説明

耳カラー

【課題】 本発明は、耳垢の掃除や耳の治療などの際に使用することにより、頭髪が耳の前面に垂れ下がって覆い被さるのを防止して、掃除や治療作業の妨げにならない利便性を確実に得ることのできる新しい使い勝手の耳カラーを提供すると共に、その使用に際しても人に苦痛や不安を与えることがなく、しかも容易かつ簡便に耳殻に着脱することができる耳カラーを提供することである。
【解決手段】 適度な可撓性を有する素材により耳カラー本体を耳殻より適宜大きな形状の平板状もしくは、耳殻に沿う中空の載頭円錐体形状になし、この耳カラー本体には、耳殻の根元形状に適合可能な係止穴を設けると共に、かつこの係止穴から本体外周縁に達するスリットを設け、このスリットを介して耳殻に対し耳カラー本体を着脱可能なように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の耳を覆うような長髪などの場合に、一般家庭において外耳道内の耳垢の掃除をするときや、耳鼻科専門病院や医療機関などにおいて内耳の疾患、中耳炎などの病気の治療を必要とする際に、長髪が耳に覆い被さって掃除や治療を困難にすることが多いので、耳殻より適宜大きな形状の平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状の耳カラー本体において、耳殻の根元形状に適合可能な係止穴を設けると共に、この係止穴から本体外周縁に達するスリットを設け、このスリットを介して耳カラー本体を耳殻に対し着脱自在に構成したことを特徴とする新たな用途を提供する耳カラーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に知られているこの種のものは、防寒の目的あるいは洗顔もしくは頭髪を洗う時に洗剤や薬剤などが外耳道に侵入しない様にする目的のために使用されている耳カバーがほとんどであって、耳の全体を外側から覆い隠すものが主流であり、耳の治療などのために耳殻を露出させる一方で、耳に覆い被さる頭髪を隔絶するような新たな機能を果たすものは、未だ提案されていなかった。
【0003】
そして、従来の耳カバーとしては、例えば、耳殻に取付ける耳カバー裏地と相まって耳を外側から覆う耳カバー表地とからなる耳カバーの提案(特許文献1)や、耳を蓋う表地と裏地との間にあって形状を保つための挿入体を備えてなる耳カバーの提案(特許文献2)、あるいは耳カバーの脱落を防止する様に工夫されたシート状の貼付式イヤーカバー(特許文献3)などが知られている。
更に、耳カバーではないが、犬や猫の動物の頭部を拘束して、動物が傷口などを舐められない様にし、本来の治療効果を上げるためのラッパ状の首カラーの提案(特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3044343号公報
【特許文献2】特開2005−319005号公報
【特許文献3】特開2008−029791号公報
【特許文献4】特開2007−007250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2におけるような耳カバーにあっては、前者は耳介挿入口3を有する耳カバー裏地2と、耳の外側を蓋う耳カバー表地1とを縁取り5によって一体化され、耳介挿入口3から耳殻を小さく折りたたむ様にしてくぐらせ、耳に被せて耳の外側を覆っているので、挿入口3をくぐらせる際に耳殻を小さく変形させる苦痛を伴い、洗剤などが耳の中に侵入するのを防止できても、言うまでもなく長髪が耳の前面に垂れ下がって覆い被さることを防止することができないものであるので、耳垢の掃除や耳の治療のためには全く用を成さずその目的効果を異にする。
また同様に、後者の耳カバーも耳挿入孔20を開けた第一布部材10と、孔の開いていない外側の第三布部材12等により開口部31を有する挿入体30を包み込み、耳カバーとしての形状を保ちつつ上記挿入孔20及び開口部31から耳殻を小さく折りたたむようにしてくぐらせ、耳に被せて耳の外側を覆っているので、挿入孔20及び開口部31をくぐらせる際に耳殻を小さく変形させる苦痛を伴い、洗剤などが耳の中に侵入するのを防止できても、長髪が耳の前面に垂れ下がって覆い被さることを防止することができないものであるので、耳垢の掃除や耳の治療のためには全く用を成さないものであった。
【0006】
