説明

耳介装着体及びイヤホン装置

【課題】耳介に対し安定した状態でしかも良好な装着感をもってイヤホン装置の装着を行う。
【解決手段】音響管2と耳介装着体53とを備えるイヤホン装置において、音響管2は、一端部に耳介挿入部5が形成され、耳介装着体53は、耳介挿入部5の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部54と、取付け部54の基端部側に形成される耳介挿入規制部52とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、耳介に装着される音響管にスピーカユニットから再生音を放射し、この音響管を介してスピーカユニットから放射される再生音の聴取を行うようにしたイヤホン装置の音響管に取り付けられる耳介装着体及びこの耳介装着体を取り付けたイヤホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部や耳介に装着され、スピーカユニットから放射される再生音を直接耳道内に放射して聴取するようにしたヘッドホン装置やイヤホン装置が用いられている。
【0003】
この種のヘッドホン装置やイヤホン装置は、スピーカユニットの振動板を耳道内の鼓膜に対向させて頭部や耳介に装着されるものであるので、耳道内に放射されたスピーカユニットからの再生音が鼓膜によって反射され、スピーカユニット側に入射される。そして、鼓膜によって反射された反射音とスピーカユニットから放射される再生音が互いに干渉し合う等して影響し合うことにより、聴取される再生音の音質等の再生特性を劣化させてしまう。
【0004】
このような鼓膜によって反射される反射音の影響をなくし、良好な再生特性をもってスピーカユニットから放音される再生音の聴取を可能となす音響再生装置が提案されている。この音響再生装置は、一端部を耳道に挿入される音響管の中途部にスピーカユニットを取り付け、スピーカユニットから放射される再生音を音響管内に入射させ、この音響管を介して再生音の聴取を行うようにしたものである。このように構成された音響再生装置は、鼓膜から反射される反射音が、音響管に入射されることによって減衰されてなる。従って、鼓膜から反射される反射音によるスピーカユニットから放射される再生音に対する影響を抑制し、再生音に歪み等を発生させることなく明瞭な音質を有し良好な再生特性をもって再生音の聴取が可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−305081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、音響管を備えた音響再生装置において、鼓膜から反射される反射音の影響をなくすためには、反射音を音響管内で確実に減衰させる必要がある。鼓膜からの反射音の確実な減衰を図るためには、音響管は、一定の長さを必要とする。このような一定の長さを有する音響管を真っすぐに延びたままの状態で耳介に装着することは極めて困難である。すなわち、音響管が耳介から大きく突出してしまい、安定して耳介に装着することができない。
【0007】
また、鼓膜から反射される反射音を音響管の耳道への挿入端で反射されることなく音響管内に導くためには、音響管の内径を耳道の径と略等しくする必要がある。このように、内径を耳道の径と略等しくした音響管を合成樹脂により形成した場合、内径が4mm程度であって、外径が略6mm程度に形成される。このように、装着される耳介に比し比較的太い音響管を耳介から突出した状態で装着するように構成した音響再生装置にあっては、装置自体が極めて大型化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、耳介から大きく突出させることなく、耳介に安定して装着することを可能となす音響管を備えたイヤホン装置に用いられる耳介装着体及びこの耳介装着体を用いたイヤホン装置を提供すること技術課題とする。
【0009】
また、本発明は、イヤホン装置を良好な装着感をもって装着可能となす耳介装着体及びこの耳介装着体を用いたイヤホン装置を提供することを技術課題とする。
【0010】
