説明

耕耘装置

【課題】中空状ロータ軸の外周面とダストカバー外側縁の間を密閉し、中空状ロータ軸とダストカバーの間に土及び藁などが侵入するのを防ぐ。
【解決手段】センタードライブ構造の駆動ケース15を備え、この駆動ケースに駆動軸17を貫通させ、前記駆動軸の先端側にボス軸30を被嵌させ、また駆動軸17の軸芯線に対して軸芯線が交差するように、前記駆動ケースとボス軸間の駆動軸に中空状ロータ軸20を被嵌させ、ボス軸30と中空状ロータ軸とに耕耘爪23をそれぞれ設け、前記ボス軸と中空状ロータ軸との間に挟んで配置したダストカバー28にて、前記中空状ロータ軸の端部を閉塞するように構成してなる耕耘装置において、中空状ロータ軸20の内部を密封するように、ダストカバー28の外側縁を中空状ロータ軸の外周面に固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラクタなどに装備して圃場の耕土を耕起する耕耘装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンからのPTO動力を伝えるセンタードライブ構造の駆動ケースを備え、この駆動ケースに駆動軸を貫通させ、前記駆動軸の先端側にボス軸を被嵌し、前記駆動軸の軸芯線に対して軸芯線が交差するように、前記駆動ケースとボス軸間の駆動軸に中空状ロータ軸を被嵌させ、前記ボス軸と中空状ロータ軸とに耕耘爪をそれぞれ設け、また前記ボス軸と中空状ロータ軸との間に挟んで配置したダストカバーにて、前記中空状ロータ軸の端部を閉塞するように構成してなる耕耘技術がある (例えば、特許文献1) 。
【特許文献1】特開平8−289602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術は、前記駆動軸とダストカバーが面摺動する構造であったから、前記駆動軸とダストカバーの接触により、駆動軸とダストカバーの間に土及び藁などが侵入するのを防ぐことが難しい等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
然るに、本発明は、請求項1の如く、センタードライブ構造の駆動ケースを備え、この駆動ケースに駆動軸を貫通させ、前記駆動軸の先端側にボス軸を被嵌させ、また前記駆動軸の軸芯線に対して軸芯線が交差するように、前記駆動ケースとボス軸間の駆動軸に中空状ロータ軸を被嵌させ、前記ボス軸と中空状ロータ軸とに耕耘爪をそれぞれ設け、前記ボス軸と中空状ロータ軸との間に挟んで配置したダストカバーにて、前記中空状ロータ軸の端部を閉塞するように構成してなる耕耘装置において、前記中空状ロータ軸の内部を密封するように、前記ダストカバーの外側縁を中空状ロータ軸の外周面に固定したことを特徴とする。
【0005】
また、請求項2の如く、前記ダストカバーの外側縁に伸縮自在な蛇腹部を形成し、前記ダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを前記蛇腹部を介して連結したことを特徴とする。
【0006】
また、請求項3の如く、前記ダストカバーの外周を覆うオーバーダストカバーは弾性材にて構成され、ボス軸と中空状ロータ軸との間にダストカバー及びオーバーダストカバーを挟んで固定し、前記オーバーダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明は、前記中空状ロータ軸の内部を密封するように、前記ダストカバーの外側縁を中空状ロータ軸の外周面に固定したから、前記中空状ロータ軸の外周面とダストカバー外側縁の間が密閉され、中空状ロータ軸とダストカバーの間に土及び藁などが侵入するのを防ぐことができ、中空状ロータ軸とダストカバーの間に侵入する土及び藁などによって中空状ロータ軸の軸受部が損傷する不具合をなくしたり、中空状ロータ軸とダストカバーの外側での藁または草などの巻付きを低減できる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記ダストカバーの外側縁に伸縮自在な蛇腹部を形成し、前記ダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを前記蛇腹部を介して連結したから、前記蛇腹部の伸縮によって中空状ロータ軸の軸芯線の傾きを吸収でき、前記ダストカバーの外側縁を略同一円周の円形状に形成でき、例えば合成樹脂を材料にして前記ダストカバーを低コストで成形加工できる。