また、特許文献3のようなシート状の貼付式イヤカバーの場合も、切り込み1,1aによりお皿状のシートの外形を耳の大きさに合わせて変え、外側から耳の全体を覆うように剥離紙3,3a,3b,3cを剥がして粘着面4,4aにより耳殻に貼着するので、貼着に際し耳殻を小さく折りたたむなどの苦痛を強いることはないが、皮膚の弱い人には粘着剤に基因したかぶれ等の心配があり、加えて衛生上の観点から一回毎の消耗品となるため不経済であるばかりでなく、洗剤などの侵入は防止できても、言うまでもなく長髪が耳の前面に垂れ下がって覆い被さることを防止することができないものであるので、耳垢の掃除や耳の治療のためには全く用を成さず、その目的効果を異にすること前記特許文献1及び2と同様である。
【0007】
更に、耳カバーではないが、特許文献4に示すような犬猫等の動物は、本能的に傷口等を舐める習性があるので、治療の際に動物に舐められないようにするために、顔部分を拘束するための拘束用カラー1、1−1、1−3、1−4にあっては、扇形の型紙8、8−1、8−2をラッパ状に動物の首部に巻きつけて固定することにより、拘束用カラーとなしているものであって、本発明の耳カラーとは本質的にその技術分野のみならず、利用目的、構成及び作用効果を全く異にするものである。
【0008】
そこで、本発明は、上記不具合を改善し解決すると共に、今までにない新たな目的と効果を提案し提供するために創案されたものであって、その目的とするところは、耳を覆うような長髪などの場合であっても、外耳道内における耳垢の掃除をするときや、内耳及び中耳などにおける病気の治療を必要とする際に使用することにより、長髪が耳に覆い被さって邪魔になり掃除や治療を困難にすることがないように、耳殻周囲から頭髪を隔絶することができると共に、使用の際も耳殻に対して耳カラー本体を容易に着脱可能であり、しかも着脱に当たり耳殻を小さい穴にくぐらせることがないので、耳殻を小さく折り曲げるときの苦痛を伴なうことがなく、しかも安心して快適に使用できる等、種々の効果を安価かつ簡便に成し得る新たな用途と効果を果たす耳カラーを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、適度な可撓性を有する素材により耳カラー本体を耳殻より適宜大きな形状の平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状になし、この耳カラー本体には、耳殻の根元形状に適合可能な係止穴を設けると共に、この係止穴から本体外周縁に達するスリットを設け、このスリットを介して耳カラー本体を耳殻に対し着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0010】
上記した目的を達成するため、耳カラー本体は、適度な可撓性を有する合成樹脂または合成ゴム、もしくは厚手の紙や布などの肌や皮膚に優しい材料により形成され、しかも係止穴の口縁部は肉厚に縁取りされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、請求項1に記載の如く、適度な可撓性を有する素材により耳カラー本体を耳殻より適宜大きな形状の平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状になし、この耳カラー本体には、耳殻の根元形状に適合可能な係止穴を設けると共に、この係止穴から本体外周縁に達するスリットを設け、このスリットを介して耳カラー本体を耳殻に対し着脱自在に構成したので、耳殻よりも小さな係止穴であっても耳殻を折り曲げたりすることなくスリットを介し通り抜けさせて耳カラー本体を装着することができ、人に苦痛を強いることなく容易かつ迅速に着脱が可能であり、しかも、取付けるための特別な部品などを一切必要とすることなく耳カラー自体で装着保持することができ、頭髪が耳に覆い被さる不具合を確実に防止できて、耳垢の清掃や耳に対する治療などの作業を行う上での利便性の提供とこれを維持できるなど大きな作用効果を有する。
【0012】
また、本発明の耳カラー本体は、請求項2に記載の如く、適度な可撓性を有する合成樹脂または合成ゴム、もしくは厚手の紙や布などの肌や皮膚に優しい材料により形成され、しかも係止穴の口縁部は肉厚に縁取りされているので、耳殻の根元付近に対する当接面がエッジ当たりでなく広いため、人に負担を掛けたり不安を抱かせることなく安心して快適に使用できるなど、簡便にして優れた効果を発揮するものであり、その実用的効果が大きいものである。