さらに、本発明は、外部環境からの雑音の影響を受けることなく、イヤホン装置に用いられるスピーカユニットからの再生音を良好な再生特性をもって聴取することを可能となす耳介装着体及びこの耳介装着体を用いたイヤホン装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したような技術課題を達成するための提案される本発明に係るイヤホン装置は、音響管と耳介装着体とを備えるイヤホン装置において、上記音響管は、一端部に耳介挿入部が形成され、上記耳介装着体は、上記耳介挿入部の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部と、上記取付け部の基端部側に形成される耳介挿入規制部とを有する。
【0012】
また、本発明に係る耳介装着体は、イヤホン装置の音響管の一端部に形成される耳介挿入部の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部と、上記取付け部の基端部側に形成される耳介挿入規制部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る耳介装着体及びこの耳介装着体を用いたイヤホン装置は、耳介挿入部の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部の基端部側に形成される耳介挿入規制部が設けられているので、耳介装着体が、耳道に嵌合するようにして装着された際に、良好な装着感を持って装着でき、耳介に対し、安定した装着状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る耳介装着体及びこの耳介装着体を用いるイヤホン装置の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る耳介装着体が用いられるイヤホン装置の一例を図1乃至図4を参照して説明する。このイヤホン装置は、光ディスクプレーヤ等の音声信号源から入力される音声信号を再生するスピーカユニット1と、このスピーカユニット1から放射される再生音を耳介の耳道に導く音響管2と、外部環境の音を集音するマイクロホンユニット3と、スピーカユニット1及びマイクロホンユニット3を収納するハウジング4とを備えている。
【0016】
スピーカユニット1から放射される再生音を耳介aの耳道bに導く音響管2は、図3及び図4に示すように、装着時に耳介a内に挿入され先端部側を耳道bに臨まされる耳介挿入部5を一端側に有し、この耳介挿入部5に対し折り曲げ部6を介して連設され耳介aの外表面に沿って耳介aの下方に向かって延在する管本体7を備えている。
【0017】
そして、音響管2の一端部に構成される耳介挿入部5は、先端部側を耳道bに臨ませて耳介aに装着したとき、管本体7が連設される折り曲げ部6が耳介aの表面に臨むに足る長さに形成される。また、管本体7は、耳介挿入部5に対し略90度若しくは90度より稍々小さい鋭角な角度を有する折り曲げ部6を介して連設されている。この管本体7の耳介挿入部5が連設される側と対向する他端部8側は、折り曲げ部6側に向かって立ち上がるようにU字状に折り曲げられている。なお、他端部8側は、耳介挿入部5の突出方向と逆方向に折り曲げられている。このように、耳介aの外部に延在する管本体7をU字状に折り曲げることにより、音響管2の長さを十分に大きくしながら占有面積を小さくすることができる。
【0018】
また、装着時に耳介a内に挿入され、耳道bの入り口に先端部を臨ませる耳介挿入部5の先端部5a側は、図5に示すように、管本体7の軸方向Oに直交する平面S1に対し略10度の傾斜角θ1をもって上方に向かって傾斜させるとともに、図6に示すように、管本体7の軸方向Oに平行な面S2に対し略10度の傾斜角θ2をもって水平方向に傾斜して形成されている。このように耳介挿入部5の先端部5aを管本体7に対し傾斜させることにより、耳介aの表面に沿って管本体7を延在させながら、耳介aの表面に対し傾斜して頭部の内部に延長する耳道bに平行に挿入させることができる。
【0019】
音響管2は、耳介挿入部5の先端部を耳道bの入り口に臨ませて耳介に装着されたとき、鼓膜から反射させる反射音が耳介挿入部5の先端部等によって反射されることなく入射されるようになすため、図5に示すように、標準的な人の耳道bの径r1に略等しい内径r2を有するように形成されている。なお、音響管2の外径r3は、略6mmとして形成されている。これは、合成樹脂を成形して形成される音響管2の機械的な強度を保証するに足る肉厚をもって形成するためである。
【0020】
音響管2に設けられる耳介挿入部5の先端部には、図1及び図2に示すように、耳介aへの装着時に、耳道bの入り口に嵌合し、耳道bを塞ぐとともに音響管2の耳介aへの安定した装着を実現するゴム等の弾性を有する材料によって形成された耳介装着体10が取り付けられている。
