説明

肝星細胞前駆細胞及びその細胞を単離する方法

本発明は、肝星細胞の前駆細胞、その細胞を含む組成物及びその細胞を単離する方法に関する。前駆細胞の表面抗原プロフィールは、MHCクラスIa陰性、ICAM−I、VCAM−I、β3−インテグリンである。これらの表面マーカーの発現に加えて、その細胞はまた、細胞内マーカーであるデスミン、ビメンチン、平滑筋αアクチン、ネスチン、肝細胞増殖因子、間質細胞由来因子1α及びHlxホメオボックス転写因子を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年5月26日出願の米国仮特許出願第60/808,548号の便益を主張し、その全ての内容は参照により本開示に含まれるものである。
【0002】
技術分野
本発明は、概略的には成熟肝を含む細胞の前駆体に関する。より詳細には、本発明は、肝星細胞の前駆細胞、その細胞を含む組成物及びその細胞を単離する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肝星細胞(HpStC)は、19世紀にKupfferによって初めて記述され、顕微鏡下で見たときのそれらの「星のような(stellar)」輝きのために「Sternellen」と称された。HpStCは、ディッセ腔(Space of Disse)において認められる肝特異的間葉細胞であり、かなりの部分が、ビタミンAを含む細胞質脂質滴からなる。実際に、脂質滴はHpStCの「輝き」の質に寄与する。
【0004】
現在、HpStCが、特に視力、生殖及び胚発生のために必要な、ビタミンA化合物の取込み、貯蔵及び放出において主要な役割を果たすことは一般的に認められている。哺乳動物では、通常、生体ビタミンA総量の約50%〜80%がHpStCに貯蔵される。
【0005】
HpStCはまた、肝における増殖因子、細胞外マトリックス成分(ECM)及びマトリックスメタロプロテイナーゼの産生においても中心的な役割を果たす。多くの報告が、HpStCが肝細胞のためのいくつかのマイトジェン(EGF、TGFα及びHGFなど)を分泌し、肝発生と再生において中心的役割を果たすことを明らかにしている。同様に、多くの研究が、ECM調節の失調が肝線維症及び肝硬変における因子であることを示している。更に、HpStCの収縮特性は、それらが、血管において局所血流を制御する周皮細胞と類似の機能を有することを示唆している。これらを合わせて考慮すると、HpStCのこれらの多様な機能は、健常肝機能及び肝機能不全におけるそれらの重要な役割を例証する。
【0006】
HpStCの重要性についての我々の理解が深まりつつある一方で、HpStCの起源は不明のままである。初期肝発生において、前腸の内胚葉細胞は肝憩室を生じさせ、肝憩室は、次に、横中隔と呼ばれる周囲の中胚葉内へと発達し、肝細胞索を形成する。一部の研究者は、HpStC前駆細胞が横中隔内の間葉細胞に由来し得ると推測したが、HpStCはそこからは単離されておらず、免疫選択を可能にするか又は前駆体HpStCを特徴づけるような表面マーカーはまだ同定されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、HpStCに対する前駆体を特異的に同定するマーカーと、そのマーカーでそれらの前駆体を単離する方法と、が求められている。加えて、HpStC前駆細胞をインビトロで増殖させる方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、肝星細胞前駆細胞が富化された細胞の集団を得る方法であって、(a)哺乳動物組織からの細胞の単細胞懸濁液を得ること、を含み、更に、任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(b)MHCクラスIa抗原を発現する細胞を単細胞懸濁液から除去すること、及び(c)ビタミンA蛍光に関して陽性である細胞を細胞懸濁液から単離すること、を含む方法を提供する。哺乳動物組織は、肝、膵、腸、肺又は骨髄細胞としてもよく、好ましくは肝である。前記方法は、VCAM及びβ3−インテグリンの少なくとも一方に関して陽性である細胞を細胞懸濁液から単離すること、CD45を発現する細胞を細胞懸濁液から除去すること、並びにデスミン、ネスチン、ビメンチン、平滑筋αアクチン又はそれらの組合せを発現する細胞を細胞懸濁液から単離すること、の少なくとも1つを更に含んでもよい。
【0009】
幾つかの態様では、単離及び除去する工程は、フローサイトメーターで実施される。MHCクラスI抗原を発現する細胞の除去は、それらの抗原を発現する細胞に対する種特異的抗体で、たとえばラット肝細胞におけるRT1Aに対する抗体を利用して実施してもよい。同様に、肝星細胞前駆細胞はヒト肝星細胞前駆細胞であってもよい。
【0010】
本発明の更にもう1つの態様では、単離肝星細胞前駆細胞が富化された細胞の集団を得る方法であって、(a)肝細胞の細胞懸濁液を得ること、及び(b)任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(i)ICAM−1抗原に関して陽性である細胞を肝細胞の単細胞懸濁液から単離すること、(ii)MHCクラスI抗原に関して陽性である細胞を除去すること、及び(iii)フローサイトメーターでの測定においてビタミンA蛍光に関して陽性である細胞を単離すること、を含み、前駆細胞が富化された細胞の集団を得る方法を提供する。方法は、MHCクラスI抗原、CD45又はその両方を発現する細胞を細胞懸濁液から除去すること、及びデスミン、ネスチン、ビメンチン、平滑筋αアクチン又はそれらの組合せを発現する細胞を細胞懸濁液から単離すること、の少なくとも一方を更に含んでもよい。
【0011】
本発明の他の態様では、VCAM抗原及びβ3−インテグリン抗原の両方を発現する単離肝星細胞前駆細胞を提供する。本発明の更に他の態様では、VCAM抗原及びβ3−インテグリン抗原の両方を発現する単離星細胞前駆細胞を無血清培地で培養することを含む、星細胞前駆細胞のクローン原性増殖の方法を提供する。この培地は、たとえばインスリン、トランスフェリン、白血病抑制因子(LIF)若しくは上皮増殖因子(EGF)又はそれらの組合せのような、増殖因子を更に含んでもよい。また、単離星細胞前駆細胞を、フィーダー細胞、たとえばSTO細胞の存在下で更に培養してもよい。
【0012】
これに関して、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において以下の説明で述べる又は図面に例示する成分の構成の詳細及び配置に限定されないことが了解されるべきである。本発明は、記述されているものに加えて具体化が可能であり、様々な方法で実行及び実施され得る。また、ここでならびに要約書において使用する成句及び用語は説明を目的とするものであり、限定とみなされるべきではないことが了解されるべきである。
【0013】
当業者は、本開示が根拠とする概念が、本発明のいくつかの目的を実施するために他の構造、方法及びシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを認識する。それゆえ、特許請求の範囲は、そのような均等物を、それらが本発明の精神と範囲から逸脱しない限り包含するとみなされることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、13dpcラット胎仔肝及び肺における自己蛍光細胞についてのフローサイトメトリー分析を示す。(A)は、集団全体(ALL)の前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)のパターンである。SSCの値に基づき、R1及びR2ゲートを作製し、それぞれ高(SSChi)及び低(SSClo)SSCを表わした。R1及びR2におけるRT1A及びICAM−1の発現パターンも示す。RT1AICAM−1SSChi細胞(R2、右下)は、ラット胎仔肝における肝芽細胞である(Kubota and Reid,2000)。数字は各象限のパーセンテージを示す。(B)集団全体(ALL)、R1及びR2の自己蛍光パターンをUVレーザー及び488nmレーザーで分析した。UVレーザー特異的自己蛍光シグナルは450nmフィルターで検出され、一方488nmレーザーで励起した非特異的自己蛍光シグナルは530/30バンドパスフィルターで測定した。UVレーザー特異的自己蛍光細胞はR1及びR2(左上)において検出された。(C)RT1A及びUVレーザー特異的自己蛍光シグナルの発現を検討した。UVレーザー特異的自己蛍光細胞はRT1Aであった。ns−autofluRT1A細胞(矢印)が同定され、ラット肝芽細胞集団に対応した。(D)UVレーザー特異的自己蛍光シグナルを13dpc胎仔肺細胞において分析した。肺細胞集団にはUV特異的自己蛍光細胞は存在せず、全細胞の大部分がRT1Aである。非特異的自己蛍光細胞(胎仔肝における肝芽細胞集団に匹敵する)は検出されなかった。