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記ダストカバーの外周を覆うオーバーダストカバーは弾性材にて構成され、ボス軸と中空状ロータ軸との間にダストカバー及びオーバーダストカバーを挟んで固定し、前記オーバーダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを連結したから、前記オーバーダストカバーの変形によって中空状ロータ軸の軸芯線の傾きを吸収でき、前記オーバーダストカバーの外側縁を略同一円周の円形状に形成でき、例えば合成樹脂を材料にして前記オーバーダストカバーを低コストで成形加工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はトラクタの側面図、図2はトラクタの平面図であり、以下、本発明の実施の形態を、トラクタに適用した場合の図面について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1及び図2は、トラクタ1を示し、このトラクタ1は、走行機体2を左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持し、前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて前記両後車輪4及び両前車輪3を駆動することにより、前進走行するように構成され、前記走行機体2の上面には、操縦座席6と、前記両前車輪3を左右に動かすことによってかじ取りするようにした操縦ハンドル7とが設けられ、また、前記走行機体2の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して前記両後車輪4及び両前車輪3に伝達するためのミッションケース8が搭載されている。
【0012】
前記ミッションケース8の後部上面に、油圧式の作業機用昇降機構(図示せず)が着脱可能に取付けられる。前記走行機体2の後部には、前記作業機用昇降機構によって昇降動するロワーリンク9及びトップリンク10が設けられている。そして、ロワーリンク9及びトップリンク10に耕耘作業機11が連結され、耕耘作業が行われるように構成する。
【0013】
前記耕耘作業機11には、前記の各リンク9,10に連結する作業機フレーム12と、該フレーム12に固定されるロータリカバー13と、ロータリカバー13によって上面及び側面側を覆う耕耘ロータリ14とが備えられている。
【0014】
さらに、図3及び図4に示す如く、前記耕耘作業機11は、エンジン5からのPTO動力を伝えるセンタードライブ構造の駆動ケース15を備える。駆動ケース15の上部を作業機フレーム12に固定する。また、駆動ケース15の下部に左右の軸受ケーシング16を固定する。各軸受ケーシング16に駆動軸17を回転自在に軸支し、駆動ケース15の下部に駆動軸17を貫通させる。各軸受ケーシング16間の駆動軸17には、駆動スプロケット18が係合軸支される。前記駆動スプロケット18に駆動チェン19が張設され、エンジン5からのPTO動力によって駆動軸17が回転されるように構成している。
【0015】
さらに、前記軸受ケーシング16及び駆動軸17に被嵌する中空状ロータ軸20を備える。中空状ロータ軸20は、軸受ケーシング16にベアリング軸受21を介して回転自在に軸支されている。駆動軸17の軸芯線Aに対し、中空状ロータ軸20の軸芯線Bが交差するように、中空状ロータ軸20を傾斜させて設ける。そして、駆動ケース15側の中空状ロータ軸20の基端部に対して、中空状ロータ軸20の先端部を低くするように、中空状ロータ軸20が支持される。また、中空状ロータ軸20の外周面には、爪ホルダ22が溶接固定され、爪ホルダ22に耕耘爪23がボルト24にて締結されている。
【0016】
また、前記駆動軸17に係合させるクラッチ体25と、該クラッチ体25に中空状ロータ軸20を係合させるクラッチボール26とを備える。そして、前記クラッチ体25及びクラッチボール26を介して、駆動軸17に中空状ロータ軸20を連結して、一体的に回転するように構成している。また、中空状ロータ軸20の内周側と、クラッチ体25の外周側との間に、弾性シール材27を嵌着させている。
【0017】