その上、保管に際しても耳カラー本体が耳殻よりも適宜大きな形状(円形または楕円形、或いは方形であっても構わない)の平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状であるので、これ等を重ねて保管することができ、嵩張ることなく小スペースの下に保管できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における耳カラー本体の説明用正面図並びに基本的な着脱要領を示す説明図である。
【図2】本発明の図1の実施の形態における耳カラー本体のX−X線方向よりの説明用断面図である。
【図3】本発明の耳カラー本体の耳殻への装着使用状態を表す説明図である。
【図4】本発明の耳カラー本体の別の実施の形態を表す説明用正面図である。
【図5】本発明の耳カラー本体の別の実施の形態を表す説明用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、一実施の形態における耳カラー本体の基本的な着脱要領及び全体を示す説明用正面図であり、図2はそのX−X線に沿う説明用断面図である。
【0015】
図3は、耳カラー本体を人に装着した使用状態を表す説明図であり、図4及び図5は別の実施形態における耳カラー本体の正面図、及びその説明用側面図である。
【0016】
図1、図2に示すように、一実施の形態における耳カラー本体1は、適度な可撓性を有する合成樹脂または合成ゴム、もしくは厚手の紙や布などの肌や皮膚に優しい素材により、人の耳殻より適宜大きな形状(円形または楕円形、或いは方形など使い勝手の良い形状を選択すればよいが、図示実施例の場合は楕円形)の平板状に成形され、この耳カラー本体1には、耳殻の根元形状に適合可能な楕円または繭形の様な係止穴2を偏芯配置すると共に、この係止穴2から偏芯側の本体外周縁に達するスリット3を設けたのである。なお、係止穴2は偏芯配置する必然性はないが、耳カラー本体1の装着脱の際に、耳殻をくぐらせるスリット3が短い方が作業が楽にできるメリットがある。
そして、この図示の実施例の場合は、係止穴2の口縁部において少し肉厚の縁取り部4を特別に形成してなるものである。
【0017】
従って、図3に示すように耳カラー本体1を装着する際には、図1に鎖線で示す如くスリット3を境に互いに反対のA方向及びB方向に捻ることにより、スリット3の開口幅を人の耳殻5の肉厚以上になるまで広げて、耳殻5を折り曲げたりすることなく挿通させることができ、更に係止穴2を耳殻5の根元に位置する様に合わせることにより、容易に装着保持することができるものであり、しかも、装着保持するためのフックやボタンなどの取付け部品が一切不要で、耳カラーそのものだけで装着保持することができるものである。
このときの頭髪6(特に側頭部の長髪)は、図3に示す如く耳カラー本体1に遮られて耳殻5を覆うように垂れ下がることは全くなく、この状態で一般家庭においては外耳道内の耳垢の清掃をスムースに行うことができ、また専門の病院や医療機関においては内耳や中耳部における病気の治療などをスムースに行うことができるのである。
【0018】
なお、上記本発明の耳カラー本体1の装着使用に際し、係止穴2の口縁部には少し肉厚の縁取り部4を特別に形成してあるので、耳殻5の根元付近に対する当接面が広く当たりエッジ状に集中して当たることがなく、緩和されたソフトな感触を与えることができ、人に安心と優しさを装着時に提供することができるものである。
そのため、長時間の装着に際しても痛くなるようなことはなく快適に装着使用することが出来るものであるが、耳カラー本体1の素材そのものが柔軟であったり、本体そのものの厚さを軽量状態のまま厚くできる素材の場合には、特別に肉厚の縁取り部4を設ける必要はないが、全体の軽量化のためには部分的な肉厚の縁取り構造とするのが好ましい。
【0019】
また、耳カラー本体1を取外すときには、装着時と同様に耳カラー本体1のスリット3の辺縁を互いに逆方向に、もしくは何れか片方を撓ませ得る自由度のある方向に捻ることによりスリット3の間口を広げ、開口幅の広くなったスリット3を介して耳殻5から耳カラー本体1を容易に取り外すことができるものであることは言うまでもない。