【図2】図2は、vA細胞でのVCAM−1及びICAM−1発現を示す。(A)13dpc胎仔肝でのVCAM−1発現に関するフローサイトメトリーのヒストグラム。細胞の約15%が細胞表面にVCAM−1を発現した。黒いヒストグラムと白いヒストグラムは、それぞれ染色細胞と非染色細胞を示す。VCAM−1及びVCAM−1細胞をそれらの自己蛍光シグナルに関してフローサイトメトリーによって分析した。vA細胞及びns−autoflu細胞のすべてはVCAM−1陽性を示している。数字は各象限のパーセンテージを示す。(B)RT1A及びICAM−1についての13dpc胎仔肝細胞の二色分析。R1細胞集団(RT1AICAM−1)はvA細胞及びns−autoflu細胞のすべてを含む。これらの結果は、vA及びns−autoflu細胞がVCAM−1RT1AICAM−1であることを指示する。
【図3】図3は、13dpc胎仔肝におけるvA細胞、ns−autoflu細胞及びautofluRT1A細胞の抗原性プロフィールを示す。(A)UV−自己蛍光及びRT1A発現に関するフローサイトメトリー分析。RT1A細胞集団において、4つのゲート(R1−R4)を自己蛍光シグナルに基づいて作製した。(B)各々のゲートされた細胞集団(R1−R4)に関するVCAM−1対β3−インテグリン、PECAM−1又はThy−1発現の二色分析。数字は各象限のパーセンテージを示す。主要R1細胞はVCAM−1β3−インテグリンであり、一方R3細胞は均一にVCAM−1を発現するが、β3−インテグリン、PECAM−1又はThy−1は発現しない。
【図4】図4は、両能性肝芽細胞コロニーの免疫細胞化学を示す。ns−autofluVCAM−1細胞をFACSによって単離し、クローン細胞密度(12穴プレートの1つの穴に250細胞;66細胞/cm)でHDM中のSTOフィーダー細胞上に置いた。15日間の培養後、細胞を固定し、ALB(赤色、中央図)及びCK19(緑色、右図)に対する抗体で染色した。1個の選別細胞から各々のコロニーを生成した(Kubota and Reid,2000)。肝コロニーの95%以上(95.7±0.4%;平均±SEM、n=3)が、それぞれ肝細胞及び胆管分化を示す、ALBCK19及びALBCK19細胞を含んだ。
【図5】図5は、FACSによって分画した14dpc胎仔肝細胞のRT−PCR分析を示す。レーン1:ns−autofluRT1AVCAM−1β3−インテグリン、レーン2:vART1AVCAM−1β3−インテグリン、レーン3:autofluRT1AVCAM−1、レーン4:autofluRT1AVCAM−1、レーン5:残りのVCAM−1細胞集団、レーン6:cDNAなし。vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞は、SDF−1α及びHGFを強力に発現する。vA細胞は、HpStCマーカー(デスミン、ネスチン、ビメンチン、SMαA)に関して陽性であり、肝芽細胞マーカー(アルブミン及びProx1)に関して陰性である。
【図6】図6は、vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞のインビトロ増殖へのLIF及びEGFの作用を示す。(A)FACSによって単離した500個のvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞を、指示されている濃度のLIF及びEGFの少なくとも一方を添加したHDMプラスラミニンを含む96穴プレートの穴に入れた。5日間の培養後、細胞増殖の程度をテトラゾリウム塩WST−1によって測定した。LIFは、0.1ng/mlという低濃度でvA細胞の増殖を支持する。EGFはvA細胞の増殖をわずかに改善した。(B)FACSによって単離した250個のRT1AVCAM−1β3−インテグリンvA細胞を、EGF及びLIFの少なくとも一方を含むHDM中のSTOフィーダー細胞に接種した。12穴プレートを使用した。2週間の培養期間後、培養物をDiff−Quick(商標)で染色した。STO細胞はLIFを発現するが、産生量は、外因性LIF添加がない場合、細胞のクローン性増殖を支持するのに十分ではなかった。外因性LIF及びEGFの添加はvA細胞のクローン性増殖を劇的に改善した。
【図7】図7は、FACSによって単離したvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞に由来するコロニーの免疫細胞化学を示す。細胞を、EGF及びLIFを添加したHDM中のSTOフィーダー細胞上に置いた。インビトロ培養の15日後、培養物をデスミン又はネスチンに対する抗体で染色した。コロニー形成細胞はネスチン及びデスミンを発現するが、STO細胞はどちらも発現しない。
【図8】図8は、FACSによって単離し、2ヶ月間培養したvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞の免疫細胞化学を示す。選別した細胞を、EGF及びLIFを添加したHDM中のSTOフィーダー細胞上に置いた。増殖細胞を新鮮STOフィーダー細胞上で5回継代培養した。培養した細胞をデスミン又はネスチンに対する抗体で染色した。増殖細胞において、培養期間中ネスチン及びデスミンの発現が維持されることが示されている。
【図9】図9は、2ヶ月間培養したvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞の表現型特徴を示す。(A)培養したvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞のRT−PCR分析。細胞をFACSによって単離し、EGF及びLIFを添加したHDM中のSTOフィーダー細胞上で培養した。2ヵ月間の培養後、細胞をFACSによって分画した。増殖ラット細胞及びマウスSTOフィーダー細胞を、マウスCD98モノクローナル抗体の抗体染色後、FACSによって分画した。CD98はマウスSTO細胞上で発現され、モノクローナル抗体はマウスCD98と特異的に反応するが、ラットCD98とは反応しない。RNAをvA由来ラット細胞及びSTO細胞から単離した。正常ラットHpStCも使用し、対照のためにRNAを単離した。cDNAをそれらのRNAから合成し、HpStCにおいて発現される様々な転写産物に特異的なプライマーによるPCRに供した。(B)培養したvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞についてのフローサイトメトリー。RT−PCRのために使用した細胞を抗VCAM−1又はRT1A抗体及びマウスCD98抗体で染色した。CD98陰性画分をVCAM−1又はRT1A発現に関して分析した。ラット胎仔肝におけるvA細胞に由来する持続的増殖細胞は、検討した培養条件下で均一にVCAM−1及びRT1Aを発現する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
