説明

耳組織を麻酔するためのシステム及び方法

鼓膜のイオントフォレシスによる麻酔に使用されるシステム及び方法を開示する。本システムは一般にイヤープラグ及び電極装置を含む。イヤープラグは外耳道内にイヤープラグを密封するための少なくとも1つのシール部材を含む。シール部材は、特定の圧力閾値を超えたら流体を排出する微小孔を含む。ヘッドセットはイヤープラグを第2のイヤープラグに連結することができる。本方法ではヒト又は動物患者に本システムを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年7月27日に出願された米国特許出願第12/510,217号の一部継続出願であり、この特許出願は、2008年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/085,360号に基づく利益を主張するものであり、その全体は参照により、あらゆる目的において本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、イオントフォレシスによる薬物送達方法及びシステムに関する。本発明は具体的には、耳組織を麻酔するための新規かつ有用なイオントフォレシス薬物送達方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
イオントフォレシスは、皮膚、又は特定の耳外科手術の場合では鼓膜(TM)といった生物膜を透過させて薬物を送達するための方法である。低レベルの電流を同様に帯電させた薬液に適用することによって、イオントフォレシスが薬物のイオンに反発し、イオンが皮膚又は他の膜を透過して輸送される。耳の手術においては、慢性の耳感染症を治療するために鼓膜を貫通してイヤーチューブを設置するのに先立って、イオントフォレシスを用いて鼓膜を麻酔する(すなわち「麻痺」させる)試みが過去に行われてきた。鼓膜イオントフォレシスでは、薬液を外耳道に入れ、溶液に電極から電流を流すことによって麻酔薬を鼓膜に透過させて輸送する。
【0004】
従来のイオントフォレシス装置及びシステムでは成功率が限定されており、すべての患者に使用することはできなかった。従来の装置では一般に薬液を外耳道内に密封しないため、イオントフォレシス法を行う間、患者は横になって頭を傾けている必要がある。現在利用可能なイオントフォレシス法を用いた場合、イオントフォレシス法によって充分な麻酔を鼓膜に供給する間に、患者はこの横になって頭を傾けた姿勢のまま5〜15分間あまり動かないようにしていなければならず、これは子供にとっては特に困難である。更に、現在利用可能なシステムを用いた場合には、一度に片方の耳しか麻酔することができず、患者の両耳の鼓膜をイオントフォレシスで麻酔することは比較的時間のかかる、負担の大きなプロセスとなっている。
【0005】
外耳道にイオントフォレシス液を保持するように設計されたイヤープラグを用いて鼓膜にイオントフォレシス液を投与する試みがなされてきた。例えば、Donaldsonらに発行された米国特許第5,674,196号を参照されたい。しかしながら、Donaldsonの特許に記載されているもののようなイヤープラグ、及びその他の現在利用可能なイヤープラグには多くの欠点がある。例えば、ほとんどのイヤープラグは、液体を外耳道の内部に保持するのではなく外耳道に液体を入れないように設計されている。現在利用可能な上記に述べたイヤープラグは一般に、外耳道の湾曲した解剖学的形状に充分に一致せず、そのため少なくとも一部の(場合によってはすべての)患者の外耳道に良好な密封を形成しない。したがって、現在のイヤープラグでは通常耳から液体が漏出してしまい、直立姿勢の患者におけるイオントフォレシスによる麻酔薬の送達は不可能でないにしても困難である。更に、イオントフォレシスで使用する上記に述べたイヤープラグデバイスでは、イオントフォレシス用電極と溶液との接触を妨害し得るイオントフォレシス用薬液中の発泡などの問題は解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、鼓膜にイオントフォレシス投与するための改良された装置及びシステムが提供されれば有益である。こうした装置及びシステムは、直立姿勢の患者にイオントフォレシス麻酔を投与することができることが理想的である。こうした装置及びシステムは、両側性の同時鼓膜イオントフォレシスを促進することが更に理想的である。これらの目的のうちの少なくとも一部は、本発明の実施形態によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、患者の耳の鼓膜を麻酔するためのイオントフォレシスシステムは、イヤープラグと、少なくとも1つの可撓性シール要素と、電極装置とを含み得る。イヤープラグは、遠位部と、近位部と、遠位部と近位部とを連結する管と、管又は近位部に配置された側部排出口とを含み得る。管は遠位部及び近位部よりも低い相対硬さを有してよく、この低い相対硬さのために管は外耳道の曲率に形状が一致するようになっている。可撓性シール要素はイヤープラグの管と結合していてよく、外耳道の内部にシールを形成するような形状とすることができる。電極は、電極先端部と細長いシャフトとを含んでよいとともに、イヤープラグの管の中にスライド可能な形で配置可能であってよく、この電極先端部は、遠位部の中に嵌るとともに、管の中でスライドするような大きさである。
【0008】
一実施形態では、イヤープラグは、空気及び/又は液体を管から逃がすために管と流体連通した側部通気口を含んでもよい。一実施形態では、遠位部は管に比べて高い剛性を有する。一実施形態では、遠位部は、前進位置にある電極装置の電極先端部に対して密封するOリングを含んでもよい。一実施形態では、電極先端部の外径はOリングの内径よりも大きくてもよく、Oリングが可撓性を有することにより電極先端部がOリング内に通過してシールを形成することが可能である。一実施形態では、近位部は剛性であってよい。一実施形態では、近位部はルアー嵌合部を含んでもよい。一実施形態では、少なくとも1つの可撓性シール要素は、そのシール要素の開放端がイヤープラグの近位端に面した傘状の形状を有し得る。一実施形態では、少なくとも1つの可撓性シール要素は、遠位側シール要素と近位側シール要素とを含んでよく、近位側シール要素の直径は遠位側シール要素の直径より大きくてもよい。一実施形態では、可撓性シール要素はそれぞれ、各シール要素の開放端がイヤープラグの近位端に面した傘状の形状を有してもよい。一実施形態では、電極装置は可鍛性を有してもよい。一実施形態では、電極装置は管腔を含んでもよい。一実施形態では、システムは、イヤープラグの近位部に連結されたイヤーフックを含んでもよく、イヤーフックは、耳の一部に係合してイヤープラグが耳に配置された後に外れることを防止するための湾曲部材を含む。一実施形態では、システムは、ヒト又は動物患者の他方の耳の鼓膜へのイオントフォレシス物質の送達に使用するための更なるイヤープラグ及び更なる電極を含んでもよい。一実施形態では、システムは、イヤープラグ及び更なるイヤープラグが患者の耳の内部に配置された状態でイヤープラグと更なるイヤープラグとを連結するためのヘッドセットを含んでもよい。
【0009】
本発明の一態様では、ヒト又は動物患者の耳の鼓膜へのイオントフォレシス物質の送達に使用するためのシステムは、近位部と遠位部とを有する細長い可撓性の管と、外耳道の内部にシールを形成するような傘状の形状を有する第1の可撓性シール要素と、外耳道の内部にシールを形成するような傘状の形状を有する第2の可撓性シール要素と、細長い管の遠位部の内部でシール部材の遠位側に配置された遠位強化管と、管の近位部に連結されたルアー嵌合部であって、管の主管腔と流体連通した側部通気口を含むルアー嵌合部と、電極装置と、を含み得る。可撓性の管は、内部を通じて延びる主管腔を含んでもよい。遠位部は、遠位部の遠位に配置された内側リップと内側リップの近位端側に配置されたシール部材とを含んでもよい。細長い管は、外耳道の形状と一致するように曲げられるような充分な可撓性を有してもよい。第1の可撓性シール要素は、細長い管と一体であり、細長い管の外側に配置され、かつ細長い管の最遠位部から、ある距離だけオフセットしていてもよい。第2の可撓性シール要素は、細長い管と一体であり、かつ細長い管の外側で第1のシール要素の近位側に配置することができる。遠位強化管は、細長い管の遠位部が曲がることを防止し得る。電極装置は細長いシャフトを含んでもよい。電極先端部は細長いシャフトの直径よりも大きな直径を有してもよい。電極装置は、流体が管を通って電極の周囲を通過することができる後退位置から、電極先端部が細長い管の遠位部の内部で、内側リップとシール部材との間に嵌合して、液密のシールを形成する前進位置へと、イヤープラグの管の管腔の内部で移動可能であってよい。
【0010】
本発明の一態様では、イオントフォレシスを用いて患者の耳の鼓膜を麻酔する方法は、患者の外耳道に麻酔用薬液を送達することと、麻酔用薬液が充填された外耳道にイオントフォレシス装置を挿入することと、イオントフォレシス装置を挿入しながら、かつ電極が第1の位置にある状態で、管腔を通じて余分な麻酔用薬液を排出することと、電極を第1の位置から第2の位置へと動かすことと、第2の位置で電極を作動させることと、を伴い得る。イオントフォレシス装置は、管腔の内部で第1の位置から第2の位置へと動かすことが可能な電極を含み得る。イオントフォレシス装置の第1の位置は、外耳道を通気し得る。イオントフォレシス装置の第2の位置は、外耳道を密封し得る。
【0011】
一実施形態では、本方法は更に、聴覚的及び/又は触覚的なフィードバックによって第1の位置から第2の位置へと電極が動くことを確認することを含んでもよい。一実施形態では、本方法は、該方法を患者の第2の耳に対して繰り返すことを含んでもよい。一実施形態では、患者の頭部は、薬液を外耳道に送達しているときには、横になった傾いた位置に配置してよく、電極を作動させるときには、直立位置に配置してよい。一実施形態では、本方法は、該方法を患者の第2の耳に対して繰り返すことと、作動の前又は作動時に患者の頭部に装着されたヘッドセットにイヤープラグを接続することと、を含んでもよい。一実施形態では、本方法は、外耳道の形状に一致するように電極を変形させることを含んでもよい。
【0012】
本発明の一態様では、イオントフォレシスを用いて患者の耳の鼓膜を麻酔するための方法は、患者の外耳道に麻酔用薬液を送達することと、患者の外耳道にイオントフォレシス装置を挿入することと、電極を作動させることと、を含み得る。イオントフォレシス装置は管腔の内部に電極を含んでもよい。イオントフォレシス装置は、麻酔用薬液を密封すると同時に、電極を越えて、かつ管腔の内部のシール部分を通って、余分な麻酔用薬液を排出することができる。
【0013】
一実施形態では、本方法は、該方法を患者の第2の耳に対して繰り返すことを含んでもよい。一実施形態では、患者を薬液の送達時には横になった姿勢、作動時には直立姿勢とすることができる。一実施形態では、本方法は、外耳道の形状に一致するように電極を変形させることを含んでもよい。
【0014】
本発明の一態様では、イオントフォレシスを用いてヒト又は動物患者の耳の鼓膜を麻酔するためのキットは、イヤープラグとコントローラを含み得る。イヤープラグは、遠位部と、近位部と、遠位部から近位部に延びる管と、管の外表面から延出し、近位端よりも遠位端の近くに配置された少なくとも1つの可撓性シール要素と、電極装置と、を有し得る。管は、イヤープラグの近位部及び遠位部の硬さよりも低い硬さを有してもよい。電極装置は、細長いシャフトと、細長いシャフトの直径よりも大きな直径を有する電極先端部と、を含み得る。電極装置は、流体が管を通って電極の周囲を通過することができる後退位置から、電極先端部が管の内表面と接触して流体が管を通じて流れることを防止する前進位置へと、イヤープラグの管の内部で動くことができる。コントローラは電極装置に電気的に接続することができる。