【0021】
耳介装着体10は、図7に示すように、耳介挿入部5の先端部の外周側に嵌合する筒状の取付け部11と、この取付け部11の外周側に形成された耳道嵌合体12とを備えている。この耳道嵌合体12は、取付け部11の先端部に一端部を連結し、取付け部11の基端部側に向かって折り曲げるようにして湾曲され、外方に向かって膨出するように形成されて取付け部11の外周側に形成されている。すなわち、取付け部11の先端部から折り返されるようにして形成された折返し部としての耳道嵌合体12は、耳道bへの挿入側となる一端部を取付け部11への連結部となし、開口部とされた他端側を自由端として取付け部11の外周側を覆うようにして略球状に膨出するようにして取付け部11と一体に形成されている。耳道嵌合体12は、一端部を取付け部11への連結部となし、他端側を自由端としてゴム等の弾性を有する材料により形成されてなるので、取付け部11への連結部を挿入端として耳道bに嵌合したとき、耳道bに倣って容易に弾性変形して耳道bに嵌合される。
【0022】
したがって、耳介装着体10は、取付け部11の先端部に折り曲げ部を介して連続し、漸次膨出する略球状をなす径大部と、この径大部に連なって漸次先細りとなり、先端に開口部を有する径小部からなる折返し部としての耳道嵌合体12を備える。
【0023】
そして、取付け部11の内周面には、耳介挿入部5の外周面に突設した係合突起13が相対係合する係合溝14が設けられている。耳介装着体10は、係合溝14を係合突起13に相対係合させて取付け部11を耳介挿入部5に嵌合することにより、耳介挿入部5に対する取付け位置の位置決めが図られ、耳介挿入部5からの抜け止めが図られて取り付けられる。
【0024】
ところで、耳道嵌合体12は、耳道bに嵌合されたときに、耳道bを密閉し得るように耳道bに倣って容易に弾性変形することが望ましい。一方、耳介装着体10の取付け部11は、耳介装着体10を耳介挿入部5に確実に支持させるためのものであるので、大きな弾性力を有するように形成することが望ましい。そこで、耳道嵌合体12は、容易に弾性変形し得る薄肉に形成されるのに対し、取付け部11は、十分な嵌合保持力を有するように耳道嵌合体12に比し肉厚に形成されてなる。
【0025】
また、耳介装着体10の耳道嵌合体12と取付け部11とは、それぞれの機能を十分に発揮し得るように異なる材料を用いて一体に形成してもよい。例えば、耳道嵌合体12を容易に弾性変形し得るシリコーンゴムにより形成し、取付け部11を大きな弾性力を有するゴム等の弾性材料により形成する。
【0026】
また、音響管2の折り曲げ部6の近傍には、図3に示すように、スピーカユニット1から放射される再生音を入射させるための再生音入射孔15が穿設さている。スピーカユニット1は、再生音入射孔15の一側縁から突設されたスピーカ取付け片16を介して取り付けられる。
【0027】
このスピーカ取付け片16を介して取り付けられるスピーカユニット1は、振動板とこの振動板を駆動する磁気回路部とからなる動電型のスピーカ17をカプセル18に収納して構成されている。このカプセル18の前面側は、図4に示すように、スピーカ17を構成する円弧状に膨出する振動板に対応して均一に湾曲して膨出する湾曲面18aとなされている。また、カプセル18の前面には、スピーカ17から放射される再生音を外部に放射させるための複数の放音孔19が穿設されている。さらに、カプセル18の背面側にも、スピーカ17から放射される再生音を外部に放射させるための複数の放音孔20が穿設されている。
【0028】
上述のように構成されたスピーカユニット1が取り付けられるスピーカ取付け片16は、図3及び図4に示すように、耳介挿入部5の延長方向と略平行に折り曲げ部6の近傍から突設されている。このスピーカ取付け片16は、スピーカユニット1の外形形状に対応する大きさの円盤状に形成され、中央部にカプセル18の前面側の湾曲面18aに対応する凹湾状をなすスピーカユニット取付け部22が形成されている。このスピーカユニット取付け部22の音響管2への連結部側には、再生音入射孔15に連通する連通部23が切欠き形成されている。そして、スピーカユニット1は、カプセル18の湾曲面18aをスピーカユニット取付け部22に嵌合するようしてスピーカ取付け片16上に配設される。スピーカ取付け片16上に配設されたスピーカユニット1は、接着剤や両面接着テープ介して湾曲面18aをスピーカ取付け片16に接合されて取り付けられる。このように、スピーカユニット1は、カプセル18の前面側の湾曲面18aをスピーカユニット取付け部22に接合させて取り付けられてなるので、取付け片16に対する強固な取付けが保証される。