HpStCには、「脂肪細胞」、「脂肪摂取細胞」、「伊東細胞」、「類洞周囲細胞」及び「肝周皮細胞」を含む、様々な名称が与えられてきた。しかしながら、明瞭さのために、本明細書ではHpStCという用語だけを使用するが、この用語はありとあらゆる上記の他名称を有する同じ細胞の集団を指すことが了解されるべきである。同様に、ここでの教示は1つの種に限定されない。実際に、ここで提供する例は単に例示であり、限定と解釈されるべきではない。従って、本発明は、肝組織についてのその哺乳動物ソースによって限定されない。HpStC及びそれらの前駆体が由来し得る哺乳動物は、ヒト、げっ歯動物(たとえばラット、マウス、ハムスター)、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ及びヒツジを含むが、これらに限定されない。好ましくは、HpStC及び前駆体はヒトに由来する。本発明はまた、肝発生の特定段階に限定されない。それゆえ本発明は、死亡後時間の経過していない個体(たとえば死後約30時間以内)からの肝組織を含む、胎児、新生児、小児及び成体肝組織の少なくとも1つに関して実施され得る。
【0016】
本発明は、HpStC前駆細胞(ここでは「HpStC前駆体」又は「前駆体HpStC」とも称される)を単離及び増殖する手法を提供する。ラット胎仔肝におけるHpStC前駆体を、細胞質vAリッチ脂質滴による特異的自己蛍光を用いたフローサイトメトリーによって同定した。vA細胞の表面表現型は均一であると考えられ、それらはRT1AICAM−1VCAM−1β3−インテグリンPECAM−1であった。それらの表面マーカーに加えて、vA細胞は、デスミン、ビメンチン、SMαA及びネスチンを含むHpStCに特異的な中間フィラメントを発現する。
【0017】
ICAM−1発現は胎児肝細胞において広く認められるが、β3−インテグリンはvA細胞上で比較的特異的である。β3−インテグリンは、表面発現のためにα−インテグリン、αv−インテグリン又はαII−インテグリンを必要とする。選択は細胞型によって異なる。成体肝におけるHpStCの場合は、αv−インテグリンがα鎖のために使用される。それゆえ、HpStC前駆体はαv−インテグリンを発現する可能性が高い。興味深いことに、成体HpStC上で発現されるαvβ3−インテグリンとECMリガンドの相互作用は、HpStCの運命決定、すなわち増殖又はアポトーシスに影響を及ぼすと考えられた。αvβ3−インテグリンは、成体HpStCにアポトーシス応答を保護するための刺激シグナルを形質導入した。加えて、もう1つの報告は、αvβ3−インテグリンがPECAM−1に結合することを示した。それゆえ、理論に限定されることなく又は理論に縛られることなく、HpStC前駆体でのβ3−インテグリン発現は、胎児肝発生の間の増殖のために、周囲のECMリガンド又は、PECAM−1を発現する内皮細胞からの刺激シグナルを受容するために重要であると思われる。
【0018】
FACS分析では、胎児肝の肝芽細胞及びHpStC前駆体においてVCAM−1の高発現が検出されることが示されたが、後者は、更にSDF−1αも発現するので、造血細胞に対してより重要な役割を果たすと考えられる。SDF−1αは、SDF−1αの受容体であるCXCR4を発現する造血幹細胞の強力な化学誘引物質である。このケモカインは、造血幹細胞/前駆細胞の骨髄への移動において中心的役割を果たし、VCAM−1へのVLA−4依存性接着を上方制御すると思われる。それゆえ、HpStC前駆体でのSDF−1α及びVCAM−1の発現は、造血幹細胞/前駆細胞を胎児肝に補充するために極めて重要である可能性がある。
【0019】
興味深いことに、VCAM−1は肝芽細胞で発現される。表面表現型及びmRNA発現に加えて、肝芽細胞についてのインビトロCFAによっても、VCAM−1細胞が肝芽細胞であることが明らかにされた。VCAM−1は、内皮細胞、筋原細胞又はHpStCなどの間葉細胞についての表面マーカーとして知られているので、この所見は予想外である。成体肝細胞はFACS分析によってVCAM−1であるので、発現は発生的に制御されると考えられる。
【0020】
HpStC前駆体は胎児肝における主要なHGF産生細胞であるので、肝発生にとって重要であると思われる。HGFは肝発生において重要な増殖因子であり、この因子はまた肝再生においても肝実質細胞増殖の役割を担う。加えて、HpStCは成体肝においてHGFを発現するが、実質細胞、内皮細胞及びクッパー細胞はHGFを発現しない。それゆえ、我々のデータ及びこれまでの試験は、HpStCが肝における胎児から成体までの主要なHGF産生細胞であることを示唆する。それゆえHpStC前駆体は、それ自体がHGF及びSDF−1αの主要産生細胞であることから、おそらく胎児肝において肝及び造血発生において重要な役割を果たすと考えられる。
【0021】
VCAM−1及びHlxの発現及びHGF及びSDF−1αの産生を含むHpStC前駆体のユニークな表現型及び機能的特徴を考慮すると、前駆体は、肝における造血幹細胞若しくは肝幹細胞又はその両方のための幹細胞ニッチからなると考えられる。無血清培養系はインビトロでHpStC前駆体のユニークな特徴的表現型を維持したので、この培養系は、成体肝からHpStC前駆体を同定するためのインビトロコロニーアッセイ系を開発するために使用できる。加えて、HpStC移植系が開発されれば、HpStC前駆体を使用した細胞療法が実施可能となる。成体肝におけるHpStC前駆体又はHpStC前駆細胞の同定、エクスビボ増殖及び移植は、線維性肝において活性化HpStCを置換するための貴重な手段である。明らかに、本試験で述べるHpStC前駆体についての表現型同定及びインビトロ培養系は、肝疾患に対する新規治療アプローチを開発するための新たな方向を示す。
【0022】
以下の実施例は本発明の例示であるが、本発明はいかなる意味においてもこれらの特定実施例に限定されない。また、当業者であれば、これらの実施例が本発明を実施するための手段の1つに過ぎないことは明らかである。更に、本実施例は実験上の利便性からラットに関して提示するが、ここで述べる方法及び試薬は、以下で開示する教示から当業者によってヒトへの適用に容易に適合され得るものである。
【0023】
実験材料及び方法
ラット
妊娠Fisher 344ラットをCharles River Breeding Laboratory(Wilmington,MA)より入手した。栓子が認められた日の午前を0日目と指定した。雄性Fisher 344ラット(200g〜250g)を成体HpStCの単離に使用した。動物実験はすべて、施設のガイドラインの下で実施され、ノースカロライナ大学動物管理使用委員会(The University of North Carolina Institutional Animal Care and Use Committee)は、国立科学アカデミー(National Academy of Sciences)の実験動物の管理と使用のための指針(The Guide for Care and Use of Laboratory Animals)に従ってすべての実験手順を承認した。
【0024】
細胞の作製
本発明に従ったインビトロ増殖に適する肝前駆細胞は、特定の方法によって単離又は同定されるものに限定されない。一般に、HpStC前駆体は肝の切除切片から入手し得る。肝の切除切片を、次に、標準的な手順によって単一分離細胞に解離し得る。そのような手順は酵素的解離及び機械的解離を含む。酵素的解離は、コラゲナーゼなどのプロテアーゼ又はDNアーゼなどのヌクレアーゼの存在下で実施し得る。一部の場合には、プロナーゼも使用し得る。肝細胞の酵素的解離の方法は当技術分野において記述され、実施されている。例として、肝前駆細胞の単離と同定の方法は、米国特許第6,069,005号及び米国特許出願第09/487,318号、同第10/135,700号、及び同第10/387,547号に述べられている。尚、これらの開示全体は参照により本開示に組み込まれる。実際に、肝細胞の単細胞懸濁液の消化及び単離には、様々な手法が存在する。それゆえ、本発明の範囲は、肝全体を入手する又はその単細胞懸濁液を調製する特定の方法に限定されないことが了解されるべきである。