【0015】
一実施形態では、キットは、患者の他方の耳用の更なるイヤープラグと、更なるイヤープラグ用の更なる電極装置と、を含んでもよい。一実施形態では、コントローラが電極装置及び更なる電極装置に接続されてもよい。一実施形態では、キットは、患者の頭部に配置して電極及びイヤープラグを保持するヘッドセットを含んでもよい。一実施形態では、キットは患者の両方の耳の鼓膜にイオントフォレシス麻酔を与えるだけの充分な量の薬液を含み得る。一実施形態では、キットは患者の外耳道内に薬液を送達するための薬物送達装置を含み得る。
【0016】
本発明の一実施形態は、イオントフォレシス物質をヒト又は動物患者の耳の鼓膜に送達する方法を提供する。イヤープラグは、患者の外耳道に挿入し得る。イヤープラグの可撓性シール要素の一部を外耳道内に液密にシールして、イヤープラグと鼓膜との間に空間を作ることができる。イオントフォレシス物質をイヤープラグに注入して、イヤープラグと鼓膜との間の空間を充填することができる。この空間は、注入中、イオントフォレシス物質で加圧され得る。空間内の流体を可撓性シール要素の微小孔を通じて排出して、圧力を抜く。
【0017】
一態様では、この微小孔は、圧力閾値を超えたら流体を排出するように構成されている。一態様では、流体をイヤープラグのプレナムに排出する。一態様では、微小孔は、静水条件下では流体を排出しないように構成されている。一態様では、電極装置をイヤープラグに挿入して、その電極装置の電極先端部をイオントフォレシス物質と接触させてよい。この電極装置に電圧を印加して、イオントフォレシス物質を用いて鼓膜を麻酔することができる。一態様では、電極先端部はイヤープラグの電極と電気的に接続されてもよく、この場合、イヤープラグの電極に電極装置によって電圧を印加する。一態様では、イヤープラグを挿入することは、イヤープラグに連結されたヘッドセットを患者の首の後ろに配置することを含み得る。一態様では、ヘッドセットは左イヤーフック及び右イヤーフックを含み、この場合、ヘッドセットを配置することは、左イヤーフックの対応する部分を患者の左側頭骨の上に、右イヤーフックの対応する部分を患者の右側頭骨の上に配置することを含む。一態様では、ヘッドセットが第2のイヤープラグに連結されてよく、この第2のイヤープラグは、イヤープラグと同一に構成されていてよく、ヘッドセットはイヤープラグに独立した力を印加して、イヤープラグを、対応する外耳道内に保持し得る。一態様では、ヘッドセットは、それぞれイヤープラグと第2のイヤープラグに流体連結されている流体チャネルを含んでよく、イオントフォレシス物質を注入することは、ヘッドセットの流体チャネルを低圧力下で充填することを含み得る。一態様では、イヤープラグから排出される流体を観察することができ、流体がイヤープラグから排出されるのが観察されたら、イオントフォレシス物質の注入を停止してよい。
【0018】
本発明の一実施形態は、イオントフォレシス物質をヒト又は動物患者の耳の鼓膜に送達するためのシステムを提供する。このシステムはイヤープラグを含み得る。イヤープラグは、細長い管を含む可撓性シール要素を含んでよく、その細長い管は可撓性シール要素から近位に延びている。可撓性シール要素は、複数の微小孔を有する遠位シール表面を有し得る。この微小孔は、圧力閾値を超えたら流体を排出するように構成されていてよい。このシステムは、内管内で移動可能な電極装置を含み得る。この電極装置は、電極先端部に連結された細長いシャフトを含み得る。
【0019】
一態様では、微小孔は、静水条件下では流体を排出しないように構成されている。一態様では、可撓性シール要素は内部プレナムを含んでよく、微小孔は内部プレナムに流体連結している。一態様では、内部プレナムは、細長い管の排出チャネルに流体連結していてよい。一態様では、この細長い管は、細長い内管の上に細長い外管を含んでよく、それらの間に排出チャネルが配置されている。一態様では、細長い管は、その細長い管に一体化された少なくとも1つの電極を含んでよく、その少なくとも1つの電極は、電極先端部と電気的に接続可能であり得る。一態様では、電極は、円筒形ケージとして形成された導線を含んでよい。一態様では、円筒形ケージはコイルであってよい。一態様では、円筒形ケージは、軸方向に配列された複数のループであってよい。一態様では、円筒形ケージは、電極先端部を圧縮するように構成されていてよい。一態様では、可撓性シール要素は傘状の形状をしていてよい。一態様では、このシステムは、第2のイヤープラグ及び第2の電極装置を含んでよく、第2のイヤープラグは上記のイヤープラグと、第2の電極装置は上記の電極装置と同一に構成されている。一態様では、ヘッドセットは、イヤープラグと第2のイヤープラグを連結してよい。一態様では、ヘッドセットは、左イヤーフックと右イヤーフックに連結されたネックループを含んでよく、左イヤーフック及び右イヤーフックはそれぞれ、耳甲介の後ろを包むように構成され得る。一態様では、左イヤーフックは患者の左側頭骨上に、右イヤーフックは患者の右側頭骨上に、ネックループからの圧縮力を印加するように構成され得る。一態様では、ヘッドセットは、左低圧力流体チャネル及び右低圧力流体チャネルを更に含んでよく、左低圧力流体チャネルはイヤープラグの内管に、右低圧力流体チャネルは第2のイヤープラグの内管に流体連結され得る。一態様では、ヘッドセットは、ばね式左スイングアーム及びばね式右スイングアームを更に含んでよく、ばね式左スイングアームは左イヤーフックに、ばね式右スイングアームは右イヤーフックに、旋回する形で連結され得るとともに、ばね式左スイングアームはイヤープラグに、ばね式右スイングアームは第2のイヤープラグに連結し得る。
【0020】
異なる態様及び実施形態の本質及び利点を更に理解するには、以下の説明文及び添付図面を参照されたい。各図は、あくまで図示及び説明を目的として与えられるものであって、本発明の実施形態の範囲を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】外耳の正面図。
【図1B】外耳、中耳、及び内耳の部分断面図。
【図2A】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの断面図。
【図2B】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの断面図。
【図2C】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの断面図。
【図2D】本発明の一実施形態によるイヤープラグの遠位端の斜視図。
【図2E】本発明の一実施形態によるイヤープラグの側面図。
【図2F】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの側面図。
【図2G】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの側面図。
【図2H】本発明の一実施形態によるシステムの使用状態。
【図3A】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの使用状態の部分断面図。
【図3B】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの使用状態の部分断面図。
【図3C】本発明の様々な実施形態による、鼓膜を麻酔するためのシステムの使用状態の部分断面図。
【図4】本発明の一実施形態による、鼓膜を麻酔するためのキット。
【図5A】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の正面図。
【図5B】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の側面図。
【図5C】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の正面図。
【図5D】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の側面図。
【図5E】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の斜視図。
【図5F】本発明の一実施形態による可撓性シール要素の正面図。
【図6A】本発明の一実施形態による、イヤーフックを含むイヤープラグの正面図。
【図6B】本発明の一実施形態による、イヤーフックを含むイヤープラグの正面図。
【図6C】本発明の一実施形態による、イヤーフックを含むイヤープラグの使用状態の対向図。
【図6D】本発明の一実施形態による一体型イヤーバッドの側面図。
【図6E】本発明の様々な実施形態による一体型イヤーバッドの使用状態の対向図。
【図6F】本発明の様々な実施形態による一体型イヤーバッドの使用状態の対向図。
【図7A】本発明の一実施形態によるイヤープラグの斜視図。
【図7B】本発明の一実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7C】本発明の一実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の断面図。
【図7D】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7E】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7F】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7G】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7H】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7I】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の斜視図。
【図7J】本発明の一実施形態による、イヤープラグで使用される延長部分の分解図。
【図8A】本発明の一実施形態による拡張式イヤープラグの側面図。
【図8B】本発明の一実施形態による拡張式イヤープラグの使用状態の側面図。
【図9A】本発明の一実施形態による発泡プラグ装置の断面図。
【図9B】本発明の一実施形態による発泡バルーン装置の断面図。
【図10A】本発明の一実施形態による検鏡ポートの断面図。
【図10B】本発明の一実施形態による代替的な遠位側ポートの断面図。
【図10C】本発明の一実施形態による代替的な遠位側ポートの斜視図。
【図10D】本発明の一実施形態による検鏡ポートの使用状態。
【図10E】本発明の一実施形態による検鏡ポートの使用状態。
【図10F】本発明の一実施形態による検鏡ポートの使用状態。
【図10G】本発明の一実施形態による検鏡ポートの使用状態。
【図10H】本発明の一実施形態による検鏡ポートの使用状態。
【図11】本発明の様々な実施形態による、患者の頭部に装着されている簡略化支持構造体であって、イオントフォレシスシステムを支持する簡略化支持構造体。
【図12】本発明の様々な実施形態による、患者の頭部に装着されている簡略化支持構造体であって、イオントフォレシスシステムを支持する簡略化支持構造体。