さらに、前記中空状ロータ軸20の外側端部を覆うダストカバー28を備える。このダストカバー28の内側に弾性シール材27が配置される。また、ダストカバー28の略円形の外周縁には、伸縮自在な蛇腹部28aが連結されている。蛇腹部28aは、この端部が中空状ロータ軸20の外周面にビス29によって固定される。
【0018】
さらに、前記駆動軸17の先端側に被嵌するボス軸30を備える。ボス軸30にホルダ31が溶接固定される。該ホルダ31に耕耘爪32がボルト33によって締結されている。そして、駆動軸17にボス軸30がスプライン30a嵌合及びボルト(図示省略)にて固定された状態で、中空状ロータ軸20に固定されるクラッチ体25の端面と、ボス軸30の端面との間に、ダストカバー28の略円形の内周縁部28bが挟まれて固定される。
【0019】
上記の構成により、圃場で耕耘作業を行うとき、耕耘作業機11を着地させ、耕耘爪23,24を回転させ、土を耕起する。このとき、軸芯線Bが傾いている中空状ロータ軸20の回転に伴い、この中空状ロータ軸20外周の耕耘爪23により、センタードライブ構造の駆動ケース15の略真下の土が耕起され、駆動ケース15の周辺部に残耕が発生する不具合をなくしている。また、前記のように耕耘作業が行われるとき、中空状ロータ軸20の外周面と、ダストカバー28外側縁部の間が、該カバー28の蛇腹部28aによって密閉されるから、中空状ロータ軸20とダストカバー28の間に土または藁などが入り込むのが防止される。
【0020】
上記から明らかなように、センタードライブ構造の駆動ケース15を備え、この駆動ケース15に駆動軸17を貫通させ、駆動軸17の先端側にボス軸30を被嵌させ、また駆動軸17の軸芯線に対して軸芯線が交差するように、駆動ケース15とボス軸30間の駆動軸17に中空状ロータ軸20を被嵌させ、ボス軸30と中空状ロータ軸20とに耕耘爪23,32をそれぞれ設け、ボス軸30と中空状ロータ軸20との間に挟んで配置したダストカバー28にて、中空状ロータ軸20の端部を閉塞するように構成してなる耕耘装置において、中空状ロータ軸20の内部を密封するように、ダストカバー28の外側縁28aを中空状ロータ軸20の外周面に固定したから、中空状ロータ軸20の外周面とダストカバー28外側縁の間が密閉され、中空状ロータ軸20とダストカバー28の間に土及び藁などが侵入するのを防ぐことができ、中空状ロータ軸20とダストカバー28の間に侵入する土及び藁などによって中空状ロータ軸20の軸受部が損傷する不具合をなくしたり、中空状ロータ軸20とダストカバー28の外側での藁または草などの巻付きを低減できる。
【0021】
また、前記ダストカバー28の外側縁に伸縮自在な蛇腹部28aを形成し、ダストカバー28の外側縁と前記中空状ロータ軸20の外周面とを蛇腹部28aを介して連結したから、蛇腹部28aの伸縮によって中空状ロータ軸20の軸芯線Bの傾きを吸収でき、ダストカバー28の外側縁を略同一円周の円形状に形成でき、例えば合成樹脂を材料にしてダストカバー28を低コストで成形加工できる。
【実施例2】
【0022】
さらに、図5及び図6に示す如く、ダストカバー28の外側を覆う形状に構成されるオーバーダストカバー34を備える。オーバーダストカバー34は、例えば合成ゴムなどの弾性材にて構成される。またオーバーダストカバー34の外側縁部34aを、中空状ロータ軸20の外周面に、ビス29によって固定させる。そして、オーバーダストカバー34の内側縁部34bを、ダストカバー28とともに、中空状ロータ軸20とボス軸30との間に挟んで固定し、オーバーダストカバー34の内部にダストカバー28を密封するように構成している。
【0023】
上記の構成により、上記の実施例と同様に、圃場で耕耘作業を行うとき、軸芯線Bが傾いている中空状ロータ軸20の回転に伴い、この中空状ロータ軸20外周の耕耘爪23により、センタードライブ構造の駆動ケース15の略真下の土が耕起され、駆動ケース15の周辺部に残耕が発生する不具合をなくしている。また、前記のように耕耘作業が行われるとき、中空状ロータ軸20の外周面と、ダストカバー28外側縁部の間が、オーバーダストカバー34によって密閉されるから、中空状ロータ軸20とダストカバー28の間に土または藁などが入り込むのが防止される。
【0024】