【0025】
本実施例では、13〜14匹のdpcラットから胎児肝を単離し、800U/mlのコラゲナーゼ(Sigma)で消化して、次にトリプシン−EDTA溶液(Sigma)で更に消化した。細胞懸濁液を200U/mlのDNアーゼI(Sigma)で処理した(Kubota and Reid,2000)。
【0026】
細胞培養
好ましい実施形態では、インビトロ増殖工程には、フィーダー細胞層上でのHpStC前駆細胞の増殖を支持するために無血清ホルモン添加合成培地(HDM)を使用することが含まれる。フィーダー細胞の機能には、養分を供給する接着表面を供給すること、及び前駆体HpStCの生存、増殖又は分化に必要な特定の増殖因子及び細胞外マトリックス成分を培地に分泌することなどが含まれ、多種多様である。フィーダー細胞は、爬虫類、鳥類、甲殻類、魚類、環形動物、軟体動物、線虫、昆虫又は哺乳動物、好ましくはヒトから得ることができる。より好ましくは、フィーダー細胞は、胚組織、更に好ましくは胚肝組織に由来する。胎児肝細胞を、以前に述べたように(Kubota and Reid,2000)STOフィーダー細胞上で無血清ホルモン添加合成培地において培養した。
【0027】
HDMは、2mg/mlウシ血清アルブミン(Sigma)、5μg/mlインスリン(Sigma)、10−6Mデキサメタゾン(Sigma)、10μg/ml鉄飽和トランスフェリン(Sigma)、4.4×10−3Mニコチンアミド(Sigma)、5×10−5Mの2−メルカプトエタノール(Sigma)、7.6μg当量/l遊離脂肪酸、2×10−3Mグルタミン(GIBCO/BRL)、1×10−6MのCuSO、3×10−8MのNaSeO及び抗生物質(ペニシリン及びストレプトマイシン)を添加した、ダルベッコ改変イーグル培地とハムF12(DMEM/F12、GIBCO/BRL)の1:1混合物からなる。遊離脂肪酸には、100mg当量/l保存溶液についてそれぞれ31.0:2.8:11.6:13.4:35.6:5.6のミリモル比のパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸(すべてSigma)を含んだ。
【0028】
STOフィーダー細胞を以前に述べたように作製した(Kubota and Reid,2000)。簡単に説明すると、STO細胞のサブクローン、STO5をpEF−Hlx−MClneoでトランスフェクトした。トランスフェクトしたクローン、STO5HlxをマイトマイシンC(Sigma)で処理し、12穴プレートにおいて2×10細胞/穴の濃度でフィーダー細胞に使用した。選別vA細胞の長期間培養として、その細胞をSTOフィーダー細胞上で、10ng/mlヒト白血病抑制因子(LIF;Boehringer Mannheim)及び10ng/ml上皮増殖因子(EGF;Collaborative Biomedical Product)を添加したHDMにおいて培養した。培地を1日おきに交換し、細胞を毎週新鮮STOフィーダー細胞に継代培養した。
【0029】
コロニーの免疫細胞化学染色
培養細胞についての染色手順は以前に述べられている(Kubota and Reid,2000)。簡単に説明すると、培養プレートをメタノール−アセトン(1:1)中に室温で2分間固定し、洗浄して、4℃で20%ヤギ血清(GIBCO/BRL)によってブロックした。アルブミン(ALB)及びサイトケラチン(CK)19の二重標識のために、培養物を抗ラットALB抗体(ICN Biomedicals)及び抗サイトケラチン19(CK19)モノクローナル抗体(Amersham)と共に、次いでテキサスレッド結合抗ウサギIgG(Vector laboratories)及びFITC結合抗マウスIgG(Caltag)と共にインキュベートした。ネスチン又はデスミン発現に関しては、細胞を抗ネスチン抗体(Rat−401、Developmental Studies Hybridoma Bank,The University of Iowa)又は抗デスミン抗体(D33、Dako)、次いでアレクサ488結合抗マウスIgG(Molecular Probes)で染色した。
【0030】
蛍光活性化細胞選別(FACS)
細胞を、デュアルコヒーレントI−90レーザーを備えたFACStar Plusセルソーター(BD Biosciences)で分析し、選別した。vA特異的自己蛍光を検出するため、細胞を351nmで励起し、蛍光放出を、450DF20フィルター(Omega Optical Inc,Brattleboro,VT)を使用して検出した。蛍光結合抗体を488nmで励起し、それらの蛍光放出を標準フィルターによって検出した。
【0031】
ラット細胞の分析のために使用したモノクローナル抗体は、FITC結合抗RT1A(B5;BD Biosciences)、フィコエリトリン(PE)結合抗ラットICAM−1(1A29;BD Biosciences)、抗ラットVCAM−1(5F10、Babco)、抗ラットα6β1−インテグリン(mAB−5A、Serotec)、抗ラットCD44(OX−49、BD Biosciences)、PE結合抗ラットVCAM−1(MR109;BD Biosciences)、PE結合又はビオチン結合抗ラットβ3−インテグリン(2C9.G2;BD Biosciences)、ビオチン結合抗ラットPECAM−1(TLD−3A12;BD Biosciences)、ビオチン結合抗ラットThy−1(OX−7;BD Biosciences)であった。非特異的抗体結合をブロックするため、FACS実験における抗体染色の前に、細胞を20%ヤギ血清(GIBCO/BRL)、1%硬骨魚ゼラチン(Sigma)及び抗ラットCD32(FcγII受容体)抗体(D34−485、Rat BD Fc Block(商標)、BD Biosciences)溶液と共にインキュベートした。非結合抗VCAM−1抗体(5F10)で染色するため、胎児肝細胞を抗VCAM−1抗体と共にインキュベートし、その後ビオチン結合抗マウスIgG2aモノクローナル抗体(R19−15、BD Biosciences)で染色した。ビオチン結合抗体を検出するためにストレプトアビジン−Cy−クロム(BD Biosciences)を使用した。
【0032】
選別vA細胞に由来する長期間培養細胞を単離するFACS実験のために、培養物中のすべての細胞を採集し、培養ラット細胞及びSTOフィーダー細胞を分離するためにビオチン結合抗マウスCD98(H202−141、BD Biosciences)、次いでストレプトアビジン−Cy−クロムで染色した。マウスSTOフィーダー細胞は、マウスCD98に対する抗体で明るく染色された。それゆえ、CD98陰性細胞はラット由来細胞であり、先に示したように(Kubota and Reid,2000)FACSを用いて容易に識別できる。
【0033】
肝芽細胞についてのコロニー形成アッセイ(CFA)
肝芽細胞に関するCFAの手順は以前に述べられている(Kubota and Reid,2000)。簡単に説明すると、選別された細胞を、12穴プレートに500又は2500細胞/穴(3.8cm)でSTOフィーダー細胞に3組接種し、培地を1日おきに交換して14〜15日間HDM中で培養した。肝芽細胞の両能性分化活性を検討するため、ALB及びCK19の二重免疫蛍光染色を実施した。各穴当たりのコロニーの数を計数するため、コロニーをDiff−Quick(Baxter)によって染色した。
【0034】
細胞増殖アッセイ
FACSによって単離したvA細胞を、最終濃度8μg/mlのラミニン(Collaborative Biomedical Products)を添加したHDMを含む96穴プレートにおいて500細胞/穴で3組接種した。EGF及びLIFを指示されている濃度で添加した。接種の5日後、浮遊細胞を除去するために細胞培養物を2回洗浄し、生存接着細胞の数を計数するためにテトラゾリウム塩WST−1(Boehringer Mannheim)を含む新鮮培地を添加した(Kubota and Reid,2000)。4時間後、製造者のプロトコールに従って吸光度を測定した。