【図13A】本発明の一実施形態によるイヤープラグの透視側面図。
【図13B】本発明の一実施形態によるイヤープラグの斜視断面図。
【図13C】本発明の一実施形態によるイヤープラグの断面図。
【図14A】本発明の一実施形態による、イオントフォレシス物質を送達するためのシステムの斜視図。
【図14B】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグに一体化された電極の斜視図。
【図14C】本発明の様々な実施形態による、イヤープラグに一体化された電極の斜視図。
【図15A】本発明の一実施形態による、イオントフォレシス物質を送達するためのヘッドセットの斜視図。
【図15B】本発明の一実施形態による、イオントフォレシス物質を送達するためのヘッドセットの斜視図。
【図15C】本発明の一実施形態によるイオントフォレシス物質を送達するための方法で使用される、図15Aのヘッドセットの斜視図。
【図15D】本発明の一実施形態によるイオントフォレシス物質を送達するための方法で使用される、図15Bのヘッドセットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aは外耳の図を示している。外耳は、耳介又は耳殻100として知られる主要素を含む。外耳は、耳の内部の各部分に音を向けるためのじょうごとして機能している。外耳の主な物理的要素としては、耳垂102、耳甲介104、輪脚106、耳輪108、舟状窩110、三角窩112、外耳道114、耳珠116、及び対珠118が挙げられる。
【0023】
図1Bは、内耳部分及び外耳部分の断面図を示ししている。耳殻100が外耳道118(external auditory meatus or ear canal)につながっている様子が示されている。外耳道118は比較的短い通路として示されているが、しばしばより湾曲した曲がりくねった通路である。外耳道118は中耳120につながっており、中耳には鼓膜122が含まれる。中耳120は内耳124につながっている。鼓膜(ear drum)122は通常、鼓膜(tympanic membrane)と呼ばれる外側部分の背後に空気のポケットを有している。中耳120に感染が起こると鼓膜122の内側に流体が溜まる。流体の膨張によって中耳炎を有する患者には強い痛みが生ずる。中耳炎は小児によく見られる。鼓膜に穿孔して液体を排出することによって苦痛を緩和することができ、この治療法は鼓膜穿刺術として知られている。鼓膜穿刺術に先立って患者には全身麻酔が施される場合もあるが、費用及び健康上の懸念から好ましくない。好ましい代替的方法として、イオントフォレシスによる薬物送達を用いて鼓膜を局所麻酔することができる。この場合、患者が目覚めたまま治療を行うことができる。鼓膜を局所麻酔するための装置及び方法は、本願と同一出願人に譲渡された米国特許出願第11/962,073号及び同第11/749,729号に開示されており、これらの出願の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
図2Aは、本発明の一実施形態による、鼓膜を麻酔するためのイオントフォレシスシステム200を示している。システム200はイヤープラグ202及び電極装置206を含む。イヤープラグ202は、可撓性シール要素204と、遠位部208と、近位部210と、両者を連結する管212と、を含み得る。管212は、曲げにくさの面において、遠位部208及び近位部210よりも相対的に高い可撓性を有している。外耳道は曲がりくねった通路であることが多く、遠位部208と近位部210をこの曲がりくねった通路の対向し合う端部に配置する必要があるので、このことは特に有益である。イヤープラグ202は、管212を塞ぐことなく曲がって、曲がりくねった通路の形状に一致することが好ましい。また、イヤープラグ202は、外耳道の曲がりくねった通路に一致するような所定の好適な形状に予め曲げるか予め形成されていてもよい。所望の可撓性を得るために、イヤープラグ202をシリコーンなどの可撓性ポリマー材料で形成することができる。
【0025】
遠位部208は剛性部材214を含んでよい。剛性部材214は一般に円筒状又は管状であってよく、電極装置が遠位部208から脱出することを防止する内側リップ216を含む。剛性部材214は、遠位部208に構造的な一体性を与える金属又はポリマーで形成することができる。剛性部材214が遠位部208に管212よりも高い剛性を与えることにより、遠位部208は曲がりくねった通路に通された際にも形状を維持することができる。剛性部材214は、遠位部208に接着するか、又は遠位部208に成形することができる。あるいは、剛性部材214は、管212の壁厚よりも大きな壁厚を有する部分として遠位部208に一体化されてもよい。
【0026】
遠位部208はまた、Oリング218を含んでもよい。Oリング218は、遠位部208の内側で電極装置206を液密にシールする。Oリングは、遠位部208に接着又は遠位部208に成形するか、あるいは遠位部208と管212との間に一体形成することもできる。Oリング218は、大気圧よりも高い圧力負荷、例えば、流体が充填された耳にシステム200を挿入する際に生じる圧力がかかったときに、流体を通過させるように設計することができる。例えば、Oリング218は、近位端方向に開放するダックビルシールとして構成することができる。Oリングの圧力解放閾値として良好な値は、0.125kPa(2.2cm水柱)であることが試験でわかっている。
【0027】
近位部210は、曲がりくねった通路に挿入されたときに近位部210の形状が維持されるように、管212よりも剛性を高くすることができる。近位部210には側部通気口220を設けてもよい。側部通気口220は余分な流体を耳から逃すように機能し、余分な流体は近位部208から管212を通って逃がされる。また、側部通気口220は、管212の周囲に位置してもよい。近位部210は、図示されているように、電極装置206と境界をなすように、液密嵌合部222を有するルアー嵌合部を含んでもよい。近位部は、管212と境界をなすかかり部分222を含んでもよい。あるいは、近位部210を管212と一体に形成し、成形された補強挿入体又は肉厚部分を用いて剛性を維持することができる。
【0028】
可撓性シール要素204を使用して、システム200と外耳道との間に液密のシールを形成する。可撓性シール要素204は通常可撓性を有し、変形して外耳道の形に一致して液密のシールを形成する。2つの可撓性シール要素204が示されているが、必要なのは1つのみであり、2つを超えて使用することもできる。第1のシール要素204aは楕円形の傘のような形状とし、図に示されるように管212及び遠位部208に一体に形成されることができる。あるいは、可撓性シール要素204は角錐状(3つの側面を有する)又は三角形の形状とすることもできる。外耳道は多くの場合、楕円形又は三角形の断面を有することがわかっている。第1の可撓性シール要素204aとシステム200の最も遠位側の部分との間にオフセット226があることが好ましい。オフセット226によって、気泡が存在できるような追加的な体積が耳の内部に提供されることにより、気泡によって遠位部208が塞がれることが防止される。第2の可撓性シール要素204bは第1の可撓性シール要素よりも大きくてもよく、図に示されるように管212と一体に形成されてもよい。
【0029】
代替的な実施形態では、可撓性シール要素204は、可撓性シール要素204の表面と外耳道との間の液密なシールを促進するための接着要素を含むことができる。例えば、第1のシール要素204a及び/又は第2のシール要素204bの外側表面(すなわち外耳道に面する表面)に接着層を用いることができる。接着層は裏張りテープによって覆われていてもよく、これは、外耳道への挿入の前に剥離することができる。様々な接着剤、例えば、室温では弱い粘着性を示すだけであるが、挿入後には外耳道の熱により強い粘着性を示す温度依存性接着剤を使用することができる。温度依存性接着剤によって耳の複雑な解剖学的構造内に設置及び交換を行って、患者の負担を軽減させることが可能であり得る。イヤープラグ202を冷湿布によって冷却して粘着性を低下させることでイヤープラグ202を取り出すことができる。接着要素の例としては、CovaTec,Inc.によって製造されるEakin Cohesive(登録商標)シール及びLandec Labs,Inc.によって製造されるPre−Po(登録商標)ドレープが挙げられる。あるいは、体温で強い粘着性を示すが体温よりも高い温度に加温されると粘着性が弱くなる温度依存性接着剤を使用することもできる。この実施形態では、温湿布によって熱を加えて粘着性を低下させることでイヤープラグ202を取り出すことができる。
【0030】
電極装置206は、電極先端部228と、細長いシャフト230と、近位端側コネクタ232と、を含む。電極先端部228は、遠位部208の内部と一致するような円筒形状とすることができる。電極先端部228は、遠位部208内部の内側リップ216とOリング218との間にシールを形成するような形状に概ね形成されている。また、電極先端部228は、管212内に、スライド可能な形で配置できる大きさになっている。電極先端部228は、銀(純度99.9%)で作られることが好ましい。純粋な銀電極先端部228は酸化層を含んでもよく、イオントフォレシス法を促進させることがわかっている。従来の装置は、例えばリドカインのようなイオントフォレシス液の電気分解を引き起こす傾向を有するステンレス鋼又は金電極を用いており、こうした電気分解によってpHの値が下がり、不快感がもたらされる。銀電極は電気分解を相対的に低減し、このような不快感を抑える。あるいは、電極先端部228はステンレス鋼などの異なる金属を覆う銀コーティングを含んでもよい。
【0031】
電極先端部228は円筒形状の金属塊として示されているが、別の実施形態では電極先端部228は表面積を大きくしイオントフォレシスを促進するような異なる形態を有してもよい。例えば、ブラシに似た形態の複数の銀線を使用することができる。別の実施形態では、直径をずらして配置された複数の同心状のハイポチューブを使用することができる。別の実施形態では、スチールウールに似た形態の銀メッシュの塊を使用することができる。別の実施形態では、比較的大きい表面積を有し(例えばスポンジ状)、金又は銀をメッキ又は蒸着した成形ポリマーマトリクスプラグを使用することができる。別の実施形態では、金属コーティングした織布を、大きさに応じて外側に絶縁体を使用するかあるいは使用せずに用いることができる。別の実施形態では、ハニカム構造が内部に配置され、かつ遠位側に露出した円筒体を使用することができる。別の実施形態では、銀箔コイルを使用することができる。別の実施形態では、露出した側面を有するような大きさの(すなわち小径の)リセスプラグを使用することができる。別の実施形態では、管212内に近位シールを使用し、細長いシャフト230を管又は導線の形態の電極として使用することができる。別の実施形態では、可撓性シール要素204の表面に一体化された複数の花弁又は分枝状要素を有する(すなわち花状の)塊を使用することができる。別の実施形態では、絶縁性の外表面と、銀でコーティングされた内表面とを有する柔軟な可撓性袋状要素であって、遠位部208から遠位方向に延びる柔軟な可撓性袋状要素を使用することができる。別の実施形態では、金属コーティングされた表面を含み、遠位部208にある、1つ以上のキャビティを使用してよい。別の実施形態では、電極先端部228は、表面積を大きくするために、孔及び/又はテクスチャー加工面(例えばクロスハッチ、エッチング、サンドブラスト処理面)を含むことができる。別の実施形態では、電極先端部228は複数の種類の金属を含むことができ、そのうちの1つの金属は犠牲陽極である(例えば亜鉛)。別の実施形態では、イオントフォレシス全体を通じて、新鮮な電極表面を供給するように作動させることができるコンベヤシステム(例えば金属コーティングされた可撓性ベルト)を使用することができる。別の実施形態では、管212は、回転したときに電極の表面を洗浄してイオントフォレシス法全体を通じて新しい電極表面を供給するワイプ要素を含んでもよい。別の実施形態では、電極先端部228は、腐食を防止するのを助ける保護コーティングを含んでもよい。