【0020】
また、本発明の別の実施形態について、図4、図5に基づいて説明する。この場合の耳カラー本体1aにおいては、適度な可撓性を有する素材により耳カラー本体1aを耳殻5に沿うような中空の載頭円錐体形状に形成し、かつその小径頭部側を大径底部側に対して好ましくは偏芯配置して、この小径頭部に耳殻5の根元形状に適合可能な係止穴2aを設けると共に、この係止穴2aから偏芯側の短軸母線に沿うようスリット3aを設け、このスリット3aを介して耳カラー本体1aを耳殻5に対し着脱自在に構成したものである。即ち、この実施の形態によれば、耳カラー本体1aを耳殻5に沿うような中空の載頭円錐体形状に形成してあるので、耳殻5への本体装着使用時(図3参照)において、頭髪6の多い女性等の場合であっても、側頭部の頭髪6のボリュームにより耳カラー本体1aが耳殻5側に押されて外れる様なことがなく、安心して初期の目的を果たし継続使用することができるものである。
なお、その他の効果や着脱要領などは、先の図1、図2、図3のものと変わらないので、説明を省略する。
【0021】
更に、本発明の耳カラー本体1、1aは、その素材について言えば、着脱に便利なように適度な可撓性を有する素材であれば、合成樹脂に限定されるものではなく、合成ゴムまたは少し厚手の紙や布などの使用も可能であり、また、係止穴2,2aの形状や偏芯の程度についても図示実施例に限られるものではなく、更にその使用分野についても、一般家庭における耳垢掃除や、専門の病院、医療機関などにおける耳の病気治療などに特定されるものでもなく、例えば、美容室などにおいて頭髪を染める際に髪に塗布する染色液が耳に付着しない様に、本発明の耳カラーを使用して頭髪から耳を区画するように美容分野において利用しても差し支えない。
【0022】
なお、上述したところでは、本発明の耳カラーを構成する本体の素材の違いや、円形または楕円形或いは方形などの平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状などの本体形状の違いについて、それぞれ異なる実施例を説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば中空の載頭円錐体の小径頭部側は、これを塞がれた頂面となしてこの面に係止穴を穿孔しても良く、その他これらを種々組み合わせて実施することが可能であり、更に図示してないが、耳カラー本体にキャラクターの絵柄を印刷したり、カラフルにするなどして子供が楽しめる様にすることは自由である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示され、または説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は主として頭髪が耳殻を覆うように垂れ下がるのを防止する機能を発揮する耳カラーであるので、一般家庭に限らず専門病院や医療機関などの産業分野でも利用される。
【符号の説明】
【0024】
1,1a 耳カラー本体
2,2a 係止穴
3,3a スリット
4 肉厚の縁取り部
5 耳殻(耳)
6 頭髪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適度な可撓性を有する素材により耳カラー本体を、耳殻より適宜大きな形状の平板状もしくは、耳殻に沿うような中空の載頭円錐体形状になし、この耳カラー本体には、耳殻の根元形状に適合可能な係止穴を設けると共に、この係止穴から本体外周縁に達するスリットを設け、このスリットを介して耳カラー本体を耳殻に対し着脱自在に構成したことを特徴とする耳カラー。
【請求項2】
耳カラー本体は、適度な可撓性を有する合成樹脂または合成ゴム、もしくは厚手の紙や布などの肌や皮膚に優しい材料により形成され、しかも係止穴の口縁部は肉厚に縁取りされていることを特徴とする請求項1に記載の耳カラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56061(P2013−56061A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196579(P2011−196579)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(310004987)