【0035】
逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
PCRに使用したプライマー配列を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
FACSによって選別した細胞についてのRT−PCRの手順は以前に述べられている(Kubota et al.,2002)。簡単に説明すると、FACStar Plusセルソーターを用いて細胞を単離し、全RNAをRNeasy Kit(QIAGEN)によって抽出して、cDNA合成に供した。cDNAは、オリゴdTプライミング及びAMV逆転写酵素(Seikagaku America)により、反応容量20μl、42℃でtotalRNAから合成した(Kubota et al.,2002)。PCRは、合成されたcDNAに関して、各々のプライマー1μM、各々のdNTP 200μM、50mM KCl、1.5mM MgCl、10mMトリスHCl、pH8.3及び1.25U Amplitaq polymerase gold(Perkins Elmer)からなる総容量50μlで実施した。試料を94℃に3分間加熱し、次いで94℃2分間、62℃2分間及び72℃3分間の26〜35サイクル増幅した。各標的遺伝子についての増幅サイクルの数は異なっており、表1に示している。最後のサイクル後、最終伸長工程を72℃で6分間実施した。その後、各々のPCR反応物5μlを1%アガロースゲル電気泳動によって分析した。選別細胞のtotalRNAから合成したcDNAを細胞数で標準化した。
【0038】
実験結果
胎児肝におけるビタミンA細胞の同定
単細胞懸濁液の確立後において、HpStC前駆体の単離には、肝組織に由来する混合肝細胞集団をフローサイトメトリーに供すること、及び細胞質ビタミンA(vA)に富む脂質滴によって生成される特異的自己蛍光を示す細胞を選択すること、とが含まれる。ビタミンAは、330〜360nm(紫外線、UV)レーザー光で励起したとき緑青色蛍光を生じる。FACS分析は、UVレーザーを使用して、肝における成熟HpStCならびに前駆体HpStCの両方の細胞質中のビタミンA特異的緑青色蛍光(vA)を検出することができる。
【0039】
図1Aは、13dpc胎仔肝細胞における自己蛍光のパターンを示す。vA特異的緑青色自己蛍光シグナルを、UVレーザー(351nm)の励起により450nmフィルターで放出光を検出することによって測定した。非UVレーザー特異的自己蛍光シグナルを検出するため、488nmレーザー及び530/30nmバンドパスフィルターを使用した。全胎仔肝細胞集団ならびに2つの小集団(図1AのR1及びR2ゲート)の自己蛍光シグナルのパターンを図1Bに示す。全細胞集団のFACSパターンにおいて(図1B、ALL)、高い自己蛍光特徴を有する2つの異なる小集団が同定された。その1つは、ここではvAと称するが、UV光に特異的な自己蛍光シグナルを有する(図1B、ALL、左上)。一方右上象限において対角線上に位置する細胞は、非特異的自己蛍光を示す。これは、488nmレーザー及びUVレーザーによってそれぞれ励起したとき、530nmフィルター及び450nmフィルターで自己蛍光シグナルが検出されたためである。非特異的自己蛍光特徴を有する小集団(ns−autofluと称する)はもっぱらSSChighゲートに由来したが(図1A、R2及び図1B、R2)、vA細胞(図1B、左上)はR1とR2の両方で検出された。
【0040】
図1Cは、RT1Aに対するFITC結合抗体によって検出したvA特異的自己蛍光シグナル及びMHCクラスIa発現のパターンを示す。FACS分析では、vA細胞並びにns−autoflu細胞がRT1A発現を有さないことが示された。これは、これら2つの集団が、対照試料(図1B、R2)と比較して染色試料(図1C、R2)においてシフトしなかったためである。加えて、FACS分析によればまた、肝芽細胞集団、すなわちRT1AICAM−1SSChighである細胞(図1A、R2、右下)とRT1Ans−autoflu細胞(図1C、R2、矢印)がこのFACS分析による重複集団であることが示された。
【0041】
これらの自己蛍光シグナルが胎児肝において特異的であるか否かを調べるため、13dpc胎児から胎児肺細胞を単離し、FACSによって分析した。FACS分析は、肺細胞にはns−autoflu細胞又はvA細胞のいずれも存在しないことを示し(図1D)、胎児肝における特定小集団の自己蛍光シグナルがユニークな表現型特徴であることを示唆した。
【0042】
肝前駆細胞(すなわち肝芽細胞)は、ラット胎仔の13dpc肝においてRT1AOX18lowICAM−1SSChigh細胞であることが示唆されたので、これらのマーカーをvA細胞において検定した。図1Aは、13dpcでの胎仔肝細胞のFACS分析とそれに続くRT1A、ラットMHCクラスI及びICAM−1に対する抗体での染色のパターンを示す。図1Cは、vA特異的自己蛍光シグナルとRT1Aに対するFITC結合抗体によって検出したRT1A発現のパターンとを示す。FACS分析では、vA細胞ならびにns−autoflu細胞がRT1A発現を有さないことが示された。これは、これら2つの集団が、対照試料(図1B、R2)と比較して染色試料(図1C、R2)においてシフトしなかったためである。加えて、FACS分析では、肝芽細胞集団、すなわちRT1AICAM−1SSChighである細胞(図1A、R2、右下)とRT1Ans−autoflu細胞(図1C、R2、矢印)とが同一集団であることが示された。これらの結果は、FACS分析が13dpcという早期にラット胎仔肝において特徴的なvA細胞を検出できたこと、及びvA細胞はRT1AICAM−1であったことを示している。
【0043】
ビタミンA細胞におけるVCAM−1及びインテグリンβ3の発現
上記で明らかにしたように、vA陽性及びMHCクラスIa陰性はHpStCを同定単離する十分なマーカーである。しかし、一部の場合、特に分子(たとえばDNA)の完全性が懸念される場合には、UV光に基づくUV選択は望ましくないと考えられる。それゆえ、本発明は、UVに基づく選択に加えて又はその代わりに使用し得るマーカーを提供する。HpStC前駆体は、選択した細胞集団をVCAM、より詳細にはVCAM−1、に特異的な抗体に曝露することによって更に同定され得る。VCAM−1は、成体肝においてHpStCを筋線維芽細胞と区別するユニークな表面マーカーであることが示されたことから、有効なマーカーである。更に、成体肝細胞はこのマーカーに関して陰性であるので、VCAM−1の発現は発生的に制御されると考えられる。
【0044】
vA細胞がVCAM−1を発現するか否かを検討するために、VCAM−1発現を胎仔肝細胞において分析した。FACS分析によると、13dpc胎仔肝において細胞の約15%がVCAM−1であった(図2A)。次に、VCAM−1細胞の自己蛍光及びRT1A発現のパターンを測定した。VCAM−1細胞は基本的にすべてのvA細胞ならびに全ns−autoflu細胞集団を含み(図2A)、HpStC及び肝芽細胞がVCAM−1を発現することが示された。ラットVCAM−1に対する2つのモノクローナル抗体(5F10及びMR109)のFACS分析では、VCAM−1発現において同一のパターンが示された。加えて、図2BのR1ゲートはVCAM−1細胞集団を含んでいたため、胎仔肝VCAM−1細胞はRT1AICAM−1細胞であった。これらの結果は、胎仔肝のVCAM−1RT1AICAM−1細胞がvA細胞、肝芽細胞及び多少の非自己蛍光細胞からなることを示唆している。
【0045】
共にVCAM−1RT1AICAM−1細胞である2つの自己蛍光集団、vA細胞及び肝芽細胞を識別するためにさらなる表面抗原を検討した。β3−インテグリン(CD61)は内皮細胞、血管平滑筋細胞及び成体HpStCで発現されるので、VCAM−1対インテグリンβ3の二色FACS分析を実施した。vART1A細胞の大部分がβ3−インテグリンを発現したが、ns−autofluRT1A細胞はβ3−インテグリンであり、一方vART1A細胞は多少のVCAM−1β3−インテグリン細胞を含んだ(図3B)。