【0032】
電極先端部228は、ハンダ付け又は溶接によって細長いシャフト230に取り付けることができる。細長いシャフト230は、電極先端部228と同じ材料で形成することができる。細長いシャフト230は、液体を通過させる管腔を更に含んでもよい。細長いシャフト230は、システム200を外耳道に挿入するのに先立ってユーザが細長いシャフトを予め曲げられるように、展性を有するのが好ましい。イヤープラグ202も電極装置206より先に設置されてよく、そのため電極装置206は、予め挿入されて変形したイヤープラグ202の形状に一致するような形状とすることができる。近位コネクタ232は、近位部210を液密にシールするような形状となっている。近位コネクタ232は更に導線234に電気的に接続されて電極装置206にエネルギーを供給する。
【0033】
図2Bは、本発明の一実施形態に従って、イオントフォレシスシステム200が第1の位置に配置された状態を示している。電極装置206は、電極先端部228が管212の内部の近位位置にある状態が示されている。第1の位置では、遠位部208は管212と流体連通している。第1の位置では、図に矢印で方向を示すように、流体は遠位部208を通り通気口220を通過して外部へと流れることができる。
【0034】
図2Cは、本発明の一実施形態に従って、イオントフォレシスシステム200が第2の位置に配置された状態を示している。電極装置206は、電極先端部が遠位部208の内部の遠位位置にある状態が示されている。電極装置206は、強制的にOリング218を通過させてよく、それによって、「カチッ」という可聴音を引き起こし得る。これにより、音で確認しながら電極装置206を第1の位置から第2の位置へと動かすことができる。第2の位置では、開放した遠位位置208は閉鎖され、管212とは流体連通しなくなる。別の実施形態では、外耳道内の流体の圧力が閾値を超えた場合にOリング218が流体を通過させるようにしてもよい。
【0035】
図2Dは、イオントフォレシスシステム200の代替的な実施形態を示している。この実施形態では、オフセット部226及び遠位部208はそれぞれ、内側リップ216の後ろに近接して配置された複数の整列した小孔236を含む。4つの小孔236が示されているが、別の実施形態ではこれよりも多いか又は少ない小孔を用いることもできる。小孔236の大きさは、多くの好適な大きさのうちのいずれかであってよく、例えば一実施形態では、小孔の直径は約0.0635cm(0.025インチ)であってよい。小孔236により、閉じ込められる薬液の体積が減少し、電極先端部228のより大きな表面積が露出することになるため、イオントフォレシス法で必要とされる電圧が低減される。イオントフォレシス法は電極先端部228を徐々に腐食させるため、電極先端部の電気的効率が低下するにしたがってイオントフォレシスシステムからより多くの電圧を必要とする。死体での試験により、小孔236は、小孔236のないシステム200と比較して、必要とされる電圧を10分間にわたり約2/3に低減させ得ることが実験的に示されている。したがって、小孔236の使用により、システム妨害及び電圧ノイズの発生が防止される。システム妨害は、イオントフォレシスシステムが腐食した電極先端部228の電圧需要を満たすことができずにイオントフォレシス法が意図せずに中断されてしまうような場合である。電圧ノイズは患者に不快感をもたらし得る。
【0036】
図2Eは、イオントフォレシスシステム200の代替的な実施形態を示している。この実施形態では、システム200は概ね上記に述べたようなもののままであるが、システム200の遠位端に袋状要素238が取り付けられている。袋状要素238は、薄いポリマー又は織物材料などの柔軟な物質で作られることができる。袋状要素238は、本明細書で述べるような接着部材のような外側接着物質を有してもよい。挿入及び/又はイオントフォレシスプロセスの最中に、皮膚の薄片又は耳垢などの有機破片が剥がれ落ちる場合がある。こうした破片は、システム200の電極に付着し、電極の活性表面積を減少させ得る。使用時に、システムを耳に挿入し、鼓膜122まで続く外耳道の表面に袋状要素238を接着させることができる。袋状要素238は、綿棒などのプローブで物理的に押し込むことによって外耳道に対して膨らませるか、あるいは膨張する発泡体又はバルーンを用いて膨らませることができる。いくつかの実施形態では、袋状要素238は二重壁バルーンであることができる。袋状要素238は、外耳道と電極との間に物理的な障壁を与えることによって破片が電極に付着することを防止する。袋状要素は更に、外耳道の壁による薬液の吸収を遮断することによって薬液の損失を低減させることができる。
【0037】
図2F〜2Hは、イオントフォレシスシステム200の代替的な実施形態を示している。これらの実施形態では、システム200は概ね上記に述べたようなもののままであるが、可撓性電極240がシステム20の遠位端から延出している。可撓性電極240は、絶縁性側面242と、露出した金属(例えば銀)部分を有する導電性側面244と、を含み得る。可撓性電極240はポリイミドなどの可撓性ポリマー材料で作られ、金属ストリップと共押出しすることができる。可撓性電極240は、露出した金属部分がループの内側部分となるような1本のループ状のバンドとして構成することができる。あるいは、図2Gの可撓性電極246によって示されているように、1つを超えるバンドを使用することができる。可撓性電極240の延長部の長さは、特定の患者の解剖学的形状に従って調節することができる。使用時に、導電性側面244が外耳道と接触しないので、可撓性電極240は、図2Hに示されているように、ショックを与えることなく外耳道と接触することができる。可撓性電極204はその可撓性のために外耳道から偏向し得る。可撓性電極240は、イオントフォレシス法の効率をより高めるための大きな電極表面積を与えるものである。大きな電極表面積によって、更に薬液中の気泡の形成を低減することができる。
【0038】
図3A〜3Cは、本発明の一実施形態による、患者の耳の鼓膜を麻酔するためのイオントフォレシスシステム200を使用する方法を示している。患者の耳300の断面が示されている。患者は、最初、治療する耳を上にして横向きに寝かされる。次いで、図に示されるようにイオントフォレシス液302を外耳道に注入する。次いで、液を充填した耳にイヤープラグ304を挿入して外耳道内にイオントフォレシス液を密封する。イヤープラグ304は概ね本明細書の実施形態で述べたようなものである。イヤープラグ304は、場合に応じて外耳道に挿入する前にイオントフォレシス液302でプライミングしておいてもよい。
【0039】
図3Bでは、挿入されたイヤープラグ304に電極装置306が挿入されている。電極装置306は、可鍛性であり、挿入に先立って任意に予め曲げておいてもよい。電極装置306は、イヤープラグ304に完全に挿入されると耳に聞こえる音を生じることにより、電極装置が適切に配置されたことを確認する耳に聞こえるシグナルをユーザに与える。電極装置306が完全に挿入されると、外耳道308の内部で圧力が高まり、図に示されるように余分な液体308がプラグの後部から逃がされて液圧を大気圧と直ちに平衡させる。わずかな圧力上昇であっても感染した耳には大きな痛みを生じるため、これは極めて有利な点である。電極装置306が完全に挿入された後、電極装置306に電圧を印加して患者を治療することができる。他方の耳も本明細書で述べられるようにして治療することができる。
【0040】
別の実施形態では、外耳道への最初の挿入時に、例えば電極先端部228が管212内に位置するような第1の位置にまで、電極装置306をイヤープラグ304に部分的に挿入することができる。イヤープラグ304を配置した後、電極装置306を第1の位置から、イヤープラグ304に完全に挿入される第2の位置(例えば作業位置)に動かすことができる。
【0041】
更なる別の代替的実施形態では、外耳道への挿入に先だって電極装置306をイヤープラグ304に完全に挿入してもよい。イヤープラグ304が外耳道に挿入されるにしたがって耳の内部の圧力が高まるが、これと同時に、圧力が特定の閾値を上回った場合に余分な液体を逃がすイヤープラグ304内部のシールを通って圧力が取り除かれる。この実施形態は、イヤープラグが耳の内部に配置された状態でユーザが電極を動かす必要がないため有利である。
【0042】
図3Cは、直立姿勢における耳、すなわち患者を示している。装置304は電極からのオフセット310を含んでおり、オフセット310により気泡312は図に示される位置へと動かされる。オフセット310は、気泡の、不完全又は効果のない治療につながる電極上の直接又は部分的な静置を防止する。オフセット310によりシステム200を直立姿勢で使用することが可能となり、これにより両方の耳を同時に治療することができるため有利である。
【0043】
別の実施形態では、患者はイオントフォレシス液302又はイヤープラグ304の挿入に先だって直立姿勢をとることができる。まず、イヤープラグ304を、電極306が完全に挿入された状態で外耳道に挿入する。この実施形態では、電極装置306は外耳道を充填するための別の管腔を含む。イオントフォレシス液302を電極装置306を通じて注入して外耳道を充填する。外耳道がイオントフォレシス液302で満たされると、耳の内部の圧力が高まるが、これと同時にイヤープラグ304内部のシールを通って圧力が取り除かれる。したがって、圧力が所定の閾値を上回ると余分な液体が逃がされる。この実施形態は、必要に応じて一方又は両方の耳を同時に充填し、更にこれを患者が直立した姿勢で行うことができるため有利である。
【0044】
別の実施形態では、装置304が図3Cに示されるように配置された後に近位側のシール材を適用することができる。シール材は、柔らかいパテ状の物質から作製することができ、例えば骨ろう(例えば蜜ろう、パラフィン、又はパルミチン酸イロプロピル)を使用することができる。シール材は、別々に、又は装置304にシール可能に取り付けられた部材として、例えば近位(例えば図2Aのシール部材204bと側部排出口220との間)に配置したディスクとして使用することができる。シール材は、体温にまで加温されると成形可能となることができる。使用時に、図3Cに示されるように装置304が配置された後、シール材を耳甲介及び外耳の解剖学的構造内に押し込んでその形状に形成することができる。シール材は、外耳の複雑な解剖学的構造に形状が一致してしっかりと固定を行うことができる。また、シール材は液密なシールをもたらすことができ、シール材は、装置304の代わりに一次的なシールをもたらしているので、この液密なシールによって、外耳道よりも若干大きさの小さい装置304を使用可能にし、つまりは、装置を外耳道に、より速くかつより苦痛の少ない形で挿入可能にする。