上記から明らかなように、前記ダストカバー28を覆うオーバーダストカバー34は弾性材にて構成され、ボス軸30と中空状ロータ軸20との間にダストカバー28及びオーバーダストカバー34を挟んで固定し、前記オーバーダストカバー34の外側縁34aと前記中空状ロータ軸20の外周面とを連結したから、前記オーバーダストカバー34の変形によって中空状ロータ軸20の軸芯線Bの傾きを吸収でき、前記オーバーダストカバー34の外側縁34aを略同一円周の円形状に形成でき、例えば合成樹脂を材料にして前記オーバーダストカバー34を低コストで成形加工できる。
【0025】
さらに、図7は、サイドドライブ構造の耕耘ロータリ14の部分図である。サイドドライブ構造の駆動ケース35を備える。駆動ケース35の下部に軸受体36を固定する。該軸受体36にロータ軸37を回転自在に軸支し、駆動ケース35の下部に駆動軸37を配設する。また、駆動ケース35内部の駆動軸37には、駆動スプロケット38が係合軸支される。駆動スプロケット38に駆動チェン39が張設され、エンジン5からのPTO動力によって駆動軸37が回転されるように構成している。
【0026】
さらに、前記駆動ケース35外部に駆動軸37を突出させる。この駆動軸37の端部に受け板40を溶接固定する。また、駆動軸37の端部に円筒形の爪軸41端部を被嵌させる。爪軸41端部にフランジ42を溶接固定する。そして、受け板40と、フランジ42とを、ボルト43によって締結し、駆動軸37に爪軸41を固定する。なお、上記実施例と同様に、爪軸41にホルダ31が溶接固定される。該ホルダ31に耕耘爪32がボルト33によって締結され、複数の耕耘爪32が爪軸41に配設されている。
【0027】
また、前記フランジ42には、側部耕耘爪44がボルト45によって締結される。このように、側部耕耘爪44をフランジ42に固定した場合、仮想線で示すように側部耕耘爪をホルダに固定させる従来構造と比べると、フランジ42に固定した側部耕耘爪44と、駆動ケース35との間隔Lを狭く形成できる。したがって、駆動ケース35と側部耕耘爪44との間に巻き込む草及び土を低減でき、駆動軸37のダストカバー45取付け部など、駆動軸37回転部に巻き付く草または土を低減でき、草が巻き付いても容易に除去でき、巻き付いた草が発熱したり炭化するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】蛇腹部を有するダストカバーを取り付けた説明図である。
【図4】図3の拡大説明図である。
【図5】オーバーダストカバーを取り付けた説明図である。
【図6】図5の拡大説明図である。
【図7】側部耕耘爪を設ける説明図である。
【符号の説明】
【0029】
15 駆動ケース
17 駆動軸
20 中空状ロータ軸
23 耕耘爪
28 ダストカバー
28a 蛇腹部
30 ボス軸
32 耕耘爪
34 オーバーダストカバー
34a オーバーダストカバーの外側縁
A ロータ軸の軸芯線
B 中空状ロータ軸の軸芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタードライブ構造の駆動ケースを備え、この駆動ケースに駆動軸を貫通させ、前記駆動軸の先端側にボス軸を被嵌させ、また前記駆動軸の軸芯線に対して軸芯線が交差するように、前記駆動ケースとボス軸間の駆動軸に中空状ロータ軸を被嵌させ、前記ボス軸と中空状ロータ軸とに耕耘爪をそれぞれ設け、前記ボス軸と中空状ロータ軸との間に挟んで配置したダストカバーにて、前記中空状ロータ軸の端部を閉塞するように構成してなる耕耘装置において、前記中空状ロータ軸の内部を密封するように、前記ダストカバーの外側縁を中空状ロータ軸の外周面に固定したことを特徴とする耕耘装置。
【請求項2】
前記ダストカバーの外側縁に伸縮自在な蛇腹部を形成し、前記ダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを前記蛇腹部を介して連結したことを特徴とする請求項1に記載の耕耘装置。
【請求項3】
前記ダストカバーの外周を覆うオーバーダストカバーは弾性材にて形成され、ボス軸と中空状ロータ軸との間にダストカバー及びオーバーダストカバーを挟んで固定し、前記オーバーダストカバーの外側縁と前記中空状ロータ軸の外周面とを連結したことを特徴とする請求項1に記載の耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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