【0046】
autofluRT1A細胞は、多少のVCAM−1β3−インテグリン細胞を含んだ。残りの主要集団(図3B、R4)はVCAM−1であり、図2BのR2細胞集団に対応すると考えられた。R4細胞集団は、プラスチック皿で培養すると非接着細胞を含む。これによりそれらが造血細胞であることが示唆された。分画の小集団(〜20%)はβ3−インテグリンであった。内皮細胞マーカーとして知られるPECAM−1(CD31)の発現も評価した。しかし、FACS分析では、vART1A細胞及びns−autofluRT1A細胞におけるPECAM−1発現が無視し得る程度であり(図3B)、一方autofluRT1A及び非接着細胞集団においてPECAM−1細胞が検出される(図3B、R2及びR4)ことが示された。更に、腫瘍形成性損傷後の成体肝において出現する卵形細胞についての表面マーカー、Thy−1(CD90)の発現を評価した。FACS分析では、ns−autofluRT1AがThy−1であることが示された。
【0047】
これに対し、vART1A細胞、autofluRT1A細胞及び非接着細胞は不均一にThy−1を発現する。FACS分析により、ns−autofluRT1A細胞がCD44loであり、vART1A細胞がCD44であることが示された(データは示さず)。CD44(Pgp−1)については、vART1A細胞とns−autofluRT1Aにおいて異なった発現を示したが、細胞表面での発現は弱かった。合わせて考慮すると、これらのデータは、検討したすべての抗体の中で、β3−インテグリン抗体染色により、vART1A細胞とns−autofluRT1A細胞(両集団共に胎児肝においてVCAM−1ICAM−1)の識別が容易になることを示唆している。
【0048】
VCAM−1インテグリンβ3非特異的自己蛍光細胞集団は肝芽細胞のみ含む。
14dpcまでのラットの胎仔肝細胞は、微小環境に依存して肝細胞及び胆管上皮細胞の両方に分化する発生能に関して均質である。これらの両能性前駆細胞は肝芽細胞と呼ばれる。vA細胞が肝細胞系統を生成する潜在能を有するかどうかを検討するため、CFA(Kubota and Reid,2000)を実施した。4つの細胞集団をFACSによって単離し、肝芽細胞についてのCFAに供した。ここで、この4つの細胞集団は、(1)ns−autofluRT1AVCAM−1β3−インテグリン、(2)vART1AVCAM−1、(3)autofluRT1A、及び(4)VCAM−1非接着細胞とした。選別された細胞分画をHDM中のSTO5フィーダー細胞上に置き、15日間培養して、それぞれ肝及び胆管系統に関してアルブミン及びCK19に対する抗体で染色した。その後、すべての肝コロニーを計数した。
【0049】
CFAは、肝コロニーが第1群のns−autofluVCAM−1β3−インテグリン細胞から生成されることを示し(下表2)、vAVCAM−1β3−インテグリン細胞を含む、選別細胞のその他の群が肝前駆細胞ではないことを明らかにした。第1群の選別細胞に由来する肝コロニーの95%以上が、肝細胞(アルブミンCK19)及び胆管上皮細胞(アルブミンCK19)の両方を含んだ(図4)。更に、選別されたns−autofluVCAM−1β3−インテグリン細胞におけるコロニー形成効率は約31%であり、既に前記試験(Kubota and Reid,2000)により樹立された肝前駆細胞系統(rhel4321)は、42.5±1.8%のCFAにおけるコロニー効率を有していた。合わせて考慮すると、樹立された細胞系統によるCFAはおそらく新鮮単離細胞よりもはるかに高いので、この実験におけるCFAの結果は、ns−autofluVCAM−1β3−インテグリン細胞集団がほぼ純粋な肝芽細胞集団であることを示している。
【0050】
表2は、選別されたげっ歯動物胎仔肝細胞からの肝星細胞コロニーの発生率を示す。vART1AVCAM−1、autofluRT1A、ns−autofluRT1A及びVCAM−1細胞の分画のためのゲートを、それぞれ図3のR1、R2、R3及びR4に示すように作製した。
【0051】
【表2】

【0052】
フローサイトメトリー選別細胞を、12穴プレートにおいて各穴につき表中の細胞数でSTOフィーダー細胞上にて培養した。肝コロニー数は各穴当たりの平均である。コロニー効率は、培養中に接種した細胞と15日間の培養後にコロニー形成へと進んだ細胞とのパーセンテージで表わされている。数値は平均±SEMである。選別細胞を接種した穴の総数をカッコ内に示している。
【0053】
新鮮単離ビタミンAVCAM−1β3−インテグリン細胞の遺伝子発現
次に、vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞の遺伝子発現パターンを、それらがHpStCについての様々なマーカーを発現するか否かを調べるために検定した。5つの集団をFACSによって単離し、その5つの集団からRNAを単離した。RNAから合成したcDNAを使用してHpStCマーカーについてのRT−PCRを実施した。ここで、5つの集団は、(1)ns−autofluRT1AVCAM−1β3−インテグリン、(2)vART1AVCAM−1β3−インテグリン、(3)autofluRT1AVCAM−1、(4)autofluRT1AVCAM−1、及び(5)VCAM−1非接着細胞集団とした。成体肝におけるHpStCは、肝の他の細胞型では発現されない中間フィラメント、デスミン及びネスチンを発現する。
【0054】
RT−PCR分析は、vART1AVCAM−1β3−インテグリン、ns−autofluRT1AVCAM−1、及びautofluVCAM−1細胞が4つの中間フィラメントすべてを発現することを示した。ns−autofluRT1AVCAM−1細胞は、アルブミンならびに肝芽細胞において特異的に発現する転写因子であるProx1を発現する。この結果は、この集団が肝芽細胞を備えることを明らかにしたCFAアッセイから得られたデータと一致した。肝芽細胞集団では、ネスチン、SMαA又はビメンチンの発現は存在しなかった。HpStC特異的中間フィラメントの発現は、vA細胞がHpStC前駆体であることを強く示唆している。
【0055】
その後、3つの別個の間葉細胞マーカー、HGF、間質細胞由来因子1α(SDF−1α)及び分岐型ホメオボックス転写因子であるHlxの発現を、RT−PCRを用いて検討した。マウスにおける正常な肝発生、特に肝芽細胞の増殖と分化のためにはHGFが必要であり、成体肝ではHpStCはHGFの主要産生細胞である。SDF−1αは、造血前駆細胞のための強力なケモカインであり、胎児肝における造血幹細胞はケモカインに応答して遊走する。Hlxは、発生中の胎児肝における間葉細胞で発現され、胎児肝造血及び肝発生において必須の役割を果たす。
【0056】
興味深いことに、vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞は、検討したすべての細胞分画の中でHGF、SDF−1α及びHlx転写産物を最も強く発現した(図5)。集合的に、vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞はデスミンネスチンSMαAビメンチンHlxであり、胎児肝におけるHGF及びSDF−1αの主要産生細胞である。
【0057】
RT1AVCAM−1β3−インテグリンvA細胞のエクスビボでのクローン性増殖