【0029】
上述のようにスピーカ取付け片16に取り付けられたスピーカユニット1は、図9に示すように、カプセル18の前面側に形成された複数の放音孔19の一部、例えば2つの放音孔19が連通部23に対向する。そして、スピーカから放射される再生音は、連通部2
3に対向する放音孔19及び連通部23を介して音響管2に入射される。
【0030】
また、音響管2のU字状に折り曲げられた他端部8側には、図5に示すように、鼓膜に反射されて音響管2内に入射された反射音を吸音する吸音材25が配設され、他端部8は、音の無反射端となされている。この吸音材25は、多孔質の発泡ウレタンを成形して形成されてなるものであって、先端先細り状の略円錐状に形成されている。そして、吸音材25は、先端先細りの先端側を挿入端として音響管2内に挿入され、他端部8に嵌合配設れる。なお、吸音材25は、配設位置を固定するため、必要に応じて接着剤により音響管2内に接合される。
【0031】
そして、音響管2の他端部8には、外部環境の音を集音するマイクロホンユニット3がマイクロホン支持部材26を介して取り付けられる。ここに用いられるマイクロホンユニット3は、円筒状をなすマイクカプセル27内にマイクロホン素子を収納して構成されている。マイクカプセル27のマイクロホン素子の振動板が対向する集音面側には、図3に示すように、複数の集音孔28が穿設されている。外部環境の音は、集音孔28を介してマイクカプセル27に入射され、マイクロホン素子によって集音される。
【0032】
マイクロホンユニット3を音響管2の他端部8に取り付けるマイクロホン支持部材26は、音響管2の他端部8に嵌合される嵌合突部29と、この嵌合突部29の先端に一体に形成された円弧状をなすマイクロホン保持部30とから構成されている。マイクロホンユニット3は、円筒状をなすマイクカプセル27をマイクロホン保持部30に嵌合させることによってマイクロホン支持部材26に保持される。このマイクロホン支持部材26は、嵌合突部29を音響管2の他端部8に嵌合させることによって、マイクロホンユニット3を音響管2に取り付けられる。
【0033】
ところで、マイクロホンユニット3は、図8に示すように、取付け片16を介して音響管2に支持されるスピーカユニット1と向きを逆にして音響管2に取り付けられる。すなわち、マイクロホンユニット3の集音面とスピーカユニット1の放音面が相反する方向に向くように配設する。このようにマイクロホンユニット3とスピーカユニット1の向きを逆にすることにより、スピーカユニット1から放射される再生音のマイクロホンユニット3への入射が抑えられ、スピーカユニット1によって再生される再生音の共振の発生を防止することができる。
【0034】
なお、マイクロホンユニット3とスピーカユニット1とは、スピーカユニット1から放射される再生音のマイクロホンユニット3への入射が抑える向きに配設されればよく、集音面と放音面が互いに直交するように配設してもよい。
【0035】
ところで、音響管2の他端部8にはマイクロホン支持部材26が嵌合されるため、音響管2の終端が閉塞されてしまう。そのため、音響管2の他端部8側に放射された音を音響管2の外部に放射することができない。そこで、音響管2の他端部8側の側面には、音響管2の他端部8側に伝達される音を外部に放射させる抜き孔31が穿設されている。この抜き孔31は、抜き孔31を介して放射される音がマイクロホンユニット3に入射されにくいようになすため、図2及び図4に示すように、マイクロホンユニット3の集音面が臨む面とは反対側に位置する音響管2の他端部8側の側面に形成される。このような位置に抜き孔31を形成することにより、耳介に装着されたイヤホン装置を手で覆ったような場合であっても、開放された状態に維持され、抜き孔31を介して放射される音がマイクロホンユニット3によって集音されにくくなり、スピーカユニット1によって再生される再生音の共振を防止することができる。
【0036】
上述のように音響管2に取り付けられたスピーカユニット1及びマイクロホンユニット3は、折り曲げ部6を含む音響管2の中途部を内包するように覆って配設されるイヤホン本体を構成するハウジング4内に収納される。このハウジング4は、図3及び図4に示すように、合成樹脂をモールド成形して形成された一対の前面側ハーフ32と背面側ハーフ33とから構成されてなる。