【0045】
あるいは、シール材の代わりに、又はシール材と併せて、布帛パッチを使用することもできる。この布帛パッチは、ディスクの形状を有することができるとともに、近位(例えば図2Aのシール部材204bと側部排出口220との間)に配置したディスクとして、装置304にシール可能に取り付けることができる。布帛パッチは、本明細書で述べる温度依存性接着剤のような接着剤を含んでもよい。あるいは、この布帛パッチは、例えば3M,Inc.製のNexcare(商標)Tegaderm(商標)Transparent Dressingで用いられているような従来の接着剤を使用することもできる。使用時に、図3Cに示されるように装置304が配置された後、布帛パッチを耳甲介及び外耳の解剖学的構造内に押し込んでその形状に形成することができる。布帛パッチは、液密シール及びしっかりとした固定の両方をもたらすことができる。したがって、布帛パッチは標準よりも小さい装置304とともに使用することもできる。
【0046】
図4は、本発明の一実施形態による、イオントフォレシスを用いて患者の耳の鼓膜を麻酔するためのキット400を示している。キットは、本明細書に開示される装置とほぼ同様のシステム402を含む。各システム402は、イヤープラグ404及び電極装置406を含む。図に示されるように、様々な大きさのイヤープラグが可能である。キット400は更に、対極板410を含むとともにシステム402と電気的適合性を有するコントローラ408を含む。コントローラ412は、イオントフォレシス法を行うための電力をシステム402に供給する。適合するコントローラの例は、既に参照により組み込まれたとともに、本願と同一出願人に譲渡された米国特許出願第11/962,063号に示されている。
【0047】
図5Aは、本発明の一実施形態による傘状の形態の可撓性シール要素500の正面図を、図5Bはその側面図を示している。可撓性シール要素500は、一体形成されたリブ502又はスポークを含む。一体リブ502により可撓性シール要素500の残りの部分504をリブ部分よりも薄く形成することが可能であり、このため可撓性シール要素500は極めて容易に変形する。したがって、例えばシステム200のような可撓性シール要素500を組み込んだ装置では、一体リブ502のないシール要素よりも弱い力で外耳道の内部にシールを形成することが可能である。あるいは、一体リブ502は、可撓性シール装置500の内側の部分に配置されてもよい。
【0048】
図5Cは、本発明の一実施形態による可撓性シール要素506の正面図を、図5Dはその側面図を示している。可撓性シール要素506は切り欠き部分508を含む。切り欠き部分508は薄い材料のウェブを特徴とする。切り欠き部分508は、可撓性シール要素506の残りの部分510よりも薄いので、可撓性シール要素506は非常に変形しやすい。したがって、可撓性シール要素506を組み込んだ装置、例えばシステム200では、切り欠き部分508のないシール要素よりも弱い力で外耳道の内部にシールを形成することができる。あるいは、切り欠き部分508は、可撓性シール装置506の内側部分に位置してもよい。
【0049】
図5Eは、本発明の一実施形態による可撓性シール要素510の斜視図を、図5Fはその正面図を示している。図に示されるように、可撓性シール要素506は角錐又は三角形の形状を有する。可撓性シール要素506は、外耳道をシールするための3つの側面を含む。外耳道は円形の断面を有しておらず、その形状は三角形であることが多い。そのため、可撓性シール要素510は極めて効果的に外耳道内に適合して外耳道をシールすることができる。
【0050】
図6Aは、本発明の一実施形態によるイヤープラグ600の背面図を、図6Bはその側面図を示している。イヤープラグ600は、管状要素及び本明細書で概して述べられるような少なくとも1つの可撓性シール要素を含み得る本体602を含む。イヤープラグはイヤーフック604を更に含む。従来の装置では、イヤープラグを保持するために耳あて又はヘッドホン型の形態の保持機構を使用していた。これらの従来の装置は、ユーザ(例えば小児)にとっては苦痛かつ不快となり得るものであり、イオントフォレシス治療が患者によって妨害される場合がある。イヤーフック604はシリコーンなどの可撓性ポリマーで形成することができ、また、イヤープラグ600と一体に形成することができる。また、イヤーフック604は、芯(例えばワイア)に巻き付けられた、スケルトン状の構造の可撓性ポリマーを含んでもよい。この芯は、イヤーフック604が特定の耳の輪郭に合わせて成形されるように、可鍛性であってよい。あるいは、芯を弾力のあるものとし、外耳からイヤープラグ600に一定の力が加えられるのを助けてもよい。
【0051】
図6Cは、本発明の一実施形態によるイヤープラグ600の使用状態を示している。イヤーフック604は、耳の耳輪脚606に巻き付けられるように設計されている。イヤーフック604は比較的嵩張らず、患者にとって過度に邪魔には感じられないため、他の従来の装置と比較して有利である。
【0052】
図6Dは、本発明の一実施形態による一体型イヤーバッド608を示している。イヤーバッドは、電源及びコントロールユニットを含む本体610を含む。このコントロールユニットは、図4のコントロールユニット412の機能を有することができる。本体610は、イオントフォレシス法を開始又は停止するためのコントロールボタンを含んでよい。本体610は、1つ以上の接着パッチを含んでよい。イヤーバッド608は、湾曲した形状を有する可鍛性ブリッジ612を更に含む。可鍛性ブリッジ612は、ゴムなどの可撓性のポリマーで作られ、可鍛性を有する金属芯材を有してもよい。イヤープラグ614は、可鍛性ブリッジ612に旋回可能に連結することができる。イヤープラグ614は、本明細書に開示されるイヤープラグと概ね共通の構造を有することができる。ケーブル616は、本体610から延び、対極板618に接続している。対極板618は、他の対極板との接続を可能にするスナップ要素を含んでもよい。
【0053】
図6Eは、本発明の一実施形態による一体型イヤーバッド608の使用状態を示している。本体610は、図示されているように、耳輪の後ろに配置することができるとともに、患者の皮膚に一時的に接着することができる。可鍛性ブリッジ612が耳輪に巻き付けられ、イヤープラグ614が外耳道に挿入されている。一体型イヤーバッド608はイヤープラグ614を支持して、不要な動きを防止するとともに、液密のシールを確保するのを助ける一定の装着力をもたらす。可鍛性ブリッジ612は、より大きい又はより小さい装着力をもたらすように調節することができる。イヤープラグ614は、一体型イヤーバッド(ear bug)608がどちらの耳でも使用できるように回転させることができる。対極板618は、コントロールユニットに電気の帰還路をもたらすように、患者の皮膚の一部に接着することができる。一体型イヤーバッド608は一体型コントロールユニットを含むので、患者は処置中に自由に動くことができる。
【0054】
図6Fは、本発明の一実施形態による一体型イヤーバッド620の使用状態を示している。一体型イヤーバッド620は、図6Dのイヤーバッド608と同様に構成されているが、コントロールユニット622が対極板パッチとは別に収容されている。一体型イヤーバッド620は、耳の耳輪を完全に包囲する可鍛性本体624を更に含む。可鍛性本体624はゴムなどの可撓性のポリマーで作られることができ、可鍛性の金属芯材を有し得る。可鍛性本体624は、不要な動きを防止するとともに、液密のシールを確保するのを助ける一定の装着力をもたらすように、様々な耳の解剖学的構造にフィットするように調節することができる。
【0055】
図7Aは、本発明の一実施形態によるイヤープラグ700を示している。耳の解剖学的構造の異なる領域は、異なる大きさの電気抵抗を有する。電流は抵抗が低い領域を選択的に通って流れる。例えば、鼓膜は外耳道の軟骨の領域よりも低い抵抗を有している。抵抗が高い領域への不要な電気的接触が防止されることが望ましく、また、患者の快適さのためには、供給される電流の量が制限されることが望ましい。鼓膜のできるだけ近くに電極を配置することで全体の電流供給量が低減されるため、好ましい結果が得られる。しかしながら、外耳道は曲がりくねっていることが知られているので、耳の他の領域と接触せずに鼓膜の近くに電極を配置するのは困難である。イヤープラグ700はこれらの難点を解決するものである。
【0056】
イヤープラグ700は、外耳道内にイヤープラグ700を密封するためのシール体702を含む。シール体702は、本明細書に開示される他の同様のイヤープラグの構造を含んでもよい。シール体702は、外耳道を充填するための管腔及び通気口を含んでいてもいなくてもよい。イヤープラグ700は、シール体702を貫通して延びる絶縁体704を含む。絶縁体704の延長部分706には電極708が収容されている。延長部分706は、シール体を大きく超え使用時には鼓膜の近くにまで電極708を延長することから有利である。遠位部706もまた、電極708を引き続き絶縁しつつ外耳道の一部に接触し得る。
【0057】
図7Bは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用してよい代替的な延長部分710の斜視図を、図7Cはその断面図を示している。延長部分710は、内側電極714への流体のアクセスをもたらす複数のスリット712を特徴とする。延長部分710は、切り抜いてから外側絶縁バリアでコーティングしたハイポチューブから形成することができる。この延長部分は、必要な部品の数を減らすとともに、電極714のために比較的大きい表面積を用いることによって電流密度も低下させることから、有益である。電流密度が低いと患者の快適さが高くなることがわかっている。あるいは、ドーム形部分710を除去し、図に示されているものよりも多いか又は少ないスリット712を使用してもよい。
【0058】
図7Dは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分710の斜視図を示している。延長部分710は、絶縁部分716a、716b及び電極718を含む。電極718は、ニッケルチタンのような超弾性合金で構築してよい。これにより、電極716aが外耳道の一部と接触すると、電極718は必要なだけ容易に偏向する。電極718は、図に示されているものよりも長くてもよく、鼓膜の近くまで電極718を更に延ばすように、複数の絶縁部分716bを含む。
【0059】
図7Eは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分720の斜視図を示している。延長部分720は、図7B及び7Cに示されているものと同様のハイポチューブ構造のものである。延長部分720は、影付き部分で示される内側電極部分724との流体連通を可能にする複数の穿孔722を含む。延長部分720は、切り抜いて穿孔してから外側絶縁バリアでコーティングしたハイポチューブから形成することができる。
【0060】
図7Fは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分726の斜視図を示している。延長部分726は、容易に変形可能であるが弾性を有するバスケット状要素として構成することができる。延長部分726は、外耳道の一部と接触すると容易に偏向する。延長部分728は、外側絶縁材料728と内側導電部分730とから作られている。延長部分726は、ニッケルチタンなどの超弾性材料で作られてよく、例えば厚さ0.0127cm(0.005インチ)の薄肉であってよい。