成体肝から単離したHpStCは、インビトロでは限られた増殖活性しか有さない。HpStC前駆体は大きな増殖活性を有すると考えられるので、胎児肝におけるvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞のエクスビボでの増殖能力を検討した。LIFは、胚性幹細胞又は筋原性細胞を含む多くの異なる細胞型についての多面発現性増殖因子である。FACSによって単離されたvART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞を、LIFの存在下で5日間、96穴プレートにおいて500細胞/穴の細胞密度でホルモン添加合成無血清培地にて培養すると、細胞は用量依存的に増殖した(図6A)。加えて、神経幹細胞を含む様々な細胞型のための増殖因子であるEGFは、LIFによって誘導されるHpStC前駆体の増殖を増強したが、EGF単独では増殖を補助しなかった(図6A)。
【0058】
しかしながら、プラスチック培養プレートだけを使用した条件下では増殖は持続しなかった。それゆえ、FACS選別vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞を、次に、STO5フィーダー細胞上に置いた(Kubota and Reid,2000)。LIFはSTO細胞によって産生されるが、外因性LIF及びEGFの添加は、選別vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞からのコロニー形成を更に劇的に補助した(図6B)。培養中で増殖する細胞はデスミン及びネスチンを発現したが、STO5フィーダー細胞はどちらも発現しなかった(図7)。3つの単一コロニーを採取し、新鮮STO5フィーダー細胞上に置いた。単一コロニー由来細胞は、LIF及びEGFを添加したSTO5フィーダー細胞との共培養において2ヶ月間増殖し続け、それらが大きな増殖潜在能を有することが示された。この増殖細胞において、デスミン及びネスチンの発現は維持された(図8)。
【0059】
新鮮単離vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞と2ヶ月間培養した細胞との特徴的表現型を更に比較するため、RT−PCRを実施した。2ヶ月間培養下に維持した単一コロニー由来細胞(A428−3)をFACSによってSTO5フィーダー細胞から分離し、RT−PCR分析用にRNAを抽出した。対照試料として、同時に選別されたSTO5フィーダー細胞からRNAを単離した。加えて、成体HpStCからRNAを単離して、A428−3及びSTO5細胞より得られたRNAと比較した。
【0060】
結果は、A428−3が、デスミン、ネスチン、SMαA、ビメンチン、β3−インテグリン、SDF−1α、HGF及びHlxを発現することを明らかにし、発現パターンが新鮮vART1AVCAM−1β3−インテグリン細胞に類似することを示した(図5及び図9A)。更に、VCAM−1発現がFACS分析によって確認された(図9B)。RT1A発現はインビトロ培養において誘導されると考えられた(図9B)。成体HpStCのRT−PCR結果は、正常成体HpStCの表現型がデスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、HGF、SMαAlo/−であるというこれまでの報告と一致した。結果はまた、成体HpStCがSDF−1α、β3−インテグリン及びHlxを発現することを示した。A428−3細胞において(図9A)又は胎児肝で試験したいかなる分画においても、GFAPの発現は見られなかった。
【0061】
本発明は、しかし、たとえばβ3−インテグリンPECAM−1VLA−6及びCD44Hを含む、HpStC前駆細胞を同定するために上記マーカーと共に使用し得る付加的なマーカーを提供する。ICAM−1及びβ3−インテグリンも成熟HpStCで発現される。それらの表面マーカーに加えて、成熟及び前駆体HpStCは、デスミン、ビメンチン、平滑筋aアクチン及びネスチンを含むHpStCに特異的な中間フィラメントを発現する。
【0062】
この試験では、A428−3細胞において(図9A)又は胎児肝GFAPにおいて試験したいかなる分画においても、GFAPの検出可能な発現は存在しなかった。GFAPは中枢神経系において星状膠細胞を同定するために使用されるマーカーであるが、このタンパク質は成体肝のHpStCにおいても発現される。しかし、我々は、RT−PCRで試験したいかなる細胞画分ならびに全胎児肝試料においても、GFAP mRNAを認めなかった。加えて、単離HpStC前駆体の培養後でさえも、GFAP発現は誘導されなかったが、デスミン及びネスチンの発現は培養物において維持された。この結果は、胎児肝におけるHpStC前駆体が後期発生段階でGFAP発現を獲得することを示唆する。我々は、しかし、GFAP細胞が13dpc胎児肝においては存在しない異なる前駆体に由来するというもう1つの可能性を排除できない。血流中の循環細胞は選択的細胞起源のソースとなり得る。しかし、成体肝のHpStCの大部分がGFAPを発現する。従って、血液からの循環細胞の小さな寄与が肝において支配的な集団になる可能性は低い。それゆえ、GFAP発現の獲得はHpStCの成熟の間に起こる可能性がより高いと思われる。
【0063】
データはまた、HpStC前駆体が分岐型ホメオボックスタンパク質であるHlxを比較的強く発現することを示した。Hlx発現とHpStC発生の関係は明らかでないが、Hlx発現の喪失は突然変異マウスにおける欠陥に寄与し得る。マウス胎仔肝におけるHpStC前駆体は、HGF、SDF−1α及びHlxも発現する。
【0064】
HpStC前駆体のユニークな表面表現型に加えて、この試験で樹立された培養系は成体肝におけるHpStC前駆体の同定にも使用可能である。これまで、成体肝からのHpStCはウシ胎仔血清を添加した培地で培養されてきた。通常、血清添加培地で培養されたHpStCは筋線維芽細胞を生じさせ、この細胞は線維芽細胞特徴を獲得して、もとのHpStC表現型を喪失する。それゆえ、血清添加培地条件はHpStC前駆体を同定するために適切ではない。本試験で述べた無血清培養条件は、HpStC前駆細胞のエクスビボでの維持を助けることができる。
【0065】
HpStC前駆体は、検討した胎児肝細胞画分中のいかなる小集団よりも多くのHGF転写産物を発現するので、それらは肝発生のために鍵となる役割を果たすと考えられる。HGFは肝発生のために決定的に重要な増殖因子であり(Schmidt et al.,1995)、この因子はまた、肝再生においても肝実質細胞増殖の責任を担う(Michalopoulos and DeFrances,1997)。加えて、HpStCは成体肝におけるHGFの産生細胞であるが、実質細胞、内皮細胞又はクッパー細胞はHGFの産生細胞ではないことが示された(Schirmacher et al.,1992)。それゆえ、我々のデータ及びこれまでの試験によるデータは、HpStCが肝における胎児から成体までの主要なHGF産生細胞であることを示唆している。
【0066】
この試験では、13dpc胎仔肝においてGFAP発現は存在しなかった。GFAPは中枢神経系における星状膠細胞の同定に使用されるマーカーであるが、このタンパク質は成体肝のHpStCにおいても発現する。しかし、我々は、試験したいかなる細胞画分ならびに全胎児肝試料においても、RT−PCRによってGFAP mRNAを認めなかった。加えて、単離HpStC前駆体の培養後でさえも、GFAP発現は誘導されなかったが、デスミン及びネスチンの発現は培養物において維持された。この結果は、胎児肝におけるHpStC前駆体が後期発生段階でGFAP発現を獲得することを示唆している。我々は、しかし、GFAP細胞が13dpc胎児肝においては存在しない異なる前駆体に由来するというもう1つの可能性を排除できない。血流中の循環細胞は選択的細胞起源のソースであり得る。しかし、成体肝のHpStCの大部分がGFAPを発現する。従って、血液からの循環細胞の小さな寄与が肝において支配的な集団になる可能性は低い。それゆえ、GFAP発現の獲得はHpStCの成熟の間に起こる可能性がより高いと思われる。
【0067】
分岐型ホメオボックスタンパク質のHlxは、横中隔及び胎児肝における間葉細胞で発現される(Lints et al.,1996)。Hlxノックアウトマウスについてのこれまでの試験からは、突然変異マウスが肝発生及び胎仔肝造血障害を有することが明らかにされている(Hentsch et al.,1996)。
