説明

耳管機能検査用プローブ

【課題】 音導通路が耳垢で塞がり難く、且つ耳垢除去が容易にできる耳管機能検査用プローブを提供する。
【解決手段】 耳管機能検査を行うために外耳道に挿入する耳管機能検査用プローブであって、先端に耳せん1を装着した両端開口の第1筒体2と、この第1筒体2内に空隙3を形成して挿入した両端開口の第2筒体4と、この第2筒体4が当接すると共にマイクロホン5とイヤホン6を装着した基台7を備え、空隙3がイヤホン6から出力される音圧の通路またはマイクロホン5への音圧の通路となり、第2筒体4がマイクロホン5への音圧の通路またはイヤホン6から出力される音圧の通路となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳管機能検査における音響法検査又はインピーダンス法検査に用いる耳管機能検査用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
耳管機能検査における音響法検査又はインピーダンス法検査に用いる耳管機能検査用プローブとしては、図5に示すように、マイクロホンへの音圧の通路やイヤホンから出力される音圧の通路などの音導通路100,101が、並列に束ねられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許2827065号公報(第10頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耳管機能検査用プローブの先端は、外耳道に挿入して使用するので、外耳道内壁を擦り、プローブ先端の耳せん開口部に耳垢を付着し易い。特に、特許文献1に記載のように、並列に束ねられた音導通路100,101の場合は、図5に示すように、耳せん開口部の内壁に接している音導通路101が耳垢102で塞がり易い。音導通路101が耳垢102で塞がれてしまうと、検査に支障をきたすという問題がある。
【0005】
また、耳管機能検査用プローブは、外耳道に挿入して使用するため、耳せん開口部の大きさには制限がある。特に、特許文献1に記載のように、音導通路100,101が並列に束ねられた構成(筒体並列構造)の場合には、マイクロホン及びイヤホンの音口位置の制約で、直線的に構成することはできない。音導通路100,101が耳垢102で塞がれてしまうと、一般にクリーニングワイヤーや洗浄により耳垢除去がなされているが、耳垢除去や除去後の残留耳垢確認が容易ではない。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音導通路が耳垢で塞がり難く、且つ耳垢除去が容易にできる耳管機能検査用プローブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、耳管機能検査を行うために外耳道に挿入する耳管機能検査用プローブであって、先端に耳せんを装着した両端開口の第1筒体と、この第1筒体内に空隙を形成して挿入した両端開口の第2筒体と、この第2筒体が当接すると共にマイクロホンとイヤホンを装着した基台を備え、前記空隙がイヤホンから出力される音圧の通路またはマイクロホンへの音圧の通路となり、前記第2筒体がマイクロホンへの音圧の通路またはイヤホンから出力される音圧の通路となるものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の耳管機能検査用プローブにおいて、前記第2筒体の一端に鍔部を形成し、この鍔部が前記第1筒体により前記基台に押圧され、前記第2筒体が前記基台に形成されたマイクロホン音口またはイヤホン音口と連通するようにした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、第1筒体内に空隙を形成して第2筒体を挿入し、筒体を二重構造にしたことにより、各筒体によって形成される音導通路が耳垢で塞がれ難くなる。また、筒体を二重構造にしたことにより、各音導通路の断面積を、従来の並列構造に比べて大きくすることが可能になるので、音響インピーダンスが低下し、微細な音圧変化の観察にとって有利になる。
更に、音響法検査とインピーダンス法検査の兼用に限定したため、小型化が可能になり、耳介に接触して擦れ音などでS/N比が低下するのを防止することができる。また、ヘッドバンドなど補助具が不要なので、操作性に優れる。そして、構成要素が少なく、シンプルな筒体構造なので、引物製作が可能であり、金型が不要で少量生産に対する低コスト化が可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、第1筒体と基台で第2筒体を挟んで固定するため、第1筒体を取り外すだけで第2筒体を容易に取り外すことができると共に構造が直線的で簡易であるので、第1筒体及び第2筒体に付着した耳垢の除去や除去後の残留耳垢確認が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る耳管機能検査用プローブの断面図、図2は第2筒体と基台の分解斜視図、図3は筒体二重構造の概要断面図、図4は筒体二重構造の作用説明図である。
【0012】
本発明に係る耳管機能検査用プローブは、図1に示すように、先端に耳せん1を装着した両端開口の第1筒体2と、第1筒体2内に空隙3を形成して挿入した両端開口の第2筒体4と、マイクロホン5とイヤホン6を装着した基台7と、マイクロホン5とイヤホン6を装着した基台7を収納するケース8からなる。なお、9はケーブルである。
【0013】
第1筒体2は、略円錐形状をなし、先端には耳せん1を装着する装着部10が形成され、後端の内周面にはケース8の外周面に刻設した雄ねじ(不図示)に螺合する雌ねじ(不図示)が刻設されている。第2筒体4は、図2に示すように、円筒部13と、円筒部13の一端に形成された鍔部14からなり、円筒部13内と鍔部14を貫く貫通孔15が設けられている。鍔部14は、円板の一部を欠いた略円板形状をしている。また、第1筒体2の後端には、基台7及び鍔部14と当接する押圧部16が形成されている。