【0037】
ハウジング4を構成する前面側ハーフ32及び背面側ハーフ33の相対向する突き合わせ面側には、図3及び図4に示すように、音響管2が嵌合する嵌合凹部34,35が形成れている。そして、前面側ハーフ32には、スピーカ取付け片16に取り付けられたスピーカユニット1の背面側に突出する磁気回路部1a側を収納するスピーカ収納凹部36と、マイクロホンユニット3の集音面側を収納するマイクロホン収納凹部37が膨出形成されている。このマイクロホン収納凹部37には、外部環境の音を入射させるための複数の微小な入射孔38が穿設されている。また、背面側ハーフ33には、スピーカユニット
1及びマイクロホンユニット3から引き出された外部接続コード39を保持し、この外部接続コード30の引き出し方向を位置決めするコード保持部41が設けられている。コード保持部41は、端部にコード挿通部42を形成して背面側ハーフ33の側面から膨出す
ように形成されている。そして、外部接続コード39は、コード保持部41の端部に形成
されたコード挿通部42に挿通されてハウジング4の外部に延長される。
【0038】
なお、外部接続コード39のコード挿通部42からの引き出し部分には、可撓性を有するゴム等によって形成されたブッシング43が嵌合されている。このブッシング43は、外部接続コード39のコード挿通部42からの引き出し部分での大きな屈曲を防止し、断線を防止するためのものである。
【0039】
また、スピーカユニット1から引き出される外部接続コード39は、スピーカユニット1への音声信号の入力ラインとなり、マイクロホンユニット3から引き出される外部接続コード39は、マイクロホンユニット3によって集音された音声信号の出力ラインとなる。
【0040】
なお、コード保持部41は、背面側ハーフ33とは別体に形成し、背面側ハーフ33の側面に一体的に取り付けるようにしたものであってもよい。この場合、背面側ハーフ33には、コード保持部41に設けられたコード挿通部42に連通するコード引き出し孔が設けられる。このようにコード保持部41を背面側ハーフ33とは別体に形成することにより、コード保持部41を剛性を有する合成樹脂材料で形成される背面側ハーフ33とは異なる材料で形成することができる。このコード保持部41は、耳介への装着時に、耳介の一部に接触したような場合であっても良好な装着感を得るようになすため、柔軟性を有するゴム等により形成することができる。
【0041】
また、ハウジング4を構成する前面側ハーフ32及び背面側ハーフ33には、音響管2の一端部側に構成された耳介挿入部5の基端部側に嵌合する挿入規制部半体44,45が形成されている。これら挿入規制部半体44,45は、互いに突き合わせ結合されたとき、音響管2より大径をなす耳介挿入規制部46を構成する。
【0042】
上述のように構成された前面側ハーフ32と背面側ハーフ33を、音響管2を挟んで相対向して配置し、これらハーフ32,33に設けた嵌合凹部34,35に音響管2の中途部を嵌合させて互いに突き合わせ面32a,33aを突き合わせ結合させると、図1及び図2に示すように、音響管2の中途部を覆うようにして一体化されたハウジング4が構成される。このとき、ハウジング4の上端側の一側面から、音響管2の一端部に構成される耳介挿入部5が突出し、ハウジング4の下端側からU字状に湾曲された他端部8を含む管本体7が突出された状態となる。また、ハウジング4内には、図8に示すように、スピーカユニット1が前面側ハーフ32に設けたスピーカ収納凹部36に嵌合され、マイクロホンユニット2がマイクロホン収納凹部37に嵌合されて収納される。さらに、前面側ハーフ32と背面側ハーフ33を突き合わせ結合してハウジング4を構成すると、ハウジング4の上端側の一側面から突出した耳介挿入部5の基端部側に音響管2より大径をなす耳介挿入規制部46が形成される。
【0043】
ところで、ハウジング4内に収納配置されたマイクロホンユニット3の集音面3aとマイクロホン収納凹部37の底面との間には間隙が設けられ、この間隙を介して、図8に示すように、マイクロホン収納凹部37に穿設された入射孔38を介して集音される際に発生する風切り音を防止する不織布等からなるエアスクリーン45が配設される。また、マイクロホンユニット3とハウジング4との間には、図示はしないが、発泡ウレタンやフェルト等からなる吸音材が配設される。この吸音材は、ハウジング4を介してマイクロホンユニット3に伝達される振動を吸収する。このように吸音材を設けることにより、マイクロホンユニット3は、ノイズを集音することなく外部環境音の集音を可能となす。