【0068】
移植実験では、造血障害が造血前駆細胞自体によって引き起こされるのではなく、胎児肝微小環境によって引き起こされることが示された。それゆえ、Hlx細胞は、胎児肝において、肝及び造血発生を助ける重要な細胞集団である。我々のデータによれば、HpStC前駆体がHlxを強く発現することが示されている。それゆえ、HlxノックアウトマウスがHpStC前駆体を有するかどうかを調べることは興味深い。Hlx発現とHpStC発生の関係は明らかでないが、Hlx発現の喪失は突然変異マウスにおける欠陥に寄与し得る。最近、我々は、マウス胎仔肝における類似HpStC前駆体がHGF、SDF−1a及びHlxも発現することを認めた。更に、本発明人は、ヒト胎児肝において類似マーカー(たとえば平滑筋αアクチン)を有する間葉細胞を同定し、それがヒト肝幹細胞のエクスビボ増殖のために重要であることを明らかにした。
【0069】
FACSによって精製されたHpStC前駆体は、STOフィーダー細胞上及び脂質、インスリン、トランスフェリン、EGF及びLIFを添加した無血清培地条件下で増殖した。我々のデータは、LIFがインビトロ増殖のためにより有用であることを示唆した。STOフィーダー細胞の支持により、HpStC前駆体は2ヶ月以上にわたって持続的に複製した。培養細胞は、VCAM−1、β3−インテグリン、デスミン、ビメンチン、平滑筋αアクチン、ネスチン、HGF及びSDF−1aを発現した。新鮮HpStC前駆体のこれらの表現型はインビトロ培養の間変化しなかった。
【0070】
HpStC前駆体のユニークな表面表現型に加えて、本試験で樹立された培養系は成体肝におけるHpStC前駆体の同定にも使用可能である。これまで、成体肝からのHpStCはウシ胎仔血清を添加した培地で培養されてきた。通常、血清添加培地で培養されたHpStCは筋線維芽細胞を生じさせ、この細胞は線維芽細胞特徴を獲得して、もとのHpStC表現型を失う。それゆえ、血清添加培地条件はHpStC前駆体を同定するために適切ではない。本試験で述べた無血清培養条件は、HpStC前駆細胞のエクスビボでの維持を助ける。成体肝においてHpStC前駆体が存在すれば、それらは線維性肝において活性化HpStCを置換するための貴重な手段である。HpStC前駆体についての表現型同定及びインビトロ培養系は、肝疾患のための新規治療アプローチの開発を促進する。
【0071】
本発明をその特定実施形態に関連して説明したが、更なる変更が可能であり、本出願が本発明のいかなる変法、使用又は改変をもカバーするものである。一般に、本発明の原理は、本発明が関連する技術分野において公知又は慣例的なやり方に属し、先に述べた又は特許請求の範囲において述べる本質的特徴に適用され得るような本発明の開示からの逸脱をも包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝星細胞前駆細胞が富化された細胞の集団を得る方法であって、
(a)哺乳動物組織からの細胞の単細胞懸濁液を得ること、
を含み、前記方法は更に、任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、
(b)MHCクラスIa抗原を発現する細胞を前記単細胞懸濁液から除去すること、及び
(c)ビタミンA蛍光に関して陽性である細胞を前記単細胞懸濁液から単離すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記哺乳動物組織は、肝、膵、腸、肺又は骨髄細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(d)VCAMに関して陽性である細胞を単離すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD45を発現する細胞を除去すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(d)VCAM抗原及びβ3−インテグリンの両方に関して陽性である細胞を単離すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(e)デスミン、ネスチン、ビメンチン、平滑筋αアクチン又はそれらの組合せを発現する細胞を前記単細胞懸濁液から単離すること、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記単離及び除去する工程は、フローサイトメトリーを用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物組織は、肝組織である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記肝星細胞前駆細胞は、ヒト肝星細胞前駆細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
単離肝星細胞前駆細胞が富化された細胞の集団を得る方法であって、
(a)肝細胞の細胞懸濁液を得ること、及び
(b)任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(i)ICAM抗原に関して陽性である細胞を前記肝細胞の前記単細胞懸濁液から単離すること、(ii)MHCクラスI抗原に関して陽性である細胞を除去すること、及び(iii)フローサイトメーターでの測定においてビタミンA蛍光に関して陽性である細胞を単離すること、
を含む方法。
【請求項11】
任意の順序で連続的に又は実質的に同時に、(c)デスミン、ネスチン、ビメンチン、平滑筋αアクチン又はそれらの組合せを発現する細胞を前記細胞懸濁液から単離すること、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記単離及び除去する工程は、前記フローサイトメーターにおいて実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記MHCクラスI抗原を発現する細胞の除去は、抗体によって実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記肝星細胞前駆細胞は、ヒト肝星細胞前駆細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
VCAM抗原及びβ3−インテグリン抗原の両方を発現する単離肝星細胞前駆細胞。
【請求項16】
VCAM抗原及びβ3−インテグリン抗原の両方を発現する単離星細胞前駆細胞を無血清培地で培養することを含む、星細胞前駆細胞のクローン原性増殖の方法。
【請求項17】
前記培地は、増殖因子を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖因子は、インスリン、トランスフェリン、LIF若しくはEGF、又はそれらの組合せである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記単離星細胞前駆細胞は、フィーダー細胞の存在下で更に培養される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記フィーダー細胞は、STO細胞である、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−538152(P2009−538152A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513392(P2009−513392)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/069645
【国際公開番号】WO2007/140243
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【Fターム(参考)】