【0014】
基台7は、略円板形状をなす弾性部材からなり、中心部にマイクロホン音口17が、縁部近傍にイヤホン音口18が夫々貫通孔として形成されている。基台7の一面には鍔部14と合体する段部19が形成され、他面にはマイクロホン音口17と連通するマイクロホン5及びイヤホン音口18と連通するイヤホン6が装着されている。
【0015】
なお、マイクロホン5とイヤホン6の装着位置を入れ替えて、第2筒体4の貫通孔15をイヤホン6の音導通路とし、空隙3をマイクロホン5の音導通路としても構わない。基台7は、マイクロホン5とイヤホン6をケース8に収納するように、有底円筒形のケース8の開口部に嵌合されている。
【0016】
以上のように構成した本発明に係る耳管機能検査用プローブの作用について説明する。耳管機能検査用プローブを組み立てるには、先ずケース8の開口部に嵌合した基台7の段部19に、第2筒体4の鍔部14をセットする。この状態で、第2筒体4の貫通孔15と基台7のマイクロホン音口17は連通状態になり、外耳道からマイクロホン5に至る音導通路が形成される。
【0017】
次いで、第1筒体2に第2筒体4の円筒部13を挿入し、第1筒体2の雌ねじをケース8の雄ねじに螺合させる。この時、第1筒体2の押圧部16が、基台7及び鍔部14に所定の圧力で当接するまで螺合させる。すると、第2筒体4が第1筒体2と基台7により挟まれて固定され、第1筒体2と第2筒体4で形成される空隙3と基台7のイヤホン音口18は連通状態になり、イヤホン6から外耳道に至る音導通路が形成される。基台7は弾性部材からなるので、音響的な密閉度を上げることができる。
【0018】
そして、第1筒体2と第2筒体4は、図3及び図4に示すように、同心の二重構造の筒体2,4を形成する。このように二重構造の筒体2,4を形成することにより、従来の並列構造に比べて音導通路を形成する筒体2,4の開口が耳垢20で塞がれ難くなる。また、筒体2,4による二重構造にしたことにより、各音導通路の断面積を、従来の並列構造に比べて大きくすることが可能になり、音響インピーダンスが低下し、微細な音圧変化の検出にとって有利になる。
【0019】
更に、第1筒体2の先端に耳せん1を装着すれば、耳管機能検査用プローブは完成する。ここで、マイクロホン5とイヤホン6を両方とも用いれば、インピーダンス法検査用プローブになり、マイクロホン5のみ用いれば、音響法検査用プローブになる。このように音響法検査とインピーダンス法検査の兼用に限定したため、小型化が可能になり、耳介に接触して擦れ音などでS/N比が低下するのを防止することができる。また、小型化により、ヘッドバンドなどの補助具が不要になり、操作性に優れる。
【0020】
また、第1筒体2の雌ねじ12をケース8の雄ねじ11に螺合することにより、第2筒体4が第1筒体2と基台7に挟まれて固定されるので、第1筒体2をケース8から取り外せば、容易に第1筒体2と第2筒体4を分解することができる。従って、使用により筒体2,4の開口が耳垢20で塞がれたとしても、第1筒体2及び第2筒体4に付着した耳垢20の除去や除去後の残留耳垢確認が容易に行える。
【0021】
また、空隙3が外界と通じるベント(不図示)を第1筒体2又は基台7に設けておけば、耳管機能検査用プローブを外耳道に挿入及び抜出す際に過大な圧力変化を起こすことがなくなるので、装着者の不快感を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
筒体の二重構造により、各筒体によって形成される音導通路が耳垢で塞がれ難くなり、また音響法検査とインピーダンス法検査の兼用に限定したため小型化が可能になり、ヘッドバンドなどの補助具が不要で操作性に優れる耳管機能検査用プローブを構成することができる。更に、構成要素が少なく、シンプルな筒体の二重構造なので、引物製作が可能で金型が不要になり、少量生産に適し、低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る耳管機能検査用プローブの断面図
【図2】第2筒体と基台の分解斜視図
【図3】筒体二重構造の概要断面図
【図4】筒体二重構造の作用説明図
【図5】従来の筒体並列構造の作用説明図
【符号の説明】
【0024】
1…耳せん、2…第1筒体、3…空隙、4…第2筒体、5…マイクロホン、6…イヤホン、7…基台、8…ケース、14…鍔部、15…貫通孔、17…マイクロホン音口、18…イヤホン音口、19…段部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳管機能検査を行うために外耳道に挿入する耳管機能検査用プローブであって、先端に耳せんを装着した両端開口の第1筒体と、この第1筒体内に空隙を形成して挿入した両端開口の第2筒体と、この第2筒体が当接すると共にマイクロホンとイヤホンを装着した基台を備え、前記空隙がイヤホンから出力される音圧の通路またはマイクロホンへの音圧の通路となり、前記第2筒体がマイクロホンへの音圧の通路またはイヤホンから出力される音圧の通路となることを特徴とする耳管機能検査用プローブ。
【請求項2】
前記第2筒体の一端に鍔部を形成し、この鍔部が前記第1筒体により前記基台に押圧され、前記第2筒体が前記基台に形成されたマイクロホン音口またはイヤホン音口と連通する請求項1記載の耳管機能検査用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−345903(P2006−345903A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172227(P2005−172227)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【Fターム(参考)】