【0044】
上述のように構成されたイヤホン装置は、図10に示すように、音響管2の一端側に設けた耳介挿入部5の先端部に取り付けた耳介装着体10を耳道bに嵌合させ、音響管2の管本体7を耳介aの表面に沿って垂下するように装着される。このとき、耳介装着体10の耳道嵌合体12が弾性変形しながら、図11に示すように、耳道bに嵌合する。耳道嵌合体12は、容易に弾性変形するゴム等により形成されているので、耳道bの形状に倣って変形して耳道bを密閉する。このように、イヤホン装置を装着したとき、耳道bが耳介装着体10の耳道嵌合体12によって密閉されるので、イヤホン装置から放射される再生音以外の外部環境の音を入射が抑制させる。
【0045】
また、イヤホン装置を耳介aに装着したとき、マイクロホンユニット3の集音面が、図10に示すように、耳介aに対し外側に向かうので、外部環境の音を能率よく集音することができる。さらに、イヤホン装置を耳介aに装着したとき、コード保持部41が、図10に示すように、耳介aに対向するハウジング4の背面側に位置するので、外部接続コード39は耳介aとハウジング4との間の空間から引き出される。そのため、外部接続コード39をイヤホン装置から突出させることなく耳介aの下方に引き出すことができる。そして、コード保持部41を長尺とすることにより、外部接続コード39を耳介aに接触させることなく耳介aの下方に引き出せるので、安定した装着状態が得られる。
【0046】
さらにまた、イヤホン装置を耳介aに装着したとき、図11に示すように、耳介挿入部5の基端部側に音響管2より大径に形成された耳介挿入規制部46の先端面46aが耳介aの耳甲介腔cの底部に当接する。従って、剛性を有する耳介挿入部5が耳道bに過度に挿入されることが規制され、安全に装着することができる。
【0047】
上述したイヤホン装置は、耳道bを密閉する耳道嵌合体12を備えた耳介装着体10と、耳介挿入部5の耳道bへの挿入を規制する耳介挿入規制部46をハウジング4と一体に形成し、耳介装着体10と耳介挿入規制部46を独立の部材として形成しているが、耳介装着体10と耳介挿入規制部46とを一体に形成するようにしてよい。この場合、ハウジング4側に形成される耳介挿入規制部46は、取り除かれる。
【0048】
以下、耳介嵌合体12と耳介挿入規制部46を一体に形成した実施の態様を図面を参照して説明する。
【0049】
以下の説明においては、前述した実施例と共通する部材については、共通の指示符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
ここに示すイヤホン装置は、耳道bに少なくとも一部が嵌合して耳道bを密閉する耳介嵌合体51と耳介挿入規制部52を一体に形成した耳介装着体53を、図12及び図13に示すように、音響管2の一端側に構成した耳介挿入部5の先端側に取り付けたものである。
【0051】
ここに用いられる耳介装着体53は、図14に示すように、耳介挿入部5の先端部の外周側に嵌合する筒状の取付け部54と、この取付け部54の外周側に形成された耳道嵌合体51と、取付け部54の基端側に形成された耳介挿入規制部52とをゴム等の弾性を有する材料を成形して一体に形成したものである。
【0052】
耳道嵌合体52は、取付け部54の先端部側に一端部を連結し、取付け部54の基端部側に向かって湾曲して膨出するように形成されて取付け部54の外周側に形成されている。すなわち、耳道嵌合体52は、耳道bへの挿入側となる一端部を取付け部54への連結部となし、他端側を自由端として取付け部54の外周側を覆うようにして略球状に膨出するようにして取付け部54と一体に形成されている。
【0053】
耳介装着体53及びこの耳介装着体53が取り付けられた耳介挿入部5の耳道bに対する挿入位置を規制する耳介挿入規制部52は、音響管2の外径より大径であって、少なくとも耳道bに挿入し得ない大きさをもって、取付け部54の基端部側に膨出するように形成されている。この耳介挿入規制部52は、イヤホン装置を耳介aに装着したとき、耳甲介腔cに係止されるように嵌合される形状に形成されてなるものであって、図12及び図13に示すように、側方に向かって耳甲介腔c内の一部に係合する係合突部55が突設されている。
【0054】
