60重量%のリン酸塩100gに、ケイ酸アルミニウム0.5〜5.0gおよびチタニウムキレート0.05〜8.0gを、その添加量を変えて添加した試験材の耐食性および皮膜物性の変化を示している。
【0072】
【表3】

【0073】
表3に示すように、、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが添加された、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)との混合した固形分含量60重量%のリン酸塩100gに、ケイ酸アルミニウム1.0〜3.0gおよびチタニウムキレート0.1〜0.5gを添加した試験材11−8と試験材11−9は、耐食性および皮膜密着性が向上することが見出した。又、試験材11−8と試験材11−9は、既存のクロム含有タイプの被覆組成物と比較して同等以上の耐食性と皮膜密着性を有することを見出した。
【0074】
また、エポキシ樹脂を被覆組成物に使用した時の被覆組成物の特性を確認するために、表4に、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)を50:50の比率で混合した固形分含量60重量%で粘度30〜70cp、より好ましくは55cpであるリン酸塩溶液100gに、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを50:50の比率で混合した固体を約2g添加し、チタニウムキレート及びコロイド状シリカを添加量を変えて添加することにより製造した被覆組成物を示す。この際、リン酸塩溶液とエポキシ樹脂の重量比は、安定性の見地からで1:2.1の比率に調整した。
表5に、このように製造された被覆組成物を2.5g/mの塗布量で塗布し、乾燥した皮膜の特性を示した。
【0075】
【表4】

【0076】
特に、表5は、本発明で製造された被覆組成物、すなわち水酸化コバルト水酸化とストロンチウムが添加された、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)とを混合した固形分含量60重量%のリン酸塩100gに、固形分20重量%のエポキシ樹脂エマルジョン210gを混合し、+アルミニウム0.5〜5.0gおよびチタニウムキレート0.05〜8.0gを添加量を変えて添加した試験材の耐食性および皮膜物性の変化を示している。
【0077】
【表5】

【0078】
表5に示すように、水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムを添加した、第1リン酸アルミニウム(Al(HPO)と第1リン酸亜鉛(Zn(HPO)とを混合した固形分含量60重量%のリン酸塩100gに、ケイ酸アルミニウム1.0〜3.0gおよびチタニウムキレート0.1〜0.5gを添加した試験材11−8’と試験材11〜9’の、耐食性および皮膜密着性が向上することを見出した。又、この試験材11−8’と試験材11〜9’は、既存のクロム含有タイプの被覆組成物と同等以上の水準を有することを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、電動機や発電機などの鉄心に使用される無方向性電気鋼板の優秀な絶縁皮膜形成用被覆組成物と、該被覆組成物を用いて絶縁皮膜を形成する方法を提供する。本発明に係る被覆組成物は、関連産業広く利用される


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リン酸アルミニウム(monoaluminum phosphate)と第1リン酸亜鉛(monozinc phosphate)とが1:1の比率で混合された固形分含有量60重量%のリン酸塩溶液100gに対して、
水酸化コバルトと水酸化ストロンチウムが1:1の比率で混合された固体0.5〜5gと、
固形分含有量20重量%のポリエステル樹脂エマルジョンまたはエポキシ樹脂エマルジョン100〜300gと、
固形分含有量20重量%のケイ酸アルミニウム3〜10gと、
チタニウムキレート0.1〜6gと、
を含んでなり、応力除去焼鈍(SRA)後に優れた耐食性、皮膜密着性、及び皮膜強度を有することを特徴とする絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物。
【請求項2】
前記第1リン酸亜鉛は2.75Mまたは52.5%の固形分を含有し、前記第1リン酸アルミニウムと前記第1リン酸亜鉛との混合液は60重量%の固形分含有量および30〜70cpの粘度を含有し、前記ポリエステル樹脂エマルジョンは40000〜50000の分子量と、40〜50℃のガラス転移温度(Tg)と、20重量%の固形分含有量と、を有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物。
【請求項3】
前記第1リン酸亜鉛は2.75Mまたは52.5%の固形分を有し、前記第1リン酸アルミニウムと前記第1リン酸亜鉛との混合液は60重量%の固形分および30〜70cpの粘度を有し、前記エポキシ樹脂エマルジョンは10000〜20000の分子量と、50〜60℃のガラス転移温度(Tg)と、20重量%の固形分と、を有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物。
【請求項4】
前記チタニウムキレートは、トリエタノールアミンチタネート(triethanolamine titanate)、チタニウム2,2,2−ニトリロトリセタノレート(titanium nitrilotrisethanolate)と、有機−無機チタネート−多孔質複合物(organic−inorganic porous titanate compound)の中から選ばれた何れか一つであることを特徴とする請求項1に記載の絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂エマルジョンは、ビスフェノールがエポキシドと結合する構造を有し、前記構造の一部分がアクリル基で置換され、エマルジョン状態に維持されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁皮膜形成用クロム−フリー被覆組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のクロム−フリーの被覆組成物を用いて、無方向性電気鋼板上に塗布量が鋼板の片面あたり0.5〜6.0g/mの範囲で塗布し、塗布した前記皮膜組成物を350〜700℃で10〜50秒間処理することを特徴とする無方向性電気鋼板上に絶縁膜を形成する方法。


【公表番号】特表2009−545674(P2009−545674A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522700(P2009−522700)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002985
【国際公開番号】WO2008/016220
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(502258417)ポスコ (73)
【Fターム(参考)】