【0061】
図7Gは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分732の斜視図を示している。延長部分732は、外側絶縁部材734及び複数の電極736を含む。複数の電極736は、絶縁部材734の内部に延びている。この構成は、導電性の表面積が大幅に増え、そのため電流密度の低減を助けることから有利である。この構成はまた、使用時に遠位方向の電流を鼓膜に向ける。
【0062】
図7Hは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分738の斜視図を示している。延長部分738は、図7Fに示されている延長部分と同様のものである。ただし、図に示されるように電極742が最遠位の点まで絶縁されている。この構成はまた、使用時に遠位方向の電流を鼓膜に向ける。
【0063】
図7Iは、例えば図7Aに示されているイヤープラグ700とともに使用し得る代替的な延長部分744の斜視図を、図7Jはその分解図を示している。延長部分744は、図に示されるようにコイル状の形態を含んでおり、コイル状の形態は更に積層構造を含む。積層構造は、外側絶縁部材746、導電部材748、及び内側絶縁部材750を含む。内側絶縁部材750は、導電部材750を露出させる開口部752を含む。延長部分744は、最初にコーティングされた平らな導線の一方の側面を切って開口部752を形成し、更にコイル状に巻いて作られることができる。
【0064】
図8Aは、本発明の一実施形態による拡張式のイヤープラグの側面図を、図8Bは、その動作時の図を示している。イヤープラグ800は、外側拡張部分802及びエクスパンダー804を含む。外側拡張部分802とエクスパンダーとは、図に示されるようにイヤープラグの遠位端付近の内部で連結することができる。エクスパンダー804は、拡張部分内でスライド可能であり、エクスパンダー804を近位に引き出すことによって、図8Bに示されているように、外側拡張部分を強制的に拡張して第2の形態にすることができる。外側拡張部分802は、例えばシリコーンなどの軟質ポリマーで作ることができる。この構成は、特定の耳の解剖学的構造内に正確に適合するばかりでなく、より深い位置への配置が可能であるため有利である。
【0065】
図9Aは、本発明の一実施形態による発泡プラグ装置900を示している。発泡プラグ装置900は、電極902、及び電極902に取り付けられた穴開き管904を含む。発泡プラグ906は、電極902を包囲している。発泡プラグ906は、円筒形又は円錐形の形状を有することができ、連続気泡の発泡材から構築することができる。電極902は、可鍛性の金属(例えば銀)の単線若しくはより線、又は中実管若しくは穴開き管から構築することができ、穴開き管904の近位端から延びる絶縁体908を含むことができる。電気的コネクタ(図示せず)は、電極902の近位端に接続することができる。穴開き管904は、可撓性で絶縁性又は導電性の材料で作られることができ、通常は全体にわたって穴が開けられている。発泡プラグ装置900は、本明細書で述べられるような更なるシール要素(図示せず)及び/又は接着剤を更に含んでもよい。使用時に、発泡プラグ906を圧縮して外耳道に挿入し、次いで膨張させることによって外耳道がシールされる。発泡プラグ902の連続気泡の特質のため、発泡プラグ装置900を挿入する前又は後に薬液を外耳道に導入することができる。発泡プラグの多孔性のために薬液は穴開き管904の全長にわたって接触するため、穴開き管904の穴によって電極の表面積が増大する。発泡プラグの多孔性のため、更にイオントフォレシス法の間の圧力の上昇が防止される。
【0066】
図9Bは、本発明の一実施形態による発泡バルーン装置910を示している。発泡バルーン装置910は電極921を含む。電極912は、可鍛性金属(例えば銀)の単線若しくはより線、又は中実管若しくは穴開き管から構築することができる。一実施形態では、電極912は、ポリエーテルブロックアミド(例えばPebax(登録商標)55D)から作製できる内径約0.152cm(0.060インチ)、外径約0.183cm(0.072インチ)の外側管腔(図示なし)を含み得る。電気的コネクタ(図示せず)は、電極の近位端に接続することができる。電極912は、膨張絶縁体が複数の導線ストランドを包囲した遠位端を更に含み得る。発泡プラグ914が電極912を包囲している。発泡プラグ914は、連続気泡の発泡材から構築することができる。密度が5ポンド/立方フィートであるFoamex Innovation Inc.製のポリエーテル発泡材(EC85HDE)が好適であることがわかっている。発泡プラグは、外径が5〜15mm、内径が2.5mmの円筒形の形状を有し得る。外径として8.3mm及び11mmを用いた。発泡プラグは、円錐形など他の形状を有してもよい。発泡プラグは、二重壁バルーン916に包まれている。二重壁バルーン916は、柔軟性、半柔軟性、又は非柔軟性の材料から構築することができる。一実施形態では、二重壁バルーン916は、成形したマンドレルに、NuSil Technology LLC.製のMED10−6400などのシリコーンを浸漬コーティングすることによって形成することができる。続いて、二重壁バルーン916を電極912の一部に接着させてから、部分的に裏返して二重壁を作製することができる。これにより発泡プラグ914を壁の間の空間に挿入することができる。バルーン916の遠位部は、Qosina Corp.より入手可能なT connector 88207のような吸引カップラ918に連結することができる。
【0067】
使用時に、吸引カップラ918に真空を適用することにより、発泡プラグ914を圧し潰すことができる。この状態で発泡バルーン装置910を外耳道に挿入することができる。適所に配置後、真空状態を解除することができ、それによって発泡体914は膨張する。発泡体914の膨張により、二重壁バルーン916が押されて外耳道壁と接触し、薬液を外耳道内に液密にシールする。二重壁バルーンを膨らませるのに正空気圧を使用しないので、バルーンが破裂する危険がない。外耳道から取り出すには真空を再び適用して発泡体914を再び押し潰すとよい。
【0068】
図10Aは、本発明の一実施形態による検鏡ポート1000を示している。検鏡ポート1000は、ほぼ円錐形の形状を有し得る。検鏡ポート1000は、ポリマー又は金属合金で形成する作られることができる。検鏡ポート1000は、比較的可撓性であっても剛性であってもよい。検鏡ポート1000は、遠位側ポート1004に着脱可能に連結された近位側ポート1002を含み得る。近位側ポート1002は、軽い締りばめ又はネジ連結によって遠位側ポート1004に連結することができる。内側プラグ1006を遠位側ポート1004に着脱可能かつシール可能に連結することができる。内側プラグ1006は、図2Fに示されているようなループ状電極として構成された電極1008を含む。しかしながら、電極1008は概して本明細書に開示される電極のいずれかの形態であってよい。内側プラグ1006は、本明細書に開示される他のシール部材と同様に構成されるシール部材(図示せず)を含んでもよい。遠位側ポート1004は、本明細書で開示される接着剤のいずれかの形態であってよい接着剤層1010を含んでもよい。接着層1010は、柔軟なシリコーンパテ、オストミーバッグ接着用ガスケット材料、膨張性発泡材、印象材、ゲル、骨ろう、バルーンセメント、又はシリコーンガスケットの層であってもよい。
【0069】
図10Bは、本発明の一実施形態による代替的な遠位側ポート1012を示している。遠位側ポート1012は、遠位側ポート1004と同様に構成されているが、遠位側ポート1012は電極表面1014を含む。電極表面1014は、遠位側ポート1004の内表面に結合された銀などの金属の層であり得る。内側プラグ1016を遠位側ポート1012に着脱可能かつシール可能に連結することができる。内側プラグ1016は、遠位側ポート1004に内側プラグ1016が連結される際に電極表面と電気的に接触することが可能な接触表面1018を含んでもよい。
【0070】
図10Cは、本発明の一実施形態による別の遠位側ポート1020を示している。遠位側ポート1012は、遠位側ポート1004と同様に構成されているが、遠位側ポート1012は、複数の触手状電極1022を有するプラグに連結されている。触手状電極1022は、極めて可撓性であり、より大きな表面積をもたらす。触手状電極1022は、露出した金属の絶縁領域及び導電領域を含んでもよい。
【0071】
図10D及び10Eは、本発明の一実施形態による検鏡ポート1000の使用状態を示している。検鏡ポート1000は、近位側ポート1002によって処理されることができる。近位側ポート1002の直径が大きいことにより、検鏡ポート1000を指で操作し挿入することが可能である。検鏡ポートは、鼓膜を見ることができるように調節することができる。遠位側ポート1004上の接着層1010は、遠位側ポート1004と外耳道との間の液密なシール及び固定をもたらす。検鏡ポート1000が最適な位置に配置された後、遠位側ポート1004から近位側ポート1002を取り外すことができる。次いで、遠位側ポート1004を薬液で充填し、内側プラグ1006を遠位側ポート1004内に挿入することができる。次いで、内側プラグ1006に電流を供給してイオントフォレシス法を完了させることができる。
【0072】
図10F〜10Hは、本発明の一実施形態による検鏡ポート1000の使用状態を示している。検鏡ポート1000は、電極表面1014を有する別の遠位側ポート1012を含む。遠位側ポート1012は、図10D及び10Eによれば、既に外耳道内に配置されており、近位側ポート1002は取り外されている。遠位側ポート1012を薬液で充填し、内側プラグ1016を遠位側ポート1012内に挿入することができる。次いで、内側プラグ1016に電流を供給してイオントフォレシス法を完了させることができる。
【0073】
図11は、本発明の一実施形態による、患者の頭部に装着されている簡略化支持構造1100を示している。簡略化支持構造1100は、患者が目覚めており、直立姿勢の状態で、患者の頭部に装着されている。支持構造1100は、本明細書に記載されている1つ以上のシステムを患者の耳Eと揃った状態で保持するように構成されている。図11に示されるように、支持構造1100は、第1の本体1110が第1の耳と係合し、第2の本体1110が第2の耳と係合し、1つの部材が第1の本体と第2の本体との間で患者の頭部の周囲に延びるような整列構造を有することができる。本発明のイヤープラグのいずれも、図11と同様のヘッドセットによって頭部に連結されることができる。
【0074】
図12は、本発明の一実施形態による、患者の頭部に装着されている簡略化支持構造1200を示している。支持構造1200は眼鏡に似た構成を有し、眼鏡と同様の要領で装着することができる。イヤープラグ1210は、支持構造1200にヒンジ式に連結されており、支持構造1200によって外耳道内に挿入することができる。イヤープラグ1210は、本明細書に開示されるイヤープラグのいずれかと同様に構成されることができる。支持構造1200は不要な動きを防止し、イヤープラグ1210に対してシールするための力をもたたすことができる。支持構造1200は、様々な大きさの患者に合わせて幅及び長さを調節するための調節可能な要素を含むことができる。支持構造1200は、患者がビデオを見ることができるように液晶パネルなどの視覚パネルを含んでもよい。イヤープラグ1210は、患者に音声を与えるスピーカーを更に含んでもよい。