そして、取付け部54から耳介挿入規制部52に亘って形成された嵌合孔56の内周面には、耳介挿入部5の外周面に突設した係合突起57,58が相対係合する係合溝59,60が設けられている。耳介装着体53は、嵌合孔56を介して耳介挿入部5に嵌合させることによって、耳介挿入部5の外周側に取り付けられる。このとき、嵌合孔56の内周面に設けた係合溝59,60が、図14に示すように、耳介挿入部5の外周面に突設した係合突起57,58に相対係合されることにより、耳介挿入部5に対する取付け位置の位置決めが図られ、耳介挿入部5からの抜け止めが図られて取り付けられる。
【0055】
なお、取付け部54の先端部には、図14に示すように、耳介挿入部5の先端面を覆うリング状のフランジ部61が形成されている。このフランジ部61は、耳介aに装着したとき、剛性を有する取付け部54の先端部が耳道bに直接当接することを防止し、量感な装着感を得るようになすものである。
【0056】
ところで、耳道嵌合体51は、耳道bに嵌合したとき、耳道bを密閉し得るように、耳道bに倣って容易に弾性変形し得るように形成されることが望ましい。一方、耳介装着体53の取付け部54は、耳介装着体53を耳介挿入部5に確実に支持させるためのものであるので、大きな弾性力を有するように形成されることが望ましい。また、耳介挿入規制部52は、耳甲介腔cに嵌合して耳道嵌合体51及び耳介挿入部5の耳道bに対する挿入位置を規制するものにであるので、容易に弾性変形しないように形成されることが望ましい。
【0057】
そこで、耳道嵌合体51は、容易に弾性変形し得るように薄肉に形成されのに対し、取付け部54は、十分な嵌合保持力を有するように耳道嵌合体51に比し肉厚に形成されてなる。また、耳介挿入規制部52も、容易に弾性変形しないように肉厚に形成されてなる。
【0058】
また、耳介装着体53の耳道嵌合体51、取付け部54及び耳介挿入規制部52は、それぞれの機能を十分に発揮し得るように異なる材料を用いて一体に形成してもよい。例えば、耳道嵌合体51を容易に弾性変形し得るシリコーンゴムにより形成し、取付け部11及び耳介挿入規制部52を大きな弾性力を有するゴム等の弾性材料により形成する。
【0059】
上述のように構成された耳介装着体53を音響管2の一端側に設けた耳介挿入部5の先端部に取り付けたイヤホン装置は、図15に示すように、耳介装着体53を耳道bに嵌合させるとともに、係合突部55を耳甲介腔cの一部に係止させて耳介挿入規制部52を耳甲介腔cに嵌合させ、音響管2の管本体7を耳介aの表面に沿って垂下するようにして装着される。このとき、耳介装着体53の耳道嵌合体12が、図15に示すように、弾性変形しながら耳道bに嵌合して耳道bを密閉する。このとき、耳介挿入規制部52に設けた係合突部55が耳甲介腔cの一部に係止されてなるので、耳道嵌合体51及び耳介挿入部5の耳道bに対する挿入量を規制する。従って、耳道嵌合体51や剛性を有する耳介挿入部5が耳道bに過度に挿入されることが規制され、安全に装着することを可能となす。
【0060】
上述したイヤホン装置は、スピーカユニット1とともにマイクロホンユニット3を備え、イヤホン装置の外部から入射される雑音を減少させて、スピーカユニット1から放射される再生音の歪み等を抑え、良好な再生特性をもって聴取することを可能となすいわゆるノイズ低減型のイヤホン装置に適用した例を挙げて説明したが、スピーカユニット1とこのスピーカユニット1から放射される再生音を耳介に入射させる無反射型の音響管2を備えたイヤホン装置にもそのまま適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るイヤホン装置をマイクロホンユニットの放音面が臨む面から見た斜視図である。
【図2】上記イヤホン装置をコード保持部側から見た斜視図である。
【図3】上記イヤホン装置をマイクロホンユニットの放音面が臨む面から見た分解斜視図である。
【図4】上記イヤホン装置をコード保持部側からから見た分解斜視図である。
【図5】耳介挿入部の傾斜状態を示す正面図である。
【図6】耳介挿入部の傾斜状態を示すの平面図である。
【図7】耳介挿入部に耳介装着体を取り付けた状態を一部を破断して示す正面図である。
【図8】スピーカユニット及びマイクロホンユニットをハウジング内に取り付けた状態を示す縦断面図である。
【図9】スピーカユニットのスピーカ取付け片への取付け状態を示す断面図である。
【図10】本発明に係るイヤホン装置を耳介に装着した状態を示す斜視図である。