【0075】
図13A及び13Bは、別の実施形態による、イオントフォレシス物質を鼓膜に送達するためのイヤープラグ1300を示している。イヤープラグ1300は、細長い管1304を有する可撓性シール要素1302を含み、この細長い管1304は、可撓性シール要素から近位に延びている。イヤープラグ1300は、シリコーンなどの可撓性材料から形成され得る。可撓性シール要素1302は、図示されているように、傘状の形状をしていてよい。可撓性シール要素1302は、外耳道を液密にシールする遠位表面1306を有し、この遠位表面1306は、複数の微小孔1308を含む。微小孔1308は、特定の圧力閾値を超えたら、過剰な流体(空気及び/又は液体)を排出するように構成されている。微小孔1308は一般に、静水条件において、すなわち圧力閾値未満では流体を排出することはない。一実施形態では、微小孔1308の直径は約0.0051cm(0.002インチ)〜約0.0635cm(0.025インチ)であってよく、一部の実施形態では、約0.0203cm(0.008インチ)〜約0.0381cm(0.015インチ)であってよい。別の実施形態では、微小孔1308は、可撓性シール要素1302内に作られたセルフシール式の穴であり、圧力がかからないと流体を通さない。一実施形態では、10〜25個の微小孔が可撓性シール要素1302に設けられている。微小孔1308から流体分泌物を吸収するように、発泡体インサートのような吸収性インサート(図示せず)を可撓性シール要素の後ろに配置してよい。イヤープラグ1300は、上述のように、電極装置206に連結することができ、電極装置206は、管1304に挿入することができる。
【0076】
使用時に、まずイヤープラグ1302を患者の外耳道に挿入し、それによって可撓性シール要素1302と患者の鼓膜との間に空間を作る。続いて、可撓性シール要素1302と鼓膜との間の空間に、細長い管1304を介してイオントフォレシス物質を注入することができる。イオントフォレシス物質の注入によって、上記空間内の流体圧力が上昇し、それと同時に、流体が微小孔1308を通って抜けることによって、流体圧力が取り除かれる。したがって、患者は、空間の過度な加圧による不快感をきたさない。イオントフォレシス物質が微小孔1308を通って放出されるのが観察されたら、ユーザはイオントフォレシス物質の注入を止めてよい。続いて、電極装置206を上述のようにイヤープラグ1300に挿入し、電圧を印加して、イオントフォレシス物質を用いて鼓膜を麻酔することができる。
【0077】
図13Cは、別の実施形態によるイヤープラグ1310を示している。イヤープラグ1310は、上記のイヤープラグ1300と同様に構成されている。イヤープラグ1310は、遠位表面1314を有するとともに、その内部にプレナム1316を有する可撓性シール要素1302を含む。プレナム1316は、遠位表面1314の複数の微小孔1308に流体連結しているとともに、イヤープラグ1310の近位部に抜ける排出チャネル1318にも流体連結している。イヤープラグ1310は、電極装置206と連結できる細長い内管1320を含む。排出チャネル1318は、細長い内管1320と細長い管1304との間にある。あるいは、細長い内管1320を細長い管1304に一体化して、単一の管を形成してもよい。
【0078】
使用時に、イヤープラグ1310は、イヤープラグ1300と同様に用いる。イオントフォレシス物質の注入中に、微小孔1308を通して流体をプレナム1316の中に、続いて排出チャネル1318から排出させることができる。イオントフォレシス物質が排出チャネル1318を通って放出されるのが観察されたら、ユーザはイオントフォレシス物質の注入を止めてよい。あるいは、ユーザは、排出チャネル1318を通してイオントフォレシス物質を注入してもよく、流体を細長い内管1320から排出させることができる。この実施形態では、必要に応じて余分なイオントフォレシス物質が外耳道に供給されるように、プレナム1316はイオントフォレシス物質のリザーバとして機能し得る。
【0079】
図14Aは、別の実施形態による、イオントフォレシス物質を鼓膜に送達するためのシステム1400を示している。システム1400は、イヤープラグ1402(本明細書に開示されているイヤープラグのうちのいずれかの構成を有してよい)と、電極装置206と、を含む。イヤープラグ1402は、イヤープラグ1402の管腔内の遠位に位置するとともに、イヤープラグ1402の管腔と一体化された少なくとも1つの電極1404を含む。電極1404は、銀合金線から形成させることができ、円筒形ケージとして構成できる。電極1402は、電極装置206の電極先端部228と電気的に連結するように構成されているとともに、電極先端部228からエネルギーも受容する。電極1404は、電極先端部228に圧縮力を印加できる。電極1404は、イオントフォレシス治療に利用可能な電極総表面積を最大化する。電極1404は更に、電極要素間に空間的間隔を作り出して、イオントフォレシス治療中に、電極表面上に形成される沈殿物の電流阻止効果を低下させる。
【0080】
図14Bは、軸方向に巻かれた円筒形ケージであって、軸方向に配列された複数のフィンガー又はループ1406を形成する円筒形ケージとして構成された電極1404を示している。図14Cは、別の実施形態による電極1408を示している。この図では、電極1408は、電極先端部228に圧縮力を印加できるコイルとして構成されている。
【0081】
図15A及び15Bは、別の実施形態による、イオントフォレシス物質を鼓膜に送達するためのヘッドセット1500を示している。ヘッドセット1500は、患者の首の後ろに配置されるように構成されているネックループ1502を含む。ネックループ1502は、拡張すると抵抗力及び圧縮力を印加するように構成されている。ネックループ1502は、左イヤーフック1504L及び右イヤーフック1504Rに連結されている。イヤーフック1504Lは患者の耳の左耳甲介の後ろを包むように、イヤーフック1504Rは右耳甲介の後ろを包むように構成されている。イヤーフック1504Lは、患者の左側頭骨の上に配置されるように構成されている左接触領域1506Lを、イヤーフック1504Rは、右側頭骨の上に配置されるように構成されている右接触領域1506Rを含む。
【0082】
左スイングアーム1508Lはバネ式であり、左イヤーフック1504Lに旋回する形で連結されており、右スイングアーム1508Rはバネ式であり、右イヤーフック1504Rに旋回する形で連結されている。左イヤープラグ1510Lは左スイングアーム1508Lに、右イヤープラグ1510Rは右スイングアーム1508Rに連結されている。左イヤープラグ1510L及び右イヤープラグ1510Rは、本明細書に開示されているイヤープラグのうちのいずれかと同様に構成されていてよい。左流体チャネル1512Lは、イヤーフック1504L及びネックループ1502に沿って外側を通っており、右流体チャネル1512Rは、イヤーフック1504R及びネックループ1502に沿って外側を通っており、あるいは内側を通ってもよい。
【0083】
左流体チャネル1512Lは左イヤープラグ1510Lに流体連結して、左イヤープラグ1510Lにイオントフォレシス物質を供給し、右流体チャネル1512Rは右イヤープラグ1510Rに流体連結して、右イヤープラグ1510Rにイオントフォレシス物質を供給する。左電気的接続部1514Lは、イヤーフック1504L及びネックループ1502に沿って内側及び外側を通っており、右電気的接続部1514Rは、イヤーフック1504R及びネックループ1502に沿って内側及び外側を通っている。左電気的接続部1514Lは、左イヤープラグ1510Lの電極に電気的に接続して、左イヤープラグ1510Lの電極にエネルギーを供給し、右電気的接続部1514Rは、右イヤープラグ1510Rの電極に電気的に接続して、右イヤープラグ1510Rの電極にエネルギーを供給する。
【0084】
図15C及び15Dは、別の実施形態よるヘッドセット1500の使用状態を示している。ネックループ1502は患者の首の後ろに配置されており、イヤーフック1504Lは患者の耳の左耳甲介の後ろに配置され、イヤーフック1504Rは患者の耳の右耳甲介の後ろに配置されて、ヘッドセット1500を支持する。ヘッドセット1500の位置を保つように、ネックループ1502は、患者の側頭骨の上に配置されている左及び右接触領域1506L/Rに圧縮力を印加する。側頭骨は、患者の身体に対して固定されているので、会話などの顔の動きによって付与される動作によってヘッドセット1500が動くことはない。
【0085】
左スイングアーム1508Lは、ネックループ1502の圧縮力から独立した力を左イヤープラグ1510Lに印加し、右スイングアーム1508Rは、ネックループ1502の圧縮力から独立した力を右イヤープラグ1510Rに印加する。したがって、ヘッドセットの配置の際には、左イヤープラグ1510Lと右イヤープラグ1510Rの両方を配置する必要はなく、処置での必要性に応じて、左イヤープラグ1510L又は右イヤープラグ1510Rのいずれか1つ、及び対応するスイングアーム1508L又はRのみを用いてよい。また、左スイングアーム1508L及び右スイングアーム1508Rによって印加される力は、ネックループ150の圧縮力によって決まるものではないので、左スイングアーム1508L及び右スイングアーム1508Rによって印加される力は、患者の頭の幅で決まるものではない。したがって、ヘッドセット1500は、左イヤープラグ1510L及び右イヤープラグ1510Rのシール性能を損なうことなく、様々な頭の大きさの患者に用いることができる。
【0086】
左流体チャネル1512L及び右流体チャネル1512Rにイオントフォレシス物質を低圧力(例えば重力送り)で充填して、左イヤープラグ1510L及び右イヤープラグ1510R、並びに対応する外耳道を充填することができる。低圧力充填は、外耳道内に気泡の形成を防ぐのを補助する。イオントフォレシス液中の気泡は、イオントフォレシス液への電流の印加に悪影響を及ぼし得るので、気泡の形成を防ぐのは有益である。続いて、左電気的接続部1514L及び右電気的接続部1514Rに電圧を印加して、左イヤープラグ1510L及び右イヤープラグ1510Rの電極にエネルギーを供給し、その結果、外耳道内のイオントフォレシス物質にエネルギーを供給して、患者の鼓膜を麻酔することができる。
【0087】
本発明は、その本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態で実施することができる。これらの他の実施形態は、以下の「特許請求の範囲」に記載される本発明の範囲に含まれるものとする。
【0088】
〔実施の態様〕
(1) イオントフォレシス物質をヒト又は動物患者の耳の鼓膜に送達する方法であって、
イヤープラグを患者の外耳道に挿入することと、
前記イヤープラグの可撓性シール要素の一部を前記外耳道内に液密にシールして(fluidly sealing)、前記イヤープラグと前記鼓膜との間に空間を作ることと、
イオントフォレシス物質を前記イヤープラグに注入して、前記イヤープラグと前記鼓膜との間の前記空間を充填することと、
を含み、
前記空間が、注入中、前記イオントフォレシス物質で加圧されることになり、前記空間内の流体を前記可撓性シール要素の微小孔を通じて排出して、前記圧力を抜く、方法。