【図11】耳介装着体を耳道内に嵌合させた状態を一部を破断して示す背面図である。
【図12】本発明に係るイヤホン装置の他の例をマイクロホンユニットの放音面が臨む面から見た斜視図である。
【図13】上記イヤホン装置の他の例をコード保持部側から見た斜視図である。
【図14】上記イヤホン装置に取り付けられる一体型の耳介装着体を示す断面図である。
【図15】上記イヤホン装置を耳介に装着した状態を一部を破断して示す背面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 スピーカユニット、 2 音響管、 4 ハウジング、 5 耳介挿入部、 10 耳介装着体、 12 耳道嵌合体、 51 耳介嵌合体、 51 耳道嵌合体、 52 耳介挿入規制部、 53 耳介装着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響管と耳介装着体とを備えるイヤホン装置において、
上記音響管は、一端部に耳介挿入部が形成され、
上記耳介装着体は、上記耳介挿入部の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部と、
上記取付け部の基端部側に形成される耳介挿入規制部と
を有することを特徴とするイヤホン装置。
【請求項2】
上記耳介挿入規制部は、側方に向かって突設される係合突部を有することを特徴とする請求項1に記載のイヤホン装置。
【請求項3】
上記取付け部から上記耳介挿入規制部に亘って嵌合孔が形成され、
上記耳介挿入部の外周面の所定の場所に、第1の段差が設けられ
上記嵌合孔の内周面の所定の場所に、第2の段差が設けられ、
上記耳介挿入部の外周面の第1の段差は、上記嵌合孔の内周面の第2の段差と係合することを特徴とする請求項1に記載のイヤホン装置。
【請求項4】
上記取付け部から上記耳介挿入規制部に亘って嵌合孔が形成され、
上記耳介挿入部の外周面の所定の場所に、係合突起が設けられ
上記嵌合孔の内周面の所定の場所に、係合溝が設けられ、
上記耳介挿入部の外周面の係合突起は、上記嵌合孔の内周面の係合溝と係合することを特徴とする請求項1に記載のイヤホン装置。
【請求項5】
上記耳介装着体は、弾性を有する材質の材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載のイヤホン装置。
【請求項6】
上記取付け部と上記耳介挿入規制部とは、一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載のイヤホン装置。
【請求項7】
イヤホン装置の音響管の一端部に形成される耳介挿入部の外周に対して嵌合し得る筒状の取付け部と、
上記取付け部の基端部側に形成される耳介挿入規制部と
を有することを特徴とする耳介装着体。
【請求項8】
上記耳介挿入規制部は、側方に向かって突設される係合突部を有することを特徴とする請求項7に記載の耳介装着体。
【請求項9】
上記取付け部から上記耳介挿入規制部に亘って嵌合孔が形成され、
上記嵌合孔の内周面の所定の場所に、第2の段差が設けられ、
上記嵌合孔の内周面の第2の段差は、上記耳介挿入部の外周面に設けられる第1の段差と係合することを特徴とする請求項7に記載の耳介装着体。
【請求項10】
上記取付け部から上記耳介挿入規制部に亘って嵌合孔が形成され、
上記嵌合孔の内周面の所定の場所に、係合溝が設けられ、
上記嵌合孔の内周面の係合溝は、上記耳介挿入部の外周面に設けられる係合突起と係合することを特徴とする請求項7に記載の耳介装着体。
【請求項11】
上記耳介装着体は、弾性を有する材質の材料により形成されることを特徴とする請求項7に記載の耳介装着体。
【請求項12】
上記取付け部と上記耳介挿入規制部とは、一体形成されていることを特徴とする請求項7に記載の耳介装着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−29040(P2008−29040A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268174(P2007−268174)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【分割の表示】特願2006−271032(P2006−271032)の分割
【原出願日】平成7年8月23日(1995.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】