(2) 前記微小孔が、圧力閾値を超えたら前記流体を排出するように構成されている、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記微小孔が、静水条件下では前記流体を排出しないように構成されている、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記流体を前記イヤープラグのプレナムに排出する、実施態様1に記載の方法。
(5) 電極装置を前記イヤープラグに挿入して、前記電極装置の電極先端部を前記イオントフォレシス物質と接触させることと、
前記電極装置に電圧を印加して、前記イオントフォレシス物質を用いて前記鼓膜を麻酔することと、
を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記電極先端部が前記イヤープラグの電極と電気的に接続され、前記イヤープラグの前記電極に前記電極装置によって電圧を印加する、実施態様5に記載の方法。
(7) イヤープラグを挿入することが、前記イヤープラグに連結されたヘッドセットを前記患者の首の後ろに配置することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記ヘッドセットが左イヤーフック及び右イヤーフックを含み、前記ヘッドセットを配置することが、前記左イヤーフックの対応する部分を前記患者の左側頭骨の上に、前記右イヤーフックの対応する部分を前記患者の右側頭骨の上に配置することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記ヘッドセットが第2のイヤープラグに連結されており、前記第2のイヤープラグが前記イヤープラグと同一に構成されており、前記ヘッドセットが前記イヤープラグに独立した力を印加して、前記イヤープラグを、対応する外耳道内に保持する、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記ヘッドセットが、それぞれ前記イヤープラグ及び前記第2のイヤープラグに流体連結されている流体チャネルを含み、前記イオントフォレシス物質を注入することが、前記ヘッドセットの前記流体チャネルを低圧力下で充填することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0089】
(11) 前記イヤープラグから排出される前記流体を観察することを更に含み、前記流体が前記イヤープラグから排出されるのが観察されたら、前記イオントフォレシス物質の注入を停止する、実施態様1に記載の方法。
(12) イオントフォレシス物質をヒト又は動物患者の耳の鼓膜に送達するためのシステムであって、
イヤープラグであって、
可撓性シール要素から近位に延びている細長い管を含む可撓性シール要素であって、前記可撓性シール要素が、複数の微小孔を有する遠位シール表面を有し、前記微小孔が、圧力閾値を超えたら流体を排出するように構成されている、可撓性シール要素を含む、イヤープラグと、
内管内で移動可能な電極装置であって、電極先端部に連結された細長いシャフトを含む電極装置と、
を含む、システム。
(13) 前記微小孔が、静水条件下では前記流体を排出しないように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記可撓性シール要素が内部プレナムを含み、前記微小孔が前記内部プレナムに流体連結している、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記内部プレナムが、前記細長い管の排出チャネルに流体連結されている、実施態様14に記載のシステム。
(16) 前記細長い管が、細長い内管の上に細長い外管を含み、それらの間に前記排出チャネルが配置されている、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記細長い管が、前記細長い管に一体化された少なくとも1つの電極を含み、前記少なくとも1つの電極が、前記電極先端部と電気的に接続可能である、実施態様12に記載のシステム。
(18) 前記電極が、円筒形ケージとして形成された導線を含む、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記円筒形ケージがコイルを含む、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記円筒形ケージが、軸方向に配列された複数のループを含む、実施態様18に記載のシステム。
【0090】
(21) 前記円筒形ケージが、前記電極先端部を圧縮するように構成されている、実施態様18に記載のシステム。
(22) 前記可撓性シール要素が傘状の形状をしている、実施態様12に記載のシステム。
(23) 第2のイヤープラグ及び第2の電極装置を更に含み、前記第2のイヤープラグが前記イヤープラグと、前記第2の電極装置が前記電極装置と同一に構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(24) 前記イヤープラグと前記第2のイヤープラグとを連結するヘッドセットを更に含む、実施態様23に記載のシステム。
(25) 前記ヘッドセットが、左及び右イヤーフックに連結されたネックループを含み、前記左及び右イヤーフックがそれぞれ、耳甲介の後ろを包むように構成されている、実施態様24に記載のシステム。
(26) 前記左イヤーフックが前記患者の左側頭骨上に、前記右イヤーフックが前記患者の右側頭骨上に、前記ネックループからの圧縮力を印加するように構成されている、実施態様25に記載のシステム。
(27) 前記ヘッドセットが、左低圧力流体チャネル及び右低圧力流体チャネルを更に含み、前記左低圧力流体チャネルが前記イヤープラグの内管に、前記右低圧力流体チャネルが前記第2のイヤープラグの内管に流体連結されている、実施態様25に記載のシステム。
(28) 前記ヘッドセットが、ばね式左スイングアーム及びばね式右スイングアームを更に含み、前記ばね式左スイングアームが前記左イヤーフックに、前記ばね式右スイングアームが前記右イヤーフックに、旋回する形で連結されているとともに、前記ばね式左スイングアームが前記イヤープラグに、前記ばね式右スイングアームが前記第2のイヤープラグに連結している、実施態様25に記載のシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントフォレシス物質をヒト又は動物患者の耳の鼓膜に送達するためのシステムであって、
イヤープラグであって、
可撓性シール要素から近位に延びている細長い管を含む可撓性シール要素であって、前記可撓性シール要素が、複数の微小孔を有する遠位シール表面を有し、前記微小孔が、圧力閾値を超えたら流体を排出するように構成されている、可撓性シール要素を含む、イヤープラグと、
内管内で移動可能な電極装置であって、電極先端部に連結された細長いシャフトを含む電極装置と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記微小孔が、静水条件下では前記流体を排出しないように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記可撓性シール要素が内部プレナムを含み、前記微小孔が前記内部プレナムに流体連結している、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記内部プレナムが、前記細長い管の排出チャネルに流体連結されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記細長い管が、細長い内管の上に細長い外管を含み、それらの間に前記排出チャネルが配置されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記細長い管が、前記細長い管に一体化された少なくとも1つの電極を含み、前記少なくとも1つの電極が、前記電極先端部と電気的に接続可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電極が、円筒形ケージとして形成された導線を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記円筒形ケージがコイルを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記円筒形ケージが、軸方向に配列された複数のループを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記円筒形ケージが、前記電極先端部を圧縮するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記可撓性シール要素が傘状の形状をしている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第2のイヤープラグ及び第2の電極装置を更に含み、前記第2のイヤープラグが前記イヤープラグと、前記第2の電極装置が前記電極装置と同一に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記イヤープラグと前記第2のイヤープラグとを連結するヘッドセットを更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ヘッドセットが、左及び右イヤーフックに連結されたネックループを含み、前記左及び右イヤーフックがそれぞれ、耳甲介の後ろを包むように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記左イヤーフックが前記患者の左側頭骨上に、前記右イヤーフックが前記患者の右側頭骨上に、前記ネックループからの圧縮力を印加するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ヘッドセットが、左低圧力流体チャネル及び右低圧力流体チャネルを更に含み、前記左低圧力流体チャネルが前記イヤープラグの内管に、前記右低圧力流体チャネルが前記第2のイヤープラグの内管に流体連結されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記ヘッドセットが、ばね式左スイングアーム及びばね式右スイングアームを更に含み、前記ばね式左スイングアームが前記左イヤーフックに、前記ばね式右スイングアームが前記右イヤーフックに、旋回する形で連結されているとともに、前記ばね式左スイングアームが前記イヤープラグに、前記ばね式右スイングアームが前記第2のイヤープラグに連結している、請求項14に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図7J】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13c】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【公表番号】特表2013−516226(P2013−516226A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547088(P2012−547088)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058718
【国際公開番号】WO2011/081772
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(506353574)アクラレント インコーポレイテッド (22)